(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
まず、本発明の一実施形態による半導体製造装置について説明する。
図1は半導体チップを製造するための半導体製造装置の概略構成を示す図である。
【0022】
図1に示す半導体製造装置は、基板の一例としてのウェハ上に複数の半導体チップを形成し、ウェハを切断して半導体チップを固片化するための製造装置であり、基板搬送装置が設けられた部分が示されている。
図1に示す半導体製造装置は、例えば、装置内部においてウェハを真空チャックテーブル上に固定し、ダイシングブレードによりウェハを切断してウェハに形成されている複数の半導体チップを固片化するための装置である。本実施形態による半導体製造装置は、
図1に示す半導体製造装置に限られず、ウェハに保護テープを貼り付ける工程など、他の製造工程を行なう製造装置であってもよい。
【0023】
図1に示す半導体製造装置10は、内部でウェハの処理を行なうための装置筐体12を有している。装置筐体12の内部でウェハを処理するため、装置筐体12の内部は清浄な環境に保たれており、外部から遮断されている。装置筐体12の外側には、ウェハが収容されたウェハカセット14を載置するロードボード16が取り付けられている。ロードボード16が取り付けられた位置には、ウェハを出し入れするための開口が設けられている。
【0024】
装置筐体12の内部には、ウェハを載置して固定するためのチャックテーブル20と、ウェハをウェハカセット14から取り出してチャックテーブル20まで搬送するための基板搬送装置であるウェハ搬送ロボット30が配置されている。ウェハ搬送ロボット30のアーム32の先端には、搬送ピック40が取り付けられている。
【0025】
搬送ピック40はロードボード16上のウェハカセット14内に収容されているウェハを真空吸着して保持し、そのままチャックテーブル20の位置まで搬送して、チャックテーブル20に受け渡す。チャックテーブル20は受け渡されたウェハを真空吸着して固定し、チャックテーブル20上でウェハに処理が行なわれる。
【0026】
ウェハ搬送ロボット30を用いてウェハの搬送を行なうために、搬送ピック40の真空吸着及びチャックテーブル20の真空吸着を制御するための真空吸着搬送制御装置50が設けられている。真空吸着搬送制御装置50は、負圧を発生するための真空ポンプ等の真空源52と、真空源52で発生した負圧を搬送ピック40及びチャックテーブルに導くための複数の吸引通路を有する。2本の吸引通路54A,54Bが真空源52と搬送ピック40を接続し、2本の吸引通路54C,54Dが真空源52とチャックテーブル20を接続している。
【0027】
なお、上述のウェハ搬送ロボット30、搬送ピック40、及び真空吸着制御装置50等により基板搬送装置が形成される。基板搬送装置は、チャックテーブル20を含むものとしてもよい。
【0028】
2本の吸引通路54A,54Bで真空源52と搬送ピック40を接続している理由は、後述のように、搬送ピック40の吸着部分が2つの領域(中央領域と外側領域)に分けられ、その各々に対して一本の吸引通路が接続されるためである。同様に、2本の吸引通路54C,54Dで真空源52とチャックテーブル20を接続している理由は、後述のように、チャックテーブル20の吸着部分が2つの領域(中央領域と外側領域)に分けられ、その各々に対して一本の吸引通路が接続されるためである。
【0029】
搬送ピック40に繋がる吸引通路54Aには、真空圧力センサ56Aとソレノイドバルブ58Aが設けられる。搬送ピック40に繋がる吸引通路54Bには、真空圧力センサ56Bとソレノイドバルブ58Bが設けられる。チャックテーブル20に繋がる吸引通路54Cには、真空圧力センサ56Cとソレノイドバルブ58Cが設けられる。チャックテーブル20に繋がる吸引通路54Dには、真空圧力センサ56Dとソレノイドバルブ58Dが設けられる。
【0030】
真空吸着搬送制御装置50は、ソレノイドバルブ58A,58B,58C,58Dの開閉を制御するためのコントローラ60を有している。真空圧力センサ56Aはソレノイドバルブ58Aと搬送ピック40の間に配置されており、検出した真空圧力をコントローラ60に供給する。真空圧力センサ56Bはソレノイドバルブ58Bと搬送ピック40の間に配置されており、検出した真空圧力をコントローラ60に供給する。真空圧力センサ56Cはソレノイドバルブ58Cとチャックテーブル20の間に配置されており、検出した真空圧力をコントローラ60に供給する。真空圧力センサ56Dはソレノイドバルブ58Dとチャックテーブル20の間に配置されており、検出した真空圧力をコントローラ60に供給する。
【0031】
ここで、搬送ピック40の構造について説明する。
図2は搬送ピック40を吸着面側から見た平面図である。搬送ピック40は、吸着するウェハとほぼ等しい外径を有する円盤状の本体42を有する。本体42の一側から取り付け部44が延在しており、ウェハ搬送ロボット30のアーム32に取り付けられるようになっている。
【0032】
本体42の吸着面42aには、多数の吸着孔42bが設けられており、吸着孔42bに導入される負圧によりウェハを吸着面42aに吸着して保持することができる。吸着面42aは、外径D1を有する円形の中央領域46aと中央領域46aの外側で外径D2を有する環状の外側領域46bに分割されている。中央領域46aに設けられた吸着孔42bは吸引通路54Aにのみ繋がっており、第1の吸着経路を形成している。一方、外側領域46bに設けられた吸着孔42bは吸引通路54Bにのみ繋がっており、第2の吸着経路を形成している。本実施形態では、後述するように、第1の吸着経路での吸着と第2の吸着経路での吸着を制御することで、大きな反りのあるウェハでも確実に吸着して保持することができる。
【0033】
図3は
図2のIII−III線に沿った搬送ピック40の簡略断面図である。
図4は
図3のA部拡大図である。
【0034】
本体42の内部に、中央領域46aに対応する第1の吸着経路が形成され、外側領域46bに対応する第2の吸着経路が形成されている。
図3では第1の吸着経路及び第2の吸着経路は簡略化のためハッチングで示されており、
図4において具体的な構造が示されている。
【0035】
本体42は、本体ベース42Aに吸着カバー42Bを貼り合わせて形成されている。本体ベース42Aの表面が吸着面42aとなり、吸着孔42bは本体ベース42Aに形成されている。
【0036】
本体ベース42Aの中央領域46aに相当する部分には、吸着溝42Aaが形成されており、吸着溝42Aaは吸着カバー42Bにより塞がれて閉空間が形成され、この空間に、中央領域46aに設けられている吸着孔42bが繋がっている。吸着溝42Aaが吸着カバー42Bにより塞がれて形成された閉空間には、取り付け部44に延在する通路溝42Ab(
図2参照)が接続されている。通路溝42Abの反対端は取り付け部44において、吸着面42a側に開口している。搬送ピック40がウェハ搬送ロボット30のアームに取り付けられると、通路溝42Abの開口が吸引通路54Aに接続される。これにより、吸引通路54A、通路溝42Ab、及び吸着溝42Aaを介して中央領域46aの吸着孔42bに負圧が導入され、吸着孔42bの吸引作用によりウェハの中央部分を吸着することができる。
【0037】
一方、本体ベース42Aの外側領域46bに相当する部分には、吸着溝42Acが形成されており、吸着溝42Acは吸着カバー42Bにより塞がれて閉空間が形成され、この空間に、外側領域46cに設けられている吸着孔42bが繋がっている。吸着溝42Acが吸着カバー42Bにより塞がれて形成された閉空間には、取り付け部44に延在する通路溝42Ad(
図2参照)が接続されている。通路溝42Adの反対端は取り付け部44において、吸着面42a側に開口している。搬送ピック40がウェハ搬送ロボット30のアームに取り付けられると、通路溝42Adの開口が吸引通路54Bに接続される。これにより、吸引通路54B、通路溝42Ad、及び吸着溝42Acを介して外側領域46bの吸着孔42bに負圧が導入され、吸着孔42bの吸引作用によりウェハの中央部分の周囲の外周部分を吸着することができる。
【0038】
チャックテーブル20も搬送ピック40と同様な構造を有している。
図5はチャックテーブル20の一部の拡大断面図である。チャックテーブル20は、チャックテーブルトップ部20Aとチャックテーブルベース部20Bとを有する。チャックテーブルトップ部20Aの上面は、ウェハを吸着して固定する吸着面20aとなっている。吸着面20aには、多数の吸着孔20bが開口している。
【0039】
チャックテーブル20も、搬送ピック40と同様に、中央領域26aと外側領域26bを有している。中央領域26aにおける吸着孔20bは、チャックテーブルトップ部20Aに形成された吸着溝20Aaに繋がっており、搬送ピック40と同様に通路溝を介して吸引通路54Cに接続されている。これにより、吸引通路54C、通路溝、及び吸着溝20Aaを含む第3の吸着経路を介して中央領域26aの吸着孔20bに負圧が導入され、吸着孔20bの吸引作用によりウェハの中央部分を吸着することができる。また、外側領域26bにおける吸着孔20bは、チャックテーブルトップ部20Aに形成された吸着溝20Acに繋がっており、搬送ピック40と同様に通路溝を介して吸引通路54Dに接続されている。これにより、吸引通路54D、通路溝、及び吸着溝20Acを含む第4の吸着経路を介して外側領域26bの吸着孔20bに負圧が導入され、吸着孔20bの吸引作用によりウェハの中央部分の周囲の外周部分を吸着することができる。
【0040】
次に、上述の半導体製造装置10において、基板の一例としてのウェハを搬送する基板搬送方法について説明する。
【0041】
まず、基板搬送方法において、ウェハをウェハカセット14から取り出して搬送する工程について説明する。
図6はウェハをウェハカセット14から取り出す動作のフローチャートである。
図7は取り出し動作の各ステップにおけるウェハの状態を示す図である。ウェハの回路形成面側には複数の半導体チップが形成されているものとする。なお、以下のウェハ取り出し動作におけるウェハの吸着保持動作は、主にコントローラ60の制御の下で行なわれる。
【0042】
ウェハ取り出し動作が開始されると、先ず、ステップS1において、ウェハ搬送ロボット30が動作して搬送ピック40がウェハカセット14内のウェハの上まで移動し、ウェハに向けて下降し始める(
図7(a)参照)。ここで、取り出そうとしているウェハには、
図7(a)に示すように反りが発生しており、中央部分が持ち上がった状態でウェハカセット14に収容されているものとする。なお、ウェハの下面(回路形成面)側には保護テープが貼り付けられている。
【0043】
続いて、ステップS2において、搬送ピック40の吸着面42aがウェハの中央部分の一番高い部分に接触する(
図7(b)参照)。この時点で、第1の吸着経路に負圧を導入する。具体的には、コントローラ60は、真空ポンプ52を駆動し且つソレノイドバルブ58Aを開くことにより、第1の吸着経路に負圧を導入する。これにより、搬送ピック40の中央領域46aに開口している吸着孔42bに吸引作用が発生する。
【0044】
ステップS2において吸着孔42bに吸引作用が発生すると、ウェハの中央部分は吸着孔42bに吸引される。これにより、ステップS3において、ウェハの中央部分は吸着面42aに吸着される。吸着面42aは平坦な面であるので、ウェハの中央部分は吸着面42aに沿って平坦になる(
図7(c)参照)。この時点では、ウェハの外周部分は沿ったままであり、中央部分だけが平坦化されている。
【0045】
続いて、ステップS4において、搬送ピック40は更に下降して最下降位置で停止する。最下降位置は、搬送ピック40とウェハカセット14との間の距離が、保護テープを含んだウェハの厚みより僅かに大きな距離となる位置である。この時点では、ウェハの外周部分が搬送ピック40の吸着面42aによって押され、吸着面42aに沿って平坦化される。そこで、第2の吸着経路をオンとしてウェハの外周部分を吸着面42aに吸着する。これにより、ウェハ全体が吸着面42aに吸着され、平坦化される(
図7(d)参照)。このように、搬送ピック40へのウェハの吸着は中央部分から外周部分に向けて進行するので、反りが矯正されてウェハが広がるときでも、吸着保持などによりウェハの引っ掛かりが発生することが無い。
【0046】
続いて、ステップS5において、搬送ピックアップ40を持ち上げる。ウェハ全体が吸着面42aに吸着されているので、ウェハは搬送ピック40に保持された状態となる(
図7(e)参照)。
【0047】
次に、ステップS6において、真空圧力センサ56Aにより第1の吸着経路の真空度を確認する。すなわち、真空圧力センサ56Aにより第1の吸着経路の真空度を検出し、第1の吸着経路が所定の真空度より大きいか否かを判定する。ここで、真空度がより大きいということは、絶対真空をゼロとしたときの絶対圧力がより小さいことを意味する。所定の真空度とは、第1の吸着経路の吸着孔42aがウェハにより塞がれたときに、真空源52での真空引きにより第1の吸着経路(吸引通路54A)に発生すべき真空度、あるいはそれに近い真空度を意味する。
【0048】
ステップS6において第1の吸着経路が所定の真空度より大きくないと判定されると(ステップS6のNO)、処理はステップS4に戻り、再度ウェハの吸着が行なわれる。ステップS6において第1の吸着経路が所定の真空度より大きくないと判定される場合は、ウェハが吸着面42aから離れて再び反った状態となっていると判断することができる。すなわち、第1の吸着経路が所定の真空度より大きくないと判定される場合は、
図7(f)に示されるように、ウェハが大きく反ってしまって、中央領域の部分も平坦ではなくなり、ウェハにより吸着孔42aを塞ぐことができない状態であると判断することができる。このような状態では、吸着孔42aから空気が流れ込み、第1の吸着経路は所定の真空度に到達しない。また、当然のことながら、第2の吸着経路も所定の真空度に到達しない。そこで、ステップS4に戻って、再びウェハの吸着をやり直す。
【0049】
一方、ステップS6において第1の吸着経路が所定の真空度より大きいと判定されると(ステップS6のYES)、処理はステップS7に進む。ステップS7では、真空圧力センサ56Bにより第2の吸着経路の真空度を確認する。すなわち、真空圧力センサ56Bにより第2の吸着経路の真空度を検出し、第2の吸着経路が所定の真空度より大きいか否かを判定する。所定の真空度とは、第2の吸着経路の吸着孔42aがウェハにより塞がれたときに、真空源52での真空引きにより第2の吸着経路(吸引通路54B)に発生すべき真空度、あるいはそれに近い真空度を意味する。
【0050】
ステップS7において第2の吸着経路が所定の真空度より大きくないと判定されると(ステップS7のNO)、処理はステップS8に進む。第2の吸着経路が所定の真空度より大きくないと判定された場合は、
図7(g)に示すように、ウェハの外周部分が反っていて、吸着面42aから離れてしまっている状態であると判断することができる。すなわち、ウェハの中央領域のみが吸着されて搬送ピック40に保持されている状態である。このような状態では、ウェハ吸着保持力が弱いため、小さな衝撃でウェハが搬送ピック40から離れて落下してしまうおそれがある。
【0051】
そこで、ステップS8では、コントローラ60は、ウェハ搬送ロボット30による搬送ピック40の移動速度、すなわちウェハの搬送速度を低速に設定する。低速とは、通常の搬送速度より小さな速度であり、ウェハの中央部分のみが吸着保持された状態で搬送ピック40を加減速する際又は停止する際に、搬送ピック40からウェハが離れてしまうような衝撃や外力が発生しないような速度である。この低速は予め実験等により決定しておくことが好ましい。
【0052】
ステップS8での処理が終了すると、処理はステップS10に進み、搬送ピック40を設定された低速で移動してウェハの搬送を開始する。
【0053】
一方、ステップS8において第2の吸着経路が所定の真空度より大きい判定されると(ステップS7のYES)、処理はステップS9に進む。第2の吸着経路が所定の真空度より大きいと判定された場合は、
図7(h)に示すように、ウェハの中央部分も外周部分も吸着されてウェハ全体が吸着面42aに吸着されている状態であると判断することができる。すなわち、ウェハ全体が吸着されて搬送ピック40に保持されている状態である。このような状態では、ウェハ吸着保持力が強いため、大きな衝撃が搬送ピックにかかってもウェハは搬送ピック40から離れて落下してしまうおそれがない。
【0054】
そこで、ステップS9では、コントローラ60は、ウェハ搬送ロボット30による搬送ピック40の移動速度、すなわちウェハの搬送速度を高速に設定する。高速とは、通常の搬送速度であり、ウェハ全体が吸着保持された状態で搬送ピック40を加減速する際又は停止する際に、搬送ピック40からウェハが離れてしまうような衝撃や外力が発生しないような速度である。この高速は予め実験等により決定しておくことが好ましい。
【0055】
ステップS9での処理が終了すると、処理はステップS10に進み、搬送ピック40を設定された高速で移動してウェハの搬送を開始する。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、反りが発生しているウェハであっても、部分的に吸着を行ないながら且つウェハを平坦化しながらウェハ全体を吸着するので、反りを矯正しながらウェハ全体を吸着することができる。また、反りのために吸着が不完全となり、ウェハの一部のみの吸着となった場合には、吸着力に見合った低速の搬送速度にすることで、ウェハを落下させずに搬送することができる。
【0057】
本実施形態では搬送ピック40の吸着面42aを2つの領域に分割してそれぞれに対して独立した吸着経路を設けているが、吸着面42aを3つ又はそれ以上の同心円状の領域に分割し、その各々に対して独立した吸着経路を設けてもよい。
【0058】
例えば、反発力の大きいWLPのウェハの搬送において、搬送ピックの真空吸着経路を複数設け、ウェハの平坦化を中心部から周囲に向けて進行させるようにする。また、搬送ピックの上下動によって、ウェハの平坦化を中心部から周囲に向けて進行させるようにする。これにより、反発力の大きいWLPのウェハであっても確実に搬送ピックで吸着保持できるようになる。そして、複数の真空吸着経路で検出した圧力情報を利用して吸着状態を把握しながら再吸着動作を行なったり、搬送速度を変更したりすることで、より確実で安定した搬送を実現することができる。また、ウェハに形成された半導体チップに及ぼすストレスを抑えて半導体チップの品質を向上させることができる。
【0059】
次に、上述の半導体製造装置10において、搬送ピック40で搬送してきたウェハをチャックテーブル20に載置して固定する工程について説明する。
図8はウェハをチャックテーブル20に載置して固定する動作のフローチャートである。
図9はウェハをチャックテーブル20に載置して固定するウェハ吸着固定動作の各ステップにおけるウェハの状態を示す図である。ウェハの回路形成面側には複数の半導体チップが形成されており、回路形成面側に保護テープが貼り付けられているものとする。なお、以下に説明するウェハ吸着固定動作は、主にコントローラ60の制御の下で行なわれる。
【0060】
ウェハ搬送ロボット30により、ウェハを吸着保持した搬送ピック40がチャックテーブル20の真上まで移動すると、ウェハ載置固定動作が開始されると、先ず、ステップS11において、搬送ピック40はチャックテーブル20に向けて下降し始める(
図9(a)参照)。ここで、載置しようとしているウェハが反りが発生しているウェハであっても、搬送ピック40にウェハ全体が吸着されているので、
図9(a)に示すように、反りは矯正されて平坦化されている。
【0061】
搬送ピック40はチャックテーブル20に向けて下降し、ステップS12において、最下降位置において停止する。搬送ピック40が最下降位置まで下降すると、搬送ピック40の吸着面42aに吸着保持されているウェハの保護テープは、チャックテーブル20の吸着面20aに接触するか非常に近接した状態となる(
図9(b)参照)。そこで、チャックテーブル20の第3の吸着経路をONとしてウェハの吸着を開始してから、搬送ピック40の第1の吸着経路と第2の吸着経路をOFFとしてウェハの吸着を解除する。これにより、ウェハの中央部分はチャックテーブル20の吸着面20aの中央領域に設けられた吸着孔20bにより吸引される。
【0062】
続いて、第3の吸着経路がONとなってから一定時間後に、ステップS13において、チャックテーブル20の第4の吸着経路をONとしてから、搬送ピック40の第1の吸着経路と第2の吸着経路で真空破壊ブローを行なう。これにより、ウェハの全体は搬送ピック40から離れ、ウェハの中央部分がチャックテーブル20に吸着されてから外周部分も吸着される(
図9(c)参照)。このように、チャックテーブル20へのウェハの吸着は中央部分から外周部分に向けて進行するので、反りが矯正されてウェハが広がるときでも、吸着保持などによりウェハの引っ掛かりが発生することが無い。
【0063】
続いて、ステップS14において、搬送ピック40を上昇させ、真空破壊ブローをOFFとする。ウェハはチャックテーブル20に吸着固定されたままチャックテーブル20上に残る(
図9(d)参照)。
【0064】
続いて、ステップS15において、真空圧力センサ56C及び56Dにより第3の吸着経路及び第4の吸着経路の真空度を確認する。すなわち、真空圧力センサ56Cにより第3の吸着経路の真空度を検出し、第3の吸着経路が所定の真空度より大きいか否かを判定するとともに、真空圧力センサ56Dにより第4の吸着経路の真空度を検出し、第4の吸着経路が所定の真空度より大きいか否かを判定する。
【0065】
第3の吸着経路と第4の吸着経路のいずれかの真空度が所定の真空度より大きく無いと判定されると(ステップS15のNO)、処理はステップS12に戻り、搬送ピック40を最下降位置まで下降させてから、再度チャックテーブル20へのウェハの吸着を行なう。例えば、第4の吸着経路の真空度が所定の真空度より大きく無いと、
図9(e)に示すように、ウェハの外周部分が完全に吸着されていない状態であると判断することができる。そこで、搬送ピック40でウェハを押して平坦化しながら再度吸着を行うこととする。
【0066】
一方、第3の吸着経路と第4の吸着経路の両方の真空度が所定の真空度より大きいと判定されると(ステップS15のYES)、処理はステップS16に進む。第3の吸着経路と第4の吸着経路の両方の真空度が所定の真空度より大きい場合は、
図9(f)に示すように、ウェハ全体がチャックテーブルに吸着固定されていると判断することができるので、ステップS16においてウェハへの処理を開始する。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、反りが発生しているウェハであっても、部分的に吸着を行ないながら平坦化したウェハをそのままチャックテーブル20に載置し、平坦化された状態を保ちながらウェハ全体をチャックテーブル20で吸着するので、反りを矯正しながらウェハ全体を吸着することができる。
【0068】
本実施形態ではチャックテーブル20の吸着面20aを2つの領域に分割してそれぞれに対して独立した吸着経路を設けているが、吸着面30aを3つ又はそれ以上の同心円状の領域に分割し、その各々に対して独立した吸着経路を設けてもよい。
【0069】
例えば、反発力の大きいWLPのウェハの吸着固定において、チャックテーブルの真空吸着経路を複数設け、ウェハの吸着を中心部から周囲に向けて進行させるようにする。また、搬送ピックによりウェハを押圧して平坦化しながら、ウェハの吸着を中心部から周囲に向けて進行させるようにする。これにより、反発力の大きいWLPのウェハであっても確実にチャックテーブルに吸着固定できるようになる。そして、複数の真空吸着経路で検出した圧力情報を利用して吸着状態を把握しながら再吸着動作を行なうことで、より確実で安定した吸着固定を実現することができる。
【0070】
以上のように、本明細書は以下の事項を開示する。
(付記1)
基板を吸着保持しながら搬送する搬送ピックと、
前記搬送ピックによる基板の吸着保持動作を制御する制御部と
を有し、
前記搬送ピックの吸着面は複数の領域に分割され、該複数の領域の各々に対して吸着経路が設けられ、
前記制御部は、前記吸着経路へ導入する負圧を制御することで、前記搬送ピックによる基板の吸着保持動作を制御する基板搬送装置。
(付記2)
付記1記載の基板搬送装置であって、
前記吸着経路は吸引通路を介して真空源に接続され、
該吸引通路に開閉弁が設けられ、
前記制御部は、前記真空源の動作と前記開閉弁の動作を制御して、前記搬送ピックによる基板の吸着保持動作を制御する基板搬送装置。
(付記3)
付記2記載の基板搬送装置であって、
前記吸引通路に真空圧力センサが設けられ、
前記制御部は、前記真空圧力センサが検出した圧力に基づいて、前記基板の吸着状態を判断する基板搬送装置。
(付記4)
付記2記載の基板搬送装置であって、
前記吸引通路に真空圧力センサが設けられ、
前記制御部は、前記真空圧力センサが検出した圧力に基づいて、前記基板の搬送速度を設定する基板搬送装置。
(付記5)
付記1乃至4のうちいずれか一項記載の基板搬送装置であって、
前記搬送ピックにより搬送されてきた基板を吸着固定するチャックテーブルをさらに有し、
前記チャックテーブルの吸着面は複数の領域に分割され、該複数の領域の各々に対して吸着経路が設けられた基板搬送装置。
(付記6)
付記5記載の基板搬送装置であって、
前記チャックテーブルの吸着経路は吸引通路を介して真空源に接続され、
該吸引通路に開閉弁が設けられ、
前記制御部は、前記真空源の動作と前記開閉弁の動作を制御して、前記チャックテーブルによる基板の吸着固定動作を制御する基板搬送装置。
(付記7)
付記6記載の基板搬送装置であって、
前記吸引通路に真空圧力センサが設けられ、
前記制御部は、前記真空圧力センサが検出した圧力に基づいて、前記基板の前記チャックテーブルへの吸着状態を判断する基板搬送装置。
(付記8)
付記1乃至7のうちいずれか一項記載の基板搬送装置を有する半導体製造装置。
(付記9)
搬送ピックの吸着面の中央領域を基板に接触させて、該中央領域で基板を吸着し、
前記搬送ピックを下降させて、前記中央領域の周囲の外側領域を前記基板に接触させ、前記外側領域で前記基板を吸着し、
前記基板を吸着保持した搬送ピックを移動して前記基板を搬送する基板搬送方法。
(付記10)
付記9記載の基板搬送方法であって、
前記外側領域で前記基板を吸着した後、前記搬送ピックを上昇させ、
前記中央領域の吸着孔に繋がる吸着経路内の真空圧力が、所定の真空圧力より大きく無いときは、前記中央領域での吸着と前記外側領域での吸着をやり直す基板搬送方法。
(付記11)
付記9記載の基板搬送方法であって、
前記外側領域で前記基板を吸着した後、前記搬送ピックを上昇させ、
前記中央領域の吸着孔に繋がる吸着経路内の真空圧力が、所定の真空圧力より大きく、且つ 前記外側領域の吸着孔に繋がる吸着経路内の真空圧力が所定の真空圧力より大きく無いときには、前記搬送ピックの移動速度を通常時の移動速度より低い低速に設定する基板搬送方法。
(付記12)
付記9記載の基板搬送方法であって、
前記外側領域で前記基板を吸着した後、前記搬送ピックを上昇させ、
前記中央領域の吸着孔に繋がる吸着経路内の真空圧力が、所定の真空圧力より大きく、且つ 前記外側領域の吸着孔に繋がる吸着経路内の真空圧力が所定の真空圧力より大きいときには、前記搬送ピックの移動速度を通常時の移動速度に設定する基板搬送方法。