(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
判定対象の集積回路装置に内蔵される複製品判定回路であって,信号が入力される配線対と,前記配線対の間に設けられた強誘電体キャパシタとを有する複製品判定回路を内蔵する前記集積回路装置の複製品判定方法であって,
前記配線対に前記配線対の第1の配線の電位に比べて第2の配線の電位が高い第1の信号を入力して前記強誘電体キャパシタに前記第1の信号に対応する分極状態を形成する分極状態形成工程と,
前記分極形成工程の後,前記配線対に前記第1の信号とは電位が逆である第2の信号を入力し,当該入力後の所定のタイミングでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定を行う判定工程とを有する複製品判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は,本実施の形態における複製品判定回路の構成を示す図である。複製品判定回路は,データAに対応する信号が入力される信号配線と,データBに対応する信号が入力される信号配線の間に,強誘電体キャパシタFCを有し,両信号配線にはフリップフロップFFなどのラッチ回路を有する。ラッチ回路FFには図示しない制御回路により,ラッチ用クロックCLKが供給される。データA,Bの信号入力から所定時間後のラッチ用クロックCLKのエッジに応答して,ラッチ回路FFが信号配線の信号レベルをラッチする。このラッチした信号レベルに対応するラッチデータにより複製品か否かの判定を行う。
【0012】
図1に示した複製品判定回路は,強誘電体キャパシタFCと信号配線との間にそれぞれスイッチSWを有する。そして,
図1(A)に示すように,複製品判定を行う時にスイッチSWを導通(オン)させて強誘電体キャパシタFCを両信号配線間に接続する。また,
図1(B)に示すように,通常動作の時にスイッチSWを非導通(オフ)にして強誘電体キャパシタFCを両信号配線から切り離す。これにより,通常動作時の信号配線の寄生容量の増大を回避している。
【0013】
したがって,複製品判定回路が複製品判定専用回路の場合は,上記のスイッチSWを設ける必要はなく,両信号配線に直接強誘電体キャパシタFCを接続しても良い。
【0014】
強誘電体キャパシタFCは,電極間に電界を印加すると,電界方向に分極し,電界の印加をやめても分極状態を維持する性質を持つ。さらに,分極方向と同じ方向の電圧を印加する場合はキャパシタ容量は小さく見え,分極方向と逆方向の電圧を印加する場合はキャパシタ容量は大きく見える。
【0015】
この強誘電体キャパシタの容量特性は,単にLSIの写真からは取得できないし,同じ特性の強誘電体キャパシタを製造することは写真画像からは不可能である。そこで,本実施の形態の複製品判定回路は,この強誘電体キャパシタの容量特性を利用して,LSIが正規品か複製品かを判別する。
図2によりその原理について説明する。
【0016】
図2は,本実施の形態における複製品判定回路の動作を説明する図である。まず,複製品判定回路の基本的構成として,
図2の左上に,1対の信号配線netA, netBの間に強誘電体キャパシタFCを有する回路が示されている。そして,強誘電体キャパシタFCが有する電極間電圧Vと電荷Qのヒステリシス特性が示されている。このヒステリシス特性は,強誘電体キャパシタFCの強誘電体膜の製造パラメータにより異なる容量特性である。
【0017】
図2中(1)に示されるとおり,信号配線netAにデータ1(Hレベル),netBにデータ0(Lレベル)を入力すると,強誘電体キャパシタFCには下向きの矢印の方向に電界が印加され,分極が発生する。このとき,下向きの電界を負電圧に対応させると,強誘電体キャパシタの分極状態は,ヒステリシス特性曲線上の電界ゼロの点H1またはH3から,負電圧の点H2に遷移する。
【0018】
その後,
図2中(2)に示されるように,両信号配線netA, netBをデータ0(Lレベル)にすると,強誘電体キャパシタには電界がゼロになり,ヒステリシス特性曲線上の点H3に移行し,下向きの分極状態が残る。
【0019】
この
図2中(2)の状態から,(3)のように信号配線netAがデータ1(Hレベル),netBがデータ0(Lレベル)の状態に遷移すると,強誘電体キャパシタに印加される電界方向と分極方向とが一致するので,信号配線netAから強誘電体キャパシタFCへの充電電荷量は少なく,信号配線netAのHレベルの信号はあまり遅延しないで立ち上がる。すなわち,ヒステリシス特性極性上では,点H3から点H2への遷移であり,縦軸に対応する強誘電体キャパシタ内の電荷量の変化は少ない。
【0020】
一方,
図2中(2)の状態から,(4)のように信号配線netAがデータ0(Lレベル),netBがデータ1(Hレベル)の状態に遷移すると,強誘電体キャパシタに印加される電界方向と分極方向とが逆向きになるので,信号配線netAから強誘電体キャパシタFCへの充電電荷量は多く,信号配線netBのHレベルの信号は大きく遅延して立ち上がる。すなわち,ヒステリシス特性極性上では,点H3から点H4への遷移であり,縦軸に対応する強誘電体キャパシタ内の電荷量の変化は多い。
【0021】
このように,
図2中(1)(2)のように1対の信号配線にH,Lレベルの信号を入力して強誘電体キャパシタFCに信号に対応した分極状態を形成した後,(3)のように1対の信号配線に(1)と同じ信号を入力すると,信号の遅延が少なく,入力後の時間t1では信号配線netAはHレベルになる。逆に,(1)(2)の後,(4)のように1対の信号配線に(1)とは逆の信号を入力すると,信号の遅延が多く,入力後の時間t1ではnetBは未だLレベルである。
【0022】
そして,この遅延特性の違いは,強誘電体キャパシタのヒステリシス特性に依存する。そこで,正規品の正しい遅延特性に基づいて1対の信号配線の電圧変化をチェックすれば,正規品と異なる遅延特性を有する複製品を検出することができる。
【0023】
その検出方法は,
図2の(1)(2)後に(4)の状態にしてLレベルが検出され,その後(5)を経て再度(4)の状態(つまり(4)の状態を繰り返して同じ信号を入力)にしてHレベルが検出されることを確認する方法である。 1対の信号配線に逆の信号を入力したときの遅延して立ち上がる信号配線のLレベルを検出し,1対の信号配線に同じ信号を入力したときの遅延せずに立ち上がる信号配線のHレベルを検出する。検出タイミングt1が,正規品の強誘電体キャパシタの特性に対応しているので,正規品とは異なる特性を有する複製品では,上記の正規品に期待する信号配線の電圧レベルとは異なる信号配線の電圧レベルが検出される。例えば,複製品の強誘電体キャパシタの特性が遅延量が少ない場合は,2つの検出レベルがH,Hレベルとなり,逆に遅延量が多い場合は,L,Lレベルとなる。
【0024】
なお,
図2中(1)(2)の後に,信号配線netA, netBに同じ電位のL,LレベルまたはH,Hレベルを印加しても,強誘電体キャパシタFC間の電圧は0Vであるので,分極状態は変化しない。
【0025】
図3は,本実施の形態における複製品判定回路の動作を説明する別の図である。
図3に示した複製品判定回路は,
図1と同様に,1対の信号配線netA, netBの間にスイッチSW,強誘電体キャパシタFC,スイッチSWを直列に設けている。複製品検出を行う認証時は,
図3(1)に示したように,両スイッチSWをオンにして,1対の信号配線netA, netBに信号(netAにデータ1(Hレベル),netBにデータ0(Lレベル))を入力して強誘電体キャパシタFCを下向きの分極状態にする。これが分極作成工程である。その後,
図3(2)に示したように,両スイッチSWをオンのまま,1対の信号配線netA, netBに(1)とは逆の信号を入力して信号配線netBの立ち上がりが遅延することと,逆に(1)と同じ信号を入力して立ち上がりが遅延しないことを検出できるか否かで,正規品と複製品の判別を行う。これが認証工程である。
【0026】
一方,
図3(3)のように,通常動作時は,両スイッチSWをオフにして,信号配線netA, netBに強誘電体キャパシタFCの容量が見えないようにして,信号配線の信号遅延をなくす。
【0027】
図4は,
図1の複製品判定回路による判定動作を説明する図である。信号配線netA, netBの信号については
図4中A,Bと示し,ラッチ回路FFがラッチする信号をAL,BLと示している。
図4には,分極作成工程で信号配線netA, netBにそれぞれデータ1(Hレベル),データ0(Lレベル)を入力し,その後の認証工程での,4種類の信号の組み合わせに対する信号波形と,ラッチ信号AL,BLが示されている。また,ラッチタイミングは,認証工程での信号配線への信号入力時t0から所定時間後の時間t1である。この時間t1は,強誘電体キャパシタの特性に基づく信号配線の遅延時間に対応させていて,分極作成時と同じ信号を入力したときの遅延なしのタイミングと,逆の信号を入力したときの遅延有りのタイミングとの間のタイミングである。これにより,時間t1のタイミングを利用して,遅延ありの場合と遅延なしの場合とを検出することができる。
【0028】
認証工程で両信号配線にLレベルを入力する場合(
図4の1行目)は,強誘電体キャパシタには電界の印加がなく,強誘電体キャパシタへの電荷の充放電はなく,両信号配線A,BはLレベルのままであり,ラッチ信号AL,BLも共にLレベルである。同様に,認証工程で両信号配線にHレベルを入力する場合(
図4の3行目)も,電界の充放電はなく,両信号配線A,Bは遅延することなく立ち上がり,ラッチ信号Al, BLは共にHレベルになる。これらの入力信号の組み合わせは認証工程には使用しない。
【0029】
本実施の形態では,認証工程で分極作成工程と同じ信号Hレベル,Lレベルを両信号配線A,Bに入力する場合(
図4の2行目)は,強誘電体キャパシタの分極方向と,信号により印加される電界方向が一致するので,信号配線Aの信号の立ち上がりは遅延することがない。よって,ラッチ信号AL,BLはH,Lレベルになる。
【0030】
逆に,認証工程で分極作成工程と逆の信号Lレベル,Hレベルを両信号配線A,Bに入力する場合(
図4の4行目)は,強誘電体キャパシタの分極方向と,信号により印加される電界方向が逆になるので,信号配線Bの信号の立ち上がりは遅延する。よって,認証工程での信号配線への信号入力時t0から所定時間後の時間t1でのラッチ信号AL,BLはL,Lレベルになる。
【0031】
したがって,複製品検出動作では,上記の
図4の2行目と4行目の認証工程が利用される。
【0032】
以上が,本実施の形態における複製品判定回路の基本的な動作である。以下,具体的な実施について説明する。
【0033】
[第1の実施の形態]
図5,
図6は,第1の実施の形態における複製品判定回路の判定工程を示す図である。
図5と
図6とには同じ工程番号が与えられている。
【0034】
図5に示された複製品判定回路は,
図1に示した信号配線対とその信号配線対間に設けられた強誘電体キャパシタFCと,信号配線の信号をラッチするラッチ回路FFとを有する。強誘電体キャパシタFCと信号配線との間のスイッチは,簡単の為に図示されていない。
【0035】
図5には,2組の信号配線対が,不揮発性メモリのデータ出力端子にA3/A2,A1/A0にそれぞれ接続され,2組の信号配線対には不揮発性メモリの出力データの信号が入力される。そして,不揮発性メモリの出力のタイミングから所定時間後のタイミングで,ラッチ回路FFが信号配線の信号をラッチする。また,2組の信号配線対に認証動作のための信号を入力するために,
図5には示されてない制御回路またはホストコンピュータ(以下制御部と称する)から,不揮発性メモリへのライトとリードとが行われる。ライト動作で書き込んだデータを読み出すことで,書き込んだデータの信号を信号配線対に入力する。以下説明する動作は,正規品のチップに複製品判定回路が設けられていることを前提にする。
【0036】
まず,
図6の工程S1で,予め,制御部が,不揮発性メモリのアドレス#00に例えばデータA[3:0]=1010をライトし,アドレス#01に例えばデータA[3:0]=0110をライトする。
【0037】
次に,工程S2で,制御部が,スイッチSWをオンにして強誘電体キャパシタFCを信号配線対間に接続した状態で,アドレス#00のデータA[3:0]=1010をリードする。この読み出し動作により,データ出力端子A3/A2,A1/A0からそれぞれの信号配線対に,データ1/0,1/0の信号H/L, H/Lが出力(または入力)される。これにより,2つの強誘電体キャパシタFCに下向きの分極状態が生成される。つまり,工程S2は,強誘電体キャパシタの分極状態を生成する工程である。
【0038】
工程S3では,例えば不揮発性メモリとラッチ回路FFがパワーダウン状態にされ,2組の信号配線対の電圧は一旦は0Vになるが,強誘電体キャパシタの分極状態は維持される。
【0039】
工程S4でパワーオンされた後,工程S5では,制御部は,スイッチSWをオンにした状態で,アドレス#01のデータA[3:0]=0110をリードする。このリード動作で,データ出力端子A2,A1の信号が立ち上がる。この読み出し動作では,読み出されるデータA[3:2]=01が,工程S2の分極生成工程のデータA[3:2]=10とは逆の信号になっている。したがって,データ出力端子A2に接続された信号配線では,強誘電体キャパシタFCの分極状態を反転しながら信号が立ち上がるので,信号の立ち上がりが遅延する。その結果,タイミングt1でラッチ回路FFにラッチされる信号はAL[3:0]=0010になり,データ出力端子から出力されるA[3:0]=0110とはA2が異なる。但し,複製品の場合は,強誘電体キャパシタの特性によっては遅延時間が短くなり,タイミングt1で正規品のようにAL[3:0]=0010にはならない可能性がある。
【0040】
次に,工程S6では,制御部は,スイッチSWをオンにした状態で,再度アドレス#01のデータA[3:0]=0110をリードする。このリード動作で,データ出力端子A2,A1の信号が立ち上がる。この読み出し動作では,直前の工程S5の読み出しデータA[3:0]=0110と同じデータが読み出される。したがって,データ出力端子A2に接続された信号配線では,分極反転を伴わないので,信号の立ち上がりは遅延しない。その結果,タイミングt1でラッチ回路FFにラッチされる信号はAL[3:0]=0110になり,データ出力端子から出力されるA[3:0]=0110と同じになる。但し,複製品の場合は,強誘電体キャパシタの特性によっては分極反転を伴わない立ち上がり信号でも遅延時間が長くなり,タイミングt1で正規品のようにAL[3:0]=0110にはならない可能性がある。
【0041】
複製品の場合は,強誘電体キャパシタFCの特性が正規品と同じになる可能性が非常に低いので,工程S5とS6でのリード動作でラッチ回路FFにラッチされるデータAL[3:0]が両方共に正規品の場合と一致することはなく,それにより複製品を判定することができる。
【0042】
最後に,工程S7で,制御部がスイッチSWをオフにして,信号配線から強誘電体キャパシタFCを切り離す。これにより,通常動作時には,信号配線の信号に強誘電体キャパシタによる遅延が生じることはない。
【0043】
上記の
図5の例では,データ出力端子A[3:2]に接続された1組の信号配線対とその強誘電体キャパシタFCとが,複製品を判定するために利用されている。そして,その1組の信号配線対に対して,工程S2で分極状態生成を行い,工程S5で分極状態を反転する信号の立ち上がり特性を判定し,同時に工程S5で分極状態生成を行い,工程S6で分極状態を反転しない信号の立ち上がり特性を判定し,工程S5,S6での判定結果により,正規品か複製品かの判定を行っている。
【0044】
ただし,データ出力端子A[1:0]についても,工程S5,S6で正常なデータがラッチされることを確認することで,正規品か複製品かの判定をより高い精度で行うことができる。
【0045】
図7は,本実施の形態における複製品判定回路を有するLSIと制御部とを有するシステムの一例を示す図である。複製品判定回路付きLSI9は,不揮発性メモリなどのメモリ1と,所定の機能を有する論理回路2と,メモリ1のデータ出力端子A[N:0]に接続された複製品判定回路3とを有する。論理回路2は,メモリ1にデータを蓄積して所定の機能動作を行う。したがって,論理回路2は,メモリ1と,ライトデータバスI[N:0]と,アドレスバスIA[M:0]と,クロック信号線CLKとを介して接続される。また,メモリ1のリードデータバスA[N:0]は,複製品判定回路3を介して,論理回路2に接続される。つまり,メモリ1のリードデータバスA[N:0]が複製品判定回路3に接続され,複製品判定回路3と論理回路2とが,複製品判定回路3内のラッチ回路がラッチしたラッチデータAL[N:0]のバスを介して接続されている。さらに,論理回路2から複製品判定回路3内のスイッチを制御する制御信号Swが出力される。
【0046】
一方,ホストコンピュータ10は,複製品判定回路付きLSI9と,ライトデータバスI[N:0]と,アドレスバス IA[M:0]と,クロック信号線CLKと,ラッチデータバスAL[N:0]とで接続されている。そして,ホストコンピュータ10が,制御部として,
図5,6で説明した工程S1〜S7を行って,ラッチデータAL[N:0]が期待値と一致するか否かに基づいて,LSI9が正規品か複製品かの判定を行う。
【0047】
メモリ1は,LSI9の外部に設けられる外付けのメモリでもよい。ただし,そのメモリのデータ出力端子は,複製品判定回路3の信号配線に接続される。また,複製品判定回路3のラッチデータAL[N:0]のバスが,論理回路2を介さずにホストコンピュータ10に接続されても良い。
【0048】
このように,LSI9が搭載されるシステム内のホストコンピュータ10が,複製品判定回路3に所定のデータ信号を入力し,強誘電体キャパシタの特性に対応したタイミングで立ち上がり信号のラッチ信号に基づいて,LSI9が正規品か複製品かを判別することができる。
【0049】
図8は,複製品判定回路3の構成図である。この例では,リードデータバスA[N:0]のN+1本の信号配線について,(N+1)/2組の信号配線対がそれぞれ,複製品判定回路ユニット4に接続されている。また,クロックCLKとスイッチ制御信号Swとが,それぞれの複製品判定回路ユニット4に入力される。
【0050】
図8には,複製品判定回路ユニット4の回路例が示されている。この回路は,
図1に示した複製品判定回路と同等である。つまり,信号配線対X,Yの間にスイッチSWを介して強誘電体キャパシタFCが設けられ,スイッチSWがその制御信号Swでオン,オフ制御される。また,信号配線対X,Yに入力される信号が,クロックCLKのエッジタイミングでラッチ回路FFにラッチされ,ラッチ信号端子XL,YLにラッチ信号が出力される。
【0051】
このように,複製品判定回路ユニット4の数を増やすことで,それぞれのユニットで正規品か複製品かの判定を行い,判定精度を高めることができる。
【0052】
図9,
図10は,ホストコンピュータ10によるLSI9が正規品か複製品かの判定動作(認証動作)を示す図である。また,
図11は,そのタイミングチャート図である。これらの図に示された工程S1〜S6は,
図5,
図6で示した工程S1〜S6に対応する。また,
図9,
図10,
図11は,LSI9が正規品の場合の例である。
【0053】
図9に示されるとおり,ホストコンピュータ10が複製品判定回路付きLSI9に接続されて,ホストコンピュータ10からLSI9内のメモリまたはLSI9に外付けされているメモリへのライト,リードを制御する。予め,ホストコンピュータ10は,LSI9内の複製品判定回路のスイッチSWをオンにしておく。
【0054】
まず,工程S1a,S1bでは,ホストコンピュータ10は,アドレス#00,#01にデータData[3:0]=1010, 0110を書き込む。前者のデータは強誘電体キャパシタに分極状態を生成するためのデータであり,後者のデータは認証のためのデータである。また,後者のデータは分極状態を生成するためのデータでもある。
【0055】
この2つの書込制御は,例えばホストコンピュータ10でライトキー1,2により行われる。
図9の右側には,ホスト側のアドレスAddressとデータData[3:0]と,LSI9のデバイス内のメモリのアドレスAddressとデータData[3:0]とが示されている。
【0056】
次に,工程S2で,ホストコンピュータ10は,アドレス#00のデータData[3:0]=1010をリードする。これにより,強誘電体キャパシタにはデータに対応した電界方向に分極状態が生成される。
図9の右側には複製品判定回路内の信号配線A[3:0]のA3-A2間,A1-A0間の分極方向が矢印で示されている。
【0057】
そして,工程S3で,ホストコンピュータ10はLSI9をパワーオフにする。しかし,強誘電体キャパシタの分極状態は維持される。
【0058】
図10に移り,工程S4で,ホストコンピュータ10はLSI9をパワーオンする。この状態でも,強誘電体キャパシタの分極状態は変化しない。
【0059】
そして,工程S5で,ホストコンピュータ10は,アドレス#01のデータData[3:0]=0110をリードする。このリード動作により,複製品判定回路内の信号配線A[3:0]にはデータData[3:0]=0110の信号が入力され,特に信号配線A3,A2間には分極生成工程S2とは逆の信号が印加され,信号配線A2では分極状態を反転しながら信号が立ち上がる。そのため,信号の立ち上がりが遅延し,タイミングt1でラッチされるラッチデータAL[3:0]は,リードデータData[3:0]=0110と異なり,AL[3:0]=0010になる。つまり,信号配線A2のラッチデータAL[2]=0が,リードデータData[2]=1と異なる。
【0060】
また,この工程S5のリード動作で,強誘電体キャパシタの分極状態が生成される。つまり,分極方向は,A2からA3方向と,A1からA0方向になる。
【0061】
その後,工程S6で,ホストコンピュータ10は,再びアドレス#01のデータData[3:0]=0110をリードする。このリード動作により,複製品判定回路内の信号配線A[3:0]には再びデータData[3:0]=0110の信号が入力され,分極状態の反転は行われない。そのため,信号の立ち上がりが遅延することはなく,タイミングt1でラッチされるラッチデータAL[3:0]は,リードデータData[3:0]=0110と同じ,AL[3:0]=0110になる。
【0062】
最後に,工程S6aで,ホストコンピュータ10は,工程S5, S6でのラッチデータAL[3:0]に基づいて,LSIが正規品か複製品かの判定(または認証)を行う。
【0063】
以上のように,正規品の場合は,分極反転せずに立ち上がる信号の遅延量と,分極反転しながら立ち上がる信号の遅延量が,ラッチタイミングt1と整合しているので,分極反転する信号が信号配線に入力される場合は,立ち上がり信号の信号配線のラッチデータは,入力データとは異なるが,分極反転しない信号が信号配線に入力される場合は,立ち上がり信号の信号配線のラッチデータは,入力データと同じになる。
【0064】
図12は,複製品の場合の複製品判定回路ユニットの回路図である。
図8に示した複製品判定回路ユニット4の複製品の場合の回路図である。
図8と比較すると明らかなとおり,複製品には,強誘電体キャパシタが形成されていないか,若しくは正規品と同じ特性の強誘電体キャパシタは形成されていない。
【0065】
図13は,ホストコンピュータ10がLSI9が正規品か複製品かの判定動作(認証動作)を示す図である。また,
図14は,そのタイミングチャート図である。これらの図に示された工程S4', S5', S6a'は,
図5,
図6で示した工程S4, S5, S6aに対応する。また,
図13,
図14は,LSI9が複製品の場合の例である。この複製品には,強誘電体キャパシタが形成されていないか,分極反転に必要な電荷量が正規品より小さく,信号の立ち上がりの遅延が小さいものとする。
【0066】
工程S1〜S3は,
図9と同じである。そして,工程S4'で,ホストコンピュータ10は,LSIをパワーオンする。
【0067】
次に,工程S5'で,ホストコンピュータ10は,アドレス#01のデータData[3:0]=0110をリードする。これにより,信号配線A3/A2には,L/Hレベルの信号が入力される。このデータData[3:2]=01は,分極生成工程S2で強誘電体キャパシタに分極状態を生成したデータData[3:2]=10と逆の信号である。しかし,複製品は,強誘電体キャパシタが形成されていないか,分極反転に必要な電荷量が小さいかのいずれかであるので,信号配線A2の信号の立ち上がりの遅延量は小さい。よって,タイミングt1でラッチされるラッチデータAL[3:0]は,AL[3:0]=0110となり,リードデータData[3:0]=0110と同じになる。これにより,ホストコンピュータ10は,LSI9が正規品ではなく複製品であることを判別できる。
【0068】
したがって,工程S6a'の認証動作で,ホストコンピュータ10は,LSI9を複製品と判定し,必要な制御を実行する。例えば,LSI9を使用した所定の機能の動作を停止するなどである。
【0069】
なお,前述したとおり,複製品でも,強誘電体キャパシタの分極反転による信号の立ち上がりの遅延が大きい場合は,ラッチデータがAL[3:0]=0010と正規品と同じになり,複製品と判定できない場合がある。しかし,その場合は,分極反転を伴わない信号の立ち上がりの遅延も遅くなり,次の工程S6でのアドレス#01のリード動作では,タイミングt1でのラッチデータがAL[3:0]=0010と正規品と異なり,複製品と判定できる。
【0070】
逆に,複製品でも,強誘電体キャパシタの分極反転による信号の立ち上がりも,分極反転を伴わない信号の立ち上がりも共に遅延が小さく,工程S5, S6でのラッチデータが共に,AL[3:0]=0110とリードデータと同じになり,
図13のように工程S5'で複製品と判定することができる。
【0071】
このように,強誘電体キャパシタの特性に依存する,分極反転を伴う信号の立ち上がりの大きな遅延と,分極反転を伴わない信号の立ち上がりの小さな遅延との間に,ラッチタイミングt1を設定することで,正規品と同じ特性の強誘電体キャパシタを有していない複製品を検出することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では,分極反転を伴う信号の立ち上がりの遅延が強誘電体キャパシタの特性に依存することを利用して,ラッチタイミングをその立ち上がり遅延の前後に設定して,2回の分極反転を伴う信号を複製品判定回路内の信号配線対に入力し,それぞれ異なるラッチタイミングでラッチする。複製品の場合は,2つの異なるラッチタイミングの間の遅延量にならないので,複製品を検出することができる。
【0073】
図15は,第2の実施の形態における複製品検出動作を示す図である。
図16は,第2の実施の形態における複製品検出動作のフローチャート図である。
図15に示されるとおり,複製品判定回路は,信号配線対A,Bと,その間に設けられたスイッチ,強誘電体キャパシタ,スイッチと,ラッチ回路FFとを有する。ここまでは,
図1と同じである。
【0074】
そして,ラッチ回路FFに供給するクロックCLKとして,早いタイミングのクロックCLK1か,遅いタイミングのクロックCLK2かのいずれかを選択するセレクタSELTを有する。高速クロックCLK1は,例えば通常動作時のクロックで,低速クロックCLK2は,複製品判定(認証)用のクロックである。なお,信号配線対A,Bは,第1の実施の形態と同様に,メモリのデータ出力端子に接続されているものとする。
【0075】
予めスイッチSWをオンにした状態にして,工程S12で,A=Hレベル,B=Lレベルを読み出して,信号配線対A,BにH,Lレベルの信号を入力し,強誘電体キャパシタに分極状態を生成する。次に,工程S13で,クロックCLK1の立ち上がりエッジt0で信号配線対A,BにL,Hレベルの信号を入力し,次の立ち上がりエッジt1でラッチする。信号配線対A,BにL,Hレベルの信号が入力されるので,分極状態を反転しながら信号配線Bの信号が立ち上がる。この立ち上がりは強誘電体キャパシタへの充電電荷量に対応して遅延する。しかし,高速クロックCLK1の立ち上がりエッジt1でラッチするので,信号配線Bの信号が立ち上がる前のLレベルがラッチされ,ラッチデータAL,BLは,L,Lレベルになる。
【0076】
次に,工程S14で,工程S12と同じ動作を行う。つまり,信号配線対A,BにH,Lレベルの信号を入力し,強誘電体キャパシタに分極状態を生成する。そして,工程S15で,低速のクロックCLK2の立ち上がりエッジt0で信号配線対A,BにL,Hレベルの信号を入力し,次の立ち上がりエッジt1でラッチする。この場合も工程S13と同様に,分極状態を反転しながら信号配線Bの信号が立ち上がる。この立ち上がりは強誘電体キャパシタへの充電電荷量に対応して遅延する。しかし,低速クロックCLK2の立ち上がりエッジt1でラッチするので,信号配線Bの信号が立ち上がる後のHレベルがラッチされ,ラッチデータAL,BLは,L,Hレベルになる。
【0077】
工程S16で,工程S13,S15で出力されるラッチデータAL,BL=L,LとL,Hにより,正規品であることが判定される。そして,S17でスイッチSWがオフにされて,通常動作状態に戻る。
【0078】
もし,複製品であれば,分極状態を反転しながら立ち上がる信号の遅延が,高速クロックCLK1の立ち上がりエッジt1と,低速クロックCLK2の立ち上がりエッジt1との間に入らず,いずれかの方向にずれる。よって,ラッチデータにより複製品を検出することができる。
【0079】
図17は,第2の実施の形態における複製品判定回路を有するLSIと制御部とを有するシステムの一例を示す図である。
図7に示した構成と異なるところは,複製品判定回路付きLSI9内に設けられたクロック選択回路11である。クロック選択回路11は,通常動作で使用される高速クロックCLK1と,クロック選択回路11内で生成される認証用の低速クロックCLK2とのいずれかを選択してクロックCLKを出力する。クロック選択回路11は,論理回路2から供給されるセレクタ信号SELにより,いずれかのクロックを選択する。それ以外の構成は,
図7と同様である。
【0080】
図18は,クロック選択回路11の回路図である。
図18には3つの例が示されている。
図18(1)のクロック選択回路は,高速クロックCLK1と,その周波数を1/2に分周するフリップフロップFFとインバータINVからなる分周器と,セレクト信号SELで高速クロックCLK1か,分周された低速クロックCLK2のいずれかを選択してクロックCLKを出力するセレクタSELTとを有する。
【0081】
図18(2)のクロック選択回路は,セレクタSELTと,ディレイゲートDELとを有する。ディレイゲートDELは,高速クロックCLK1を所定時間遅延させて遅延したクロックCLK2を出力する。そして,セレクタSELTが,セレクト信号SELに基づいて,クロックCLK1かCLK2のいずれかを選択してクロックCLKとして出力する。
【0082】
図18(3)のクロック選択回路では,高速クロックCLK1が分岐され,インバータINVにより反転信号が生成され,強誘電体キャパシタFCに信号が印加される。したがって,クロックCLK1の立ち上がりエッジが強誘電体キャパシタFCの分極反転により遅延するクロックCLK2が生成される。そして,セレクタSELTが,セレクト信号SELに基づいて,クロックCLK1かCLK2のいずれかを選択してクロックCLKとして出力する。
【0083】
上記のいずれかのクロック選択回路が
図17のLSI9内に設けられる。
【0084】
図19,
図20は,ホストコンピュータ10によるLSI9が正規品か複製品かの判定動作(認証動作)を示す図である。また,
図21は,そのタイミングチャート図である。これらの図に示された工程S12〜S15は,
図15,
図16で示した工程S12〜S15に対応する。また,
図19,
図20,
図21は,LSI9が正規品の場合の例である。
【0085】
図19に示されるとおり,ホストコンピュータ10が複製品判定回路付きLSI9に接続されて,ホストコンピュータ10からLSI9内のメモリまたはLSI9に外付けされているメモリへのライト,リードを制御する。予め,ホストコンピュータ10は,LSI9内の複製品判定回路のスイッチSWをオンにしておく。
【0086】
まず,工程S11a,S11bでは,ホストコンピュータ10は,アドレス#00,#01にデータData[3:0]=1010, 0110を書き込む。前者のデータは強誘電体キャパシタに分極状態を生成するためのデータであり,後者のデータは認証のためのデータである。
【0087】
次に,工程S12で,ホストコンピュータ10は,アドレス#00のデータData[3:0]=1010をリードする。これにより,強誘電体キャパシタにはデータに対応した電界方向に分極状態が生成される。
図19の右側には複製品判定回路内の信号配線A[3:0]のA3-A2間,A1-A0間の分極方向が矢印で示されている。
【0088】
そして,工程S13で,ホストコンピュータ10は,アドレス#01のデータData[3:0]=0110をリードする。このリード動作により,複製品判定回路内の信号配線A[3:0]にはデータData[3:0]=0110の信号が入力され,特に信号配線A3,A2間には工程S12とは逆の信号が印加され,信号配線A2は分極状態を反転しながら信号が立ち上がる。そのため,信号の立ち上がりが遅延する。
【0089】
工程S13では,高速クロックCLK1がラッチ回路のクロックCLKとして供給され,早いタイミングt1で信号配線の信号がラッチされる。ラッチデータAL[3:0]は,リードデータData[3:0]=0110と異なり,AL[3:0]=0010になる。つまり,信号配線A2のラッチデータAL[2]=0が,リードデータData[2]=1と異なる。
【0090】
図20に移り,工程S14, S15で,上記の工程S12, S13と同じアドレスのデータがリードされる。但し,工程S15でのラッチ用のクロックCLKは,低速または立ち上がりエッジが遅いクロックCLK2が選択される。そのため,信号配線A2の信号の立ち上がりは遅延するが,ラッチ用のクロックCLK=CLK2が,CLK1よりも遅いので,ラッチデータAL[3:0]はAL[3:0]=0110となる。つまり,信号配線A2のラッチデータAL[2]=1となり,リードデータData[2]=1と同じになる。
【0091】
図21に示されるように,工程S13での信号配線へのデータ入力のタイミングt0からラッチタイミングt1までの時間は,工程S15でのタイミングt0からラッチタイミングt1までの時間より短く,工程S13でのタイミングt1は,分極反転を伴う立ち上がり信号の遅延時間より早く,工程S15でのタイミングt1は,遅い。したがって,正規品の場合は,上記のラッチデータを得ることができるが,強誘電体キャパシタの特性が異なる複製品の場合は,上記とは異なるラッチデータを得ることになり,複製品を判別することができる。
【0092】
図22は,ホストコンピュータ10によるLSI9が正規品か複製品かの判定動作(認証動作)を示す図である。また,
図23は,そのタイミングチャート図である。これらの図に示された工程S12',S13'は,
図19,
図20で示した工程S12, S13に対応する。また,
図22,
図23は,LSI9が,分極反転を伴う信号の立ち上がり遅延が小さい複製品の場合の例である。
【0093】
工程S11a',S11b'で,ホストコンピュータ10は,アドレス#00,#01にデータData[3:0]=1010,0110を書き込む。次に,工程S12'で,ホストコンピュータ10は,アドレス#00のデータData[3:0]=1010をメモリから読み出して,複製品判定回路の信号配線対にリードデータの信号を入力する。これにより,信号配線対間に接続されている強誘電体キャパシタの分極状態が形成される。
【0094】
そして,工程S13'で,ホストコンピュータ10は,アドレス#01のデータData[3:0]=0110をメモリから読み出して,複製品判定回路の信号配線対にリードデータの信号を入力する。これにより,分極状態を反転しながら信号配線A[2]の信号が立ち上がる。この信号の立ち上がりは,複製品であるので例えば遅延がなく,ラッチタイミングt1でラッチしたデータは,AL[3:0]=0110となる。つまり,信号配線A[2]のラッチデータAL[2]も1になる。その結果,ホストコンピュータ10は,正規品ではなく複製品であると判定する。
【0095】
[第3の実施の形態]
図24は,第3の実施の形態における複製品判定回路ユニットの回路図である。第1の実施の形態の
図8に対応する回路図である。
図24の複製品判定回路ユニット4は,4本の信号配線A[3:0]が入力され,4つのラッチデータがAL[3:0]が出力される。
【0096】
そして,複製品判定回路ユニット4の具体的な構成は,入力端子W-Zに接続される4本の信号配線間にスイッチSW,強誘電体キャパシタFC,スイッチSWが設けられる。つまり,4組の入力端子対W/X,X/Y,Y/Z,Z/Wの間に,強誘電体キャパシタFCがそれぞれ設けられる。したがって,第1,第2の実施の形態のように,4本の信号配線に対して2つの強誘電体キャパシタFCが設けられる場合に比較すると,第3の実施の形態では,判定ビット数が増えることになり,判定精度を高めることができる。
【0097】
図25は,第3の実施の形態における複製品判定回路による判定動作を示すタイミングチャート図である。
図25には,正規品の場合と,複製品の場合とが示されている。複製品判定回路による判定動作は,以下の通り工程S21-S25を有する。
S21(図示せず):ホストコンピュータが,メモリに分極発生用のデータData[3:0]=1010をアドレス#00に書き込む。
S22(図示せず):ホストコンピュータが,メモリに認証用のデータData[3:0]=1101をアドレス#01に書き込む。
S23:ホストコンピュータが,メモリからアドレス#00のデータData[3:0]=1010を読み出し,複製品判定回路内の信号配線に入力して,4個の強誘電体キャパシタに分極状態を生成する。
S24:ホストコンピュータが,メモリからアドレス#01のデータData[3:0]=1101を読み出し,複製品判定回路内の信号配線に入力する。これによりラッチデータAL[3:0]を取得する。
S25:ホストコンピュータが,メモリから再びアドレス#01のデータData[3:0]=1101を読み出し,複製品判定回路内の信号配線に入力する。これによりラッチデータAL[3:0]を取得する。
そして,工程S24,S25でのラッチデータに基づいて,正規品か複製品かの判定を行う。
【0098】
正規品の場合,工程S23で4つの分極状態が生成され,
図25には太い白矢印で示されている。そして,工程S24で,ホストコンピュータが,メモリからアドレス#01のデータData[3:0]=1101を読み出し,複製品判定回路内の信号配線に入力すると,信号配線A2/A1間と,A1/A0間とに分極状態を反転する信号が入力される。その結果,黒い矢印で示されるように分極反転が行われ,信号配線A2,A0が分極反転を伴う立ち上がり信号になり,遅延特性により,ラッチデータAL[3:0]=1000となり,信号配線A2,A0のラッチデータAL[2], AL[0]が読み出しデータと異なる。さらに,S24の工程により,4つの強誘電体キャパシタの分極状態が読み出しデータData[3:0]=1101に対応した状態にされる。
【0099】
さらに,工程S25で,ホストコンピュータが,メモリから再びアドレス#01のデータData[3:0]=1101を読み出し,複製品判定回路内の信号配線に入力すると,いずれの信号配線間にも分極状態を反転する信号は入力されない。そのため,ラッチデータAL[3:0]=1101となり,リードデータData[3:0]=1101と同じになる。
【0100】
工程S24, S25のラッチデータから,正規品であることが判定される。
【0101】
複製品の場合は,上記の工程S24で分極反転を伴うデータ信号が入力されるが,配線信号間には強誘電体キャパシタが設けられていないか,若しくは分極反転を伴っても信号の立ち上がり特性が遅延することはない。その結果,ラッチデータはAL[3:0]=1101と,リードデータと同じなる。また,工程S25でもラッチデータはAL[3:0]=1101と,リードデータと同じなる。
【0102】
したがって,工程S24, S25のラッチデータから,複製品であると判定される。
【0103】
上記の判定動作で,アドレス#01に書き込む認証用のデータをData[3:0]=0101とすることもできる。その場合は,工程S24では,4つの強誘電体キャパシタに分極反転を生じさせるデータ信号が4つの信号配線に入力される。したがって,ラッチデータはAL[3:0]=0000となり,ラッチデータAL[2], AL[0]がリードデータと異なる。したがって,上記の判定動作と同様に,2ビットによる判定が可能になる。
【0104】
図26は,第1の実施の形態の例に,上記の工程S21-S24を行った場合のタイミングチャート図である。この場合は,ラッチデータAL[0]だけがリードデータと異なり,判定に利用される。ただし,アドレス#00のデータを1010にし,アドレス#01のデータを0101とすれば,ラッチデータAL[2], AL[0]がリードデータと異なり,判定に利用できる。
【0105】
第3の実施の形態における複製品判定回路において,第2の実施の形態の判定動作と同様に,例えばデータ1010をリードして強誘電体キャパシタに分極状態を形成し,その後データ0101をリードして全強誘電体キャパシタを反転しながら立ち上がり信号を高速クロックのエッジでラッチし,再度,最初のデータ1010をリードして分極状態を形成し,その後データ0101をリードして強誘電体キャパシタを反転しながら立ち上がり信号を低速クロックのエッジでラッチするようにしてもよい。但し,この場合は立ち上がり信号は2つの強誘電体キャパシタを反転しながら立ち上がるので遅延量がより大きくなる。
【0106】
[第4の実施の形態]
図27は,第4の実施の形態における複製品判定動作に使用するメモリに書き込まれるデータ例を示す図である。第4の実施の形態では,メモリ内の複数のアドレスにそれぞれランダムなデータを書き込んでおく。
図27の例では,4ビットのアドレス(16アドレス)に対するそれぞれ8ビットのライトデータA[7:0]が示されている。アドレス#0000に分極用のデータが書き込まれ,アドレス#0001-1111に認証用のデータが書き込まれる。
【0107】
そして,メモリの8ビットのデータ出力端子が,複製品判定回路の8本の信号配線に接続され,8本の信号配線の4つの信号配線対に強誘電体キャパシタが設けられているものとする。
【0108】
図28(1)の複製品判定動作では,ホストコンピュータが,次の動作を行う。
S31:
図27に示されたデータをメモリに書き込む。アドレス#0000のデータは10101010と全ての強誘電体キャパシタを分極状態にするデータであるが,それ以外のアドレスのデータはアトランダムである。
S32:メモリからアドレス#0000の分極用データを読み出し,複製品判定回路内の強誘電体キャパシタに分極状態を生成する。
S33:アドレス#0001の認証用データを読み出し,ラッチデータAL[7:0]を取得する。
S34:再度,同じアドレスの認証用データを読み出し,ラッチデータAL[7:0]を取得する。
S35:アドレスを1つインクリメントする。
上記の工程S33,S34,S35をアドレス#1111まで繰り返す。
【0109】
図28は,第4の実施の形態における複製品判定動作を行った場合の各アドレスでの工程S33でのラッチデータALを示す図である。
図28(1)には,上記のアドレス#0000〜#1111に対する動作を行った場合の工程S33でのラッチデータALが示されている。工程S34でのラッチデータAL[7:0]は,分極反転を伴わないので,全て
図27に示されたリードデータA[7:0]と同じになる。
【0110】
図中,分極反転を伴うリードデータが供給された場合に,強誘電体キャパシタによる遅延により,ラッチデータが1ではなく,0になったものを,太枠で囲んでいる。たとえば,アドレス#0000をリードして分極状態を形成した後に,アドレス#0001をリードすると,
図27に示されるとおり,データA[1:0]に対する信号配線対の強誘電体キャパシタは分極反転される。したがって,データA[0]による信号の立ち上がりは遅延する。そのため,ラッチデータAL[0]=0となる。アドレス#0010のリードデータでは強誘電体キャパシタの分極反転はなく,全てのラッチデータALがリードデータAと同じである。そして,アドレス#0011のリードを行うと,リードデータA[5:4], A[3:2], A[1:0]が,直前に強誘電体キャパシタを分極状態にしたデータと反転するデータであるので,分極反転が生じる。その結果,ラッチデータAL[4], A[2], A[1]は,リードデータと異なっている。
【0111】
この判定動作によれば,
図28(1)に太枠で示したリードデータと異なるラッチデータが全て一致した場合に,正規品と判定され,1つでも不一致の場合は複製品と判定される。認証に利用できるビット数が多くなり,判定精度が高くなる。
【0112】
図28(2)の判定動作では,上記の工程S31,S32で書込を行った後,工程S33でアドレス#0001のデータをリードした後,アドレスをインクリメントせずに,#1111にしてデータをリードした例である。アドレス#1111のラッチデータAL[7:0]は,
図28(1)のラッチデータとAL[7]が異なっている。つまり,直前のリードデータによる分極状態が反転されるか否かにより,工程S34でのラッチデータが異なる。
【0113】
このように,多数のアドレスに予めデータを書き込んでおいて,リード動作のアドレスを任意の順番にすることで,ラッチされるデータを異ならせることができる。よって,このリード動作のアドレスの順番も認証鍵の機能を有することになり,ライトデータとリードのアドレス順とにより,複製品を検出する精度を高めることができる。
【0114】
[第5の実施の形態]
図29は,第5の実施の形態における複製品判定回路付きLSIとホストコンピュータとを示す図である。この複製品判定回路付きLSI9は,論理回路2とメモリ1とを有し,ホストコンピュータ10に接続されて,所定の機能を発揮する。そして,このLSI9には,複製品判定回路3が設けられ,ホストコンピュータ10に直接接続されている。すなわち,ホストコンピュータ10は,複製品判定回路3の信号配線対に対してデータA[N:0]を入力し,その入力から所定のタイミングでクロックCLKに応答してラッチされた信号配線対のラッチデータAL[N:0]を複製品判定回路3から取得する。データA[N:0]とクロックCLKを制御することで,第1〜第4の実施の形態と同様の複製品反転(認証)動作を行うことができる。
【0115】
第5の実施の形態の場合に,複製LSIの複製品判定回路3内には,正規品とは異なる特性の強誘電体キャパシタが形成されるか,若しくは強誘電体キャパシタが形成されないので,ホストコンピュータ10が,その複製品判定回路3に対して,前述の実施の形態で説明した判定動作を直接行うことで,正規品か複製品かの判定を行うことができる。
【0116】
以上の通り,本実施の形態によれば,複製品判定回路を判定対象のLSIに内蔵させ,複製品判定回路の各信号配線に,分極形成用のデータ信号と,認証用のデータ信号とを入力し,所定のタイミングでのラッチデータを分析することで,LSIが正規品か複製品かを判別することができる。強誘電体キャパシタまでLSIの写真図面から再現することは容易でないからである。
【0117】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0118】
(付記1)
判定対象の集積回路装置に内蔵される複製品判定回路であって,
信号が入力される配線対と,
前記配線対の間に設けられた強誘電体キャパシタとを有し,
前記配線対に前記配線対の第1の配線の電位に比べて第2の配線の電位が高い第1の信号が入力されて前記強誘電体キャパシタに前記第1の信号に対応する分極状態が形成され,その後,前記配線対に前記第1の信号とは電位が逆である第2の信号が入力され,当該入力後の所定のタイミングでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる複製品判定回路。
【0119】
(付記2)
付記1において,
前記第1の信号による分極状態形成後において,前記第2の信号が入力された後の所定のタイミングでの前記配線対の信号と,さらに,その後再び前記第2の信号が入力された後の前記所定のタイミングでの前記配線対の信号とに基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる複製品判定回路。
【0120】
(付記3)
付記2において,
前記所定のタイミングは,前記強誘電体キャパシタの前記分極状態を反転する前記配線対の信号の切り替り遅延時間より短く,前記分極状態を反転しない前記配線対の信号の切り替り遅延時間より長い複製品判定回路。
【0121】
(付記4)
付記1において,
前記第1の信号による分極状態形成後において,前記第2の信号が入力された後の第1及び第2のタイミングそれぞれでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる複製品判定回路。
【0122】
(付記5)
付記4において,
前記第1のタイミングは,前記強誘電体キャパシタの前記分極状態を反転する前記配線対の信号の切り替り遅延時間より短く,前記第2のタイミングは,前記切り替り遅延時間より長い複製品判定回路。
【0123】
(付記6)
判定対象の集積回路装置に内蔵される複製品判定回路であって,
信号が入力される複数組の配線対と,
前記複数組の配線対の間にそれぞれ設けられた複数の強誘電体キャパシタとを有し,
前記複数組の配線対それぞれに前記配線対の第1の配線の電位に比べて第2の配線の電位が高い第1の信号が入力されて前記複数の強誘電体キャパシタに前記第1の信号に対応する分極状態が形成され,その後,前記複数組の配線対のうち第1の配線対に前記第1の信号とは電位が逆である第2の信号が入力され,第2の配線対に前記第1の信号と電位が同じである第3の信号が入力され,当該入力後の所定のタイミングでの前記第1,第2の配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる複製品判定回路。
【0124】
(付記7)
付記6において,
前記所定のタイミングは,前記強誘電体キャパシタの前記分極状態を反転する前記配線対の信号の切り替り遅延時間より短く,前記分極状態を反転しない前記配線対の信号の切り替り遅延時間より長い複製品判定回路。
【0125】
(付記8)
所定の機能を有する論理回路と,
データ出力端子を有するメモリと,
前記メモリのデータ出力端子に接続されデータ出力信号が入力される配線対と,前記配線対の間に設けられた強誘電体キャパシタとを有する複製品判定回路とを有し,
前記メモリから読み出される第1のデータに対応して第1の配線の電位に比べて第2の配線の電位が高い第1の信号が前記配線対に入力されて前記強誘電体キャパシタに前記第1の信号に対応する分極状態が形成され,その後,前記メモリから読み出される前記第1のデータと逆の第2のデータに対応して前記第1の信号と電位が逆である第2の信号が前記配線対に入力され,当該入力後の所定のタイミングでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる集積回路装置。
【0126】
(付記9)
付記8において,
前記メモリ内の複数のアドレスに少なくとも前記第1のデータを含む第3のデータと,前記第2のデータを含む複数の第4のデータとが書き込まれ,
前記メモリから第3のデータが読み出された後,前記複数の第4のデータを任意のアドレス順に連続して読み出して,前記複数の第4のデータに対応する信号の前記所定のタイミングでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる集積回路装置。
【0127】
(付記10)
判定対象の集積回路装置に内蔵される複製品判定回路であって,信号が入力される配線対と,前記配線対の間に設けられた強誘電体キャパシタとを有する複製品判定回路を内蔵する前記集積回路装置の複製品判定方法であって,
前記配線対に前記配線対の第1の配線の電位に比べて第2の配線の電位が高い第1の信号を入力して前記強誘電体キャパシタに前記第1の信号に対応する分極状態を形成する分極状態形成工程と,
前記分極形成工程の後,前記配線対に前記第1の信号とは電位が逆である第2の信号を入力し,当該入力後の所定のタイミングでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定を行う判定工程とを有する複製品判定方法。
【0128】
(付記11)
付記10において,
前記判定工程において,前記第2の信号を入力した後の所定のタイミングでの前記配線対の信号と,さらに,その後再び前記第2の信号を入力した後の前記所定のタイミングでの前記配線対の信号とに基づいて,正規品か複製品かの判定を行う複製品判定方法。
【0129】
(付記12)
付記11において,
前記所定のタイミングは,前記強誘電体キャパシタの前記分極状態を反転する前記配線対の信号の切り替り遅延時間より短く,前記分極状態を反転しない前記配線対の信号の切り替り遅延時間より長い複製品判定方法。
【0130】
(付記13)
付記10において,
前記判定工程において,前記第2の信号が入力された後の第1および第2のタイミングそれぞれでの前記配線対の信号に基づいて,正規品か複製品かの判定が行われる複製品判定方法。
【0131】
(付記14)
付記13において,
前記第1のタイミングは,前記強誘電体キャパシタの前記分極状態を反転する前記配線対の信号の切り替り遅延時間より短く,前記第2のタイミングは,前記切り替り遅延時間より長い複製品判定方法。