特許第5929195号(P5929195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929195
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】淡水製造装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20160519BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   C02F1/44 G
   B01D61/58
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2011-536680(P2011-536680)
(86)(22)【出願日】2011年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2011068238
(87)【国際公開番号】WO2012023469
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-182065(P2010-182065)
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅英
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−163349(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/061879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶質を含有する原水から淡水を製造するための淡水製造装置であり、該淡水製造装置は、第1の半透膜ユニットと第2の半透膜ユニットを含み、前記第1の半透膜ユニットに、前記原水を供給する第1の原水供給ラインが接続され、前記第2の半透膜ユニットに、前記原水を供給する第2の原水供給ラインが接続され、かつ、前記第1の半透膜ユニットと前記第2の半透膜ユニットが、前記第1の半透膜ユニットの濃縮水を前記第2の半透膜ユニットに供給する濃縮水ラインにより接続されており、さらに、前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットの性能として、前記第1の半透膜ユニットの透水性能が前記第2の半透膜ユニットの透水性能よりも高いこと、または、前記第1の半透膜ユニットの耐圧性が前記第2の半透膜ユニットの耐圧性よりも低いこと、または、前記第1の半透膜ユニットの耐腐食性が前記第2の半透膜ユニットの耐腐食性よりも低いことのいずれかを満たし、さらに、前記第1の原水供給ライン上に前記第1の原水供給ラインの原水供給流量を制御する制御手段、および/または、前記第2の原水供給ライン上に前記第2の原水供給ラインの原水供給流量を制御する制御手段を有する淡水製造装置。
【請求項2】
前記第1の原水供給ラインと前記第2の原水供給ラインに供給される前記原水が、互いに異なる組成からなる少なくとも2種類の原水が混合された原水からなる請求項1に記載の淡水製造装置。
【請求項3】
前記第2の半透膜ユニットに接続されている前記第2の原水供給ラインと前記第1の半透膜ユニットから導出されている前記濃縮水ラインとの合流点と、前記第2の半透膜ユニットとの間の位置において、前記第2の原水供給ラインに昇圧ポンプもしくは無動力昇圧ユニットが設けられている請求項1に記載の淡水製造装置。
【請求項4】
前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットのそれぞれと並列運転可能な共通補助半透膜ユニットが装備されている請求項1に記載の淡水製造装置。
【請求項5】
前記第1の半透膜ユニットと並列運転可能な補助半透膜ユニットが装備され、および/または、前記第2の半透膜ユニットと並列運転可能な補助半透膜ユニットが装備されている請求項1に記載の淡水製造装置。
【請求項6】
前記第2の半透膜ユニットと並列運転可能な補助半透膜ユニットに、前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットに供給される原水とは異なる原水が供給される請求項5に記載の淡水製造装置。
【請求項7】
前記第2の半透膜ユニットの透過水の少なくとも一部が、前記第1の半透膜ユニットの原水に混合される請求項1に記載の淡水製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の淡水製造装置の運転方法であって、前記第1の半透膜ユニットへの原水の供給圧力、および/または、前記第1の半透膜ユニットの透過水の溶質濃度が設定値を超えないように、前記第1の半透膜ユニットに接続されている前記第1の原水供給ラインにおける原水の流量と前記第2の半透膜ユニットに接続されている前記第2の原水供給ラインにおける原水の流量を制御してなる淡水製造装置の運転方法。
【請求項9】
請求項4に記載の淡水製造装置の運転方法であって、前記第1の半透膜ユニットに接続されている前記第1の原水供給ラインにおける供給水の流量と前記第2の半透膜ユニットに接続されている前記第2の原水供給ラインにおける供給水の流量に応じて、前記共通補助半透膜ユニットの使用の要否やそれへの供給水の供給量を制御してなる淡水製造装置の運転方法。
【請求項10】
請求項5に記載の淡水製造装置の運転方法であって、前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットへの供給水の供給圧力が設定値を超えないように、前記並列運転可能な補助半透膜ユニットの使用の要否やそれらへの供給水の供給量を制御してなる淡水製造装置の運転方法。
【請求項11】
前記第2の半透膜ユニットの透過水の少なくとも一部を前記第1の半透膜ユニットの供給水に混合させるラインを有し、処理水質が設定値を超えないように前記第2の半透膜ユニットの透過水の少なくとも一部を前記第1の半透膜ユニットの供給水に混合させてなる請求項8または10に記載の淡水製造装置の運転方法。
【請求項12】
少なくとも前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットの濃縮水、もしくは、並列に設けられた前記補助半透膜ユニットの濃縮水のいずれかを、他のいずれかの半透膜ユニットの供給水に混合してなる請求項5乃至7のいずれかに記載の淡水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水、河川水、地下水、排水処理水などの原水を処理して淡水を得るための半透膜ユニットを用いた淡水製造装置に関するものであり、さらに詳しくは、原水に応じて効率的に淡水を製造できる淡水製造装置およびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
21世紀に入って、世界の水環境は年々深刻化し、水資源の確保、そのための水処理技術が非常に重要になってきている。この中で分離膜を適用した水処理技術は、急速に進歩し、河川・湖沼水の浄化、海水淡水化、下廃水再利用など多岐にわたって活用されるようになっており、より小さなエネルギーで低コストの水処理ができる高性能分離膜の開発が推進されている。また、プロセス面では、より効率的に水処理を行うために、たとえば、海水淡水化においては、蒸発法と逆浸透(RO)法を複合したハイブリッドシステムが中東を中心に建設され稼働開始するに至っている(非特許文献1)。
【0003】
一方、日本やシンガポールのような島国では、雨期と渇水期で水資源に変化があるため、貯水池に水がある場合は、池の水を原水とし、そうでない場合は、海水を原水とする淡水化システムが知られている。
【0004】
具体的には、図10に基本フローを示すように、2つの半透膜ユニットを有し、原水がかん水の時には、まず1段目半透膜ユニットP7でRO処理を行い、その濃縮水を2段目半透膜ユニットP8に供給してさらにRO処理を行うことで、トータル回収率(=透過水量/原水量)を高め、原水が海水の場合は、1段目半透膜ユニットP7の透過水を2段目半透膜ユニットP8に供給して、2回RO処理を行うことで水質を上げるというシステムが知られている(非特許文献2)。同様のシステムは、特許文献1でも提案されている。
【0005】
また、図11に基本フローを示すように、かん水を原水とする場合は、バルブP6b、P6jを開けてバルブP6k、P6lを閉じることによって、2つの半透膜ユニットを並列に接続して淡水製造量を増やし、海水を原水とする場合は、バルブP6b、P6jを閉じてバルブP6k、P6lを開けることによって、片方の半透膜ユニットの透過水をもう片方の半透膜ユニットに供給して水質を上げるというシステム(特許文献2)が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法では、原水が海水の場合は、第1の半透膜ユニットでの海水淡水化に適用可能な高圧(例えば5乃至7MPa)での耐久性が必要であり、かつ、高濃度の原水を脱塩可能とするために透水性が低く阻止性能が高い逆浸透膜を使用する必要があるが、この高圧用逆浸透膜でかん水を処理する場合には、その低い透水性のためにエネルギー効率が悪くなる。一方で、第2の半透膜ユニットは、海水を原水とする場合には、第1の半透膜ユニットの濃縮水を供給するために第1の半透膜ユニットと同等に高圧耐久性があり、かつ、阻止性能も高い必要があるばかりでなく、かん水を原水とする場合は、第1の半透膜ユニットの透過水を供給するために低圧で運転する必要もあるが、高圧用逆浸透膜は低圧ではエネルギー効率が悪いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3957081号公報
【特許文献2】特許第3957080号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. K. Park et al., “Application of Hybrid Technology to the largest desalination plant, Fujairah, UAE,” Proc. of IDA World Congress BAH03-193 (2003).
【非特許文献2】J.S.S. Chin et. al., “Increasing water resources through desalination in Singapore: Planning for sustainable future,” Proc. of IDA World Congress DB09-033 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、原水濃度が変動した場合にも効率的に目標水質を満足する淡水を得る半透膜(逆浸透膜)を用いた淡水製造装置を、また、その運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明は、次の通りである。
【0011】
(1)溶質を含有する原水から淡水を製造するための淡水製造装置であり、該淡水製造装置は、第1の半透膜ユニットと第2の半透膜ユニットを含み、前記第1の半透膜ユニットに、前記原水を供給する第1の原水供給ラインが接続され、前記第2の半透膜ユニットに、前記原水を供給する第2の原水供給ラインが接続され、かつ、前記第1の半透膜ユニットと前記第2の半透膜ユニットが、前記第1の半透膜ユニットの濃縮水を前記第2の半透膜ユニットに供給する濃縮水ラインにより接続されており、さらに、前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットの性能として、前記第1の半透膜ユニットの透水性能が前記第2の半透膜ユニットの透水性能よりも高いこと、または、前記第1の半透膜ユニットの耐圧性が前記第2の半透膜ユニットの耐圧性よりも低いこと、または、前記第1の半透膜ユニットの耐腐食性が前記第2の半透膜ユニットの耐腐食性よりも低いことのいずれかを満たし、さらに、前記第1の原水供給ライン上に前記第1の原水供給ラインの原水供給流量を制御する制御手段、および/または、前記第2の原水供給ライン上に前記第2の原水供給ラインの原水供給流量を制御する制御手段を有する淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図1、あるいは、図2に示される。
【0012】
(2)前記第1の原水供給ラインと前記第2の原水供給ラインに供給される前記原水が、互いに異なる組成からなる少なくとも2種類の原水が混合された原水からなる上記(1)項に記載の淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図3図4図5図6図7図12図13、あるいは、図14に示される。
【0013】
(3)前記第2の半透膜ユニットに接続されている前記第2の原水供給ラインと前記第1の半透膜ユニットから導出されている前記濃縮水ラインとの合流点と、前記第2の半透膜ユニットとの間の位置において、前記第2の原水供給ラインに昇圧ポンプもしくは無動力昇圧ユニットが設けられている上記(1)または(2)項に記載の淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図3、あるいは、図4に示される。
【0014】
(4)前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットのそれぞれと並列運転可能な共通補助半透膜ユニットが装備されている上記(1)乃至(3)項のいずれかに記載の淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図5に示される。
【0015】
(5)前記第1の半透膜ユニットと並列運転可能な補助半透膜ユニットが装備され、および/または、前記第2の半透膜ユニットと並列運転可能な補助半透膜ユニットが装備されている上記(1)乃至(4)項のいずれかに記載の淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図6図7図9図12図13、あるいは、図14に示される。
【0016】
(6)前記第2の半透膜ユニットと並列運転可能な補助半透膜ユニットに、前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットに供給される原水とは異なる原水が供給される上記(5)項請に記載の淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図7図12図13、あるいは、図14に示される。
【0017】
(7)前記第2の半透膜ユニットの透過水の少なくとも一部が、前記第1の半透膜ユニットの原水に混合される上記(1)乃至(6)項のいずれかに記載の淡水製造装置。この態様の淡水製造装置の実施例は、図8、あるいは、図9に示される。
【0021】
)上記(1)乃至()項のいずれかに記載の淡水製造装置の運転方法であって、前記第1の半透膜ユニットへの原水の供給圧力、および/または、前記第1の半透膜ユニットの透過水の溶質濃度が設定値を超えないように、前記第1の半透膜ユニットに接続されている前記第1の原水供給ラインにおける原水の流量と前記第2の半透膜ユニットに接続されている前記第2の原水供給ラインにおける原水の流量を制御してなる淡水製造装置の運転方法。
【0022】
)上記(4)項に記載の淡水製造装置の運転方法であって、前記第1の半透膜ユニットに接続されている前記第1の原水供給ラインにおける供給水の流量と前記第2の半透膜ユニットに接続されている前記第2の原水供給ラインにおける供給水の流量に応じて、前記共通補助半透膜ユニットの使用の要否やそれへの供給水の供給量を制御してなる淡水製造装置の運転方法。
【0023】
10)上記(5)項に記載の淡水製造装置の運転方法であって、前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットへの供給水の供給圧力が設定値を超えないように、前記並列運転可能な補助半透膜ユニットの使用の要否やそれらへの供給水の供給量を制御してなる淡水製造装置の運転方法。
【0024】
11)前記第2の半透膜ユニットの透過水の少なくとも一部を前記第1の半透膜ユニットの供給水に混合させるラインを有し、処理水質が設定値を超えないように前記第2の半透膜ユニットの透過水の少なくとも一部を前記第1の半透膜ユニットの供給水に混合させてなる上記(または10)項のいずれかに記載の淡水製造装置の運転方法。
【0025】
12)少なくとも前記第1の半透膜ユニットおよび前記第2の半透膜ユニットの濃縮水、もしくは、並列に設けられた前記補助半透膜ユニットの濃縮水のいずれかを、他のいずれかの半透膜ユニットの供給水に混合してなる上記(5)乃至(7)項のいずれかに記載の淡水製造装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって、海水、河川水、地下水、排水処理水など様々な原水に応じて最適な半透膜ユニットを使用することが可能となり、従来の淡水製造装置では不可能であった効率的な淡水の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の淡水製造装置の一実施態様の概略フロー図である。
図2図2は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図3図3は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図4図4は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図5図5は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図6図6は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図7図7は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図8図8は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図9図9は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図10図10は、従来の淡水製造装置の概略フロー図である。
図11図11は、他の従来の淡水製造装置の概略フロー図である。
図12図12は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図13図13は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
図14図14は、本発明の淡水製造装置の他の一実施態様の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の望ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。ただし、本発明の範囲がこれらに限られるものではない。
【実施例1】
【0029】
図1は、淡水製造装置A1を形成している各要素の配置図(フローチャート)である。図1に、淡水製造装置A1に設けられている水に含まれる溶質を分離する複数の半透膜ユニットと、それらに直接的あるいは間接的に接続されている水が流れる管(ライン)、水を貯留するタンク、水を送給するポンプ、および、水の流量を制御するバルブなどの配置が示されている。
【0030】
淡水製造装置A1には、上流側から、原水タンク2、半透膜ユニットに供給する前に原水をろ過処理するなどする原水の前処理ユニット4、第1の半透膜ユニット7、第2の半透膜ユニット8、透過水タンク10、および、エネルギー回収ユニット9が配置されている。
【0031】
原水タンク2には、淡水製造装置A1の外部から原水1を原水タンク2に供給する原水ラインRL1の下流端が接続されている。原水1は、原水タンク2に一旦貯留される。原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水タンク2に一旦貯留されている原水1が前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1がろ過などの前処理を受ける。
前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、ラインを流れる水を分流する分岐点BP1が設けられている。原水ラインRL3には、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力を原水に付与するための昇圧ポンプ5が設けられている。
【0032】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられている。
【0033】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、昇圧ポンプ5により昇圧され、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において分流され、分流された一方の原水は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aを経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された他方の原水は、第2の原水供給ラインFL2へと流れ、バルブ6bを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。バルブ6aおよびバルブ6bにより、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8への原水の供給量が制御される。
【0034】
水の溶質成分を除去するための半透膜ユニットは、図1において、第1の半透膜ユニット7および第2の半透膜ユニット8をもって示されるように、長方形とその一方の対角線をもって描画される。この描画手法は、この技術分野において、半透膜ユニットを図示するときに慣用されている。本件出願においても、図面における半透膜ユニットの図示に、この描画手法が用いられている。
【0035】
長方形は、半透膜ユニットの容器を表し、対角線は、そこに収容されている半透膜(逆浸透膜)を表している。半透膜ユニットに供給される水が、半透膜により処理を受ける水である。半透膜を通過しなかった水は、通常、濃縮水と呼称され、濃縮水は、半透膜ユニットから排出される。一方、半透膜を通過した水は、通常、透過水と呼称され、透過水は、半透膜ユニットから排出される。半透膜ユニットは、半透膜ユニットの供給水収容空間に供給水を外部から導入するための供給水導入ポートと、供給水収容空間から濃縮水を排出するための濃縮水排出ポートと、半透膜を通過し、半透膜ユニットの透過水収容空間に至った透過水を排出するための透過水排出ポートを有する。
【0036】
図1において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続されている。第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とは、濃縮水ラインCL1により接続されている。濃縮水ラインCL1には、ブースターポンプ12が設けられている。ブースターポンプ12により、濃縮水ラインCL1を流れる濃縮水が、必要に応じて、昇圧される。
【0037】
第1の半透膜ユニット(1段目半透膜ユニット)7の濃縮水ラインCL1にブースターポンプ12が備えられており、これによって、第1の半透膜ユニット(1段目半透膜ユニット)7で生じた圧力低下による原水供給ライン(バイパスライン)FL2との圧力差を補うことができるが、基本的には、ブースターポンプ12を備えなくても、バルブ6bを絞ることによって圧力低下を生じさせることで圧力のバランスをとることが可能である。
【0038】
第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続され、濃縮水ラインCL2には、エネルギー回収ユニット9が設けられている。第2の半透膜ユニット8から排出された濃縮水11は、エネルギー回収ユニット9を経て、淡水製造装置A1の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9により、濃縮水ラインCL2を流れる濃縮水の圧力エネルギーが回収される。
【0039】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0040】
図1に示す淡水製造装置A1の特徴は、次の通りでる。
【0041】
溶質を含有する原水1から淡水を製造するための淡水製造装置A1であり、該淡水製造装置A1は、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8を含み、前記第1の半透膜ユニット7に、前記原水1を供給する第1の原水供給ラインFL1が接続され、前記第1の半透膜ユニット7と前記第2の半透膜ユニット8は、前記第1の半透膜ユニット7の濃縮水を前記第2の半透膜ユニット8に供給する濃縮水ラインCL1により接続され、かつ、前記第2の半透膜ユニット8に、前記原水1を供給する第2の原水供給ラインFL2が接続されている淡水製造装置。
【0042】
図1に示す淡水製造装置A1は、バルブ6a、6bによって原水1の全量を第1の半透膜ユニット(1段目半透膜ユニット)7に供給することもできれば、原水1の全量もしくは一部を、第1の半透膜ユニット(1段目半透膜ユニット)7をバイパスさせて、第2の半透膜ユニット(2段目半透膜ユニット)8に直接供給することができる装置構成になっている。
【0043】
この装置を用いて、河川水のように濃度が低い原水を処理する場合は、バルブ6aを全開、バルブ6bを全閉にすることで、原水の全量を1段目半透膜ユニット7で処理し、濃度が上がるに従ってバルブ6bを開けつつ、バルブ6aを絞ってバイパス量を増やし、最終的には原水の全量を2段目半透膜ユニット8のみで処理することになる。この制御は、原水が高濃度になるに従って透過水濃度も上がるため、それを抑えるために、このように制御することが好ましい。これは、前記(11)項に記載の態様により、達成される。
【0044】
従って、特に制約はないが、1段目半透膜ユニット7には、いわゆるかん水(低濃度)用半透膜、2段目半透膜ユニット8には、いわゆる海水(高濃度)用半透膜を適用することが好ましい。
【0045】
海水用半透膜は、かん水用半透膜よりも耐圧性が高く設計されているため、1段目半透膜ユニット7の耐圧性は、2段目半透膜ユニット8の耐圧性よりも低くすることによって、設備コストを低減させることができる。これは、前記(9)項に記載の態様により、達成される。
【0046】
また、海水用半透膜は、膜の溶質の阻止性能が高く、その分透水性が低いため、1段目半透膜ユニット7の透水性能は、2段目半透膜ユニット8の透水性能よりも高いことが好ましい。これは、前記(8)項に記載の態様により、達成される。
【0047】
なお、ここでいう耐圧性は、膜に対して原水側から透過水側へ正圧をかけた場合に、溶質の阻止性能が維持できる圧力を意味する。それ以上の圧力をかけると膜が変形し、透水性能の低下を招いたり、溶質の阻止性能が著しく低下する。
【0048】
一般には、低圧用に比べて高圧用半透膜の方が緻密な構造となっていたり、膜の支持体に高強度の部材を使ったりすることによって、耐圧性を高めている。耐圧性は、運転圧力を高めて透水性能や阻止性能が許容以上に低下しないかで簡便に確認することができる。
【0049】
また、膜エレメント、モジュール、ユニット全体としても、高い圧力をかけても破裂、破損、漏れを生じない接着剤、ケーシング、圧力容器、配管部材を用いて、それらの耐圧性を高める必要がある。これらの耐圧性を確認するためには、徐々に高い静水圧を与えて、漏水や破裂する圧力を確認するのが一般的であり、使用上限は、安全を見込んで、確認された耐圧の度合いの数分の1程度にすることが多い。
【0050】
さらに、1段目半透膜ユニット7が基本的に低濃度用、2段目半透膜ユニット8が中高濃度用であることを鑑みると、1段目半透膜ユニット7や昇圧ポンプ5a(後述の図2を参照)の耐腐食性は、それほど高いものが要求されず、例えば、SUS304、SUS316、SUS316Lといった、通常の海水淡水化には適用困難とされている汎用ステンレスをこれらの構成部材の材料として用いることができる。
【0051】
一方、高濃度条件となる2段目半透膜ユニット8や昇圧ポンプ5b(後述の図2参照)は、1段目半透膜ユニット7や昇圧ポンプ5aよりも高い耐腐食性が求められ、濃度が海水レベル以上の場合は、SUS254SMO、SAF2507といったスーパーオーステナイトやスーパーデュプレックスといった耐腐食性が特に高いステンレスを、これらの構成部材の材料として適用することが好ましい。これは、前記(10)項に記載の態様により、達成される。
【0052】
ここでいう腐食は、特に酸や塩化物による全面腐食や局部腐食を意味し、材料に応じて、温度、pH、塩化物濃度といったパラメータを用いた臨界腐食曲線が求められ、臨界条件よりも厳しい(高温、強酸、高濃度)条件とならないように、材料を選定する必要がある。耐腐食性の試験は、腐食のタイプによっても様々な方法があり、ある条件下の液に一定時間浸漬して腐食が観察されるか、重量が変化するか、強度が低下するかなどの試験方法を挙げることができる。
【0053】
かかる状況からして、本発明の淡水製造装置において、1段目半透膜ユニット7およびその周りの部材の耐圧性および/または耐腐食性を低くすることができ、設備コストを下げることが可能となる。
【0054】
ただし、1段目半透膜ユニット7の供給圧力については、注意が必要であり、図1のように1つの昇圧ポンプ5で、1段目半透膜ユニット7と2段目半透膜ユニット8に原水を供給する場合は、昇圧ポンプ5が1段目半透膜ユニット7の耐圧以上の能力を有する設計となる場合が多く、設定値を超えないような安全策が必要となる。これは、前記(11)項に記載の態様により、達成される。
【0055】
ここで、本発明の目的である水質が様々な原水を処理する観点から、原水1は、濃度が変動する1つのラインもしくは、濃度が異なる2種類のラインから供給することが好ましい。その選択や組成が異なる原水の混合比率は、淡水製造装置の設計によるが、例えば、原水の濃度変動を抑えるように、原水の混合比率を制御したり、温度が低い場合には、温度の高い方の原水を多くしたり、濃度が低い方の原水を多くして混合原水の濃度を低減したりして、運転圧力変動を抑制するような制御をすることが好ましい。これは、前記(2)項に記載の態様により、達成される。
【0056】
また、図1では昇圧ポンプ5のみで2つの半透膜ユニットに原水を供給しているが、後述の図2に例示するように、昇圧ポンプを、分岐後のそれぞれの原水供給ラインに1台ずつ、計2台の昇圧ポンプ5a、5bに分けることも可能であるし、さらに、後述の図3に例示するように、2段目半透膜ユニットの直前にブースターポンプ12aを備えて、2段目半透膜ユニットへの原水の供給圧力を上げることも可能であるし、後述の図4に例示するように、ブースターポンプの代わりに濃縮水の圧力エネルギーを利用して昇圧する無動力昇圧ユニット13の適用も可能である。これは、前記(3)項に記載の態様により、達成される。
【0057】
また、本発明における淡水製造装置において、バイパス量を変化させた場合、1段目半透膜ユニット7と2段目半透膜ユニット8への供給流量が変化することになるが、通常、半透膜ユニットにおける流量設定には最大値と最小値が定められており、その範囲内に制御するためには、例えば、半透膜ユニットを複数のサブユニットで構成し、流量に応じて運転するサブユニット(補助半透膜ユニット)の数を変化させることが挙げられる。さらに、1段目半透膜ユニットへの供給水量を減らす、すなわちバイパス量を増やした場合、2段目半透膜ユニットへの供給量が増えることになるため、後述の図5に例示するように、1段目半透膜ユニットの総膜面積を減らした分、2段目半透膜ユニットの総膜面積を増やせるように共通補助半透膜ユニット16を設けることも好ましい。これは、前記(4)、(12)、あるいは、(13)項に記載の態様により、達成される。
【0058】
さらに、後述の図6に例示するように、2段目半透膜ユニットに並列して設けられたサブユニット(補助半透膜ユニット)8bに、原水を供給することによって、フレキシビリティを持たせることも可能である。これは、前記(5)、あるいは、(6)項に記載の態様により、達成される。
【0059】
原水が2種類以上使用できる場合は、その量によっては、後述の図7に例示するように、高濃度の原水1sを直接、2段目半透膜ユニットに並列して設けられたサブユニット(補助半透膜ユニット)8cに供給することも好ましい態様である。これは、前記(7)項に記載の態様により、達成される。
【0060】
なお、この場合、図7において、運転条件によっては、2段目半透膜ユニット8の濃縮水11は、高濃度の原水1sと同等レベルの濃度を有するため、後述の図12に例示するように、補助半透膜ユニット8cへの供給水として使用することも可能である。
【0061】
なお、中間タンク17(図8図9参照)、17a(図12参照)は、混合を確実に行う役割と流量変動に対するバッファの役目を担っているが、中間タンクなしで直接混合することも可能であるし、配管内にスタティックミキサーを備えることも可能である。また、半透膜ユニットの濃縮水濃度が他の半透膜ユニットの供給水と同レベル以下である場合は、後述の図13、あるいは、図14に例示するように、並列して設けられている補助半透膜ユニットの濃縮水を供給水に混合することによって、片方の濃縮廃水を実質的になくすことができるため、非常に好ましい態様である。これは、前記(15)項に記載の態様により、達成される。
【0062】
また、従来技術(非特許文献2)には、海水を原水とし、1段目半透膜ユニットの透過水質が十分でない場合に、2段目半透膜ユニットを用いて1段目半透膜ユニットの透過水を再処理する方法が開示されているが、本発明においても、後述の図8に例示するような装置構成にすることによって、原水に応じたフレキシブルなシステムとすることが可能である。
【0063】
すなわち、図8において、原水濃度が低い河川水のような原水1を処理する場合は、バルブ6aを全開、バルブ6bを全閉にして、全量を1段目半透膜ユニット7で処理し、その濃縮水を2段目半透膜ユニット8で全量処理する。なお、このとき、バルブ6ba、6ctは全閉、バルブ6caは全開である。
【0064】
原水1の濃度が上がってきた場合は、バルブ6bを徐々に開けて適当量をバイパスさせ、最終的にはバルブ6aを全閉、バルブ6bを全開にし、原水1をすべて直接2段目半透膜ユニット8で処理する。なお、このとき、バルブ6caは全開、バルブ6baは全閉である。
【0065】
さらに原水1の濃度が上がった場合や、膜の劣化や温度変化があった場合においても、透過水質の低下を防ぎたい場合は、その程度に応じて、バルブ6baを開けつつバルブ6caを絞っていき、2段目半透膜ユニット8の透過水の一部もしくは全部を中間タンク17に送るとともにバルブ6ctを開けて、1段目半透膜ユニット7に送ることによって再処理して水質の優れた透過水を得ることができる。これは、前記(7)あるいは(14)項に記載の態様により、達成される。
【0066】
なお、流量の調整は、バルブで実施することに加え、原水供給ポンプ3や昇圧ポンプ5などにインバーターを装備し、流量制御すると、エネルギー効率の面から好ましい。また、後述の図9に示すように、1段目半透膜ユニットと2段目半透膜ユニットを複数のサブユニットに分け、流量に応じて稼働サブユニット数を変えることも好ましい。
【0067】
本発明の淡水製造装置に適用可能な原水としては、例えば、前述の河川水、海水、下水処理水などに加え、それらの濃縮排水、また発電所などの冷却排水がある。本発明の淡水製造装置は、季節などで取水できる量や水質が変動するような水を原水とすることが可能である。
【0068】
本発明に適用可能な半透膜ユニットとしては、特に制約はないが、取扱いを容易にするため、中空糸膜状や平膜状の半透膜を筐体に納めて流体分離素子(エレメント)としたものを耐圧容器に装填したものを用いることが好ましい。
【0069】
流体分離素子は、平膜で形成する場合、例えば、多数の孔を穿設した筒状の中心パイプの周りに、半透膜を流路材(ネット)とともに円筒状に巻回したものが一般的であり、市販製品としては、東レ(株)製逆浸透膜エレメントTM700シリーズやTM800シリーズを挙げることができる。これら、流体分離素子は1本でも、また、複数本を直列あるいは並列に接続して半透膜ユニットを構成しても良い。
【0070】
半透膜の素材として、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができる。膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のいずれであっても良い。
【0071】
半透膜ユニットにおいては、供給水が濃縮されるため、濃縮によるスケール析出を防止したり、pH調整のために、それぞれの半透膜ユニットへの供給水に対して、スケール防止剤や酸・アルカリを添加したりすることが可能である。なお、スケール防止剤の添加は、その添加効果が発揮されるように、pH調整よりも上流側で実施することが好ましい。また、薬品添加の直後にはインラインミキサーを設けたり、添加口を供給水の流れに直接接触するようにするなどして、添加口近傍での急激な濃度やpH変化を防止したりすることも好ましい。
【0072】
スケール防止剤とは、溶液中の金属、金属イオンなどと錯体を形成し、金属あるいは金属塩を可溶化させるもので、有機や無機のイオン性ポリマーあるいはモノマーが使用できる。有機系のポリマーとしてはポリアクリル酸、スルホン化ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミンなどの合成ポリマーやカルボキシメチルセルロース、キトサン、アルギン酸などの天然高分子が、モノマーとしてはエチレンジアミン四酢酸などが使用できる。また、無機系のスケール防止剤としてはポリリン酸塩などが使用できる。
【0073】
これらのスケール防止剤の中では入手のしやすさ、溶解性など操作のしやすさ、価格の点から特にポリリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好適に用いられる。ポリリン酸塩とはヘキサメタリン酸ナトリウムを代表とする分子内に2個以上のリン原子を有し、アルカリ金属、アルカリ土類金属とリン酸原子などにより結合した重合無機リン酸系物質をいう。代表的なポリリン酸塩としては、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘプタポリリン酸ナトリウム、デカポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびこれらのカリウム塩などがあげられる。
【0074】
一方、酸やアルカリとしては、硫酸や水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムが一般的に用いられるが、塩酸、シュウ酸、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウムなどを使用することもできる。但し、海水へのスケール成分の増加を防止するためには、カルシウムやマグネシウムは使用しない方がよい。
【0075】
本発明における、前処理ユニット4においては、それぞれの供給水の水質など必要に応じて、濁質成分の除去や殺菌などを適用することができる。
【0076】
供給水の濁質を除去する必要がある場合は、砂ろ過や精密ろ過膜、限外ろ過膜の適用が効果的である。このときバクテリアや藻類などの微生物が多い場合は、殺菌剤を添加することも好ましい。殺菌剤としては、塩素を用いることが好ましく、たとえば塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムを遊離塩素として1乃至5mg/lの範囲内となるように供給水に添加するとよい。
【0077】
なお、半透膜によっては特定の殺菌剤に化学的な耐久性がない場合があるので、その場合は、なるべく供給水の上流側で添加し、さらに、半透膜ユニットの供給水入口側近傍にて殺菌剤を無効にすることが好ましい。例えば、遊離塩素の場合は、その濃度を測定し、この測定値に基づいて塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムの添加量を制御したり、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加したりするとよい。
【0078】
また、濁質以外にバクテリアやタンパク質、天然有機成分などを含有する場合は、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、塩化鉄(III)などの凝集剤を加えることも効果的である。凝集させた供給水は、その後に斜向板などで沈降させた上で砂ろ過を行ったり、複数本の中空糸膜を束ねた精密ろ過膜や限外ろ過膜によるろ過を行ったりすることによって後段の半透膜ユニットを通過させるのに適した供給水とすることができる。とくに、凝集剤の添加にあたっては、凝集しやすいようにpHを調整することが好ましい。
【0079】
前処理に、砂ろ過を用いる場合は、自然に流下する方式の重力式ろ過を適用することもできれば、加圧タンクの中に砂を充填した加圧式ろ過を適用することも可能である。充填する砂も、単一成分の砂を適用することが可能であるが、例えば、アンスラサイト、珪砂、ガーネット、軽石など、を組み合わせて、ろ過効率を高めることが可能である。
【0080】
精密ろ過膜や限外ろ過膜についても、特に制約はなく、平膜、中空糸膜、管状型膜、プリーツ型、その他いかなる形状のものも適宜用いることができる。
【0081】
膜の素材についても、特に限定されないが、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースや、セラミック等の無機素材を用いることができる。
【0082】
また、ろ過方式にしても、供給水を加圧してろ過する加圧ろ過方式や透過側を吸引してろ過する吸引ろ過方式のいずれも適用可能である。とくに、吸引ろ過方式の場合は、凝集沈殿槽や生物処理槽に精密ろ過膜や限外ろ過膜を浸漬してろ過する、いわゆる凝集膜ろ過や膜利用活性汚泥法(MBR)を適用することも好ましい。
【0083】
一方、供給水に溶解性の有機物が多く含まれている場合は、塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムの添加によってそれら有機物を分解することができるが、加圧浮上や活性炭ろ過を行うことによっても除去が可能である。また、溶解性の無機物が多く含まれている場合は、有機系高分子電解質やヘキサメタ燐酸ソーダなどのキレート剤を添加したり、イオン交換樹脂などを用いて溶解性イオンと交換したりするとよい。また、鉄やマンガンが可溶な状態で存在しているときは、ばっ気酸化ろ過法や接触酸化ろ過法などを用いることが好ましい。
【0084】
あらかじめ特定イオンや高分子などを除去し、本発明における淡水製造装置を高効率で運転することを目的として、前処理に、ナノろ過膜を用いることも可能である。
【0085】
図1に示される淡水製造装置A1のいくつかの変形態様が、以下の実施例において説明される。
【実施例2】
【0086】
図2に、淡水製造装置A2が示される。この淡水製造装置A2は、昇圧ポンプを複数備える淡水製造装置である。図2の淡水製造装置A2において、図1に示す淡水製造装置A1における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。
【0087】
図2の淡水製造装置A2において、原水タンク2には、淡水製造装置A2の外部から原水1を原水タンク2に供給する原水ラインRL1の下流端が接続されている。原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水1が原水タンク2から前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1は前処理される。前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、ラインを流れる水を分流する分岐点BP1が設けられている。
【0088】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられているとともに、バルブ6aと第1の半透膜ユニット7の間の位置において、第1の原水供給ラインFL1に昇圧ポンプ5aが設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられているとともに、バルブ6bと第2の半透膜ユニット8の間の位置において、第2の原水供給ラインFL2に昇圧ポンプ5bが設けられている。
【0089】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において分流され、分流された一方の原水は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aおよび昇圧ポンプ5aを経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された他方の原水は、第2の原水供給ラインFL2へと流れ、バルブ6bおよび昇圧ポンプ5bを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。昇圧ポンプ5aにより、第1の原水供給ラインFL1を流れる原水に、第1の半透膜ユニット7において必要とされる圧力が付与される。昇圧ポンプ5bにより、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水に、第2の半透膜ユニット8において必要とされる圧力が付与される。バルブ6aおよびバルブ6bにより、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8への原水の供給量が制御される。
【0090】
図2において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続されている。第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とは、濃縮水ラインCL1により接続されている。第2の原水供給ラインFL2と濃縮水ラインCL1との接続位置、すなわち合流点MP1より上流側に、昇圧ポンプ5bが位置している。第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続され、濃縮水ラインCL2には、エネルギー回収ユニット9が設けられている。第2の半透膜ユニット8から排出された濃縮水11は、エネルギー回収ユニット9を経て、淡水製造装置A2の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9により、濃縮水ラインCL2を流れる濃縮水のエネルギーが回収される。
【0091】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0092】
図1の淡水製造装置A1と図2の淡水製造装置A2との相違点は、淡水製造装置A1の原水ラインRL3に設けられていた昇圧ポンプ5が、淡水製造装置A2では無く、その代わりに、図2の淡水製造装置A2では、第1の原水供給ラインFL1に昇圧ポンプ5aが設けられるとともに、第2の原水供給ラインFL2に昇圧ポンプ5bが設けられている点と、図1の淡水製造装置A1の濃縮水排水ラインCL1に設けられていたブースターポンプ12が、図2の淡水製造装置A2の濃縮水排水ラインCL1には無い点である。
【実施例3】
【0093】
図3に、淡水製造装置A3が示される。この淡水製造装置A3は、複数種の原水ラインを有する淡水製造装置である。図3の淡水製造装置A3において、図1に示す淡水製造装置A1における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。
【0094】
図3の淡水製造装置A3において、原水タンク2には、淡水製造装置A3の外部から第1の原水1aを原水タンク2に供給する第1の原水ラインRL1aの下流端と、淡水製造装置A3の外部から原水1aとは異なる組成を有する第2の原水1bを原水タンク2に供給する第2の原水ラインRL1bの下流端とが接続されている。原水ラインRL1aには、バルブ6dが、原水ラインRL1bには、バルブ6cが設けられている。原水1aの原水タンク2への供給量は、バルブ6dにより制御され、また、原水1bの原水タンク2への供給量は、バルブ6cにより制御される。
【0095】
原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水タンク2に貯められている原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水1が原水タンク2から前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1が前処理される。前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、ラインを流れる水を分流する分岐点BP1が設けられている。原水ラインRL3には、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力を原水に付与するための昇圧ポンプ5が設けられている。
【0096】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられている。
【0097】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、昇圧ポンプ5により昇圧され、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において分流され、分流された一方の原水は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aを経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された他方の原水は、第2の原水供給ラインFL2へと流れ、バルブ6bを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。バルブ6aおよびバルブ6bにより、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8への原水の供給量が制御される。
【0098】
図3において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続されている。第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とは、濃縮水ラインCL1により接続されている。第2の原水供給ラインFL2と濃縮水ラインCL1との接続位置、すなわち合流点MP1と第2の半透膜ユニット8との間の位置において、第2の原水供給ラインFL2にブースターポンプ12aが設けられている。ブースターポンプ12aにより、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水に、第2の半透膜ユニット8において必要とされる圧力が付与される。
【0099】
第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続され、濃縮水ラインCL2には、エネルギー回収ユニット9が設けられている。第2の半透膜ユニット8から排出された濃縮水11は、エネルギー回収ユニット9を経て、淡水製造装置A1の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9により、濃縮水ラインCL2を流れる濃縮水のエネルギーが回収される。
【0100】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0101】
図1の淡水製造装置A1と図3の淡水製造装置A3との相違点は、図1の淡水製造装置A1における原水タンク2への原水の供給は、1本の原水ラインRL1により行われていたが、図3の淡水製造装置A3における原水タンク2への原水の供給は、それぞれ異なる取水源に接続された2本の原水ラインRL1aと原水ラインRL1bにより行うことが可能な点と、淡水製造装置A1の濃縮水排水ラインCL1に設けられていたブースターポンプ12が、淡水製造装置A3の濃縮水排水ラインCL1には無く、それに代えて、淡水製造装置A3の第2の原水供給ラインRL2にブースターポンプ12aが設けられている点である。
【実施例4】
【0102】
図4に、淡水製造装置A4が示される。この淡水製造装置A4は、無動力エネルギー回収ユニットを備えた淡水製造装置である。図4の淡水製造装置A4において、図3に示す淡水製造装置A3における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。
【0103】
図4の淡水製造装置A4において、原水タンク2には、淡水製造装置A4の外部から第1の原水1aを原水タンク2に供給する第1の原水ラインRL1aの下流端と、淡水製造装置A4の外部から原水1aとは異なる組成を有する第2の原水1bを原水タンク2に供給する第2の原水ラインRL1bの下流端とが接続されている。原水ラインRL1aには、バルブ6dが、原水ラインRL1bには、バルブ6cが設けられている。原水1aの原水タンク2への供給量は、バルブ6dにより制御され、また、原水1bの原水タンク2への供給量は、バルブ6cにより制御される。
【0104】
原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水タンク2に貯められている原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水1が原水タンク2から前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1が前処理される。前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、ラインを流れる水を分流する分岐点BP1が設けられている。原水ラインRL3には、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力を原水に付与するための昇圧ポンプ5が設けられている。
【0105】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられている。
【0106】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、昇圧ポンプ5により昇圧され、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において分流され、分流された一方の原水は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aを経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された他方の原水は、第2の原水供給ラインFL2へと流れ、バルブ6bを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。バルブ6aおよびバルブ6bにより、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8への原水の供給量が制御される。
【0107】
図4において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続されている。第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とは、濃縮水ラインCL1により接続されている。第2の原水供給ラインFL2と濃縮水ラインCL1との接続位置、すなわち合流点MP1と第2の半透膜ユニット8との間の位置において、第2の原水供給ラインFL2に無動力昇圧ユニット13が設けられている。無動力昇圧ユニット13により、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水に、第2の半透膜ユニット8において必要とされる圧力が付与される。
【0108】
第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続されている。濃縮水ラインCL2は、無動力昇圧ユニット13を経て、淡水製造装置A4の外部へと設けられている。無動力昇圧ユニット13において、濃縮水ラインCL2を流れる第2の半透膜ユニット8の濃縮水のエネルギーを利用して、第2の原水供給ラインFL2を流れ第2の半透膜ユニット8に供給される原水の圧力が制御される。無動力昇圧ユニット13を通過した濃縮水11は、淡水製造装置A4の外部へと排出される。
【0109】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0110】
図3の淡水製造装置A3と図4の淡水製造装置A4との相違点は、図3の淡水製造装置A3における原水供給ラインFL2に設けられていたブースターポンプ12aと濃縮水排出ラインCL2に設けられていたエネルギー回収ユニット9が、図4の淡水製造装置A4では無く、これらが無動力昇圧ユニット13に置き換えられている点である。
【実施例5】
【0111】
図5に、淡水製造装置A5が示される。この淡水製造装置A5は、半透膜サブユニット(補助半透膜ユニット)を備える淡水製造装置である。図5の淡水製造装置A5において、図3に示す淡水製造装置A3における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。
【0112】
図5の淡水製造装置A5において、原水タンク2には、淡水製造装置A5の外部から第1の原水1aを原水タンク2に供給する第1の原水ラインRL1aの下流端と、淡水製造装置A5の外部から原水1aとは異なる組成を有する第2の原水1bを原水タンク2に供給する第2の原水ラインRL1bの下流端とが接続されている。原水ラインRL1aには、バルブ6dが、原水ラインRL1bには、バルブ6cが設けられている。原水1aの原水タンク2への供給量は、バルブ6dにより制御され、また、原水1bの原水タンク2への供給量は、バルブ6cにより制御される。
【0113】
原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水タンク2に貯められている原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水1が原水タンク2から前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1が前処理される。前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、分岐点BP1が設けられている。原水ラインRL3には、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力を原水に付与するための昇圧ポンプ5が設けられている。
【0114】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられている。
【0115】
分岐点BP1から分岐して、第1の原水供給ラインFL1と第1の原水供給ラインFL2とは別の、第3の原水供給ラインFL3が設けられている。第3の原水供給ラインFL3の下流端は、第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16に接続されている。第3の原水供給ラインFL3には、バルブ6mが設けられている。
【0116】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、昇圧ポンプ5により昇圧され、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において3方向に分流され、分流された原水の一部は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aを経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された原水の他の一部は、第2の原水供給ラインFL2へと流れ、バルブ6bを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。分流された原水の残りは、第3の原水供給ラインFL3へと流れ、バルブ6mを経て第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16の供給水側空間へと供給される。バルブ6a、バルブ6bおよびバルブ6mにより、第1の半透膜ユニット7、第2の半透膜ユニット8および第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16への原水の供給量が制御される。
【0117】
図5において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続され、第3の原水供給ラインFL3の下流端は、第3の半透膜ユニット16の供給水導入ポートに接続されている。第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とが、濃縮水ラインCL1により接続されている。第2の原水供給ラインFL2の合流点MP1と第2の半透膜ユニット8との間の位置において、第2の原水供給ラインFL2にブースターポンプ12aが設けられている。ブースターポンプ12aにより、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水に、第2の半透膜ユニット8において必要とされる圧力が付与される。
【0118】
第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続され、濃縮水ラインCL2には、エネルギー回収ユニット9が設けられている。第2の半透膜ユニット8から排出された濃縮水11は、エネルギー回収ユニット9を経て、淡水製造装置A5の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9により、濃縮水ラインCL2を流れる濃縮水のエネルギーが回収される。
【0119】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、透過水ラインPL1に設けられた合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0120】
図5の淡水製造装置A5は、更に、第2の原水供給ラインFL2と第3の原水供給ラインFL3とを接続する補助原水供給ラインAFL1を有する。補助原水供給ラインAFL1は、第2の原水供給ラインFL2のブースターポンプ12aと第2の半透膜ユニット8との間の位置において、第2の原水供給ラインFL2に設けられている分岐点BP2と第3の原水供給ラインFL3のバルブ6mと第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16との間の位置において、第3の原水供給ラインFL3に設けられている合流点MP3とを接続している。補助原水供給ラインAFL1には、バルブ6pが設けられている。バルブ6pにより、補助原水供給ラインAFL1における原水の流量が制御される。
【0121】
第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL3が接続されている。濃縮水ラインCL3の下流端は、第2の半透膜ユニット8とエネルギー回収ユニット9との間の位置において、濃縮水ラインCL2に設けられている合流点MP4において、濃縮水ラインCL2に接続されている。濃縮水ラインCL3には、バルブ6qが設けられている。第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16から排出され、合流点MP4へと濃縮水ラインCL3を流れる濃縮水の流量は、バルブ6qにより制御される。
【0122】
濃縮水ラインCL3と対をなす形で、補助濃縮水ラインACL1が設けられている。補助濃縮水ラインACL1は、第3の半透膜ユニット16とバルブ6qとの間の位置において濃縮水ラインCL3に設けられた分岐点BP3と第1の半透膜ユニット7と合流点MP1との間の位置において濃縮水ラインCL1に設けられた合流点MP5とを結んで設けられている。補助濃縮水ラインACL1には、バルブ6nが設けられている。バルブ6nにより、補助濃縮水ラインACL1を流れる濃縮水の流量が制御される。
【0123】
第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16の透過水排出ポートには、透過水ラインPL3が接続され、その下流端は、透過水ラインPL1に設けられた合流点MP6において、透過水ラインPL1に接続されている。このライン構成により、第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0124】
図3の淡水製造装置A3と図5の淡水製造装置A5との相違点は、図5の淡水製造装置A5は、図3の淡水製造装置A3を含み、それに加えて第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)16が、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8に対し並列して、補助的に装備されている点である。
【実施例6】
【0125】
図6に、淡水製造装置A6が示される。この淡水製造装置A6は、2段の半透膜ユニットに並列に1段の半透膜ユニットを備えた淡水製造装置である。図6の淡水製造装置A6において、図3に示す淡水製造装置A3における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。
【0126】
図6の淡水製造装置A6において、原水タンク2には、淡水製造装置A6の外部から第1の原水1aを原水タンク2に供給する第1の原水ラインRL1aの下流端と、淡水製造装置A6の外部から原水1aとは異なる組成を有する第2の原水1bを原水タンク2に供給する第2の原水ラインRL1bの下流端とが接続されている。原水ラインRL1aには、バルブ6dが、原水ラインRL1bには、バルブ6cが設けられている。原水1aの原水タンク2への供給量は、バルブ6dにより制御され、また、原水1bの原水タンク2への供給量は、バルブ6cにより制御される。
【0127】
原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水タンク2に貯められている原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水1が原水タンク2から前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1が前処理される。前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、ラインを流れる水を分流する分岐点BP1が設けられている。原水ラインRL3には、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力を原水に付与するための昇圧ポンプ5が設けられている。
【0128】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられている。
【0129】
第2の原水供給ラインFL2は、分岐点BP1とバルブ6bとの間の位置において、分岐点BP4を有する。分岐点BP4から分岐して、第1の原水供給ラインFL1と第2の原水供給ラインFL2とは別の、第4の原水供給ラインFL4が設けられている。第4の原水供給ラインFL4の下流端は、第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bに接続されている。第4の原水供給ラインFL4には、バルブ6fが設けられている。
【0130】
バルブ6fと第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bの間の位置において、第4の原水供給ラインFL4に、ブースターポンプ12bが設けられている。バルブ6fにより、第4の原水供給ラインFL4に流れる原水の流量が制御される。ブースターポンプ12bにより、第4の原水供給ラインFL4を流れる原水に、第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bにおいて必要される圧力が付与される。
【0131】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、昇圧ポンプ5により昇圧され、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において2方向に分流され、分流された原水の一方は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aを経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された原水の他方は、第2の原水供給ラインFL2へと流れる。第2の原水供給ラインFL2へと流れた原水は、分岐点BP4において2方向に分流される。分岐点BP4において分流された原水の一方は、バルブ6bを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。分岐点BP4において分流された原水の他方は、第4の原水供給ラインFL4へと流れ、バルブ6fを経て第4の半透膜ユニット8bの供給水側空間へと供給される。バルブ6a、バルブ6bおよびバルブ6fにより、第1の半透膜ユニット7、第2の半透膜ユニット8および第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bへの原水の供給量が制御される。
【0132】
図6において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続され、第4の原水供給ラインFL4の下流端は、第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bの供給水導入ポートに接続されている。
【0133】
第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とが、濃縮水ラインCL1により接続されている。第2の原水供給ラインFL2の合流点MP1と第2の半透膜ユニット8との間の位置において、第2の原水供給ラインFL2に、ブースターポンプ12aが設けられている。ブースターポンプ12aにより、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水に、第2の半透膜ユニット8において必要とされる圧力が付与される。
【0134】
第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続されている。濃縮水ラインCL2には、エネルギー回収ユニット9が設けられている。エネルギー回収ユニット9を通過した濃縮水11は、淡水製造装置A6の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9により、濃縮水ラインCL2を流れる濃縮水のエネルギーが回収される。
【0135】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、透過水ラインPL1に設けられている合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0136】
図6の淡水製造装置A6は、更に、第2の半透膜ユニット8とエネルギー回収ユニット9との間の位置において、濃縮水ラインCL2に設けられた合流点MP7と第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bの濃縮水排出ポートとを接続する濃縮水ラインCL4を有する。第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bの濃縮水は、濃縮水ラインCL4を流れ、合流点MP7において、第2の半透膜ユニット8の濃縮水の流れに合流する。
【0137】
第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bの透過水排出ポートには、透過水ラインPL4が接続されている。透過水ラインPL4の下流端は、第2の半透膜ユニット8と透過水ラインPL1における合流点MP2との間の位置において、透過水ラインPL2に設けられている合流点MP8に接続されている。第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8bの透過水は、透過水ラインPL4を流れ、合流点MP8において、第2の半透膜ユニット8の透過水の流れに合流し、透過水タンク10に収容され、使用に供される。
【0138】
図3の淡水製造装置A3と図6の淡水製造装置A6との相違点は、図3の淡水製造装置A3において、第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)8aが、第2の半透膜ユニット8に対し並列して、付加的に装備されている点である。
【実施例7】
【0139】
図7に、淡水製造装置A7が示される。この淡水製造装置A7は、2段の半透膜ユニットに並列に1段の半透膜ユニットを備えた淡水製造装置である。図7の淡水製造装置A7において、図3の淡水製造装置A3における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。図7の淡水製造装置A7の基本的な構造は、図3の淡水製造装置A3と実質的に同じであるため、図7の淡水製造装置A7の説明は、図3の淡水製造装置A3に対し付加あるいは変更されている要素についての説明に止める。
【0140】
図7において、第1の原水ラインRL1aに、バルブ6dの上流側において、分岐点BP5が設けられている。分岐点BP5に、原水ラインRL1sの上流端が接続され、その下流端は、原水タンク2sに接続されている。原水ラインRL1sには、バルブ6eが設けられている。バルブ6eにより、原水ラインRL1sを原水タンク2sへと流れる原水の流量が制御される。原水タンク2sには、原水1sが貯留される。
【0141】
原水タンク2sと前処理ユニット4sとは、原水ラインRL2sにより接続されている。原水ラインRL2sには、ポンプ3sが設けられ、ポンプ3sにより、原水1sが前処理タンク4sに供給される。前処理ユニット4sから、原水ラインRL3sが導出され、その下流端は、昇圧ポンプ5sに接続されている。昇圧ポンプ5sと第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの供給水導入ポートとは、第5の原水供給ライン(補助原水供給ライン)FL5により接続されている。昇圧ポンプ5sにより、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cにおいて必要とされる圧力をもって、原水1sが第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの供給水側空間へと供給される。
【0142】
第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL5が接続され、濃縮水ラインCL5には、エネルギー回収ユニット9bが設けられている。第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cから排出された濃縮水11bは、エネルギー回収ユニット9bを経て、淡水製造装置A7の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9bにより、濃縮水ラインCL5を流れる濃縮水のエネルギーが回収される。
【0143】
第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの透過水排出ポートには、透過水ラインPL5が接続され、その下流端は、第2の半透膜ユニット8の透過水ラインPL2に、合流点MP9において、接続されている。第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの透過水は、透過水ラインPL5、透過水ラインPL2、および、透過水ラインPL1をこの順に流れ、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0144】
図3の淡水製造装置A3と図7の淡水製造装置A7との相違点は、図3の淡水製造装置A3において、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cが付加的に装備されている点である。第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cにより、第1の原水ラインRL1aから分流された第1の原水1a、すなわち、原水タンク2sに貯留された原水1sが、第2の半透膜ユニット8と並列して設けられている第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cにより処理される。
【実施例8】
【0145】
図8に、淡水製造装置A8が示される。この淡水製造装置A8は、1段目半透膜ユニットを2段目半透膜ユニットの透過水処理に適用可能な淡水製造装置である。図8の淡水製造装置A8において、図2に示す淡水製造装置A2における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。
【0146】
図8の淡水製造装置A8において、原水タンク2には、淡水製造装置A8の外部から原水1を原水タンク2に供給する原水ラインRL1の下流端が接続されている。原水タンク2と前処理ユニット4とは、原水ラインRL2により接続されている。原水ラインRL2には、原水1を前処理ユニット4に供給するポンプ3が設けられている。ポンプ3の作動により、原水1が原水タンク2から前処理ユニット4に供給され、前処理ユニット4において、原水1は前処理される。前処理ユニット4から原水ラインRL3が導出され、その下流端に、ラインを流れる水を分流する分岐点BP1が設けられている。
【0147】
分岐点BP1と第1の半透膜ユニット7とは、第1の原水供給ラインFL1により接続され、第1の原水供給ラインFL1には、バルブ6aが設けられているとともに、バルブ6aと第1の半透膜ユニット7の間の位置において、第1の原水供給ラインFL1に昇圧ポンプ5が設けられている。分岐点BP1と第2の半透膜ユニット8とは、第2の原水供給ラインFL2により接続され、第2の原水供給ラインFL2には、バルブ6bが設けられているとともに、バルブ6bと第2の半透膜ユニット8の間の位置において、第2の原水供給ラインFL2に昇圧ポンプ12aが設けられている。
【0148】
前処理ユニット4から導出され、原水ラインRL3を流れる原水1は、分岐点BP1に至る。原水1は、分岐点BP1において分流され、分流された一方の原水は、第1の原水供給ラインFL1へと流れ、バルブ6aおよび昇圧ポンプ5を経て第1の半透膜ユニット7の供給水側空間へと供給される。分流された他方の原水は、第2の原水供給ラインFL2へと流れ、バルブ6bおよび昇圧ポンプ12aを経て第2の半透膜ユニット8の供給水側空間へと供給される。昇圧ポンプ5により、第1の原水供給ラインFL1を流れる原水に、第1の半透膜ユニット7において必要とされる圧力が付与される。昇圧ポンプ12aにより、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水に、第2の半透膜ユニット8において必要とされる圧力が付与される。バルブ6aおよびバルブ6bにより、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8への原水の供給量が制御される。
【0149】
図8において、第1の原水供給ラインFL1の下流端は、第1の半透膜ユニット7の供給水導入ポートに接続され、第2の原水供給ラインFL2の下流端は、第2の半透膜ユニット8の供給水導入ポートに接続されている。第1の半透膜ユニット7の濃縮水排出ポートと第2の原水供給ラインFL2に設けられている合流点MP1とは、濃縮水ラインCL1により接続されている。第2の原水供給ラインFL2と濃縮水ラインCL1との接続位置、すなわち合流点MP1と第2の半透膜ユニット8との間に、昇圧ポンプ12aが位置している。第2の半透膜ユニット8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL2が接続され、濃縮水ラインCL2には、エネルギー回収ユニット9が設けられている。第2の半透膜ユニット8から排出された濃縮水11は、エネルギー回収ユニット9を経て、淡水製造装置A8の外部へと排出される。エネルギー回収ユニット9により、濃縮水ラインCL2を流れる濃縮水のエネルギーが回収される。
【0150】
第1の半透膜ユニット7の透過水排出ポートには、透過水ラインPL1が接続され、その下流端は、透過水タンク10に接続されている。第2の半透膜ユニット8の透過水排出ポートには、透過水ラインPL2が接続され、その下流端は、合流点MP2において、透過水ラインPL1に接続されている。これらのライン構成により、第1の半透膜ユニット7の透過水および第2の半透膜ユニット8の透過水は、透過水タンク10に収容される。透過水タンク10に収容された透過水は、淡水として使用に供される。
【0151】
図8の淡水製造装置A8は、更に、第2の半透膜ユニット8の透過水が貯留される中間タンク17を有する。中間タンク17と透過水ラインPL2に設けられている分岐点BP6とは、原水ラインRL4により接続されている。原水ラインRL4には、バルブ6baが設けられ、また、透過水ラインPL2に、分岐点BP6と合流点MP2との間の位置において、バルブ6caが設けられている。バルブ6caとバルブ6baにより、透過水ラインPL2を流れる第2の半透膜ユニット8の透過水の分岐点BP6における分流量の割合が制御される。すなわち、第2の半透膜ユニット8の透過水の透過水タンク10へと流れる流量と中間タンク17へと流れる流量との割合が制御される。
【0152】
中間タンク17と原水供給ラインFL1とは、原水供給ラインFL5により結ばれている。原水供給ラインFL5の下流端は、合流点MP10において、原水供給ラインFL1に接続されている。合流点MP10は、バルブ6aと昇圧ポンプ5との間の位置において、原水供給ラインFL1に設けられている。中間タンク17と合流点MP10との間の位置において、原水供給ラインFL5に、バルブ6ctが設けられている。中間タンク17に収容された第2の半透膜ユニット8の透過水は、バルブ6ctを経て、原水供給ラインFL1に供給される。中間タンク17から原水供給ラインFL1への透過水の供給量は、バルブ6ctにより制御される。
【0153】
図8の淡水製造装置A8は、第2の半透膜ユニット8の透過水の一部あるいは全部が、第1の半透膜ユニット7へ供給される原水として用いることが可能な要素配置を有する点を特徴としている。
【実施例9】
【0154】
図9に、淡水製造装置A9が示される。この淡水製造装置A9は、1段目半透膜ユニットを2段目半透膜ユニットの透過水処理に適用可能な淡水製造装置である。図9の淡水製造装置A9において、図8の淡水製造装置A8における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。図9の淡水製造装置A9の基本的な構造は、図8の淡水製造装置A8と実質的に同じであるため、図9の淡水製造装置A9の説明は、図8の淡水製造装置A8に対し付加あるいは変更されている要素についての説明に止める。
【0155】
図9の淡水製造装置A9において、原水供給ラインFL1に、昇圧ポンプ5と第1の半透膜ユニット7との間の位置において、分岐点BP7が設けられている。分岐点BP7に、原水供給ラインFL1aが接続され、その下流端に、第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aが設けられている。原水供給ラインFL1aには、バルブ6hが設けられ、バルブ6hにより、原水供給ラインFL1aを第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aへと流れる原水の流量が制御される。
【0156】
第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aの濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL6が接続され、その下流端は、濃縮水ラインCL1に設けられた合流点MP11に接続されている。これにより、第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aの濃縮水は、合流点MP11において、第1の半透膜ユニット7の濃縮水と合流し、第2の原水供給ラインFL2の合流点MP1へと流れる。合流点MP1において、第2の原水供給ラインFL2を流れる原水と第1の半透膜ユニット7の濃縮水および第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aの濃縮水とが、合流する。
【0157】
第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aの透過水排出ポートには、透過水ラインPL6が接続され、その下流端は、透過水ラインPL1の合流点MP2に接続されている。これにより、第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aの透過水は、合流点MP2において、第1の半透膜ユニット7の透過水に合流し、透過水タンク10に収容され、淡水として使用に供される。
【0158】
原水供給ラインFL2に、昇圧ポンプ12aと第2の半透膜ユニット8との間の位置において、分岐点BP8が設けられている。分岐点BP8には、原水供給ラインFL2aが接続され、その下流端に、第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dが設けられている。原水供給ラインFL2aには、バルブ6iが設けられている。バルブ6iにより、第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dに供給される原水の流量が制御される。
【0159】
第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dの濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインCL7が接続され、その下流端は、第2の半透膜ユニット8の濃縮水ラインCL2に設けられた合流点MP12に接続されている。これにより、第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dの濃縮水は、合流点MP12において、第2の半透膜ユニット8の濃縮水と合流して、濃縮水ラインCL2を流れ、淡水製造装置A9の外部へと排出される。
【0160】
第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dの透過水排出ポートには、透過水ラインPL7が接続され、その下流端は、第2の半透膜ユニット8と合流点BP6との間の位置において透過水ラインPL2に設けられた合流点MP13に接続されている。第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dの透過水は、合流点MP13において、第2の半透膜ユニット8の透過水と合流し、透過水ラインPL2を流れる。
【0161】
図9の淡水製造装置A9は、図8の淡水製造装置A8において、2つの補助半透膜ユニット、すなわち、第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)7aと第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)8dとが、第1の半透膜ユニット7と第2の半透膜ユニット8に対しそれぞれ並列して、付加的に装備されている点を特徴とする。
【比較例1】
【0162】
図10は、公知の淡水製造装置PA1を形成している各要素の配置図(フローチャート)である。この公知の淡水製造装置PA1は、原水種によって2段目半透膜ユニットを1段目半透膜ユニットの濃縮水処理または透過水処理に切り替え可能な淡水製造装置である。図10に、淡水製造装置PA1に設けられている水に含まれる溶質を分離する複数の半透膜ユニットと、それらに直接的あるいは間接的に接続されている水が流れる管(ライン)、水を貯留するタンク、水を送給するポンプ、および、水の流量を制御するバルブなどの配置が示されている。
【0163】
淡水製造装置PA1には、上流側から、原水タンクP2、半透膜ユニットに供給する前に原水をろ過処理するなどする原水の前処理ユニットP4、第1の半透膜ユニットP7、第2の半透膜ユニットP8、透過水タンクP10、および、エネルギー回収ユニットP9が配置されている。
【0164】
原水タンクP2には、淡水製造装置PA1の外部から、原水P1aを原水タンクP2に供給する原水ラインPRL1aの下流端と、淡水製造装置PA1の外部から、原水P1bを原水タンクP2に供給する原水ラインPRL1bの下流端とが接続されている。原水タンクP2と前処理ユニットP4とは、原水ラインPRL2により接続されている。原水ラインPRL2には、原水タンクP2に貯留された原水P1を前処理ユニットP4に供給するポンプP3が設けられている。ポンプP3の作動により、原水P1が原水タンクP2から前処理ユニットP4に供給され、前処理ユニットP4において、原水P1がろ過などの前処理を受ける。
【0165】
前処理ユニットP4から原水ラインPRL3が導出され、その下流端には、昇圧ポンプP5が設けられている。昇圧ポンプP5から原水供給ラインPFL1が導出され、その下流端に、第1の半透膜ユニットP7の供給水導入ポートが接続されている。昇圧ポンプP5により、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力が原水に付与される。
【0166】
第1の半透膜ユニットP7の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインPCL1が接続されている。濃縮水ラインPCL1には、エネルギー回収ユニットP9が設けられ、第1の半透膜ユニットP7の濃縮水P11aは、エネルギー回収ユニットP9を経て、淡水製造装置PA1の外部へと排出される。エネルギー回収ユニットP9において、濃縮水のエネルギーが回収される。第1の半透膜ユニットP7とエネルギー回収ユニットP9との間の位置において、濃縮水ラインPCL1にバルブP6aが設けられている。
【0167】
濃縮水ラインPCL1は、第1の半透膜ユニットP7とバルブP6aとの間の位置に、分岐点PBP1を有する。分岐点PBP1には、原水供給ラインPFL2が接続され、その下流端に、第2の半透膜ユニットP8の供給水導入ポートが接続されている。原水供給ラインPFL2には、バルブP6bが設けられている。バルブP6aとバルブP6bとにより、濃縮水ラインPCL1に流れる濃縮水の水量と原水供給ラインPFL2に流れる濃縮水の水量とが制御される。原水供給ラインPFL2に流れる濃縮水は、第2の半透膜ユニットP8において処理される原水である。
【0168】
第1の半透膜ユニットP7の透過水排出ポートには、透過水ラインPPL1が取り付けられ、その下流端は、透過水タンクP10に接続されている。透過水ラインPPL1には、バルブP6cが設けられている。透過水ラインPPL1には、第1の半透膜ユニットP7とバルブP6cとの間の位置において、分岐点PBP2が設けられている。分岐点PBP2には、透過水ラインPPL1aが接続され、その下流端は、透過水タンクP17に接続されている。透過水ラインPPL1aには、バルブP6dが設けられている。バルブP6cとバルブP6dとにより、透過水ラインPPL1と透過水ラインPPL1aとに流れる透過水の流量が制御される。
【0169】
透過水タンクP17と第2の半透膜ユニットP8とは、原水供給ラインPPL1bにより、接続されている。原水供給ラインPPL1bには、ブースターポンプP12が設けられている。ブースターポンプP12により、第2の半透膜ユニットP8において必要とされる圧力が、原水供給ラインPPL1bを流れる透過水(第2の半透膜ユニットP8に対する原水)に付与される。
【0170】
第2の半透膜ユニットP8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインPCL2が接続され、第2の半透膜ユニットP8の濃縮水P11bは、濃縮水ラインPCL2を経て、淡水製造装置PA1の外部へと排出される。第2の半透膜ユニットP8の透過水排出ポートには、透過水ラインPPL2が接続され、その下流端は、バルブP6cと透過水タンクP10との間の位置において透過水ラインPPL1に設けられた合流点PMP1に接続されている。透過水ラインPPL2には、バルブP6eが設けられている。バルブP6cとバルブP6eとにより、第1の半透膜ユニットP7から透過水タンクP10に向かう透過水の流量と第2の半透膜ユニットP8から透過水タンクP10に向かう透過水の流量とが制御される。
【比較例2】
【0171】
図11は、公知の淡水製造装置PA2を形成している各要素の配置図(フローチャート)である。この公知の淡水製造装置PA2は、原水種によって2段目半透膜ユニットを1段目半透膜ユニットと並列または1段目透過水処理に切り替え可能な淡水製造装置である。図11に、淡水製造装置PA2に設けられている水に含まれる溶質を分離する複数の半透膜ユニットと、それらに直接的あるいは間接的に接続されている水が流れる管(ライン)、水を貯留するタンク、水を送給するポンプ、および、水の流量を制御するバルブなどの配置が示されている。
【0172】
淡水製造装置PA2には、上流側から、原水タンクP2、半透膜ユニットに供給する前に原水をろ過処理するなどする原水の前処理ユニットP4、第1の半透膜ユニットP7、第2の半透膜ユニットP8、および、透過水タンクP10が配置されている。
【0173】
原水タンクP2には、淡水製造装置PA2の外部から、原水P1を原水タンクP2に供給する原水ラインPRL1の下流端が接続されている。原水タンクP2と前処理ユニットP4とは、原水ラインPRL2により接続されている。原水ラインPRL2には、原水タンクP2に貯留された原水P1を前処理ユニットP4に供給するポンプP3が設けられている。ポンプP3の作動により、原水P1が原水タンクP2から前処理ユニットP4に供給され、前処理ユニットP4において、原水P1がろ過などの前処理を受ける。
【0174】
前処理ユニットP4から原水ラインPRL3が導出され、その下流端には、昇圧ポンプP5が設けられている。昇圧ポンプP5から原水供給ラインPFL1が導出され、その下流端に、第1の半透膜ユニットP7の供給水導入ポートが接続されている。昇圧ポンプP5により、半透膜ユニットにおいて必要とされる圧力が原水に付与される。
【0175】
第1の半透膜ユニットP7の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインPCL1が接続されている。濃縮水ラインPCL1の下流端は、淡水製造装置PA2の外部に位置し、第1の半透膜ユニットP7の濃縮水は、濃縮水ラインPCL1を流れ、淡水製造装置PA2の外部に、濃縮水P11として、排出される。
【0176】
第1の半透膜ユニットP7の透過水排出ポートには、透過水ラインPPL1が接続され、その下流端は、透過水タンクP10に接続されている。透過水ラインPPL1には、バルブP6jが設けられている。透過水ラインPPL1は、第1の半透膜ユニットP7とバルブP6jとの間の位置に、分岐点PBP4を有する。分岐点PBP4には、透過水ラインPPL1aが接続され、その下流端は、透過水中間タンクP17に接続されている。透過水ラインPPL1aには、バルブP6kが設けられている。バルブP6jおよびバルブP6kにより、透過水タンクP10に流れる透過水の流量と透過水中間タンクP17に流れる透過水の流量が制御される。
【0177】
透過水中間タンクP17から透過水ラインPPL1bが導出され、その下流端は、第2の半透膜ユニットP8の供給水導入ポートに接続されている。透過水ラインPPL1bには、ブースターポンプP12が設けられている。ブースターポンプP12により、第2の半透膜ユニットP8に供給される透過水、すなわち、第2の半透膜ユニットP8への供給水に圧力が付与される。透過水ラインPPL1bには、ブースターポンプP12と第2の半透膜ユニットP8との間の位置において、バルブP6lが設けられている。
【0178】
原水供給ラインPFL1は、昇圧ポンプP5と第1の半透膜ユニットP7との間の位置に、分岐点PBP3を有する。分岐点PBP3から、原水供給ラインPFL1aが導出され、その下流端は、バルブP6lと第2の半透膜ユニットP8との間の位置において、透過水ラインPPL1bに設けられた合流点PMP2に接続されている。バルブP6bとバルブP6lとにより、原水供給ラインPFL1aから第2の半透膜ユニットP8に供給される原水と、透過水中間タンクP17から第2の半透膜ユニットP8に供給される透過水(供給水)の流量が制御される。
【0179】
第2の半透膜ユニットP8の濃縮水排出ポートには、濃縮水ラインPCL2が接続され、その下流端は、濃縮水ラインPCL1に設けられた合流点PMP3に接続されている。第2の半透膜ユニットP8の濃縮水は、合流点PMP3において、第1の半透膜ユニットP7の濃縮水に合流し、濃縮水P11として、淡水製造装置PA2の外部に排出される。
【0180】
第2の半透膜ユニットP8の透過水排出ポートには、透過水ラインPPL2が接続され、その下流端は、バルブP6jと透過水タンクP10との間において、透過水ラインPPL1に設けられた合流点PMP3に接続されている。第2の半透膜ユニットP8の透過水は、合流点PMP3において、第1の半透膜ユニットP7の透過水と合流して、透過水タンクP10に収容され、淡水として使用に供される。
【実施例10】
【0181】
図12に、淡水製造装置A12が示される。この淡水製造装置A12は、2段の半透膜ユニットに並列に1段の半透膜ユニットを備え、2段の半透膜ユニットの濃縮水を並列の半透膜ユニットの供給水に混合する淡水製造装置の他の一実施態様である。図12の淡水製造装置A12において、図7の淡水製造装置A7における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。図12の淡水製造装置A12の基本的な構造は、図7の淡水製造装置A7と実質的に同じであるため、図12の淡水製造装置A12の説明は、図7の淡水製造装置A7に対し付加あるいは変更されている要素についての説明に止める。
【0182】
図12の淡水製造装置A12において、図7の淡水製造装置A7における原水ラインRL3sが変更されている。すなわち、図7の淡水製造装置A7における原水ラインRL3sの前処理ユニット4sとポンプ5sとの間に、図12の淡水製造装置A12に示される原水タンク17aが設けられ、前処理ユニット4sと原水タンク17aとが、原水ラインRL3saにより接続され、原水タンク17aとポンプ5sとが、原水ラインRL3sbにより接続されている。
【0183】
図12の淡水製造装置A12において、図7の淡水製造装置A7における第2の半透膜ユニット8の濃縮水の使用の仕方が変更されている。すなわち、図7の淡水製造装置A7においては、第2の半透膜ユニット8の濃縮水は濃縮水ラインCL2を流れ、図7の淡水製造装置A7の外部に排出されていたが、図12の淡水製造装置A12においては、第2の半透膜ユニット8の濃縮水が流れる濃縮水ラインCL2の下流端が、原水タンク17aに接続され、第2の半透膜ユニット8の濃縮水は、原水タンク17aに貯留される。
【0184】
これらの変更により、図12の淡水製造装置A12においては、原水タンク17aには、原水ラインRL3saから原水タンク17aに流入する原水1sと濃縮水ラインCL2から原水タンク17aに流入する第2の半透膜ユニット8の濃縮水とが貯留される。原水タンク17aに貯留された水1saは、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cへの供給水として用いられる。すなわち、原水タンク17aに貯留された水1saは、昇圧ポンプ5sにより、必要な圧力に加圧され、原水供給ラインFL5を通じて、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの供給水側空間へと供給される。
【0185】
図7の淡水製造装置A7は、原水1sのみが第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cへ供給される構造を有しているが、図12の淡水製造装置A12は、原水1sと第2の半透膜ユニット8の濃縮水とが、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cへ供給できる構造を有している。
【実施例11】
【0186】
図13に、淡水製造装置A13が示される。この淡水製造装置A13は、2段の半透膜ユニットに並列に1段の半透膜ユニットを備え、並列の半透膜ユニットの濃縮水を2段の半透膜ユニットの1段目供給水に混合する淡水製造装置の他の一実施態様である。図13の淡水製造装置A13において、図7の淡水製造装置A7における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。図13の淡水製造装置A13の基本的な構造は、図7の淡水製造装置A7と実質的に同じであるため、図13の淡水製造装置A13の説明は、図7の淡水製造装置A7に対し付加あるいは変更されている要素についての説明に止める。
【0187】
図13の淡水製造装置A13において、図7の淡水製造装置A7における第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水の使用の仕方が変更されている。すなわち、図7の淡水製造装置A7における第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水は、濃縮水ラインCL5から図7の淡水製造装置A7の外部へと排出されているが、図13の淡水製造装置A13においては、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水は、第1の半透膜ユニット7に供給されるように変更されている。
【0188】
すなわち、図13の淡水製造装置A13において、図7の淡水製造装置A7における濃縮水ラインCL5の下流端に、原水供給ラインFL6が接続されている。原水供給ラインFL6の下流端は、前処理ユニット4と昇圧ポンプ5との間の位置において、原水ラインRL3に設けられた合流点MP14に接続されている。これにより、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水は、合流点MP14において、原水ラインRL3を流れる原水1に合流することが可能とされている。原水供給ラインFL6には、バルブ6rが設けられている。バルブ6rにより、原水供給ラインFL6を流れる第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水の流量が制御される。
【実施例12】
【0189】
図14に、淡水製造装置A14が示される。この淡水製造装置A14は、2段の半透膜ユニットに並列に1段の半透膜ユニットを備え、並列の半透膜ユニットの濃縮水を2段の半透膜ユニットの2段目供給水に混合する淡水製造装置の他の一実施態様である。図14の淡水製造装置A14において、図7の淡水製造装置A7における要素と同じ要素は、同じ符号を用いて示されている。図14の淡水製造装置A14の基本的な構造は、図7の淡水製造装置A7と実質的に同じであるため、図14の淡水製造装置A14の説明は、図7の淡水製造装置A7に対し付加あるいは変更されている要素についての説明に止める。
【0190】
図14の淡水製造装置A14において、図7の淡水製造装置A7における第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水の使用の仕方が変更されている。すなわち、図7の淡水製造装置A7における第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水は、濃縮水ラインCL5から図7の淡水製造装置A7の外部へと排出されているが、図14の淡水製造装置A14においては、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水は、第2の半透膜ユニット8に供給されるように変更されている。
【0191】
すなわち、図14の淡水製造装置A14において、図7の淡水製造装置A7における濃縮水ラインCL5の下流端に、原水供給ラインFL7が接続されている。原水供給ラインFL7の下流端は、合流点MP1とブースターポンプ12aとの間の位置において、原水供給ラインFL2に設けられた合流点MP15に接続されている。これにより、第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水は、合流点MP15において、原水供給ラインFL2を流れる原水1に合流することが可能とされている。原水供給ラインFL7には、バルブ6sが設けられている。バルブ6sにより、原水供給ラインFL7を流れる第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)8cの濃縮水の流量が制御される。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明は、海水、河川水、地下水、排水処理水などの原水を処理して淡水を得るための半透膜ユニットを用いた淡水製造装置に関するものであり、さらに詳しくは、原水に応じて効率的に淡水を製造できる淡水製造装置およびその運転方法に関するものであり、原水の水質に応じて複数の半透膜ユニットの処理量を変化させることで、低コストで、所望とする水質を有する淡水の製造を実現するものである。
【符号の説明】
【0193】
1、1a、1b、1s、1sa:原水
2、2s:原水タンク
3、3s:ポンプ
4、4s:前処理ユニット
5、5a、5b、5s:昇圧ポンプ
6n(n=アルファベット):バルブ
7:第1の半透膜ユニット(第1段目半透膜ユニット)
7a:第6の半透膜ユニット(第3の補助半透膜ユニット)
8:第2の半透膜ユニット(第2段目半透膜ユニット)
8b:第4の半透膜ユニット(第1の補助半透膜ユニット)
8c:第5の半透膜ユニット(第2の補助半透膜ユニット)
8d:第7の半透膜ユニット(第4の補助半透膜ユニット)
9、9b:エネルギー回収ユニット
10:透過水タンク
11、11b:濃縮水
12、12a、12b:ブースターポンプあるいは昇圧ポンプ
13:無動力昇圧ユニット
16:第3の半透膜ユニット(共通補助半透膜ユニット)
17、17a:中間タンク
ACLN(N=数字):補助濃縮水ライン
AFLN(N=数字):補助原水供給来ライン
AN(N=数字):本発明の淡水製造装置
BPN(N=数字):分岐点
CLN(N=数字):濃縮水ライン
FLN(N=数字):原水供給ライン
FLNn(N=数字、n=アルファベット):原水供給ライン
MPN(N=数字):合流点
P1、P1a、P1b:原水
P2:原水タンク
P3:ポンプ
P4:前処理ユニット
P5:昇圧ポンプ
P7:1段目半透膜ユニット(第1の半透膜ユニット)
P8:2段目半透膜ユニット(第2の半透膜ユニット)
P6n(n=アルファベット):バルブ
P7:第1の半透膜ユニット(1段目半透膜ユニット)
P8:第2の半透膜ユニット(2段目半透膜ユニット)
P9:エネルギー回収ユニット
P10:透過水タンク
P11、P11a、P11b:濃縮水
P12:ブースターポンプ
P17、P17a:中間タンク
PA1、PA2:公知の淡水製造装置
PBPN(N=数字):分岐点
PCLN(N=数字):濃縮水ライン
PFLN(N=数字):原水供給ライン
PFLNn(N=数字、n=アルファベット):原水供給ライン
PLN(N=数字):透過水ライン
PMPN(N=数字):合流点
PPLN(N=数字):透過水ライン
PPL1a:透過水ライン
PPL1b:原水供給ライン(透過水ライン)
PRLN(N=数字):原水ライン
PRLNn(N=数字、n=アルファベット):原水ライン
RLN(N=数字):原水ライン
RLNn(N=数字、n=アルファベット):原水ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14