特許第5929448号(P5929448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929448
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】スピューの切断装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/68 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   B29D30/68
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-92256(P2012-92256)
(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公開番号】特開2013-220555(P2013-220555A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】関根 克理
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−089468(JP,A)
【文献】 実開平01−067023(JP,U)
【文献】 特開昭61−117096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 − 30/72
B26D 3/00
B29C 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの表面から突出するスピューの切断装置であって、
スピューをタイヤの表面に倒す倒し部と、スピューを切断する切断部と、前記倒し部および前記切断部を支持するフレームとを備え、
前記倒し部は、移動しつつスピューに接触しスピューをタイヤの表面に倒す前部と、前記前部により倒されたスピューの状態を維持する後部とを有する接触部材と、前記接触部材を移動させる駆動部とを備え、
前記切断部は、前記接触部材の前記後部に対向した箇所に配置され前記後部により倒された状態に維持されたスピューの根元を切断可能なカッターを有している、
ことを特徴とするタイヤのスピュー切断装置。
【請求項2】
前記フレームは、把持可能なグリップを備えている、
ことを特徴とする請求項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項3】
前記倒し部は、外周部が円筒面で形成され前記駆動部により回転駆動される回転部材を備え、
前記接触部材は、前記回転部材の外周部で構成されている、
ことを特徴とする請求項または記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項4】
前記倒し部は、外周部が円筒面で形成され前記駆動部により回転駆動される第1の回転部材と、外周部が前記円筒面よりも小さい外径の円筒面で形成され前記駆動部により回転駆動される第2の回転部材とを備え、
前記接触部材は、前記第1の回転部材の外周部と前記第2の回転部材の外周部とで構成され、
前記接触部材の前部は、前記第1の回転部材の外周部で構成され、
前記接触部材の後部は、前記第2の回転部材の外周部で構成されている、
ことを特徴とする請求項または記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項5】
前記倒し部は、複数のプーリと、それらプーリに掛装されたベルトと、前記プーリを回転駆動する駆動部とを備え、
前記ベルトは、該ベルトが移動しつつタイヤの表面に近づく部分と、タイヤの表面に沿って移動する部分とを有し、
前記接触部材は、前記ベルトにより構成され、
前記接触部材の前部は、前記ベルトが移動しつつタイヤの表面に近づく部分で構成され、
前記接触部材の後部は、タイヤの表面に沿って移動する前記ベルトの部分で構成されている、
ことを特徴とする請求項または記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項6】
前記接触部材の後部には、前記ベルトの浮き上がりを阻止する押さえローラが配置され、
前記カッターは、前記ベルトを挟んで前記押さえローラに対向した箇所に配置されている、
ことを特徴とする請求項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項7】
前記倒し部は、前記駆動部により回転駆動される円板状の回転部材を備え、
前記接触部材は、前記回転部材の外周面部と、前記回転部材の軸方向の端面を含む端面部とで構成されている、
ことを特徴とする請求項または記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項8】
タイヤを昇降可能に支持し回転駆動するタイヤ回転装置に取り付けられ、タイヤの表面から突出するスピューの切断装置であって、
スピューをタイヤの表面に倒す倒し部と、スピューを切断する切断部と、前記倒し部および前記切断部を支持し前記タイヤ回転装置に取り付けられるフレームとを備え、
前記倒し部は、前記タイヤ回転装置により回転されるタイヤの表面の移動方向と同じ方向に移動しつつスピューに接触しスピューをタイヤの表面の移動方向に向けて倒す前部と、前記前部により倒されたスピューの状態を維持する後部とを有する接触部材と、前記接触部材をタイヤの表面の移動速度よりも速い速度で移動させる駆動部とを有し、
前記切断部は、前記接触部材の前記後部に対向し、かつ、タイヤの表面に近接した箇所に配置され、タイヤの表面が移動されることで前記後部により倒された状態に維持されたスピューとタイヤの表面との間に位置してスピューの根元を切断するカッターを有している、
ことを特徴とするタイヤのスピュー切断装置。
【請求項9】
前記タイヤ回転装置に支持されたタイヤの幅方向に、前記フレームを移動可能に支持するガイドが設けられ、
前記フレームは前記ガイドを介して前記タイヤ回転装置に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項10】
前記接触部材と前記カッターは、前記タイヤ回転装置に支持されたタイヤの外周面に沿ってタイヤの幅方向の全長にわたって延在している、
ことを特徴とする請求項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項11】
前記タイヤの表面に接触し、タイヤの表面と前記カッターとの間に間隙を保持するガイド手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項10に何れか1項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項12】
前記接触部材は弾性を有し、
前記ガイド手段がタイヤの表面に接触した状態で、前記接触部材とタイヤの表面との間隔は、スピューの外径の1.0倍から1.5倍の寸法に設定される、
ことを特徴とする請求項11記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項13】
前記接触部材の表面には、スピューに対して摩擦係数を高める凹凸構造が形成されている、
ことを特徴とする請求項12に何れか1項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【請求項14】
前記カッターを加熱する加熱手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項13に何れか1項記載のタイヤのスピュー切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの加硫工程において生じるスピューの切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程において金型と生タイヤとの間の空気やガスを排出するため、トレッド部やサイドウォール部に対応する金型の箇所に、金型の内部と外部とを連通させたベントホールが多数設けられる。
このベントホールには加硫工程において空気やガスが排出されたのちゴムが押し出され、加硫工程後に金型からタイヤを取り出すと、各ベントホールに押し出されたゴムからなるスピューがタイヤの表面に多数突設されることになる。そして、多数のスピューが突設されたままではタイヤの外観性が損なわれる。
【0003】
従来、このようなスピューを切断する装置として、タイヤの外周面に近接させてV溝を有する金型を配置し、タイヤを回転させることでスピューをV溝に挟み、スピューをV溝で切り取る装置(特許文献1)や、一対の回転体によりスピューを挟持し、引っ張って破断する装置(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−50696号
【特許文献2】特許第4194198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の何れのスピュー切断装置でも、スピューをその根元から切断することができず、図10(B)に示すように、タイヤの表面にスピューの根元が残存してしまう。
タイヤの表面にスピューの根元が残存すると、外観性が損なわれるためタイヤの商品価値を高める上で不利となる。
また、タイヤの表面にスピューの根元が残存すると、車両の走行時、スピューの根元がタイヤの表面からもぎ取られ、タイヤの表面に欠損部を生じさせ、やはりタイヤの商品価値を高める上で不利が生じる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、スピューを根元から確実にしかも効率良く切断できるようにしたスピューの切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明は、タイヤの表面から突出するスピューの切断装置であって、スピューをタイヤの表面に倒す倒し部と、スピューを切断する切断部と、前記倒し部および前記切断部を支持するフレームとを備え、前記倒し部は、移動しつつスピューに接触しスピューをタイヤの表面に倒す前部と、前記前部により倒されたスピューの状態を維持する後部とを有する接触部材と、前記接触部材を移動させる駆動部とを備え、前記切断部は、前記接触部材の前記後部に対向した箇所に配置され前記後部により倒された状態に維持されたスピューの根元を切断可能なカッターを有していることを特徴とする。
また、本発明は、タイヤを昇降可能に支持し回転駆動するタイヤ回転装置に取り付けられ、タイヤの表面から突出するスピューの切断装置であって、スピューをタイヤの表面に倒す倒し部と、スピューを切断する切断部と、前記倒し部および前記切断部を支持し前記タイヤ回転装置に取り付けられるフレームとを備え、前記倒し部は、前記タイヤ回転装置により回転されるタイヤの表面の移動方向と同じ方向に移動しつつスピューに接触しスピューをタイヤの表面の移動方向に向けて倒す前部と、前記前部により倒されたスピューの状態を維持する後部とを有する接触部材と、前記接触部材をタイヤの表面の移動速度よりも速い速度で移動させる駆動部とを有し、前記切断部は、前記接触部材の前記後部に対向し、かつ、タイヤの表面に近接した箇所に配置され、タイヤの表面が移動されることで前記後部により倒された状態に維持されたスピューとタイヤの表面との間に位置してスピューの根元を切断するカッターを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスピュー切断装置によれば、接触部材の前部でカッター方向へスピューを倒し、接触部材の後部でスピューを倒した状態に維持しつつ、接触部材の後部の直下でスピューの根元をカッターで切断する。
したがって、スピューが逃げることがなく、スピューを根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態のスピュー切断装置の説明図で、(A)はスピュー切断装置の斜視図、(B)は図1(A)のB矢視から見たカッターおよび取り付け部材の図である。
図2】第1の実施の形態のスピュー切断装置によりスピューを切断する説明図であり、(A)は正面図、(B)は図2(A)のB矢視図である。
図3】第2の実施の形態のスピュー切断装置によりスピューを切断する説明図である。
図4】第3の実施の形態のスピュー切断装置によりスピューを切断する説明図である。
図5】第4の実施の形態のスピュー切断装置によりスピューを切断する説明図である。
図6】第5の実施の形態のスピュー切断装置によりスピューを切断する説明図である。
図7】タイヤ回転装置に設置された第6の実施の形態のスピュー切断装置の説明図で、(A)はスピュー切断装置の正面図、(B)は図8(A)のB矢視図である。
図8】タイヤ回転装置に設置された第7の実施の形態のスピュー切断装置の説明図で、(A)はスピュー切断装置の正面図、(B)は図8(A)のB矢視図である。
図9】タイヤの表面とカッターとの間に間隙を保持するガイド手段およびカッターを加熱する加熱手段の説明図であり、(A)はそれら手段を備えたカッターの斜視図、(B)はそれら手段を備えたカッターの側面図である。
図10】(A)は実施の形態のスピュー切断装置によりスピューを切断した後のスピューの根元の説明図、(B)は従来の方法によりスピューを切断した後のスピューの根元の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のタイヤのスピュー切断方法をスピュー切断装置と共に図面にしたがって説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1図2を参照して第1の実施の形態から説明する。
スピュー切断装置10Aは、倒し部12Aと、切断部14と、フレーム16Aとを備えている。
【0010】
倒し部12Aは、スピュー2をタイヤ4の表面402に倒すものであり、本実施の形態では、タイヤ4の表面402でカッター1402方向に倒すものである。
倒し部12Aは、移動しつつスピュー2に接触する接触部材20Aと、この接触部材20Aを移動させる駆動部22とを備えている。
接触部材20Aは、スピュー2に接触してスピュー2をタイヤ4の表面402でカッター1402方向に倒す前部2002と、前部2002により倒されたスピュー2の状態を維持する後部2004とを有している。
本実施の形態では、倒し部12Aとして、外周部が円筒面で形成され駆動部22により回転駆動される回転部材24が用いられ、接触部材20Aは、回転部材24の外周部で構成されている。
回転部材24は、ゴムなどのような弾性材を用いて構成してもよく、あるいは、合成樹脂製や金属製であってもよい。
【0011】
スピュー2をタイヤ4の表面402に倒す前部2002は、回転部材24がタイヤ4の表面402に近づけられた状態で、回転部材24の軸方向から見て、回転部材24の回転方向の上流側でタイヤ4の表面402に対向する回転部材24の部分(回転部材24の外周部の1/4の部分)で構成されている。
また、倒されたスピュー2の状態を維持する後部2004は、回転部材24がタイヤ4の表面402に近づけられた状態で、回転部材24の軸方向から見て、タイヤ4の表面402に最も近い回転部材24の外周部の部分で構成されている。
回転部材24の支軸2402は、フレーム16Aで支持され、駆動部22はフレーム16Aに設けられたモータ2202および歯車機構2204で構成され、モータ2202の出力軸と支軸2402とはフレーム16Aの内部で歯車機構2204を介して連結されている。
なお、回転部材24の外径は、スピュー2の倒しを円滑に行なう上で、タイヤ4の表面402から突出するスピュー2の突出高さの1.2倍以上の寸法で形成しておくことが好ましい。したがって、フレーム16Aに対して回転部材24を交換可能にしておき、外径の異なる複数種類の回転部材24を用意し、タイヤ4に対応させて回転部材24を交換できるようにしておくことが好ましい。
【0012】
切断部14はスピュー2を切断するカッター1402を有している。
カッター1402は、スピュー2を切断できるようにスピュー2の外径よりも大きい寸法の長さを有し、カッター1402は、取り付け部材26を介してフレーム16Aに支持されている。
取り付け部材26は、フレーム16Aに取着される一対の基部2602と、各基部2602から互いに平行して起立する中間部2604と、各中間部2604の先端間を接続する先部2606とを有している。
カッター1402は、その長手方向の両端が、先部2606寄りの中間部2604の箇所にねじを介して取着されている。
カッター1402は、接触部材20Aの後部2004に対向した箇所に配置され、刃部1402Aが接触部材20Aの移動方向の上流側に向けられ、後部2004により倒された状態に維持されたスピュー2の根元を切断可能である。
【0013】
フレーム16Aは、把持可能なグリップ1602を備えている。
グリップ1602の長手方向の一方の端部に、グリップ1602の延在方向と直交する方向に向けて取り付け面1604が設けられ、回転部材24の支軸2402はこの取り付け面1604から突設され、また、取り付け部材26の基部は、この取り付け面1604に取着されている。
また、グリップ1602には、モータ2202への通電、遮断を行なうためのスイッチ2206が設けられている。
【0014】
次に、スピュー切断装置10Aの使用方法について説明する。
スイッチ2206を入れて回転部材24を回転させ、グリップ1602を把持し、図2に示すように、カッター1402をタイヤ4の表面402に近づけ、回転部材24をタイヤ4の表面402に対向させる。
そして、カッター1402をタイヤ4の表面402に近接させた箇所に位置させつつ、回転部材24とカッター1402とをタイヤ4の表面402に沿わせて、回転部材24の後部2004における回転方向と逆方向であるX矢印方向にスピュー切断装置10Aを移動させていく。
すると、まず、スピュー2の先部が回転部材24の前部2002に接触しスピュー切断装置10Aの移動に伴い、回転部材24はスピュー2を回転部材24の回転方向に沿わせてスピュー2をカッター1402方向に倒していく。
【0015】
さらなるスピュー切断装置10Aの移動に伴い、回転部材24の後部2004でスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と倒されたスピュー2との間に位置する。
さらなるスピュー切断装置10Aの移動に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元はカッター1402で切断される。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0016】
本実施の形態によれば、回転部材24によりスピュー2をカッター1402方向に倒し、スピュー2を倒した状態に維持しつつ、後部2004の直下でスピュー2の根元をカッター1402で切断する。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に回転部材24の後部2004が位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
切断された後のスピュー2の根元の高さを計測したところ、従来の方法では図10(B)に示すように根元が残っており根元の高さHが3.0mmであったのに対して、本実施の形態では図10(A)に示すように、根元がほとんど残らず残存した根元の高さHは0.3mmであった。
したがって、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0017】
(第2の実施の形態)
次に、図3を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材には同一の符号または類似の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Bは、第1の実施の形態と同様に、倒し部12Bと、切断部14と、第1の実施の形態と同様なフレーム16A(不図示)とを備え、第2の実施の形態では、倒し部12Bの構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0018】
倒し部12Bは、第1の回転部材28と、2つの第2の回転部材30とを備えている。
第1の回転部材28は、外周部が円筒面で形成されている。
2つの第2の回転部材30の外径は等しく、それらの外周部は第1の回転部材28よりも小さい寸法の円筒面を有している。
第1の回転部材28の支軸2802および第2の回転部材30の支軸3002は、フレーム16Aの取り付け面1604側で支持され、第1の実施の形態と同様に、歯車機構2204を介してモータ2202の出力軸に連結され、それらの周速度が同一の値で、あるいは、第2の回転部材30の周速度が第1の回転部材28の周速度よりも大きい値で同一の方向に回転駆動される。
【0019】
したがって、第2の実施の形態では、接触部材20Aは、第1の回転部材28の外周部と第2の回転部材30の外周部とで構成されている。
また、接触部材20Aの前部2002は、第1の回転部材28の外周部で構成されている。
また、接触部材20Aの後部2004は、2つの第2の回転部材30の外周部で構成されている。
カッター1402は、第1の回転部材28寄りに位置する第2の回転部材30に対向した箇所に配置され、2つの第2の回転部材30により倒された状態に維持されたスピュー2の根元を切断可能である。
【0020】
次に、スピュー切断装置10Bの使用方法について説明する。
スイッチ2206を入れて第1の回転部材28、2つの第2の回転部材30を回転させ、グリップ1602を把持し、カッター1402をタイヤ4の表面402に近づけ、第1の回転部材28および2つの第2の回転部材30をタイヤ4の表面402に対向させる。
そして、カッター1402をタイヤ4の表面402に近接させた箇所に位置させつつ、スピュー切断装置10Bをタイヤ4の表面402に沿わせて、タイヤ4の表面402に対向する第1の回転部材28の部分および2つの第2の回転部材30の部分における回転方向と逆方向であるX矢印方向にスピュー切断装置10Bを移動させていく。
すると、まず、スピュー2の先部が第1の回転部材28に接触し、スピュー切断装置10Bの移動に伴い、第1の回転部材28はスピュー2を第1の回転部材28の回転方向に沿わせてスピュー2を倒していく。
【0021】
さらなるスピュー切断装置10Bの移動に伴い、2つの第2の回転部材30でスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と倒されたスピュー2との間に位置する。
さらなるスピュー切断装置10Bの移動に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元は、第1の回転部材28寄りに位置する第2の回転部材30の直下においてカッター1402で切断される。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0022】
本実施の形態によれば、第1の回転部材28によりスピュー2をカッター1402方向に倒し、2つの第2の回転部材30によりスピュー2を倒した状態に維持し、第1の回転部材28寄りに位置する第2の回転部材30の直下でスピュー2の根元をカッター1402で切断する。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に第2の回転部材30が位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
したがって、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0023】
なお、第2の実施の形態では、2つの回転部材24を用いたが、第1の回転部材28と、この第1の回転部材28寄りに位置する1つの第2の回転部材30との合計2つの回転部材24でもスピュー2を根元から簡単に確実に切断することができるが、第2の実施の形態のように第2の回転部材30を2つ用いると、スピュー2の切断をより円滑に行なう上で有利となる。
【0024】
(第3の実施の形態)
次に、図4を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Cは、第1の実施の形態と同様に、倒し部12Cと、切断部14と、第1の実施の形態と同様なフレーム16A(不図示)とを備え、第3の実施の形態では、倒し部12Cの構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0025】
倒し部12Cは、2つのプーリ32と、それらプーリ32に掛装されたベルト34と、一方のプーリ32を回転駆動する第1の実施の形態と同様な駆動部22(不図示)と、押さえローラ36とを備えている。
タイヤ4の表面402に沿ってスピュー切断装置10Cを移動させていくX矢印方向の前方に位置するプーリ32の支軸3202と、押さえローラ36の支軸3602は、第1の実施の形態と同様な取り付け面1604(不図示)側で回転可能に支持されている。
また、タイヤ4の表面402に沿ってスピュー切断装置10Cを移動させていくX矢印方向に対して反対の方向に位置するプーリ32の支軸3202は、取り付け面1604側で支持され、第1の実施の形態と同様に歯車機構2204を介してモータ2202の出力軸に連結されている。
したがって、スピュー切断装置10Cを移動させていくX矢印方向の前方に位置するプーリ32は従動プーリ32Bとして構成され、X矢印方向に対して反対の方向に位置するプーリ32は駆動プーリ32Aとして構成されている。
2つのプーリ32の外径は、スピュー2の突出高さよりも大きな寸法で形成され、押さえローラ36の外径は、プーリ32よりも小さい寸法で形成されている。
【0026】
ベルト34は、駆動プーリ32Aが回転駆動されることで移動する。
ベルト34は、移動しつつタイヤ4の表面402に近づく部分と、タイヤ4の表面402に沿って移動する部分とを有している。
したがって、本実施の形態では、接触部材20Aがベルト34により構成されている。
また、接触部材20Aの前部2002は、従動プーリ32Bに架け渡されたベルト34の部分で移動しつつタイヤ4の表面402に近づく部分で構成されている。
また、接触部材20Aの後部2004は、従動プーリ32Bと駆動プーリ32Aとにわたって架け渡されたベルト34の部分でタイヤ4の表面402に沿って移動するベルト34の部分で構成されている。
押さえローラ36は接触部材20Aの後部2004に配置され、押さえローラ36は、接触部材20Aの後部2004においてスピュー2によるベルト34の浮き上がりを阻止する。
カッター1402は、ベルト34を挟んで押さえローラ36に対向した箇所に配置されている。
【0027】
次に、スピュー切断装置10Cの使用方法について説明する。
スイッチ2206を入れて駆動プーリ32Aを回転駆動し、ベルト34を移動させ、グリップ1602を把持し、カッター1402をタイヤ4の表面402に近づけ、押さえローラ36が配置された側のベルト34の部分をタイヤ4の表面402に対向させる。
そして、カッター1402をタイヤ4の表面402に近接させた箇所に位置させつつ、スピュー切断装置10Cをタイヤ4の表面402に沿わせ、タイヤ4の表面402に対向するベルト34の部分の移動方向と逆方向であるX矢印方向にスピュー切断装置10Cを移動させていく。
すると、まず、スピュー2の先部が、接触部材20Aの前部2002に接触し、スピュー切断装置10Cの移動に伴い、ベルト34はスピュー2をベルト34の移動方向に沿わせて倒していく。
【0028】
さらなるスピュー切断装置10Cの移動に伴い、接触部材20Aの後部2004でスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と、倒されたスピュー2との間に位置する。
さらなるスピュー切断装置10Cの移動に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元は、押さえローラ36の直下においてカッター1402で切断される。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0029】
本実施の形態によれば、前部2002でスピュー2をカッター1402方向に倒し、後部2004でスピュー2を倒した状態に維持し、押さえローラ36の直下でスピュー2の根元をカッター1402で切断する。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に押さえローラ36が位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
したがって、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0030】
なお、切断時のスピュー2の逃げをベルト34により阻止できるため、押さえローラ36は省略可能であるが、実施の形態のように押さえローラ36を用いると、スピュー2の逃げをより効果的に阻止でき、カッター1402によりスピュー2の根元をより円滑に切断する上で有利となる。
【0031】
(第4の実施の形態)
次に、図5を参照して第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Dは、第3の実施の形態の変形例であり、倒し部12Dと、切断部14と、第1の実施の形態と同様なフレーム16A(不図示)とを備え、第4の実施の形態では、倒し部12Dの構成が第3の実施の形態と異なっている。
【0032】
倒し部12Dは、3つのプーリ32と、それらプーリ32に掛装されたベルト34と、1つのプーリ32を回転駆動する駆動部22と、押さえローラ36とを備えている。
タイヤ4の表面402に沿ってスピュー切断装置10Dを移動させていくX矢印方向の前方に位置するプーリ32の支軸3202と、その後方に位置するプーリ32の支軸3202と、押さえローラ36の支軸3602は、第1の実施の形態と同様な取り付け面1604側で回転可能に支持されている。
また、タイヤ4の表面402に沿ってスピュー切断装置10Dを移動させていくX矢印方向に対して最後部に位置するプーリ32の支軸3202は、取り付け面1604側で支持され、第1の実施の形態と同様な歯車機構2204を介してモータ2202の出力軸に連結されている。
したがって、スピュー切断装置10Dを移動させていくX矢印方向の前方に位置する2つのプーリ32は従動プーリ32Bとして構成され、スピュー切断装置10Dを移動させていくX矢印方向に対して最後部に位置するプーリ32は駆動プーリ32Aとして構成されている。
本実施の形態では、3つのプーリ32の外径は、スピュー2の突出高さよりも小さい同一の寸法で形成されている。
X矢印方向の最も前方に位置する従動プーリ32Bの回転中心は、駆動プーリ32Aと押さえローラ36とが並べられた方向に対して、スピュー2の突出高さよりも大きい寸法の間隔をおいた上方の離れた箇所に配置されている。
【0033】
ベルト34は、駆動プーリ32Aが回転駆動されることで移動する。
ベルト34は、移動しつつタイヤ4の表面402に近づく部分と、タイヤ4の表面402に沿って移動する部分とを有している。
したがって、本実施の形態では、接触部材20Aがベルト34により構成されている。
また、接触部材20Aの前部2002は、移動しつつタイヤ4の表面402に近づくベルト34の部分であり、前方の2つの従動プーリ32Bに架け渡されたベルト34の部分で構成されている。
また、接触部材20Aの後部2004は、タイヤ4の表面402に沿って移動するベルト34の部分であり、駆動プーリ32Aとその前方に位置する従動プーリ32Bとに架け渡されたベルト34の部分で構成されている。
押さえローラ36は接触部材20Aの後部2004に配置され、押さえローラ36は、接触部材20Aの後部2004においてスピュー2によるベルト34の浮き上がりを阻止する。
カッター1402は、ベルト34を挟んで押さえローラ36に対向した箇所に配置されている。
【0034】
次に、スピュー切断装置10Dの使用方法について説明する。
スイッチ2206を入れて駆動プーリ32Aを回転駆動し、ベルト34を移動させ、グリップ1602を把持し、カッター1402をタイヤ4の表面402に近づけ、押さえローラ36が配置された側のベルト34の部分をタイヤ4の表面402に対向させる。
そして、カッター1402をタイヤ4の表面402に近接させた箇所に位置させつつ、スピュー切断装置10Dをタイヤ4の表面402に沿わせ、タイヤ4の表面402に対向するベルト34の部分の移動方向と逆方向であるX矢印方向にスピュー切断装置10Dを移動させていく。
すると、まず、スピュー2の先部が、接触部材20Aの前部2002に接触し、スピュー切断装置10Dの移動に伴い、ベルト34はスピュー2をベルト34の移動方向に沿わせてカッター1402方向に倒していく。
【0035】
さらなるスピュー切断装置10Dの移動に伴い、接触部材20Aの後部2004でスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と、倒されたスピュー2との間に位置する。
さらなるスピュー切断装置10Dの移動に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元は、押さえローラ36の直下においてカッター1402で切断される。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0036】
本実施の形態によれば、前部2002でスピュー2をカッター1402方向に倒し、後部2004でスピュー2を倒した状態に維持し、押さえローラ36の直下でスピュー2の根元をカッター1402で切断する。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に押さえローラ36が位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
したがって、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0037】
なお、切断時のスピュー2の逃げをベルト34により阻止できるため、押さえローラ36は省略可能であるが、実施の形態のように押さえローラ36を用いると、スピュー2の逃げをより効果的に阻止でき、カッター1402によりスピュー2の根元をより円滑に切断する上で有利となる。
【0038】
(第5の実施の形態)
次に、図6を参照して第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Eは、第1の実施の形態と同様に、倒し部12Eと、切断部14と、第1の実施の形態と同様なフレーム16A(不図示)とを備え、第5の実施の形態では、倒し部12Eの構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0039】
倒し部12Eは、円板上の回転部材38を備えている。
回転部材38の支軸3802は、フレーム16Aの取り付け面1604側で支持され、第1の実施の形態と同様な歯車機構2204を介してモータ2202の出力軸に連結され、モータ2202により回転駆動される。
【0040】
第5の実施の形態では、接触部材20Aは、回転部材38の外周面部38Aおよび回転部材38の軸方向の端面を含む端面部38Bで構成されている。外周面部38Aは、端面部38Bに近づくにつれて小径となる傾斜面で形成されている。
また、移動しつつスピュー2に接触しスピュー2をタイヤ4の表面402に倒す接触部材20Aの前部2002は、回転部材38の外周面部38Aにより構成されている。
また、前部2002により倒されたスピュー2の状態を維持する接触部材20Aの後部2004は、回転部材38の軸方向の端面を含む端面部38Bで構成されている。
カッター1402は、取り付け部材26を介して取り付け面1604で支持され、端面部38Bに対向した箇所で端面部38Bの直径方向に延在している。カッター1402の刃部1402Aは、端面部38Bの回転方向の上流側に向けられ、端面部38Bにより倒された状態に維持されたスピュー2の根元を切断可能である。
【0041】
次に、スピュー切断装置10Eの使用方法について説明する。
スイッチ2206を入れて回転部材38を回転させ、グリップ1602を把持し、カッター1402をタイヤ4の表面402に近づけ、回転部材38をタイヤ4の表面402に対向させる。
そして、カッター1402をタイヤ4の表面402に近接させた箇所に位置させつつ、スピュー切断装置10Eをタイヤ4の表面402に沿わせ、スピュー2に対してカッター1402が向かうX矢印方向にスピュー切断装置10Eを移動させていく。
すると、まず、スピュー2の先部が回転部材38の外周面部38Aに接触し、スピュー切断装置10Eの移動に伴い、回転部材38の外周面部38Aは端面部38Bの回転方向に沿わせてスピュー2をカッター1402方向に倒していく。
【0042】
さらなるスピュー切断装置10Eの移動に伴い、端面部38Bでスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と倒されたスピュー2との間に位置する。
さらなるスピュー切断装置10Eの移動に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元はカッター1402で切断される。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0043】
本実施の形態によれば、回転部材38の外周面部38Aによりスピュー2をカッター1402方向に倒し、回転部材38の端面部38Bによりスピュー2を倒した状態に維持し、カッター1402でスピュー2の根元をカッター1402で切断する。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に端面部38Bが位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
したがって、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0044】
(第6の実施の形態)
次に、図7を参照して第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Fは、第1の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Aを構成する回転部材24とカッター1402とを、それらの位置関係を保ちフレーム16Bを介してタイヤ回転装置50に設置したものである。
すなわち、第6の実施の形態では、スピュー切断装置10Fを移動させずに静止させておき、タイヤ回転装置50でタイヤ4を回転させることでスピュー2の根元を切断する。
タイヤ回転装置50は、タイヤ4を昇降可能にかつ回転可能に支持している。
第6の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Fは、第1の実施の形態と同様な倒し部12Aおよび切断部14と、第1の実施の形態と異なったフレーム16Bとを備えている。
【0045】
フレーム16Bは、タイヤ回転装置50で支持されたタイヤ4の幅方向に延在しタイヤ回転装置50に上下に傾動可能に支持されたガイドロッド52と、このガイドロッド52の長手方向に移動調節可能に結合されたブラケット54を備えている。ブラケット54は、回転部材24とカッター1402とをそれらの長手方向の両側から支持している。
倒し部12Aと切断部14の構成は、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、駆動部22を構成するモータ2202および歯車機構2204がブラケット54に取着されている。
この第6の実施の形態では、タイヤ回転装置50により回転されるタイヤ4の外周面の速度よりも速い周速度で回転部材24が回転される。
また、タイヤ4の外周面と平行にガイドロッド52を延在させ、スピュー切断装置10Fをガイドロッド52に沿って移動させると、倒し部12Aと切断部14がタイヤ幅方向におけるトレッド部の全域上を移動する。また、タイヤ4を昇降させ、ガイドロッド52を傾動した状態で、スピュー切断装置10Fをガイドロッド52に沿って移動させると、倒し部12Aと切断部14が両側のショルダー部上を移動する。
【0046】
次に、スピュー切断装置10Fの使用方法について説明する。
タイヤ4の外周面と平行にガイドロッド52を延在させ、タイヤ4を昇降してカッター1402をタイヤ4の外周面に近接させ、回転部材24をタイヤ4の表面402に対向させる。
次に、タイヤ回転装置50によりタイヤ4を、タイヤ4の外周面がカッター1402の刃部1402Aに向かう方向に低速で回転させ、このタイヤ4の周速度よりも速い周速度で回転部材24を、タイヤ4の回転方向とは逆向きに回転させる。
この場合、回転部材24の外周面の周速度を、タイヤ4の外周面の周速度よりも1.5倍以上とすることがスピュー2の倒しを円滑に行なう上で好ましい。
【0047】
タイヤ4の回転に伴い、図2(A)と同様に、スピュー2の先部が接触部材20Aの前部2002に接触し、前部2002はスピュー2をタイヤ4の回転方向に沿わせてカッター1402方向に倒していく。
さらなるタイヤ4の回転に伴い、接触部材20Aの後部2004でスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と、倒されたスピュー2との間に位置する。
さらなるタイヤ4の回転に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元は、後部2004の直下においてカッター1402で切断される。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に後部2004が位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0048】
スピュー切断装置10Fが設置された箇所において、タイヤ4の外周面の全周のスピュー2が切断されたならば、ガイドロッド52に沿ってスピュー切断装置10Fを移動させ、その箇所のタイヤ4の外周面の全周のスピュー2を同様に切断する。
また、タイヤ4を昇降させ、ガイドロッド52を傾動した状態で、スピュー切断装置10Cをガイドロッド52に沿って移動させ、タイヤ4を回転させて両側のショルダー部の全周のスピュー2を切断する。
このようにスピュー切断装置10Fをタイヤ4の幅方向に移動させつつ、タイヤ4のトレッド部およびショルダー部の表面の全域のスピュー2を全て切断する。
したがって、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0049】
なお、同様に、第2の実施の形態〜第5の実施の形態のスピュー切断装置10B〜10Eもタイヤ回転装置50に設置して使用可能である。
【0050】
(第7の実施の形態)
次に、図8を参照して第7の実施の形態について説明する。
第7の実施の形態のタイヤ4のスピュー切断装置10Gは、倒し部12Fと、切断部14とが、タイヤ4の幅方向に延在しており、第6の実施の形態で行なわれたタイヤ4の幅方向へのスピュー切断装置10Fの移動を不要にしたものである。
すなわち、倒し部12Fは、タイヤ4のトレッド部と両側のショルダー部の表面402に沿った鼓状に形成された回転部材60と、この回転部材60を回転駆動するモータ2202とを備えている。
したがって、第7の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、移動しつつスピュー2に接触する接触部材20Aが回転部材60の外周部で構成されている。また、図2に示すように、スピュー2をタイヤ4の表面402に倒す接触部材20Aの前部2002は、回転部材60の回転方向の上流側でタイヤ4の表面402に対向する回転部材60の外周部の部分で構成されている。
また、前部2002により倒されたスピュー2の状態を維持する接触部材20Aの後部2004は、回転部材60の軸方向から見て、タイヤ4の表面402に最も近い回転部材60の外周部の部分で構成されている。
【0051】
回転部材60の支軸2402は、その両側がフレーム16Cで支持され、駆動部22はフレーム16Cで支持されたモータ2202および歯車機構2204で構成され、モータ2202の出力軸と支軸2402とは歯車機構2204を介して連結されている。
また、切断部14のカッター1402は、タイヤ4の幅方向でトレッド部と両側のショルダー部の表面402に沿った弓状に形成されている。
カッター1402は、その長手方向の両側がフレーム16Cで支持され、フレーム16Cはタイヤ回転装置50のフレームに取り付けられている。
【0052】
次に、スピュー切断装置10Gの使用方法について説明する。
タイヤ回転装置50によりタイヤ4を、タイヤ4の外周面がカッター1402の刃部1402Aに向かう方向に低速で回転させ、このタイヤ4の周速度よりも速い周速度で回転部材60を、タイヤ4の回転方向とは逆向きに回転させる。
タイヤ4の回転に伴い、スピュー2の先部が接触部材20Aの前部2002に接触し、前部2002はスピュー2をタイヤ4の回転方向に沿わせてカッター1402方向に倒していく。
さらなるタイヤ4の回転に伴い、接触部材20Aの後部2004でスピュー2は倒された状態が維持され、その状態で、カッター1402はタイヤ4の表面402と、倒されたスピュー2との間に位置する。
【0053】
さらなるタイヤ4の回転に伴い、倒された状態に維持されたスピュー2の根元は、後部2004の直下でカッター1402で切断される。
すなわち、スピュー2の切断時に、スピュー2の根元の直上に後部2004が位置しているため、スピュー2が逃げることがなく、スピュー2を根元から簡単に確実に切断することが可能となる。
第7の実施の形態では、タイヤ4の幅方向の全長にわたりトレッド部と両側のショルダー部の表面402から突設された複数本のスピュー2の切断が同時になされる。
そして、カッター1402で切断されたスピュー2の根元は、図10(A)に示すように、タイヤ4の表面402から僅かに突出するに過ぎず、タイヤ4の表面402はほぼ連続した曲面状となる。
【0054】
第7の実施の形態では、回転部材60とカッター1402とがタイヤ4の幅方向の全長にわたって延在しているので、第6の実施の形態のようにスピュー切断装置10Gをタイヤ4の幅方向へ移動させることなく、タイヤ4の外周面の全域のスピュー2を全て短時間で切断することが可能となり、タイヤ4の外観性を高め、タイヤ4の商品価値を高める上で有利となる。
【0055】
なお、上記の第1〜第7の実施の形態において、タイヤ4の表面402に接触し、タイヤ4の表面402とカッター1402との間に間隙を保持するガイド手段を設けるようにしてもよい。
このようなガイド手段として、例えば、図9に示すように、カッター1402に回転可能なローラ40を複数配置する構造や、あるいは、タイヤ4の表面402に対して摩擦係数が小さい部材からなるガイド板を設ける構造が挙げられる。
このようなガイド手段を設けると、ローラ40がタイヤ4の表面402で回転することで、あるいは、ガイド板がタイヤ4の表面402を滑ることで、カッター1402とタイヤ4の表面402との間に、微小な間隙を保持する上で有利となり、カッター1402によるタイヤ4の損傷を防止する上で有利となる。
【0056】
また、カッター1402を加熱する加熱手段を設け、カッター1402の温度を高温に維持すると、スピュー2の根元を円滑に切断する上で有利となる。
この場合には、例えば、図9に示すように、カッター1402にヒータ42を付設すればよい。スピュー2の根元を円滑に切断する上で、カッター1402の温度を、60℃から120℃の間で維持することが好ましい。
【0057】
また、カッター1402によるスピュー2の切断時に、接触部材20Aの後部2004とタイヤ4の表面402との間隔は、スピュー2の外径の1.0倍から1.5倍の寸法に設定しておくと、スピュー2の根元を円滑に切断する上で有利となり、この場合には、接触部材20Aを、弾性を有する材料で形成することが好ましい。
【0058】
また、スピュー2に接触する接触部材20Aの表面に、スピュー2に対して摩擦係数を高める凹凸構造を形成すると、スピュー2の倒し、およびスピュー2を倒した状態の維持を円滑に行なえ、スピュー2の根元を円滑に切断する上で有利となる。
この場合の凹凸構造は、接触部材20Aの表面をローレット状としてもよく、あるいは接触部材20Aの表面に多数のV溝を形成したり、あるいは、接触部材20Aの表面に微細な多数の突起を突設してブラシ状とするなど、従来公知の様々な凹凸構造が採用可能である。
【符号の説明】
【0059】
2……スピュー、4……タイヤ、402……タイヤの表面、10A、10B、10C、10D、10E、10F,10G……スピュー切断装置、12A、12B、12C、12D、12E、12F……倒し部、14……切断部、1402……カッター、16A、16B、16C……フレーム、20A……接触部材、2002……前部、2004……後部、22……駆動部、24……回転部材、32……プーリ、34……ベルト、36……押さえローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10