【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0076】
縮合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography 以後、GPCと略する)を用い、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ポリスチレン換算で測定した。シリコン基板上に成膜したレジスト膜の厚みは触針式表面形状測定機、シリコン基板上に形成した膜の鉛筆硬度は、引っかき硬度試験機を用いて測定した。本実施例で用いた測定機器を以下に示す。
【0077】
GPC:東ソー株式会社製、製品名、HLC−8320GPC、カラム、東ソー株式会社
製、製品名、TSKgelGMHXL触針式表面形状測定機:米国Veeco社製、製品名、Dektak8
電動鉛筆引っかき硬度試験機:株式会社安田精機製作所製、型番No.553−M
実施例1
[縮合物の合成]
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積1Lの三口フラスコに、アルコキシシランAとしての(CH
3)Si(OEt)
3、59.45g(0.333mol)、アルコキシシランBとしてのPhSi(OEt)
3、40.08g(0.167mol)、およびアルコキシシランCとしての(CH
3)
2Si(OEt)
2、49.43g(0.333mol)を採取した。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=40:20:40であり、本発明の縮合物におけるアルコシラン混合物Dの組成比の範疇であった。
【0078】
次いで、イソプロパノール、104.83g、水、77.94g(4.330mol)、および酢酸、0.06gを、三口フラスコ内に加え、フラスコ内を90°Cに加温し、加水分解および縮合反応を行った。3時間後、反応液(反応系)を室温(20℃)に戻し、三口フラスコ内にイソプロピルエーテルを200ml、水を200ml入れ撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側(有機層)を回収し、水200mlで3回洗浄した。次いで、イソプロピルエーテル中に溶解した微量の水分を硫酸マグネシウムで除去した後、硫酸マグネシウムを濾別した。エバポレーターにてイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、縮合物が無色の粘性液体として得られた。縮合物の収量は64.98g、Mw=980であった。
【0079】
29SiNMR(核磁気共鳴、Nuclear Magnetic Resonanc
e)のスペクトラムを
図1に示す。尚、水の使用量は、アルコキシシラン混合物Dの有するアルコキシ基に対して、モル比で表して、2.0倍であった。
【0080】
次いで、当該縮合物20.33gに対してポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしてBYK307(商品名、ドイツ・ビックケミー社製)を0.02g加え、本発明の範疇にある組成物を得た。尚、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの含有は、得られた縮合物の質量に対して、0.10質量%とした。
【0081】
[組成物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の組成物のうちの5.20gをPGMEA4.70gに溶解させ、光酸発生剤(商品名、CPI−100Tfサンアプロ株式会社製)を0.05g添加し、塗布液(レジスト液)とした。これを用いて、直径100mmのシリコン基板上に回転速度250rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記レジスト液を塗布しレジスト膜を成膜した後、基板を90°Cにて1分間加熱しプリベークした。尚、光酸発生剤の含有は、前記縮合物の質量に対して、0.96質量%とした。
【0082】
次いで、マスクアライナ(マスクアライメント装置、ズースマイクロテック株式会社製、型番、MA6)に装着した、パターン形成されたフォトマスクを介して、シリコン基板上のレジスト膜に、波長365nmの紫外線を2分間照射し露光させた。シリコン基板をマスクアライナより取り出し、現像液としての濃度、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液に20秒間接触させ、未露光部を溶解させてパターンを現像した。基板上には最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、シリコン基板を250°Cのオーブン内にて1時間入れて、ネガ型レジストパターンを加熱焼成したところ、膜厚、3.6μmのネガ型レジストパターン付きシリコン基板が得られた。シリコン基板上のレジスト膜にはクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。尚、前記、厚さはパターンの段差をDektak8にて測定した。また、フォトマスクを介せず、前記露光を行い、上記条件の焼成を行い得られた膜の鉛筆硬度を前記器具により測定したところ、5Hを示し良好な結果であった。なお光酸発生剤として使用したCPI−100Tfの化学構造は以下のとおりである。
【化4】
【0083】
[保存安定性]
上記のレジスト液を冷蔵庫にて5°C下で3ヵ月間保管した。保管後の液に白濁および固形分の析出が見られず、良好な保存安定性を示した。次いで、上述の条件および手順で、ネガ型レジストパターンの形成を試みたところ、膜厚、3.7μmのネガ型レジストパターン付きシリコン基板が得られ、シリコン基板上のレジストパターンにクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。前述の手順で鉛筆硬度を測定したところ、鉛筆硬度5Hを示し、満足のいく硬さであった。この様に、得られたレジスト膜に、レジスト液の保存による経時劣化は認められなかった。
【0084】
実施例2
[縮合物の合成]
実施例1で用いたのと同様の三口フラスコに、アルコキシシランAとしての(CH
3)Si(OEt)
3、44.6g(0.250mol)、アルコキシシランBとしてのPhSi(OEt)
3、12.0g(0.050mol)、およびアルコキシシランCとしての(CH
3)
2Si(OMe)
2、29.6g(0.200mol)を採取した。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=50:10:40であり、本発明の縮合物におけるアルコシラン混合物Dの組成比の範疇である。
【0085】
次いで、イソプロパノール、62.4g、水、46.8g(2.600mol)、および酢酸、0.03gを、三口フラスコ内に加え、実施例1と同様の手順で縮合物を合成した。縮合物の収量は64.98g、Mw=1200であった。尚、水の使用量は、アルコキシシラン混合物Dの有するアルコキシ基に対して、モル比で表して、2.0倍である。
【0086】
次いで、当該縮合物にポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとして前記BYK307を0.06g加え、本発明の範疇にある組成物を得た。尚、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの含有は、前記縮合物の質量に対して、0.09質量%とした。
【0087】
[組成物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の組成物のうち5.12gをPGMEA5.77gに溶解させ、実施例1と同様に光酸発生剤として前記CPI−100Tfを0.05g加え、塗布液(レジスト液)とした。直径100mmのガラス基板上に回転速度250rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記レジスト液を塗布しレジスト膜を成膜した後、基板を90℃にて1分間加熱しプリベークした。尚、光酸発生剤の含有は、前記縮合物の質量に対して、0.98質量%である。
【0088】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間いれて、ネガ型レジストパターンを加熱焼成したところ、膜厚、3.3μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られた。ガラス基板上のレジスト膜にはクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。尚、前記、厚さはパターンの段差をDektak8にて測定した。また、フォトマスクを介せず、前記露光を行い、上記条件の焼成を行い得られた膜の鉛筆硬度を前記器具により測定したところ、5Hを示し良好な結果であった。
【0089】
[保存安定性]
上記のレジスト液を冷蔵庫にて5°C下で3ヵ月間保管した。保管後の液に白濁および固形分の析出が見られず、良好な保存安定性を示した。次いで、上述の条件および手順で、ネガ型レジストパターンの形成を試みたところ、厚さ、3.4μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られ、ガラス基板上のレジストパターンにクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。前述の手順で鉛筆硬度を測定したところ、鉛筆硬度5Hを示し、満足のいく硬さであった。この様に、得られたレジスト膜に、レジスト液の保存による経時劣化は認められなかった。
【0090】
実施例3
実施例1、2とは異なる種類のポリエーテル変性ジメチルシロキサンを用いた以外は、実施例1で得られた縮合物およびその組成物を用いた。
【0091】
[縮合物の合成]
実施例1で得られた縮合物10.51gに対してポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしてBYK333(商品名、ドイツ・ビックケミー社製)を0.01g加え、本発明の範疇にある組成物を得た。尚、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの含有は、上記縮合物の質量に対して、0.10質量%である。
【0092】
[組成物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の組成物のうちの4.70gをPGMEA4.66gに溶解させ、光酸発生剤として前記CPI−100Tfを0.05g添加し、塗布液(レジスト液)とした。直径100mmのシリコン基板上に回転速度250rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記レジスト液を塗布しレジスト膜を成膜した後、基板を90°Cにて1分間加熱しプリベークした。尚、光酸発生剤の含有は、上記の組成物の質量の計に対して、1.06質量%であった。
【0093】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間いれて、ネガ型レジストパターンを加熱焼成したところ、膜厚、3.7μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られた。ガラス基板上のレジスト膜にはクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。また、フォトマスクを介せず、上記露光を行い、上記条件の焼成を行い得られた膜の鉛筆硬度を上記器具により測定したところ、5Hを示し良好な結果であった。このように、使用するポリエーテル変性ジメチルシロキサンの種類を変えても、膜硬度、さらにはネガ型レジストパターンの形成において、良好な結果が得られた。
【0094】
[保存安定性]
上記のレジスト液を冷蔵庫にて5°C下で3ヵ月間保管した。保管後の液に白濁および固形分の析出が見られず、良好な保存安定性を示した。次いで、上述の条件および手順で、ネガ型レジストパターンの形成を試みたところ、厚さ、3.6μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られ、ガラス基板上のレジストパターンにクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。前述の手順で鉛筆硬度を測定したところ、鉛筆硬度5Hを示し、満足のいく硬度であった。このように、使用するポリエーテル変性ジメチルシロキサンの種類を変えても、得られたレジスト膜に、レジスト液の長期保存による劣化は認められなかった。
【0095】
実施例4
実施例1〜3とは異なる種類の光酸発生剤を用いた以外は、実施例1で得られた縮合物、およびその組成物を用いた。
【0096】
[組成物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
実施例1で得られた組成物のうちの5.01gをPGMEA5.06gに溶解させ、光酸発生剤(商品名、Irgacure 103、ドイツBASF社製)を0.05g添加し、塗布液(レジスト液)とした。直径100mmのシリコン基板上に回転速度250rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記レジスト液を塗布しレジスト膜を成膜した後、基板を90°Cにて1分間加熱しプリベークした。尚、光酸発生剤の含有は、上記縮合物の質量に対して、1.00質量%であった。
【0097】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間いれて、ネガ型レジストパターンを加熱焼成したところ、膜厚、3.5μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られた。ガラス基板上のレジスト膜にはクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。また、フォトマスクを介せず、上記露光を行い、上記条件の焼成を行い得られた膜の鉛筆硬度を上記器具により測定したところ、5Hを示し良好な結果であった。このように、用いる光酸発生剤の種類を変えても、膜硬度、さらにはネガ型レジストパターンの形成において、良好な結果を示すことがわかった。
【0098】
尚、光酸発生剤として使用したIrgacure 103の化学構造は以下のとおりである。
【化5】
【0099】
[保存安定性]
上記のレジスト液を冷蔵庫にて5°C下で3ヵ月間保管した。保管後の液に白濁および固形分の析出が見られず、良好な保存安定性を示した。次いで、上述の条件および手順で、ネガ型レジストパターンの形成を試みたところ、厚さ、3.5μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られ、ガラス基板上のレジストパターンにクラックは認められず、良好なネガ型レジストパターンが得られた。前述の手順で鉛筆硬度を測定したところ、鉛筆硬度5Hを示し、満足のいく硬さであった。この事は、使用する光酸発生剤の種類を変えても、得られたレジスト膜に、レジスト液の長期保存による劣化は認められなかった。
【0100】
比較例1
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを用いない以外は、実施例1と同様にネガ型レジストパターンの形成を行った。
【0101】
即ち、実施例1で得られた縮合物5.56gをPGMEA5.08gに溶かし縮合物を合成した後、実施例1と同様に光酸発生剤であるCPI−100Tfを0.05g添加し、レジスト液とした。当該レジスト液を用いて、直径100mmのガラス基板上に回転速度250rpm、保持時間10秒でスピンコーターにてレジスト液を塗布して、レジスト膜を成膜した後、ガラス基板を90℃に加温して1分間加熱しプリベークした。
【0102】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間、加熱焼成し、膜厚、3.3μmのネガ型レジストパターン付きガラス基板が得られた。ガラス基板上のレジストパターンにはクラックは認められず、良好なネガ型パターンが得られたものの、鉛筆硬度は3Hであり、実施例1および実施例2で得られた焼成後のレジスト膜の鉛筆硬度5Hは得られなかった。このことは、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを用いなかったことで、鉛筆硬度5Hを発現する膜が得られなかったことによると推察された。
【0103】
比較例2
[縮合物の合成]
実施例1で用いたのと同様の三口フラスコに、アルコキシシランAとしての(CH
3)Si(OEt)
3を70.3g(0.394mol)、アルコキシシランBとしてのPhSi(OEt)
3を11.8g(0.049mol)、アルコキシシランCとしての(CH
3)
2Si(OEt)
2を7.3g(0.049mol)仕込んだ。モル比は、アルコキシシランA:アルコキシシランB:アルコキシシランC=80:10:10であり、本発明の縮合物におけるアルコシラン混合物Dの組成比の範疇にない。
【0104】
次いで、イソプロパノールを69.0g、水を51.2g(2.844mol)、酢酸を0.03g、三口フラスコ内に仕込み、実施例1と同様の手順で縮合物を合成した。縮合物の収量は51.1g、Mw=1080であった。
【0105】
縮合物にポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしてBYK307を0.05g加え、本発明の範疇にない組成物を得た。尚、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの含有は、上記縮合物の質量に対して、0.10質量%である。
【0106】
[組成物を用いたネガ型レジストパターンの形成]
上記の組成物のうち5.02gをPGMEA5.09gに溶解させ、実施例1と同様の光酸発生剤であるCPI−100Tfを0.05g加え、塗布液(レジスト液)とした。直径100mmのガラス基板上に回転速度250rpm、保持時間10秒でスピンコーターにて上記レジスト液を塗布し、レジスト膜を成膜した後、基板を90℃にて1分間加熱しプリベークした。尚、光酸発生剤の含有は、上記縮合物の質量に対して、1.00質量%であった。
【0107】
次いで、実施例1と同じ装置を用い、同様の手順で、レジスト膜に紫外光の照射を行ったところ、最小10μm幅のラインを含むネガ型レジストパターンが形成された。その後、基板を250°Cのオーブン内にて1時間、加熱焼成したところ、レジストパターン付きの膜にクラックが生じた。スピンコーターの回転数と時間を変えることでクラックが無い膜の形成を試みたところ、膜厚が1.7μm以上になるとクラックが生じることがわかった。このことは、本発明の範疇よりケイ素の含有量が高い組成物にしたことで、加熱硬化時に膜内部で発生する応力が大きくなりすぎてしまい、3.0μmの硬い膜が得られなかった結果と考えられた。