特許第5929540号(P5929540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929540
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20160526BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H01G4/06 102
   H01G4/12 394
   H01G4/12 397
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-137604(P2012-137604)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-3167(P2014-3167A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下藤 奏子
(72)【発明者】
【氏名】野村 雅信
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−210642(JP,A)
【文献】 特開2002−090422(JP,A)
【文献】 特開平02−125409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/33
H01G 4/12
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 21/822
H01L 23/12
H01L 23/522
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素体と、
前記電子部品素体の表面上に設けられた複数の実装用電極と、
前記電子部品素体の表面上に設けられ、前記複数の実装用電極の少なくとも1つと電気的に接続された測定用電極とを備え、
前記電子部品素体は、キャパシタを有した薄膜デバイスであり、
前記実装用電極と前記測定用電極との間から引き出された、前記キャパシタに接続するための引き出し電極が設けられており、
前記複数の実装用電極および前記測定用電極は、同一材料で連続的に形成された前記引き出し電極の、同一高さの有機保護膜の上に形成された部分の上に、それぞれ形成されていて、
前記測定用電極の表面には、前記実装用電極の表面よりも硬い上層部が設けられている、電子部品。
【請求項2】
前記実装用電極は少なくとも1層以上の層構造であり、
前記測定用電極は、前記実装用電極と同一の層構造からなる下層部と、当該下層部上に形成され前記実装用電極の表面より硬い上層部とからなる請求項1に記載された電子部品。
【請求項3】
前記実装用電極の表面がAuからなり、前記測定用電極の表面がTiまたはTiの自然酸化膜からなる請求項1または2に記載された電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用電極を備えた電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1(特許第4674606号)に開示されるような、実装用電極を備えた電子部品が使用されている。
【0003】
図4に、従来の実装用電極を備えた電子部品の一例を示す。
【0004】
図4に示す電子部品200は、熱酸化膜102を表面に有する基板101上に、密着層103を介して電子部品素体110が形成されている。
【0005】
電子部品素体110は、複数の内部電極層104と誘電体層105とが交互に積層されてなるキャパシタ部106と、キャパシタ部106を覆う無機保護膜107および有機保護膜108と、キャパシタ部106の内部電極層104に接続された引き出し電極109を備えてなる。
【0006】
電子部品素体110の引き出し電極109上には、実装用電極113が形成されている。実装用電極113は、Niからなる第1の電極層111と、Auからなる第2の電極層112とが積層されたものからなる。
【0007】
電子部品素体110上には有機保護膜117が形成されている。
【0008】
かかる構造からなる電子部品200を製品として出荷する前に、良品と不良品の選別が行われる。電子部品200の選別は一般的に、プローブを実装用電極113の表面に当てて電気容量等の特性を測定することにより実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4674606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の電子部品200には、実装用電極113の表面が柔らかいAuからなる第2の電極層112であるため、プローブを当てた際に実装用電極113の表面が剥離しやすいという問題があった。そして、剥離したAuの断片がプローブの先端に付着することで、プローブと実装用電極113の電気的接触が悪化し、測定不良が発生してしまう場合があるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、測定不良が発生しにくい電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の電子部品は、電子部品素体と、電子部品素体の表面上に設けられた複数の実装用電極と、電子部品素体の表面上に設けられ、複数の実装用電極の少なくとも1つと電気的に接続された測定用電極とを備え、測定用電極の表面が実装用電極の表面より硬いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子部品は、実装用電極よりも表面が硬い、プローブを当てて選別するための測定用電極を備えており、プローブと測定用電極の電気的接触の悪化に伴う測定不良が発生しにくくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる電子部品100の平面図である。
図2図2(a)〜(d)はそれぞれ、本発明の実施形態にかかる電子部品100の製造方法において適用した各工程を示す断面図である。
図3図3(e)〜(g)はそれぞれ、図2(a)〜(d)の続きであり、本発明の実施形態にかかる電子部品100の製造方法において適用した各工程を示す断面図である。なお、図3(g)は、電子部品100の完成図でもある。
図4図4は、従来の電子部品200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、図面とともに、本発明を実施するための形態の一例について説明する。
【0016】
図1に、本発明の実施形態にかかる電子部品100の平面図を示す。また、図3(g)に、図1の電子部品100におけるA−A線での断面図を示す。
【0017】
電子部品100は、SiO2からなるSi熱酸化膜2を表面に有するSiの基板1を備えている。
【0018】
基板1上に、Ba0.7Sr0.3TiO3(BST)からなる密着層3を介して、電子部品素体10が形成されている。電子部品素体10は、Ptからなる複数の内部電極層4およびBSTからなる複数の誘電体層5が交互に積層されてなるキャパシタ部6を有している。キャパシタ部6上には、酸化シリコン(SiOx)からなる無機保護膜7、および、ポリイミド樹脂からなる有機保護膜8が形成されている。キャパシタ部6の内部電極層5上には、Ti薄膜、Cu薄膜、Ti薄膜の順番に積層されてなる引き出し電極9が形成されている。ただし、図3(g)においては、各薄膜を区別して示してはいない。
【0019】
電子部品素体10の引き出し電極9上には、実装用電極13と測定用電極16とが形成されている。実装用電極13は、Niからなる第1の電極層11と、Auからなる第2の電極層12とが積層された構造からなる。測定用電極16は、実装用電極13と同様にNiからなる第1の電極層とAuからなる第2の電極層が積層されてなる下層部14と、Auからなる第2の電極層12より硬いTiからなる上層部15とが積層された構造からなる。なお、Tiの表面は空気中で酸化されやすいため、表面がTiの自然酸化膜となっていることがある。このほか上層部15の材料として、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Pd、Pt、Ta、W、Zn等が挙げられる。その中で特にCr、Cu、Pt、Znが望ましい。
【0020】
実装用電極13と測定用電極16の表面を除いて、電子部品素体10を覆うように、有機保護膜17が形成されている。
【0021】
以上に示した構成からなる電子部品100の選別は、従来のように実装用電極13の表面にプローブを当てて特性を測定するのではなく、測定用電極16の表面にプローブを当てて特性を測定することにより実施する。
【0022】
本発明の電子部品100においては、測定用電極16の表面(上層部15)がTiまたはTiの自然酸化膜からなっている。TiまたはTiの自然酸化膜からなる測定用電極16の表面は、Auからなる実装用電極13の表面(第2の電極層12)よりも硬いため、この測定用電極16の表面はプローブを当てた際に剥離することがほとんどない。そのため、プローブと測定用電極16の電気的接触の悪化に伴う測定不良が発生しにくくなっている。
【0023】
以上の構成からなる本発明の実施形態にかかる電子部品100は例えば、次の方法により製造することができる。
【0024】
図2(a)〜図3(g)は、本発明の実施形態にかかる電子部品100の製造方法において適応する各工程の断面図を示している。
【0025】
まず、図2(a)に示すように、SiO2からなるSi熱酸化膜2が表面に形成されたSiの基板1上に、化学溶液堆積(CSD:Chemical Solution Deposition)法により、膜厚50nmのBSTからなる密着層3を形成する。具体的には、BSTの原料溶液を熱酸化膜2上に塗布し、350℃のホットプレート上で乾燥させ、630℃、10分間の熱処理により結晶化させて、密着層3を得る。
【0026】
次に、密着層3上に、高周波マグネトロンスパッタ法により膜厚200nmのPtからなる内部電極層4を形成する。
【0027】
次に、内部電極層4上に、上述した密着層3の形成工程と同様のCSD法により、膜厚90nmのBSTからなる誘電体層5を形成する。
【0028】
次に、誘電体層5上に、高周波マグネトロンスパッタ法により、膜厚200nmのPtからなる内部電極層4を形成する。
【0029】
上記した方法と同様のCSD法および高周波マグネトロンスパッタ法を交互に繰り返すことにより、合計4層の内部電極層4および、合計3層の誘電体層3を作成する。
【0030】
次に、最上面の内部電極層4上にフォトリソグラフィ法によってレジストマスク(図示せず)を形成した後、Arを用いたイオンミリング法により内部電極層4と誘電体層5をエッチングすることで、図2(b)に示すようにキャパシタ部6を形成する。その後、内部電極層4上からレジストマスクを取り除く。
【0031】
次に、キャパシタ部6を含む全体をピーク温度860℃で30分間熱処理をする。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、プラズマ化学蒸着(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により、キャパシタ部6の上面および側面を覆うように、膜厚700nmの酸化シリコンからなる無機保護膜7を形成する。
【0033】
次に、無機保護膜7上に、膜厚6μmのポリイミド樹脂からなる有機保護膜8を形成する。具体的には、無機保護膜7上に感光性のポリイミド樹脂をスピンコートで塗布し、120℃で5分間加熱し、露光、現像工程を経て320℃で30分加熱を行い、パターニングされた有機保護膜8を得る。
【0034】
次に、図2(d)に示すように、有機保護膜8をマスクとして、CHF3ガスを用いて無機保護膜7をドライエッチングし、内部電極層4の一部を露出させる。
【0035】
次に、図3(e)に示すように、内部電極層4に接続された引き出し電極9を形成する。具体的には、高周波マグネトロンスパッタ法により、膜厚100nmのTi、膜厚1000nmのCu、膜厚100nmのTiを順次成膜することにより、引き出し電極9を形成する。
【0036】
次に、引き出し電極9上の一部に、フォトリソグラフィ法によってレジストマスク(図示せず)を形成する。その後、表面がレジストマスクから露出した引き出し電極9上に、電解めっきによって膜厚4.0μmのNiからなる第1の電極層11および、膜厚0.1μmのAuからなる第2の電極層12を堆積することにより、実装用電極13および測定用電極16の下層部14を形成する。その後、引き出し電極9上からレジストマスクを取り除く。
【0037】
次に、フォトリソグラフィ法によって下層部14の表面のみを露出させたレジストマスク(図示せず)を形成する。その後、図3(f)に示すように、Tiを下層部14上に蒸着することにより上層部15を形成することで測定用電極16を完成させる。その後、レジストマスクを除去する。
【0038】
次に、引き出し電極9上にフォトリソグラフィ法によってレジストマスク(図示せず)を形成し、ウェットエッチング法により引き出し電極9の一部をエッチングした後、レジストマスクを引き出し電極9上から除去する。
【0039】
最後に、図3(g)に示すように、膜厚8μmのエポキシ樹脂からなる有機保護膜17を実装用電極13および測定用電極16の表面が露出するように形成し、電子部品100を完成させる。具体的には、感光性のエポキシ樹脂原料をスピンコートで塗布し、110℃で5分間加熱し、露光、現像工程を経て200℃で1時間硬化を行い、有機保護膜17を形成する。
【0040】
本実施形態にかかる電子部品100の製造方法によれば、図3(e)に示すように、測定用電極16の下層部14は、実装用電極13と同時に形成することができる。そのため、図3(f)に示すように、従来の製造方法に上層部15の形成工程を追加することのみで、測定用電極16を形成することが可能となっている。
【0041】
なお、本発明の実施形態にかかる電子部品100の構造、および製造方法は、上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0042】
例えば、前記実施形態では、実装用電極13は第1の電極層11および第2の電極層12の合計2層からなっているが、合計1層でも合計3層以上でも良い。また、測定用電極16の下層部14は、第1の電極層11および第2の電極層12の計2層の構造に限らず、合計3層以上でも良い。また、測定用電極16は下層部14を有さず、上層部15のみを有していても良い。また、実装用電極12の層構造と測定用電極16の下層部14の層構造が同一でなくても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 基板
2 熱酸化膜
3 密着層
4 内部電極層
5 誘電体層
6 キャパシタ部
7 無機保護膜
8、17 有機保護膜
9 引き出し電極
10 電子部品素体
11 第1の電極層
12 第2の電極層
13 実装用電極
14 下層部
15 上層部
16 測定用電極
100 電子部品
図1
図2
図3
図4