(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0017】
(実施形態1)
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る水耕栽培システム(10)の構成を示す図である。この水耕栽培システム(10)は、いわゆる施設園芸(例えばビニールハウス)や、閉鎖環境で人工光を用いて植物を栽培する植物工場等で使用される。
図1に示すように、水耕栽培システム(10)は、栽培床(101)、配管(51,52)、ポンプ(102)、浄化ユニット(60)(浄化装置)、及び制御部(103)を備えている。この水耕栽培システム(10)では、栽培床(101)、ポンプ(102)、及び浄化ユニット(60)は、配管(51,52)で互いに接続され、植物の栽培に必要な養分を含んだ養液(L)が循環する。
図1では、養液の循環方向を矢印で示してある。
【0018】
栽培床(101)は、養液(L)を、所定の量だけ溜めるようになっている。栽培床(101)には、植物(200)が植えつけられる。植えつけられた植物(200)は、栽培床(101)に溜められた養液(L)を吸収し、吸収した養液(L)中の養分を利用する。この栽培床(101)には養液(L)が流入する流入孔と、養液(L)が流出する流出孔が設けられ、流出孔には配管(51)、流入孔には配管(52)がそれぞれ接続されている。
【0019】
浄化ユニット(60)は、水中(具体的には養液(L))での放電によって水中に水酸ラジカルを経て過酸化水素を生成し、生成した過酸化水素を超音波により水酸ラジカルに変換することにより養液の浄化を行う。養液の浄化とは、養液中の雑菌の殺菌、養液中に存在する汚れの発生原因となる有機物の分解等を含む概念である。浄化ユニット(60)の構成は後に詳述する。この浄化ユニット(60)には養液(L)が流入する流入孔と、養液(L)が流出する流出孔が設けられ、流入孔が栽培床(101)よりも下流側の配管(51)に接続され、栽培床(101)を通過した養液(L)が該配管(51)で供給されている。また、浄化ユニット(60)の流出孔には、配管(52)が接続されている。
【0020】
ポンプ(102)は、養液(L)を循環させるためのポンプである。このポンプ(102)の吸入孔は、浄化ユニット(60)の流出孔と配管(52)で接続され、吐出孔は、栽培床(101)の流入孔と配管(52)で接続されている。このポンプ(102)の運転状態は、制御部(103)により制御する。
【0021】
本実施形態では、配管(51,52)は、一部が銅配管であり、残りの部分が樹脂の配管である。より詳しくは、浄化ユニット(60)とポンプ(102)の間の配管(52)が銅配管である。この配管(52)は、イオン供給部としても機能する。
【0022】
制御部(103)は、ポンプ(102)及び浄化ユニット(60)に所定の制御信号(SIG)を出力し、ポンプ(102)の運転状態(オンオフ)の制御と、浄化ユニット(60)の運転状態(放電部及び超音波発生部のオンオフ)の制御を行う。
【0023】
<浄化ユニット(60)の構成>
図2は、浄化ユニット(60)の構成例を示す図である。浄化ユニット(60)は、水中での放電によって水中に水酸ラジカルを経て過酸化水素を生成し、生成した過酸化水素を超音波により水酸ラジカルに変換する。生成した過酸化水素及び水酸ラジカルにより養液の浄化を行う。浄化ユニット(60)は、浄化タンク(61)と放電部(62)と超音波発生部(94)とを有している。
【0024】
浄化タンク(61)は、密閉型の容器状に形成され、栽培床(101)において使用された養液(L)が流入する。具体的に、浄化タンク(61)には、栽培床(101)の流出孔に繋がる配管(51)と、ポンプ(102)の吸入孔に繋がる配管(52)が接続されている。すなわち、浄化タンク(61)は、栽培床(101)の下流側に配設されている。
【0025】
放電部(62)は、第1電極(64)及び第2電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、第1電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0026】
電極対(64,65)は、水中で放電を生起するためのものである。第1電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。第1電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。第1電極(64)は、電源部(70)と接続されている。第1電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0027】
第2電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。第2電極(65)は、第1電極(64)の上方に設けられている。第2電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。第2電極(65)は、第1電極(64)と略平行に配設されている。第2電極(65)は、電源部(70)と接続されている。第2電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0028】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の電圧を印加する。電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源であってもよいが、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する直流電源でかまわない。直流電源の場合には電源部(70)の第2電極(65)が接続される負極側を、アースと接続すればよい。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。なお、電源部(70)を電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源としてもよい。電源部(70)が直流電源である場合には、電源部(70)がパルス電源である場合と比べて放電発生時の音を小さくすることができる。
【0029】
絶縁ケーシング(71)は、浄化タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0030】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。第1電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、第1電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、第1電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、第1電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0031】
図2及び
図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、第1電極(64)と第2電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0032】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(第1電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0033】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0034】
超音波発生部(94)は、板状の圧電セラミックス板(95)と、圧電セラミックス板(95)を挟むように設けられた一対の金属板(96a,96b)とにより構成されている。超音波発生部(94)を封入するケース(97)は密閉され、浄化タンク(61)の底部に配置されている。
【0035】
金属板(96a,96b)には、増幅器(309)によって増幅された超音波波形発生部(308)の出力信号(交流電圧)が供給される。これにより、超音波発生部(94)は任意の周波数の超音波を浄化タンク(61)内の養液に照射できる。但し、過酸化水素を分解して水酸ラジカルを効率良く発生させるためには、超音波の周波数が、100kHz以上程度であれることが好ましい。
【0036】
なお、超音波発生部(94)は、浄化タンク(61)内の液体に超音波を照射できる範囲で任意の位置に設置されていてよい。例えば、
図4に示すように、超音波発生部(94)は浄化タンク(61)の底部外側に設置されていてもよい。超音波発生部(94)が浄化タンク(61)の底部外側に設置されている場合、超音波は浄化タンク(61)の壁面を介して養液に伝達される。
【0037】
また、超音波発生部(94)は、
図5に示すように、金属ケース(97a)の上部と金属板(96)とで板状の圧電セラミックス板(95)を挟み、両者の間に交流電圧を供給する構成であってもよい。
【0038】
なお、養液の循環を連続的に行っている場合には、放電部(62)を運転しても、浄化タンク(61)内の過酸化水素濃度が、放電部(62)よりも流入側では高くならない可能性がある。このため、超音波発生部(94)は、放電部(62)よりも流出側に設ける方が好ましい。しかし、ポンプ(102)の停止時に浄化タンク(61)内の養液の殺菌を行うような場合には、超音波発生部(94)が放電部(62)よりも流入側に設けられていても問題ない。
【0039】
<水耕栽培システム(10)の動作>
水耕栽培システム(10)では、制御部(103)によって、ポンプ(102)がオン状態にされると、養液(L)が栽培床(101)に供給される。栽培床(101)では、それぞれの植物(200)が必要量の養液(L)を吸収する。植物(200)に吸収されなかった養液(L)は、栽培床(101)から配管(51)を通って流出し、浄化ユニット(60)を通過する。浄化ユニット(60)から出た養液(L)は、配管(52)(この部分は銅配管)を通過する。浄化ユニット(60)から出た養液(L)は、不足した成分や水が補われ、再び栽培床(101)に流入する。養液(L)の成分調整や量の調整を行う装置は、
図1では図示を省略してある。なお、養液(L)の循環は、連続的に行ってもよいし、適当な時間間隔をあけて行うようにしてもよい。
【0040】
<本実施形態における養液の浄化>
水耕栽培システム(10)において養液(L)を浄化するには、浄化ユニット(60)で放電を行わせると共に超音波照射を行う。具体的には、制御部(103)が浄化ユニット(60)をオンにする。
【0041】
放電部(62)の運転の開始時には、
図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。この際、第1電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0042】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、
図6に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、第2電極(65)と第1電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、第1電極(64)と第2電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、第1電極(64)と第2電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴い放電が発生する。
【0043】
以上のようにして、気泡(B)で放電が行われると、浄化タンク(61)内の水中では、水酸ラジカルが発生する。発生した水酸ラジカルは急速に反応して過酸化水素となる。このため、浄化タンク(61)内の過酸化水素濃度が次第に上昇する。過酸化水素濃度が十分に上昇した後、養液に超音波を照射すると、養液中の過酸化水素が分解され再び水酸ラジカルが発生する。超音波照射により発生した水酸ラジカルは再び結合して過酸化水素に戻る。このため、
図7に示すように過酸化水素から水酸ラジカルへの変換と、水酸ラジカルから過酸化水素への変換とが循環して生じる。但し、殺菌等の養液の浄化に使われた水酸ラジカルは水に変化するので、放電を停止して超音波照射のみを行った場合には、過酸化水素の濃度は徐々に低下する。
【0044】
過酸化水素により養液を十分に浄化しようとすると、養液中の過酸化水素の濃度を高くしなければならない。過酸化水素は、低濃度では比較的安全であるが濃度が高くなると植物に悪影響をおよぼすおそれがある。一方、水酸ラジカルは、過酸化水素と比べてはるかに高い浄化能力を有している。従って、低い濃度においても養液を十分に浄化することができる。しかし、水酸ラジカルは不安定であり直ぐに反応して過酸化水素となってしまう。このため、水酸ラジカルにより養液の浄化を行うためには、水酸ラジカルを連続的に発生させなければならない。
【0045】
放電の場合、水が分解されて水酸ラジカルが発生するため、連続的に運転を行うと養液中の過酸化水素濃度がどんどん上昇してしまう。一方、超音波照射の場合には、過酸化水素から水酸ラジカルへの変換は生じるが、水の分解は生じない。このため、水酸ラジカルの生成を連続的に行っても、過酸化水素の濃度が上昇することはない。従って、放電により過酸化水素を発生させ、超音波により水酸ラジカルを発生させることにより、放電のみを用いて浄化を行う場合よりもはるかに効率良く浄化を行うことができる。また、過酸化水素の濃度を低く抑えることができるので、より安全な浄化装置を実現することができる。
【0046】
水酸ラジカルは反応性が高いため、栽培床(101)において栽培している植物(200)に水酸ラジカルが直接接すると、植物(200)に悪影響が生じるおそれがある。しかし、水酸ラジカルの寿命は非常に短いため、浄化タンク(61)外においては水酸ラジカルはほとんど存在しない。一方、低濃度の過酸化水素は、植物(200)にほとんど影響を与えない。このため、浄化ユニット(60)を栽培床(101)から独立させることにより、栽培床(101)において栽培する植物(200)が水酸ラジカルの影響を受けることがなくなるという利点が得られる。
【0047】
養液中の過酸化水素は、養液(L)の循環に伴って、水耕栽培システム(10)全体に広がる。この過酸化水素には、配管(51,52)の汚れの原因となる物質を分解(付着防止)したり、養液(L)中の雑菌を殺菌する作用がある。そのため、過酸化水素が到達した部位では、配管(51,52)の浄化及び殺菌が行われる。
【0048】
また、配管(51,52)の一部として設けられた銅配管(イオン供給部)からは、銅イオンが養液(L)中に溶出する。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が生じる。これにより、水酸ラジカルにより配管中においても養液の殺菌効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0049】
なお、浄化ユニット(60)による殺菌及び汚れ分解は、常時行ってもよいが、適当な時間間隔をあけて行うようにしてもよい。浄化ユニット(60)の運転の開始や休止の制御は制御部(103)で行えばよい。
【0050】
放電部(62)と超音波発生部(94)とを常に動作状態としてもかまわないが、養液中の過酸化水素濃度が低い場合には、超音波を照射しても十分な水酸ラジカルの発生が望めない。また、放電部(62)を動作させ続けると養液中の過酸化水素濃度が高くなりすぎるおそれもある。このため、
図8に示すような運転を行うことが好ましい。まず、放電部(62)のみを運転して、浄化タンク(61)内の過酸化水素を上昇させた後、超音波発生部(94)の運転を開始し水酸ラジカルの生成を開始する。その後、浄化タンク(61)内の過酸化水素濃度が十分に上昇した時点で放電部(62)の運転を休止し、超音波発生部(94)のみを運転する。浄化タンク(61)内の過酸化水素の濃度が低下した時点で、再び放電部(62)の運転を開始し、浄化タンク(61)内の過酸化水素濃度を上昇させる。
【0051】
以上のような、制御は予め設定したタイミングに基づいて行ってもよいが、浄化タンク(61)内の過酸化水素濃度の測定値に基づいて
図9に示すような制御を行ってもよい。この場合には、
図10に示すように過酸化水素濃度を測定するセンサ(307)を浄化タンク(61)内に設け、センサ出力に基づいて、制御部(103)により、放電部(62)及び超音波発生部(94)を制御すればよい。制御部(103)は、中央演算装置(CPU)を備えた演算回路等とすればよい。また、ポンプ(102)についても制御する構成を示したが、ポンプ(102)の制御と、放電部(62)及び超音波発生部(94)の制御は独立して行う構成としてもよい。
【0052】
なお、放電部(62)の運転中に超音波発生部(94)の運転を開始する例を示したが、放電部(62)の運転を休止してから超音波発生部(94)の運転を開始してもよい。また、放電部(62)の再運転する場合に、超音波発生部(94)を休止した状態としてもよい。
【0053】
<本実施形態における効果>
以上のように、本実施形態によれば、浄化ユニット(60)において発生した水酸ラジカル及び過酸化水素によって養液(L)中の汚れの原因物質の分解及び殺菌等の浄化ができる。また、養液(L)の循環経路(配管(51,52))の汚れを抑制することもできる。また、本実施形態では、浄化ユニット(60)が栽培床(101)よりも下流側に設けられているので、栽培床(101)において養液(L)中に入り込んだ細菌及び汚れの原因物質を、システムに広がる前に分解して浄化することが可能になる。
【0054】
《放電部の変形例1》
実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている例を示した。しかし、例えば
図11及び
図12に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、第1電極(64)及び第2電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0055】
変形例1においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0056】
《放電部の変形例2》
放電部(62)は以下のような構成としてもよい。
図13に示すように、変形例2の放電部(62)は、浄化タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電部(62)は、第1電極(64)と第2電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組み立てられている。
【0057】
変形例2の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0058】
変形例2のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から浄化タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部からさらに浄化タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0059】
実施形態2の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0060】
第1電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。第1電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、第1電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、第1電極(64)のうち浄化タンク(61)とは反対側の端部が、浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、浄化タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、第1電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0061】
第1電極(64)のうち浄化タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、
図7に示す例では、第1電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(浄化タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、第1電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0062】
第2電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、浄化タンク(61)の壁部に固定されて放電部(62)を保持する固定部を構成している。放電部(62)が浄化タンク(61)に固定された状態では、第2電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0063】
第2電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、浄化タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、第2電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、浄化タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0064】
第2電極(65)は、電極本体(65a)の一部が浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と第2電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0065】
<放電部の運転動作>
変形例2においても、放電部(62)が運転されることにより過酸化水素が生成される。
【0066】
放電部(62)の運転の開始時には、
図13に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇してく。
【0067】
図13に示す状態から、電極対(64,65)へさらに電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(
図14を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、第1電極(64)との間に気泡(B)の抵抗が付与される。これにより、第1電極(64)と第2電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)で放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルを経て過酸化水素が生成される。
【0068】
《放電部の変形例3》
変形例2では円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成する例を示したが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。
図15に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれ放電を生起させることができる。
【0069】
なお、実施形態1及び各変形例の電源部(70)には、放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかし、定電力制御部に代えて、放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、洗浄水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0070】
実施形態1及び各変形例において、電源部(70)が直流電源の場合には正極に第1電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に第2電極(65)を接続すればよい。しかし、電源部(70)の負極に第1電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に第2電極(65)を接続して、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。なお、電源部(70)は交流電源又はパルス電源等であってもよい。
【0071】
(実施形態2)
図16は、実施形態2に係る浄化ユニット(60B)を示す構成図である。
図16では、実施形態1の浄化ユニット(60)と同様の構成については
図2と同じ符号を付している。また、
図16では、制御部(103)等の記載は省略している。以下においては、主に実施形態1に係る浄化ユニット(60)と異なる点について説明する。
【0072】
本実施形態の浄化ユニット(60B)は、浄化タンク(61)と、浄化タンク(61)内に配置された放電部(62)と、超音波発生部(94)とを備えている。放電部は、電極対(464,465)と、電極対(464,465)に接続された電源部(70)とを有している。超音波発生部(94)は、浄化タンク(61)の底部に設置されている。
【0073】
電極(464)は絶縁ケーシング(471a)の内部に収納され、電極(465)は絶縁ケーシング(471b)の内部に収納されている。電極(464)及び電極(465)は、それぞれ扁平な板状に形成されている。また、電極(464)及び電極(465)はステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。電源部(70)は、数キロボルト程度の交流電圧を電極対(464,465)に供給する。
【0074】
絶縁ケーシング(471a,471b)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されており、
図2に示す絶縁ケーシング(71)と同様の構成を有している。
【0075】
すなわち、絶縁ケーシング(471a)は、一面(
図16では右側の面)が開放された容器状のケース本体(480a)と、該ケース本体(480a)の上記開放部を閉塞する板状の蓋部(473a)とを有している。また、絶縁ケーシング(471b)は、一面(
図16では左側の面)が開放された容器状のケース本体(480b)と、該ケース本体(480b)の開放部を閉塞する板状の蓋部(473b)とを有している。
【0076】
絶縁ケーシング(471a)の蓋部(473a)には、該蓋部(473a)を厚さ方向に貫通する1つの開口(474a)が形成されている。絶縁ケーシング(471b)の蓋部(473b)にも、該蓋部(473b)を厚さ方向に貫通する1つの開口(474b)が形成されている。これらの開口(474a,474b)により、電極(464)と電極(465)との間の電界の形成が許容されている。開口(474a,474b)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(474a,474b)は、電極対(464,465)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0077】
絶縁ケーシング(471a,471b)は、浄化タンク(61)内の互いに対向する側面に、蓋部(473a,473b)同士が対向するように設置されている。言い換えれば、電極(464)と電極(465)とは互いに対向するよう配置されている。
【0078】
絶縁ケーシング(471a,471b)の開口(474a,474b)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、液体がジュール熱によって気化して気泡が形成される。つまり、絶縁ケーシング(471a,471b)の開口(474a,474b)は、該開口(474a,474b)に気相部としての気泡を形成する気相形成部として機能する。この構成により、交流電圧が電極対(464,465)に供給された場合に電極対(464,465)間の気泡内に放電を生起させることができる。
【0079】
なお、超音波発生部(94)の具体的な構成は実施形態1と同様にすればよく、浄化タンク(61)の底部に設置されていることが好ましいが、浄化タンク(61)内の液体に超音波を照射できる限りにおいて任意の位置に設置可能である。
【0080】
以上の構成をとることにより、交流電圧を電極対(464,465)に供給する場合でも、電極対(464,465)間に放電を生起させることができ、過酸化水素の濃度を抑えながら高い浄化能力を発揮させることができる。
【0081】
なお、電源部(70)から電極対(464,465)へは交流電圧を印加してもよいが、矩形波を印加しても電極対(464,465)間に放電を生起することができる。
【0082】
本実施形態の浄化ユニット(60B)においても、
図8又は
図9に示すような制御を行うことが好ましい。
【0083】
(実施形態3)
図17は、本発明の実施形態3に係る浄化ユニット(60C)を示す構成図である。
図17では、実施形態1の浄化ユニット(60)と同様の構成については
図2と同じ符号を付している。また、
図17では、制御部(103)等の図示は省略している。以下においては、主に実施形態1に係る浄化ユニットと異なる点について説明する。
【0084】
本実施形態の浄化ユニット(60C)は、浄化タンク(61)と、浄化タンク(61)内に配置された放電部(62)と、超音波発生部(94)とを備えている。放電部は、浄化タンク(61)内に設けられた電極対(564,565)と、電極対(564,565)に接続された電源部(70)と、気泡発生部(520)とを有している。超音波発生部(94)は、浄化タンク(61)の底部に設置されている。
【0085】
本実施形態の浄化ユニット(60C)においては、電源部(70)は、第1電極(64)及び第2電極(565)に高電圧のパルス電圧が供給される。
【0086】
また、第1電極(564)を囲む絶縁ケーシングは設けなくてよい。第1電極(564)及び第2電極(565)は共に板状であり、浄化タンク(61)内の側面に、互いに対向するように設置される。
【0087】
気泡発生部520は、例えば浄化タンク(61)の底部など、少なくとも電極対(564,565)の間であって、電極対(564,565)よりも低い位置に設けられたノズル(吐出手段)(519)と、ノズル(519)に空気等の気体を送るエアポンプ(送出手段)(518)とを有している。エアポンプ(518)によって送出された気体は、ノズル(519)を介して浄化タンク(61)内に送り込まれ浄化タンク(61)内に気泡を発生させる。なお、浄化タンク(61)内の気体を循環させる構成としても、外部から気体を取り入れる構成としてもよい。
【0088】
超音波発生部(94)の構成は実施形態1と同様にすればよく、浄化タンク(61)の底部に設置されていることが好ましいが、浄化タンク(61)内の液体に超音波を照射できる限りにおいて任意の位置に設置可能である。
【0089】
少なくとも放電処理を行う期間中、ノズル(519)から養液中へ気体が送り込まれ、気泡が発生する。養液中に気泡が存在する状態で電極対(564,565)にパルス電圧を供給すると、気泡の内部において放電が生起され、水酸ラジカルが生成し、水酸ラジカルから過酸化水素が生成する。
【0090】
本実施形態の浄化ユニット(60B)においても、
図8又は
図9に示すような制御を行うことが好ましい。
【0091】
以上の構成及び方法によれば、電極対(564,565)間にパルス放電を発生させる場合でも、超音波照射と組み合わせることで、過酸化水素の濃度を抑えながら高い浄化能力を発揮させることができる。
【0092】
(発明の実施形態4)
図18は、本発明の実施形態4に係る浄化ユニット(60D)を示す構成図である。
図18では、実施形態1の浄化ユニット(60)と同様の構成については
図2と同じ符号を付している。また、
図18では、制御部(103)等の記載は省略している。以下においては、主に実施形態1に係る浄化ユニット(60)と異なる点について説明する。
【0093】
本実施形態の浄化ユニット(60D)は、浄化タンク(61)と、浄化タンク(61)内に配置された放電部(62)と、超音波発生部(94)とを備えている。放電部は、電極対(664,665)と、電極対(664,665)に接続された電源部(70)とを有している。超音波発生部(94)は、浄化タンク(61)の底部に設置されている。電源部(70)は、例えば交流電源で構成されているが、直流電源で構成されていてもよいし、矩形波やパルス電圧を供給する電源で構成されていてもよい。
【0094】
電極(664)と電極(665)とは、それぞれ浄化タンク(61)内の側面に、互いに対向するように設置されている。
【0095】
電極(664)は、少なくとも1つの導電部(654)と、導電部(654)を囲む絶縁部(655)とを有している。電極(665)は、少なくとも1つの導電部(656)と、導電部(656)を囲む絶縁部(657)とを有している。
【0096】
以上のように、電極(664)における導電部(654)の露出面、及び電極(665)における導電部(656)の露出面の面積は小さいので、電圧を電極対(664,665)に供給した場合には導電部(654,656)の表面で電流密度の集中部が形成される。そのため、導電部(654,656)の表面では液体がジュール熱によって気化して気泡が形成される。この泡によって導電部(654,656)の露出面が覆われた状態で電源部(70)からの電圧供給を継続することにより、気泡の内部で放電が生起される。
【0097】
なお、超音波発生部(94)の具体的な構成は実施形態1と同様にすればよく、浄化タンク(61)の底部に設置されていることが好ましいが、浄化タンク(61)内の液体に超音波を照射できる限りにおいて任意の位置に設置可能である。
【0098】
以上の構成によっても、電極対(664,665)間での放電と、超音波照射とを組み合わせることにより、過酸化水素濃度を抑えながら高い浄化能力を発揮させることができる。
【0099】
本実施形態の浄化ユニット(60D)においても、
図8又は
図9に示すような制御を行うことが好ましい。
【0100】
<イオン供給部の構成>
上述した各実施形態では、配管(52)を銅配管とすることで、配管(52)を銅イオンのイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。
【0101】
銅配管や鉄配管は、浄化タンク(61)と連通する配管であれば、他の箇所に設けることもできる。例えば、配管(51)を銅配管や鉄配管としたり、配管(51,52)の全てを銅配管や鉄配管としてもよい。また、例えば銅片や鉄片を浄化タンク(61)内に浸漬することで、これらをイオン供給部とすることもできる。但し、イオン供給部は設けなくてもよい。
【0102】
なお、浄化ユニット(60)を設ける位置は例示である。例えば、栽培床(101)の上流側に設けることも可能である。
【0103】
また、水耕栽培システム(10)の構成は例示である。例えば、養液を貯留するタンクを設けたり、水を補給する装置を設けるなど種々の変形が可能である。
【0104】
また、放電部(62)及び超音波発生部(94)を養液のタンク内に設ければ、タンク内の養液を攪拌して均一化するという効果も得られる。