特許第5928984号(P5928984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928984
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】ヘアキャッチャー
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/264 20060101AFI20160519BHJP
【FI】
   E03C1/264
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-81629(P2012-81629)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209863(P2013-209863A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100159709
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 惣一
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】田村 和博
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275718(JP,A)
【文献】 特開2011−163116(JP,A)
【文献】 特開2010−037923(JP,A)
【文献】 特開2011−231507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水トラップに設けられるヘアキャッチャーであって、
底面に水抜き孔が形成され、流入する水が滞留可能なボウル部と、
記ボウル部から溢れた水を排水管に流出させるオーバーフロー流出部と、
前記ボウル部より上部に形成され、前記排水トラップに係合可能な係合部と、
を備え、
前記係合部と前記ボウル部との間が前記オーバーフロー流出部となっており、
前記水抜き孔は、前記底面を貫通する円形状の貫通孔であり、
前記オーバーフロー流出部は、前記ボウル部と前記係合部とを連結し水平面に対して傾斜した複数の縦リブと、前記複数の縦リブ同士を水平方向に連結する横リブと、により形成された格子状の開口部を有し、
前記開口部の開口面積は、前記水抜き孔の開口面積よりも広いことを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項2】
前記オーバーフロー流出部の下部の水平面に対する傾斜角度は、前記オーバーフロー流出部の上部の水平面に対する傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のヘアキャッチャー。
【請求項3】
前記ボウル部は、すり鉢状を呈し、
前記ボウル部の下部の水平面に対する傾斜角度は、前記ボウル部の上部の水平面に対する傾斜角度よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のヘアキャッチャー。
【請求項4】
前記縦リブは、前記ボウル部の内面まで延在し、
前記ボウル部は、前記縦リブにより形成された凹凸を内面に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のヘアキャッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、ヘアキャッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、例えば浴室の洗い場や美容室などのシャンプー台などに設置される排水トラップは、トラップ本体と封水筒とにより封水を形成し、排水トラップの下流側の臭気や害虫類などが室内に流入することを防止している。また、水が排水トラップ内に流入する開口には、毛髪などのごみ類を捕集するために、網目状のヘアキャッチャーが着脱可能に取り付けられている。このように、開口に取り付けられたヘアキャッチャーは、排水トラップ内に毛髪などのごみ類が流入することを抑えることができる。
【0003】
しかし、ヘアキャッチャーにより捕集された毛髪などは、水の流れで網目から押し出され、網に引っ掛かる場合がある。また、毛髪や汚れなどは、網目に蓄積していき、隣の網目から押し出された毛髪と固着する場合がある。すると、ヘアキャッチャーにより捕集された毛髪などを除去することが大きな手間となるという問題がある。また、網目が毛髪や汚れなどで詰まり、排水能力が低下するという問題がある。
【0004】
これに対して、開孔を有する底面と、底面より上方へと立設される周壁と、を備え、周壁が垂直方向に下から壁部領域と開孔領域とを有するヘアキャッチャーがある(特許文献1)。また、すり鉢の形状の底部に、周方向に多数の孔を穿設されてなる底メッシュ部と、底メッシュ部の上方に孔が形成されていない非メッシュ部と、非メッシュ部の上方に、周方向に多数の孔を穿設してなる中間メッシュ部とを備えるヘアキャッチャーがある(特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたヘアキャッチャーでは、底面開孔部の孔径は、開孔領域における開孔部の孔径と略同等である。また、特許文献2に記載されたヘアキャッチャーでは、底メッシュ部に設けられた孔の孔径は、中間メッシュ部に設けられた孔の孔径と略同等である。そのため、特許文献1および特許文献2に記載されたヘアキャッチャーでは、ヘアキャッチャーに溜まった所定量以上の水を確実に排出するという点においては、改善の余地がある。
【0006】
また、水抜き孔を有する保水部と、上部排水流出部と、排水が渦を巻くように流入させる排水導入部と、を備えたヘアキャッチャーがある(特許文献3)。しかし、特許文献3に記載されたヘアキャッチャーでは、保水部に入りきらない排水は、保水部の上部から延出した上部排水流出部から流出する一方で、保水部の水抜き孔と、上部排水流出部の孔と、は略同形状の円形孔である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−150111号公報
【特許文献2】特開2011−231507号公報
【特許文献3】特開2009−167783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、捕集した毛髪などを容易に除去することができる、あるいは溜まった水を確実に排出することができるヘアキャッチャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、排水トラップに設けられるヘアキャッチャーであって、底面に水抜き孔が形成され、流入する水が滞留可能なボウル部と、前記ボウル部から溢れた水を排水管に流出させるオーバーフロー流出部と、前記ボウル部より上部に形成され、前記排水トラップに係合可能な係合部と、を備え、前記係合部と前記ボウル部との間が前記オーバーフロー流出部となっており、前記水抜き孔は、前記底面を貫通する円形状の貫通孔であり、前記オーバーフロー流出部は、前記ボウル部と前記係合部とを連結し水平面に対して傾斜した複数の縦リブと、前記複数の縦リブ同士を水平方向に連結する横リブと、により形成された格子状の開口部を有し、前記開口部の開口面積は、前記水抜き孔の開口面積よりも広いことを特徴とするヘアキャッチャーである。
【0010】
このヘアキャッチャーによれば、毛髪等が水抜き孔やオーバーフロー流出部に引っ掛かったり、絡みついたりすることを抑えることができる。そのため、ヘアキャッチャーの手入れがより簡単となる。また、オーバーフロー流出部の格子状の開口部の開口面積が水抜き孔の開口面積よりも広いため、水がボウル部に溜まりやすく、また、ボウル部から溢れた水を開口部からより確実にオーバーフローさせることができる。これにより、水がヘアキャッチャーから溢れることを抑えることができる。
【0011】
また、オーバーフロー流出部が水平面に対して傾斜しているため、流入する水は、勢いをもってオーバーフロー流出部を通過する。そのため、毛髪等がオーバーフロー流出部に絡みつくことを抑えることができる。また、石鹸かすなどの汚れがオーバーフロー流出部に付着あるいは固着することを抑えることができる。これにより、オーバーフロー流出部に付着した汚れによって毛髪が捕捉されることを抑え、ボウル部から溢れた水を開口部からより一層確実にオーバーフローさせることができる。そのため、水がヘアキャッチャーから溢れることをより確実に抑えることができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記オーバーフロー流出部の下部の水平面に対する傾斜角度は、前記オーバーフロー流出部の上部の水平面に対する傾斜角度よりも大きいことを特徴とするヘアキャッチャーである。
【0013】
このヘアキャッチャーによれば、流入する水は、排水トラップの表面およびオーバーフロー流出部の傾斜に沿って流れる。そのため、水の流れの勢いにより、ボウル部に溜まった毛髪等がオーバーフロー流出部に戻ることを抑えることができる。これによれば、毛髪等がオーバーフロー流出部の開口部に引っ掛かったり、絡みついたりすることを抑えることができる。また、オーバーフロー流出部の開口部から毛髪等が流出することを抑えることができる。
【0014】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記ボウル部は、すり鉢状を呈し、前記ボウル部の下部の水平面に対する傾斜角度は、前記ボウル部の上部の水平面に対する傾斜角度よりも小さいことを特徴とするヘアキャッチャーである。
【0015】
このヘアキャッチャーによれば、毛髪等がボウル部において1箇所に集まりやすい。また、ボウル部に溜まる水に毛髪等を浮かせてひとまとまりにすることができる。これにより、毛髪等がオーバーフロー流出部の格子状の開口部に引っ掛かったり、絡みついたりすることをより一層抑えることができる。また、オーバーフロー流出部の開口部から毛髪等が流出することを抑えることができる。
【0016】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記縦リブは、前記ボウル部の内面まで延在し、前記ボウル部は、前記縦リブにより形成された凹凸を内面に有することを特徴とするヘアキャッチャーである。
【0017】
このヘアキャッチャーによれば、ボウル部の内面と毛髪等との接触面積を抑えることができる。そのため、ヘアキャッチャーを反転させる、あるいはひっくり返すことで捕集した毛髪等を容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、捕集した毛髪などを容易に除去することができる、あるいは溜まった水を確実に排出することができるヘアキャッチャーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態にかかるヘアキャッチャーが設けられた排水トラップを表す模式的断面図である。
図2】本実施形態にかかるヘアキャッチャーを表す模式的斜視図である。
図3】本実施形態にかかるヘアキャッチャーに捕集された毛髪等の状態を説明する模式的断面図である。
図4】ボウル部の内面における毛髪等の状態を説明する模式的断面図である。
図5】本実施形態のヘアキャッチャーと封水筒とが係合した状態を表す模式的断面図である。
図6】本実施形態のヘアキャッチャーを封水筒から取り外した状態を表す模式的斜視図である。
図7】本実施形態の取っ手の部分の水の流れを説明する模式的斜視図である。
図8】本実施形態の取っ手を拡大した模式的斜視図である。
図9】本実施形態の変形例にかかる取っ手を拡大した模式的斜視図である。
図10】本発明者が実施した実験の結果の一例を例示する写真図である。
図11】本発明者が実施した実験の結果の一例を例示する写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるヘアキャッチャーが設けられた排水トラップを表す模式的断面図である。
また、図2は、本実施形態にかかるヘアキャッチャーを表す模式的斜視図である。
【0021】
本実施形態にかかるヘアキャッチャー200は、例えば浴室の洗い場や美容室などのシャンプー台などに設置された排水トラップに設けられる。本実施形態では、ヘアキャッチャー200が浴室の洗い場に設置された排水トラップに設けられた場合を例に挙げて説明する。
【0022】
図1に表したように、本実施形態にかかるヘアキャッチャー200は、排水トラップ100に設けられている。排水トラップ100は、排水トラップ本体110と、封水筒120と、を備え、封水Wを形成することができる。これにより、排水トラップ100は、排水トラップ100の下流側の臭気や害虫類などが浴室内に流入することを防止している。
【0023】
ヘアキャッチャー200は、排水トラップ100の封水筒120に着脱可能に取り付けられ、浴室の洗い場から流入する毛髪や汚れなどのごみ類(以下、説明の便宜上「毛髪等」と称する)を捕集することができる。ヘアキャッチャー200は、ボウル部210と、オーバーフロー流出部220と、係合部230と、を備える。
【0024】
ボウル部210は、すり鉢状を呈し、流入する水が滞留可能とされている。すなわち、ボウル部210は、浴室の洗い場から流入する水を溜めることができる。図1に表したように、ボウル部210の側面は、水平面に対して傾斜している。ボウル部210の下部の側面の水平面に対する傾斜角度は、ボウル部210の上部の側面の水平面に対する傾斜角度よりも小さい。言い換えれば、ボウル部210の上部から下部へ向かうにつれて、ボウル部210の側面の水平面に対する傾斜角度は、漸減する。
【0025】
また、図2に表したように、ボウル部210は、底面部211に形成された水抜き孔213を有する。水抜き孔213は、底面部211を貫通する円形状の貫通孔を有する。底面部211には、複数の水抜き孔213が設けられている。水抜き孔213の数は、特に限定されるわけではない。
【0026】
オーバーフロー流出部220は、ボウル部210の上部から上方へ延出し、ボウル部210から溢れた水を排水管310(図1参照)に流出させる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0027】
図1に表したように、オーバーフロー流出部220の側面は、水平面に対して傾斜している。オーバーフロー流出部220の側面の水平面に対する傾斜角度は、例えば約15〜90°程度である。オーバーフロー流出部220の下部の側面の水平面に対する傾斜角度は、オーバーフロー流出部220の上部の側面の水平面に対する傾斜角度よりも大きい。言い換えれば、オーバーフロー流出部220の上部から下部へ向かうにつれて、オーバーフロー流出部220の側面の水平面に対する傾斜角度は、漸増する。
【0028】
係合部230は、オーバーフロー流出部220の上部に形成され、排水トラップ100の封水筒120と係合可能である。これについては、後に詳述する。
【0029】
図2に表したように、オーバーフロー流出部220は、縦リブ221と、横リブ223と、を有する。縦リブ221は、ボウル部210と係合部230とを連結している。また、オーバーフロー流出部220には、複数の縦リブ221が設けられている。横リブ223は、複数の縦リブ221同士を水平方向に連結している。複数の縦リブ221同士は、互いに離隔して設けられている。また、複数の横リブ223が設けられた場合には、その複数の横リブ223同士は、互いに離隔して設けられている。そのため、図2に表したように、オーバーフロー流出部220は、格子状の開口部225を有する。開口部225の開口面積は、水抜き孔213の開口面積よりも広い。
【0030】
図3は、本実施形態にかかるヘアキャッチャーに捕集された毛髪等の状態を説明する模式的断面図である。
また、図4は、ボウル部の内面における毛髪等の状態を説明する模式的断面図である。 なお、図3(a)は、水が流入しているときの毛髪等の状態を説明する模式的断面図である。図3(b)は、水の流入が少なくなったときの毛髪等の状態を説明する模式的断面図である。
【0031】
図3(a)に表したように、本実施形態にかかるヘアキャッチャー200は、浴室の洗い場から流入する毛髪等350を捕集することができる。ここで、図3に表した矢印A1のように水抜き孔213から排出される水の量が、流入する水の量よりも少ない場合には、ボウル部210に水が溜まる。すると、図3(a)に表したように、捕集された毛髪等350は、ボウル部210に溜まった水に浮くことができる。
【0032】
また、水抜き孔213の開口面積が開口部225の開口面積よりも狭いため、水がボウル部210に溜まりやすい。一方で、開口部225の開口面積が水抜き孔213の開口面積よりも広いため、図3(a)に表した矢印A7および矢印A8のように、ボウル部210から溢れた水を開口部225からより確実にオーバーフローさせることができる。これにより、水が洗い場へ溢れることを抑えることができる。これによれば、毛髪等350が水抜き孔213に引っ掛かったり、絡みついたりすることを抑えることができる。また、毛髪等350が水抜き孔213において固着することを抑えることができるため、水抜き孔213が毛髪等350により塞がれることを抑えることができる。
【0033】
また、図1および図2に関して前述したように、オーバーフロー流出部220の側面は、水平面に対して傾斜している。そのため、図1に表した矢印A3および矢印A4、ならびに図3に表した矢印A5および矢印A6のように、流入する水は、勢いをもってオーバーフロー流出部220を通過する。そのため、毛髪等350がオーバーフロー流出部220に絡みつくことを抑えることができる。また、石鹸かすなどの汚れがオーバーフロー流出部220に付着あるいは固着することを抑えることができる。これにより、オーバーフロー流出部220に付着した汚れによって毛髪が捕捉されることを抑え、ボウル部210から溢れた水を開口部225からより一層確実にオーバーフローさせることができる。そのため、水が洗い場へ溢れることをより確実に抑えることができる。
【0034】
また、図2に表したように、縦リブ221の内面(流入する水が流れる側の面)は、横リブ223の内面(流入する水が流れる側の面)よりも上方あるいは内側に位置する。言い換えれば、横リブ223は、縦リブ221よりも後退して設けられている。そのため、流入する水の流れが横リブ223により阻害されることを抑えることができる。これにより、毛髪等350がオーバーフロー流出部220に絡みついたり、オーバーフロー流出部220の開口部225から毛髪等350が流出することを抑えることができる。
【0035】
また、図1および図2に関して前述したように、オーバーフロー流出部220の下部の側面の水平面に対する傾斜角度は、オーバーフロー流出部220の上部の側面の水平面に対する傾斜角度よりも大きい。そのため、図1に表した矢印A3および矢印A4、ならびに図3に表した矢印A5および矢印A6のように、流入する水は、排水トラップ100の封水筒120の表面およびオーバーフロー流出部220の傾斜に沿って流れる。そのため、水の流れの勢いにより、ボウル部210に溜まった毛髪等350がオーバーフロー流出部220に戻ることを抑えることができる。これによれば、毛髪等350がオーバーフロー流出部220の開口部225に引っ掛かったり、絡みついたりすることを抑えることができる。また、オーバーフロー流出部220の開口部225から毛髪等350が流出することを抑えることができる。
【0036】
また、勢いをもって流入する水の流れにより、毛髪等350は、ボウル部210においてまとまる。つまり、毛髪がボウル部210でまとまり、汚れと一緒になる。さらに、図1および図2に関して前述したように、ボウル部210は、すり鉢状を呈する。また、図2に表したように、水抜き孔213は、底面部211の中央部には形成されていない。そして、ボウル部210の下部の側面の水平面に対する傾斜角度は、ボウル部210の上部の側面の水平面に対する傾斜角度よりも小さい。そのため、毛髪等350がボウル部210において1箇所に集まりやすい。また、ボウル部210に溜まる水に毛髪等350を浮かせてひとまとまりにすることができる。これにより、毛髪等350がオーバーフロー流出部220の格子状の開口部225に引っ掛かったり、絡みついたりすることをより一層抑えることができる。また、オーバーフロー流出部220の開口部225から毛髪等350が流出することを抑えることができる。
【0037】
続いて、流入する水の量が水抜き孔213から排出される水の量よりも少なくなると、図3(b)に表した矢印A11のように、ボウル部210に溜まっていた水は、水抜き孔213から排出される。すると、図3(b)に表したように、捕集された毛髪等350は、ボウル部210に乗った状態となる。
【0038】
ここで、図4(b)に表したように、ボウル部210の内面にリブなどが設けられず凹凸が形成されていない場合には、ボウル部210の内面と毛髪等350との接触面積は、より広い。そのため、まとまった毛髪等350は、ボウル部210の内面に付着しやすい。すると、排水トラップ100から外したヘアキャッチャー200を反転させても、捕集した毛髪等350を容易に除去できない場合がある。
【0039】
これに対して、図1および図2に表したように、本実施形態のオーバーフロー流出部220の縦リブ221は、ボウル部210の内面まで延在し、ボウル部210の内面に凹凸を形成している。そのため、図4(a)に表したように、毛髪等350は、ボウル部210の内面まで延在した縦リブ221に乗った状態となる。これによれば、ボウル部210の内面と毛髪等350との接触面積を抑えることができ、ヘアキャッチャー200を反転させる、あるいはひっくり返すことで捕集した毛髪等350を容易に除去することができる。
【0040】
図5は、本実施形態のヘアキャッチャーと封水筒とが係合した状態を表す模式的断面図である。
また、図6は、本実施形態のヘアキャッチャーを封水筒から取り外した状態を表す模式的斜視図である。
【0041】
本実施形態にかかるヘアキャッチャー200が排水トラップ100の封水筒120に取り付けられた状態では、図5に表した領域B1および領域B2のように、ヘアキャッチャー200の係合部230と、排水トラップ100の封水筒120と、が係合している。そのため、ヘアキャッチャー200を排水トラップ100から取り外す場合には、図6に表したように、ヘアキャッチャー200の上端部に設けられた取っ手240を利用し、ヘアキャッチャー200を傾けて斜め上方へスライドさせることで取り外すことができる。
【0042】
ここで、図5に表したように、毛髪等350が比較的長時間にわたって堆積すると、水抜き孔213が毛髪等350により塞がることがある。すると、毛髪等350を除去するときに、水がボウル部210に溜まっていることがある。このとき、本実施形態の係合部230が設けられていない場合には、ヘアキャッチャー200をわざわざ傾けてボウル部210に溜まった水を排出した後に毛髪等350を除去する必要がある。そのため、使用者などは、不快感を感ずる場合がある。
【0043】
これに対して、本実施形態によれば、水がボウル部210に溜まっていても、排水トラップ100からヘアキャッチャー200を取り外すときに傾けてスライドさせるため、ボウル部210に溜まった水が自然に排出される。そのため、使用者は、ヘアキャッチャー200をわざわざ傾けてボウル部210に溜まった水を排出する必要はなく、不快感を感ずることなく毛髪等350を除去することができる。
【0044】
図7は、本実施形態の取っ手の部分の水の流れを説明する模式的斜視図である。
また、図8は、本実施形態の取っ手を拡大した模式的斜視図である。
また、図9は、本実施形態の変形例にかかる取っ手を拡大した模式的斜視図である。
【0045】
本実施形態の取っ手240は、ヘアキャッチャー200の上端部に設けられている。また、取っ手240の上面245は、封水筒120の上面121に略沿うように形成されている。そのため、図7に表した矢印A12のように、取っ手240の上面245を流れる水の流れが取っ手240により阻害されることを抑えることができる。また、取っ手240の上面245を流れる水の流れに対する取っ手240の幅D1は、比較的長い。そのため、毛髪等350が取っ手240に引っ掛かったり、絡みついたりすることを抑えることができる。
【0046】
図8に表したように、取っ手240の側面241には、凹部が形成されている。そのため、使用者などは、取っ手240の側面241に形成された凹部を掴むことで、ヘアキャッチャー200を排水トラップ100から容易に取り外すことができる。
また、図9に表した変形例の取っ手240aのように、取っ手240aの上面245の下方には、取っ手240の一方の側面から他方の側面へ貫通する空洞部243が形成されていてもよい。この場合には、使用者などは、空洞部243に指などを引っ掛けることで、ヘアキャッチャー200を排水トラップ100から容易に取り外すことができる。
【0047】
図10および図11は、本発明者が実施した実験の結果の一例を例示する写真図である。
なお、図10は、毛髪等を除去する前の状態の一例を例示する写真図である。図11は、毛髪等を除去した後の状態の一例を例示する写真図である。
【0048】
図10に表した写真図は、捕集された毛髪等350がボウル部210に乗った状態を表している。すなわち、図10は、例えば図3(b)に関して前述した状態と同様の状態を表している。この状態から、ヘアキャッチャー200を取り外し反転させた状態は、図11に表した如くである。このように、ヘアキャッチャー200を反転させることで毛髪等350を容易に除去できることを確認することができた。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ボウル部210、オーバーフロー流出部220、および係合部230などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや水抜き孔213、縦リブ221、および横リブ223の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
100 排水トラップ、 110 排水トラップ本体、 120 封水筒、 121 上面、 200 ヘアキャッチャー、 210 ボウル部、 211 底面部、 213 水抜き孔、 220 オーバーフロー流出部、 221 縦リブ、 223 横リブ、 225 開口部、 230 係合部、 240、240a 取っ手、 241 側面、 243 空洞部、 245 上面、 310 排水管、 350 毛髪等
図1
図2
図3
図4
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図10
図11