(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結工程では、前記当接工程で当接した前記第一の管状体の前記溶融部および前記第二の管状体の前記端部の互いの前記当接部分を、周方向にレーザにより帯状に溶融して、当該当接部分を連結する、レーザ溶接工程を含む請求項21から23のいずれか一項に記載の医療機器の製造方法。
前記連結工程では、前記当接工程で当接した前記第一の管状体の前記溶融部および前記第二の管状体の前記端部の前記当接部分の外周全体を、抵抗溶接または加熱により帯状に溶融して、当該当接部分を連結する、加熱溶接工程を含む請求項21から23のいずれか一項に記載の医療機器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、以下のような問題が生じる。すなわち、遠位端部は連結部材による固定方向には屈曲不能であるため、この連結部材で連結した方向には屈曲させることができなかった。そのため、患部が連結部材方向に存在する場合は、管本体全体を90度回転させてから屈曲させる必要があった。
【0006】
ここで、管本体を回転させる場合、管本体にはトルク(ねじりの強さ)が作用する。特許文献1のカテーテルは、管本体が螺旋状であるため、この回転等の際にはトルク伝達性が低下する。また、遠位端部を軸方向に固定していることで、操作用ワイヤの押し/引きによる様々な方向への微細な屈曲を行うことができず、さらには、操作用ワイヤを操作した場合のカテーテルの遠位端部の曲率は、牽引長さに対応して一意に決められてしまう。このため、さまざまな角度に分岐する体腔に対してカテーテルを自在に進入させることが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、遠位端部が柔軟で、近位端部が硬い等、所望の機械的特性の容易な実現が可能な医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療機器は、体腔内に挿入して用いられ、可撓性を有する長尺の管状本体を有する医療機器であって、
前記管状本体が、
線材料からなる第一の管状体と、
前記第一の管状体の
前記線材料の端
部に設けられた溶融部と、
線材料からな
る第二の管状体と、を有
し、
前記第二の管状体の前記線材料の端部が、前記第一の管状体の前記溶融部に連結しており、
前記第一の管状体の前記溶融部の内周面、または前記第二の管状体の端部の内周面の少なくとも一方に、互いに連結された前記端部に向かって拡径するテーパーカット部が形成されていることにより、前記端部を境界とする前記第一の管状体と前記第二の管状体との曲げ剛性が連続化するように構成されている。
【0009】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体は、1本または複数本の線材料が一条または多条に巻回されてコイル状に形成され、
第一の管状体の線材料の端部が溶融されることで隣接する線材料が互いに接合されて溶融部に端面が形成され、当該端面に、第二の管状体の線材料の端部が連結されているものであってもよい。
【0010】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第二の管状体は、1本または複数本の線材料が一条または多条に巻回されてコイル状に形成され、
第二の管状体の線材料の端部が溶融されることで隣接する線材料が互いに接合されて、第二の管状体に溶融部が形成されるとともに、当該溶融部に端面が形成され、
第一の管状体の端面と、第二の管状体の端面とが、互いに連結されているものであってもよい。
【0011】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体は、1本または複数本の線材料が一条または多条に巻回されてコイル状に形成され、
第二の管状体は、複数本の線材料が網目状に編組されて形成され、
第一の管状体の端面に、第二の管状体の網目状の線材料の端部が連結されたものであってもよい。
【0012】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、線材料の端部が溶融されることで接合され形成された端面は、溶融部を切断し研磨することにより平坦化されたものであってもよい。
【0013】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、線材料の端部が溶融されることで接合され形成された端面は、外周が研磨されることにより外径方向の厚みが薄肉化されたものであってもよい。
【0014】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体および第二の管状体は、複数本の線材料が網目状に編組されて形成され、
第一の管状体および第二の管状体の編組の線材料の端部の交点が互いに連結されたものであってもよい。
【0015】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体および第二の管状体は、溶接により連結されたものであってもよい。
【0016】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体と、第二の管状体とは、線材料の条数が異なるものであってもよい。
【0017】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体および第二の管状体は、互いの線材料の端部の形状または線材料の直径が異なり、
互いの線材料の端部が溶融されて溶融部の端面がそれぞれ形成され、当該端面が互いに連結されたものであってもよい。
【0018】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体および第二の管状体の連結部の外周が、さらに蝋付けされたものであってもよい。
【0019】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体の線材料と第二の管状体の線材料とが、同種の金属製であってもよい。
【0020】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、第一の管状体の第二の管状体との連結部とは反対側の他端、または、第二の管状体の第一の管状体との連結部とは反対側の他
端に、さらに第三の管状体が連結されたものであってもよい。
【0021】
また本発明の医療機器においては、より具体的な実施の態様として、
メインルーメンと、
内部にメインルーメンを有する内層と、
内層の外周表面に、管状本体からなる補強層と、
少なくとも補強層を含む内層を被覆する外層と、を有するカテーテルであってもよい。
【0022】
また本発明の医療機器の製造方法は、線材料からなる第一の管状体の
前記線材料の端部を溶融することを含んで溶融部を形成する溶融工程と、
前記第一の管状体の前記溶融部と、線材料からなる第二の管状体の
前記線材料の端部とを、互いに当接する当接工程と、
前記第一の管状体の
前記溶融部と
前記第二の管状体の
前記線材料の
前記端部との当接部分を連結することで、長手方向に延在する管状本体を得る連結工程と、を含
み、
前記連結工程において、前記第一の管状体の前記溶融部の内周面、または前記第二の管状体の端部の内周面の少なくとも一方に、互いに連結された前記端部に向かって拡径するテーパーカット部を形成し、前記端部を境界とする前記第一の管状体と前記第二の管状体との曲げ剛性が連続化するように連結する。
【0023】
また本発明の医療機器の製造方法においては、より具体的な実施の態様として、溶融工程は、
溶融部を所定位置で切断する切断工程と、
切断された溶融部を研磨して平坦な端面を形成する平坦化工程と、をさらに含むものであってもよい。
【0024】
また本発明の医療機器の製造方法においては、より具体的な実施の態様として、溶融工程または連結工程は、
溶融工程後の溶融部の外周または連結工程後の連結部の外周を研磨して、第一の管状体または管状本体の外径方向の厚みを薄肉化する薄肉化工程を、さらに含むものであってもよい。
【0025】
また本発明の医療機器の製造方法においては、連結工程では、当接工程で当接した第一の管状体の溶融部および第二の管状体の端部の互いの当接部分を周方向に、レーザにより帯状に溶融して、当該当接部分を連結する、レーザ溶接工程を含むものであってもよい。
【0026】
また本発明の医療機器の製造方法においては、より具体的な実施の態様として、連結工程では、当接工程で当接した第一の管状体の溶融部および第二の管状体の端部の当接部分の外周全体を、抵抗溶接または加熱により帯状に溶融して、当該当接部分を連結する、加熱溶接工程を含むものであってもよい。
【0027】
また本発明の医療機器の製造方法においては、より具体的な実施の態様として、連結工程で連結した第一の管状体および第二の管状体の連結部の外周を、蝋付けする蝋付け工程を、さらに含むものであってもよい。
【0028】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、線材料の巻き方や編み方等を途中で変えるなど、様々な機械的特性を有する管状本体を自在に製作することが可能となる。そのため、たとえば、遠位端部が柔軟で、近位端部は硬い管状本体等、所望かつ異なる機械的特性を持たせることを、容易に実現可能な構造体を有する医療機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の医療機器に用いられる管状本体および当該管状本体をカテーテルに適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0032】
<第一実施形態>
図1(c)を用いて、第一実施形態にかかる医療機器に用いられる管状本体100の構成について説明する。本実施形態の管状本体100は、体腔内に挿入して用いられ、可撓性を有する長尺状に形成されている。当該管状本体100は、線材料11aからなりコイル状の第一の管状体10と、第一の管状体10の線材料11aの端部が一体に溶融された溶融部12と、網目状に編組された線材料21a、21bからなり、当該線材料21a、21bの端部の交点が一体に溶融された溶融部22の端面22が、連結部30を介して第一の管状体10の溶融部12の端面
12aに連結された第二の管状体20と、を有して構成されている。なお、第一の管状体10および第二の管状体20の各端面12a、22aは、溶融部12、22を適宜の位置で切断し、研磨して平坦化されている。
【0033】
次に、
図1を用いて本実施形態の管状本体100の製造方法の各工程について説明する。
図1(a)は一条巻きのコイル状の第一の管状体10の一方の端部側を適宜溶融した後であって切断前の状態、および、二条の第一線材料21aと、これらとは交差する二条の第二線材料21bとが編組されて形成された網目状の第二の管状体20の端部側の切断前の状態を示す平面図であり、(b)は(a)に示した「切断位置」で、第一の管状体10の溶融部分および第二の管状体20の線材料21a、21bの端部を適宜切断して研磨し、第一の管状体10に平面的な端面を形成し、第二の管状体20の線材料21a、21bの端部を平坦かつ同一平面上に揃うように研磨する平坦化工程を説明するための平面図であり、(c)は第一の管状体10および第二の管状体20の当接工程および連結工程を説明するための平面図である。
【0034】
本実施形態の医療機器に用いられる管状本体100の製造工程は、溶融工程と、当接工程と、連結工程と、からなる。また、本実施形態では、溶融工程は、切断工程と、平坦化工程と、薄肉化工程と、を含み、連結工程は、レーザ溶接工程と、場合により薄肉化工程と、を含む。まず、溶融工程前に、第一の管状体10および第二の管状体20を用意する。本実施形態では、
図1(a)に示すように、線材料11aが一条巻きされて形成されたコイル状の第一の管状体10、および二条の第一線材料21aと、これらと交差する二条の第二線材料21bとが編組されて形成された網目状の第二の管状体20を用いている。これらは、互いの線材料11a、21a、21bの端部が平坦とはなっておらず、このままでは連結が困難である。
【0035】
そこで、溶融工程では、第一の管状体10と第二の管状体20とを連結し易くするために、
図1(a)に示すように、第一の管状体10の線材料11aの端部側を適宜溶融して、第一の管状体10の線材料11aの隣接する巻き同士を一体化している。
図1(a)で示した塗りつぶし部分が第一の管状体10の溶融部12である。次に、
図1(a)に一点鎖線で示す、それぞれの「切断位置」にて第一の管状体10の端部および第二の管状体20の線材料21a、21bの端部を切断除去する切断工程をさらに行っている。なお、第二の管状体20では、溶融工程は行わず、切断工程のみ行っているが、第二の管状体20の線材料21a、21bの端部を溶融してから切断してもよい。このように溶融すると、第二の管状体20の切断工程が容易となる、線材料21a、21bの交点同士が溶接されて、第一の管状体10との連結が容易となる、等の利点がある。次に、平坦化工程では、
図1(b)に示すように、第一の管状体10の溶融部12の切断面を研磨して、平坦な端面12aを形成する。また、第二の管状体20の線材料21a、21bの端部を研磨して、平坦かつ略同一平面上に点在する端面22aを形成する。このように、端面とは、コイル状の第一の管状体10のように、平面状に形成した端面12aだけでなく、編組状の第二の管状体20の各線材料21a、21bの端部を切断し、研磨により、各線材料21a、21bの先端に形成され、略同一平面上(仮想平面)に点在する平坦な端面22
aの集合や、第二の管状体20も溶接を行って、線材料21a、21b同士の交点を接合し、この交点の接合部分で切断、研磨して形成された端面等も含むものである。
【0036】
なお、溶融工程の際に、溶融部12の外周が、凸凹状となる、バリを生じる、等により、外径方向に厚肉となる、表面が粗くなる、等が生じる場合がある。その際は、溶融部12の外周も研磨して、第一の管状体10の外径方向の厚みを平坦かつ薄肉化してもよい(薄肉化工程)。なお、第一の管状体10の平坦化工程と薄肉化工程とは、一連の作業として行ってもよいし、薄肉化工程を、以下で説明する連結工程の後に行ってもよい。
【0037】
このように、第一、第二の管状体10、20の端部に対して平坦化工程を行って、平坦な端面12a、22
aを形成することにより、第一の管状体10と第二の管状体20との連結部30の連結性を向上させることができる。さらに、平坦化工程を行うことにより、第一の管状体10の溶融部12が平坦な端面12
aとなるだけでなく、溶融部12が長さ方向にも薄肉(狭幅)となる。そのため、連結後の互いの連結部30が硬くなりすぎるのを防ぎ、第一、第二の管状体10、20のそれぞれの柔軟性や剛性等に影響を与えることのない連結が可能となる。そのため、たとえば、柔軟性が損なわれる、連結部30の耐キンク性が低下する、などを防止することができる。
【0038】
次に、当接工程では、
図1(c)に示すように、第一の管状体10の端面12
aと第二の管状体20の各線材料21a、21bの端面22
aとを当接する。そして、連結工程で、当該当接した端面12
a、22
aに対して、周方向にレーザを照射することで、当該当接部分を帯状に溶接して連結する(レーザ溶接工程)。この連結工程の完了により、一本の長尺な管状本体100が形成される。この際に、溶接により形成された連結部30の外周が凸凹やバリ等で滑らかにならない場合がある。その場合、連結部30の外周を研磨する薄肉化工程を行って、外径方向の厚みを薄肉化し、管状本体100の外周面を滑らかにしてもよい(薄肉化工程)。このように、管状本体100は、機械的特性の異なるコイル状の第一の管状体10および網目状の第二の管状体20が、連結時の溶接により形成された連結部30を介して連結して形成されている。したがって、たとえば、一方の管状体が剛性およびトルク伝達性に優れ、他方が柔軟性と屈曲性に優れていれば、当該管状本体100は、体腔内に確実に侵入させることができる硬さを有し、かつ、トルク伝達性に優れる剛性をも有し、さらに、体腔内で屈曲させるように形成することが可能である。そのため、ガイドワイヤやカテーテルのような医療機器に用いるのに適している。また、このように、複数の管状体10、20を連結して管状本体100を形成することにより、所望の機械的特性を有する長尺な製品を容易に得ることができる。
【0039】
上記線材料11a、21a、21bおよび、以降の実施形態の線材料の素材としては、同種の金属が好ましい。同種の金属とは、たとえば、同一の金属は勿論、融点等がほぼ同一で、溶融接着性に優れている金属同士を意味する。好ましい金属材料としては、具体的には、たとえば、ステンレススチール(SUS)、ニチノール(NiTi)等のニッケルチタン系合金、鋼、チタン、銅合金、白金、タングステン等を用いることができる。なお、本発明がこれに限定されるものではなく、樹脂材料で形成してもよい。好ましい樹脂材料としては、具体的には、たとえば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子ファイバーの細線等を用いることができる。また、たとえば、第一の管状体10を樹脂材料で形成し、当該樹脂材料製の第一の管状体10を金属製の第二の管状体20に溶融接着してもよい。または、第一の管状体10を金属材料で形成し、第二の管状体20を樹脂材料で形成してもよい。あるいは、第一の管状体10および第二の管状体20との双方を樹脂材料で形成しても第一、第二の管状体10、20の接合性に優れるものとなる。さらに、線材料を多条とする場合は、金属製の線材料と樹脂製の線材料とを混在させてもよい。また、線材料の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形等、いずれの形状であってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、コイル状の第一の管状体10および網目状の第二の管状体20を用いているが、本発明がこれに限定されるものではない。たとえば、双方をコイル状の管状体としてもよいし、双方を網目状の管状体としてもよい。また、コイル状の管状体の場合、互いのコイルを異なる外径や形状の線材料で形成してもよい。また、コイルの巻回ピッチを変えて形成してもよく、たとえば、剛性を必要とする部分は密巻きのコイル状の管状体を用い、屈曲性を必要とする部分には、巻回ピッチを広くして柔軟性を有する管状体を用いてもよい。また、コイル状、網目状のいずれの管状体であっても、双方の線材料の条数を変えてもよい。この場合、双方の当接側の端部をそれぞれ溶融した溶融部を適宜の位置で切断し、研磨して、平坦な端面を形成することで、互いの端面を連結することができる。したがって、連結性に優れた一本の長尺な管状本体を得ることができる。なお、これらの端面は、本実施形態のように、管状本体100の軸方向に垂直であってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。たとえば、管状本体100の軸方向に対して傾斜して(たとえば、コイルの巻き角度と平行)形成してもよい。また、連結部30をさらに蝋付け等することにより、連結性を高めることも可能となる。また、たとえば、第一の管状体10の線材料11aよりも第二の管状体20の線材料21aが多い場合は、第一の管状体10部分が比較的柔軟で耐キンク性に優れ、第二の管状体20部分は剛性やトルク伝達性を高めることができるなど、部位により異なる機械的特性を有する管状本体100を得ることができ、使用される医療機器のバリエーションも広がる可能性が向上する。さらに、本実施形態では、第二の管状体のみが網目状に編組されているが、第一の管状体を網目状に編組されたものを使用してもよい。この場合も、少なくとも第一の管状体10の端部における線材料11a同士を溶接して溶接部を形成することで、編組の交差し合う交点が溶融接合される。溶融接合された交点は第一の管状体10の周囲に離散的に並ぶ。この端部で溶融部を切断し、端面を研磨することで、溶融接合された交点が周方向であって略同一平面上に点在する仮想的な平坦な端面が形成される。この端面に網目状の第二の管状体の線材料の先端、または第二の管状体も端面を形成した場合は、その端面を連結することにより、耐キンク性に優れた連結が可能となる。
【0041】
また、本実施形態の連結工程では、第一の管状体10および第二の管状体20の当接した端面12a、22aをレーザ(レーザ溶接工程)により溶接して連結しているが、本発明がこれに限定されるものではない。他の異なる例として、当接した端面12a、22aの外周全体を、抵抗溶接または後述する第四実施形態のように加熱により帯状に溶融して連結してもよい(加熱溶接工程)。
【0042】
本実施形態では、第一の管状体10は一条巻きのコイル状に形成されているが、さらに異なる変形例として、第一の管状体が多条巻きのコイル状に形成されていてもよい。
図2(a)に、8本の線材料111が八条巻きに巻回されて形成された第一の管状体110の端部の断面図を表している。このようなコイル状の第一の管状体110では、溶融工程において、溶融すると、
図2(b)に示すように、隣接する線材料111が互いに溶融接合して一体化した端面112が形成される。このように一体化した端面112や外周を、必要に応じて適宜の位置で切断し、研磨して平坦化や薄肉化した後に、コイル状または網目状の第二の管状体(図示せず)の端面または線材料の端部を当接して溶融等により連結する。このように端面112の表面積が多くなるため、第一の管状体110と第二の管状体との連結性が向上する。また、第一の管状体110および第二の管状体の線材料の条数や形状の違うもの同士をも容易かつ良好に連結することができる。特に、第一の管状体110および第二の管状体がともにコイル状で、かつ、線材料の直径等が異なる場合に、双方の端部を溶融して端面を形成し、当該端面を互いに接合することで面接触にて連結することができるため有効ある。このように、第一の管状体110および第二の管状体との連結に、多様に対応できるものとなる。
【0043】
<第二実施形態>
次に、
図3を用いて、第二実施形態にかかる医療機器に用いられる管状本体200およびその製造工程について説明する。本実施形態では、
図3(a)に示すように、1本の線材料211、221を用いて、一条で密巻きしたコイル状の第一の管状体210および第二の管状体220が形成されている。
図3(a)の状態では、互いの端部の位置が不揃いで、連結が困難である。したがって、溶融工程を行って溶融部212、222を形成し、次に切断工程を行って溶融部212、222を適宜の長さに切断した後に、平坦化工程により切断面の研磨を行って、端面212a、222aをそれぞれ形成している。さらに、溶融部212、222の外周を研磨し、外径方向の厚みを薄肉化する薄肉化工程を行ってもよい。以上の工程により、
図3(b)に示すように、互いの端面212a、222aが平坦化され、連結し易い形状となるとともに、外周面も滑らかとなる。
【0044】
次いで、第一、第二の管状体210、220の溶融部212、222の端面212a、222
aを溶融接合するが、その際に、より強固な連結を可能とするため、当該端面212、222間に蝋材240を配置している。そして、蝋材240を介して溶融部212、222の端面212a、222aを間接的に当接した後(当接工程)、周方向を加熱して互いの溶融部212、222を溶融接合することにより、蝋材240を介して、第一、第二の管状体210、220の端面212a、222aが強固に連結した連結部230が得られる(以上、蝋付け工程・連結工程)。
【0045】
本実施形態では、第一の管状体210の端面212aと第二の管状体220の端面222aとの間に蝋材240を介在している。しかし、変形例として、第一の管状体210の端面212aと第二の管状体220の端面222aとを当接した後、その外周に蝋材240を配置して、互いに溶融接合してもよい。このように形成すると、端面212a、222a同士が接合して連結部230が形成されるとともに、連結部230に隙間等があっても、その隙間が蝋材240で埋められる、連結部230の連結強度を向上できる、等の効果を得ることができる。
【0046】
なお、余分な蝋材240(凸凹やバリ)は、薄肉化工程で研磨等により後に除去してもよく、外周面を滑らかにすることで、体腔内の内壁等に影響を与えず、円滑な挿入と進入が可能となる。また、蝋材240の材料としては、医療機器に用いることを考慮して、銀蝋を用いるのが好ましい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、医療機器の用途に応じて、廉価な半田等を用いてもよい。また、本実施形態では、加熱により端面212a、222aを連結しているが、抵抗溶接やレーザにより連結を行ってもよい(レーザ溶接工程、加熱溶接工程等)。
【0047】
<第三実施形態>
次に、
図4、
図5、および、
図6を用いて、第三実施形態にかかる医療機器として、カテーテルに用いられる管状本体300およびその製造工程について説明する。
図4(a)、(b)に示すように、本実施形態の管状本体300は、第一の管状体310と、第二の管状体320と、第三の管状体360とを順次連結して形成されている。第一の管状体310は、金属製の線材料311が八条や一六条で多条に密巻きされてコイル状に形成され、剛性およびトルク伝達性を高めている。一方、第二の管状体320は、金属製の線材料321が、所定間隙を介して四条巻きに巻回されてコイル状に形成されているため、弾性力と復元力に優れ、
図4(b)に示すように、良好な屈曲性を有するように形成されている。一方、第三の管状体360は、交差する第一、第二線材料361(361a、361b)が細密に編組されて網目状に形成されているため、剛性や耐圧性等に優れている。これらの第一、第二、第三の管状体310、320、360を上記各実施形態のような工程で、連結部330を介して連結することにより、多様な機械的特性を有する管状本体300を容易に得ることができる。なお、
図4の左方(紙面では下方)が先端側(以下、「遠位端側DE」ともいう)にあたり、右方(紙面では上方)が手元側(以下、「基端部側」あるいは「近位端側CE」ともいう)にあたる。ただし、
図4においては近位端側CEの図示を省略している。なお、本実施形態では、第一〜第三の管状体310、320、360を連結しているが、さらに、第四以上の管状体を連結してもよく、機械的特性の異なる、バリエーションに富んだ管状本体300を得ることができる。なお、他の実施形態でも同様に、第三以上の管状体を連結してもよい。
【0048】
本実施形態のような管状本体300を使用することにより、先端側は、網目状で耐圧性等に優れた第三の管状体360が配置されているため、血流や体腔壁面との接触で押し潰される等することがなく、体腔内への挿入と進行が容易となる。また、第三の管状体360に連続する第二の管状体320は、屈曲性に優れるため、後述するように、自在な屈曲により、さまざまに分岐する血管内に容易に挿通させることができる。また、柔軟性に優れているため、耐キンク性にも優れ、内腔が潰れるのを防止するとともに、屈曲しても元の形状に復元して、他の方向や曲率で自在に屈曲させることができる。さらに、手元側であって第二の管状体320に連続する第一の管状体310は、密巻きに形成されているため、剛性に優れ、後述するシース470の円滑な進行が可能であるとともに、トルク伝達性に優れ、シース470を所望の方向に迅速かつ正確に回転させることができる。
【0049】
次に、
図5を用いて、上述のような管状本体300を使用したカテーテル400の構成について説明する。本実施形態のカテーテル400は、メインルーメン(図示せず)と、内部にメインルーメンを有する内層476と、内層476の外周表面に、上述の管状本体300からなる補強層(図示せず)と、補強層を含む内層476を被覆する外層(図示せず)と、外層の表面を被覆するコート層(図示せず)と、を有するシース470を有している。なお、
図5に第一、第二、第三の管状体310、320、360のそれぞれの部位を概略的に示している。また、内層476の遠位端側DEに、白金等で形成されたリング状のマーカ(図示せず)が配置され、外層内に、メインルーメンよりも小径でメインルーメンの周囲に180度間隔で対向して配置された一対のサブルーメン471a、471bが設けられている。
【0050】
また、サブルーメン471a、471bには、2本の操作線(第一操作線472aおよび第二操作線472b)が、それぞれ摺動可能に挿通されている。第一、第二操作線472a、472bは、カテーテル400の遠位端側DEであってマーカに、先端(以下、「遠位端473(473a、473b)」と呼ぶ。
図5参照)が固定されている。また、各操作線472a、472bの他方の先端(以下、「近位端474(474a、474b)」と呼ぶ。
図5参照)が近位端部416に固定され、この近位端部416を牽引することにより、
図5(b)、(c)のように、カテーテル400の遠位端部415において、第二の管状体320部分が屈曲する。
【0051】
なお、
図5に示すように、カテーテル400の遠位端部415とは、カテーテル400の遠位端側DEを含む所定の長さ領域をいう。同様に、カテーテル400の近位端部416とは、カテーテル400の近位端側PEを含む所定の長さ領域をいう。また、カテーテル400が屈曲するとは、カテーテル400の一部または全部が、湾曲または折れ曲がって曲がることをいう。そして、本実施形態のカテーテル400は、牽引する操作線(第一操作線472aまたは第二操作線472b)の選択により、
図5に示すように、第二の管状体320が配置されていることで屈曲する遠位端部415の曲率C(C1、C2)が複数通りに変化する。この屈折の詳細については、後述する。
【0052】
また、
図5に示すように、カテーテル400には、第一操作線472aおよび第二操作線472bを個別に牽引してカテーテル400の遠位端部415を屈曲させる操作部480が、カテーテル400の近位端部416に設けられている。
【0053】
操作部480は、カテーテル400の長手方向に延びる軸部481と、軸部481に対してカテーテル400の長手方向にそれぞれ進退するスライダ484a、484bと、軸部481を軸回転するハンドル部482と、シース470が回転可能に挿通された把持部483とを備えている。また、シース470の近位端部416は軸部481に固定されている。また、ハンドル部482と軸部481とは一体に構成されている。そして、把持部483とハンドル部482とを相対的に軸回転させることで、操作線472a、472bを含むシース470全体が軸部481とともにトルク回転する。近位端部416には剛性の高い第一の管状体310が配置されているので、トルク伝達性に優れ、良好なトルク回転が可能となる。
【0054】
したがって、本実施形態の操作部480は、シース470の遠位端部415を回転操作する部材である。なお、本実施形態においては、シース470をトルク回転させる回転操作部としてのハンドル部482と、シース470を屈曲させるための屈曲操作部としてのスライダ484とが一体に設けられている。
【0055】
第一操作線472aの近位端474aは、シース470の近位端部416から基端側に突出し、操作部480のスライダ484aに接続されている。また、第二操作線472bの近位端474bも同様に、操作部480のスライダ484bに接続されている。そして、スライダ484aとスライダ484bを軸部481に対して個別に基端側にスライドさせることにより、これに接続された第一操作線472aまたは第二操作線472bが牽引され、シース470の遠位端部415に引張力が与えられる。これにより、牽引された当該操作線472a、472bの側に第二の管状体320が配置された遠位端部415が屈曲する。
【0056】
ここで、シース470の各部の材料について説明する。上記内層476の材料としては、たとえば、フッ素系の熱可塑性ポリマーを用いることができる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などの樹脂材料を用いることができる。このように、内層476にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル400のメインルーメンを通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
【0057】
上記外層の材料としては、たとえば、熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、PI、PAI、PETのほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などの樹脂材料を用いることができる。
【0058】
また、必要に応じて、外層の表面にコート層(図示せず)が設けられるが、当該コート層の材料としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料を用いることができる。
【0059】
操作線(第一操作線472aおよび第二操作線472b)をサブルーメン471a、471bにそれぞれ挿通する方法は、種々の方法を採用することができる。予めサブルーメン471a、471bが貫通して形成されたカテーテル400のシース470に対して、その一端側から第一、第二操作線472a、472bを挿通してもよい。または、シース470の押出成形時に、樹脂材料と共に第一、第二操作線472a、472bを押し出してサブルーメン471a、471bの内部に挿通してもよい。
【0060】
第一、第二操作線472a、472bを樹脂材料と共に押し出してサブルーメン471a、471bに挿通する場合、第一、第二操作線472a、472bには、シース470を構成する樹脂材料の溶融温度以上の耐熱性が求められる。かかる第一、第二操作線472a、472bの場合、具体的な材料としては、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PIもしくはPTFEなどの高分子ファイバー、または、SUS、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いることができる。一方、予め成形されたシース470のサブルーメン471a、471bに対して第一、第二操作線472a、472bを挿通する場合など、第一、第二操作線472a、472bに耐熱性が求められない場合は、上記各材料に加えて、PVDF、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエステルなどを使用することもできる。
【0061】
なお、サブルーメン471a、471bは、本実施形態では、外層の内部に一対形成されている。そして、本実施形態のカテーテル400において、第一、第二操作線472a、472bがそれぞれ挿通されたサブルーメン471a、471bは、補強層としての管状本体300の外側に形成されている。また、サブルーメン471a、471bはカテーテル400の長手方向(
図5の紙面左右方向)に沿って設けられ、少なくともカテーテル400の近位端部416が開口している。このように、本実施形態および以降の実施形態では、サブルーメン471a、471bを、管状本体300の外側に形成しているが、本発明がこれに限定されるわけではない。たとえば、サブルーメン471a、471bを内層476の外側に形成した後、サブルーメン471a、471bの外周に管状本体300を配置形成してもよい。
【0062】
ここで、第一、第二操作線472a、472bを挿通するサブルーメン471a、471bをメインルーメンと離間して設けることにより、メインルーメンを通じて薬剤等を供給したり光学系を挿通したりする際に、これらがサブルーメン471a、471bに脱漏することがない。そして、本実施形態のようにサブルーメン471a、471bを管状本体300の外側に設けることにより、シース470内を摺動する操作線472a、472bに対して、管状本体300の内部、すなわちメインルーメンが保護される。このため、かりに第一、第二操作線472a、472bがカテーテル400の遠位端部415から外れたとしても、第一、第二操作線472a、472bがメインルーメンの周壁を開裂してしまうことがない。
【0063】
第一、第二操作線472a、472bの遠位端473a、473bは、カテーテル400の遠位端部415に固定されている。第一、第二操作線472a、472bの遠位端473a、473bを遠位端部415に固定する態様は特に限定されない。本実施形態では、前述したように、第一、第二操作線472a、472bの遠位端473a、473bをマーカに締結している。または、シース470の遠位端部415に溶着してもよく、あるいは、接着剤によりマーカまたはシース470の遠位端部415に接着固定してもよい。
【0064】
上述のような操作線(第一操作線472aまたは第二操作線472b)の近位端474a、474b側を牽引すると、カテーテル400の遠位端部415に引張力が与えられて、当該第一操作線472aまたは第二操作線472bが挿通されたサブルーメン471a、471bの、牽引された側に向かって、第二の管状体320が位置する遠位端部415の一部または全部が屈曲する。一方、第一、第二操作線472a、472bの近位端474a、474b側をカテーテル400に対して押し込んだ場合には、当該第一、第二操作線472a、472bからカテーテル400の遠位端部415に対して押込力が実質的に与えられることはない。
【0065】
なお、本実施形態のカテーテル400では、牽引する操作線を、第一操作線472aのみとするか、第二操作線472bのみとするか、または2本の第一、第二操作線472a、472bを同時に牽引するかにより、屈曲する遠位端部415の曲率Cが複数通りに変化する。これにより、さまざまな角度に分岐する体腔に対してカテーテル400を自在に進入させることができる。
【0066】
また、本実施形態のカテーテル400は、
図5に示すように、2本の操作線(第一操作線472aまたは第二操作線472b)の近位端474a、474bをそれぞれ個別に牽引した場合の遠位端部415の曲率(C1、C2)が互いに相違する。具体的には、
図5(b)、(c)に示すように、第一操作線472aを牽引した場合の遠位端部415の曲率C1に比べて、第二操作線472bを大きく牽引した場合の遠位端部415の曲率C2は、より大きくなる。
【0067】
以下、本実施形態のカテーテル400の代表的な寸法について説明する。メインルーメンの半径は200〜300μm程度、内層476の厚さは10〜30μm程度、外層の厚さは100〜150μm程度、補強層としての管状本体300の厚さは20〜100μmとすることが好ましい。そして、カテーテル400の軸心からサブルーメン471a、471bの中心までの長さは300〜400μm程度、サブルーメン471a、471bの内径は40〜100μmとし、第一、第二操作線472a、472bの太さを30〜60μmとすることが好ましい。そして、カテーテル400の最外径を350〜450μm程度とすることが好ましい。
【0068】
すなわち、本実施形態のカテーテル400の外径は直径1mm未満とするのが好ましく、腹腔動脈などの血管に挿通可能である。また、本実施形態のカテーテル400に関しては、第一、第二操作線472a、472bの牽引により進行方向が自在に操作されるため、たとえば分岐する血管内においても所望の方向にカテーテル400を進入させることが可能である。
【0069】
以上のようなカテーテル400の屈曲例について、
図5を用いて説明する。たとえば、
図5(b)に示すように、第一操作線472aをスライダ484aによって牽引すると、カテーテル400の遠位端部415(つまりシース470の遠位端側DE)に引張力が与えられる。これにより、当該牽引された第一操作線472aの方向に遠位端部415が、たとえば、曲率C1で屈曲する。
【0070】
同様に、
図5(c)に示すように、第二操作線472bをスライダ484bによって牽引すると、カテーテル400の遠位端側DEは当該方向に曲率C2で屈曲する。このとき、上記第一操作線472aを牽引するよりも多くスライダ484bを牽引することにより、カテーテル400の遠位端部415に引張力が与えられる。これにより、当該牽引された第二操作線472bの方向に遠位端部415が、たとえば、曲率C2で屈曲する。
【0071】
このように、第一操作線472aまたは第二操作線472bの何れかを個別に牽引する場合、牽引する距離に応じて、遠位端部
415の曲率を変化させることができる。なお、第一、第二操作線472a、472bを個別に牽引するだけではカテーテル400の遠位端部415を所望の姿勢に屈曲させることができない場合には、第一および第二操作線472a、472bを同時に牽引することにより、遠位端部415の所望の姿勢を実現することも可能となる。
【0072】
このように遠位端部415を様々な形状に屈曲させるとともに、ハンドル部482に対する回転操作によってシース470の回転位相を調節する。この操作により、遠位端部415の屈曲量および屈曲方向を調節し、様々な角度に分岐する体腔に対してカテーテル400を自在に進入させることができる。したがって、たとえば分岐のある血管や末梢血管に対しても、本実施形態のカテーテル400を所望の方向に進入させることができる。なお、本実施形態のカテーテル400において、遠位端部415の屈曲角度は90度を超えることが好ましい。これにより、血管の分岐角度がUターンするような鋭角の場合であっても、かかる分岐枝に対してカテーテル400を進入させることができる。
【0073】
次に
図6(a)〜(d)の模式図を用いて、本実施形態にかかるカテーテル400の使用状態の一例を説明する。
図6(a)は、血管(イ)内に挿通されたカテーテル400の遠位端側DEが、血管(イ)の分岐部(ロ)に到達した状態を示している。遠位端側DE側には、耐圧性等に優れる第三の管状体360が配置されているので、血流等に押し戻されることなく、円滑に目的位置まで到達させることができる。ここで、分岐部(ロ)より血管枝(ニ)に向かって、図中の矢印の示す方向xにカテーテル400を進行させることを試みる。
【0074】
そこで、
図6(a)に示すように、カテーテル400における操作線の1本(第一操作線472a)の近位端474aを牽引して、遠位端部415を方向xに曲率C1で屈曲させたとする。しかし、第一操作線472aを牽引した場合に、遠位端部415の曲率C1が血管枝(ニ)の分岐角度に適合していない場合、
図6(b)に示すように、血管(イ)のコーナー部(ハ)で遠位端部415が二つ折りに折れ曲がってしまう。かかる状態でカテーテル400を主管(ホ)に対して押し込むと、カテーテル400は主管(ホ)の延長線上にあたる方向yに進行してしまう場合がある。
【0075】
ここで、血管枝(ニ)は、主管(ホ)に対して、曲率C1よりも小さな曲率で分岐しているとする。そこで、本実施形態のカテーテル400では、第一操作線472aの牽引量を調整することにより、
図6(c)に示すように、血管枝(ニ)の分岐角度に適合した曲率で遠位端部415を屈曲させることができる。これにより、
図6(c)に示すように、遠位端部415を血管枝(ニ)に対して十分に深く挿通することにより、カテーテル400の全体をこれに追随して進入させることができる。または、ハンドル部482に対する回転操作によってシース470の回転位相を調節し、第二操作線472bを牽引して曲率C2にて遠位端部415を屈曲させてもよい。この場合も、柔軟性と屈曲性に優れた第二の管状体320により、自在な曲率での屈曲が可能となる。
【0076】
なお、第一、第二操作線472a、472bのいずれか一方を個別に牽引しても所望の曲率が達成されない場合には、他方の第二、第一操作線472b、472aを牽引して曲率を調整してもよい。より具体的には、第一操作線472aおよび第二操作線472bがシース470の径方向に180度対向配置されている本実施形態のカテーテル400の場合、2本の第一、第二操作線472a、472bをともに牽引することにより、一方の第一操作線472a、または、第二操作線472bのみを牽引した場合よりも、遠位端部415の曲率が減少する。これにより、操作者は、操作部480のスライダ484a、484bの牽引量を調整することにより、遠位端部415を所望の曲率で屈曲させることができる。
【0077】
また、
図6(d)に示すように、カテーテル400を、主管(ホ)から、血管枝(ニ)よりも大きな曲率で分岐する血管枝(へ)に進入させる場合は、第二操作線472bを当該分岐方向にあわせた状態で近位端474bを牽引するとよい。または、ハンドル部482に対する回転操作によってシース470の回転位相を調節して、第一操作線472aを牽引してもよい。この場合も、剛性に優れた第一の管状体310により、回転時のトルク伝達性に優れ、円滑で迅速な回転が可能となる。また、第一操作線472aと第二操作線472bの双方を牽引して屈曲の微調整を行ってもよい。いずれの場合でも、カテーテル400の遠位端部415は好適な曲率で屈曲し、血管枝(へ)に対して容易に進入させることができる。
【0078】
これにより、カテーテル400の全体の進行方向を、主管(ホ)の延在方向yから、血管枝(へ)の延在方向zに変えることができる。そして、カテーテル400の遠位端部415を血管枝(ヘ)に十分な深さで進入させることにより、遠位端部415に追随させてカテーテル400の全体を血管枝(へ)に進入させることができる。
【0079】
また、管状本体300の第二の管状体320の存在により、遠位端部415を急角度で屈曲させても、メインルーメンが潰れる、カテーテル400が二つ折りに折れ曲がる、などの問題が発生するのを防止することができる。そのため、メインルーメンの内腔の平滑性を保持することができ、造影剤、薬液、内視鏡などを患部に円滑に供給することができる。
【0080】
以上が本実施形態にかかるカテーテル400の動作例である。ここで、管状本体300は、第二の管状体320の存在により、一般的には柔軟性が向上して屈曲性が優れるが、管材料に比べてトルク伝達性が低い。しかし、本実施形態では、前述したように、管状本体300の手元側を密巻きの第一の管状体310としているため、剛性に優れている。そのため、柔軟な屈曲性は損なうことなく、トルク伝達性にも優れたカテーテル400を実現することができ、さまざまな分岐角度で分岐する血管枝に対して本実施形態のカテーテル400を自在に進入させることができ、血管選択性に優れるカテーテル400を提供することができる。
【0081】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0082】
たとえば、管状本体300の管状体の種類を変えるだけでなく、シース470の遠位端部415、近位端部416、その中間部の内層476または外層を、それぞれ異なる樹脂材料で形成し、それぞれの部位の剛性や屈曲性を変化させてもよい。また、管状本体300の第二の管状体320の巻回ピッチを変えることにより、それぞれの部位の剛性や屈曲性を変化させてもよい。また、さらに、機械的特性の異なる第四、第五の管状体、またはそれ以上の管状体を連結してもよい。また適宜の配置間隙を介して、機械的特性の同じ管状体を配置してもよい。本実施形態では、遠位端部415の第二の管状体320の線材料321の巻回ピッチを広くすることにより、屈曲性を向上させている。また、近位端部416は隣接する巻きが互いに密着するよう線材料311を巻回した第一の管状体310を配置しているため、剛性が向上する。たとえば、さらに、第一の管状体310と第二の管状体320との中間部に、第二の管状体320の巻回ピッチよりも狭い巻回ピッチで線材料を巻回した第四の管状体を連結することにより、遠位端部415の柔軟性と近位端部416の剛性との調和を図ることができる。このような構成とした上で、管状本体300を形成することにより、各部位の屈曲性や剛性を損なうことなく、遠位端部415の屈曲を自在かつ円滑に行うことができる。また、メインルーメンの平滑性も保つことができる。
【0083】
また、本実施形態では、シース470に一対(二個)のサブルーメン471a、471bを180度間隔に対向して設けて、それぞれに第一、第二操作線472a、472bを挿通しているが、本発明がこれに限定されるものではない。シース470に三個以上のサブルーメンを等角度間隔に設けてもよい。たとえば、三個のサブルーメンを等角度間隔(120度間隔)に設けた場合、3本の操作線を操作することにより、トルク伝達性に優れ、しかも目的方向に微細な角度で遠位端部を屈曲させることが可能となる。また、三個以上のサブルーメンを周方向にランダムに設けてもよい。このように、ランダムに設けるとは、上記のように正確な等角度間隔に設けるのではなく、周方向に全体的に分散していれば、多少の角度のズレを生じてもよいという意味である。いずれの場合でも、任意の一本または二本以上の操作線を選択して牽引することにより、当該操作線の方向、または当該二本以上の操作線の中間方向にシース470を屈曲させることができる。
【0084】
以上のように、本実施形態のカテーテル400では、遠位端部415の先端は耐圧性や剛性に優れ、血管への侵入性が良好で、遠位端部415の先端以外は柔軟で屈曲性に優れ、近位端部416は剛性が高く、しかも近位端部416から遠位端部415へのトルク伝達性に優れるなど、遠位端部415と近位端部416とで異なる機械的特性を持たせることが容易かつ自在に実現可能となる。その結果、たとえば、さまざまな角度に分岐する血管等に対して自在に進入させることのできる、血管選択性に優れるカテーテルを提供することができる。
【0085】
また、上記実施形態は、カテーテルについて実施しているが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、ガイドワイヤ、内視鏡、超音波器具など、体腔内に挿入して使用する、他の長尺な医療機器にも適用することができる。第一、第二、第四実施形態についても同様である。
【0086】
<第四実施形態>
次に、
図7を用いて、第四実施形態にかかる医療機器に用いられる管状本体500およびその製造工程について説明する。上記各実施形態では、第一または第二の管状体を面で切断して端面同士または端面と線材料の端部とを溶融接合していた。しかし、本実施形態では、線材料の端部を研磨して端面を形成し、当該端面を互いに溶融接合し、巻き同士が連続して一本の長尺な管状本体を得ている。
【0087】
以下、詳細に説明する。
図7(a)に示すように、本実施形態では、1本の線材料511、521を用いて、一条で密巻きされたコイル状の第一の管状体510および第二の管状体520を用いている。そして、
図7(a)に示すように、溶融工程により、網がけ部分を溶融して溶融部512、522を形成している。しかし、現段階の状態では、互いの線材料511、521の端部の位置が不一致で、巻き同士の連結が困難である。したがって、平坦化工程を行って、
図7(b)に示すように、互いの線材料511、521の端部の位置が一致し、第一、第二管状体510、520を連続的に連結し易い長さに切断して、研磨することにより、平坦な端面512a、522aを形成している。なお、本実施形態では、線材料511、521の端面512a、522aだけでなく、隣接する巻きの当接部分512b、522bも溶融接合する。そのため、接合し易いように、巻きの当接予定部分512b、522bの表面も研磨して平坦な端面(512b、522b)としてもよい。
【0088】
次に、
図7(b)に示すように、第一、第二の管状体510、520を、加熱炉550等の外部から加熱することが可能な装置内に挿入し、図示はしていないが、第一、第二の管状体510、520の端面512
a、522
aおよび巻きの当接予定部分(端面)512b、522bを互いに当接し(当接工程)、互いの当接部分の外周に、リング状の蝋材540を配置している。そして加熱炉550により外部から加熱することにより、互いの端面512
a、522
aおよび巻きの端面512b、522bを溶融接合する(加熱溶接工程)。さらに、蝋材540により蝋付けされ(蝋付け工程)、連結部530(530a、530b)が形成されて管状本体500が形成される(連結工程)。蝋付けにより、第一の管状体510と第二の管状体520との連結部530(530a、530b)に隙間があった場合に、その隙間が埋められるとともに、連結部530の連結強度が向上する。このように互いの端面512
a、522
aおよび巻きの端面512b、522bを溶接して連結部530とするだけでなく、蝋材540による蝋付けを行うことで、連結部530の連結強度をより向上させることができる。また、第一、第二の管状体510、520ともに密巻きのコイル状であるため、剛性が高く、機械的特性が同じ長尺な管状本体500を得ることができる。さらに連結強度も高いため、優れたトルク伝達性を必要とする製品に当該長尺な管状本体500を用いることができる。
【0089】
なお、本実施形態では、同一の機械的特性を有する第一、第二の管状体510、520を連結しているが、本発明がこれに限定されるものではない。一方を密巻きではなく、間隙を介して巻回したコイル状等の管状体を用いてもよい。これにより、機械的特性が異なる管状本体500を得ることができる。
【0090】
上記第一、第二、第四実施形態において、溶融部12、212、512は、第一の管状体10、210、510のそれぞれ周囲にわたる環状をなす環状溶融部である。ここで、溶融部が環状であるとは、連続的な線状または離散的な複数の点状の領域が第一の管状体の実質的に全周にわたって設けられていることをいう。また、第二の管状体20、220、520の溶融部22、222、522もまた、それぞれ当該第二の管状体の周囲にわたる環状をなす環状溶融部である。
そして、第一、第二、第四実施形態においては、これらの環状溶融部(溶融部12、212、512)の軸心方向と、第一の管状体10、210、510の軸方向とは互いに平行である。同じく、溶融部22、222、522の軸心方向と、第二の管状体20、220、520の軸方向とは平行である。
【0091】
このように、環状溶融部の軸心方向と第一および第二の管状体の軸方向とを略一致させることで、管状本体100
、200、500における連結部30、230、530の軸寸法(幅寸法)を短くすることができるため、管状本体100
、200、500の曲げ剛性が損な
われにくい。
【0092】
<第五実施形態>
本発明においては、上記第一、第二、第四実施形態に代えて、溶融部を斜めの環状に形成してもよい。
【0093】
図8(a)から(d)は、本実施形態の管状本体600の製造工程を示す模式図である。同図(a)は、第一の管状体610および第二の管状体620の一部切欠側面図である。切欠線を二点差線で図示してある。同図(b)は、環状溶融部613、623が形成された第一の管状体610および第二の管状体620の側面図である。同図(c)は、環状溶融部613、623を切断および研磨した状態を示す第一の管状体610および第二の管状体620の側面図である。同図(d)は、環状溶融部613、623の端面同士を接合して形成された管状本体600の側面図である。
【0094】
第一の管状体610は、複数本の金属製の線材料611を螺旋巻回して成形した、いわゆる多条コイルである。同様に、第二の管状体620は、複数本の金属製の線材料612を螺旋巻回してなる多条コイルである。第一の管状体610の条数(線材料611の本数)は、第二の管状体620の条数よりも少ない。線材料611、612は、横断面形状が実質的に円形の、いわゆる丸線である。第一の管状体610の線材料611の直径は、第二の管状体620の線材料612の直径よりも小さい。
【0095】
図8(a)に示すように、第一の管状体610における線材料611の螺旋の進行方向と直交する法線方向N1と第一の管状体610の軸方向AX1との為す角θ1を、線材料611の巻き角とする。同様に、第二の管状体620における線材料612の螺旋の進行方向と直交する法線方向N2と第二の管状体620の軸方向AX2との為す角θ2を、線材料612の巻き角とする。巻き角θ1、θ2が大きいほど、線材料611、612の進行方向は軸方向AX1、AX2に対して寝ることとなる。角θ1、θ2の最小値はゼロ度よりも大きく、最大値は90度未満である。
【0096】
本実施形態において、第二の管状体620の巻き角θ2は、第一の管状体610の巻き角θ1よりも大きい。
【0097】
以上より、線材料611、612のヤング率が同じで、かつ第一の管状体610と第二の管状体620との巻回ピッチが同等の場合、第二の管状体620の曲げ剛性は第一の管状体610の曲げ剛性よりも大きくなる。
【0098】
図8(a)に示すように、第一の管状体610の内径ID1と、第二の管状体620の内径ID2とは等しい、すなわち実質的に同径である。本実施形態においては、第二の管状体620の線材料612は第一の管状体610の線材料611よりも太線であることから、第二の管状体620の外径OD2は第一の管状体610の外径OD1よりも大きい。
【0099】
図8(b)は、第一の管状体610と第二の管状体620の各周囲に環状溶融部613、623を個別に形成した状態を示している。環状溶融部613、623は、レーザ照射などにより、線材料611、612における隣接する螺旋ループ同士を溶融一体化することによって形成することができる。このレーザの照射スポットを第一の管状体610、第二の管状体620の軸方向AX1、AX2に対して斜めに傾斜するリング状に移動させながらレーザ照射することで本実施形態の環状溶融部613、623を形成することができる。
図8(b)に示す円形の模様はレーザの照射痕615を示している。
【0100】
以下、環状溶融部613の法線方向N3と第一の管状体610の軸方向AX1との為す角θ3を、第一の管状体610のリング傾斜角と呼称する。同様に、環状溶融部623の法線方向N4と第二の管状体620の軸方向AX2との為す角θ4を、第二の管状体620のリング傾斜角と呼称する。
【0101】
第一の管状体610のリング傾斜角θ3と、第二の管状体620のリング傾斜角θ4は、ゼロ度よりも大きく、かつ90度未満である。すなわち、環状溶融部613の軸心方向(法線方向N3)と第一の管状体610の軸方向AX1とは、90度未満の交差角度で互いに交差している。そして、環状溶融部623の軸心方向(法線方向N4)と第二の管状体620の軸方向AX2とは、同様に90度未満の交差角度で互いに交差している。
【0102】
より具体的には、この交差角度(リング傾斜角θ3、θ4)は、15度以上45度以下が好ましい。この交差角度を45度以下とすることで、連結部630(
図8(d)を参照)を境界として第一の管状体610と第二の管状体620との曲げ剛性が連続化することとなる。また、この交差角度を15以上とすることで、連結部630の軸寸法(幅寸法)が過度になることがない。
【0103】
ここで、本実施形態のように環状溶融部613の軸心方向(法線方向N1)と第一の管状体610の軸方向AX1とが非平行で、環状溶融部613の周方向が軸方向AX1成分を含むことで、多条の第一の管状体610の巻きピッチがレーザ溶接工程において変動しにくいというメリットがある。これは、隣接する巻き同士が僅かに(たとえば線材料611の線径未満の間隔で)離間したピッチ巻きの第一の管状体610において顕著である。第二の管状体620に関しても同様である。これにより、本実施形態により作成される管状本体600において大局的なうねりが生じることが抑えられる。
【0104】
図8(c)は、環状溶融部613、623を任意で幅寸法の中間部で切断し、これを研磨して端面614、624を平坦化した状態を示している。
【0105】
図8(d)は、環状溶融部613、623を互いに当接させた状態でその端面614、624を互いに接合して第一の管状体610と第二の管状体620とを連結してなる管状本体600を示している。かかる接合もまた、レーザ照射により行うことができる。かかるレーザ照射により環状溶融部613、623は溶融して、新たな環状溶融部633が形成されている。環状溶融部633は、環状溶融部613、623と重畳して形成されている。連結部630は、環状溶融部613、623、633により構成されている。
【0106】
本実施形態により作成される管状本体600において、第一の管状体610の溶融部(環状溶融部613)の内径と、第二の管状体620の端部(環状溶融部623)の内径とは等しい。ここで、内径とは、第一の管状体610の軸方向AX1および第二の管状体620の軸方向AX2に目視した場合の環状溶融部613、623の内周面の径寸法である。
【0107】
第一の管状体610の内径ID1と第二の管状体620の内径ID2とが同径であることにより、本実施形態の管状本体600によれば、第一の管状体610の溶融部(環状溶融部613)の内周面と、第二の管状体620の端部(環状溶融部623)の内周面とが連続して形成される。これにより、たとえばカテーテルのメインルーメンの周囲に管状本体600を配置して使用する場合に、管状本体600の内周面とメインルーメンとの距離寸法を、第一の管状体610と第二の管状体620とに均等化することができる。なお、カテーテルの先端側の曲げ剛性を基端側の曲げ剛性よりも抑制する場合は、第一の管状体610を先端側に配置し、第二の管状体620を基端側に配置する。
【0108】
本実施形態の管状本体600を更に詳細に説明する。
図9(a)は第一の管状体610および第二の管状体620の端面614、624近傍の拡大側面図である。同図(b)は管状本体600の連結部630近傍の拡大側面図である。環状溶融部613、623に包含される線材料611、612の断面の一部または全部は溶融して環状溶融部613、623と渾然としている。かかる線材料611、612の断面を破線で示す。
【0109】
軸方向AX1、AX2に対して斜めの環状に形成された環状溶融部613、623の端面614、624を研磨加工することにより、環状溶融部613、623の周囲の一部は竹槍の先端のように尖鋭となる。具体的には、環状溶融部613、623のうち、軸方向AX1、AX2にもっとも突出した先端が尖鋭となる。かかる尖鋭な先端部分に不測な欠損が生じないよう、本実施形態の環状溶融部613におけるこの尖鋭な端部には鈍頭部617が形成されている。ここで、鈍頭部617の曲率半径は、第一の管状体610の線材料611よりも小さいとよい。同様に、環状溶融部623の尖鋭な端部には鈍頭部627が形成されている。鈍頭部627の曲率半径は、第二の管状体620の線材料612よりも小さい。鈍頭部617、627が過大とならないよう、その曲率半径を線材料611、612よりも小さくすることにより、第一の管状体610、第二の管状体620の強度を維持することができる。鈍頭部617、627は、環状溶融部613、623のR加工により形成することができる。
【0110】
図9(a)に示すように、第一の管状体610の溶融部(環状溶融部613)の内周面または第二の管状体620の端部(環状溶融部623)の内周面の少なくとも一方(本実施形態では両方)に、テーパーカット部616、626が形成されている。テーパーカット部616、626は、
図9(b)に示すように、管状本体600において互いに連結された端部(端面614、624)に向かって拡径する円錐台形状をなしている。テーパーカット部616、626を設けることにより、環状溶融部613、623の肉厚が端面614、624に向かって連続的に薄くなる。これにより、本実施形態の管状本体600は、端部(端面614、624)を境界とする第一の管状体610と第二の管状体620との曲げ剛性が連続化するように構成されている。
【0111】
テーパーカット部616、626は、端面614、624において最大径となる。本実施形態では、端面614、624におけるテーパーカット部616、626の直径は互いに等しい。これにより、端面614、624を互いに良好に当接させた状態で、環状溶融部613、623同士を溶融一体化させて連結部630を形成することができる。
【0112】
本発明は種々の組み合わせが可能である。たとえば、第五実施形態の管状本体600において、環状溶融部613、623または連結部630の外周を研磨して、これらの部位を薄肉化してもよい。これにより、連結部630を境界として管状本体600の先端側と基端側の曲げ剛性を極力連続化することができる。
以下、参考形態の例を示す。
1.体腔内に挿入して用いられ、可撓性を有する長尺の管状本体を有する医療機器であって、
前記管状本体が、
線材料からなる第一の管状体と、
前記第一の管状体の前記線材料の端部が一体に溶融された溶融部と、
線材料からなり、当該線材料の端部が、前記第一の管状体の前記溶融部に連結された第二の管状体と、を有する医療機器。
2.前記第一の管状体は、1本または複数本の前記線材料が一条または多条に巻回されてコイル状に形成され、
前記第一の管状体の前記線材料の前記端部が溶融されることで隣接する前記線材料が互いに接合されて前記溶融部に端面が形成され、当該端面に、前記第二の管状体の前記線材料の前記端部が連結されている1.に記載の医療機器。
3.前記第二の管状体は、1本または複数本の前記線材料が一条または多条に巻回されてコイル状に形成され、
前記第二の管状体の前記線材料の前記端部が溶融されることで隣接する前記線材料が互いに接合されて、前記第二の管状体に溶融部が形成されるとともに、当該溶融部に端面が形成され、
前記第一の管状体の前記端面と、前記第二の管状体の前記端面とが、互いに連結されている2.に記載の医療機器。
4.前記第一の管状体は、1本または複数本の前記線材料が一条または多条に巻回されてコイル状に形成され、
前記第二の管状体は、複数本の前記線材料が網目状に編組されて形成され、
前記第一の管状体の前記端面に、前記第二の管状体の網目状の前記線材料の前記端部が連結された1.に記載の医療機器。
5.前記線材料の前記端部が溶融されることで接合され形成された前記端面は、前記溶融部を切断し研磨することにより平坦化された2.から4.のいずれか一つに記載の医療機器。
6.前記第一の管状体および前記第二の管状体は、互いの前記線材料の前記端部の形状または前記線材料の直径が異なり、
互いの前記線材料の前記端部が溶融されて前記溶融部の前記端面がそれぞれ形成され、当該端面が互いに連結された3.から5.のいずれか一つに記載の医療機器。
7.前記第一の管状体の前記溶融部の内径と前記第二の管状体の前記端部の内径とが等しい6.に記載の医療機器。
8.前記第一の管状体の前記溶融部の内周面と前記第二の管状体の前記端部の内周面とが連続している7.に記載の医療機器。
9.前記第一の管状体の前記溶融部の前記内周面、または前記第二の管状体の前記端部の前記内周面の少なくとも一方に、互いに連結された前記端部に向かって拡径するテーパーカット部が形成されていることにより、前記端部を境界とする前記第一の管状体と前記第二の管状体との曲げ剛性が連続化するように構成されている1.から8.のいずれか一つに記載の医療機器。
10.前記溶融部が、前記第一の管状体の周囲にわたる環状をなす環状溶融部であり、
前記環状溶融部の軸心方向と前記第一の管状体の軸方向とが90度未満の交差角度で互いに交差している1.から9.のいずれか一つに記載の医療機器。
11.前記交差角度が45度以下である10.に記載の医療機器。
12.前記環状溶融部の尖鋭な端部に、前記第一の管状体の前記線材料よりも小さな曲率半径の鈍頭部が形成されている10.または11.に記載の医療用機器。
13.前記溶融部が、前記第一の管状体の周囲にわたる環状をなす環状溶融部であり、
前記環状溶融部の軸心方向と前記第一の管状体の軸方向とが互いに平行である1.から9.のいずれか一つに記載の医療用機器。
14.前記線材料の前記端部が溶融されることで接合され形成された前記端面は、外周が研磨されることにより外径方向の厚みが薄肉化されている2.から13.のいずれか一つに記載の医療機器。
15.前記第一の管状体および前記第二の管状体は、複数本の前記線材料が網目状に編組されて形成され、
前記第一の管状体および前記第二の管状体の前記編組の前記線材料の前記端部の交点が互いに連結された1.に記載の医療機器。
16.前記第一の管状体および前記第二の管状体は、溶接により連結されたものである1.から15.のいずれか一つに記載の医療機器。
17.前記第一の管状体と、前記第二の管状体とは、前記線材料の条数が異なる1.から16.のいずれか一つに記載の医療機器。
18.前記第一の管状体および前記第二の管状体の連結部の外周が、さらに蝋付けされた1.から17.のいずれか一つに記載の医療機器。
19.前記第一の管状体の前記線材料と前記第二の管状体の前記線材料とが、同種の金属製である1.から18.のいずれか一つに記載の医療機器。
20.前記第一の管状体の前記第二の管状体との連結部とは反対側の他端、または、前記第二の管状体の前記第一の管状体との連結部とは反対側の他端、もしくは、前記第一の管状体と前記第二の管状体との間に、さらに第三の管状体が連結された1.から19.のいずれか一つに記載の医療機器。
21.メインルーメンと、
内部に前記メインルーメンを有する内層と、
前記内層の外周表面に、前記管状本体からなる補強層と、
少なくとも前記補強層を含む前記内層を被覆する外層と、を有するカテーテルである1.から20.のいずれか一つに記載の医療機器。
22.線材料からなる第一の管状体の前記線材料の端部を溶融することを含んで溶融部を形成する溶融工程と、
前記第一の管状体の前記溶融部と、線材料からなる第二の管状体の前記線材料の端部とを、互いに当接する当接工程と、
前記第一の管状体の前記溶融部と前記第二の管状体の前記線材料の前記端部との当接部分を連結することで、長手方向に延在する管状本体を得る連結工程と、を含む医療機器の製造方法。
23.前記溶融工程は、
前記溶融部を所定位置で切断する切断工程と、
切断された前記溶融部を研磨して平坦な端面を形成する平坦化工程と、をさらに含む22.に記載の医療機器の製造方法。
24.前記溶融工程または前記連結工程は、
前記溶融工程後の前記溶融部の外周または前記連結工程後の連結部の外周を研磨して、前記第一の管状体または前記管状本体の外径方向の厚みを薄肉化する薄肉化工程を、さらに含む22.または23.に記載の医療機器の製造方法。
25.前記連結工程では、前記当接工程で当接した前記第一の管状体の前記溶融部および前記第二の管状体の前記端部の互いの前記当接部分を、周方向にレーザにより帯状に溶融して、当該当接部分を連結する、レーザ溶接工程を含む22.から24.のいずれか一つに記載の医療機器の製造方法。
26.前記連結工程では、前記当接工程で当接した前記第一の管状体の前記溶融部および前記第二の管状体の前記端部の前記当接部分の外周全体を、抵抗溶接または加熱により帯状に溶融して、当該当接部分を連結する、加熱溶接工程を含む22.から24.のいずれか一つに記載の医療機器の製造方法。
27.前記連結工程で連結した前記第一の管状体および前記第二の管状体の連結部の外周を、蝋付けする蝋付け工程を、さらに含む22.から26.のいずれか一つに記載の医療機器の製造方法。