(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
昇圧用スイッチング素子と、バッテリと前記昇圧用スイッチング素子との間に設けられるコイルと、前記昇圧用スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路とを有する昇圧回路と、
前記昇圧回路に並列接続されるバイパススイッチと、
アイドルストップ後のエンジン再始動時以外の通常時、前記バイパススイッチを常時オンにさせ、アイドルストップ後のエンジン再始動時、前記バイパススイッチを常時オフにさせるとともに、前記バッテリの電圧が昇圧されて負荷に出力されるように前記昇圧用スイッチング素子の駆動を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記通常時において所定タイミングになると、前記バイパススイッチを常時オンから常時オフに切り替えた後、前記昇圧回路の出力電圧が前記所定タイミングになる前の前記昇圧回路の入力電圧になるように前記昇圧用スイッチング素子の駆動を制御するとともに、前記昇圧回路の出力電圧が前記所定タイミングになる前の前記昇圧回路の入力電圧になるように前記昇圧用スイッチング素子の駆動を制御しているときに、前記電流検出回路により検出される電流を前記バイパススイッチに流れるバイパス電流として検出し、前記バイパス電流が閾値以上の場合に、アイドルストップを禁止する旨を、エンジンの動作を制御するエンジン制御回路に通知する
ことを特徴とする車両用の電源回路。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減と排ガスの低減を目的として、アイドルストップ車が実用化されている。アイドルストップ車は、信号待ち等で車両の停止動作を検知するとエンジンを自動的に停止(アイドルストップ)し、その後車両の発進動作を検知するとエンジンを自動的に再始動するようにした車両である。
【0003】
このようなアイドルストップ車では、アイドルストップ後のエンジン再始動時において、エンジン始動用のスタータモータに大電流が流れることから、バッテリの電圧が一時的に低下する。これに伴って、バッテリに接続されるスタータモータ以外の電子機器などの負荷に供給される電圧も一時的に低下する。そのため、負荷によっては、供給される電圧が動作に必要な電圧の範囲から外れてしまい、一時的に正常に動作しなくなるおそれがある。例えば、カーナビゲーションやオーディオにおいてはリセットが行われたり、さらにオーディオにおいては音飛びが発生したりと、運転者の意図せぬ動作が行われるおそれがある。
【0004】
そこで、このようなアイドルストップ車では、バッテリの電圧が一時的に低下した場合であっても負荷への必要な電圧の供給を維持することができるように、バッテリと負荷との間に電源回路を備えるようにしている。
【0005】
例えば、既存の電源回路として、アイドルストップ後のエンジン再始動時において、昇圧回路を動作させることによりバッテリの電圧を昇圧させて負荷に出力し、エンジン再始動時以外の通常時において、昇圧回路に並列接続されるバイパス用のスイッチを常時オンさせることよりバッテリの電圧をバイパス用のスイッチを介して負荷へ出力するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
これにより、アイドルストップ後のエンジン再始動に伴いバッテリの電圧が一時的に低下した場合であっても負荷への必要な電力供給を維持することができる。また、アイドルストップ後のエンジン再始動時以外の通常時において、バッテリの電圧が昇圧回路内の素子により降下することなく負荷へ出力されるため、負荷への必要な電力供給を維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の電源回路では、負荷へ供給される電力が増大して昇圧回路の出力に規定の閾値以上の大きな電流が流れている場合に、アイドルストップ後のエンジン再始動により昇圧回路が動作すると、そのときの昇圧回路の動作が能力を超えた動作になることがある。この場合、エンジン再始動中に昇圧回路が過電流保護機能などにより停止し、負荷がリセットしたり一時的に停止したりする可能性がある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アイドルストップ車に搭載される負荷に安定した電圧を継続的に出力する車両用の電源回路において、昇圧回路の昇圧動作時にその昇圧回路に過電流が流れることを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用の電源回路は、昇圧用スイッチング素子と、バッテリと前記昇圧用スイッチング素子との間に設けられるコイルと、前記昇圧用スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路とを有する昇圧回路と、前記昇圧回路に並列接続されるバイパススイッチと、アイドルストップ後のエンジン再始動時以外の通常時、前記バイパススイッチを常時オンにさせ、アイドルストップ後のエンジン再始動時、前記バイパススイッチを常時オフにさせるとともに、前記バッテリの電圧が昇圧されて負荷に出力されるように前記昇圧用スイッチング素子の駆動を制御する制御回路とを備える。前記制御回路は、前記通常時において所定タイミングになると、前記バイパススイッチを
常時オンから常時オフ
に切り替えた後、前記昇圧回路の出力電圧が前記所定タイミングになる前の前記昇圧回路の入力電圧になるように前記昇圧用スイッチング素子の駆動を制御するとともに、前記昇圧回路の出力電圧が前記所定タイミングになる前の前記昇圧回路の入力電圧になるように前記昇圧用スイッチング素子の駆動を制御しているときに、前記電流検出回路により検出される電流を前記バイパススイッチに流れるバイパス電流として検出
し、前記バイパス電流が閾値以上の場合に、アイドルストップを禁止する旨を、エンジンの動作を制御するエンジン制御回路に通知する。
【0011】
これにより、例えば、バイパス電流が閾値以上の場合に、アイドルストップを禁止させることができるため、負荷へ供給される電力が増大して昇圧回路の出力に閾値以上の大きな電流が流れている場合に、アイドルストップ後のエンジン再始動により昇圧回路を動作させないようにすることができる。そのため、昇圧回路の昇圧動作時にその昇圧回路に過電流が流れることを回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アイドルストップ車に搭載される負荷に安定した電圧を継続的に出力する車両用の電源回路において、昇圧回路の昇圧動作時にその昇圧回路に過電流が流れることを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態の車両用の電源回路を示す図である。
図1に示す電源回路1は、アイドルストップ車に搭載されるバッテリ2の電圧を一定に保って負荷3に出力するものであり、昇圧回路4と、バイパス回路5とを備える。
【0015】
昇圧回路4は、アイドルストップ後のエンジン再始動時において、バッテリ2の電圧を昇圧して負荷3に出力するものであり、昇圧用スイッチング素子6と、コイル7と、整流用ダイオード8と、コンデンサ9,10と、ドライブ回路11と、制御回路用電源12と、制御回路13と、電流検出回路14とを備える。
【0016】
昇圧用スイッチング素子6は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、又は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等とする。
【0017】
コイル7は、バッテリ2と昇圧用スイッチング素子6との間に設けられる。
整流用ダイオード8は、コイル7と負荷3との間に設けられる。
コンデンサ9は、昇圧回路4の入力段に設けられ、コンデンサ10は、昇圧回路4の出力段に設けられる。
【0018】
ドライブ回路11は、制御回路13から出力される制御信号S1に基づいて昇圧用スイッチング素子6を駆動する。
制御回路用電源12は、制御回路13に駆動用電力を供給する。
【0019】
電流検出回路14は、昇圧用スイッチング素子6に流れる電流を検出する。例えば、電流検出回路14は、昇圧用スイッチング素子6に直列接続される抵抗である。そして、制御回路13は、昇圧用スイッチング素子6をオンさせているときに、その抵抗にかかる電圧を、その抵抗の抵抗値で割ることにより、バッテリ2からコイル7を介して昇圧用スイッチング素子6及び電流検出回路14としての抵抗へ流れる電流を求める。
【0020】
バイパス回路5は、バイパススイッチ15と、ドライブ回路16とを備える。
バイパススイッチ15は、例えば、MOSFETであり、昇圧回路4に並列接続される。
【0021】
ドライブ回路16は、制御回路13から出力される制御信号S2に基づいてバイパススイッチ15を駆動する。
制御回路13は、アイドルストップ車全体の動作を制御する上位制御回路17から送られてくる各種通知に基づいて制御信号S1、S2を出力する。なお、制御回路13は、例えば、ソフトウェア又はハードウェアによって実現される。ソフトウェアによって実現される場合、制御回路13はCPUやメモリを含み、CPUがメモリに格納されているプログラムを読み出し実行することによって実現される。また、制御回路13は、昇圧回路4の外部に設けられてもよい。
【0022】
また、制御回路13は、アイドリングストップ後のエンジン再始動時以外の通常時において、バイパススイッチ15を常時オンさせる制御信号S2を出力するとともに、昇圧用スイッチング素子6を常時オフさせる制御信号S1を出力する。これにより、バッテリ2と負荷3とがバイパススイッチ15を介して電気的に接続され、かつ、昇圧回路4がバッテリ2の電圧に対して昇圧動作を行わないため、昇圧回路4ではなくバイパス回路5を介してバッテリ2から負荷3へ電流が流れる。そのため、バイパススイッチ15によるバッテリ2の電圧降下分を、コイル7や整流用ダイオード8などによるバッテリ2の電圧降下分よりも小さくすることにより、アイドリングストップ後のエンジン再始動時以外の通常時において、負荷3への必要な電圧の供給を維持することができる。なお、このときの制御回路13の動作制御を、以下、「バイパスモード」という。
【0023】
また、制御回路13は、アイドリングストップ後のエンジン再始動時において、バイパススイッチ15を常時オフさせる制御信号S2を出力するとともに、昇圧用スイッチング素子6を繰り返しオン、オフさせる制御信号S1を出力する。これにより、バイパススイッチ15を介したバッテリ2と負荷3との電気的なつながりがなくなり、かつ、昇圧回路4がバッテリ2の電圧に対して昇圧動作を行うため、バッテリ2の電圧が昇圧されて負荷3へ出力される。すなわち、アイドリングストップ後のエンジン再始動時においてスタータモータの駆動によりバッテリ2の電圧が一時的に低下しても負荷3への必要な電圧の供給を維持することができる。なお、このときの制御回路13の動作制御を、以下、「昇圧モード」という。
【0024】
また、制御回路13は、「バイパスモード」において、一定時間(例えば、5〜10[秒])毎に、電流検出回路14により検出される電流に基づいて、バイパススイッチ15に流れるバイパス電流を検出する。なお、このときの制御回路13の動作制御を、以下、「バイパス電流検出モード」という。
【0025】
また、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」で検出したバイパス電流が閾値以上であるか否かを判断し、バイパス電流が閾値以上であると判断した場合、アイドルストップ後のエンジン再始動を禁止させる旨の指示を、上位制御回路17に通知する。そして、上位制御回路17は、アイドリングストップ後のエンジン再始動を禁止させる旨の指示が通知されると、その指示を、エンジンの動作を制御するエンジン制御回路18に通知する。エンジン制御回路18は、アイドルストップ後のエンジン再始動の動作を禁止させる旨の指示が通知されると、アイドルストップ後のエンジン再始動の動作を禁止する。
【0026】
図2は、制御回路13の動作例を示すフローチャートである。なお、初期状態(例えば、エンジン始動前の駐車時)において、バイパススイッチ15は常時オンし、昇圧用スイッチング素子6は常時オフしているものとする。また、制御回路13は、アイドリングストップ後のエンジン再始動を行う旨の指示が上位制御回路17から制御回路13へ通知されると、
図2に示すS28とS29の動作ステップの間に割り込んで、所定時間経過するまで「昇圧モード」を行うものとする。そして、制御回路13は、「昇圧モード」が終了すると、S22の動作ステップに戻る。また、ユーザ(例えば、運転者など)によりイグニッションスイッチが操作されてイグニッション信号(IG)がローレベルからハイレベルになると、アイドルストップ車のエンジンを始動するためのスタータモータが駆動を開始するものとする。また、上記所定時間は、例えば、スタータモータが駆動することによってバッテリ2の電圧が低下している時間に等しい又はほぼ等しいものとする。また、制御回路13は、イグニッション信号がハイレベルからローレベルになった旨が上位制御回路17から通知されると、バイパススイッチ15及び昇圧用スイッチング素子6をそれぞれ初期状態に戻す。
【0027】
まず、制御回路13は、イグニッション信号がローレベルからハイレベルになった旨が上位制御回路17から通知されると(S21がYes)、「バイパスモード」を開始する(S22)。なお、制御回路13は、イグニッション信号がローレベルからハイレベルになると、制御回路用電源12から供給される電力により起動し「バイパスモード」を開始してもよい。
【0028】
次に、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」を行う(S23〜S27)。
すなわち、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」における
図3に示すタイミングt1になると、バイパススイッチ15を常時オンから常時オフに切り替える。すると、バッテリ2からバイパス回路5を介して負荷3へ流れていた電流がバッテリ2から昇圧回路4を介して負荷3へ流れる。そのため、
図3に示すように、タイミングt1〜t2の期間では、昇圧回路4の出力電圧Vout(実線)がコイル7や整流用ダイオード8などにより降下する。
【0029】
次に、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」における
図3に示すタイミングt2になると、昇圧回路4の昇圧動作を開始させる。すなわち、制御回路13は、タイミングt2〜t3の期間(例えば、数〜数十m秒)において、昇圧回路4の出力電圧Voutがタイミングt2になる前または直前の昇圧回路4の入力電圧Vinになるように、昇圧用スイッチング素子6をオン、オフさせる。なお、タイミングt2になる前または直前の昇圧回路4の入力電圧Vinは、制御回路13の内部または外部に設けられる不図示の記憶部に記憶されてもよい。そして、制御回路13は、タイミングt2〜t3の期間において、電流検出回路14により検出される電流をバイパス電流(バイパススイッチ15がオフする前または直前に、バッテリ2からバイパススイッチ15を介して負荷3へ流れていたバイパス電流)として検出する。なお、本実施形態では、「バイパス電流検出モード」において昇圧回路4の入力電圧Vinを昇圧する構成であるが、そのときに昇圧される電圧はコイル7や整流用ダイオード8などにより降下する電圧分のみである。すなわち、「バイパス電流検出モード」時の昇圧用スイッチング素子6の駆動信号のデューティは、「昇圧モード」時の昇圧用スイッチング素子6の駆動信号のデューティに比べて小さいため、負荷3へ供給される電力が増大しているときに「バイパス電流検出モード」において昇圧回路4の入力電圧Vinを昇圧しても、昇圧回路4の出力に大きな電流が流れない。
【0030】
その後、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」における
図3に示すタイミングt3になると、昇圧用スイッチング素子6を常時オフさせ、「バイパス電流検出モード」における
図3に示すタイミングt4になると、バイパススイッチ15を常時オンさせる。
【0031】
次に、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」で検出したバイパス電流が閾値以上であるか否かを判断する(S28)。
バイパス電流が閾値よりも小さい場合(S28がNo)、制御回路13は、所定時間(例えば、5〜10[秒])が経過すると(S29がYes)、再度、「バイパス電流検出モード」を行う(S23〜S27)。
【0032】
一方、バイパス電流が閾値以上である場合(S28がYes)、制御回路13は、アイドリングストップ後のエンジン再始動を禁止させる旨の指示を上位制御回路17に通知する(S30)。そして、上位制御回路17は、アイドリングストップ後のエンジン再始動を禁止させる旨の指示が通知されると、その指示を、エンジンの動作を制御するエンジン制御回路18に通知する。エンジン制御回路18は、アイドルストップ後のエンジン再始動の動作を禁止させる旨の指示が通知されると、アイドルストップ後のエンジン再始動の動作を禁止する。
【0033】
これにより、負荷3へ供給される電力が増大して昇圧回路4の出力に閾値以上の大きなバイパス電流が流れている場合には、アイドルストップ後のエンジン再始動時に昇圧回路4が動作せず、昇圧回路4が過電流保護機能などにより停止することがないので、昇圧動作時に昇圧回路4に過電流が流れることを回避することができる。そのため、供給電圧が規定範囲から外れないようにすることが望まれる電子機器、例えば、走る、曲がる、止まるといった車両の基本性能に関係する電子機器を負荷3とすることができる。
【0034】
また、本実施形態の電源回路1は、電流検出回路14を抵抗などの安価な部品で構成することができるため、コストの増大を抑えることができる。また、電流検出回路14を、「昇圧モード」時に昇圧回路4に流れる電流を検出するための電流検出回路と共用する場合、新たに電流検出回路14を用意する必要がないため、さらにコストの増大を抑えることができる。
【0035】
また、
図1に示す電源回路1では、バイパススイッチ15がMOSFETにより構成されているが、例えば、
図4に示す電源回路1のように、バイパススイッチ15を機械式リレー(電磁リレー)により構成してもよい。
【0036】
また、制御回路13は、「バイパス電流検出モード」で検出したバイパス電流を直接上位制御回路17に送るようにしてもよい。この場合、上位制御回路17は、制御回路13から送られてきたバイパス電流が閾値以上のとき、アイドリングストップ後のエンジン再始動を禁止させる旨の指示を、エンジン制御回路18に通知する。