特許第5929229号(P5929229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5929229-アルカリホスファターゼ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929229
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】アルカリホスファターゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160519BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20160519BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N9/16 B
   C12N1/21
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-11753(P2012-11753)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-150555(P2013-150555A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相場 洋志
(72)【発明者】
【氏名】岸本 高英
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 周作
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−360259(JP,A)
【文献】 特表2006−520817(JP,A)
【文献】 Sucharita, K., et.al.,Shewanella chilikensis sp. nov., a moderately alkaliphilic gammaproteobacterium isolated from a lagoon.,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,2009年,2009 59(12),3111-3115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 1/00
C12N 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドからなるアルカリホスファターゼ。
(A)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(B)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基を欠失、置換、挿入または付加させてなる配列からなり、アルカリホスファターゼ活性を有し、その比活性が5000U/mg以上であるポリペプチド。
(C)配列番号2に記載されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、アルカリホスファターゼ活性を有し、その比活性が5000U/mg以上であるポリペプチド。
【請求項2】
下記(A)、(B)、(C)、(E)および(F)からなる群のうちいずれかで示されるDNA。
(A)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA。
(B)配列番号2に記載されるアミノ酸配列をコードするDNA。
(C)配列番号1に記載される塩基配列との同一性が90%以上である塩基配列からなり、且つ、アルカリホスファターゼ活性を有し、その比活性が5000U/mg以上であるポリペプチドをコードするDNA
E)配列番号1に記載される塩基配列において、1または数個の塩基を置換、欠失、挿入または付加されている塩基配列であり、アルカリホスファターゼ活性を有し、その比活性が5000U/mg以上であるポリペプチドをコードするDNA、
(F)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加したアミノ酸配列からなり、且つ、アルカリホスファターゼ活性を有し、その比活性が5000U/mg以上であるポリペプチドをコードするDNA。
【請求項3】
請求項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターで宿主細胞が形質転換されている形質転換体。
【請求項5】
宿主細胞が大腸菌である、請求項4に記載の形質転換体。
【請求項6】
請求項1に記載のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物を培養し、得られる培養物からアルカリホスファターゼ活性を有するタンパク質を採取することを含む、アルカリホスファターゼの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物がシェワネラ(shewanella)属に由来する、請求項6に記載のアルカリホスファターゼの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物が、請求項4または5に記載の形質転換体である、請求項6に記載のアルカリホスファターゼの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のアルカリホスファターゼを標識してなるコンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌由来のアルカリホスファターゼに関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリホスファターゼ(EC 3.1.3.1、以下APとも称する)は、リン酸モノエステルを加水分解し、アルコールと無機リン酸を生じる反応を触媒する酵素であり、原核生物・真核生物を問わず広く分布することが知られる。APは、遺伝子工学用酵素として利用されるほか、酵素免疫測定(EIA)法における標識酵素として広く利用されている。現在、このEIAに用いられるAPはほとんどがウシ小腸由来AP(CIAP)である。CIAPが重宝される理由のひとつは、その比活性の高さである。市販のCIAPの比活性はメーカーやグレードにより様々であるが、p−ニトロフェニルリン酸を基質とした場合に高比活性タイプで6000U/mg−proteinを超えるものも存在する。また、1,2−ジオキセタンもくしはアクリダンを基本骨格に含んでなるCIAP用の各種高感度発光基質も多数販売され、免疫測定における測定感度の高さを実現している。
【0003】
公知のCIAPの抱える問題のひとつは、安定性の乏しさである。一方で大腸菌に代表される細菌由来APは、CIAPに比して安定性が高い反面、比活性という観点においてCIAPに大きく劣る。比較的比活性の高いものとして、たとえば非特許文献1並びに非特許文献2にはシェワネラ属由来APが報告されているが、比活性としてはいずれも2000U/mgに満たない。非特許文献1に記載されるAPは産業上有用であるとして特許登録されている(特許文献1)が、これは概酵素が大腸菌由来APよりも熱安定性が劣るために遺伝子工学的用途に有用であるとする出願であり、免疫測定用標識酵素としての有用性についてはその可能性にすら触れられていない。また、特許文献2には、バチルス属由来APが記載されるが、本酵素は比活性3000U/mg程度であり、これも十分ではないほか、1,2−ジオキセタン系もしくはアクリダン系発光基質に対する反応性は低く、実用的とはいえなかった。また、非特許文献1には、比活性10,000U/mgを超える細菌由来APが記載されているが、30℃15分処理で約2割の失活が起こり、50℃15分処理ではほぼ完全に活性が失われるなどCIAPと比較しても安定性が著しく低く、実用には耐えない。
【0004】
公知のCIAPの抱える問題のもうひとつは、糖鎖を有することによるハンドリング等の問題である。糖鎖を有するタンパク質は、その糖鎖の構造や大きさが均一ではないことが多く、ゲルろ過における精製において目的のピークがブロードになるなど精製に支障をきたすことがある。また、分子表面に糖鎖が存在することで、溶液中において酵素が基質と接触するに際して物理的障壁ともなりうる。特許文献3には酵母で発現させたCIAPを脱グリコシル化することにより糖鎖を低減する方法が記載されるが、糖鎖が完全に除去されるわけではなく、またそのような工程を加えることでコストアップにもつながる。
【0005】
細菌由来のAPは糖鎖を有しないことから上記問題を解消でき、また大腸菌のような経済的な宿主系で容易に発現できることからコスト低減も達成できるという優位さがある一方で、比活性や既存の基質に対する反応性をはじめとする免疫診断等における必要条件を十分に満たしうるものがこれまで知られていなかった。このためCIAPは上記の問題を有しつつも免疫診断分野において標識酵素として使われ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3507890号公報
【特許文献2】特許第4035738号公報
【特許文献3】特許第4303283号広報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cloning and expression of a highly active recombinant alkaline phosphatase from psychrotrophic Cobetia marina, Biotechnol Lett (2011),Nasu et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、CIAPよりも高い安定性を有し、かつ酵素表面に糖鎖を有さず、かつ比活性がCIAPと少なくとも同等であるAPを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シェワネラ(Shewanella)属細菌からAPの遺伝子を取得し、この遺伝子を形質転換した微生物を培養することでAPの組換え生産に成功し、かつ該組み換えAPがCIAPよりも高い熱安定性を有し、かつCIAPと同等以上の比活性を有し、かつ各種発光基質に対する十分な反応性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[項1]
下記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドからなるアルカリホスファターゼ。
(A)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(B)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基を欠失、置換、挿入または付加させてなる配列からなり、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチド。
(C)配列番号2に記載されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチド。
[項2]
下記(A)〜(F)のいずれかのDNA。
(A)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA。
(B)配列番号2に記載されるアミノ酸配列をコードするDNA。
(C)配列番号1に記載される塩基配列との相同性が80%以上である塩基配列からなり、且つ、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(D)配列番号1に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、且つアルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(E)配列番号1に記載される塩基配列において、1または数個の塩基を置換、欠失、挿入または付加されている塩基配列であり、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(F)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置
換、欠失、挿入または付加したアミノ酸配列からなり、且つ、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
[項3]
項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
[項4]
項3に記載のベクターで宿主細胞が形質転換されている形質転換体。
[項5]
宿主細胞が大腸菌である、項4に記載の形質転換体。
[項6]
項1に記載のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物を培養し、得られる培養物からアルカリホスファターゼ活性を有するタンパク質を採取することを含む、アルカリホスファターゼの製造方法。
[項7]
項1に記載のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物がシェワネラ(shewanella)属に由来する、項6に記載のアルカリホスファターゼの製造方法。
[項8]
項1に記載のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物が、項4または5に記載の形質転換体である、項6に記載のアルカリホスファターゼの製造方法。
[項9]
項1に記載のアルカリホスファターゼを標識してなるコンジュゲート。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、免疫測定の標識酵素として有用なアルカリホスファターゼ、並びにアルカリホスファターゼ標識抗体等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シェワネラ・チリケンシス由来APおよびCIAPの各温度における安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.アルカリホスファターゼ
1−1.ポリペプチド
本発明の好ましい態様においては、本発明は配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるポリペプチドからなるアルカリホスファターゼであり、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基を欠失、置換、挿入または付加させてなる配列からなり、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドからなるアルカリホスファターゼである。配列番号2のアミノ酸配列は、後述のとおりShewanella chilikensis(シェワネラ・チリケンシス)に由来する。
【0014】
本発明のアルカリホスファターゼが、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入を有するポリペプチドから成る場合、このようなアミノ酸の変異の数や種類は、アルカリホスファターゼ活性や上述する熱安定性等の酵素特性に影響を及ぼさない限り特に制限はない。好ましくは、変異の具体的な数は、1〜30個、より好ましくは1〜15個、更に好ましくは1〜10個、より更に好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個である。
【0015】
本発明のアルカリホスファターゼが、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換されているポリペプチドから成る場合、当該アミノ酸の置換は、アルカリホスファターゼ活性や前述する酵素特性を損なわない限り特に制限はないが、好ましくは、類似のアミノ酸によって置換されている。類似のアミノ酸としては、例えば、以下を挙げることが出来る。
芳香族アミノ酸:Phe、Trp、Tyr
脂肪族アミノ酸:Ala、Leu、Ile、Val
極性アミノ酸:Gln、Asn
塩基性アミノ酸:Lys、Arg、His
酸性アミノ酸:Glu、Asp
水酸基を有するアミノ酸:Ser、Thr
【0016】
また、本発明の好ましい態様においては、本発明は配列番号2に記載されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドからなるアルカリホスファターゼである。配列番号2に記載されるアミノ酸配列との同一性は、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上、99%以上である。
【0017】
ここで「同一性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する、同一アミノ酸残基の割合(%)を意味する。
【0018】
アミノ酸配列の同一性を決定するためのアルゴリズムとしては、例えば、Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873−5877 (1993) に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム (version 2.0) に組み込まれている(Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25: 3389−3402 (1997))]が挙げられる。
【0019】
同一性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)によるアミノ酸配列同一性検索においては、配列番号2に示す配列と最も高い同一性を示す既知配列は、シェワネラ・エスピー(Shewanella sp.)W3−18−1株ゲノム中に存在するAPとアノテーションされているORFから推定される配列であり、その同一性は74%である。すなわち、配列番号2との同一性が80%以上を示す公知のAPは存在しない。また、非特許文献1および2に記載されるシェワネラ属由来APの配列とはそれぞれ67%、70%の同一性であり、かつこれらAPとは上述のように比活性が3倍以上異なることからも、本発明のAPは公知のAPとは明確に区別される。本発明のAPを明確に規定する基準のひとつが、この配列番号2との同一性の高さであり、好ましい同一性としては具体的には少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0020】
1−2.由来
本発明のAPの給源は、上記特性を有するものであれば特に限定しないが、好ましくは細菌由来であり、より好ましくはシェワネラ(Shewanella)属由来であり、よりさらに好ましくはシェワネラ・チリケンシス(Shewanella chilikensis)由来であり、最も好ましくはNBRC105217株として(独)製品評価技術基盤機構より分譲される菌株由来である。
本発明のAPは、由来するシェワネラ属細菌を培養した培養液から得たものであってもよく、また由来する細菌とは異なる宿主生物に遺伝子を導入し発現させることにより得たものであってもよい。
【0021】
1−3.熱安定性
本発明は、好ましくはCIAPに比して高い熱安定性を有するAPであり、より好ましくは60℃60分間の熱処理後に80%以上の活性を維持しうるAPであり、よりさらに好ましくは65℃60分間の熱処理後に80%以上の活性を維持しうるAPである。
【0022】
本発明で述べる熱安定性とは、50mM トリエタノールアミン、1mM 塩化マグネシウム、0.1mM 硫酸亜鉛(pH7.0)にタンパク質量として0.01mg/mLの濃度となるようAPを溶解し、本AP溶液を60分間加熱した際の、加熱前のAP活性に対する加熱後のAP活性の残存率として定義される。また、本発明で述べる加温処理は、上記条件によりなされるものである。また、活性の測定方法は後述のとおりである。
【0023】
1−4.比活性
本発明に述べる比活性は、後述の「タンパク質の定量および比活性の算出例」に記載の方法により求められる。本発明のAPの比活性は、少なくとも5000U/mg以上であり、好ましくは5500U/mg以上であり、より好ましくは6000U/mg以上であり、よりさらに好ましくは7000U/mg以上であり、最も好ましくは8000U/mg以上である。公知のシェワネラ属由来APの比活性は、非特許文献1によればSIB1株由来APは50℃という高温において1880U/mgであり、37℃ではさらに低いと推定される。また、非特許文献2に記載の株は、至適条件とする70℃ pH10.6において1500U/mgであり、37℃ではおよそ1200U/mgである。本発明のAPは比活性の観点において公知のシェワネラ属由来APを凌駕しており、これらAPとは明確に区別される。
【0024】
2.アルカリホスファターゼの製造方法
また、本発明の好ましい態様においては、本発明は、上記のアルカリホスファターゼを産生する能力を有する微生物を培養し、得られる培養物からアルカリホスファターゼ活性を有するタンパク質を採取することを含む、アルカリホスファターゼの製造方法である。
【0025】
本発明のAPは、(1)該酵素を産生する細胞を原料として抽出精製する方法、(2)化学的に合成する方法、(3)遺伝子組換え技術によりAPを発現するように操作された細胞から精製する方法、または(4)APをコードする核酸から無細胞転写/翻訳系を用いて生化学的に合成する方法等を適宜用いることによって取得することができる。
以下に順次、上記(1)〜(4)の方法を説明する。
【0026】
2−1.(1)該酵素を産生する細胞を原料として抽出精製する方法
本発明のAPを産生する能力を有する微生物は、特に限定されないが、例えば天然の細胞としては、シェワネラ(shewanella)属に由来する微生物、例えばシェワネラ・チリケンシスNBRC105217株が例示され、(独)製品評価技術基盤機構より購入可能であり、この菌株を常法に従って培養し、増殖せしめることにより本発明のAPを産生可能である。
【0027】
天然のAP産生細胞からのAPの単離精製は、例えば以下のようにして行うことができる。AP産生細胞を適当な緩衝液中でホモジナイズし、超音波処理や界面活性剤処理等により細胞抽出液を得、そこから蛋白質の分離精製に常套的に利用される分離技術を適宜組み合わせることにより精製することができる。このような分離技術としては、例えば、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
2−2.(2)化学的に合成する方法
化学合成によるAPの製造は、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を基にして、配列の全部または一部をペプチド合成機を用いて合成することにより行うことができる。ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のAPを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を含む場合は保護基を脱離することにより、目的とするタンパク質を製造することができる。ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)および(2)に記載された方法に従って行われる。
(1) M. Bodanszkyand M.A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966)
(2) Schroeder and Luebke, The Peptide, Academic Press, NewYork(1965)
【0029】
このようにして得られた本発明のAPは、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られるAPが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にタンパク質が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0030】
2−3.(3)遺伝子組換え技術によりAPを発現するように操作された細胞から精製する方法
2−3−1.アルカリホスファターゼをコードするDNA
本発明のAPは、好ましくは、該蛋白質をコードする核酸をクローニング(もしくは化学的に合成)し、該核酸を担持する発現ベクターを含む形質転換体の培養物から単離精製することにより製造することができる。
【0031】
本発明のAPをコードする遺伝子は、好ましい態様においては以下のDNAである。すなわち、配列番号2に示すアミノ酸をコードする塩基配列を有するDNAであり、より具体的な一例としては、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAである。
また、概DNAは、発現される蛋白質がアルカリホスファターゼ活性を有する限りにおいては、好ましくはAPの特性が本願に記載する特性と同等もしくはそれ以上である限りにおいては、配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加したアミノ酸配列をコードするDNAであっても良いし、あるいは、配列番号1に示す塩基配列において、1もしくは複数の塩基が置換・欠失・付加・挿入されたDNAであってもよい。
また別の態様においては、概DNAは、配列番号1に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、且つアルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAであってもよい。配列番号1に示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸としては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列を含む核酸などが用いられる。
また別の態様においては、概DNAは、配列番号1に記載される塩基配列との相同性が80%以上である塩基配列からなり、且つ、アルカリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAであってもよい。
【0032】
本明細書における塩基配列の同一性は、同一性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning, 第2版 (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントな条件に従って行うことができる。
【0033】
上記において、「ストリンジェントな条件」とは、配列番号1で示される塩基配列と同等の転写終結領域機能を有する塩基配列のみが配列番号1に対して相補的な塩基配列とハイブリッド(いわゆる特異的ハイブリッド)を形成し、同等の機能を有しない塩基配列は配列番号1に対して相補的な塩基配列とハイブリッド(いわゆる非特異的ハイブリッド)を形成しない条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション反応および洗浄時の温度や、ハイブリダイゼーション反応液および洗浄液の塩濃度等を変化させることによって、このような条件を容易に選択することができる。具体的には、6×SSC(0.9M NaCl,0.09M クエン酸三ナトリウム)または6×SSPE(3M NaCl,0.2M NaH 2PO 4,20mM EDTA)・2Na,pH7.4)中42℃でハイブリダイズさせ、さらに42℃で0.5×SSCにより洗浄する条件が、本発明のストリンジェントな条件の1例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
該ストリンジェントな条件は、好ましくはハイストリンジェントな条件である。ハイストリンジェントな条件とは、例えば0.1×SSC及び0.1%SDSに相当する塩濃度で60℃で洗浄が行われる条件である。)
【0034】
本発明のAPをコードするDNAは、シェワネラ属細菌のゲノムDNAもしくはRNA(cDNA)より取得することもできるが、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法を利用して接続することにより、APの全長をコードするDNAを構築することも可能である。化学合成もしくはPCR法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、該遺伝子を導入する宿主に合わせて使用コドンを遺伝子全長にわたり設計できる点にある。同一のアミノ酸をコードする複数のコドンは均一に使用されるわけではなく、生物種によってその使用頻度が異なる。一般にある生物種において高発現する遺伝子に含まれるコドンは、その生物種において使用頻度の高いコドンを多く含んでおり、逆に発現量の低い遺伝子は使用頻度の低いコドンの存在がボトルネックとなって高発現を妨げている例が少なくない。異種遺伝子の発現に際し、その遺伝子配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに置換することで該異種タンパク質発現量が増大した例はこれまでに多数報告されており、このような使用コドンの改変は異種遺伝子発現量の増大に効果があると期待される。
【0035】
上記の理由から、本発明のAPをコードするDNAは、それが導入される宿主細胞により適したコドン(即ち、該宿主において使用頻度の高いコドン)に改変することが望ましい。各宿主のコドン使用頻度は、該宿主生物のゲノム配列上に存在する全遺伝子における各コドンの使用される割合で定義され、たとえば1000コドンあたりの使用回数で表される。またコドン使用頻度は、その全ゲノム配列の解明されていない生物にあっては代表的な複数遺伝子の配列から近似的に算出することも可能である。組換えようとする宿主生物におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(財)かずさDNA研究所のホームページ(http://www.kazusa.or.jp)に公開されている遺伝暗号使用頻度データベースを用いることができ、または各生物におけるコドン使用頻度を記した文献を参照してもよく、あるいは使用する宿主生物のコドン使用頻度データを自ら決定してもよい。入手したデータと導入しようとする遺伝子配列を参照し、遺伝子配列に用いられているコドンの中で宿主生物において使用頻度の低いものを、同一のアミノ酸をコードし使用頻度の高いコドンに置換すればよい。
【0036】
2−3−2.宿主細胞
本発明のAPをコードするDNAを導入する宿主細胞は、組換え発現系が確立しているものであれば、特に制限されないが、好ましくは大腸菌、枯草菌などのバクテリア、放線菌、麹菌、酵母といった微生物宿主並びに昆虫細胞、動物細胞、高等植物等が挙げられ、より好ましくは大腸菌(例えば、K12株、B株など)が挙げられる。大腸菌において使用頻度の高いコドンとしては、例えば、K12株の場合であれば、GlyにはGGTまたはGGC、GluにはGAA、AspにはGAT、ValにはGTG、AlaにはGCG、ArgにはCGTまたはCGC、SerにはAGC、LysにはAAA、IleにはATTまたはATC、ThrにはACC、LeuにはCTG、GlnにはCAG、ProにはCCGなどが挙げられる。
このように宿主において使用頻度の高いコドンに置換されたAPをコードするDNAとして、例えば、シェワネラ属細菌由来のAPをコードするDNAを、該APと同一のアミノ酸配列をコードし、且つ大腸菌K12株において使用頻度の高いコドンに置換したDNAが挙げられる。
【0037】
2−3−3.ベクター
本発明はまた、本発明のAPをコードするDNAを含む組換えベクターを提供する。本発明の組換えベクターは原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で複製保持または自律増殖できるものであれば特に限定されず、プラスミドベクターやウイルスベクター等が包含される。当該組換えベクターは、簡便には当該技術分野において入手可能な公知のクローニングベクターまたは発現ベクターに、上記のAPをコードするDNAを適当な制限酵素およびリガーゼ、あるいは必要に応じてさらにリンカーもしくはアダプターDNAを用いて連結することにより調製することができる。また、Taqポリメラーゼのように増幅末端に一塩基を付加するようなDNAポリメラーゼを用いて増幅作製した遺伝子断片であれば、TAクローニングによるベクターへの接続も可能である。
【0038】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pBluescript SK(-)、pBluescript KS(+)など、酵母由来プラスミドとして、例えばpSH19、pSH15など、枯草菌由来プラスミドとして、例えばpUB110、pTP5、pC194などが挙げられる。また、ウイルスとして、λファージなどのバクテリオファージや、SV40、ウシパピローマウイルス(BPV)等のパポバウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)等のレトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニヤウイルス、バキュロウイルスなどの動物および昆虫のウイルスが例示される。
【0039】
特に、本発明は、目的の宿主細胞内で機能的なプロモーターの制御下にAPをコードするDNAが配置されたAP発現ベクターを提供する。使用されるベクターとしては、原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で機能して、その下流に配置された遺伝子の転写を制御し得るプロモーター領域(例えば宿主が大腸菌の場合、trpプロモーター、lacプロモーター、lecAプロモーター等、宿主が枯草菌の場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等、宿主が酵母の場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等、宿主が哺乳動物細胞の場合、SV40由来初期プロモーター、MoMuLV由来ロングターミナルリピート、アデノウイルス由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター)と、該遺伝子の転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有し、該プロモーター領域と該ターミネーター領域とが、少なくとも1つの制限酵素認識部位、好ましくは該ベクターをその箇所のみで切断するユニークな制限部位を含む配列を介して連結されたものであれば特に制限はないが、形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有していることが好ましい。さらに、挿入されるAPをコードするDNAが開始コドンおよび終止コドンを含まない場合には、開始コドン(ATGまたはGTG)および終止コドン(TAG、TGA、TAA)を、それぞれプロモーター領域の下流およびターミネーター領域の上流に含むベクターが好ましく使用される。
宿主細胞として細菌を用いる場合、一般に発現ベクターは上記のプロモーター領域およびターミネーター領域に加えて、宿主細胞内で自律複製し得る複製可能単位を含む必要がある。また、プロモーター領域は、プロモーターの近傍にオペレーターおよびShine−Dalgarno(SD)配列を包含する。
宿主として酵母,動物細胞または昆虫細胞を用いる場合、発現ベクターは、エンハンサー配列、AP mRNAの5’側および3’側の非翻訳領域、ポリアデニレーション部位等をさらに含むことが好ましい。
【0040】
作成した組換えベクターを導入する宿主生物としては、組換え発現系が確立している大腸菌、枯草菌などのバクテリア、放線菌、麹菌、酵母といった微生物宿主並びに昆虫細胞、動物細胞、高等植物等を挙げることができるが、中でもタンパク質発現能力に優れている大腸菌を用いるのが好ましい。また、特に糖鎖を有しないAPとすることでCIAPにみられる問題を解消できるという点からも、大腸菌宿主も用いるのが好適である。組換えプラスミドを導入する方法としてはエレクトロポレーションによる導入のほか、塩化カルシウム等薬品処理によりコンピテント化した宿主であればヒートショックによる導入も可能である。宿主ベクターへの目的組換えプラスミドの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの各種薬剤耐性遺伝子に代表されるマーカーとAP活性とを同時に発現する微生物を検索すればよく、例えば薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつAPを発現する微生物を選択すればよい。
【0041】
2−3−4.培養
本発明のAPは、上記のようにして調製されるAP発現ベクターを含む形質転換体を培地中で培養し、得られる培養物からAPを採取、回収することによって製造することができる。
【0042】
使用される培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源,無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース,デキストラン,可溶性デンプン,ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類,硝酸塩類,アミノ酸,コーンスチープ・リカー,ペプトン,カゼイン,肉エキス,大豆粕,バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素〔例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム,リン酸二水素ナトリウム,塩化マグネシウム),ビタミン類,抗生物質(例えばテトラサイクリン,ネオマイシン,アンピシリン,カナマイシン等)など〕を含んでいてもよい。
【0043】
培養は当分野において知られている方法により行われる。下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地および培養条件を例示するが、本発明における培養条件はこれらに何ら限定されるものではない。
宿主が細菌,放線菌,酵母,糸状菌等である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜9である培地である。宿主が大腸菌の場合、好ましい培地としてLB培地,M9培地[Miller. J., Exp. Mol. Genet, p.431, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1972)]等が例示される。培養は、必要により通気・攪拌をしながら、通常14〜43℃で約3〜72時間行うことができる。宿主が枯草菌の場合、必要により通気・攪拌をしながら、通常30〜40℃で約16〜96時間行うことができる。宿主が酵母の場合、培地として、例えばBurkholder最少培地 [Bostian. K.L. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980)]が挙げられ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
宿主が動物細胞の場合、培地として、例えば約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)[Virology, 8, 396 (1959)]、RPMI1640培地[J. Am. Med. Assoc., 199, 519 (1967)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)] 等を用いることができる。これら培地には、APを安定化させるための金属塩を添加してもよく、そのような金属塩としては、好ましくはマグネシウム塩および/又は亜鉛塩が用いられる。これら金属塩は、培養する細胞に毒性を示さない範囲において設定すればよく、マグネシウム塩であれば終濃度0.001mM〜10mM、亜鉛塩であれば0.001mM〜1mMが好ましい添加量の範囲として例示されるが、この範囲に限定されない。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
宿主が昆虫細胞の場合、培地として、例えばウシ胎仔血清を含むGrace’s培地[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 8404 (1985)]等が挙げられ、そのpHは約5〜8であるのが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15〜100時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
【0044】
2−3−5.精製
APの精製は、AP活性の存在する画分に応じて、通常使用される種々の分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。
培養物の培地中に存在するAPは、培養物を遠心または濾過して培養上清(濾液)を得、該培養上清から、例えば、塩析、溶媒沈澱、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性PAGE、SDS−PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動などの公知の分離方法を適当に選択して行うことにより得ることができる。
【0045】
一方、細胞質に存在するAPは、培養物を遠心または濾過して細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、例えば超音波処理、リゾチーム処理、凍結融解、浸透圧ショック、および/またはトライトン−X100等の界面活性剤処理などにより、細胞およびオルガネラ膜を破砕(溶解)した後、遠心分離や濾過などによりデブリスを除去して可溶性画分を得、該可溶性画分を、上記と同様の方法で処理することにより単離精製することができる。
【0046】
組換えAPを迅速且つ簡便に取得する手段として、APのコード配列のある部分(好ましくはNまたはC末端)に、金属イオンキレートに吸着し得るアミノ酸配列(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リシン等の塩基性アミノ酸からなる配列、好ましくはヒスチジンからなる配列)をコードするDNA配列を、遺伝子操作により付加して宿主細胞で発現させ、該細胞の培養物のAP活性画分から、該金属イオンキレートを固定化した担体とのアフィニティーによりAPを分離回収する方法が好ましく例示される。金属イオンキレートに吸着し得るアミノ酸配列をコードするDNA配列は、例えば、APをコードするDNAをクローニングする過程で、APのC末端アミノ酸配列をコードする塩基配列に該DNA配列を連結したハイブリッドプライマーを用いてPCR増幅を行ったり、あるいは該DNA配列を終止コドンの前に含む発現ベクターにAPをコードするDNAをインフレームで挿入することにより、APコード配列に導入することができる。また、精製に使用される金属イオンキレート吸着体は、遷移金属、例えばコバルト、銅、ニッケル、鉄の二価イオン、あるいは鉄、アルミニウムの三価イオン等、好ましくはコバルトまたはニッケルの二価イオン含有溶液を、リガンド、例えばイミノジ酢酸(IDA)基、ニトリロトリ酢酸(NTA)基、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン(TED)基等を付着したマトリックスと接触させて該リガンドに結合させることにより調製される。キレート吸着体のマトリックス部は通常の不溶性担体であれば特に限定されない。
あるいは、タグとしてグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、HA、FLAGペプチドなどを用いてアフィニティー精製することもできる。
【0047】
上記精製工程において、必要に応じて膜濃縮、減圧濃縮、活性化剤および安定化剤添加等の処理を行うこともできる。これら工程に用いる溶媒としては特に限定されないが、pH6〜9程度の範囲において緩衝能を有するK−リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、GOODの緩衝液等に代表される各種緩衝液が好ましい。また、本APの安定性を担保するために、これら緩衝液中に金属塩を添加してもよく、そのような金属塩としては、好ましくはマグネシウム塩および/又は亜鉛塩が用いられる。これら金属塩は、APの安定化に奏効する範囲において設定すればよく、マグネシウム塩であれば終濃度0.001mM〜10mM、亜鉛塩であれば0.001mM〜1mMが好ましい添加量の範囲として例示されるが、この範囲に限定されない。
【0048】
かくして得られるAPが遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって該遊離体を塩に変換することができ、該タンパク質が塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
【0049】
精製酵素は液状で産業利用に供することも可能であるが、粉末化し、あるいはさらに造粒することもできる。液状酵素の粉末化は定法により凍結乾燥することでなされる。
【0050】
2−4.(4)APをコードする核酸から無細胞転写/翻訳系を用いて生化学的に合成する方法
さらに、本発明のAPは、それをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞タンパク質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。
本発明のAPをコードするRNAは、本発明のAPをコードするmRNAを常法を用いて該RNAを発現する宿主細胞から精製するか、あるいは、APをコードするDNAを鋳型とし、RNAポリメラーゼを含む無細胞転写系を用いてcRNAを調製することによって取得することができる。無細胞タンパク質転写/翻訳系は市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液はPratt J.M. et al., “Transcription and Tranlation”, Hames B.D. and Higgins S.J. eds., IRL Press, Oxford 179−209 (1984) に記載の方法等に準じて調製することもできる。市販の細胞ライセートとしては、大腸菌由来のものはE.coli S30 extract system (Promega社製) やRTS 500 Rapid Tranlation System (Roche社製) 等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System (Promega社製) 等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM(TOYOBO社製) 等が挙げられる。このうちコムギ胚芽ライセートを用いたものが好適である。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、例えばJohnston F.B. et al., Nature, 179: 160−161 (1957) あるいはErickson A.H. et al., Meth. Enzymol., 96: 38−50 (1996) 等に記載の方法を用いることができる。
【0051】
タンパク質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法 [Pratt, J.M. et al. (1984) 前述] や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム [Spirin A.S. et al., Science, 242: 1162−1164 (1988)]、透析法 (Kigawa et al., 第21回日本分子生物学会, WID6)、あるいは重層法 (PROTEIOSTMWheat germ cell−free protein synthesis core kit取扱説明書: TOYOBO社製) 等が挙げられる。さらには、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法 (特開2000−333673) 等を用いることができる。
【0052】
2−5.コンジュゲート
また、本発明の別の態様は、上述のアルカリホスファターゼによって標識されてなるコンジュゲートであり、標識の対象となる物質はたとえば核酸プローブ、ビオチンなどの生体物質、ポリペプチド・アビジン・抗体などのタンパク質などが好適に選択される。標識の方法は、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、グルタルアルデヒド法の各手法が適用可能であり、標識対象物質、用いる官能基、使用目的などにより使い分けることができる。ELISAや免疫診断試薬において使用されるAP標識抗体・AP標識抗原の作製方法並びにそれらを用いた免疫測定の方法については「超高感度酵素免疫測定法」(石川榮治著、学会出版センター刊)などに詳しい。
【0053】
典型的な免疫測定方法の一例は、まず測定対象となる物質の一次抗体を含む溶液を添加・インキュベートすることにより固相に吸着させる。この固相は反応層として用いる容器であってもよく、また反応層とは別に用意した磁性ビーズ等であってもよい。一次抗体を吸着させた後、溶液を除いて洗浄バッファーで数回リンスして非吸着物質を除く。洗浄バッファーは抗体が安定に存在しうる中性付近のpH領域で緩衝能を有するものを利用可能であり、また洗浄能を高めるために界面活性剤を含んでいてもよい。洗浄後の固相は、さらにウシ血清アルブミンや不活性化型AP等のタンパク質を含んだ液に浸漬され、インキュベートすることによりブロッキングを行う。ブロッキング後の固相は前出の洗浄バッファーで洗浄の後、測定対象となるサンプルに接触させ、一定時間インキュベートすることで、測定対象物を一次抗体に吸着させる。サンプル溶液を完全に除き、前出の洗浄バッファーで洗浄ののち、AP標識二次抗体を含む溶液を添加し一定時間インキュベートすることにより、固相上の一次抗体に捕捉された測定対象物にAP標識二次抗体を吸着させる。溶液を完全に除き、前出の洗浄バッファーで洗浄ののち、APの基質を添加して活性を検出する。APの基質としては、活性の検出方法が比色法であればp−ニトロフェニルリン酸や5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸が、蛍光法であれば4−メチルウンベリフェリルリン酸が、発光法であれば1,2−ジオキセタン系もしくはアクリダン系発光基質からなる各種発光基質を利用可能である。これらの中で、本発明のAPは特に発光基質に対する反応性に優れており、これを用いる方法がより好適に選択される。発光基質としては、たとえばAMPPD、CSPD、CDP−star、Lumigen PPD、Lumi−Phos530、APS−5などが挙げられるが、これらに限定されない。あらかじめ測定対象物質の標準液を用いて作成した検量線より、測定対象物質を定量する。
【0054】
典型的な免疫測定試薬の構成の一例は、反応層、一次抗体が固定化され、かつウシ血清アルブミンや不活性化型AP等のタンパク質でブロッキングされた固相、測定対象である抗原の標準液、APが標識された二次抗体、反応層中でサンプルや二次抗体を反応させた後に洗浄するための洗浄液、APの基質溶液、使用マニュアルを含む。APの基質としては、活性の検出方法が比色法であればp−ニトロフェニルリン酸や5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸が、蛍光法であれば4−メチルウンベリフェリルリン酸が、発光法であれば1,2−ジオキセタン系もしくはアクリダン系発光基質からなる各種発光基質を利用可能である。これらの中で、本発明のAPは特に発光基質に対する反応性に優れており、これを用いる方法がより好適に選択される。発光基質としては、たとえばAMPPD、CSPD、CDP−star、Lumigen PPD、Lumi−Phos530、APS−5などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
3.活性測定例
本発明に述べるAP活性は、特に断りがない限り以下の方法で測定されたものである。
まず、下記の溶液A・Bを調製する。
A:1Mジエタノールアミン緩衝液 (pH9.8)
B:0.67M p−ニトロフェニルリン酸 (溶液Aに溶解する)
溶液A2.9mlと溶液B0.1mlとをキュベット(光路長=1.0cm)に調製し、37℃で5分間予備加温する。AP溶液0.1mlを添加してゆるやかに混和し、水を対照に37℃に制御された分光光度計で405nmの吸光度変化を3〜5分間記録し、その直線部分から1分間あたりの吸光度変化を求める(ΔODTEST)。盲検は酵素の代わりに酵素を溶解しているバッファーを0.1ml加え、同様に1分間あたりの吸光度変化を求める(ΔODBLANK)。これらの値を用いて、下記の式よりAP活性を求める。

AP活性(U/ml)={(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1}/{18.2×1.0×0.1}

3.1:AP溶液添加後の反応液量(ml)
18.2:上記測定条件における、p−ニトロフェノールのミリモル分子吸光係数(cm/μmol)
1.0:光路長(cm)
0.1:酵素溶液の添加量(ml)
【0056】
4.タンパク質の定量および比活性の算出例
本発明に述べるタンパク質量は280nmの吸光度を測定することにより測定したものである。すなわち、280nmにおける吸光度が0.1〜1.0の範囲となるように酵素溶液を蒸留水で希釈し、蒸留水を用いてゼロ点補正を行った吸光度計を用いて280nmの吸光度(Abs)を測定する。本発明に述べるタンパク質濃度は、1Abs≒1mg/mlと近似し、吸光度の測定と測定した溶液の希釈倍率とを乗じた値で示したものである。また、本発明に述べる比活性とは、本測定方法によるタンパク質量として1mgあたりのAPの活性(U/mg)であり、この際のAP活性は、上記活性測定例に従って測定することにより得られる値である。
【0057】
以下、本発明を具体的に実施例として示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0058】
AP遺伝子のクローニング
Shewanella chilikensis NBRC105217株を試験管中の5mlLB培地に植菌し、30℃で24時間振とう培養した。培養液を1.5ml容エッペンドルフチューブに入れ、冷却遠心機で12000rpm5分遠心し、上清を吸引除去することにより、菌体を得た。この菌体より、ゲノムDNA抽出キット(TOYOBO製、NPK−1)を用いて、該キットに添付のマニュアルに従ってゲノムDNAを取得した。このゲノムDNAを制限酵素BamHIもしくはBglIIで消化させ、DNA精製キット(TOYOBO製、NPK−6)を用いて精製し、制限酵素を除いた。このDNA断片を、BamHIで消化し精製したpBR322と混合し、混合液と等量のライゲーション液(TOYOBO製、LigationHigh)を加えて16℃で一晩インキュベートした。このライゲーション溶液を大腸菌JM109株コンピテントセル(TOYOBO製、コンピテントハイJM109)に添加し、ヒートショックによりプラスミドを形質転換することで、T3−3株のゲノムDNAライブラリーを作製した。50μg/mlのBCIPおよび100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地にこのライブラリーを植菌して30℃で培養し、形質転換コロニーを形成させた。形成されたコロニーをうち青色を呈したものを爪楊枝でつき、試験管中の5mlLB培地(100μg/mlのアンピシリンを含む)に植菌し、30℃で16時間振とう培養した。この培養液より、プラスミド抽出キット(TOYOBO製、NPK−3)を用いてNBRC105217株由来AP遺伝子を含むプラスミド(pLPP105217−1)を抽出、精製した。得られたプラスミドは、約6kbのインサートを有しており、この配列をシーケンス解析することにより、AP遺伝子全長およびその隣接領域の配列を決定した。決定されたAP遺伝子の塩基配列を配列番号1に、またこの塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【実施例2】
【0059】
大腸菌宿主でのAPの発現
実施例1で取得したプラスミド(pLPP105217−1)を大腸菌C600株にエレクトロポレーションにより導入し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布、30℃で一晩培養することにより、形質転換コロニーを形成させた。この形質転換コロニーを500ml容坂口フラスコ中の60mlLB培地(100μg/mlのアンピシリンを含む)に一白金耳植菌し、30℃180rpmで一晩振とう培養した。この培養液全量を10L容ジャーファーメンター中の6L生産培地(1.2%ペプトン、2.4%酵母エキス、0.1%NaCl、0.1mM硫酸亜鉛、100μg/mlのアンピシリン、pH7.0)に全量投入し、通気量2L/分、攪拌380rpm、温度30℃で48時間攪拌通気培養した。これにより、203U/mlのAPを産生させた。
【実施例3】
【0060】
大腸菌組換えAPの精製
実施例3で得られた培養液を500ml容遠心管に分注し、高速冷却遠心装置で8000rpm30分遠心し、上清をデカントで除去することにより菌体を得た。菌体を1.5Lの20mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)に懸濁し、フレンチプレス破砕機により圧力80MPaで破砕した。破砕液に5%(w/v)ポリエチレンイミンを対液1%添加し、生成した固形分を高速冷却遠心装置で8000rpm30分遠心により沈降させ除いた。この液に0.2飽和の硫酸アンモニウムを溶解させ、生じた固形分を高速冷却遠心装置で8000rpm30分遠心することにより除いた。さらに、終濃度0.6飽和となるように硫酸アンモニウムを追加して溶解させ、高速冷却遠心装置で8000rpm30分遠心し、デカントにより上清を除いてAPを含む沈殿を得た。この沈殿を90mlの20mMトリス塩酸バッファー(pH7.5、かつ1mMの塩化マグネシウムを含む)を加えて溶解させた。この溶液を20mMトリス塩酸バッファー(pH7.5、かつ1mMの塩化マグネシウムを含む)で緩衝化したG−25セファロースゲル(GEヘルスケア製)を用いて脱塩した。この液を、20mMトリス塩酸バッファー(pH7.5、かつ1mMの塩化マグネシウムを含む)で緩衝化したDEAEセファロースゲル(GEヘルスケア製)に吸着させ、同バッファーでNaCl濃度を0.5Mまで上昇させることによりグラジエント溶出を行った。AP活性を有する画分を集め、0.2飽和となるよう硫酸アンモニウムを溶解した。この溶液を20mMトリス塩酸バッファー(pH7.5、かつ0.2飽和の硫酸アンモニウムおよび1mMの塩化マグネシウムを含む)で緩衝化したPhenylセファロースゲル(GEヘルスケア製)にアプライ、同バッファーを通液しつづけて非吸着画分を回収し、同バッファーで硫酸アンモニウム濃度を0まで下げることによりグラジエント溶出した。APを含む画分をあつめ、20mMトリエタノールアミン(pH7.5、かつ0.3M塩化ナトリウム、1mMの塩化マグネシウムおよび0.1mMの硫酸亜鉛を含む)で緩衝化したSephadex200カラムでゲルろ過し、APを含む画分を集めた。このAP溶液について比活性を測定したところ、8010U/mgであった。
【実施例4】
【0061】
T3−3株由来組換えAPの熱安定性
実施例4で作製したAPを50mMトリエタノールアミン、1mM 塩化マグネシウム、0.1mM 硫酸亜鉛(pH7.0)を用いて10μg/mLの濃度になるよう希釈した。この液を、60℃、65℃、70℃の各温度で1時間インキュベートし、インキュベート前後のAP活性を比較した。また、比較対象として、比活性6000U/mgのCIAPについても同様の処理を行った。各インキュベート温度と、インキュベート後の活性残存率を図3に示す。本発明のAPは、65℃においても80%以上の活性を維持していた。一方のCIAPは、60℃の処理で29%、65℃では2%の残存率であり、本発明のAPがCIAPに比して高い熱安定性を有していることが明らかとなった。
【実施例5】
【0062】
APの発光基質に対する反応性比較
実施例4で作製したAPについて、それぞれ20mMトリス塩酸バッファー(pH7.5、1mM 塩化マグネシウムおよび0.1mM 硫酸亜鉛を含む)を用いて0.5U/mlもしくは0.1U/mlとなるよう希釈した。このAP希釈液を96ウエルのELISAプレートに5μLずつ分注した。ここに、発光基質としてAPS−5、ルミホス530(以上Lumigen社製)、CDP−star(Roche社製)のいずれかを50μL加え、マルチラベルプレートカウンター(パーキンエルマー社製、Wallac 1420 ARVO MX)を用いて発光強度を測定した。結果を表1に示す。本発明のAPは、汎用の発光基質に対して十分な反応性を有していることが確認された。
【0063】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のアルカリホスファターゼは、免疫測定用標識酵素として有用であるほか、プローブハイブリダイゼーション、ウエスタンブロッティング用標識酵素として利用可能である。さらに、本発明のアルカリホスファターゼは、DNA断片の脱リン酸化するための遺伝子工学用酵素として利用可能である。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]