特許第5929486号(P5929486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5929486印刷ジョブ分割装置、分散印刷システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929486
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】印刷ジョブ分割装置、分散印刷システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20160526BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   G06F3/12 340
   G06F3/12 303
   G06F3/12 317
   B41J29/38 Z
【請求項の数】39
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-107820(P2012-107820)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-235446(P2013-235446A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀太
【審査官】 塩澤 如正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−290004(JP,A)
【文献】 特開2008−310611(JP,A)
【文献】 特開2009−026207(JP,A)
【文献】 特開2003−080806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09 − G06F 3/12
B41J 5/00 − B41J 5/52
B41J 21/00 − B41J 21/18
B41J 29/00 − B41J 29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷装置により一つの印刷ジョブを分散処理させるために、当該印刷ジョブを分割する印刷ジョブ分割装置であり、
複数の印刷装置候補および目的地の位置に関する位置情報を記憶する記憶部と、
複数の印刷装置候補の中から分散処理させる複数の印刷装置を選択するための選択部と、
前記選択部によって選択された複数の前記印刷装置および前記目的地の位置情報に基づいて、最終的に前記目的地に向かうように前記複数の印刷装置を結ぶ経路と、前記複数の印刷装置に分散させる前記印刷ジョブの配分と、を決定する決定部と、
を有する印刷ジョブ分割装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に、前記経路を決定する請求項1に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項3】
前記記憶部は、ユーザーが使用する端末の位置に関する位置情報を記憶しており、
前記選択部は、
前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較し、
当該端末の位置と前記目的地の位置が異なる場合、当該端末の位置を起点として前記目的地側に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とし、
特定した前記端末の位置と前記目的地の位置が一致する場合、当該端末が存在する領域に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とする請求項1または請求項2に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項4】
前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、
前記選択部は、複数の前記端末候補のうち前記印刷ジョブを生成する端末を特定し、特定した当該端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する請求項3に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項5】
前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、
前記選択部は、複数の前記端末候補の中から一台の端末の指定を受け付け、受け付けた前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する請求項3に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項6】
前記決定部は、ユーザーが経路に従って当該経路上の印刷装置から印刷物を回収し回収順に重ねれば印刷物のページが順に並ぶように、前記印刷ジョブを配分する請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項7】
前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、
前記決定部は、前記移動速度情報および前記印刷装置間の距離に基づいて、決定した前記経路において最初に位置する印刷装置以降の印刷装置においてはユーザーが到着した時点で印刷が完了しており、決定した前記経路において前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に処理量が大きくなるように、前記印刷ジョブを配分する請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項8】
前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、
前記決定部は、前記移動速度情報、前記処理速度情報および前記印刷装置の位置情報に基づいて、ユーザーが前記目的地に到達するまでの時間が最短となるように、前記経路および前記印刷ジョブの配分を決定する請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項9】
前記経路を表示する表示部をさらに有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項10】
前記経路上の前記印刷装置による分散処理の完了時間に基づいて、印刷物の回収指示を通知する通知部をさらに有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項11】
前記目的地は、前記印刷ジョブを生成したユーザーの端末に設定される請求項1〜10のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項12】
前記記憶部は、複数の目的地候補の位置に関する位置情報を記憶しており、
数の前記目的地候補の中から、目的地の指定を受け付ける受付部、をさらに有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項13】
前記選択部は、前記分散処理させる複数の印刷装置として、印刷させるのに適した印刷装置を選択することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の印刷ジョブ分割装置。
【請求項14】
印刷可能な複数の印刷装置と、複数の印刷装置により一つの印刷ジョブを分散処理させるために、当該印刷ジョブを分割する印刷ジョブ分割装置とを有する分散印刷システムであって、
前記印刷ジョブ分割装置は、
複数の印刷装置候補および目的地の位置に関する位置情報を記憶する記憶部と、
複数の印刷装置候補の中から分散処理させる複数の印刷装置を選択するための選択部と、
前記選択部によって選択された複数の前記印刷装置および前記目的地の位置情報に基づいて、最終的に前記目的地に向かうように前記複数の印刷装置を結ぶ経路と、前記複数の印刷装置に分散させる前記印刷ジョブの配分と、を決定する決定部と、
を有し、
前記選択部において選択された複数の前記印刷装置は、前記印刷ジョブの配分に基づき、印刷物を形成する分散印刷システム。
【請求項15】
前記決定部は、前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に、前記経路を決定する請求項14に記載の分散印刷システム。
【請求項16】
前記記憶部は、ユーザーが使用する端末の位置に関する位置情報を記憶しており、
前記選択部は、
前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較し、
当該端末の位置と前記目的地の位置が異なる場合、当該端末の位置を起点として前記目的地側に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とし、
特定した前記端末の位置と前記目的地の位置が一致する場合、当該端末が存在する領域に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とする請求項14または請求項15に記載の分散印刷システム。
【請求項17】
前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、
前記選択部は、複数の前記端末候補のうち前記印刷ジョブを生成する端末を特定し、特定した当該端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する請求項16に記載の分散印刷システム。
【請求項18】
前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、
前記選択部は、複数の前記端末候補の中から一台の端末の指定を受け付け、受け付けた前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する請求項16に記載の分散印刷システム。
【請求項19】
前記決定部は、ユーザーが経路に従って当該経路上の印刷装置から印刷物を回収し回収順に重ねれば印刷物のページが順に並ぶように、前記印刷ジョブを配分する請求項1418のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項20】
前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、
前記決定部は、前記移動速度情報および前記印刷装置間の距離に基づいて、決定した前記経路において最初に位置する印刷装置以降の印刷装置においてはユーザーが到着した時点で印刷が完了しており、決定した前記経路において前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に処理量が大きくなるように、前記印刷ジョブを配分する請求項1419のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項21】
前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、
前記決定部は、前記移動速度情報、前記処理速度情報および前記印刷装置の位置情報に基づいて、ユーザーが前記目的地に到達するまでの時間が最短となるように、前記経路および前記印刷ジョブの配分を決定する請求項1419のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項22】
前記経路を表示する表示部をさらに有する請求項1421のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項23】
前記経路上の前記印刷装置による分散処理の完了時間に基づいて、印刷物の回収指示を通知する通知部をさらに有する請求項1422のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項24】
前記目的地は、前記印刷ジョブを生成したユーザーの端末に設定される請求項1423のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項25】
前記記憶部は、複数の目的地候補の位置に関する位置情報を記憶しており、
数の前記目的地候補の中から、目的地の指定を受け付ける受付部、をさらに有する請求項1424のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項26】
前記選択部は、前記分散処理させる複数の印刷装置として、印刷させるのに適した印刷装置を選択することを特徴とする請求項14〜25のいずれか一項に記載の分散印刷システム。
【請求項27】
複数の印刷装置により一つの印刷ジョブを分散処理させるために当該印刷ジョブを分割する印刷ジョブ分割装置に、
複数の印刷装置候補および目的地の位置に関する位置情報を記憶する記憶ステップと、
前記複数の印刷装置候補の中から分散処理させる複数の印刷装置を選択する選択ステップと、
前記選択された複数の前記印刷装置および前記目的地の位置に関する情報に基づいて、最終的に前記目的地に向かうように前記複数の印刷装置を結ぶ経路と、前記複数の印刷装置に分散させる前記印刷ジョブの配分とを決定する決定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項28】
前記決定ステップでは、前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に前記経路を決定する請求項27に記載のプログラム。
【請求項29】
前記記憶ステップでは、ユーザーが使用する端末の位置に関する位置情報を記憶し、
前記選択ステップでは、
前記端末の位置に関する情報と前記目的地の位置に関する情報とを比較し、
当該端末の位置と前記目的地の位置が異なる場合、当該端末の位置を起点として前記目的地側に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とし、
特定した前記端末の位置と前記目的地の位置が一致する場合、当該端末が存在する領域に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とする請求項27または請求項28に記載のプログラム。
【請求項30】
前記記憶ステップでは、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置に関する情報を記憶し、
前記選択ステップでは、
複数の前記端末候補のうち前記印刷ジョブを生成する端末を特定し、特定した当該端末の位置に関する情報と前記目的地の位置に関する情報とを比較する請求項27〜29のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項31】
前記記憶ステップでは、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置に関する情報を記憶し、
前記選択ステップでは、
複数の前記端末候補の中から一台の端末の指定を受け付け、受け付けた前記端末の位置に関する情報と前記目的地の位置に関する情報とを比較する請求項27〜29のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項32】
前記決定ステップでは、ユーザーが経路に従って当該経路上の印刷装置から印刷物を回収し回収順に重ねれば印刷物のページが順に並ぶように、前記印刷ジョブの配分を決定する請求項27〜31のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項33】
前記記憶ステップでは、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報をさらに記憶し、
前記決定ステップでは、前記移動速度情報および前記印刷装置間の距離に基づいて、決定した前記経路において最初に位置する印刷装置以降の印刷装置においてはユーザーが到着した時点で印刷が完了しており、決定した前記経路において前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に処理量が大きくなるように、前記印刷ジョブの配分を決定する請求項27〜32のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項34】
前記記憶ステップでは、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報をさらに記憶し、
前記決定ステップでは、前記移動速度情報、前記処理速度情報および前記印刷装置の位置に関する情報に基づいて、ユーザーが前記目的地に到達するまでの時間が最短となるように、前記経路および前記印刷ジョブの配分を決定する請求項27〜32のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項35】
前記印刷ジョブ分割装置に、
前記経路を表示する表示ステップ、をさらに実行させる請求項27〜34のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項36】
前記印刷ジョブ分割装置に、
前記経路上の前記印刷装置による分散処理の完了時間に基づいて、印刷物の回収指示を通知する通知ステップ、をさらに実行させる請求項27〜35のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項37】
前記目的地は、前記印刷ジョブを生成したユーザーの端末に設定される請求項27〜36のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項38】
前記記憶ステップでは、複数の目的地候補の位置に関する位置情報を記憶し、
前記印刷ジョブ分割装置に、
複数の前記目的地候補の中から目的地の指定を受け付ける受付ステップ、をさらに実行させる請求項27〜37のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項39】
前記選択ステップでは、前記分散処理させる複数の印刷装置として、印刷させるのに適した印刷装置を選択する請求項27〜38のいずれか一項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ジョブ分割装置および分散印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量のページ数を有する文書を印刷する際に、一つの印刷ジョブを複数のサブ印刷ジョブに分割して複数の印刷装置に分配する分散印刷の技術が知られている。分散印刷では、複数の印刷装置によりサブ印刷ジョブに基づく印刷処理を実行し、できた複数の印刷物を合わせることで、文書が完成する。
【0003】
分散印刷において、印刷ジョブを分配する方法としては、たとえば、複数の印刷装置に均等に分配する方法や、各印刷装置の印刷速度に応じて印刷にかかる時間が最も短くなるように分配する方法などがある。
【0004】
さらに近年では、印刷にかかる時間のみならず、ユーザーが印刷物を回収する時間も含めて考慮し印刷ジョブを分配する技術も知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、各印刷装置の印刷速度と、印刷物を回収する際のユーザーの移動速度を考慮して、各印刷装置に分配する印刷ジョブの配分やユーザーが各印刷装置から印刷物を回収する回収経路を決定する。回収経路においては、ユーザー端末から近い印刷装置から遠い印刷装置の順に、ユーザーが印刷物を回収するように、回収の順番が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−026207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術においては、ユーザーは、回収経路に従って、ユーザー端末を出発地として近い印刷装置から遠い印刷装置の順に印刷物を回収する。したがって、印刷物の回収が終わると、ユーザーはユーザー端末から離れていることになる。仮に回収した印刷物をユーザー端末がある自席で使用したいとしても、印刷物の回収が完了した時点で、ユーザーは目的地から遠く離れてしまう可能性がある。この場合、印刷物の回収が完了してからユーザーが実際に印刷物を使用できるようになるまでの時間が長くなってしまうという問題がある。特許文献1記載の発明では、印刷物の回収が完了した後に、印刷物を使用する場所(目的地)を全く考慮していないため、上記問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、分散印刷において印刷物を使用する目的地を考慮して、複数の印刷装置を結ぶ回収経路および各印刷装置に対するジョブ配分を決定するジョブ分割装置分散印刷システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)複数の印刷装置により一つの印刷ジョブを分散処理させるために、当該印刷ジョブを分割する印刷ジョブ分割装置であり、複数の印刷装置候補および目的地の位置に関する位置情報を記憶する記憶部と、複数の印刷装置候補の中から分散処理させる複数の印刷装置を選択するための選択部と、前記選択部によって選択された複数の前記印刷装置および前記目的地の位置情報に基づいて、最終的に前記目的地に向かうように前記複数の印刷装置を結ぶ経路と、前記複数の印刷装置に分散させる前記印刷ジョブの配分と、を決定する決定部と、を有する印刷ジョブ分割装置。
【0011】
(2)前記決定部は、前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に、前記経路を決定する上記(1)に記載の印刷ジョブ分割装置。
【0012】
(3)前記記憶部は、ユーザーが使用する端末の位置に関する位置情報を記憶しており、前記選択部は、前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較し、当該端末の位置と前記目的地の位置が異なる場合、当該端末の位置を起点として前記目的地側に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とし、特定した前記端末の位置と前記目的地の位置が一致する場合、当該端末が存在する領域に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とする上記(1)または(2)に記載の印刷ジョブ分割装置。
【0013】
(4)前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、前記選択部は、複数の前記端末候補のうち前記印刷ジョブを生成する端末を特定し、特定した当該端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する上記(3)に記載の印刷ジョブ分割装置。
【0014】
(5)前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、前記選択部は、複数の前記端末候補の中から一台の端末の指定を受け付け、受け付けた前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する上記(3)に記載の印刷ジョブ分割装置。
【0015】
(6)前記決定部は、ユーザーが経路に従って当該経路上の印刷装置から印刷物を回収し回収順に重ねれば印刷物のページが順に並ぶように、前記印刷ジョブを配分する上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0016】
(7)前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、前記決定部は、前記移動速度情報および前記印刷装置間の距離に基づいて、決定した前記経路において最初に位置する印刷装置以降の印刷装置においてはユーザーが到着した時点で印刷が完了しており、決定した前記経路において前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に処理量が大きくなるように、前記印刷ジョブを配分する上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0017】
(8)前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、前記決定部は、前記移動速度情報、前記処理速度情報および前記印刷装置の位置情報に基づいて、ユーザーが前記目的地に到達するまでの時間が最短となるように、前記経路および前記印刷ジョブの配分を決定する上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0018】
(9)前記経路を表示する表示部をさらに有する上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0019】
(10)前記経路上の前記印刷装置による分散処理の完了時間に基づいて、印刷物の回収指示を通知する通知部をさらに有する上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0020】
(11)前記目的地は、前記印刷ジョブを生成したユーザーの端末に設定される上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0021】
(12)前記記憶部は、複数の目的地候補の位置に関する位置情報を記憶しており、数の前記目的地候補の中から、目的地の指定を受け付ける受付部、をさらに有する上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
(13)前記選択部は、前記分散処理させる複数の印刷装置として、印刷させるのに適した印刷装置を選択することを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の印刷ジョブ分割装置。
【0022】
14)印刷可能な複数の印刷装置と、複数の印刷装置により一つの印刷ジョブを分散処理させるために、当該印刷ジョブを分割する印刷ジョブ分割装置とを有する分散印刷システムであって、前記印刷ジョブ分割装置は、複数の印刷装置候補および目的地の位置に関する位置情報を記憶する記憶部と、複数の印刷装置候補の中から分散処理させる複数の印刷装置を選択するための選択部と、前記選択部によって選択された複数の前記印刷装置および前記目的地の位置情報に基づいて、最終的に前記目的地に向かうように前記複数の印刷装置を結ぶ経路と、前記複数の印刷装置に分散させる前記印刷ジョブの配分と、を決定する決定部と、を有し、前記選択部において選択された複数の前記印刷装置は、前記印刷ジョブの配分に基づき、印刷物を形成する分散印刷システム。
【0023】
15)前記決定部は、前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に、前記経路を決定する上記(14)に記載の分散印刷システム。
【0024】
16)前記記憶部は、ユーザーが使用する端末の位置に関する位置情報を記憶しており、前記選択部は、前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較し、当該端末の位置と前記目的地の位置が異なる場合、当該端末の位置を起点として前記目的地側に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とし、特定した前記端末の位置と前記目的地の位置が一致する場合、当該端末が存在する領域に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とする上記(14)または(15)に記載の分散印刷システム。
【0025】
17)前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、前記選択部は、複数の前記端末候補のうち前記印刷ジョブを生成する端末を特定し、特定した当該端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する上記(16)に記載の分散印刷システム。
【0026】
18)前記記憶部は、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置情報を記憶しており、前記選択部は、複数の前記端末候補の中から一台の端末の指定を受け付け、受け付けた前記端末の位置情報と前記目的地の位置情報とを比較する上記(16)に記載の分散印刷システム。
【0027】
19)前記決定部は、ユーザーが経路に従って当該経路上の印刷装置から印刷物を回収し回収順に重ねれば印刷物のページが順に並ぶように、前記印刷ジョブを配分する上記(14)〜(18)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
【0028】
20)前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、前記決定部は、前記移動速度情報および前記印刷装置間の距離に基づいて、決定した前記経路において最初に位置する印刷装置以降の印刷装置においてはユーザーが到着した時点で印刷が完了しており、決定した前記経路において前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に処理量が大きくなるように、前記印刷ジョブを配分する上記(14)〜(19)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
【0029】
21)前記記憶部は、さらに、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報を記憶しており、前記決定部は、前記移動速度情報、前記処理速度情報および前記印刷装置の位置情報に基づいて、ユーザーが前記目的地に到達するまでの時間が最短となるように、前記経路および前記印刷ジョブの配分を決定する上記(14)〜(19)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
【0030】
22)前記経路を表示する表示部をさらに有する上記(14)〜(21)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
【0031】
23)前記経路上の前記印刷装置による分散処理の完了時間に基づいて、印刷物の回収指示を通知する通知部をさらに有する上記(14)〜(22)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
【0032】
24)前記目的地は、前記印刷ジョブを生成したユーザーの端末に設定される上記(14)〜(23)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
【0033】
25)前記記憶部は、複数の目的地候補の位置に関する位置情報を記憶しており、数の前記目的地候補の中から、目的地の指定を受け付ける受付部、をさらに有する上記(14)〜(24)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
(26)前記選択部は、前記分散処理させる複数の印刷装置として、印刷させるのに適した印刷装置を選択することを特徴とする上記(14)〜(25)のいずれか一つに記載の分散印刷システム。
(27)複数の印刷装置により一つの印刷ジョブを分散処理させるために当該印刷ジョブを分割する印刷ジョブ分割装置に、複数の印刷装置候補および目的地の位置に関する位置情報を記憶する記憶ステップと、前記複数の印刷装置候補の中から分散処理させる複数の印刷装置を選択する選択ステップと、前記選択された複数の前記印刷装置および前記目的地の位置に関する情報に基づいて、最終的に前記目的地に向かうように前記複数の印刷装置を結ぶ経路と、前記複数の印刷装置に分散させる前記印刷ジョブの配分とを決定する決定ステップと、を実行させるためのプログラム。
(28)前記決定ステップでは、前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に前記経路を決定する上記(27)に記載のプログラム。
(29)前記記憶ステップでは、ユーザーが使用する端末の位置に関する位置情報を記憶し、前記選択ステップでは、前記端末の位置に関する情報と前記目的地の位置に関する情報とを比較し、当該端末の位置と前記目的地の位置が異なる場合、当該端末の位置を起点として前記目的地側に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とし、特定した前記端末の位置と前記目的地の位置が一致する場合、当該端末が存在する領域に位置する前記印刷装置を抽出し、抽出した前記印刷装置を前記印刷装置候補とする上記(27)または(28)に記載のプログラム。
(30)前記記憶ステップでは、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置に関する情報を記憶し、前記選択ステップでは、複数の前記端末候補のうち前記印刷ジョブを生成する端末を特定し、特定した当該端末の位置に関する情報と前記目的地の位置に関する情報とを比較する上記(27)〜(29)のいずれか一つに記載のプログラム。
(31)前記記憶ステップでは、ユーザーが使用可能な複数の端末候補の位置に関する情報を記憶し、前記選択ステップでは、複数の前記端末候補の中から一台の端末の指定を受け付け、受け付けた前記端末の位置に関する情報と前記目的地の位置に関する情報とを比較する上記(27)〜(29)のいずれか一つに記載のプログラム。
(32)前記決定ステップでは、ユーザーが経路に従って当該経路上の印刷装置から印刷物を回収し回収順に重ねれば印刷物のページが順に並ぶように、前記印刷ジョブの配分を決定する上記(27)〜(31)のいずれか一つに記載のプログラム。
(33)前記記憶ステップでは、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報をさらに記憶し、前記決定ステップでは、前記移動速度情報および前記印刷装置間の距離に基づいて、決定した前記経路において最初に位置する印刷装置以降の印刷装置においてはユーザーが到着した時点で印刷が完了しており、決定した前記経路において前記目的地との距離が遠い前記印刷装置から近い前記印刷装置の順に処理量が大きくなるように、前記印刷ジョブの配分を決定する上記(27)〜(32)のいずれか一つに記載のプログラム。
(34)前記記憶ステップでは、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および前記印刷装置の処理速度に関する処理速度情報をさらに記憶し、前記決定ステップでは、前記移動速度情報、前記処理速度情報および前記印刷装置の位置に関する情報に基づいて、ユーザーが前記目的地に到達するまでの時間が最短となるように、前記経路および前記印刷ジョブの配分を決定する上記(27)〜(32)のいずれか一つに記載のプログラム。
(35)前記印刷ジョブ分割装置に、前記経路を表示する表示ステップ、をさらに実行させる上記(27)〜(34)のいずれか一つに記載のプログラム。
(36)前記印刷ジョブ分割装置に、前記経路上の前記印刷装置による分散処理の完了時間に基づいて、印刷物の回収指示を通知する通知ステップ、をさらに実行させる上記(27)〜(35)のいずれか一つに記載のプログラム。
(37)前記目的地は、前記印刷ジョブを生成したユーザーの端末に設定される上記(27)〜(36)のいずれか一つに記載のプログラム。
(38)前記記憶ステップでは、複数の目的地候補の位置に関する位置情報を記憶し、前記印刷ジョブ分割装置に、複数の前記目的地候補の中から目的地の指定を受け付ける受付ステップ、をさらに実行させる上記(27)〜(37)のいずれか一つに記載のプログラム。
(39)前記選択ステップでは、前記分散処理させる複数の印刷装置として、印刷させるのに適した印刷装置を選択する上記(27)〜(38)のいずれか一つに記載のプログラム。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、分散印刷において印刷物を使用する目的地を考慮して、複数の印刷装置を結ぶ回収経路および各印刷装置に対するジョブ配分を決定できる。ユーザーは決定された回収経路に沿って印刷物を回収していけば、目的地に近づきながら効率よく印刷物を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】分散印刷システムの概略構成を示す図である。
図2】ユーザー端末の概略構成を示すブロック図である。
図3】印刷ジョブ分割装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】印刷ジョブ分割装置が使用するレイアウト図の一例を示す図である。
図5】各装置の配置位置を示す位置テーブルを示す図である。
図6】各装置間の距離を示す距離テーブルを示す図である。
図7】分散印刷システムにおける処理の流れを示すシーケンスチャートである。
図8】目的地を設定する画面の一例を示す図である。
図9】分散印刷させる印刷装置を選択する画面の一例を示す図である。
図10】印刷装置候補リストを生成する処理の流れを示すフローチャートである。
図11】回収経路を作成する処理の流れを示すフローチャートである。
図12】最短経路を算出する様子を示す図である。
図13】印刷物の回収経路を示す図である。
図14】印刷物の回収経路例1を示す図である。
図15】印刷物の回収経路例2を示す図である。
図16】印刷物の回収経路例3を示す図である。
図17】印刷物の回収経路例4を示す図である。
図18】第2実施形態に係る分散印刷システムの処理の流れを示すシーケンスチャートである。
図19】第2実施形態に係る印刷装置リストを生成する処理の流れを示すフローチャートである。
図20】第2実施形態に係る印刷物の回収経路例5を示す図である。
図21】第2実施形態に係る印刷物の回収経路例6を示す図である。
図22】第2実施形態に係る印刷物の回収経路例7を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、分散印刷システムの概略構成を示す図である。
【0038】
分散印刷システムは、図1に示すように、複数の印刷装置1、少なくとも1台のユーザー端末2および印刷ジョブ分割装置3を有する。印刷装置1、ユーザー端末2および印刷ジョブ分割装置3は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークNは、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)等の規格によるLAN(Local Area Network)、又はLANどうしを専用線で接続したWAN(Wide Area Network)等である。
【0039】
印刷装置1は、ネットワークN上の他の装置から受信した印刷ジョブ、または印刷ジョブを分割して生成されたサブ印刷ジョブに基づく出力画像を電子写真方式の印刷技術を用いて用紙に印刷する。印刷装置1には、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP:Multi−Function Peripheral)などが含まれる。印刷装置1が採用する印刷方式は電子写真方式に限定されず、インパクト方式や熱転写方式やインクジェット方式等の他の印刷方式であってもよい。
【0040】
ユーザー端末2は、デスクトップ型PC(Personal Computer)や、ノート型PCなど、ユーザーが特定の位置で使用可能な端末である。ユーザー端末2は、ネットワークNを経由して印刷ジョブ分割装置3に対して、分散印刷要求などの各種指示や印刷ジョブを送信したり、印刷ジョブ分割装置3から送信された各種リストを示す画面を表示したりする。
【0041】
印刷ジョブ分割装置3は、ユーザー端末2から送信された印刷ジョブおよび分散印刷要求に基づいて、印刷ジョブを分割し、複数の印刷装置1に割り当てる。印刷ジョブ分割装置3は、たとえば、印刷ジョブの分割機能に特化したサーバーである。本実施形態では、印刷ジョブ分割装置3は、印刷ジョブの分割に加えて、分割してできたサブ印刷ジョブを複数の印刷装置1に送信する機能も有する。しかし、印刷ジョブの送信機能は、別の装置(サーバー)により実行してもよい。
【0042】
次に各構成の詳細について説明する。
【0043】
図2はユーザー端末の概略構成を示すブロック図である。
【0044】
図2に示す通り、ユーザー端末2は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ハードディスク24、ディスプレイ25、入力装置26、およびネットワークインターフェイス27を含む。各構成は、バス28を介して相互に通信可能に接続されている。
【0045】
CPU21は、ROM22やハードディスク24に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御や各種の演算処理を行う。たとえば、印刷ジョブ分割装置3から送信されたリストデータに基づき、リストの選択画面をディスプレイ25に表示したり、入力装置26を通じてユーザーの入力を受け付け、ネットワークインターフェイスを介して印刷ジョブ分割装置3に送信したりする。
【0046】
ROM22は、各種プログラムや各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。ハードディスク24は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、各種データを格納する。
【0047】
ディスプレイ25は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。入力装置26は、たとえば、マウス等のポインティングデバイスやキーボードを含み、各種情報の入力を行うために使用される。ネットワークインターフェイス27は、ネットワークを介して印刷装置1や印刷ジョブ分割装置3などの他の機器と通信するためのインターフェイスであり、IPv4、IPv6、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI等の規格が用いられる。
【0048】
図3は印刷ジョブ分割装置の概略構成を示すブロック図である。なお、印刷ジョブ分割装置3の構成のうち、ユーザー端末2と同様の機能を有する部分については、その説明を省略する。
【0049】
図3に示す通り、印刷ジョブ分割装置3は、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、ハードディスク34、ディスプレイ35、入力装置36、およびネットワークインターフェイス37を含む。各構成は、バス38を介して相互に通信可能に接続されている。
【0050】
CPU31は、ROM32やハードディスク34に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御や各種の演算処理を行う。CPU31は、プログラムを実行することによって、選択部および決定部として機能する。
【0051】
ハードディスク34は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、各種データを格納する。ハードディスク34には、印刷ジョブを分割し分散印刷を行うためのアプリケーションがインストールされている。また、ROM32またはハードディスク34は、記憶部として、印刷装置1やユーザー端末2の配置位置を示すレイアウト情報を記憶している。レイアウト情報については、後述する。
【0052】
図4は印刷ジョブ分割装置が使用するレイアウト図の一例を示す図、図5は各装置の配置位置を示す位置テーブルを示す図、図6は各装置間の距離を示す距離テーブルを示す図である。
【0053】
ROM32またはハードディスク34には、たとえば、図4に示されるレイアウト図を表現するためのレイアウト情報が記憶されている。レイアウト情報は、マップ情報と、配置情報とを含む。マップ情報は、オフィスや学校の間取りなど本システムが使用される環境の領域全体に関する情報、当該環境内においてユーザーが通行できる通路に関する情報、机や壁などのユーザーが通行できない障害物に関する情報、他の居室や廊下に通ずるドアの位置に関する情報などを含む。配置情報は、図4に示すうように、印刷装置1やユーザー端末2の配置に関する情報を含む。図4のレイアウト図では、MFPa〜MFPeが印刷装置1として、PCa、PCbがユーザー端末2として配置されている。
【0054】
配置情報は、たとえば、図5に示すように、装置の座標位置や、装置が配置されている領域の名称を対応付けた位置テーブルとして記憶されている。また、図6に示すように、ユーザーが通行できる通路を考慮した装置間の最短距離も予め距離テーブルとして記憶されている。尚、ユーザー端末としてユーザーが携行可能なノートPCやスマートフォンの如きモバイル端末が使用される場合、当該モバイル端末の座標位置や当該モバイル端末と各装置との最短距離は固定ではない為、これらを位置テーブルや距離テーブルに予め登録することはできない。この場合、モバイル端末の近隣にある無線LANアクセスポイントの位置情報を用いてモバイル端末の座標位置を特定し、その座標位置情報を用いてモバイル端末と各装置との最短距離を算出し、これらを位置テーブル、距離テーブルに登録すればよい。モバイル端末の座標位置を特定するタイミングとしては、モバイル端末から分散印刷が指示された時点が好ましいが、所定時間間隔毎に座標位置を特定する形態であっても良い。
【0055】
レイアウト情報に加えて、ROM32またはハードディスク34には、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報および印刷装置1の処理速度に関する処理速度情報を記憶している。ユーザーの移動速度は、ユーザー端末2に対応するユーザー別に記憶されていてもよいし、一般的な人の歩行速度、たとえば4km/時として一律の値として記憶されていてもよい。また、印刷装置1の処理速度は、印刷装置1が印刷する速度であり、たとえば、1分間の印刷枚数が印刷装置1別に記憶されている。ROM32またはハードディスク34には、印刷装置1の機能も記憶されている。
【0056】
以下では、上記のレイアウト情報等は、ハードディスク34に記憶されているものとして説明する。
【0057】
次に、分散印刷システムにおける処理の流れを説明する。
【0058】
図7は分散印刷システムにおける処理の流れを示すシーケンスチャート、図8は目的地を設定する画面の一例を示す図、図9は分散印刷させる印刷装置を選択する画面の一例を示す図である。なお、印刷装置1、ユーザー端末2および印刷ジョブ分割装置3のそれぞれの処理は、それぞれが有するCPUによって実行される。
【0059】
まず、ユーザー端末2において、ユーザーからの分散印刷の指示を受け付ける(ステップS1)。分散印刷の指示の受け付けは、任意のユーザー端末2で行われる。この受け付けは、たとえば、ユーザー端末2のディスプレイ25に表示された分散印刷指示のボタンを、キーボードやマウス等の入力装置26により選択することで実行される。分散印刷の指示があると、ユーザー端末2は、印刷ジョブ分割装置3に、分散印刷要求を送信する(ステップS2)。
【0060】
印刷ジョブ分割装置3は、複数の場所を目的地候補として、リストを作成し(ステップS3)、ユーザー端末2に送信する(ステップS4)。目的地候補は、予めROM32やハードディスク34に登録されている。
【0061】
ユーザー端末2は、複数の目的地候補のリストに基づいて、目的地の選択を受け付ける(ステップS5)。ここで、目的地候補のリストは、たとえば、図8に示すように、ユーザー端末2のディスプレイ25に表示される。ユーザーは、ディスプレイ25を見て、分散印刷されてできた印刷物を最終的にどこに運びたいか、目的地を適宜設定できる。目的地候補から目的地が設定されると、ユーザー端末2は、選択された目的地の名称等の目的地選択情報を印刷ジョブ分割装置3に送信する(ステップS6)。
【0062】
印刷ジョブ分割装置3は、ユーザーが目的地に向かうことを考慮して、印刷させるのに適した複数の印刷装置1の候補を選択し、リストとして生成し(ステップS7)、ユーザー端末2に送信する(ステップS8)。印刷装置候補の選択について、詳細は後述する。
【0063】
ユーザー端末2は、複数の印刷装置候補からなる印刷装置候補リストから、分散印刷させるための複数の印刷装置1の選択を受け付ける(ステップS9)。ここで、印刷装置候補リストは、たとえば、図9に示すように、ユーザー端末2のディスプレイ25に表示される。ユーザーは、ディスプレイ25を見て、使いたい印刷装置1を選択(追加または削除)できる。ユーザー端末2は、選択された印刷装置1の名称等の印刷装置選択情報を印刷ジョブ分割装置3に送信する(ステップS10)。
【0064】
印刷ジョブ分割装置3は、ユーザー端末2において選択された複数の印刷装置1に基づいて、ユーザーが印刷物を回収する経路を作成する(ステップS11)。経路の作成の詳細については後述する。
【0065】
ユーザー端末2は、今回の分散印刷に係る文書、画像、写真等の電子データと、電子データを印刷するための印刷設定に基づいて、印刷ジョブを生成する(ステップS12)。電子データの選択および印刷設定は、ステップS1の時点で実行されてもよいし、ステップS12で実行されてもよい。電子データおよび印刷設定から印刷ジョブを生成する方法については、周知であるため説明は省略する。ユーザー端末2は、印刷ジョブを印刷ジョブ分割装置3に送信する(ステップS13)。
【0066】
印刷ジョブ分割装置3は、ユーザーの移動速度情報、印刷装置1の処理速度および印刷装置1間の距離に基づいて、選択された各印刷装置1に割り当てる配分、すなわち、各印刷装置1に処理させるデータ量(ページ数等)を決定する(ステップS14)。ここでは、印刷ジョブ分割装置3は、生成した経路において、目的地との距離が遠い印刷装置1から近い印刷装置1の順に処理量が大きくなるように、あるいは、処理時間が長くなるように、割り当てる印刷ジョブの配分を決定する。このように配分を決定すれば、印刷物を回収する際にユーザーが早く到達する印刷装置1では、遅く到達する印刷装置1よりも先に印刷処理が終了するように調整できる。換言すると、生成した経路において最初に印刷物が回収される印刷装置1以降の印刷装置1においては、ユーザーが到着した時点で印刷が完了しているように、印刷ジョブの配分が調整される。
【0067】
印刷ジョブ分割装置3は、決定した配分に基づいて、各印刷装置1用のサブ印刷ジョブを生成し(ステップS15)、各印刷装置1に送信する(ステップS16)。図7では、N台の印刷装置P1〜PNに分散印刷処理させる場合について示している。ここで、印刷ジョブ分割装置3は、ユーザーがステップS11で作成した経路に従って順に印刷物を回収して重ねると、印刷物のページが順不同とならずに、順に並ぶように、サブ印刷ジョブを生成する。
【0068】
印刷装置1は、印刷ジョブ分割装置3に印刷処理の進捗を定期的に報告する(ステップS17)。印刷ジョブ分割装置3は、回収経路において目的地から最も遠い印刷装置1について、残りの印刷枚数が所定枚数以下になったか判断する(ステップS18)。所定枚数以下にならない場合(ステップS18:NO)、印刷ジョブ分割装置3は、印刷装置1からの次の進捗の報告を待つ。残りの印刷枚数が所定枚数以下になると(ステップS18:YES)、印刷ジョブ分割装置3は、現時点でユーザーが印刷物の回収を始めればよいと判断し、ユーザー端末2に、回収経路と回収開始の指示を送信する(ステップS19)。このように回収のタイミングを判断するのは、当該時点でユーザー印刷物の回収のために移動を始めれば、ユーザーが目的地から最も遠い印刷装置1に到達したときにちょうど当該印刷装置1において印刷が終わっているからである。
【0069】
ユーザー端末2は、回収経路と、回収開始のメッセージをディスプレイ25に表示する(ステップS20)。
【0070】
次に、図7に示すステップS7の印刷装置候補リストの生成処理について、詳細に説明する。
【0071】
図10は、印刷装置候補リストを生成する処理の流れを示すフローチャートである。図10に示す処理は、印刷ジョブ分割装置3のCPU31がプログラムを読み込んで実行する。
【0072】
複数の印刷装置候補からなる印刷装置候補リストを生成するにあたって、CPU31は、分散印刷に係る印刷ジョブを生成するユーザー端末2を特定し、特定したユーザー端末2の位置をハードディスク34から読み込んでこれを取得する(ステップS101)。或いは、ユーザー端末2がモバイル端末である場合にあっては、モバイル端末から位置の情報を取得することとしても良く、この情報は分散印刷要求に含まれていても良い。本実施形態では、CPU31は、印刷ジョブを送信するユーザー端末2を使用するユーザーが、分散印刷された印刷物を回収するものとみなし、特定したユーザー端末2の位置を回収者が通常いる場所(自席)とみなす。なお、図7のステップS7の時点では、まだ印刷ジョブはユーザー端末2から送信されていない。しかし、ユーザー端末2はすでに分散印刷要求をしているので、当該分散印刷要求を送信したユーザー端末2が印刷ジョブも送信するものとみなせる。
【0073】
CPU31は、特定したユーザー端末2の位置、すなわち回収者の自席の位置と、図7のステップS6で送信された目的地とが同じか判断する(ステップS102)。目的地の位置が自席の位置と同じ、すなわち目的地が自席の場合とは、たとえば、図5に示すテーブルに示されるユーザー端末2の位置と、目的地の位置とが同じ座標の場合である。
【0074】
目的地が自席の場合(ステップS102:YES)、CPU31は、自席が存在する領域に位置する印刷装置1を印刷装置候補として抽出する(ステップS103)。たとえば、図4に示すレイアウトにおいて、自席がPCaの位置で、目的地がPCaの位置である場合、CPU31は、同室に存在するMFPa〜MFPeの全てを印刷装置候補として抽出する。
【0075】
目的地が自席ではない場合(ステップS102:NO)、CPU31は、自席の位置を起点として、目的地に向かう方向に沿って位置する印刷装置1を印刷装置候補として抽出する(ステップS104)。たとえば、図4に示すレイアウトにおいて、自席がPCaの位置で、目的地がドアDaの場合、CPU31は、PCaの位置を起点として、居室の中でドアDa側のMFPa、MFPcおよびMFPdを印刷装置候補として抽出する。
【0076】
CPU31は、ステップS103またはステップS104において抽出された印刷装置候補により、印刷装置候補リストを生成する(ステップS105)。
【0077】
次に、図7に示すステップS11の回収経路の作成処理について、詳細に説明する。
【0078】
図11は回収経路を作成する処理の流れを示すフローチャート、図12は最短経路を算出する様子を示す図、図13は印刷物の回収経路を示す図である。図11に示す処理は、印刷ジョブ分割装置3のCPU31がプログラムを読み込んで実行する。
【0079】
CPU31は、ユーザー端末2において印刷装置候補から選択された印刷装置1と、選択された目的地とを含む距離テーブル(図6参照)を、ハードディスク34から読み込む(ステップS201)。
【0080】
CPU31は、読み込んだ距離テーブルに基づいて、ユーザーによって選択された複数の印刷装置1を経由して、目的地まで向かう最短の経路を算出する(ステップS202)。たとえば、図12を参照して、目的地がPCaであり、MFPa、c、dがユーザーにより選択されている場合、PCaおよびMFPa、c、dの全ての組み合わせについて、装置間の距離が距離テーブルに記憶されている。したがって、各装置間の距離の合計が最短になるように、CPU31は、経路を形成する。この例では、図12に示すように、両矢印で示す経路R1、R2、R3を含む最短経路が算出される。なお、距離テーブルが予め準備されていない場合でも、CPU31は、各装置の位置および通路の情報に基づいて、最短経路を算出することもできる。
【0081】
CPU31は、算出した経路において、目的地に最も近い印刷装置を、回収順序の最後に設定する(ステップS203)。図12に示す例では、MFPdが目的地であるPCaに最も近いので、MFPdの回収順序が最後に設定される。
【0082】
CPU31は、算出した経路において、回収順序が最後に設定された印刷装置1とは逆側の終端に位置する印刷装置1を、回収順序の1番に設定する(ステップS204)。図12に示す例では、MFPaの回収順序が1番に設定される。
【0083】
CPU31は、回収順番を設定していない残りの印刷装置1について、回収順序が1番の印刷装置1から目的地に向かって順に、回収順番を2番、3番…と設定していく(ステップS205)。算出した経路上のすべての印刷装置1について、回収順番が設定される。図12では、MFPcの回収順番が3番に設定される。このようにして、回収順番を含む回収経路が生成される。生成された回収経路は、ユーザー端末2に送信され、図13に示すような画面により、印刷物の回収指示と共に表示される。図中丸に囲まれた数字は、回収の順番を表す。
【0084】
以上のように、第1実施形態の分散印刷システムおよび印刷ジョブ分割装置3によれば、目的地および複数の印刷装置1の位置情報に基づいて、最終的に当該目的地に到達するように複数の印刷装置1を結ぶ経路を決定しつつ、各印刷装置1に対する印刷ジョブの配分を決定する。目的地を考慮して、経路および印刷ジョブの配分を決定するので、ユーザーは印刷ジョブ分割装置3によって決定された経路に沿って、印刷装置1から印刷物を回収していけば、目的地に近づきながら効率よく印刷物を回収できる。全ての印刷物を回収した際には、分散印刷を行った印刷装置1の中で最も目的地に近い位置にいるので、回収が終わってから目的地に到達する時間が短い。
【0085】
印刷ジョブ分割装置3は、決定した経路において、目的地との距離が最も遠い印刷装置1から近い印刷装置1の順に回収順序を決定する。したがって、ユーザーは最終的に目的地に誘導されながら、印刷物を回収できる。
【0086】
印刷ジョブ分割装置3は、分散印刷に係る印刷ジョブを生成するユーザー端末2の位置(自席の位置)と目的地の位置とが一致するかしないかで、印刷装置候補に抽出する印刷装置1の集合を変更している。自席の位置と目的地の位置とが同じ場合、自席がある居室内の全ての印刷装置1が抽出されるので、居室内でユーザーが自由に印刷させる印刷装置1を選択できる。ユーザーは、席に戻る途中で印刷物を回収できる。一方、自席の位置と目的地の位置とが異なる場合、ユーザーには普段いる自席とは異なる目的地に行く用事があるので、目的地の方向に沿って配置される印刷装置1が抽出される。したがって、ユーザーは目的地へ移動する途中で、印刷物を回収できる。
【0087】
また、印刷ジョブ分割装置3は、ユーザーが経路に沿ってサブ印刷ジョブに基づく印刷物を回収すればページが順に並ぶようにサブ印刷ジョブを作成し、印刷装置1に送信する。したがって、回収した印刷物の並べ替えが必要なく、作業性に優れる。
【0088】
また、印刷ジョブ分割装置3は、目的地から遠い印刷装置1から近い印刷装置1の順に処理量が大きくなり、ユーザーが経路に沿って印刷装置1に順に到達すれば、到達時には印刷が完了しているように、各印刷装置1に割り当てる印刷ジョブの配分を決定する。したがって、経路において回収が最後に近いものほど長く印刷処理を実行することになる。経路において後の方ほど、ユーザーが遅く到達するので、ユーザーが印刷物の回収のために移動している間も時間を無駄にせず、経路の後の方の印刷装置1には印刷を実行させることができる。結果として、処理効率を向上でき、ユーザーが印刷ジョブを送信してから目的地に到達するまでの総時間を最適化できる。
【0089】
なお、上記第1実施形態では、ステップS11において先に経路を形成し、その後ステップS14において各印刷装置1への印刷ジョブの配分を決定している。しかし、これに限定されない。印刷ジョブは、印刷ジョブの配分を、経路と共に決定してもよい。この場合、印刷ジョブ分割装置3は、ユーザーの移動速度に関する移動速度情報、印刷装置1の処理速度に関する処理速度情報および印刷装置1の位置情報に基づいて、ユーザーが目的地に到達するまでの時間が最短となるように、経路および印刷ジョブの配分を決定する。
【0090】
また、上記第1実施形態では、印刷装置候補リストからユーザーが任意の印刷装置1を選択している。しかし、これに限定されない。ユーザーによる印刷装置1の選択を受け付けなくても、印刷ジョブ分割装置3は、印刷装置候補リストから自動で全部または一部の印刷装置1を選択してもよい。
【0091】
(回収経路例1)
次に、上記第1実施形態における他の回収経路例を説明する。
【0092】
図14は、印刷物の回収経路例1を示す図である。
【0093】
図14に示す経路では、選択された印刷装置1の一つであるMFPaが経路の始点として表示されている。第1実施形態では、印刷物の回収者は、分散印刷要求を送信したユーザー端末2のユーザーであることを前提としているので、ユーザー端末2を始点として経路を生成してもよい。たとえば、図14に示すように、印刷ジョブ分割装置3は、PCaを始点としてMFPa、MFPc、MFPdを通過し、再びPCaに戻るような経路を生成してもよい。
【0094】
(回収経路例2)
図15は、印刷物の回収経路例2を示す図である。
【0095】
上記の第1実施形態では、ユーザーによって、図4に示す配置レイアウトのうちMFPa、c、dが選択された場合を例示した。回収経路例2では、さらにMFPeも選択され、回収経路例1と同様に、PCaを回収経路の始点する場合について説明する。
【0096】
印刷ジョブ分割装置3は、まず、PCaからMFPa、c、d、eを通過し、目的地であるPCaに戻る経路で最短の経路を算出する。PCaを出発して、PCaに戻る経路なので、図15に示すように環状の経路が最短となる場合がある。環状なので、時計回りでも半時計回りでも経路の長さは同じである。この場合、印刷ジョブ分割装置3は、環状の経路上において、目的地であるPCaから近い方の印刷装置1であるMFPdが回収順序として最後になるように経路を決定する。すなわち、図15では、時計回りの経路が選択される。
【0097】
目的地(PCa)と経路の最後の印刷装置1(MFPd)との距離が反時計回りの経路の場合と比べて短いので、始点から経路の最後の印刷装置1に到達するまでにユーザーが歩行する時間が長くなる。最後の印刷装置1に到達するまでにユーザーが歩行している間に最後の印刷装置1が処理できる時間も長くなる。その一方で、始点(PCa)と経路の最初の印刷装置1(MFPe)との距離が反時計回りの経路の場合と比べて長いので、経路の最初の印刷装置1に到達するまでにユーザーが歩行する時間も長くなる。最初の印刷装置1に到達するまでにユーザーが歩行している間に最初の印刷装置1が処理できる時間も長くなる。したがって、ユーザーが印刷物の回収のために移動している間も時間を無駄にせず、印刷装置1に印刷を実行させることができる。結果として、処理効率を向上でき、ユーザーが印刷ジョブを送信してから目的地に到達するまでの総時間を最適化できる。
【0098】
また、最後の印刷装置1と目的地との距離が短いので、全ての印刷物を回収してからユーザーが目的地に到達するまでの時間が短くなる。全ての印刷物を持って歩く時間が少なくなり、ユーザーの負担を軽減できる。
【0099】
なお、回収経路例2において、回収経路の始点をPCaとしない場合は、MFPeから始まる回収経路が生成される。
【0100】
(回収経路例3)
図16は、印刷物の回収経路例3を示す図である。
【0101】
上記の第1実施形態では、目的地として、ユーザー端末2であるPCaが選択される場合について説明した。回収経路例3では、図4のレイアウトにおいて、目的地としてドアDaが選択され、分散印刷用の印刷装置1としてMFPa、c、dが選択されたものとする。
【0102】
この場合、印刷ジョブ分割装置3は、MFPa、c、dを経由して、ドアDaに到達する最短経路を生成する。そして、印刷ジョブ分割装置3は、図16に示すように、経路において、ドアDaから最も遠いMFPdからMFPc、MPFaの順に回収経路とする。図16中に点線で示すように、PCaを始点として経路を生成してもよい。
【0103】
(回収経路例4)
図17は、印刷物の回収経路例4を示す図である。
【0104】
上記の第1実施形態では、分散印刷要求を送信したユーザー端末2であるPCaと同じ居室(領域)内において、目的地と印刷装置1が選択される場合について説明した。目的地が、分散印刷要求を送信したユーザー端末2と異なる居室にある端末等に設定されてもよい。
【0105】
回収経路例4では、分散印刷要求を送信したユーザー端末2がPCaであり、目的地が異なる居室に配置されたユーザー端末2のPCcである場合について説明する。この場合、ハードディスク34には、図17に示すように、PCaが配置される居室Aaだけでなく、PCcが配置される居室Abのレイアウトや、居室Aaおよび居室Ab間をつなぐ廊下を示すレイアウト情報が記憶されている。
【0106】
印刷ジョブ分割装置3は、PCaから見て、目的地であるPCcの方向にある印刷装置1を抽出する。ここでは、ユーザーが通過できる通路や廊下等を考慮して、当該通路等に沿った印刷装置1が抽出される。たとえば、MFPa、MFPc、MFPd、MFPh、MFPiが抽出される。ここで、ユーザーがMFPd、MFPh、MFPiを選択したとする。印刷ジョブ分割装置3は、図17に示すように、廊下も考慮して、MFPd、MFPh、MFPiを経由して、PCcに到達する最短経路を生成し、PCcから最も遠いMFPdからMFPi、MFPhの順に回収経路とする。図中点線で示すように、PCaを始点として、経路を生成してもよい。
【0107】
このように、分散印刷要求を送信したユーザー端末とは別の領域に目的地がある場合でも、印刷ジョブ分割装置3は、回収経路を形成できる。
【0108】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
【0109】
第1実施形態では、分散印刷要求を送信したユーザー端末2のユーザーが印刷物を回収することを前提として、回収経路を生成していた。しかし、分散印刷要求を送信したユーザー端末2以外のユーザー端末2のユーザーが印刷物を回収してもよい。第2実施形態では、印刷物の回収に関わるユーザー端末2を指定できる場合について説明する。
【0110】
図18は第2実施形態に係る分散印刷システムの処理の流れを示すシーケンスチャートである。図18では、図7に示すシーケンスチャートと同様の処理については、同様の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0111】
ユーザー端末2において、ユーザーからの分散印刷の指示および印刷物の回収者の指示を受け付ける(ステップS31)。分散印刷の指示の受け付けは、任意のユーザー端末2で行われる。この受け付けは、たとえば、ユーザー端末2のディスプレイ25に表示された分散印刷指示のボタンを、キーボードやマウス等の入力装置26により選択することで実行される。また、ユーザーは、分散印刷を指示した自席のユーザー端末2において、任意のユーザー端末2あるいはユーザー端末2に対応付けられたユーザー名を選択することで、印刷物の回収者を指示できる。ここで、ユーザー端末2のリストや、ユーザー名のリストは、予め用意され、ROM22やハードディスク24等に記憶されている。なお、ユーザーは、回収者として自分自身を選択してもよいし、他人を選択することもできる。
【0112】
分散印刷および回収者の指示があると、ユーザー端末2は、印刷ジョブ分割装置3に、分散印刷要求と共に、回収者の指定を送信する(ステップS32)。その後、ステップS3〜ステップS6の処理が実行される。
【0113】
印刷ジョブ分割装置3は、ユーザー端末2から目的地の名称等の目的地選択情報を受信すると、印刷させるのに適した複数の印刷装置1の候補を選択し、リストとして生成する(ステップS33)。リストの生成の詳細な流れについては、後述する。
【0114】
印刷装置候補のリストが生成されると、ステップS8〜ステップS18の処理が実行される。回収経路において目的地から最も遠い印刷装置1(P1)について、残りの印刷枚数が所定枚数以下になった場合(ステップS18:YES)、印刷ジョブ分割装置3は、ユーザー端末2に、回収経路と回収開始の指示を送信する(ステップS34)。ここで、回収開始の指示の送信先は、ステップS31において指定された回収者のユーザー端末2である。回収者のユーザー端末2は、分散印刷を指示したユーザー端末2と同じとは限らない。したがって、分散印刷を指示したユーザーは、回収者としてステップS31において指定した自分自身あるいは他人に、印刷回収のタイミングを通知できる。
【0115】
回収開始の指示を受信したユーザー端末2は、回収経路と、回収開始のメッセージをディスプレイ25に表示する(ステップS20)。
【0116】
次に、図18に示すステップS33の印刷装置リストの生成処理について、詳細に説明する。
【0117】
図19は、第2実施形態に係る印刷装置リストを生成する処理の流れを示すフローチャートである。図19に示す処理は、印刷ジョブ分割装置3のCPU31がプログラムを読み込んで実行する。
【0118】
複数の印刷装置候補のリストを生成するにあたって、CPU31は、ステップS32において分散印刷要求を送信したユーザー端末2を自席として特定し、当該ユーザー端末2の位置をハードディスク34から読み込む(ステップS301)。CPU31は、ステップS31において指定された回収者のユーザー端末2を回収者席として特定し、当該ユーザー端末2の位置をハードディスク34から読み込む(ステップS302)。
【0119】
CPU31は、分散印刷要求を送信した自席の位置と、指定された回収者の回収者席の位置とが同じか判断する(ステップS303)。自席と回収者席とが同じ場合とは、たとえば、図5に示すテーブルに示される自席のユーザー端末2の位置と回収者席のユーザー端末2の位置とが同じ座標の場合である。
【0120】
自席と回収者席が同じ場合(ステップS303:YES)、CPU31は、回収者席のユーザーが自席のユーザーと同じ、すなわち、自席のユーザーが回収者であると認定し、ステップS304の処理に進む。第1実施形態では、自席のユーザーが印刷物を回収する回収者であることを前提としていたので、ステップS304〜ステップS306の処理は、図10のステップS102〜ステップS104と同様である。したがって、ステップS304〜ステップS306の処理の説明を省略する。
【0121】
自席と回収者席が異なる場合(ステップS303:NO)、CPU31は、回収者席のユーザーが自席のユーザーと異なる、すなわち、自席のユーザーが別のユーザーに回収を依頼していると認定し、ステップS307の処理に進む。CPU31は、回収者席の位置と、図18のステップS7で送信された目的地とが同じか判断する(ステップS307)。目的地が回収者席の場合とは、たとえば、図5に示すテーブルに示される回収者席であるユーザー端末2の位置と、目的地の位置とが同じ座標の場合である。
【0122】
目的地が回収者席の場合(ステップS307:YES)、CPU31は、回収者席が存在する領域に位置する印刷装置1を印刷装置候補として抽出する(ステップS308)。たとえば、図4に示すレイアウトにおいて、回収者席がPCbの位置で、目的地がPCbの位置である場合、CPU31は、同室に存在するMFPa〜MFPeの全てを印刷装置候補として抽出する。
【0123】
目的地が回収者席ではない場合(ステップS307:NO)、CPU31は、回収者席の位置を起点として、目的地に向かう方向に沿って位置する印刷装置1を印刷装置候補として抽出する(ステップS309)。たとえば、図4に示すレイアウトにおいて、回収者席がPCbの位置で、目的地がPCaの位置の場合、CPU31は、PCbの位置を起点として、居室の中でPCa側のMFPcおよびMFPdを印刷装置候補として抽出する。
【0124】
CPU31は、ステップS305、ステップS306、ステップS308またはステップS309において抽出された印刷装置候補により、印刷装置候補リストを生成する(ステップS310)。
【0125】
以上のように、第2実施形態においては、回収者の指定が可能であり、印刷ジョブ分割装置3は、回収者席と目的地との位置に基づいて、分散印刷させるための印刷装置1の候補を抽出する。回収者の位置も考慮するので、回収者にとって効率的に印刷物を回収できる印刷装置1だけを印刷装置候補リストに載せられる。
【0126】
第2実施形態においても、生成された印刷装置候補リストから複数の印刷装置1が選択され、回収者席から目的地までの回収経路が作成される。回収経路の作成の基本的な手順は、第1実施形態と同様である。以下に、回収経路の一例を示す。
【0127】
(回収経路例5)
図20は第2実施形態に係る印刷物の回収経路例5を示す図である。
【0128】
回収経路例5では、図4に示す配置レイアウトにおいて、PCbが回収者席、PCaが目的地としてそれぞれ指定され、MFPcおよびMFPdが分散印刷させる印刷装置1として選択されたものとする。
【0129】
この場合、印刷ジョブ分割装置3は、MFPc、MFPdを経由して、目的地であるPCaに到達する最短経路を生成する。そして、印刷ジョブ分割装置3は、図20に示すように、経路において、PCaから最も遠いMFPcからMFPdの順に回収経路とする。図20中に点線で示すように、PCbを始点として経路を生成してもよい。
【0130】
(回収経路例6)
図21は、第2実施形態に係る印刷物の回収経路例6を示す図である。
【0131】
回収経路例6は、回収者席と目的地とが異なる領域(居室)にあり、回収者席と目的地との間にある印刷装置候補MFPa、MFPc、MFPd、MFPh、MFPiのうち、MFPd、MFPh、MFPiが選択された場合の経路である。印刷ジョブ分割装置3は、MFPh、MFPi、MFPdを経由して、目的地であるPCaに到達する最短経路を生成する。そして、印刷ジョブ分割装置3は、図21に示すように、経路において、PCaから最も遠いMFPhからMFPi、MFPdの順に回収経路とする。図21中に点線で示すように、PCcを始点として経路を生成してもよい。
【0132】
(回収経路例7)
図22は、第2実施形態に係る印刷物の回収経路例7を示す図である。
【0133】
図22に示すように、異なる居室がある場合でも、一つの居室AbのPCcが回収者席であり、目的地である場合、居室Ab内で回収経路が生成される。
【0134】
本発明による印刷ジョブ分割装置3および分散印刷システムによる処理は、上記各手順を実行するための専用のハードウエア回路によっても、また、上記各手順を記述したプログラムをCPUが実行することによっても実現することができる。後者により本発明を実現する場合、印刷ジョブ分割装置および分散印刷システムを動作させる上記プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスクやCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ROMやハードディスク等に転送され記憶される。また、このプログラムは、たとえば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、印刷ジョブ分割装置および分散印刷システムの一機能としてその装置のソフトウエアに組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0135】
1 印刷装置、
2 ユーザー端末、
3 印刷ジョブ分割装置、
31 CPU、
32 ROM、
34 ハードディスク、
35 ディスプレイ、
36 入力装置、
37 ネットワークインターフェイス、
38 バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22