特許第5929611号(P5929611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929611
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   F04B39/00 106A
   F04B39/00 106E
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-176160(P2012-176160)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-34918(P2014-34918A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】深作 博史
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓郎
【審査官】 後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−264172(JP,A)
【文献】 実開昭64−004878(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0097993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00−39/16
F04C 23/00−29/12
H02K 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びロータからなる電動モータと、前記ロータと一体回転する回転軸が回転することにより駆動する圧縮部と、前記電動モータを駆動させるモータ駆動回路とがハウジング内に収容されるとともに、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記モータ駆動回路がこの順序で前記回転軸の軸方向に沿って並んで配置されており、前記モータ駆動回路と前記電動モータとを電気的に接続するために用いられる導電部材と、前記ステータを構成するステータコアから突出した前記モータ駆動回路側のコイルエンドから引き出されるリード線とが、前記ハウジング内に設けられたクラスタブロック内の接続端子を介して電気的に接続されている電動圧縮機であって、
前記クラスタブロックは、少なくとも一部が、前記回転軸の径方向において前記コイルエンドの内周側に配置されて前記ステータに取り付けられており、
前記クラスタブロックは、前記接続端子を収容する本体部と、前記本体部から突出する挿入突片とを有し、
前記本体部が前記コイルエンドと前記回転軸との間に配置されているとともに、前記本体部の少なくとも一部が前記ロータと対向するように配置されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
記クラスタブロックは、前記コイルエンドにより形成された空間部に前記挿入突片が挿入されることで前記ステータに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記空間部は、前記回転軸の軸方向における前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面と前記コイルエンドとの間の隙間であることを特徴とする請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記挿入突片には、前記ステータに係止可能な係止部が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記本体部には前記挿入突片が複数突出しており、
各挿入突片は、前記コイルエンドにより形成された複数の空間部にそれぞれ挿入されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
記挿入突片は、前記本体部から前記回転軸の径方向に沿って前記コイルエンドよりも径方向外側まで延びる延設部と、前記延設部の先端から前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面に向けて延びる挿入部とから構成されており、
前記ステータコアは前記挿入部が挿入される被挿入部を有し、
前記クラスタブロックは、前記挿入部が前記被挿入部に挿入されることで前記ステータに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記挿入部は、前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面に当接可能な当接部を有していることを特徴とする請求項6に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記本体部における前記導電部材側とは反対側の端面は、前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面に対向配置されていることを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮部、電動モータ及びモータ駆動回路がこの順序で回転軸の軸方向に沿って並んで配置される電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動圧縮機は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の電動圧縮機では、モータ駆動回路と電動モータとを電気的に接続するために用いられる導電部材(気密端子)と、電動モータから引き出されるリード線(モータリード線)とが、ハウジング内に設けられたクラスタブロック内の接続端子(コネクタクリップ)を介して電気的に接続されている。クラスタブロックは、回転軸の軸方向において、モータ駆動回路側のコイルエンドとモータ駆動回路との間に配置されるとともに、ピンによってハウジングの内周面に位置決め固定されている。
【0003】
また、クラスタブロックをステータの外周側に配置するとともにステータを構成するステータコアの外周面にクラスタブロックを取り付けたものが、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2のモータ一体型コンプレッサ(電動圧縮機)において、クラスタブロック(クラスタ)にはアリ突起が形成されるとともに、ステータコアの外周面には、回転軸の軸方向に沿って延びるアリ溝が形成されている。そして、アリ突起をアリ溝に対してスライドさせながら挿入することで、アリ突起がアリ溝に係合され、アリ突起とアリ溝との係合によりクラスタブロックがステータコアの外周面に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−264172号公報
【特許文献2】特開2006−42409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、クラスタブロックが、回転軸の軸方向において、モータ駆動回路側のコイルエンドとモータ駆動回路との間に配置されているため、クラスタブロックの分だけ電動圧縮機における回転軸の軸方向に沿った体格が大型化してしまう。また、特許文献2では、クラスタブロックがステータの外周側に配置されてステータコアの外周面に取り付けられているため、クラスタブロックの分だけ電動圧縮機における回転軸の径方向に沿った体格が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、体格を極力小型化することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ステータ及びロータからなる電動モータと、前記ロータと一体回転する回転軸が回転することにより駆動する圧縮部と、前記電動モータを駆動させるモータ駆動回路とがハウジング内に収容されるとともに、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記モータ駆動回路がこの順序で前記回転軸の軸方向に沿って並んで配置されており、前記モータ駆動回路と前記電動モータとを電気的に接続するために用いられる導電部材と、前記ステータを構成するステータコアから突出した前記モータ駆動回路側のコイルエンドから引き出されるリード線とが、前記ハウジング内に設けられたクラスタブロック内の接続端子を介して電気的に接続されている電動圧縮機であって、前記クラスタブロックは、少なくとも一部が、前記回転軸の径方向において前記コイルエンドの内周側に配置されて前記ステータに取り付けられており、前記クラスタブロックは、前記接続端子を収容する本体部と、前記本体部から突出する挿入突片とを有し、前記本体部が前記コイルエンドと前記回転軸との間に配置されているとともに、前記本体部の少なくとも一部が前記ロータと対向するように配置されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、クラスタブロックの少なくとも一部が、回転軸の径方向においてコイルエンドの内周側に配置されているため、クラスタブロックが、回転軸の軸方向において、モータ駆動回路側のコイルエンドとモータ駆動回路との間に配置されている場合に比べると、電動圧縮機における回転軸の軸方向に沿った体格を抑えることができる。また、クラスタブロックがステータの外周側に配置されている場合に比べると、電動圧縮機における回転軸の径方向に沿った体格を抑えることができる。その結果、電動圧縮機の体格を極力小型化することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記クラスタブロックは、前記コイルエンドにより形成された空間部に前記挿入突片が挿入されることで前記ステータに取り付けられていることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、挿入突片を空間部に挿入するだけで、クラスタブロックをステータに取り付けることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記空間部は、前記回転軸の軸方向における前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面と前記コイルエンドとの間の隙間であることを要旨とする。
【0011】
ステータコアの端面とコイルエンドとの間の隙間は、ステータコアの端面とコイルエンドとの間の絶縁を確保するために必要である。この発明によれば、コイルエンドに挿入突片を挿入するための空間部を別途形成する必要が無く、既存の空間部であるステータコアの端面とコイルエンドとの間の隙間に挿入突片を挿入することで、クラスタブロックをステータに取り付けることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記挿入突片には、前記ステータに係止可能な係止部が設けられていることを要旨とする。
この発明によれば、空間部に挿入された挿入突片の係止部がステータに係止されることで、挿入突片が空間部から抜け難くすることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記本体部には前記挿入突片が複数突出しており、各挿入突片は、前記コイルエンドにより形成された複数の空間部にそれぞれ挿入されていることを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、例えば、本体部に挿入突片が一つしか突出しておらず、一つの挿入突片を空間部に挿入することで、クラスタブロックをステータに取り付ける場合に比べると、クラスタブロックにおけるステータに対しての取り付け性を強固なものとすることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記挿入突片は、前記本体部から前記回転軸の径方向に沿って前記コイルエンドよりも径方向外側まで延びる延設部と、前記延設部の先端から前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面に向けて延びる挿入部とから構成されており、前記ステータコアは前記挿入部が挿入される被挿入部を有し、前記クラスタブロックは、前記挿入部が前記被挿入部に挿入されることで前記ステータに取り付けられていることを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、挿入部を被挿入部に挿入するだけで、クラスタブロックをステータに取り付けることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記挿入部は、前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面に当接可能な当接部を有していることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、導電部材を接続端子に接続する際にクラスタブロックに加わる荷重を、当接部がステータコアのモータ駆動回路側の端面に当接することで受け止めることができる。よって、導電部材を接続端子に接続する際に、クラスタブロックが圧縮部側へ移動してしまうことを抑制することができ、導電部材と接続端子との接続作業を容易なものとすることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記本体部における前記導電部材側とは反対側の端面は、前記ステータコアの前記モータ駆動回路側の端面に対向配置されていることを要旨とする。
【0019】
この発明によれば、導電部材を接続端子に接続する際にクラスタブロックに加わる荷重を、本体部における導電部材側とは反対側の端面がステータコアのモータ駆動回路側の端面に接触することで受け止めることができる。よって、導電部材を接続端子に接続する際に、クラスタブロックが圧縮部側へ移動してしまうことを抑制することができ、導電部材と接続端子との接続作業を容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、体格を極力小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態における電動圧縮機の縦断面図。
図2図1における1−1線断面図。
図3】第2の実施形態における電動圧縮機の縦断面図。
図4図3における2−2線断面図。
図5】別の実施形態における当接部とステータコアのモータ駆動回路側の端面とが当接している状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は、一端(図1の左端)に開口121hが形成された有底筒状をなすモータハウジング12と、モータハウジング12の一端に連結された有底筒状をなす吐出ハウジング13と、モータハウジング12の端壁12aに取り付けられる有底筒状のインバータハウジング41とからなる。モータハウジング12と吐出ハウジング13との間には吐出室15が区画されている。吐出ハウジング13の一端壁には吐出ポート16が形成されており、吐出ポート16には図示しない外部冷媒回路が接続されている。モータハウジング12の周壁には図示しない吸入ポートが形成されており、吸入ポートには外部冷媒回路が接続されている。
【0023】
モータハウジング12内には、冷媒を圧縮するための圧縮部18と、圧縮部18を駆動する電動モータ19とが収容されている。また、モータハウジング12の端壁12aとインバータハウジング41とによって収容空間41aが区画されている。収容空間41a内において、端壁12aの外面にはモータ駆動回路40(図1において二点鎖線で示す)が取り付けられている。よって、本実施形態では、圧縮部18、電動モータ19及びモータ駆動回路40がこの順序で回転軸23の軸方向に沿って並んで配置されている。
【0024】
圧縮部18は、モータハウジング12内に固定された固定スクロール20と、固定スクロール20に対向配置された可動スクロール21とで構成されている。固定スクロール20と可動スクロール21との間には容積変更可能な圧縮室22が区画形成されている。モータハウジング12内には回転軸23が収容されている。回転軸23は、ラジアルベアリング23a,23bを介してモータハウジング12によって回転可能に支持されている。
【0025】
電動モータ19は、圧縮部18よりもモータハウジング12の端壁12a(図1の右側)寄りに配置されている。電動モータ19は、回転軸23と一体的に回転するロータ24(回転子)と、ロータ24を取り囲むようにモータハウジング12の内周面に固定されたステータ25(固定子)とから構成されている。
【0026】
ロータ24は、円柱形状をなすロータコア24aを有するとともに、ロータコア24aは回転軸23に止着されている。ロータコア24a内には複数の永久磁石24bが埋設されているとともに、各永久磁石24bは、ロータコア24aの周方向に等ピッチに設けられている。ロータコア24aは、磁性体(電磁鋼板)の複数のコア板24cを積層して構成されている。ステータ25は、モータハウジング12の内周面に固定された環状のステータコア26と、ステータコア26に設けられるコイル29とを有している。ステータコア26は、磁性体(電磁鋼板)の複数のコア板26cを積層して構成されている。
【0027】
図2に示すように、各コア板26cの内周には、ステータコア26の周方向に等ピッチでティース27が複数突設されている。隣り合うティース27同士の間には筒状の絶縁シート28を介してコイル29が巻回されるスロット27sがステータコア26の周方向に等ピッチで設けられている。絶縁シート28は、スロット27s内において回転軸23の軸線Lの延びる方向(軸方向)に沿って延びるように設けられるとともに、絶縁シート28の軸方向の両端部は、ステータコア26の軸方向の両端面26e,26fから突出している。
【0028】
図1に示すように、各絶縁シート28の両端部には、カフス部28eが折り曲げ形成されており、各カフス部28eの折り曲げ先端はステータコア26の各端面26e,26fに係止されている。これにより、スロット27s内でのステータコア26に対する絶縁シート28の軸方向へのずれが防止されている。電動モータ19のコイル29において、ステータコア26からはコイルエンド29e,29fが突出している。そして、モータ駆動回路40側のコイルエンド29eからはU相、V相、W相の各リード線30(図1では1本のみ図示)の始端が引き出されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、回転軸23の軸方向において、ステータコア26の端面26e,26f(ティース27)とコイルエンド29e,29fとの間であり、且つ、ステータコア26の周方向において、隣り合う絶縁シート28の端部同士の間には隙間29sが形成されている。この隙間29sは、絶縁シート28の両端部が、ステータコア26の端面26e,26fから突出していることにより、コイルエンド29e,29fにより形成された空間部である。そして、この隙間29sが形成されることにより、ステータコア26の端面26e,26fとコイルエンド29e,29fとの間の絶縁が確保されている。
【0030】
モータハウジング12の端壁12aには貫通孔12bが形成されている。貫通孔12bには密封端子42が配設されている。密封端子42には、電動モータ19とモータ駆動回路40とを電気的に接続するために用いられる導電部材としての金属端子43と、この金属端子43を端壁12aに対し絶縁しつつ固定するガラス製の絶縁部材44とがそれぞれ3本ずつ(図1では一本ずつのみ図示)設けられている。金属端子43の一端はケーブル45を介してモータ駆動回路40と電気的に接続されている。金属端子43の他端はモータハウジング12内に向けて延びている。
【0031】
モータハウジング12内には、矩形箱状のクラスタブロック50が、回転軸23の径方向においてコイルエンド29eの内周側に配置されるとともに、クラスタブロック50はステータ25に取り付けられている。クラスタブロック50の本体部51内には接続端子51aが収容されている。本体部51の下面には第1挿通孔511が3つ(図1では一つのみ図示)形成されており、各リード線30の始端は、各第1挿通孔511を介して接続端子51aに接続されている。また、本体部51におけるモータ駆動回路40側の端面には、第2挿通孔512が3つ(図1では一つのみ図示)形成されており、各金属端子43の他端は、各第2挿通孔512を介して接続端子51aと電気的に接続されている。
【0032】
図2に示すように、本体部51の上面51fは、ステータコア26の周方向に沿うように円弧状になっているとともに回転軸23の軸方向と平行に延びている。本体部51の上面51fには挿入突片52が二つ(図1では一つのみ図示)突出している。各挿入突片52は本体部51の上面51fから放射状に延びており、ステータコア26の周方向において、各挿入突片52の間の間隔が、スロット27s内のコイル29及び絶縁シート28分だけ離れるように設定されている。
【0033】
挿入突片52の先端側には、その先端から基端に向けて延びる切り込み52kが形成されている。そして、この切り込み52kが形成されることにより、挿入突片52の先端側には、互いに接離可能な一対の係止突片53が形成されている。一対の係止突片53の先端には、互いに離れる方向に膨出する係止部53aが形成されている。各挿入突片52は各隙間29sにそれぞれ挿入可能になっている。また、挿入突片52における本体部51の上面51fからの突出長さは、挿入突片52がコイルエンド29eの内周側から隙間29sに挿入されたときに、係止部53aが絶縁シート28における回転軸23の径方向外側の部位よりも径方向外側に突出する長さに設定されている。
【0034】
挿入突片52は、隙間29sに挿入される際に、係止部53aが絶縁シート28における回転軸23の径方向内側の部位に接触することで、一対の係止突片53が互いに近づく方向に移動する。一対の係止突片53が互いに近づく方向に移動することで、挿入突片52が隙間29sに入り込んでいく。そして、係止部53aが絶縁シート28における回転軸23の径方向外側の部位よりも径方向外側に突出するまで、挿入突片52を隙間29sに対して挿入すると、一対の係止突片53が互いに離れる方向に移動、すなわち、一対の係止突片53が元の位置に復帰して、係止部53aが絶縁シート28における回転軸23の径方向外側の部位に係止される。これにより、クラスタブロック50がステータ25に取り付けられる。
【0035】
クラスタブロック50がステータ25に取り付けられた状態において、本体部51の上面51fは、ステータコア26の内周面261よりも回転軸23の径方向外側に位置している。よって、本体部51における金属端子43側とは反対側の端面51eは、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに対向配置されている(図1参照)。
【0036】
上記構成の電動圧縮機10では、モータ駆動回路40によって制御された電力が電動モータ19に供給されることにより、制御された回転速度でロータ24と共に回転軸23が回転して、圧縮部18が駆動されるようになっている。この圧縮部18の駆動により、外部冷媒回路から吸入ポートを介したモータハウジング12内への冷媒の吸入、モータハウジング12内に吸入された冷媒の圧縮部18による圧縮、及び圧縮された冷媒の吐出ポート16を介した外部冷媒回路への吐出が行われるようになっている。
【0037】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
クラスタブロック50は、各挿入突片52が、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eとコイルエンド29eとの間の隙間29sに挿入されることで、回転軸23の径方向においてコイルエンド29eの内周側に配置されてステータ25に取り付けられている。よって、クラスタブロック50が、回転軸23の軸方向において、モータ駆動回路40側のコイルエンド29eとモータ駆動回路40との間に配置されている場合に比べると、電動圧縮機10における回転軸23の軸方向に沿った体格が抑えられている。また、クラスタブロック50がステータ25の外周側に配置されている場合に比べると、電動圧縮機10における回転軸23の径方向に沿った体格が抑えられている。
【0038】
係止部53aと絶縁シート28における回転軸23の径方向外側の部位との係止により、挿入突片52がコイルエンド29eの内周側へ抜け難くなっている。また、係止部53aと絶縁シート28における回転軸23の径方向外側の部位との係止、及び本体部51の上面51fと絶縁シート28における回転軸23の径方向内側の部位との接触により、クラスタブロック50におけるステータ25に対しての回転軸23の径方向に沿った移動が規制されている。さらに、挿入突片52とステータコア26の端面26eとの接触、及び挿入突片52とコイルエンド29eとの接触により、クラスタブロック50におけるステータ25に対しての回転軸23の軸方向に沿った移動が規制されている。また、挿入突片52と隣り合う絶縁シート28との接触により、クラスタブロック50におけるステータ25に対してのステータコア26の周方向に沿った移動が規制されている。
【0039】
クラスタブロック50がステータ25に取り付けられた状態において、本体部51における金属端子43側とは反対側の端面51eは、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに対向配置されている。よって、クラスタブロック50が取り付けられたステータ25がモータハウジング12の内側に組み付けられた状態において、貫通孔12bに密封端子42を配設して、金属端子43を接続端子51aに接続する際にクラスタブロック50に加わる荷重は、本体部51の端面51eがステータコア26の端面26eに接触することで受け止められる。よって、金属端子43を接続端子51aに接続する際に、クラスタブロック50がステータ25に対して圧縮部18側へ移動してしまうことが抑制される。
【0040】
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)クラスタブロック50を、回転軸23の径方向においてコイルエンド29eの内周側に配置するとともにステータ25に取り付けた。よって、クラスタブロック50が、回転軸23の軸方向において、モータ駆動回路40側のコイルエンド29eとモータ駆動回路40との間に配置されている場合に比べると、電動圧縮機10における回転軸23の軸方向に沿った体格を抑えることができる。また、クラスタブロック50がステータ25の外周側に配置されている場合に比べると、電動圧縮機10における回転軸23の径方向に沿った体格を抑えることができる。その結果、電動圧縮機10の体格を極力小型化することができる。
【0041】
(2)クラスタブロック50を、コイルエンド29eにより形成された空間部である隙間29sに挿入突片52を挿入することでステータ25に取り付けた。よって、挿入突片52を隙間29sに挿入するだけで、クラスタブロック50をステータ25に取り付けることができる。
【0042】
(3)回転軸23の軸方向において、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eとコイルエンド29eとの間に形成される隙間29sに挿入突片52を挿入した。この隙間29sは、ステータコア26の端面26eとコイルエンド29eとの間の絶縁を確保するために必要である。よって、コイルエンド29eに挿入突片52を挿入するための空間部を別途形成する必要が無い。したがって、既存の空間部であるステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eとコイルエンド29eとの間の隙間29sに挿入突片52を挿入することで、クラスタブロック50をステータ25に取り付けることができる。
【0043】
(4)係止部53aを、絶縁シート28における回転軸23の径方向外側の部位に係止した。これにより、隙間29sに挿入された挿入突片52がコイルエンド29eの内周側へ抜けてしまうことを抑制することができる。
【0044】
(5)本体部51の上面51fからは挿入突片52が二つ突出しており、各挿入突片52が各隙間29sにそれぞれ挿入されることで、クラスタブロック50がステータ25に取り付けられている。よって、例えば、本体部51の上面51fに挿入突片52が一つしか突出しておらず、一つの挿入突片52を隙間29sに挿入することで、クラスタブロック50をステータ25に取り付ける場合に比べると、クラスタブロック50におけるステータ25に対しての取り付け性を強固なものとすることができる。
【0045】
(6)クラスタブロック50がステータ25に取り付けられた状態において、本体部51における金属端子43側とは反対側の端面51eが、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに対向配置している。よって、クラスタブロック50が取り付けられたステータ25がモータハウジング12の内側に組み付けられた状態において、貫通孔12bに密封端子42を配設して、金属端子43を接続端子51aに接続する際にクラスタブロック50に加わる荷重を、本体部51の端面51eがステータコア26の端面26eに接触することで受け止めることができる。よって、金属端子43を接続端子51aに接続する際に、クラスタブロック50がステータ25に対して圧縮部18側へ移動してしまうことを抑制することができ、金属端子43と接続端子51aとの接続作業を容易なものとすることができる。
【0046】
(7)本実施形態では、クラスタブロック50をステータ25に取り付けるために、ステータコア26の一部に孔を開けたり、ステータコア26の一部を切り欠いたりすることで、挿入突片52を挿入可能な空間部を形成していない。このため、ステータコア26において、ティース27(ステータコア26)内で発生する磁界の流れに影響を及ぼしてしまうことが無い。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図3及び図4にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0048】
図3及び図4に示すように、ステータコア26の外周面におけるモータ駆動回路40側には回転軸23の軸方向に沿って延びる被挿入部としての溝26aが形成されている。溝26aは、ステータコア26におけるモータ駆動回路40側の端面26eに開口しており、複数枚のコア板26cのうちの数枚(本実施形態では7枚)のコア板26cの外周面を切り欠くことで形成されている。
【0049】
図4に示すように、溝26aは、ステータコア26の径方向外側に向かうにつれて互いに近づく平面状の一対の側壁部261a,262aと、各側壁部261a,262aにおけるステータコア26の径方向内側の端部同士を繋ぐ平面状の底壁部263aとから形成されている。
【0050】
図3及び図4に示すように、本体部51の上面51fには挿入突片62が突出している。挿入突片62は、本体部51の上面51fから回転軸23の径方向に沿ってコイルエンド29eよりも径方向外側まで延びる板状の延設部62aと、延設部62aの先端からステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに向けて延びる板状の挿入部62bとから構成されている。延設部62aは、回転軸23の軸方向において、コイルエンド29eよりもモータ駆動回路40側を通過している。挿入部62bは、回転軸23の軸方向に沿って延びており、挿入部62bの先端側は溝26aに挿入可能になっている。
【0051】
図4に示すように、挿入部62bは、溝26aの各側壁部261a,262aに沿う平面状の側壁部621b,622bと、各側壁部621b,622bにおけるステータコア26の径方向外側の端部同士を繋ぐ上壁部623bと、各側壁部621b,622bにおけるステータコア26の径方向内側の端部同士を繋ぐ底壁部624bとから形成されている。そして、本体部51をコイルエンド29eの内周側に配置するとともに、挿入部62bの先端側を溝26aに挿入することで、クラスタブロック50がステータ25に取り付けられる。
【0052】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
挿入部62bの各側壁部621b,622bと、溝26aの各側壁部261a,262aとの接触、及び挿入部62bの底壁部624bと溝26aの底壁部263aとの接触により、クラスタブロック50におけるステータコア26に対しての回転軸23の径方向に沿った移動が規制されている。また、挿入部62bの各側壁部621b,622bと溝26aの各側壁部261a,262aとの接触により、クラスタブロック50におけるステータコア26に対してのステータコア26の周方向に沿った移動が規制されている。
【0053】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)及び(6)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(8)ステータコア26の外周面に溝26aを形成した。さらに、本体部51の上面51fに、本体部51の上面51fから回転軸23の径方向に沿ってコイルエンド29eよりも径方向外側まで延びる延設部62aと、延設部62aの先端からステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに向けて延びる挿入部62bとから構成される挿入突片62を突出させた。よって、本体部51をコイルエンド29eの内周側に配置するとともに、挿入部62bの先端側を溝26aに挿入するだけで、クラスタブロック50をステータ25に取り付けることができる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第2の実施形態において、図5に示すように、挿入部62bにステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに当接可能な当接部62cを形成してもよい。当接部62cは、挿入部62bの両側面から挿入部62bの延びる方向に直交する方向に突出するように形成されている。これによれば、クラスタブロック50が取り付けられたステータコア26がモータハウジング12の内側に組み付けられた状態において、金属端子43を接続端子51aに接続する際にクラスタブロック50に加わる荷重を、当接部62cがステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに当接することで受け止めることができる。よって、金属端子43を接続端子51aに接続する際に、クラスタブロック50がステータコア26に対して圧縮部18側へ移動してしまうことをさらに抑制することができ、金属端子43と接続端子51aとの接続作業をさらに容易なものとすることができる。
【0055】
○ 第2の実施形態において、複数枚のコア板26cのうちの数枚(本実施形態では7枚)のコア板26cに貫通孔を形成することで、ステータコア26に、回転軸23の軸方向に沿って延びる被挿入部としての挿入孔を形成してもよい。そして、当該挿入孔に挿入部62bを挿入することで、クラスタブロック50をステータ25に取り付けるようにしてもよい。
【0056】
○ 第1の実施形態において、挿入突片52が挿入される空間部は、コイルエンド29eにより形成されるとともに、挿入突片52が挿入されることでクラスタブロック50がステータ25に取り付け可能である空間部であれば、どの空間部であってもよい。
【0057】
○ 第1の実施形態において、挿入突片52の数は特に限定されるものではない。
○ 第1の実施形態において、挿入突片52に切り込み52kが形成されていなくてもよい。
【0058】
○ 第1の実施形態において、挿入突片52に係止部53aが形成されていなくてもよい。
○ 第1の実施形態において、例えば、係止部53aがコイル29に係止されていてもよい。要は、ステータ25に係止部53aが係止されていればよい。
【0059】
○ 上記各実施形態において、クラスタブロック50がステータ25に取り付けられた状態において、本体部51における金属端子43側とは反対側の端面51eと、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eとが接触していなくてもよい。
【0060】
○ 上記各実施形態において、クラスタブロック50がステータ25に取り付けられた状態において、本体部51の上面51fが、ステータコア26の内周面261よりも回転軸23の径方向内側に位置していてもよい。すなわち、本体部51における金属端子43側とは反対側の端面51eが、ステータコア26のモータ駆動回路40側の端面26eに対向配置していなくてもよい。この場合、金属端子43を接続端子51aに接続する際に、クラスタブロック50がステータ25に対して圧縮部18側へ移動してしまうことを規制するための治具を用いながら、金属端子43と接続端子51aとの接続作業を行うとよい。
【0061】
○ 上記各実施形態において、クラスタブロック50の少なくとも一部がコイルエンド29eの内周側に配置されていればよい。
○ 上記各実施形態において、圧縮部18は、例えば、ピストンタイプやベーンタイプ等であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、18…圧縮部、19…電動モータ、23…回転軸、24…ロータ、25…ステータ、26…ステータコア、26a…被挿入部としての溝、26e…端面、29e…コイルエンド、29s…空間部としての隙間、30…リード線、40…モータ駆動回路、43…導電部材としての金属端子、50…クラスタブロック、51…本体部、51a…接続端子、51e…端面、52,62…挿入突片、53a…係止部、62a…延設部、62b…挿入部、62c…当接部。
図1
図2
図3
図4
図5