(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部が、色度図を複数の領域に分割し、分割された各領域毎に複数段階に分けて明度を設定し、各領域の各明度段階毎に色調の判定出力表示を設定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の体液分析装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院等では、尿に含まれる各種成分を分析し、その分析結果から患者の健康状態を判断するために、患者から尿を採取して、これを分析することが行われている。
尿の分析は、大きく分けて定性分析、定量分析及び沈査分析という3種類の分析方法がある。
定性分析は、尿中に特定の成分が存在しているか否かを判断するための分析であり、短冊状の支持体に複数の検査用試薬部を保持した試験紙等の検査体を用意し、この検査体の試薬部に尿を点着させた後、各試薬部の呈色反応を、反射光度法等の光学的手法により測定する。
出願人は、定性分析法により、尿中に含まれる各種成分を分析する分析装置を既に提案している(特許文献1:特開2006−275697公報)。
上記した分析装置は、複数の検査体を収容する検査体保管装置を備え、この検査体保管装置から検査体を順次取り出して、分析に供するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、尿等の体液は、上記したように含有されている各種成分を分析することの他、その外観からも様々な情報を得ることができる。具体的には、採取した体液の濁り具合(濁度)や色(色調)によって様々な情報が得られる。
例えば、尿の場合、肝機能に異常がある時に肝臓の代謝でできる色素が尿の中に出てきて尿が褐色になったり、腎臓・尿管・膀胱・尿道の出血により尿が赤くなったりすることがあり、また、尿路の炎症等により尿が濁ったりすることがある。このため、尿等の体液の成分を分析する体液分析装置には、体液の濁度や色調を判定する機能が付加されているものがある。
しかし、濁度や色調による判定は、標準化されているわけではないので、病院や検査室毎に判断がまちまちである。具体的には、ある病院では、透過率が90%以下の場合に濁りレベルを最大として検査項目を追加するが、別の病院では、透過率が93%以下の場合に濁りレベルを最大として検査項目を追加するとか、ある病院では赤いと判断する尿の色が、他の病院ではオレンジ色と判断するとかである。
このため、体液分析装置で濁度や色調を測定して判定をする場合、病院毎に希望する閾値や出力表示が異なり、病院毎に、技術者が設定を行う必要があるという問題がある。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、病院毎に異なる濁度や色調の判定のための閾値や出力表示を容易に設定することができる体液分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る体液分析装置は、測定すべき体液に光を透過
及び反射させて、その透過光強度
及び反射光強度を測定するための光学系と、前記光学系からの
透過光強度の測定結果に基づいて体液の濁度を判定し、かつ、反射光強度の測定結果に基づいて色調を判定する判定部とを備えた体液分析装置において、前記判定部における閾値
及び判定出力表示を調整可能な調整部を設け、前記調整部が、調整可能な閾値
及び判定出力表示を、少なくとも対応する色を用いてモニターに表示し、モニターに表示された色を見ながら閾値
及び判定出力表示を変更することができるように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る体液分析装置は、測定すべき体液に光を透過
及び反射させて、その透過光強度
及び反射光強度を測定するための光学系と、前記光学系からの
透過光強度の測定結果に基づいて体液の濁度を判定し、かつ、反射光強度の測定結果に基づいて色調を判定する判定部とを備えた体液分析装置において、前記判定部における閾値
及び判定出力表示を調整可能な調整部を設け、前記調整部が、調整可能な閾値
及び判定出力表示を、少なくとも対応する色を用いてモニターに表示し、モニターに表示された色を見ながら閾値
及び判定出力表示を変更することができるように構成されているので、難しい理論や計算式を理解する必要なく、感覚的に濁度
及び色調判定の閾値
及び出力色調表示を自分の望むように変更することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示した一実施例を参照しながら本発明に係る体液分析装置の実施の形態について説明していく。
【0009】
図1は、本発明に係る体液分析装置の一実施例の構成を示す概略ブロック図である。
この体液分析装置は、ハルンカップや試験管等に入れられた尿等の体液から尿を吸引して測定セルに送り、該測定セルにおいて尿等の体液の色調及び濁度を測定することができるように構成されており、
測定セルに送られてきた体液に光を透過及び反射させて、その透過光強度及び反射光強度を測定するための光学系1と、
光学系1における測定結果に基づいて体液の透過率及び反射率を演算する演算部2と、
演算部2における演算結果に基づいて濁度判定を行う濁度判定部3と、
演算部2における演算結果に基づいて色調判定を行う色調判定部4と、
前記濁度判定部3及び色調判定部4における判定結果を出力するモニター5と
を備えている。
該体液分析装置は、さらに、前記濁度判定部3及び色調判定部4における閾値及び判定出力表示を調整可能な調整部6を備えている。
前記調整部6は、調整可能な閾値及び判定出力表示を色度図等の色付き画像、数値及び文字を用いてモニターに表示し、モニターに表示された色付き画像、数値及び文字を見ながらキーボード、マウス又はタッチパネルによって閾値及び判定出力表示を変更することができるように構成されている。
【0010】
以下、各処理部の構成について具体的に説明をしていく。
式(1)は、測定セル内にある体液のIr波長の透過率Tを求める式である。
T=(I−I
Br)/(I
W−I
Br) (1)
式中、Iは測定セル内に体液を入れ、そこに光を照射した時の透過光強度を、I
Brは測定セル内に光を照射していない時の透過光強度を、I
Wは、測定セル内に洗浄液を入れ、そこに光を照射した時の透過光強度をそれぞれ示している。
演算部2は、光学系1から得られるデータに基づいて上記式(1)に従ってIR波長の透過率T(%)を算出する。
【0011】
演算部2で演算されたIr波長の透過率Tは、濁度判定部3に送られる。
濁度判定部3は、予め、Ir波長の透過率Tに応じた濁度データを記憶しており(
図2参照)、該濁度データに基づいて、Ir波長の透過率Tから濁度を決める。
尚、この実施例では、Ir波長の透過率Tが95.1%以上の場合は濁度レベルIであり、同透過率Tが95〜90.1%の間にある場合は濁度レベルIIであり、同透過率Tが90%以下の場合は濁度レベルIIIであり、濁度判定部3は、判定結果(濁度レベルI、濁度レベルII、濁度レベルIII)をモニター5に出力する。
【0012】
色調は、体液に対するR波長、G波長及びB波長の反射率から得られる座標と総反射率とに基づいて決められる。
式(2)は各波長の反射率Rを求める式である。
R=(L−L
Br)/(L
w−L
Br) (2)
式中、Lは測定セル内に体液を入れ、そこに光を照射した時の反射光強度を、L
Brは測定セル内に光を照射していない時の反射光強度を、L
Wは、測定セル内に洗浄液を入れ、そこに光を照射した時の反射光強度をそれぞれ示している。
式(2)に従って算出されたR波長反射率R
R、G波長反射率R
G及びB波長反射率R
Bは、次式(3)〜(5)に従ってxyz座標に変換される。
x=0.4898R
R+0.3101R
G+0.2001R
B (3)
y=0.1769R
R+0.8124R
G+0.0107R
B (4)
z=0R
R+0.01R
G+0.9903R
B (5)
さらに上式(3)〜(5)で求められたxyz座標は次式(6)及び(7)に従ってXYy座標に変換される。
X=x/(x+y+z) (6)
Y=y/(x+y+z) (7)
演算部2は、光学系1から得られるデータに基づいて上記式(2)〜(7)に従ってXYy座標を求め、さらに、次式(8)に従って総反射率R
Tを求める。
R
T=R
R+R
G+R
B (8)
【0013】
演算部2によって算出されたXYy座標及び総反射率R
Tは色調判定部4に送られる。
色調判定部4は、
XY座標空間で色を表したXY色度図を10のエリアに分割したXY色度図データと、
総反射率R
Tに応じた4段階の明度データと、
色度マップの各エリアと各段階の明度に応じた出力色調表示データから成る色調マトリックスデータと
を有する。
図3は、10のエリアに分割された色度図データの一例を示している。3原色であるRGB全部の光の強さの和を1としてRとGの光の相対比を使えば、残りのBの相対比は自動的に決まり、二つの数値を色を決めることができる。
図3に示す色度図データは、この考え方に従って二つの数値(X,Y)で色を表した図であり、図面は白黒であるが、実際にはカラーである。具体的には、エリア1は緑に近く、エリア2は黄色に近く、エリア6に近づくに従って赤色になり、さらに、エリア6からエリア10に近づくに従って青色になる。
図4は総反射率R
Tに応じた4段階の明度データを示す図であり、
図5は前記色調マトリックスデータを示す図である。
色調判定部4は、演算部2から得られるXY座標に基づいて色度図データから該当するエリア1〜10を特定し、かつ、演算部2から得られる総反射率R
Tに基づいて明度の度合い(HH、H、M、L)を特定し、特定したエリア及び明度度合いに基づいて色調マトリックスデータから出力色調表示を決定してモニター5を介して出力する。
具体的には、例えば、測定した体液から得られるXY座標が(0.4,0.5)であり、総反射率が90である場合、色度図データのエリアは「エリア2」が選択され、明度は「L」が選択され、その結果、出力色調表示は「Dark Brown」が選択されて出力される。
【0014】
次に、調整部の構成について説明していく。
前記したように調整部6は、調整可能な閾値及び判定出力表示を色度図等の色付き画像、数値及び文字を用いてモニターに表示し、モニターに表示された色付き画像、数値及び文字を見ながらキーボード、マウス又はタッチパネルによって閾値及び判定出力表示を変更することができるように構成されている。
図6〜
図10は、調整部によってモニター5を介して表示される色調判定設定変更画面の一例を示している。
色調判定設定の変更を行う場合、調整部6は、始めに
図6に示す画面をモニター5に表示する。
この
図6の画面では、左側に10のエリアに分けられた色度図データが表示され、右側に色調マトリックスデータが表示されている。
図7は、使用者が閾値及び判定出力表示を変更したいエリアを選択している状態を示している。この図に示すように、使用者が、マウス又はタッチパネルを介して色度図データの中から変更したいエリアを選択すると、そのエリアの境界線が太線に変わる。
エリアを選択した後、OKボタンをマウス又はタッチパネルを介してクリックすると、
図8に示すように、選択したエリアの色に対応する色の明度パラメータバー及び各明度の度合いに応じた出力色調表示が色度図データの右側に表示される。
図8において、明度パラメータバーは、3本の閾値バーによって4段階の明度度合いに分割されており、各段階毎に出力色調表示が表示されている。
図9に示すように、各段階の出力色調表示はリストボックスから選択して変更可能であり、また、閾値バーをマウス又はタッチパネルを用いてドラッグして上下に動かすことにより明度の度合いの閾値を変更することもできる。
図9において、閾値及び出力色調表示を変更した後、OKボタンをクリックすると、色度図データの右側にデータ変更後の色調マトリックスデータが再び表示され変更が完了する(
図10)。
調整部6は、
図10の状態でOKボタンをクリックすると、変更後のデータを色調判定部4に出力し、これにより、その後の測定から変更後の閾値及び出力色調表示が反映される。
【0015】
上記したように、調整部6が、モニター5を通して色度図データ、明度パラメータバー及び出力色調表示を表示し、実際に色を見ながら明度の閾値及び出力色調表示を変更することができるように構成されているので、難しい理論や計算式を理解する必要なく、感覚的に色調判定の閾値及び出力色調表示を自分の望むように変更することが可能になる。
【0016】
上記した実施例では、調整部6は色調判定部4の閾値及び出力色調表示を変更することができるように構成されているが、調整部6の構成は本実施例に限定されることなく、濁度判定部4の閾値及び出力表示も変更するように構成され得ることは勿論である。この場合、例えば、調整部6は、
図2に示す濁度データの濁り度合いを、
図9及び
図10に示した明度パラメータバーのように数字ではなく色の濃淡で表すバーで表示すると共に、各濁度レベルの閾値をドラッグして移動可能な閾値バーで構成することができる。
さらに、上記した実施例では、調整部6は色調判定部4の明度の閾値及び出力色調表示を変更することができるように構成されているが、これは本実施例に限定されることなく、例えば、色度図の各エリアの境界閾値を変更することができるように構成され得る。