(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
打ち抜き加工をフープ材に対して複数列にわたって行うことでワークを複数個取りとする複数列取りの加工方法を使用して、ピンが挿通される貫通孔を有し動力伝達チェーンに用いられるリンクを製造する方法であって、
前記フープ材から前記リンクの外形を有するワークを打ち抜いて、打ち抜かれた前記ワークを前記フープ材に戻す第1工程と、前記ワークから前記貫通孔を打ち抜く第2工程とを備えており、
全ての列に対して前記第1工程を実施した後に、前記全ての列のうちの一部の列に対して前記第2工程を実施し、次いで、前記第2工程を実施したワークを排出した後に、前記全ての列から前記一部の列を除いた列に対して前記第2工程を実施する動力伝達チェーン用リンクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示されている動力伝達チェーン用リンクの製造方法において、生産効率の点からは、特許文献2に示されている複数列取りの加工方法とすることが好ましい。
【0006】
図7は、従来の複数列取りの加工方法と同様にして、動力伝達チェーン用リンクの製造を行った例(以下、比較例の製造方法」という)を示している。比較例の製造方法は、以下のようにして行われている。
【0007】
図7において、フープ材(20)は、左側から右側に搬送される。すなわち、右側が搬送方向側となっている。リンクの製造に際しては、まず、第1工程(A)において、フープ材(20)からリンクの外形を打ち抜いて、外形を打ち抜かれたワーク(W1)をフープ材(20)の打ち抜かれた孔(20a)に戻す抜き戻し加工を行う。外形を打ち抜かれたワーク(W1)は、孔(20a)に嵌まった状態で右側(搬送方向側)に搬送される。次いで、第2工程(B)において、外形を打ち抜かれたワーク(W1)から貫通孔(12)(13)を打ち抜く打ち抜き加工を行う。貫通孔(12)(13)が打ち抜かれたワーク(以下、外形だけを打ち抜かれたワーク(W1)と区別するために、「製品ワーク」と称す)(W2)は、さらに、右側(搬送方向側)に搬送される。そして、第3工程(C)において、貫通孔(12)(13)が打ち抜かれた製品ワーク(W2)をフープ材(20)から押し出すことで製品ワーク(W2)すなわちリンクの排出を行う。
【0008】
貫通孔(12)(13)を先に打ち抜くと、その後の外形打ち抜き時に、貫通孔(12)(13)が変形しやすいことから、第1工程(A)においては、一旦打ち抜いたワーク(W1)をフープ材(20)に戻す「抜き戻し」が行われている。
【0009】
上記比較例の製造方法では、4列取りとする(打ち抜き加工をフープ材(20)に対して4列にわたって行う)に際し、4列全てに対して第1工程(A)を実施した後に、4列全てに対して第2工程(B)を実施し、さらに、4列全てに対して第3工程(C)を実施するようになっている。
図7に、相対的に太い実線で示す箇所(A1)(A2)(A3)(A4)(B1)(B2)(B3)(B4)(C1)(C2)(C3)(C4)は、打ち抜き型によってプレスされている箇所を示している。すなわち、下から、1列目、2列目、3列目および4列目と数えるとして、図の一番左に示す位置においては、3列目で第1工程(A1)が行われる。この位置よりも搬送方向側において、2列目で第1工程(A2)が行われる。次いで、この位置よりもさらに搬送方向側において、4列目で第1工程(A3)が行われる。次いで、この位置よりもさらに搬送方向側において、1列目で第1工程(A4)が行われる。次いで、1列目の第1工程(A4)の位置よりも搬送方向側において、2列目および4列目で同時に第2工程(B1)(B2)が行われる。次いで、この位置よりも搬送方向側において、1列目および3列目で同時に第2工程(B3)(B4)が行われる。次いで、1列目および3列目の第2工程(B3)(B4)の位置よりもさらに搬送方向側において、2列目および4列目で同時に第3工程(C1)(C2)が行われる。次いで、この位置よりも搬送方向側において、1列目および3列目で同時に第3工程(C3)(C4)が行われる。
【0010】
なお、比較例の製造方法は、同図に太い実線で示す箇所(A1)(A2)(A3)(A4)(B1)(B2)(B3)(B4)(C1)(C2)(C3)(C4)に対応する打ち抜き型が一連で形成された順送金型を使用することで容易に行うことができる。
【0011】
上記比較例の製造方法によると、1列取りに比べて、生産効率は上がるが、リンクにとって重要な特性である「反り」が大きくなることが懸念される。実際、比較例の製造方法では、先に第2工程(貫通孔を打ち抜く工程)(B1)(B2)を実施したリンクの反りが後から第2工程(貫通孔を打ち抜く工程)(B3)(B4)を実施したリンクの反りに比べて大きくなるという問題があった。
【0012】
この発明の目的は、先に貫通孔を打ち抜く工程を実施したリンクの反りが後から貫通孔を打ち抜く工程を実施したリンクの反りに比べて大きくなるという問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による動力伝達チェーン用リンクの製造方法は、打ち抜き加工をフープ材に対して複数列にわたって行うことでワークを複数個取りとする複数列取りの加工方法を使用して、ピンが挿通される貫通孔を有し動力伝達チェーンに用いられるリンクを製造する方法であって、前記フープ材から前記リンクの外形を有するワークを打ち抜いて、打ち抜かれた前記ワークを前記フープ材に戻す第1工程と、前記ワークから前記貫通孔を打ち抜く第2工程とを備えており、全ての列に対して前記第1工程を実施した後に、前記全ての列のうちの一部の列に対して前記第2工程を実施し、次いで、前記第2工程を実施したワークを排出した後に、前記全ての列から前記一部の列を除いた列に対して前記第2工程を実施するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の動力伝達チェーン用リンクの製造方法によると、先に貫通孔を打ち抜く工程を実施したリンクの反りが後から貫通孔を打ち抜く工程を実施したリンクの反りに比べて大きくなるという問題を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、この発明による動力伝達チェーン用リンクの製造方法によって製造されるリンクが好適に使用される1例である動力伝達チェーンの一部を示している。
【0017】
動力伝達チェーン(1)は、複数のリンク(11)と、複数のリンク(11)同士を屈曲可能に連結する複数の第1ピン(14)および複数の第2ピン(15)とを備えている。
【0018】
図2に示すように、リンク(11)は、チェーン進行方向前側に位置する前貫通孔(12)と、チェーン進行方向後側に位置する後貫通孔(13)とを有している。
【0019】
前貫通孔(12)は、後側の第1ピン挿通部(16)および前側の第2ピン挿通部(17)からなる。第1ピン挿通部(16)に、第1ピン(14)が移動可能に嵌め合わせられている。第2ピン挿通部(17)に第2ピン(15)が固定されている。
【0020】
後貫通孔(13)は、後側の第1ピン挿通部(18)および前側の第2ピン挿通部(19)からなる。第1ピン挿通部(18)に、第1ピン(14)が固定されている。第2ピン挿通部(19)に、第2ピン(15)が移動可能に嵌め合わせられている。
【0021】
進行方向後側のリンク(11)の前貫通孔(12)と進行方向前側のリンク(11)の後貫通孔(13)とが対応するようにリンク(11)同士が重ねられている。各第1ピン(14)および各第2ピン(15)は、チェーン幅方向に重なり合う複数の前貫通孔(12)および後貫通孔(13)に嵌め合わされている。
【0022】
第1ピン(14)と第2ピン(15)とが相対的に転がり接触移動することにより、リンク(11)同士の屈曲が可能とされている。第1ピン(14)を基準とした第1ピン(14)と第2ピン(15)との接触位置の軌跡は、円のインボリュートとされている。この実施形態では、第1ピン(14)の転がり接触面(14a)が、インボリュート曲線とされ、第2ピン(15)の転がり接触面(15c)が平坦面(断面形状が直線)とされている。
【0023】
図2において、符号AおよびBで示す箇所は、チェーン(1)の直線部分において第1ピン(14)と第2ピン(15)とが接触している線(断面では点)であり、AB間の距離がピッチである。
【0024】
上記動力伝達チェーン(1)は、動力伝達装置としての無段変速機(10)で使用される。無段変速機(10)は、
図3に示すように、1対のプーリ(図示は一方のプーリだけ)(2)と、両プーリ(2)に巻き掛けられた動力伝達チェーン(1)とを備えている。
【0025】
プーリ(2)は、プーリ軸(2e)に固定された固定シーブ(2a)と、プーリ軸(2e)上に軸方向移動可能に支持された可動シーブ(2b)とを備えている。固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)は、それぞれ相対向する円錐面状のシーブ面(2c)(2d)を有している。
【0026】
第1ピン(14)の両端面は、プーリ(2)の相対向する1対のシーブ面(2c)(2d)間に挟持され、第1ピン(14)の両端面と各シーブ面(2c)(2d)との間の摩擦力により、動力伝達チェーン(1)とプーリ(2)との間で動力が伝達される。可動シーブ(2b)は、油圧アクチュエータ(図示略)によって、固定シーブ(2a)側に押圧されており、これにより、動力伝達チェーン(1)をクランプするためのクランプ力がプーリ(2)に与えられる。
【0027】
図3において、実線で示した位置にあるプーリ(2)の可動シーブ(2b)を固定シーブ(2a)に対して接近または離隔させると、プーリ(2)における動力伝達チェーン(1)の巻き掛け径は、同図に鎖線で示すように、接近時には大きく、離隔時には小さくなる。
【0028】
1対のプーリ(2)のうち図示省略した他方のプーリでは、その固定シーブが図示した固定シーブ(2a)とは、動力伝達チェーン(1)を間にして、軸方向反対側に配置されている。そして、その可動シーブが図示したプーリ(2)の可動シーブ(2b)とは逆向きに移動する。これにより、無段変速機(10)の変速比が無段階に変化する。
【0029】
上記動力伝達チェーン(1)で使用されるリンク(11)は、順送金型を使用したプレス加工により製造される。この加工方法には、「1列取り」と「複数列取り」とがある。「1列取り」は、打ち抜き加工を1回行うごとに1つのワークを得る加工方法である。「複数列取り」は、打ち抜き加工をフープ材に対して複数列にわたって行うことで複数のワークを得る(ワークを複数個取りする)ものである。生産効率の点では複数列取り(例えば4列取り)とすることが好ましい。
【0030】
図4および
図5は、この発明による動力伝達チェーン用リンクの製造方法の実施形態の要部(
図7に示した比較例の製造方法と異なる工程)を拡大して示したものである。
【0031】
この実施形態においては、まず、比較例の製造方法と同様に、全列(この例では4列)に対して第1工程(A1)(A2)(A3)(A4)を実施する。次いで、
図4に示すように、外形を打ち抜かれたワーク(W1)について、全列のうちの一部の列(この例では2列)に対して第2工程(B1)(B2)を実施し、貫通孔(12)(13)を打ち抜いて製品ワーク(W3)を得る加工を行う。次いで、第2工程(B1)(B2)を実施した列(この例では2列のみ)に対して第3工程(C1)(C2)を実施する。次いで、
図5に示すように、全列(この例では4列)のうちの残りの列(この例では2列)に対して第2工程(B3)(B4)を実施し、貫通孔(12)(13)を打ち抜いて製品ワーク(W3)を得る加工を行う。次いで、第2工程(B3)(B4)を実施した列(この例では残りの2列)に対して第3工程(C3)(C4)を実施する。
【0032】
より詳しく説明すると、
図4においては、全ての列の第1工程(A1)(A2)(A3)(A4)(
図7参照)よりも搬送方向側において、2列目および4列目で同時に、外形が打ち抜かれたワーク(W1)から貫通孔(12)(13)を打ち抜く第2工程(B1)(B2)が行われる。そして、この位置よりも搬送方向側において、2列目および4列目で同時に第3工程(C1)(C2)が行われる。したがって、これらの工程(B1)(B2)(C1)(C2)の終了後は、2列目および4列目では、外形が打ち抜かれた孔(20a)が開いている状態となっており、1列目および3列目については、外形が打ち抜かれた孔(20a)にワーク(W1)が戻された状態で搬送されていく。そして、
図5においては、2列目および4列目で同時に行った第3工程(C1)(C2)の後の工程として、1列目および3列目で同時に、外形が打ち抜かれたワーク(W1)から貫通孔(12)(13)を打ち抜く第2工程(B3)(B4)が行われる。そして、1列目および3列目の第2工程(B3)(B4)の位置よりもさらに搬送方向側において、1列目および3列目で同時に第3工程(C3)(C4)が行われる。こうして、4列取りが完了する。
【0033】
上記実施形態では、先に第2工程(B1)(B2)を実施した製品ワーク(W3)をフープ材(20)に残したままで、次の第2工程(B3)(B4)を実施するのではなく、先に製品ワーク(W3)を排出しておいてから、次の第2工程(B3)(B4)を実施するものとしている。
【0034】
表1は、
図4および
図5に示す実施形態と
図7に示す比較例の製造方法とを比較したもので、これらの製造方法で製造したリンク(11)の反りを調べたものである。
【0035】
実施形態および比較例のいずれについても、次の条件で、リンク(11)を製造した。リンク(11)の素材は、厚みが1mmの炭素鋼とした。また、リンク(11)の寸法は、搬送方向の長さが約25mm、これに直交する方向の幅が約20mmである。また、各貫通孔(12)(13)の寸法は、搬送方向の長さが約8mm、これに直交する方向の幅が約10mmである。プレス加工の条件は、1mmの炭素鋼素材を加工するのに一般に使用されている条件とした。
【0036】
「反り」は、
図8に示すように、台座(31)に測定リンク(11)を載せて、反りのない基準プレート(32)からの突出量(単位はmm)として測定する。反りの平均および反りの標準偏差は、各列から得られる全てのリンク(11)を測定して求めた。
【0037】
表1において、「Cpk」は、定められた反りの規格限度内で製品を生産できる能力(工程能力)の評価を行う指標の1つで、反りの規格値、反りの平均値および反りの標準偏差を使用して求めることができる。具体的には、Cpk=(反りの規格値−反りの平均値)/(3×反りの標準偏差)であり、Cpkが1.33より大きければ十分な工程能力を有していると考えられる。各列のリンク(11)の反りについて、Cpkを求めた。判定○の意味は、Cpkが1.33より大きい列であり、定められた反りの規格限度内で製品を生産できる列であることを示している。判定×の意味は、Cpkが1.33未満の列であり、定められた反りの規格限度内で製品を生産できる能力が不十分な列であることを示している。
【表1】
【0038】
表1に示すCpkから分かるように、比較例の製造方法では、2列目および4列目において、工程能力が十分でない。そして、上記実施形態では、1列目および3列目を比較例と同じように加工し、2列目および4列目を比較例と異なる加工とすることにより、比較例の製造方法では十分でなかった2列目および4列目における工程能力が向上している。
【0039】
すなわち、比較例によると、1列目および3列目の製品ワーク(W2)の反り量に比べて、2列目および4列目の製品ワーク(W2)の反り量が大きい。この理由としては、2列目および4列目の製品ワーク(W2)は、貫通孔(12)(13)が打ち抜かれることで剛性が弱くなっているので、1列目および3列目に対する第2工程(B3)(B4)を実施した際に変形して反りが大きくなったと考えられる。
【0040】
そこで、上記実施形態では、1列目および3列目に対する第2工程(B3)(B4)で貫通孔(12)(13)を打ち抜く前に、2列目および4列目の製品ワーク(W3)を先に排出しておくものとされている。したがって、1列目および3列目に対する第2工程(B3)(B4)(2回に分けて貫通孔(12)(13)を打ち抜く工程のうちで後から実施する工程)によって2列目および4列目の製品ワーク(W3)(先に実施した第2工程(B1)(B2)で得られた製品ワーク(W3))を変形させることがない。こうして、先に貫通孔(12)(13)を打ち抜く工程(B1)(B2)を実施したリンク(11)の反りが後から貫通孔(12)(13)を打ち抜く工程(B3)(B4)を実施したリンク(11)の反りに比べて大きくなることが防止される。したがって、上記実施形態によると、4列取りとすることで、生産効率が向上し、しかも、1列取りと比較した場合でも、優れた製品品質のリンク(11)を製造することができる。
【0041】
上記実施形態を実施する装置は、各工程(A1)(A2)(A3)(A4)(B1)(B2)(B3)(B4)(C1)(C2)(C3)(C4)に対応する打ち抜き型が一連で形成された順送金型を使用することで容易に行うことができる。すなわち、製造装置の打ち抜き型は、外形を打ち抜くための金型、第1の貫通孔を打ち抜くための金型、第1の排出を行うための金型、第2の貫通孔を打ち抜くための金型および第2の排出を行うための金型が、この順で、搬送方向側に配置されたものとなる。
【0042】
外形を打ち抜くための金型は、フープ材(20)の4列全てに対してリンク(11)の外形を有するワーク(W1)を打ち抜くことができるように形成される。第1の貫通孔を打ち抜くための金型は、4列のうちの一部の列(2列)に貫通孔(12)(13)を打ち抜くことができるように形成される。第1の排出を行うための金型は、第1の貫通孔を打ち抜くための金型と同じ列に位置するように形成される。第2の貫通孔を打ち抜くための金型は、4列のうちの残りの列(2列)に貫通孔(12)(13)を打ち抜くように形成される。第2の排出を行うための金型は、第2の貫通孔を打ち抜くための金型と同じ列に位置するように形成される。
【0043】
このような打ち抜き型を有する順送金型は、
図7の比較例の製造方法で使用される順送金型に比べて、第2の貫通孔を打ち抜くための金型および第1の排出を行うための金型の入れ替えを行うことで得ることができ、順送金型の製造のしやすさは同等である。
【0044】
図6に、製造装置の一部(外形プレス装置)を示す。
図6において、外形プレス装置(21)は、外形打ち抜き用のパンチ(22)およびダイ(23)と、ダイ(23)との間でフープ材(20)を保持するストリッパー(24)と、ノックアウト(25)とを備えている。
【0045】
パンチ(22)には、外形を打ち抜くためのワーク加工面(22a)が下端に設けられている。ダイ(23)には、パンチ(22)に対向する加工孔が設けられている。
【0046】
ノックアウト(25)は、上下移動自在にダイ(23)の加工孔に挿入されている。ノックアウト(25)の上端部には、ワーク(W1)に当接するワーク当接面(25a)が設けられている。ノックアウト(25)は、支持台(26)に取り付けられており、スプリング(付勢手段)(27)によって支持台(26)を介して上方に付勢されている。
【0047】
ノックアウト(25)のワーク当接面(25a)は、パンチ(22)が上方にある際には、ダイ(23)の上面と同じ位置にある。ノックアウト(25)は、パンチ(22)が下降してワーク(W1)を打ち抜く際には、パンチ(22)に押し下げられて図に示す位置に下降する。この後、パンチ(22)が上昇すると、ノックアウト(25)は、ワーク(W1)を保持した状態で、スプリング(27)の弾性力によって押し上げられる。
【0048】
この外形プレス装置(21)を使用した抜き戻し加工は、次のようにして行われる。まず、上型が下降することで、フープ材(20)がストリッパー(24)とダイ(23)とによって支持される。この後、さらに、パンチ(22)が下降して、そのワーク加工面(22a)がダイ(23)の加工孔内に挿入されることで、ワーク(W1)が打ち抜かれる。ワーク(W1)の打ち抜きは、ノックアウト(25)を上向きに付勢するスプリング(27)に抗して行われる。この後、パンチ(22)が上昇すると、ノックアウト(25)は、スプリング(27)の弾性力によって上方に移動して初期位置に復帰する。これにより、ノックアウト(25)のワーク当接面(25a)に支持されたワーク(W1)は、フープ材(20)に形成されている孔(20a)内に戻される。
【0049】
貫通孔プレス装置および排出プレス装置は、図示省略するが、外形プレス装置(21)と類似の構成として得ることができる。貫通孔プレス装置は、具体的には、例えば、フープ材(20)を介して上下に対向する貫通孔打ち抜き用のパンチおよびダイ(
図6に示した外形打ち抜き用のパンチ(22)およびダイ(23)の形状を貫通孔打ち抜きに適するように変更したもの)と、ダイとの間でフープ材(20)を保持するストリッパー(
図6に示したものと同様のもの)とを備えているものとされる。また、排出プレス装置は、例えば、製品ワーク(W3)対応する形状とされた排出型で製品ワーク(W3)をフープ材(20)から押し出すものとされる。
【0050】
リンク(11)の素材は、上記において、炭素鋼を例示したが、これに限られるものではなく、ばね鋼、炭素工具鋼、軸受鋼、合金工具鋼などの他の鋼とされてもよい。リンクは、前後貫通孔がそれぞれ独立の貫通孔とされていてもよく、前後貫通孔が1つの貫通孔とされていてもよい。
【0051】
なお、上記においては、先に第2工程(B1)(B2)を実施する列が2列目および4列目とされているが、これに限定されるものではなく、先に第2工程(B1)(B2)を実施する列は、例えば、2列目および3列目とされてもよい。
【0052】
上記実施形態に示したように、先に第2工程(B1)(B2)を実施する列は、2列目および4列目というように、1列おきに選択されていることが好ましい。このようにすると、第2工程(B1)(B2)によってそれぞれ貫通孔(12)(13)が打ち抜かれる2列目と4列目との間に、貫通孔(12)(13)が打ち抜かれない3列目があることで、貫通孔(12)(13)が打ち抜かれる部分の剛性が高くなる。これにより、3列目および4列目というように隣り合っている列に第2工程(B1)(B2)を実施する場合に比べて、第2工程(B1)(B2)を実施した後の製品ワーク(W3)の反りを小さくすることができる。
【0053】
また、上記においては、全部で4列取りとして、貫通孔形成工程(B1)(B2)(B3)(B4)を2列同時に行うことにより、製造装置の大型化を避けるものとなっている。しかしながら、上記の製造方法は、4列取りに限定されるものではなく、5列以上の複数列取りにも適用することができる。5列取りとする場合、例えば、まず、全列(5列)に対して第1工程を実施し、次いで、外形を打ち抜かれたワーク(W1)について、全列のうちの一部の列(例えば3列)に対して第2工程および第3工程を実施し、次いで、全列(5列)のうちの残りの列(例えば2列)に対して第2工程および第3工程を実施すればよい。6列取りとする場合、例えば、まず、全列(6列)に対して第1工程を実施し、次いで、外形を打ち抜かれたワーク(W1)について、全列のうちの一部の列(3列)に対して第2工程および第3工程を実施し、次いで、全列(6列)のうちの残りの列(3列)に対して第2工程および第3工程を実施すればよい。5列以上の複数列取りとする場合、先に第2工程を実施する列については、適宜選択することができ、先に第2工程を実施する列が1列おきに選択されていることがより好ましい。
【0054】
また、上記の製造方法は、ピン(14)(15)が挿通される貫通孔(12)(13)を有している種々の動力伝達チェーン用リンクに適用することができる。