(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生成部で生成した台形波から所定の範囲の周波数成分を抽出して、前記生成波調整部の入力とする帯域調整部を備えることを特徴とする請求項2に記載の高調波生成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように基本波を乗算することで整数次周波数の倍音を有する波形を生成する場合において、偶数次または奇数次周波数の生成を行う際、生成される倍音は基本波の振幅の大きさに依存するので、偶数倍音と奇数倍音の強さをそれぞれ検出し、調整しなければならない。
【0008】
乗算によって、基本波よりも大きい信号を生成し、奇数次周波数を多く含む歪んだ音となって聴感上よくない信号を生成してしまうことがある。従来技術ではこういったことが起こらないように、ゲインを調整する装置を用いて防いだりする。
【0009】
乗算器削減のためにフィードバックと乗算器の組合せを用いる装置では、急激な振幅の変化の対応が難しく、振幅の大きい入力の基本信号に対しては発振を起こしてしまう。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、基本信号の振幅に依存せず、簡単に偶数倍音および奇数倍音を多く含む信号を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係る高調波生成装置は、
入力信号を全波整流する整流部と、
前記入力信号の傾きの符号を生成する微分部と、
前記入力信号の傾きが正の時点では、その時点における前記全波整流の値をとり、前記入力信号の傾きが負の時点では、その直前の前記入力信号の極大値とその直後の前記入力信号の極小値を正に反転させた値とを結ぶ直線の値をとる、台形波を生成する生成部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記生成部で生成した台形波の直流分を除去し、前記入力信号との位相差を調整する生成波調整部と、
前記生成波調整部で前記台形波を調整した信号と前記入力信号を加算する調整加算部と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
好ましくはさらに、前記生成部で生成した台形波から所定の範囲の周波数成分を抽出して、前記生成波調整部の入力とする帯域調整部を備えることを特徴とする。
【0014】
前記生成部で生成した台形波に、前記全波整流した信号を加算する整流加算部を備えてもよい。
【0015】
好ましくは、波動信号の基本波成分の信号を抽出する低域フィルタを備え、
前記低域フィルタで抽出した基本波成分の信号を前記整流部、前記微分部および前記生成部の入力信号とする、
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の観点に係る高調波生成方法は、
入力信号を全波整流する整流ステップと、
前記入力信号の傾きの符号を生成する微分ステップと、
前記入力信号の微分が正の時点では、その時点における前記全波整流の値をとり、前記入力信号の微分が負の時点では、その直前の前記入力信号の極大値とその直後の前記入力信号の極小値を正に反転させた値とを結ぶ直線の値をとる、台形波を生成する生成ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記生成ステップで生成した台形波の直流分を除去し、前記入力信号との位相差を調整する生成波調整ステップと、
前記生成波調整ステップで前記台形波を調整した信号と前記入力信号を加算する調整加算ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0018】
好ましくはさらに、前記生成ステップで生成した台形波から所定の範囲の周波数成分を抽出する帯域調整ステップを備え、
前記生成波調整ステップでは、前記帯域調整ステップで抽出した周波数成分の波形を入力とすることを特徴とする。
【0019】
前記生成ステップで生成した台形波に、前記全波整流した信号を加算する整流加算ステップを備えてもよい。
【0020】
好ましくは、波動信号の基本波成分の信号を抽出する低域濾波ステップを備え、
前記整流ステップ、前記微分ステップおよび前記生成ステップでは、前記低域濾波ステップで抽出した基本波成分の信号を前記入力信号とする、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基本信号の振幅に依存せず、簡単に偶数倍音および奇数倍音を多く含む信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る高調波生成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1の高調波生成の原理を示す波形図である。
【
図3A】入力信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図3B】実施の形態1の高調波生成装置の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図3C】実施の形態1の増減判定部の出力と入力信号を加算した信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る高調波生成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態2に係る高調波生成装置の異なる構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2に係る高調波生成装置の波形を示す図である。
【
図7A】実施の形態2の入力信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図7B】実施の形態2の生成波の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図7C】実施の形態2の高調波生成装置による周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図8A】実施の形態2の入力信号の周波数スペクトルの異なる例を示す図である。
【
図8B】実施の形態2の生成波の周波数スペクトルの異なる例を示す図である。
【
図8C】実施の形態2の高調波生成装置による周波数スペクトルの異なる例を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態3に係る高調波生成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図10A】実施の形態3の入力信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図10B】実施の形態3の生成波の周波数スペクトルの例を示す図である。
【
図10C】実施の形態3の加算器の出力と入力信号を加算した信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る高調波生成装置の構成例を示すブロック図である。高調波生成装置1は、全波整流部2、微分部3、直流部4および増減判定部5を備える。入力信号は、全波整流部2、微分部3、直流部4それぞれに入力される。全波整流部2は、入力信号を全波整流して、全ての時点で基準電位以上の値の信号を生成する。全波整流部2では、平滑化しない。全波整流部2は、例えばダイオードを用いるブリッジ整流回路で構成することができる。あるいは、低域フィルタを通して、高調波生成装置1が使用する周波数の倍以上の周波数でサンプリングしてA−D(Analogue to Digital)変換し、負の値を符号反転して、全波整流することができる。
【0024】
微分部3は、入力信号を微分して入力信号の傾きの符号を生成する。微分部3は、微分回路を用いることができる。離散的には、高調波生成装置1が使用する周波数の倍以上の周波数でサンプリングして、隣り合う2つの値の差分をとってもよい。ここでは、微分値の絶対値は重要ではなく、微分値の符号(入力信号の傾き)がわかればよい。
【0025】
直流部4は、入力信号のある時点の値をもつ直流信号を生成する。直流部4は、例えばサンプルホールド回路で実現できる。全波整流部2、微分部3および直流部4の出力はいずれも増減判定部5に入力される。
【0026】
増減判定部5(生成部)は、入力信号の傾きが正の時点では、その時点における全波整流の値を出力する。入力信号の傾きが負の時点では、直流部4で生成するその直前の入力信号の極大値をとる、直流信号を出力する。したがって、入力信号が正で傾きが正の区間では、全波整流の値(入力信号と同じ)をとり、入力信号が正で傾きが負の区間および入力信号が負で傾きが負の区間では、その直前の入力信号の極大値の直流になり、入力信号が負で傾きが正の区間では、全波整流の値(入力信号の反転)をとる台形波を生成する。増減判定部5は、例えば、微分の符号判定回路と、全波整流部2または直流部4のいずれかを選択するスイッチから構成される。
【0027】
図2は、実施の形態1の高調波生成の原理を示す波形図である。
図2(a)は、入力信号を表す。
図2(b)は入力信号の全波整流を、
図2(c)は、増減判定部5の出力である台形波を表す。入力信号(
図2(a))の傾きが正(増加)の区間Iでは、全波整流を出力する。区間Iで入力信号が正の範囲では、台形波の立ち上がりが形成され、入力信号が負の範囲では、台形波の立ち下がりが形成される。入力信号の傾きが負(減少)の区間Dでは、その直前の入力信号の極大値の直流が出力される。その結果、
図2(c)のような台形波が生成される。
【0028】
全波整流は、入力信号を折り返しているので、周期は半分になり、基本周波数は入力信号の倍である。全波整流の折り返し点では、微分が不連続であり、基本周波数の倍音(高調波)成分を含む。したがって、全波整流の信号には、入力信号の偶数次の倍音(偶数倍音)が含まれる。
【0029】
台形波は、フーリエ級数に展開すればわかるように、その基本周波数の奇数倍の周波数の成分(高調波)を含む。
図2(c)の台形波の周期は入力信号と同じであるから、入力信号の奇数次の倍音(奇数倍音)を含む。
【0030】
したがって、増減判定部5で生成する台形波は、全波整流を行うことで入力信号の偶数倍音を含み、なおかつ、飽和した信号であるため入力信号の奇数倍音を含む。以上により、入力信号に対してその整数倍の倍音を生成することができる。
【0031】
図2では、入力信号の振幅が変化しない場合を例に記載している。入力信号の振幅が変化する場合は、入力信号の傾きが負の区間で、その直前の入力信号の極大値の直流にすると、その直後の入力信号の正の区間の全波整流の値との間に不連続を生じる。不連続によって、ノイズを生じるので、直流部4では、入力信号の傾きが負の区間で、その直前の入力信号の極大値とその直後の入力信号の極小値を正に反転させた値とを結ぶ直線の値を出力することが望ましい。その場合、入力信号の傾きが負の区間の直後の入力信号の極小値が確定してから、出力する必要があるので、その分、増減判定部5の出力を入力信号から遅延させて処理する。
【0032】
以下に、入力信号から整数倍音(奇数倍音+偶数倍音)を生成する原理を説明する。入力信号の周波数f[Hz]の入力信号を、x[t](tは時間変数)、入力信号の半分の周波数f/2[Hz]の信号をy[t]としたとき、
x[t] = sin(2πf・t) ・・・ (1)
y[t] = sin(πf・t) ・・・ (2)
である。
【0033】
y[t]の絶対値についてフーリエ級数展開すると(|y[t]|は偶関数なので、余弦側の級数のみでよい)、
|y[t]|=|sin(πf・t)|
≒ A(0)+A(2)cos(πf・2t)+A(4)cos(πf・4t)+・・・
+A(2(n-1))cos(πf・2(n−1)t)+A(2n)cos(πf・2nt)
・・・ (3)
A(n)はフーリエ余弦係数である。
【0034】
式(3)を変形すると
|y[t]| ≒ A(0)+A(2)cos(2πf・1t)+A(4)cos(2πf・2t)+
・・・+A(2(n-1))cos(2πf・(n−1)t)+A(2n)cos(2πf・nt)
・・・(4)
となる。式(4)から、入力信号x[t]の周波数が半分である信号y[t]の絶対値をとった信号は、入力信号x[t]の整数倍の信号であることが言える。
【0035】
以上説明した原理では、純粋に入力信号の半分の周波数の信号をとって、絶対値を用いている。しかし、実際にリアルタイム処理で入力信号に対して周波数を半分にして、絶対値をとって倍音生成するという過程は難しいので、ごく簡単に行うために、本実施の形態では、入力信号の半分の周波数の台形波を作り、全波整流を行うことで、整数倍音を多く含む信号を作っている。
【0036】
図3Aは、入力信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
図3Bは、実施の形態1の高調波生成装置による周波数スペクトルの例を示す図である。
図3Aの入力信号の300Hzの基本周波数に対して、
図3Bでは、整数倍の倍音が生成されていることが見て取れる。
【0037】
図1には記載していないが、例えば音声を再生するときには、入力信号に高調波生成装置1(増減判定部5)で生成した倍音を入力信号に加えて出力する。
図3Cは、実施の形態1の増減判定部の出力と入力信号を加算した信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
図3Cの周波数スペクトルは、
図3Aと
図3Bの周波数スペクトルを加え合わせたものになっている。入力信号(
図3A)に対して、倍音成分が増加している。増減判定部の出力のゲインを変えることによって、入力信号に対する倍音成分の大きさを調整できる。
【0038】
実施の形態1の高調波生成装置1によれば、入力信号の振幅情報を元に倍音を生成しているので、入力信号の増減に伴うゲイン調整を行う必要がない。また、偶数倍音および奇数倍音のバランスを調整するためのゲイン調整も必要としない。その結果、基本信号の振幅に依存せず、簡単に偶数倍音および奇数倍音を多く含む信号を生成することができる。そして、複数の乗算器を用いることなく、高次倍音の生成ができる。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態2では、倍音を生成したい低域周波数信号抽出のためのLPF(低域フィルタ)が追加される。また、倍音全体の周波数帯域とゲインを調整し、倍音の直流成分を除去する。そして、入力信号に対して、倍音生成のために高調波生成装置1にかかる遅延と同等の時間を遅延させて、倍音に加算する。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態2に係る高調波生成装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態2の高調波生成装置1は、実施の形態1の構成に加えて、基本波抽出LPF(Low Pass Filter:低域フィルタ)6、倍音調整部7、微分器8、加算器9および入力遅延器10を備える。
【0041】
まず、入力信号(波動信号W)から基本波を抽出するため、基本波抽出LPF6(低域フィルタ)を通したのち、実施の形態1で説明した高調波生成装置1と原理的に同じ回路で倍音を生成する。
【0042】
基本波抽出LPF6で抽出された低域周波数信号Lは、全波整流部2と増減を調べるための微分部3に通される。微分部3は、遅延器31と差分器32から構成される。遅延器31で1クロック遅れた信号が、差分器32で現在の値から差し引かれて、その時点の入力信号の傾きがわかる。
【0043】
増減判定部5で、微分部3の出力の値が正ならば、低域周波数信号Lは増加とみなされ、全波整流した信号を出力する。微分部3の出力の値が負ならば、低域周波数信号Lは減少とみなされ、増減判定部5は、その直前の全波整流の値を出力する。このときの値は入力信号(低域周波数信号L)の極大値である。
【0044】
直流部4は、遅延器41から構成され、増減判定部5の出力を遅延して出力する。増減判定部5が直流部4を選択すると、その直前の値が保持される。微分値が正から負に変化したところで、増減判定部5は、出力を全波整流部2から直流部4に切り替えるので、直前の値、すなわち入力信号(低域周波数信号L)の極大値が保持される。
【0045】
実施の形態1で述べたように、直流部4は、入力信号の傾きが負の区間で、その直前の入力信号の極大値とその直後の入力信号の極小値を正に反転させた値とを結ぶ直線の値を出力することが望ましい。ここでは、入力信号の振幅の変化が無視できるものと仮定して、簡易な構成を記載している。
【0046】
倍音調整部7(帯域調整部)は、増幅器71および調整LPF72から構成される。倍音調整部7は、増減判定部5から出力される台形波を入力して、倍音全体の周波数帯域および倍音のゲインを調整する。調整LPF72は、例えば、所定の周波数以上の高域の倍音成分を除去する。
【0047】
微分器8(生成波調整部)は、入力信号との位相調整および倍音の直流成分除去のため、倍音調整された倍音信号を微分する。微分器8は、例えば遅延器81と差分器82から構成される。あるいは、微分器8に代えて、直流除去用にHPF(High Pass Filter:高域フィルタ)と、位相調整のための位相反転器を設けてもよい。さらに、直流除去用のHPFと調整LPF72を合わせて、BPF(Band Pass Filter:帯域フィルタ)を用いることもできる。
【0048】
図5は、実施の形態2に係る高調波生成装置の異なる構成例を示すブロック図である。
図5の高調波生成装置1は、
図4の調整LPF72および微分器8に代えて、調整BPF73および位相反転器83を備える。
【0049】
一方、
図4および
図5の入力遅延器10は、高調波生成(倍音の生成)にかかる遅延と同等の時間だけ、入力信号を遅延させる。そして
図4および
図5のいずれも最後に、加算器9(調整加算部)は、遅延させた入力信号と生成した倍音を足し合わせる。
【0050】
図6は、実施の形態2に係る高調波生成装置の波形を示す図である。
図6(a)は、増減判定部5で生成する台形波の波形を示す。
図6(a)は、
図2(c)と同じである。
図6(b)は、台形波を微分した波形を示す。
図6(c)は、入力信号(低域周波数信号L)に台形波を微分した信号を足し合わせた波形を実線で示す。
図6(c)の破線は、入力信号(低域周波数信号L)を示す。
【0051】
増減判定部5から出力される台形波(
図6(a))は、直流成分を含み、入力信号に対して位相が90°変化する。そこで、台形波を微分することによって、直流成分を除去し、位相を調整する。台形波を微分すると、台形波の立ち上がりで正の値、台形の上底で0、そして、立ち下がりで負の値の波形になる(
図6(b))。この微分した波形を、入力信号に対する台形波の位相で、入力信号に加えると、鋸波が生成される(
図6(c))。鋸波は、基本周波数の整数倍の高調波を重ねた波であり、入力信号の整数倍の倍音(高調波)を含んでいる。
【0052】
図7Aは、実施の形態2の入力信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
図7Bは、実施の形態2の生成波の周波数スペクトルの例を示す図である。
図7Cは、実施の形態2の高調波生成装置による周波数スペクトルの例を示す図である。
図7Bに示すように、入力信号のピーク300Hzの基本周波数に対して、整数倍の倍音が生成されていることが見て取れる。この例では、
図3の周波数スペクトルに比べて、含まれる倍音の帯域が制限されている。
図7Cは、
図7Aの入力信号と
図7Bの生成波を足し合わせた出力を示す。
【0053】
図8Aは、実施の形態2の入力信号の周波数スペクトルの異なる例を示す図である。
図8Bは、実施の形態2の生成波の周波数スペクトルの異なる例を示す図である。
図8Cは、実施の形態2の高調波生成装置による周波数スペクトルの異なる例を示す図である。
図8B、
図8Cは、
図5の高調波生成装置1に、
図8Aの入力信号を入力した場合の周波数スペクトルを示す。
【0054】
図8Bに示すように、
図7Bと同様に、入力信号のピーク300Hzの基本周波数に対して、整数倍の倍音が生成されていることが見て取れる。この例でも、
図3の周波数スペクトルに比べて、含まれる倍音の帯域が制限されている。
図8Cは、
図8Aの入力信号と
図8Bの生成波を足し合わせた出力を示す。
【0055】
実施の形態2の高調波生成装置1によれば、倍音の周波数帯域を調整することができる。また、入力信号に対する倍音の成分比を調整することができる。なお、入力信号(波動信号W)の高周波数成分が基本周波数の成分に比べて小さければ、基本波抽出LPF6を省略してもよい。すなわち、実施の形態1の構成に倍音調整部7、微分器8、加算器9および入力遅延器10を加えた構成でもよい。
【0056】
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3に係る高調波生成装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態3では、増減判定部5で生成される台形波に、全波整流した信号を加算する。
【0057】
実施の形態3の高調波生成装置1は、実施の形態1の構成に加えて、全波増幅器12と加算器13を備える。また、入力段に増幅器11を備える。入力段の増幅器11は、入力信号のゲインを調整する。全波増幅器12は、全波整流した信号のゲインを調整する。加算器13(整流加算部)は、増減判定部5で生成された台形波と全波整流した信号を加算する。
【0058】
一般に奇数倍音は、金属音のようないわゆる“歪み”に感じられる。それに対して、偶数倍音を多く含む音は、聴感上“やわらかい”、“温かみのある”音として好まれる傾向にある。入力信号を全波整流した信号は偶数倍音を多く含むので、加算器13の出力は、実施の形態1に比べて、偶数倍音成分を多く含む。
【0059】
図10Aは、実施の形態3の入力信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
図10Bは、実施の形態3の生成波の周波数スペクトルの例を示す図である。
図10Bは、加算器13の出力の周波数スペクトルを示す。
図10Bの周波数スペクトルは、
図3Bに比べて、偶数倍音の成分が大きくなっている。偶数倍音と奇数倍音の比は、全波増幅器12のゲインを調整することによって、変えることができる。
【0060】
図9には記載していないが、例えば音声を再生するときには、入力信号に高調波生成装置1で生成した倍音(加算器13の出力)を入力信号に加えて出力する。
図10Cは、実施の形態3の加算器の出力と入力信号を加算した信号の周波数スペクトルの例を示す図である。
図10Cの周波数スペクトルは、
図10Aと
図10Bの周波数スペクトルを加え合わせたものになっている。
図10Cでは、
図10Bに比べて、基本周波数の成分および倍音成分以外が増加している。
図10Cの周波数スペクトルは、入力信号(
図10A)に対して倍音成分が増加しているが、
図3Cの周波数スペクトルに比べて、偶数倍音の成分が増加していることが見て取れる。増幅器11および全波増幅器12のゲインを変えることによって、入力信号に対する倍音成分の大きさを調整できる。
【0061】
実施の形態3の高調波生成装置によれば、
図9のように増減判定器の後に全波整流信号を付加するだけで偶数倍音を多く含む整数倍音を生成することができる。なお、実施の形態2に実施の形態3を組み合わせることもできる。例えば、
図4または
図5の増減判定部5と倍音調整部7の間に、加算器13を追加して、台形波に全波整流信号を加算することによって、偶数倍音を多く含むようにすることができる。