(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜可能である。
【0012】
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、感光体ドラム表面上の電位リセットを行うために所定の照射光量の除電光を照射する除電光装置を備え、画像形成プロセスに除電工程を有する画像形成装置において、作製した複数の感光体ドラムサンプルの表面電位の測定結果に基づき、例え、装置の小型化、高速化に伴い、転写装置と帯電装置との間のスペースが小さくなり、除電工程において十分な除電効果が得られない場合においても、ゴーストの発生を低減することが可能な画像形成装置について説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのプリンタ100の概略構成を説明するための概略断面図である。プリンタ100は、電子写真プロセスによるカラー画像を被転写体としての印字媒体Pに印刷することが可能なカラープリンタである。
【0014】
プリンタ100は、印刷前の印字媒体Pを収容する給紙カセット10を始点とし、プリンタ100の外筺を利用して形成された排出部19を終点とする略S字状に形成された用紙搬送路に沿って、給紙ローラ11、搬送ローラ12、搬送ローラ13、転写ベルト14、定着装置16、搬送ローラ17、及び排出ローラ18を備える。
【0015】
そして、転写ベルト14の上面部には、用紙搬送路上流側から順にブラック(k)、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)の現像剤としてのトナーTを収容した4つの独立した画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15cがプリンタ100本体から着脱自在に装着されている。また、後述する各画像形成ユニットが備える感光体としての感光体ドラム1の直上には、入力された印字データに基づく光を感光体ドラム1表面に照射する露光手段としての露光LEDヘッド20が配置されているとともに、転写ベルト14の上面部を介した感光体ドラム1と対峙する位置には、感光体ドラム1に形成された現像剤像たるトナー像を印字媒体Pに転写させる転写手段としての転写ローラ21が配置されている。
【0016】
給紙カセット10は、その内部に印字媒体Pを積層した状態で収納し、プリンタ100下部に着脱自在に装着されている。そして、給紙カセット10の上部に設けられた給紙ローラ11は、給紙カセット10に収納された印字媒体Pをその最上部から1枚ずつ取り出して用紙搬送経路に繰り出す。
【0017】
搬送ローラ12は、給紙ローラ11により繰り出された印字媒体Pを挟持搬送する。また、搬送ローラ13は、搬送ローラ12により搬送された印字媒体Pの斜行を矯正し、印字媒体Pを転写ベルト14に搬送する。
【0018】
転写ベルト14は、印字媒体Pを静電吸着して
図1中矢印方向へ搬送する無端のベルト部材である。
【0019】
画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15cは、露光LEDヘッド20から照射された光によって感光体ドラム1表面に形成された静電潜像にトナーTを付着させてトナー像を形成する。画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15cについては、後ほど詳細に説明する。
【0020】
定着装置16は、画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15c以降の用紙搬送経路下流側に配置されており、定着ローラ161、加圧ローラ162、及びサーミスタ163等を備える。定着ローラ161は、例えば、アルミニウム等からなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被服することによって形成されている。そして、その芯金内には、例えば、ハロゲンランプ等のヒータが設けられている。加圧ローラ162は、例えば、アルミニウム等からなる芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFAを被覆した構成であり、バネから付与された加圧力により定着ローラ161との間に圧接部が形成されるように配設されている。サーミスタ163は、定着ローラ161の表面温度検出手段であり、定着ローラ161の近傍に非接触で配置されている。サーミスタ163が検出した定着ローラ161の表面温度の検出結果に基づき、上記ヒータを制御することで、定着ローラ161の表面温度は所定の温度に維持される。画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15cにおいて形成されたトナー像が転写された印字媒体Pが所定の温度に維持された定着ローラ161と加圧ローラ162とから形成される圧接部を通過することにより、印字媒体P上のトナーTに熱、及び圧力が付与され、当該トナーTは溶融し、トナー像が定着される。
【0021】
搬送ローラ17は、定着装置16を通過した印字媒体Pを挟持搬送する。また、排出ローラ18は、搬送ローラ17により搬送された印字媒体Pをプリンタ100の外筺を利用して形成された排出部19に排出する。
【0022】
露光LEDヘッド20は、LED素子とレンズアレイとを有するLEDヘッドであり、印字データに基づき該LED素子から照射される光が感光体ドラム1の表面に結像する位置となるように配置されている。
【0023】
転写ローラ21は、転写ベルト14の上面部を介した感光体ドラム1と対峙する位置に配置され、高圧電源から印加された所定のバイアス電圧に基づき感光体ドラム1に形成されたトナー像を印字媒体Pに転写させる。
【0024】
次に、
図2を用いて画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15cについて説明する。
図2は、画像形成ユニットの構成を説明するための概略構成図である。なお、画像形成ユニット15k、画像形成ユニット15y、画像形成ユニット15m、画像形成ユニット15cは収容されるトナーTのみが異なり、その他の構成は全て同一である。したがって、以下の説明においては、画像形成ユニット15kを一例とし、トナーTの各色を示すk、y、m、cの添字を省略して説明する。
【0025】
画像形成ユニット15は、露光LEDヘッド20から照射された光によって感光体ドラム1表面に形成された静電潜像にトナーTを付着させてトナー像を形成する。このような画像形成ユニット15は、トナーカートリッジ7とドラムカートリッジ8とを備える。
【0026】
トナーカートリッジ7は、トナーTを収容する箱型容器であり、容器底部に設けられた供給口を介し収容したトナーTをドラムカートリッジ8内のスポンジローラ5に供給する。
【0027】
ドラムカートリッジ8は、感光体としての感光ドラム1と、帯電手段としての帯電ローラ2と、現像手段としての現像ローラ3、現像ブレード4、及びスポンジローラ5と、クリーニングブレード6と、除電手段としての除電光装置30とを備える。
【0028】
感光体ドラム1は、導電性支持体と感光層としての光導電層とによって構成された有機感光体である。そして、感光体ドラム1は、
図2中の矢印方向に回転しながら、露光LEDヘッド20から照射された光に基づく静電潜像を形成する。なお、感光体ドラム1の具体的な製造法等については、後ほど詳細に説明する。
【0029】
帯電ローラ2は、例えば、ステンレス等の金属シャフトと半導電性エピクロロヒドリンゴムとによって構成されている。帯電ローラ2は、感光体ドラム1に対して所定の圧力をもって当接しており、
図2中の矢印方向に回転しながら、高圧電源から印加された所定の電圧に基づき感光体ドラム1の表面を一様均一に帯電させる。
【0030】
現像ローラ3は、例えば、ステンレス等の金属シャフトの外周にカーボンブラックを分散させたウレタンゴムを配設し、その表面はイソシアネート処理が施されている。そして、現像ローラ3は、感光体ドラム1の表面に圧接するように配置され、
図2中の矢印方向に回転しながら、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像にトナーTを回転供給し、トナー像を反転現像する。
【0031】
現像ブレード4は、例えば、ステンレス等の金属板から構成された板状部材であり、その一端は現像ローラ3の表面の所定位置に当接する位置に配置されている。現像ブレード4は、供給ローラ5から供給されたトナーTの層厚を規制する。
【0032】
スポンジローラ5は、例えば、ステンレス等の金属シャフトの外周に半導電性発泡シリコーンスポンジ層を配設した構成を有している。スポンジローラ5は、現像ローラ3の表面に圧接するように配置され、
図2中の矢印方向に回転しながら、トナーカートリッジ7から供給されたトナーTを攪拌帯電させるともに、帯電したトナーTを現像ローラ3に供給する。
【0033】
クリーニングブレード6は、例えば、ウレタン製のゴム部材であり、その一端は感光体ドラム1表面の所定位置に当接する位置に配置されている。クリーニングブレード6は、感光体ドラム1の表面に残留するトナーTを掻き取ることで感光体ドラム1の表面をクリーニングする。
【0034】
除電光装置30は、レンズアレイと、該レンズアレイの入射面に沿って略等間隔に複数配置されたLED素子やレーザ素子等からなる光源と、これらの複数の光源の発光タイミング、発光量を制御する除電光制御部とを備える。ここで、レンズアレイは、入射面を介して入射された光を除電光として出射する出射面を備え、少なくとも該出射面の長手方向長さは感光体ドラム1の軸方向長さと略同一の長さを有するように構成される。なお、除電光装置30は、照射する除電光が感光体ドラム1表面の静電潜像形成領域全体をカバーできる位置となるように帯電ローラ2とクリーニングブレード6との間に配置される。
【0035】
次に、本実施形態に係る感光体ドラム1の構成について説明する。
図3は、感光体ドラム1の構成を説明するための概略構成図である。
【0036】
感光体ドラム1は、ドラムギア22、ドラムフランジ23、そして、円筒型に加工された導電性支持体25表面から順に、ブロッキング層26、並びに電荷発生層27、電荷輸送層28からなる感光層24が積層された構造となっている。
【0037】
このような構成を有する感光体ドラム1の製造工程について
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
まず、Step1において、導電性支持体のの原材料であるアルミ合金、本実施形態においては、アルミニウムにケイ素等を混合した合金であるJIS−A300系のアルミニウム合金ピレットをポートホール法にて押出し円筒管に加工する。
【0039】
次に、Step2において、Step1で得られた押出し円筒管を切削加工にて、所定の肉厚、外径寸法に加工する。本実施形態では、外径を30mm、長さ246mm、肉厚0.75mmとしたアルミ素管を導電性支持体25とした(以下、アルミ素管25と称する)。
【0040】
そして、Step3において、Step2で得られたアルミ素管25の表面洗浄処理を行い、アルミ素管25表面の油分、空気中の各種塵埃等を十分に除去する。
【0041】
次に、十分に洗浄したアルミ素管25表面上にブロッキング層26を形成する。本実施形態においては、ブロッキング層26の層形成処理として、陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔処理を行った。形成された陽極酸化皮膜をブロッキング層26とした(以下、アルマイト層26と称する)(Step4)。
【0042】
Step5において、Step4で得られたアルマイト層26上に電荷発生層27を形成する。電荷発生層27の形成は、あらかじめ調合された電荷発生層用塗布液で満たされた液漕に、アルマイト層26が形成されたアルミ素管25を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。本実施形態においては、約0.3μmの膜厚となるように電荷発生層27を塗布した。なお、本実施形態で用いた電荷発生層用塗布液は、オキソチタニウムフタロシアニン10部を1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行って作製した顔料分散液160部に、ポリビニルブチラール5部を1,2−ジメトキシエタン95部に溶解した固形分濃度5%のバインダー溶液100部を混ぜ合わせ、最終的に固形分濃度4%、1,2−ジメトキシエタン:4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2=9:1となるように調整した液体を電荷発生層用分散液とした。
【0043】
そして、アルマイト層26上に電荷発生層27が塗布されたアルミ素管25を乾燥することで、電荷発生層27内の余分な溶媒を除去し、アルマイト層26上に電荷発生層27を定着させる(Step6)。
【0044】
次に、Step7において、Step6で得られた電荷発生層27上に電荷輸送層28をを形成する。電荷輸送層28の形成は、あらかじめ調合された電荷輸送層用塗布液で満たされた液漕に、電荷発生層27が形成されたアルミ素管25を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。電荷輸送層用塗布液は、主にバインダー樹脂と電荷輸送物質とを溶媒に溶解させた液体であり、本実施形態においては、以下に説明する電荷輸送層用塗布液を用いて感光体ドラムサンプルを作製した。
【0045】
そして、電荷発生層27上に電荷輸送層28が塗布されたアルミ素管25を乾燥することで、電荷輸送層28内の余分な溶媒を除去し、電荷発生層27上に電荷輸送層28を定着させる(Step8)。
【0046】
本実施形態においては、
図4のフローチャートに示した製造工程に従って複数の感光体ドラムサンプルを作製し、以下の検討に用いた。
【0047】
<サンプル1>
バインダー樹脂として構造式1に示すポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として構造式6に示す電荷輸送物質70部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が20μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0050】
<サンプル2>
バインダー樹脂として構造式2に示すポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として構造式7に示す電荷輸送物質70部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が20μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0053】
<サンプル3>
バインダー樹脂として構造式3に示すポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として構造式8に示す電荷輸送物質70部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が20μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0056】
<サンプル4>
バインダー樹脂として構造式1に示すポリカーボネート樹脂30部、構造式4に示すポリアリレート樹脂70部、電荷輸送物質として構造式6に示す電荷輸送物質50部及び構造式9に示す電荷輸送物質20部、添加剤として構造式10に示す添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が20μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0060】
<サンプル5>
バインダー樹脂として構造式2に示すポリカーボネート樹脂30部、構造式4に示すポリアリレート樹脂70部、電荷輸送物質として構造式7に示す電荷輸送物質50部及び構造式9に示す電荷輸送物質20部、添加剤として構造式10に示す添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が20μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0061】
<サンプル6>
バインダー樹脂として構造式3に示すポリカーボネート樹脂30部、構造式4に示すポリアリレート樹脂70部、電荷輸送物質として構造式8に示す電荷輸送物質50部及び構造式9に示す電荷輸送物質20部、添加剤として構造式10に示す添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が20μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0062】
<サンプル7>
バインダー樹脂として構造式1に示すポリカーボネート樹脂30部、構造式5に示すポリエステル樹脂70部、電荷輸送物質として構造式6に示す電荷輸送物質50部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が15μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0064】
<サンプル8>
バインダー樹脂として構造式2に示すポリカーボネート樹脂30部、構造式5に示すポリエステル樹脂70部、電荷輸送物質として構造式7に示す電荷輸送物質50部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が15μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0065】
<サンプル9>
バインダー樹脂として構造式3に示すポリカーボネート樹脂30部、構造式5に示すポリエステル樹脂70部、電荷輸送物質として構造式8に示す電荷輸送物質50部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が15μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0066】
<サンプル10>
バインダー樹脂として構造式1に示すポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として構造式6に示す電荷輸送物質40部及び構造式9に示す電荷輸送物質10部、添加剤として構造式10に示す添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が15μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0067】
<サンプル11>
バインダー樹脂として構造式2に示すポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として構造式7に示す電荷輸送物質40部及び構造式9に示す電荷輸送物質10部、添加剤として構造式10に示す添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が15μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0068】
<サンプル12>
バインダー樹脂として構造式3に示すポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として構造式8に示す電荷輸送物質40部及び構造式9に示す電荷輸送物質10部、添加剤として構造式10に示す添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層塗布液とし、前述した
図4のフローチャートに示した製造工程に従って感光層の膜厚が15μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0069】
次に、上記構成を備えるプリンタ100の画像形成プロセスについて説明する。
【0070】
まず、プリンタ100に対して印字データが入力されると、プリンタ100は画像形成プロセスを開始する。画像形成プロセスの開始にあたって、給紙カット10に収納された印字媒体Pは、給紙ローラ11の回転により1枚ずつ用紙搬送経路に繰り出される。給紙ローラ11により繰り出された印字媒体Pは、搬送ローラ12により挟持搬送され、その後、搬送ローラ13により斜行が矯正されながら、画像形成ユニット15に搬送される。そして、画像形成ユニット15に印字媒体Pが搬送されるまでの所定のタイミングにおいて下記に示す画像形成プロセスが開始される。
【0071】
プリンタ100に対して画像データが生成されると、感光体ドラム1は、
図2中の矢印方向に一定周速度で回転する。そして、感光体ドラム1表面に当接して設けられた帯電ローラ2は、高圧電源から印加された、例えば、−1200Vの帯電バイアスを感光体ドラム1表面に印加し、当該表面を一様均一に帯電させる。次に、感光体ドラム1表面に対向して設けられた露光LEDヘッド20によって、画像データに対応した照射光が感光体ドラム1に照射され、光照射部分の電位が光減衰して静電潜像が形成される。
【0072】
現像ローラ3は、前述したように感光体ドラム1に圧接して配設されており、高圧電源から、例えば、−300Vの現像バイアスが印加されている。現像ローラ3は、例えば、−450Vの供給バイアスが印加されたスポンジローラ5により搬送されたトナーTを吸着し回転搬送する。この回転搬送工程で、スポンジローラ5により下流にあって現像ローラ3に圧接して配設された現像ブレード4は、現像ローラ3に吸着したトナーTを均一な厚さにならし、トナー層を形成する。
【0073】
そして、現像ローラ3は、感光体ドラム1表面上に形成された静電潜像をトナーTによって反転現像する。感光体ドラム1の導電性支持体と現像ローラ3との間には高圧電源によってバイアス電圧が印加されているため、感光体ドラム1と現像ローラ3との間には、感光体ドラム1に形成された静電潜像に伴う電気力線が発生している。このため、現像ローラ3上の帯電したトナーTは、静電気力により感光体ドラム1上の静電潜像部分に付着し、トナー像が形成される。
【0074】
次に、感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、高圧電源よって、例えば、+1100Vの転写バイアスが印加された転写ローラ21により印字媒体Pに転写される。
【0075】
その後、印字媒体Pは定着ローラ161と加圧ローラ162とを備えた定着装置16に搬送される。トナー像が転写された印字媒体Pは、所定の表面温度に保たれた定着ローラ161と加圧ローラ162とにより形成される圧接部に搬送される。そして、定着ローラ161から付与される熱によりトナーTが溶融され、さらに圧接部で加圧されることにより、トナー像は印字媒体P上に定着される。
【0076】
トナー像が定着された印字媒体Pは、排出ローラ17により挟持搬送された後、排出ローラ18により排出部19に排出される。
【0077】
なお、トナー像が転写された後の感光体ドラム1表面には、若干のトナーTが残留する場合がある。この残留したトナーTは、クリーニングブレード6によって除去される。前述したように、クリーニングブレード6は、感光体ドラム1表面の所定の位置に当接するように配設されている。クリーニングブレード6が感光体ドラム1表面に当接した状態で感光体ドラム1が回転軸中心に回転することによって、転写されずに感光体ドラム1表面に残留したトナーTが除去される。
【0078】
そして、除電光装置30は、感光体ドラム1表面上の電位リセットを行うために所定の照射光量の除電光を照射し、感光体ドラム1は次の画像形成プロセスに備える。
【0079】
このように、本実施形態に係るプリンタ100は、帯電ローラ2による感光体ドラム1表面の帯電工程、露光LEDヘッド20による感光体ドラム1表面の露光工程、現像手段としての現像ローラ3、現像ブレード4、及びスポンジローラ5による現像工程、及び転写ローラ21による転写工程、除電光装置30による除電工程を一のサイクルとして画像形成を行うものである。
【0080】
次に、ゴーストの発生を低減することが可能な画像形成装置を提供する上で検討した感光体ドラムの電気的特性について説明する。
図5は、上述した感光体ドラムサンプルの電気的特性を測定するための測定装置を説明する概略構成図である。
【0081】
測定装置は、プリンタ100の主に画像形成ユニット15を改造したものである。改造された画像形成ユニットは、感光体ドラム1たる感光体ドラムサンプルと帯電ローラ2とを有し、露光LEDヘッド20と転写ローラ21との間には表面電位計が配置されている。なお、表面電位計は、改造前の画像形成ユニット15の現像ローラ3の配置位置となるように配置した。
【0082】
改造された画像形成ユニットを改造されたプリンタに設置することにより、外部から入力された印字データに基づく画像形成プロセス動作が可能となっている。このように改造されたプリンタは、帯電ローラ2による帯電工程、露光LEDヘッド20による露光工程、転写ローラ21による転写工程のみで動作し、動作中の感光体ドラムサンプルの表面電位値を表面電位計にて測定することができる。また、改造されたプリンタは、帯電ローラ2への印加電圧Vchと転写ローラ21への転写電流Itrを任意に設定することができるように構成されている。
【0083】
図6は、外部から
図5に示した測定装置(改造されたプリンタ)に送信される印字データ概略と、その印字データに基づいた画像形成プロセスにおいて、表面電位計から出力される感光体ドラムサンプルの表面電位値の推移を示す概略図である。
【0084】
図6に示すように、本実施形態に係る印字データは、印字媒体Pにおける印字領域範囲の先頭からドラム1サイクル目(ドラム1周目)の距離の約1/2に対応する範囲に印字密度100%のベタパターン部を有し、残り約1/2の距離に対応する範囲とその後のドラム2サイクル目(ドラム2周目)以降は全て印字密度0%の白パターン部を有している。
【0085】
上記印字データにより表面電位計から出力される表面電位値の推移は、ドラム1サイクル目において、ベタパターン部では露光後電位値VL[V]となり、白パターン部では帯電工程による帯電電位値となっている。そして、ドラム2サイクル目においては、ドラム1サイクル目のベタパターン部に対応するドラム表面部分の帯電電位(露光部帯電電位)値はV
0(2)[V]となり、ドラム1サイクル目の白パターン部に対応するドラム表面部分の帯電電位(非露光部帯電電位)値はV
0(1)[V]となる。
【0086】
画像形成プロセスのサイクルに除電工程が設けられていない場合、上記帯電電位値V
0(2)[V]と帯電電位値V
0(1)[V]との差がゴースト発生の原因となる。このようなゴーストの発生を低減するために、除電光装置による除電工程が設けられている。通常、除電光装置は、帯電電位値V
0(2)[V]と帯電電位値V
0(1)[V]との電位差をリセットするために所定の光量の除電光を照射するものであるが、昨今のさらなる装置の小型化、高速化に伴い、転写装置と帯電装置との間のスペースは必然的に小さくなっている。そのため、除電光装置から帯電装置までの距離が短くなるため、除電光装置による感光体の表面の除電が十分に行われないまま帯電工程に達してしまう場合がある。
【0087】
しかしながら、感光体ドラムの電気的特性として、単に、帯電電位値V
0(2)[V]と帯電電位値V
0(1)[V]との電位差、すなわち、|V
0(1)−V
0(2)|の値でゴーストが生じない良好な条件を規定することは、様々な画像形成装置での帯電工程による帯電電位の設定値に対しての影響が異なることにより、一意的には困難である。すなわち、例えば、ゴーストの発生を低減する良好な電位差を|V
0(1)−V
0(2)|≦50[V]で規定したとしても、帯電工程による帯電電位の設定値が−800[V]の画像形成装置と−400[V]の画像形成装置とを比較した場合、前者の帯電電位の設定値に対する上記50[V]との規定値は相対的に小さく、画像形成プロセス条件としてゴーストが発生するほどの値ではないが、後者の帯電電位の設定値に対する上記50[V]との規定値は相対的に大きく、画像形成プロセス条件としてゴーストが発生する場合がある。したがって、ゴーストに対する帯電電位値V
0(2)[V]と帯電電位値V
0(1)[V]との電位差の影響を規定する場合には、帯電電位値V
0(2)[V]と帯電電位値V
0(1)[V]との比率によって規定する方法が適切である。
【0088】
ところで、感光体ドラムの電気的特性については、露光工程において電荷発生層で発生した電荷が電荷輸送層を介して感光体ドラム表面に向かって移動し、帯電工程において感光体ドラム表面に溜まった帯電電荷を相殺した結果としての感光体表面部分の露光後表面電位値VL[V]によって判断することができる。
【0089】
しかしながら、感光層の膜厚L[μm]が大きいと、電荷の移動距離が長くなることになり、同じ測定条件でも感光層の膜厚によって、露光後表面電位値VL[V]は異なる。したがって、感光体ドラムの電気的特性は、単位感光層膜厚当りの電界強度に置き換えた|VL|/Lによって判断することになる。なお、感光層は有機物質であるため、温度湿度の影響を受けやすく、よって低温低湿環境ほど感光層を移動する電荷のスピードが遅くなるため、電気的特性の特徴が顕著となり、ゴーストへの影響が大きくなる。
【0090】
そして、ゴースト発生の原因としては、上記ドラム2サイクル目におけるドラム表面部分の帯電電位(露光部帯電電位)値V
0(2)[V]とドラム表面部分の帯電電位(非露光部帯電電位)値V
0(1)[V]との差だけでなく、ドラム1サイクル目における露光工程及び除電工程において電荷発生層で発生した電荷が電荷輸送層内に滞留している量も原因となる。すなわち、上記の|VL|/Lの値が大きすぎると、ドラム1サイクル目における露光部に相当する感光層内の滞留電荷量が多いこととなり、ドラム2サイクル目におけるドラム表面部分の帯電電位(露光部帯電電位)値V
0(2)[V]とドラム表面部分の帯電電位(非露光部帯電電位)値V
0(1)[V]との差がなくとも、ドラム2サイクル目の露光工程において、ドラム1サイクル目の露光部に相当する電荷発生層で発生した電荷は滞留電荷の影響により、ドラム1サイクル目の非露光部に相当する電荷発生層で発生した電荷よりも移動速度が小さくなり、露光後表面電位に差が生じるため、印字画像としてはドラム1サイクル目の露光部が薄く浮き出る、いわゆるネガゴーストと呼ばれる画像欠陥が発生する。これに対して、|VL|/Lの値が小さすぎると、|VL|/Lの値が大きすぎる場合とは滞留電荷量が逆の量となり、ドラム2サイクル目の露光後表面電位に差が生じるため、印字画像としてはドラム1サイクル目の露光部が濃く浮き出る、いわゆるポジゴーストと呼ばれる画像欠陥が発生する。
【0091】
以上の見識に基づき、作製した感光体ドラムサンプルの露光後表面電位値VL[V]、ドラム表面部分の帯電電位(露光部帯電電位)値V
0(2)[V]、ドラム表面部分の帯電電位(非露光部帯電電位)値V
0(1)[V]を
図5に示す測定装置(改造されたプリンタ)を用いて測定し、(|V
0(2)−VL|)/(|V
0(1)−VL|)の値、|VL|/Lの値をそれぞれ算出してゴーストの発生を低減することが可能な感光体ドラムの電気的特性条件について検討した。
【0092】
測定条件は以下の通りである。
感光体ドラムの回転速度:127rpm
帯電工程〜露光工程:0.059s
露光工程〜表面電位計:0.079s
表面電位計〜転写工程:0.157s
転写工程〜帯電工程:0.177s
露光光量:0.8μJ/cm
2
露光波長:760nm
温度/湿度:10℃/20%
転写電流(Itr):20μA(本実施形態において最適な電流設定)
帯電電圧(Vch):感光体ドラムサンプル毎に、転写電流OFF状態(Itr=0μA)において、表面電位が−500Vとなるように設定した。
【0093】
ここで、画像形成装置100において、印字媒体Pの搬送速度を上げようとすると、それに比例して感光体ドラム1の回転速度が上がる関係にある。本実施形態においては、感光体ドラムサンプルの回転速度を127rpmとしたときの一例を示しているが、本測定装置を用いて感光体ドラムの回転速度を90〜180rpmの範囲で変更させて同様の実験を行った場合においても、上記範囲内においては同様の結果が得られた。これは、
図5に示す本測定装置を用いて良好な結果が得られる条件を満たす感光体ドラムを画像形成装置100に実装し、90〜180rpmの範囲で回転させた場合に本実施形態に示す効果が得られることを示す。
【0094】
なお、上記測定条件は、本実施形態で使用した測定装置(改造されたプリンタ)での通常の画像形成プロセスの設定条件である。しかし、上記測定条件に限ったものではなく、感光体ドラムの回転速度が90〜180rpmの範囲であれば、転写装置と帯電装置との間に除電光装置が配置されている各種の画像形成装置で、画像形成ユニットを構成する部材の位置関係が異なっていたとしても、
図5に示すような測定装置として使用することができ、この場合、例えば、転写工程〜帯電工程:0.177s以下にも設定可能である。
【0095】
そして、
図1に示すプリンタ100を使用し、低温低湿(温度/湿度:10℃/20%)環境下において、
図7に示すような印字パターンを印字することでゴースト発生の評価を行った。ここで、低温低湿環境下において、良好な結果が得られれば、常温常湿(例えば、温度/湿度:23℃/50%)、高温高湿(例えば、温度/湿度:40℃/93%)の環境下においても良好な結果が得られる。
図7に示した印字パターンは、通常のオフィス用A4サイズのPPC用紙を縦方向に印字したものであり、印字領域の上端から約50mmの幅には、白地にボールド文字列のパターンが形成され、印字領域の上端から約50mmより下端側の領域には、印字密度30%のハーフトーンが形成されたものである。
【0096】
上記ゴースト発生の評価における除電光照射光量は2.4μJ/cm
2とし、帯電電圧については、感光体ドラムサンプル毎に上述の測定装置での測定において設定した値を使用した以外は、通常の画像形成プロセスの設定条件とした。
【0097】
ゴーストの発生の有無については、
図8に示すような感光体ドラム周期での感光体ドラム2周目のハーフトーン印字部において、感光体ドラム1周目のボールド文字列パターンに対応する露光部と白地部分に対応する非露光部での感光体ドラム表面上の電位差が印字として現れるか否かで判断することができる。
【0098】
ここで、判定基準としては、ゴースト印字が目視にて認識できないレベルのものを○、ゴースト印字が目視にて認識でき実使用上問題があるレベルを×とした。また、
図8に示すように、ゴースト印字が薄く浮き出る場合をネガゴーストとし、濃く浮き出る場合をポジゴーストとした。
【0099】
図9は、作製した感光体ドラムサンプルの露光後表面電位値VL[V]、ドラム表面部分の帯電電位(露光部帯電電位)値V
0(2)[V]、ドラム表面部分の帯電電位(非露光部帯電電位)値V
0(1)[V]、(|V
0(2)−VL|)/(|V
0(1)−VL|)の値、|VL|/Lの値、及びゴーストレベルの評価結果をまとめたものである。
【0100】
図9に示すように、作製した感光体ドラムサンプルにおいて、サンプル1、サンプル2、及びサンプル12では、ポジゴーストが観察され、サンプル7では、ネガゴーストが観察された。そして、サンプル3、サンプル4、サンプル5、サンプル6、サンプル8、サンプル9、サンプル10、及びサンプル11では、ゴーストの発生が認められず良好な結果が得られた。
【0101】
また、
図9に示した実験結果を踏まえ、(|V
0(2)−VL|)/(|V
0(1)−VL
|)の値を、0.9の前後、1.0の前後に設定して同様の実験を行ったところ、滞留電荷の影響を排した帯電電位の差をゴーストの発生要因とする(|V
0(2)−VL|)/(|V
0(1)−VL
|)の値において、この値が0.9未満であればポジゴーストが発生し、この値が1.0よりも大きいとネガゴーストが発生することを確認できた。
【0102】
また、滞留電荷をゴーストの発生要因とする|VL|/Lの値において、この値が2.0未満であればポジゴーストが発生し、この値が3.5よりも大きいとネガゴーストが発生することが明らかとなった。
【0103】
以上の結果より、
0.9≦(|V
0(2)−VL|)/(|V
0(1)−VL
|)≦1.0 (式1)
2.0≦|VL|/L≦3.5 (式2)
の両式を同時に満たす感光体ドラムを使用した画像形成装置によれば、例え、装置の小型化、高速化に伴い、転写装置と帯電装置との間のスペースが小さくなり、除電工程において十分な除電効果が得られない場合においても、ゴーストの発生を低減することができる。
【0104】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態で示した(式1)、(式2)の両式を同時に満たす感光体ドラムを用いた画像形成装置において、ゴーストの発生を低減させるとともに、耐刷に伴う経時にて良好な印字品質を維持することを目的として、最適な除電光の照射光量を規定したものである。
【0105】
一般的に、除電光の照射光量が大きすぎると耐刷により感光体ドラムの電気的特性が光疲労劣化し、経時において、印字の濃度低下やコントラスト低下といった印字不良が発生することが知られている。本実施形態では、除電光の照射光量を0μJ/cm
2、0.5μJ/cm
2、0.6μJ/cm
2、1.2μJ/cm
2、2.4μJ/cm
2、4.8μJ/cm
2、5.0μJ/cm
2、及び7.2μJ/cm
2の6水準を設け、
図1に示すプリンタ100を使用し、帯電電圧については第1の実施形態での感光体ドラムサンプル毎に実施した測定装置(改造されたプリンタ)による測定で設定した値を使用した以外は、通常の画像形成プロセスに伴う条件下として、初期、並びに20K枚印刷後のゴースト評価、及びゴースト以外のその他の印字品質の評価を行った。
【0106】
初期、並びに20K枚印刷後のゴースト評価は、第1の実施形態と同様に、
図1に示すプリンタ100を使用し、低温低湿(温度/湿度:10℃/20%)環境下において、
図7に示すような印字パターンを印字することで行った。
図7に示した印字パターンは、通常のオフィス用A4サイズのPPC用紙を縦方向に印字したものであり、印字領域の上端から約50mmの幅には、白地にボールド文字列のパターンが形成され、印字領域の上端から約50mmより下端側の領域には、印字密度30%のハーフトーンが形成されたものである。
【0107】
ゴーストの発生の有無については、
図8に示すような感光体ドラム周期での感光体ドラム2周目のハーフトーン印字部において、感光体ドラム1周目のボールド文字列パターンに対応する露光部と白地部分に対応する非露光部での感光体ドラム表面上の電位差が印字として現れるか否かで判断することができる。
【0108】
ここで、判定基準としては、ゴースト印字が目視にて認識できないレベルのものを○、ゴースト印字が目視にて認識でき実使用上問題があるレベルを×とした。また、
図8に示すように、ゴースト印字が薄く浮き出る場合をネガゴーストとし、濃く浮き出る場合をポジゴーストとした。
【0109】
また、ゴースト以外のその他の印字品質の評価については、印字の濃度低下やコントラスト低下などの印字不良が目視にて認識できないレベルのものを○、印字不良が目視にて認識でき実使用上問題があるレベルのものを×とした。
【0110】
図10は、第1の実施形態で示した12種の感光体ドラムサンプルについての初期印字でのゴーストの評価結果、及びゴースト以外のその他の印字品質の評価結果を示したものである。
【0111】
図10に示すように、初期印字におけるゴーストの評価では、除電光の照射光量が0μJ/cm
2で12種の全ての感光体ドラムサンプルでゴーストが発生した。そして、第1の実施形態に係る(式1)、(式2)の両式を同時に満たす感光体ドラムサンプルであるサンプル3、サンプル4、サンプル5、サンプル6、サンプル8、サンプル9、サンプル10、及びサンプル11では、0.6μJ/cm
2以上の照射光量でゴーストの発生は認められず良好な結果が得られた。また、初期印字におけるゴースト以外のその他の印字不良は見受けられなかった。
【0112】
図11は、第1の実施形態で示した12種の感光体ドラムサンプルについての耐刷20K印字後のゴーストの評価結果、及びゴースト以外のその他の印字品質の評価結果を示したものである。
【0113】
図11に示すように、耐刷20K印字後におけるゴーストの評価では、除電光の照射光量が0μJ/cm
2で12種の全ての感光体ドラムサンプルでゴーストが発生した。そして、第1の実施形態に係る(式1)、(式2)の両式を同時に満たす感光体ドラムサンプルであるサンプル5、サンプル9、及びサンプル10では、0.5μJ/cm
2、5.0μJ/cm
2、7.2μJ/cm
2の照射光量でゴーストの発生が認められた。
【0114】
耐刷20K後での印字におけるゴースト以外のその他の印字品質の評価では、7.2μJ/cm
2の照射光量で12種の全ての感光体ドラムサンプルで印字の濃度低下やコントラスト低下などの印字不良が認められた。また、5.0μJ/cm
2の照射光量では、サンプル1、サンプル4、サンプル5、サンプル8、サンプル9、及びサンプル12で印字不良が目視にて認識できた。
【0115】
以上の結果より、第1の実施形態に係る式1)、(式2)の両式を同時に満たす感光体ドラムを備え、除電光の照射光量が0.6μJ/cm
2以上4.8μJ/cm
2以下の範囲にある除電工程を備えた画像形成装置を用いることにより、ゴーストの発生を低減させるとともに、耐刷に伴う経時にて良好な印字品質を維持することができる。
【0116】
本実施形態の説明においては、除電光装置を備えた画像形成装置としてプリンタを一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、プリンタ以外にも、複写機、ファクシミリ、MFPなどにおいて、電子写真方式を採用する画像形成装置であれば適用可能である。