(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、3次元的な走査を行う方法としては、傾斜の異なる複数の反射部を周方向に並べて配置した回転体(例えばポリゴンミラー等)を用い、これら反射部をレーザ光の投光経路上に順次配置するように回転体を回転させて高さ方向の向きを変化させるような方法を用いることもできる。この方法によれば、複雑な揺動制御を行わずともレーザ光の照射の向きを高さ方向に変化させることができ、構成面や制御面で非常に有利になる。
【0006】
但し、この方法では、高さ方向の分解能を大きくする場合に反射部の数を多くする必要がある。しかしながら、外部空間でレーザ光が照射される対象物体からの反射信号量(受光量)を確保し、且つ水平走査方向の走査範囲を確保するためには、反射部の周方向の領域をある程度大きく確保しつつ反射部の数を多くしなければならないため、必然的に回転体の径が大きくなり、回転体を駆動する駆動機構等も相応の装置(例えば軸や軸受等のサイズが大きく高トルクを出力し得る装置等)が必要となるため、装置構成の大型化や重量の増大が避けられなくなる。
【0007】
一方、各反射部のサイズが小さくなれば、回転体のサイズを大きくしなくても反射部の数を増やすことはできる。しかしながら、各反射部のサイズを小さくしてしまうと、対象物体からの反射光を受けたときに取り込むことができる光量(即ち、回転体の各反射部で入力光として導くことができる光量)が低減してしまうため、検出感度の低下を招いてしまうことになり、特に遠方の物体を検出する上で問題となる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、三次元的な検出が可能なレーザレーダ装置において、上下方向の分解能を高めうる構成を、検出感度をそれほど低下させることなく、且つ装置構成の小型化及び軽量化を図りつつ実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レーザレーダ装置に係るものであり、
レーザ光を発生させる投光手段と、
1又は複数の反射部を備えた反射領域構成部が所定の中心軸の周りにおいて周方向に複数配置されてなり、前記中心軸と直交する水平面と各反射部の反射面とのなす角度がそれぞれ異なるように構成された回転体と、前記回転体を回転させる駆動手段とを備え、前記駆動手段による前記回転体の回転に応じて、各反射領域構成部が前記投光手段からの前記レーザ光の投光経路上に順次位置して前記レーザ光を外部空間に向けて反射するように構成され、各反射領域構成部の各反射部から照射された前記レーザ光が前記外部空間に存在する物体で反射したときに当該物体からの反射光を照射元の各反射部で反射させて入力光として導くように構成された回転反射手段と、
光を検出する受光素子を配列した受光センサと、
前記回転反射手段からの前記入力光を前記受光センサに導く導光手段と、
を備え、
前記反射領域構成部は、単一の前記反射部からなる単一照射部と、複数の前記反射部を備えた複数照射部と、を備え、
前記単一照射部は、前記投光手段からの前記レーザ光が単一の前記反射部で反射して前記外部空間に向けて照射され、当該レーザ光が前記物体で反射したときに、前記物体からの前記反射光をその単一の前記反射部で反射させて前記入力光として導くように構成され、
前記複数照射部は、複数の前記反射部における反射面の前記水平面とのなす角度が互いに異なるように構成され、前記回転体が所定の回転角度範囲のときに、当該複数照射部を構成するいずれの前記反射部も前記レーザ光の投光経路上に位置する構成をなし、
前記中心軸の方向を上下方向としたとき、前記投光手段からの前記レーザ光が前記複数照射部における複数の前記反射部の各反射面で反射して前記上下方向の複数の向きにそれぞれ照射され、それら複数方向に照射された各レーザ光が前記物体で反射したときに、前記物体からの前記反射光を照射元の各反射部でそれぞれ反射させて前記入力光として導くように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明において、回転体は、中心軸の周りに複数の反射領域構成部が配置された多面ミラーとして構成され、中心軸と直交する水平面と各反射部の反射面とのなす角度がそれぞれ異なるように構成されている。そして、駆動手段による回転体の回転に応じて、各反射領域構成部が投光手段からのレーザ光の投光経路上に順次位置するようになっているため、回転体で外部空間に向けて反射するレーザ光は、反射元の反射部の角度に応じて中心軸の方向(上下方向)に順次切り替わることになる。
そして、このように各反射領域構成部の各反射部から照射されたレーザ光が外部空間に存在する物体で反射すると、当該物体からの反射光が照射元の反射部に入射したときには、この反射光がその照射元の反射部によって反射し、入力光として受光センサに向けて導かれることになる。
この構成では、基本的に回転体を回転させることだけで反射部の面数分だけレーザ光の向きを上下に切り替えて物体検出を行うことができるため、レーザ光を上下方向に変化させるための揺動機構等が必須とならず、走査の高速化も図りやすくなる。
このような構成を前提とし、更に、いずれかの反射領域構成部は、複数の反射部を備え且つそれら複数の反射部における反射面の水平面とのなす角度が互いに異なるように構成された複数照射部として構成されている。そして、この複数照射部は、回転体が所定の回転角度範囲のときに、当該複数照射部を構成するいずれの反射部もがレーザ光の投光経路上に位置する構成となっている。
つまり、この複数照射部では、レーザ光(投光レーザ)が角度の異なる複数の反射面で同時期に反射することになり、レーザ光を上下方向の複数の向きに一度に飛ばすことができる。特にこの複数照射部は、同じ反射領域構成部において上下に複数の反射部を設けた構造であるため、これらと同一サイズの複数の反射部を周方向に複数枚並べて配置する構成に比べて回転体の周方向のサイズ及び径を低減することができる。従って、回転体の小型化や当該回転体を駆動する駆動機構の小型化を図りやすくなり、より小型の回転体を駆動対象とすることで制御の高速化も図りやすくなる。
一方、複数照射部以外の他の反射領域構成部は、単一の反射部からなる単一照射部として構成されており、レーザ光がその単一の反射部で反射して外部空間に向けて照射されるようになっている。この構成によれば、レーザ光(投光レーザ)が単一照射部に入射する角度範囲では、投光レーザを分割することなく相対的に強いエネルギーで照射することができる。
このように、本発明に係るレーザレーダ装置では、ある角度範囲のときにレーザ光を複数方向に分割して照射し、別の角度範囲のときには分割せずに単一方向に照射する構成を採用しているため、使用の際に強いエネルギーでの照射が望ましい方向を単一照射部による照射方向とし、使用の際に弱いエネルギーでの照射が望ましい方向或いは弱いエネルギーでの照射でも差し支えのない方向を複数照射部による照射方向とするような設置が可能となる。
例えば、
図11のように、レーザレーダ装置を地面や床面等の基準面Fよりも高位置に設置し、所定側に対し斜め下向きにレーザ光を複数方向照射するような方法で使用する場合、水平方向とのなす角度が小さい向きで照射されるレーザ光(
図11の例ではα4)はより遠方位置で基準面Fに当たることになり、より遠方位置の物体を検出できる。このように遠距離での検出を想定する方向は単一照射部による照射方向とすれば、遠距離の物体をより強いエネルギーで検出し易くなる。
一方、水平方向とのなす角度が大きい向きで照射されるレーザ光(
図11の例ではα1)は、より近い位置で基準面Fに当たることになり、この位置と装置の間に存在する近距離の物体を検出することになる。この場合、レーザ光α1は遠距離のレーザ光α4の場合に比べて弱いエネルギーでの照射でも十分な受光量が確保されやすく、このように近距離での検出を想定する方向については複数照射部による照射方向とすれば、分解能を高めつつ複数方向を効率的に且つ良好に検出できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光を受光する受光センサ20とを備え、装置外の走査エリアに存在する検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0013】
レーザダイオード10は、「投光手段」の一例に相当するものであり、制御回路70の制御により、図示しない駆動回路からパルス電流を受け、このパルス電流に応じたパルスレーザ光(レーザ光L1)を間欠的に出射している。また、レーザダイオード10から出射されるレーザ光L1の光軸上には図示しないレンズが設けられている。このレンズは、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオードで発生して拡散しようとするレーザ光L1を集光し略平行光に変換している。なお、
図1では、レーザダイオード10から回転体41に至るまでのレーザ光を符号L1にて概念的に示し、回転体41の各反射部で反射して照射されるレーザ光をL1a,L1b,L1c,L1d,L1e(
図6等参照)で概念的に示している。
【0014】
受光センサ20は、光を検出する受光素子20aを配列してなるものであり、例えばアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)等の受光素子20aを所定方向に列状に複数並べた構成をなしている(
図5も参照)。この受光センサ20は、光を受光する受光領域を有し、当該受光領域に入射する光を検出する構成をなしている。そして、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生し、そのレーザ光L1が装置外に存在する検出物体(図示略)にて反射したとき、その反射光を受光して電気信号に変換するように機能している。
【0015】
レーザダイオード10と回転体41の間には、ミラー30が設けられている。このミラーは、例えば板状に構成され、回転体41側の面が反射面31として構成されており、中央部付近に貫通孔32が形成されている。本構成では、レーザダイオード10からのレーザ光L1が貫通孔32の内部を通過するように構成されており、貫通孔32を通過したレーザ光L1が回転体41に入射するようになっている。
【0016】
回転反射装置40は、「回転反射手段」の一例に相当するものであり、主に回転体41と、軸部42と、モータ43とによって構成されている。このうち、回転体41は、所定の中心軸Cを中心として回動可能に構成され、複数の反射領域構成部50(複数照射部51及び単一照射部52,53,54)が中心軸Cの周りにおいて周方向に複数配置された構成となっている。そして、反射領域構成部50を構成する複数の反射部51a,51b,52a,53a,54aは、中心軸Cと直交する水平面とのなす角度(鋭角)がそれぞれ異なるように構成されている。
【0017】
更に、回転体41の外周部を構成する反射領域構成部50は、1つの複数照射部51と、3つの単一照射部52,53,54によって構成されている。このうち、複数照射部51は、2つの反射部51a,51bを備え且つそれら2つの反射部51a,51bにおける反射面の水平面とのなす角度が互いに異なるように構成されている。なお、本実施形態では、レーザレーダ装置1の設置の向きに関係なく、中心軸Cの方向を上下方向としており、その内の一方側を下側、他方側を上側としている。
【0018】
具体的には、2つの反射部51a,51bは、いずれも反射面が平坦に構成され且つこれら反射面が中心軸Cを通る所定方向の第1平面(
図4では、この平面をF1として図示)と直交するように構成されている。そして、反射部51aの反射面と水平方向(中心軸Cと直交する平面方向)とのなす角度θ1(鋭角)は、反射部51aの反射面と当該水平方向とのなす角度(鋭角)θ2よりも小さくなっている。このように構成される複数照射部51は、回転体41が所定の第一回転角度範囲のときに、複数照射部51を構成するいずれの反射部51a,51bもレーザ光の投光経路上に位置する構成となっている。つまり、この第一回転角度範囲のときには、
図1のようにレーザダイオード10からのレーザ光L1が反射部51a,51bの境界部付近に入射し、いずれの反射部にも入射するようになっている。
【0019】
また、複数照射部51以外の他の反射領域構成部50は、単一の反射部からなる単一照射部52,53,54としてそれぞれ構成されている。このうち、単一照射部52は、反射部52aの反射面が平坦に構成され且つこの反射面が中心軸Cを通る所定方向の第2平面(第1平面F1と直交する平面であり、
図4では、この平面をF2として図示)と直交するように構成されている。そして、反射部52aの反射面と水平方向(中心軸Cと直交する平面方向)とのなす角度θ3(鋭角)は、反射部51bの反射面と当該水平方向とのなす角度(鋭角)θ2よりも大きくなっている。このように構成される単一照射部52は、回転体41が所定の第二回転角度範囲のときに、反射部51aがレーザ光の投光経路上に位置する構成となっている。
【0020】
また、単一照射部53は、反射部53aの反射面が平坦に構成され且つこの反射面が中心軸Cを通る所定方向の第1平面(
図4では、この平面をF1として図示)と直交するように構成されている。そして、反射部53aの反射面と水平方向(中心軸Cと直交する平面方向)とのなす角度θ4(鋭角)は、反射部52aの反射面と当該水平方向とのなす角度(鋭角)θ3よりも大きくなっている。このように構成される単一照射部53は、回転体41が所定の第三回転角度範囲のときに、反射部53aがレーザ光の投光経路上に位置する構成となっている。
【0021】
更に、単一照射部54は、反射部54aの反射面が平坦に構成され且つこの反射面が中心軸Cを通る所定方向の第2平面(
図4では、この平面をF2として図示)と直交するように構成されている。そして、反射部54aの反射面と水平方向(中心軸Cと直交する平面方向)とのなす角度θ5(鋭角)は、反射部53aの反射面と当該水平方向とのなす角度(鋭角)θ4よりも大きくなっている。このように構成される単一照射部54は、回転体41が所定の第四回転角度範囲のときに、反射部54aがレーザ光の投光経路上に位置する構成となっている。
【0022】
さらに、回転反射装置40には、モータ43が設けられている。このモータ43は、回転体41を回動させる「駆動手段」の一例に相当し、回転体41に連結された軸部42を駆動軸としてこの軸部42を回転させ、この軸部42と共に軸部42と連結された回転体41を一体的に回転駆動している。なお、モータ43の具体的構成としては、例えば直流モータ、交流モータ、ステップモータなど様々なモータを使用できる。
【0023】
なお、図示はしていないが、モータ43の駆動軸(例えば軸部42)の回転角度位置(即ち回転体41の回転角度位置)を検出する回転角度センサも設けられている。この回転角度センサは、ロータリエンコーダなど、回転体41或いは軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば公知の様々なセンサを使用できる。
【0024】
また、本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、レーザダイオード10、受光センサ20、ミラー30、レンズ22、回転反射装置40、モータ43等がケース3の内部に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。このケース3は、主ケース部4と透過板5とを備えており、全体として箱状に構成されている。主ケース部4は、上壁部及び下壁部が上下に対向して配置され、周壁部が上方側の外周壁として構成されており、周壁部と下壁部の間が窓部として導光可能に開放されている。窓部は、主ケース部4において光の出入りを可能とするように開放した部分であり、回転体41の周囲において周方向所定領域に亘って形成され、且つ上下方向所定領域を開放する構成で設けられている。そして、この開放形態の窓部を閉塞するように透明の樹脂板、ガラス板などからなる透過板5が配置されている。
【0025】
(検出動作)
レーザレーダ装置1は、例えば
図6のように、地面や床面などの基準面(例えば、人等の検出対象がその上を移動することが想定される面)Fよりも高位置に設置されて使用される。この場合、
図1に示す中心軸Cは、基準面Fと直交する方向(
図6の例では鉛直方向)に対して傾斜することになる。なお、本実施形態でいう「上下方向」は、中心軸Cの方向であり、地面と直交する方向(例えば鉛直方向)とは異なる概念である。また、本実施形態でいう水平面は、中心軸Cと直交する方向の仮想的な平面であり、鉛直方向と直交する平面方向とは異なる概念である。ここでは、上下方向(中心軸Cの方向)において鉛直下側を下方とし、その反対側を上方とする。
【0026】
本実施形態に係るレーザレーダ装置1は、複数の反射部51a,51b,52,53,54の少なくともいずかによって鉛直直交方向(鉛直方向と直交する平面方向)よりも下向きにレーザ光が照射されるようになっている。
図6の具体例では、複数の反射部51a,51bが設けられた複数照射部51からの各レーザ光L1a,L1bは、それら各反射部51a,51bから地面等の基準面Fに向けて鉛直直交方向よりも斜め下向きに、それぞれ異なる照射方向で照射されるように構成されている。また、単一照射部52,53,54の各反射部52a,53a,54aからの各レーザ光L1c,L1d,L1eも、それら各反射部52a,53a,54aから地面等の基準面Fに向けて鉛直直交方向よりも斜め下向きに照射される。但し、単一照射部52,53,54の各反射部52a,53a,54aからの各レーザ光L1c,L1d,L1eは、複数照射部51からの各レーザ光よりも上方の向きに照射され、レーザ光L1bよりもレーザ光L1aが下向きであり、レーザ光L1cよりもレーザ光L1bが下向きであり、レーザ光L1dよりもレーザ光L1cが下向きであり、レーザ光L1eよりもレーザ光L1dが下向きの関係となっている。
【0027】
検出時においてレーザレーダ装置1では、回転反射装置40におけるモータ43による回転体41の回動に応じて、各反射領域構成部50の各反射部がレーザダイオード10からのレーザ光の投光経路上に順次位置し、各反射領域構成部50を構成する反射部が、レーザ光L1を外部空間に向けて順次反射することになる。そして、各反射領域構成部50の各反射部から照射されたレーザ光が外部空間に存在する物体で反射したときには、当該物体からの反射光を照射元の各反射部で反射させて入力光として導くことになる。
【0028】
例えば、
図1のように回転体41が第一の回転角度範囲にあるときには、複数照射部51の反射部51a,51bがいずれもレーザダイオード10からのレーザ光L1の投光経路上に位置し、そのレーザ光L1が2つの反射部51a,51bの各反射面で反射し、反射部51aに対応する上下方向の向きにレーザ光L1aを照射し、反射部51bに対応する上下方向の向きにレーザ光L1bを照射することになる。
【0029】
そして、それら複数方向に照射された各レーザ光L1a,L1bが外部空間の物体で反射したときには、それら物体からの反射光を照射元の各反射部51a,51bでそれぞれ反射させて入力光として導くことになる。具体的には、レーザ光L1の一部が下側の反射部51aで反射したときのレーザ光L1aが外部空間の物体で反射した場合には、その物体からの反射光は、
図2のように、レーザ光L1aとほぼ同方向で照射元の反射部51aに入射し、この反射部51aにてミラー30側に反射する。そして、その反射部51aで反射した反射光(入力光)は、更にミラー30にてレンズ22側に反射し、その反射した光(入力光)はこのレンズ22に入射してレンズ22によって受光センサ20の受光領域に向けて集光される。本構成では、受光センサ20において受光素子20aが所定方向(例えば、中心軸Cを通り且つレーザダイオード10の出射位置を通る仮想的な平面における所定方向(
図2では、装置高さ方向))に列状に並んで配置されており、反射部51aからの入射光は、受光センサ20において主に長手方向(配列方向)の一方側の領域AR1(
図5)に入射するようになっている。なお、ミラー30及びレンズ22は、回転反射装置40からの入力光を受光センサ20に導く導光手段として機能する。
【0030】
また、レーザ光L1の一部が上側の反射部51bで反射したときのレーザ光L1bが外部空間の物体で反射した場合には、その物体からの反射光は、
図3のように、レーザ光L1bとほぼ同方向で照射元の反射部51bに入射し、この反射部51bにてミラー30側に反射する。そして、その反射部51bで反射した反射光(入力光)は、更にミラー30にてレンズ22側に反射し、その反射した光(入力光)はこのレンズ22に入射してレンズ22によって受光センサ20の受光領域に向けて集光される。そして、このような反射部51bからの入射光は、受光センサ20において主に長手方向(配列方向)の他方側の領域AR2(
図5)に入射するようになっている。
【0031】
また、この第一回転角度範囲から回転体41が更に時計回りに回転すると、単一照射部52の反射部52aがレーザ光L1の投光経路上に位置することになる。このように、レーザ光L1が反射部52aに入射する第二回転角度範囲では、レーザ光L1が反射部52aの反射面で反射して当該反射部52aに対応する上下方向の向き(反射部51a,51bの照射の向きよりも上向き)にレーザ光L1cを反射することになる。
【0032】
そして、その照射されたレーザ光L1cが外部空間の物体で反射した場合には、その物体からの反射光は、レーザ光L1cとほぼ同方向で照射元の反射部52aに入射し、この反射部52aにてミラー30側に反射する。そして、その反射部52aで反射した反射光(入力光)は、更にミラー30にてレンズ22側に反射し、その反射した光(入力光)はこのレンズ22に入射してレンズ22によって受光センサ20の受光領域に向けて集光される。
【0033】
また、この第二回転角度範囲から回転体41が更に時計回りに回転すると、単一照射部53の反射部53aがレーザ光L1の投光経路上に位置することになる。このように、レーザ光L1が反射部53aに入射する第三回転角度範囲(
図7,
図9参照)では、レーザ光L1が反射部53aの反射面で反射して当該反射部53aに対応する上下方向の向き(反射部52aの照射の向きよりも上向き)にレーザ光L1dを反射することになる。
【0034】
そして、その照射されたレーザ光L1dが外部空間の物体で反射した場合には、
図8のように、その物体からの反射光は、レーザ光L1dとほぼ同方向で照射元の反射部53aに入射し、この反射部53aにてミラー30側に反射する。そして、その反射部53aで反射した反射光(入力光)は、更にミラー30にてレンズ22側に反射し、その反射した光(入力光)はこのレンズ22に入射してレンズ22によって受光センサ20の受光領域に向けて集光される。
【0035】
また、この第三回転角度範囲から回転体41が更に時計回りに回転すると、単一照射部54の反射部54aがレーザ光L1の投光経路上に位置することになる。このように、レーザ光L1が反射部54aに入射する第四回転角度範囲では、レーザ光L1が反射部54aの反射面で反射して当該反射部54aに対応する上下方向の向き(反射部53aの照射の向きよりも上向き)にレーザ光L1eを反射することになる。
【0036】
そして、その照射されたレーザ光L1eが外部空間の物体で反射した場合には、その物体からの反射光は、レーザ光L1eとほぼ同方向で照射元の反射部54aに入射し、この反射部54aにてミラー30側に反射する。そして、その反射部54aで反射した反射光(入力光)は、更にミラー30にてレンズ22側に反射し、その反射した光(入力光)はこのレンズ22に入射してレンズ22によって受光センサ20の受光領域に向けて集光される。
【0037】
そして、第四回転角度範囲から回転体41が更に時計回りに回転すると、第一回転角度範囲となり、再びレーザ光L1が複数照射部51に入射することになる。このようにして各回転角度範囲毎に上下方向の向きを切り替える投光動作が行われ、その向きに応じた検出がなされる。
【0038】
このように構成されるレーザレーダ装置1では、回転体41の回転角度θa(所定の基準回転位置(例えば、ロータリエンコーダが原点を示す位置)からの回転角度)が定まれば装置からのレーザ光L1の投射方向が特定される。つまり、回転体41の回転角度が定まれば、どの反射部からどの向きにレーザ光が照射されるかを特定でき、水平方向及び高さ方向の照射の向きを特定できる。従って、受光センサ20が物体からの反射光を受光したときの回転体41の回転角度を回転角度センサ等によって検出することで、物体の方位を正確に検出できる。なお、受光センサ20が物体からの反射光を受光したか否かは、受光センサ20からの出力値が閾値を超えたか否かによって判断することができ、このような出力値が所定の閾値を超えたときの回転体41の回転角度に基づいて物体の方位(水平方向及び垂直方向の方位)を算出することができる。
【0039】
また、レーザダイオード10にてレーザ光L1(パルスレーザ光)が発生してから受光センサ20によって当該レーザ光L1に対応する反射光が検出されるまでの時間Tを検出すれば、この時間Tと光速とに基づいて、レーザ光L1の発生から反射光受光までの光経路の長さを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えばレーザダイオードの位置)から検出物体までの距離Lも正確に求めることができる。つまり、レーザレーダ装置1から検出物体までの距離及び方位をいずれも正確に検出することができる。
【0040】
例えば、回転体41が第一回転角度範囲にあるときには、複数照射部51に照射されていることが特定でき、回転体41から照射されるレーザ光の上下方向の向き(レーザ光L1a,L1bの向き)が特定される。更に、その回転体41の具体的回転角度が特定されれば回転体41から照射されるレーザ光L1a,L1bの水平方向の向きが特定される。このように方向が特定される各回転角度において、レーザダイオード10にてレーザ光L1(パルスレーザ光)が発生してから受光センサ20の領域AR1によって当該レーザ光L1に対応する反射光が検出されるまでの時間T1を検出すれば、この時間T1と光速とに基づき、レーザ光L1の発生からレーザ光L1aの方向の物体からの反射光を受光するまでの光経路の長さを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えばレーザダイオードの位置)から検出物体(レーザ光L1aの方向の物体)までの距離L1も正確に求めることができる。同様に、レーザダイオード10にてレーザ光L1(パルスレーザ光)が発生してから受光センサ20の領域AR2によって当該レーザ光L1に対応する反射光が検出されるまでの時間T2を検出すれば、この時間T2と光速とに基づき、レーザ光L1の発生からレーザ光L1bの方向の物体からの反射光を受光するまでの光経路の長さを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えばレーザダイオードの位置)から検出物体(レーザ光L1bの方向の物体)までの距離L2も正確に求めることができる。
【0041】
また、回転体41が第二回転角度範囲にあるときには、単一照射部52に照射されていることが特定でき、回転体41から照射されるレーザ光の上下方向の向き(レーザ光L1cの向き)が特定される。更に、その回転体41の具体的回転角度が特定されれば回転体41から照射されるレーザ光L1cの水平方向の向きが特定される。このように方向が特定される各回転角度において、レーザダイオード10にてレーザ光L1(パルスレーザ光)が発生してから受光センサ20によって当該レーザ光に対応する反射光が検出されるまでの時間T3を検出すれば、この時間T3と光速とに基づき、レーザ光L1の発生からレーザ光L1cの方向の物体からの反射光を受光するまでの光経路の長さを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えばレーザダイオードの位置)から検出物体(レーザ光L1cの方向の物体)までの距離L3も正確に求めることができる。なお、第三回転角度範囲及び第四回転角度範囲のときも同様に検出を行うことができる。
【0042】
以上の通り、本構成において、回転体41は、中心軸Cの周りに複数の反射領域構成部50が配置された多面ミラーとして構成され、中心軸Cと直交する水平面と各反射部の反射面とのなす角度がそれぞれ異なるように構成されている。そして、モータ43による回転体41の回転に応じて、各反射領域構成部50がレーザダイオード1からのレーザ光の投光経路上に順次位置するようになっているため、回転体41で外部空間に向けて反射するレーザ光は、反射元の反射部の角度に応じて中心軸Cの方向(上下方向)に順次切り替わることになる。そして、このように各反射領域構成部50の各反射部から照射されたレーザ光が外部空間に存在する物体で反射すると、当該物体からの反射光が照射元の反射部に入射したときには、この反射光がその照射元の反射部によって反射し、入力光として受光センサ20に向けて導かれることになる。
この構成では、基本的に回転体41を回転させることだけで反射部の面数分だけレーザ光の向きを上下に切り替えて物体検出を行うことができるため、レーザ光を上下方向に変化させるための揺動機構等が必須とならず、走査の高速化も図りやすくなる。
【0043】
このような構成を前提とし、更に、いずれかの反射領域構成部50は、複数の反射部を備え且つそれら複数の反射部における反射面の水平面とのなす角度が互いに異なるように構成された複数照射部51として構成されている。そして、この複数照射部51は、回転体41が所定の回転角度範囲のときに、当該複数照射部51を構成するいずれの反射部もがレーザ光の投光経路上に位置する構成となっている。
つまり、この複数照射部51では、レーザ光(投光レーザ)が角度の異なる複数の反射面で同時期に反射することになり、レーザ光を上下方向の複数の向きに一度に飛ばすことができる。特にこの複数照射部51は、同じ反射領域構成部において上下に複数の反射部を設けた構造であるため、これらと同一サイズの複数の反射部を周方向に複数枚並べて配置する構成に比べて回転体41の周方向のサイズ及び径を低減することができる。従って、回転体41の小型化や当該回転体41を駆動する駆動機構の小型化を図りやすくなり、より小型の回転体41を駆動対象とすることで制御の高速化も図りやすくなる。
【0044】
一方、複数照射部51以外の他の反射領域構成部50は、単一の反射部からなる単一照射部52,53,54として構成されており、レーザ光がその単一の反射部で反射して外部空間に向けて照射されるようになっている。この構成によれば、レーザ光(投光レーザ)が単一照射部52,53,54に入射する角度範囲では、投光レーザを分割することなく相対的に強いエネルギーで照射することができる。
このように、本構成に係るレーザレーダ装置1では、ある角度範囲のときにレーザ光を複数方向に分割して照射し、別の角度範囲のときには分割せずに単一方向に照射する構成を採用しているため、使用の際に強いエネルギーでの照射が望ましい方向を単一照射部52,53,54による照射方向とし、使用の際に弱いエネルギーでの照射が望ましい方向或いは弱いエネルギーでの照射でも差し支えのない方向を複数照射部51による照射方向とするような設置が可能となる。
【0045】
例えば、
図6のように、レーザレーダ装置1を地面や床面等の基準面Fよりも高位置に設置し、所定側に対し斜め下向きにレーザ光を複数方向照射するような方法で使用する場合、水平方向とのなす角度が小さい向きで照射されるレーザ光(
図6の例では例えばL1c,L1d,L1e)はより遠方位置で基準面Fに当たることになり、より遠方位置の物体を検出できる。このように遠距離での検出を想定する方向は単一照射部52,53,54による照射方向とすれば、遠距離の物体をより強いエネルギーで検出し易くなる。
【0046】
一方、水平方向とのなす角度が大きい向きで照射されるレーザ光(
図6の例ではL1a,L1b)は、より近い位置で基準面Fに当たることになり、この位置と装置の間に存在する近距離の物体を検出することになる。この場合、レーザ光L1a,L1bは遠距離のレーザ光L1c,L1d,L1eの場合に比べて弱いエネルギーでの照射でも十分な受光量が確保されやすく、このように近距離での検出を想定する方向については複数照射部51による照射方向とすれば、分解能を高めつつ複数方向を効率的に且つ良好に検出できるようになる
【0047】
図10は、
図1のような装置(但し複数照射部を有さず単一照射部のみで構成)によって物体検出を行う場合の、物体までの距離と受光量(受光センサ20での受光量(APD受光量))との関係を示す一例である。なお、
図10の例では、物体までの距離が1000mmの場合の受光量を1.0として、他の距離での受光量をそれに対する割合として正規化して示している。
図10でも明らかなように、物体からの距離が近距離となるにつれて大きくなる傾向にあり、極めて近い位置では距離が近づくにつれて受光度合いが急激に大きくなるという事情がある。従って、上記構成のように、近距離に飛ばすレーザ光を複数照射部によって分割する構成とすれば、遠距離に飛ばす方向の光を分割する場合に比べてエネルギー低下に伴う悪影響が極めて小さく、受光量が非常に大きくなる方向に対してレーザ光を抑えて照射することができるため、受光量の飽和も抑え易くなる。
【0048】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
上記実施形態では、複数照射部が1つのみの構成を例示したが複数照射部が2以上であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、反射領域構成部が4つの場合を例示したが、反射領域構成部の数はこれに限定されず、3以下でも、5以上でも良い。