(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ミラー部が振動する場合において、前記第3梁部及び前記第4梁部は、前記第1梁部及び前記第2梁部よりも応力が小さくなるように形成されることを特徴とする請求項3〜4のいずれか1項に記載の光走査素子。
前記第1アーム部及び前記第2アーム部のうち、少なくとも一方の上面に、前記ミラー部を振動させる駆動部として圧電素子が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光走査素子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第5実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法の関係、各層の厚みの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
また、以下に示す第1〜第5実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための素子や装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る光走査素子は、
図1(a)に示すように、ミラー部11と、梁部12a,12b,12c,12d,14a,14bと、アーム部13a,13b,13c,13d,15a,15bと、フレーム部17とを備える。ミラー部11は、光を反射するミラーを有する。ミラー部11のミラーは、例えば、上面にアルミニウム(Al)、金(Au)等の高反射率を有する金属薄膜を成膜することにより形成される。ミラー部11は、任意の直線(例えばミラー部11の中心部を通る直線)を回転軸Xとして振動(揺動)しながら光ビームを反射することにより対象を走査する。
【0023】
梁部12a〜12dは、それぞれ、例えば棒状であり、回転軸Xと平行方向に延伸する。梁部12a,12b(第1梁部)は、互いに結ぶ直線が回転軸Xから離間し、回転軸Xと平行になるように、ミラー部11の両端側を、一端側においてそれぞれ連結することにより支持する。梁部12c,12d(第2梁部)は、回転軸Xを対称軸として梁部12a,12bと線対称になるように、ミラー部11の両端側を、一端側においてそれぞれ連結することにより支持する。
【0024】
アーム部13a〜13dは、それぞれ、例えば帯状であり、梁部12a〜12dと直交する方向に延伸する。アーム部13a,13b(第1アーム部)は、梁部12a,12bの他端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。アーム部13c,13d(第2アーム部)は、回転軸Xを対称軸としてアーム部13a,13bと線対称になるように、梁部12c,12dの他端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0025】
梁部14a,14b(第3梁部)は、それぞれ、例えば棒状であり、回転軸Xと平行方向に延伸する。梁部14a,14bは、それぞれ、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間において、ミラー部11の両端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0026】
アーム部15a,15b(第3アーム部)は、例えば帯状であり、梁部14a,14bと直交する方向に延伸する。アーム部15a,15bは、梁部14a,14bの他端側を、それぞれ中央部(回転軸と同一直線上)において連結することにより支持する。
【0027】
フレーム部17は、例えば、上面から下面に貫通する矩形の窓部10を有する枠型形状である。ミラー部11、梁部12a〜12d,14a,14bと、アーム部13a〜13d,15a,15bは、それぞれフレーム部17の窓部10に位置する。フレーム部17は、アーム部13a〜13dのそれぞれ他端側を連結することにより支持する。フレーム部17は、アーム部15a,15bのそれぞれ両端側を連結することにより支持する。
【0028】
第1実施形態に係る光走査素子は、概略として矩形平板状であり、ミラー部11の中心を通る、ミラー部11に対する垂線を対称の中心とした2回回転対称のトポロジーを有している。
【0029】
ミラー部11、梁部12a〜12d,14a,14bと、アーム部13a〜13d,15a,15b、フレーム部17は、シリコン(Si)からなる支持基板上に、シリコン酸化膜(SiO
2)からなる絶縁層、単結晶Si層が順次積層されてなる同一のSOI(Silicon On Insulator)基板から、MEMS技術により形成可能である。
【0030】
図1(b)に示すように、ミラー部11、梁部12a〜12d,14a,14bと、アーム部13a〜13d,15a,15bは、厚さが例えば40〜60μm程度であり、フレーム部17より厚さが薄く形成される。フレーム部17は、厚さが例えば400〜500μm程度である。ミラー部11、梁部12a〜12d,14a,14bと、アーム部13a〜13d,15a,15bは、光走査素子がSOI基板から形成される場合、上部のSi層から形成可能である。ミラー部11、梁部12a〜12d,14a,14bと、アーム部13a〜13d,15a,15b及びフレーム部17の設計に応じて、所望の厚さのSi層、絶縁層、支持基板を備えるSOI基板が採用される。
【0031】
アーム部13a,13b、アーム部13c,13d、アーム部15a,15bのいずれかが駆動されることにより、ミラー部11は、中心部を通る直線を回転軸Xとして振動する。光走査素子の駆動方式として、圧電体の圧電効果を利用した圧電駆動方式、コイルと磁石との間のローレンツ力を利用したムービングコイル(MC)方式やムービングマグネット(MM)方式等の電磁駆動方式、電極間の静電気力を利用した静電駆動方式等が採用可能である。
【0032】
ミラー部11が振動する際の機械的強度に関する共振周波数は、梁部12a〜12d、梁部14a,14bの合計のばね定数に応じて向上する。第1実施形態に係る光走査素子は、複数対の梁部12a〜12d,14a,14bを備えることにより、一定の走査角による変形が加わった時の梁部12a〜12d,14a,14bそれぞれに加わる応力を分散し、低減することができる。
【0033】
第1実施形態に係る光走査素子によれば、同一の走査角を有するようにミラー部11を振動させる場合、一対の梁部によってミラー部11を支持する構成と比べて、各梁部に加わる応力が低く、破壊されにくい。したがって、第1実施形態に係る光走査素子は、従来構造と比べて、共振周波数を高く、且つ走査角を大きく設計可能である。
【0034】
また、第1実施形態に係る光走査素子は、梁部14a,14bがない場合(特許文献1参照)と比べると、共振周波数及びばね定数が増加し、同一の走査角において、梁部12a〜12dに加わる応力がほぼ同一となる。よって、梁部14a,14bに加わる応力を、梁部12a〜12dに加わる応力よりも小さくなるように寸法を設計することにより、共振周波数を高く設計しつつ、走査角を保持することができる。梁部14a,14bに加わる応力は、例えば、太さを梁部12a〜12dより細くする、長さを長くする等により小さくできる。
【0035】
また、第1実施形態に係る光走査素子は、梁部14a,14bの他端側がアーム部15a,15bに連結していることにより、ミラー部11の振動時において、アーム部15a,15bも変形を生じる。よって、第1実施形態に係る光走査素子は、梁部14a,14bに加わる応力が分散され、梁部14a,14bが更に破壊されにくい構造となっている。
【0036】
また、第1実施形態に係る光走査素子は、梁部14a,14bの他端側がアーム部15a,15bに連結していることにより、ミラー部11の振動時における揺動を低減することができる。
【0037】
[第1変形例]
第1実施形態の第1変形例に係る光走査素子は、
図2に示すように、それぞれ、アーム部13a〜13dの上面からフレーム部17の上面に亘って設けられ、変位することによりアーム部13a〜13dを駆動する圧電素子21a〜21dを更に備える。
【0038】
圧電素子21a〜21dは、それぞれ、下部電極層、圧電体層、上部電極層等が順次積層されることにより構成されている。圧電体層は、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)系の圧電セラミック、ニッケル酸ランタン(LaNiO
3)等、高い圧電特性を示す圧電体からなる。圧電体層は、その他、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)、ビスマスゲルマニウムオキサイド(Bi
12GeO
20)、ランガサイト(La
3Ga
5SiO
14)等を使用可能である。
【0039】
上部電極層と圧電体層との間には、例えば、厚さが0.02μm程度であり、チタン(Ti)等からなる、圧電体層の上面に密着する密着層が形成される場合があり、この層も上部電極層の一部として機能する。上部電極層は、例えば、厚さが0.3μm程度であり、例えば白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等からなる。
【0040】
下部電極層は、例えば、厚さが0.1μm程度であり、白金(Pt)等からなる、アーム部13a〜13dに垂直方向(上下方向)に変位するように優先的に配向する配向層を兼ねた電極材料が形成される。下部電極層と基板の間には、例えば、厚さが0.02μm程度のチタン(Ti)等が、密着性の向上のために設けられる場合がある。
【0041】
圧電素子21aの上部電極層と圧電素子21bの上部電極層、圧電素子21aの下部電極層と圧電素子21bの下部電極層は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。圧電素子21cの上部電極層と圧電素子21dの上部電極層、圧電素子21cの下部電極層と圧電素子21dの下部電極層は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。アーム部13a〜13d、フレーム部17の表面には、圧電素子21a〜21dと絶縁するSiO
2等からなる絶縁層が形成される。
【0042】
圧電素子21a,21bと、圧電素子21c,21dとは、互いに逆位相となる正弦波電圧を駆動信号として信号源3から印加されることにより、アーム部13a,13bとアーム部13c,13dとに交互に反りを生じさせる駆動部として機能する。アーム部13a〜13dは、圧電素子21a〜21dにミラー部11の共振の傾斜モードでの周波数で駆動されることにより、ミラー部11を振動させる。
【0043】
電磁駆動方式では、駆動力を向上させるためにはより電流を多く流す必要があるので、消費電力が上昇しやすく、かつジュール熱の上昇によるミラー構造の共振周波数の変動などの問題がある。一方、圧電駆動方式は、大きな電圧を印加しても、流れる電流は極めて小さく、消費電力小さく出来るとともに、温度上昇が少ないので、安定した共振周波数で動作させることが出来る。更に、絶縁破壊を起こしにくくするためには、圧電膜の厚みをより厚くすればよいため、駆動力の向上がより容易である。
【0044】
第1実施形態の第1変形例に係る光走査素子によれば、圧電素子21a〜21dを更に備えることにより、複数対の梁部により増加したばね定数に対して、十分な駆動力を与えることが容易となる。また、圧電素子21a〜21dは、MEMS技術により形成可能であるので、光走査素子の製造コストの増加を抑えることができる。
【0045】
[第2変形例]
第1実施形態の第2変形例に係る光走査素子は、
図3に示すように、アーム部15a,15bの上面に、圧電素子22a〜22dを更に備える。圧電素子22a〜22dは、圧電素子21a〜21dと同様に、それぞれ、下部電極層、圧電体層、上部電極層等が順次積層されることにより構成されている。
【0046】
圧電素子22a,22bは、それぞれ、アーム部15a,15bの中央部から一端側の上面から、フレーム部17の上面に亘って形成される。圧電素子22c,22dは、それぞれ、アーム部15a,15bの中央部から他端側の上面から、フレーム部17の上面に亘って形成される。
【0047】
圧電素子22a,22bの上部電極層と圧電素子21a,21bの上部電極層、圧電素子22a,22bの下部電極層と圧電素子21a,21bの下部電極層、それぞれ、互いに電気的に接続されている。圧電素子22c,22dの上部電極層と圧電素子21c,21dの上部電極層、圧電素子22c,22dの下部電極層と圧電素子21c,21dの下部電極層は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。アーム部13a〜13d,15a,15b、フレーム部17の表面には、圧電素子21a〜21d,22a〜22dと絶縁するSiO
2等からなる絶縁層が形成される。
【0048】
圧電素子21a,21b,22a,22bと、圧電素子21c,21d,22c,22dとは、互いに逆位相となる正弦波電圧が信号源3から印加されることにより、アーム部13a,13b、アーム部15a,15bのそれぞれ一端側と、アーム部13c,13d、アーム部15a,15bのそれぞれ他端側とに、交互に反りを生じさせる駆動部として機能する。アーム部13a〜13d,15a,15bは、圧電素子21a〜21d,22a〜22dにミラー部11の共振の傾斜モードでの周波数で駆動されることにより、ミラー部11を振動させる。
【0049】
第1実施形態の第2変形例に係る光走査素子によれば、圧電素子22a〜22dを更に備えることにより、複数対の梁部により増加したばね定数に対して、更に十分な駆動力を与えることできる。
【0050】
[第3変形例]
第1実施形態の第3変形例に係る光走査素子は、
図4に示すように、圧電素子22a〜22dと同様の構成の圧電素子23a〜23dを備えるが、圧電素子23a〜23dが、アーム部15a,15bの変位を検出する検出部として機能する点で第2変形例と異なる。
【0051】
圧電素子23aの上部電極層と圧電素子23bの上部電極層、圧電素子23aの下部電極層と圧電素子23bの下部電極層は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。圧電素子23cの上部電極層と圧電素子23dの上部電極層、圧電素子23cの下部電極層と圧電素子23dの下部電極層は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。
【0052】
アーム部15a,15bは、アーム部13a〜13bの駆動によるミラー部11の振動によって、梁部14a,14bを介して上下方向に変位される。圧電素子23a,23bと圧電素子23c,23dとは、アーム部15a,15bの変位に応じて、それぞれ、上部電極層と下部電極膜との間に、交互に電圧を発生する。圧電素子23a,23bと圧電素子23c,23dとが発生した電圧を、それぞれ、検出器4で検出することにより、信号源3は、圧電素子21a〜21dに印加する駆動信号をフィードバック制御できる。
【0053】
第1実施形態の第3変形例に係る光走査素子によれば、熱環境等による共振周波数の変化が生じても、圧電素子23a〜23dによって、ミラー部11の振動の周波数を検出できるので、フィードバック制御により、常にミラー部11を共振周波数で振動させることができる。
【0054】
また、第1実施形態の第3変形例に係る光走査素子は、梁部14a,14bの太さを、例えば梁部12a〜12dより細くすることにより、アーム部15a〜15d及び圧電素子23a〜23dが変位しやすくなり、圧電素子23a〜23dに発生する電圧の検出が容易になる。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る光走査素子は、
図5に示すように、ミラー部11の両端側の梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間に、それぞれ、複数の梁部14a,14c、梁部14b,14dを備える点で第1実施形態と異なる。第2の実施の形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と実質的に同様であるので重複する説明を省略する。
【0056】
梁部14a,14b(第3梁部)は、それぞれ、例えば棒状であり、回転軸Xと平行方向に延伸する。梁部14a,14bは、それぞれ、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間において、互いに結ぶ直線が回転軸Xから離間し、回転軸Xと平行になるように、ミラー部11の両端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0057】
梁部14c,14d(第4梁部)は、それぞれ、例えば棒状であり、回転軸Xと平行方向に延伸する。梁部14c,14dは、それぞれ、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間において、回転軸Xを対称軸として梁部14a,14bと線対称になるようにミラー部11の両端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0058】
アーム部15a,15b(第3アーム部)は、例えば帯状であり、梁部14a,14bと直交する方向に延伸する。アーム部15a,15bは、梁部14a,14c、梁部14b,14dの他端側を、それぞれ中央部において連結することにより支持する。
【0059】
フレーム部17は、アーム部13a〜13dのそれぞれ他端側を連結することにより支持する。フレーム部17は、アーム部15a,15bのそれぞれ両端側を連結することにより支持する。
【0060】
第2実施形態に係る光走査素子は、概略として矩形平板状であり、ミラー部11の中心を通る、ミラー部11に対する垂線を対称の中心とした2回回転対称のトポロジーを有している。
【0061】
第2実施形態に係る光走査素子によれば、同一の走査角を有するようにミラー部11を振動させる場合、一対の梁部によってミラー部11を支持する構成と比べて、各梁部に加わる応力が低く、破壊されにくい。
【0062】
また、第2実施形態に係る光走査素子によれば、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間に、それぞれ、梁部14c,14dを更に備えることにより、各梁部に加わる応力を更に分散し、低減することができる。これにより、第2実施形態に係る光走査素子は、梁部12a〜12d,14a〜14dのばね定数を更に大きく設計することが可能となり、更に、共振周波数を高く、且つ走査角を大きく設計可能である。
【0063】
また、第2実施形態に係る光走査素子は、梁部14a〜14dに加わる応力を、梁部12a〜12dに加わる応力よりも小さくなるように寸法を設計することにより、共振周波数を高く設計しつつ、走査角を保持することができる。梁部14a〜14dに加わる応力は、例えば、太さを梁部12a〜12dより細くする、長さを長くする等により小さくできる。第2実施形態に係る光走査素子は、梁部14a〜14dの太さを、例えば梁部12a〜12dより細くすることにより、アーム部15a,15bが変位しやすくなる。よって、アーム部15a,15bに圧電素子23a〜23dを検出部として設ける場合、圧電素子23a〜23dが変位しやすくなり、圧電素子23a〜23dに発生する電圧の検出が容易になる。
【0064】
また、第2実施形態に係る光走査素子は、梁部14a〜14dの他端側がアーム部15a,15bに連結していることにより、ミラー部11の振動時における揺動を低減することができる。
【0065】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る光走査素子は、
図6に示すように、梁部14〜14dをそれぞれ支持するアーム部15a〜15dを備える点で第2実施形態と異なる。第3実施形態において説明しない他の構成は、第1及び第2実施形態と実質的に同様であるので重複する説明を省略する。
【0066】
梁部14a,14b(第3梁部)は、それぞれ、例えば棒状であり、回転軸Xと平行方向に延伸する。梁部14a,14bは、それぞれ、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間において、互いに結ぶ直線が回転軸Xから離間し、回転軸Xと平行になるように、ミラー部11の両端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0067】
梁部14c,14d(第4梁部)は、それぞれ、例えば棒状であり、回転軸Xと平行方向に延伸する。梁部14c,14dは、それぞれ、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間において、回転軸Xを対称軸として梁部14a,14bと線対称になるようにミラー部11の両端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0068】
アーム部15a〜15dは、それぞれ、例えば帯状であり、梁部14a〜14dと直交する方向に延伸する。アーム部15a,15b(第3アーム部)は、梁部14a,14bの他端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。アーム部15c,15d(第4アーム部)は、回転軸Xを対称軸としてアーム部15a,15bと線対称になるように、梁部14c,14dの他端側を、それぞれ一端側において連結することにより支持する。
【0069】
フレーム部17は、アーム部13a〜13d、アーム部15a,15bのそれぞれ他端側を連結することにより支持する。
【0070】
第3実施形態に係る光走査素子は、概略として矩形平板状であり、ミラー部11の中心を通る、ミラー部11に対する垂線を対称の中心とした2回回転対称のトポロジーを有している。
【0071】
第3実施形態に係る光走査素子によれば、同一の走査角を有するようにミラー部11を振動させる場合、一対の梁部によってミラー部11を支持する構成と比べて、各梁部に加わる応力が低く、破壊されにくい。
【0072】
また、第3実施形態に係る光走査素子によれば、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間に、それぞれ、梁部14c,14dを更に備えることにより、各梁部に加わる応力を更に分散し、低減することができる。これにより、第3実施形態に係る光走査素子は、梁部12a〜12d,14a〜14dのばね定数を更に大きく設計することが可能となり、更に、共振周波数を高く、且つ走査角を大きく設計可能である。
【0073】
また、第3実施形態に係る光走査素子によれば、梁部14a〜14dをそれぞれ支持するアーム部15a〜15dを備えることにより、梁部14a〜14dに加わる応力が更に分散され、梁部14a,14bが更に破壊されにくい構造となっている。
【0074】
また、第1実施形態に係る光走査素子は、梁部14a〜14dの他端側がアーム部15a〜15dに連結していることにより、ミラー部11の振動時における揺らぎ(揺動)を低減することができる。
【0075】
[第1変形例]
第3実施形態の第1変形例に係る光走査素子は、
図7に示すように、アーム部13a〜13dを駆動する圧電素子21a〜21dと、アーム部15a〜15dの変位を検出する圧電素子23a〜23dとを更に備える。圧電素子23a〜23dは、アーム部15a〜15dの上面からフレーム部17の上面に亘ってそれぞれ設けられる。
【0076】
アーム部15a〜15dは、アーム部13a〜13bの駆動によるミラー部11の振動によって、梁部14a〜14dを介して上下方向に変位される。圧電素子23a,23bと圧電素子23c,23dとは、アーム部15a,15b、アーム部15c,15dの変位に応じて、それぞれ、上部電極層と下部電極膜との間に、交互に電圧を発生する。圧電素子23a,23bと圧電素子23c,23dとが発生した電圧を、それぞれ、検出器4で検出することにより、信号源3は、圧電素子21a〜21dに印加する駆動信号をフィードバック制御できる。
【0077】
第3実施形態の第1変形例に係る光走査素子によれば、アーム部15a〜15dが梁部14a〜14dをそれぞれ支持することにより、アーム部15a〜15d及び圧電素子23a〜23dが変位しやすくなり、圧電素子23a〜23dに発生する電圧の検出が容易になる。この場合、梁部14a〜14dの太さを、例えば梁部12a〜12dより細くすることにより、圧電素子23a〜23dが更に変位しやすくなり、圧電素子23a〜23dに発生する電圧の検出が更に容易になる。
【0078】
また、第3実施形態の第1変形例に係る光走査素子によれば、熱環境等による共振周波数の変化が生じても、圧電素子23a〜23dによって、ミラー部11の振動状態を検出できるので、フィードバック制御により、常にミラー部11を共振周波数で振動させることができる。
【0079】
[第2変形例]
第3実施形態の第2変形例に係る光走査素子は、
図8に示すように、ミラー部11の振動の周波数を検出する為の圧電素子25a〜25dが、アーム部15a〜15d及び梁部14a〜14dの上面に設けられる点で第1変形例と異なる。圧電素子25a〜25dは、それぞれ、梁部14a〜14dの上面から、アーム部15a〜15dの上面を介してフレーム部17の上面に亘って設けられる。
【0080】
第3実施形態の第2変形例に係る光走査素子によれば、アーム部15a〜15dよりも変位量の大きい梁部14a〜14dの上面にも圧電素子25a〜25dが設けられることにより、圧電素子25a〜25dに発生する電圧の検出が更に容易になる。また、圧電素子25a〜25dは、変位量が大きい場合において剥離する恐れがあるが梁部14a〜14dは、梁部12a〜12dより内側に位置し、変位量が小さいので、剥離等の破壊を低減することができる。
【0081】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る光走査素子は、
図9に示すように、ミラー部11からそれぞれ延伸する梁部14a〜14dの終端部が、ミラー部11の揺動を低減する揺動抑制部16Aa,16Abをなす点で第1〜第3実施形態と異なる。第4実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第3実施形態と実質的に同様であるので、重複する説明を省略する。
【0082】
揺動抑制部16Aa,16Abは、それぞれ、ミラー部11からアーム部15a〜15dより更に延伸する梁部14a,14c、梁部14b,14dの終端部であり、フレーム部17に連結して支持される。揺動抑制部16Aa,16Abは、ミラー部11が共振周波数で振動する場合における、ミラー部11の垂直方向への揺動を低減する。
【0083】
第4実施形態に係る光走査素子によれば、同一の走査角を有するようにミラー部11を振動させる場合、一対の梁部によってミラー部11を支持する構成と比べて、各梁部に加わる応力が低く、破壊されにくい。
【0084】
また、第4実施形態に係る光走査素子によれば、梁部12a,12bと梁部12c,12dとの間に、それぞれ、梁部14c,14dを更に備えることにより、各梁部に加わる応力を更に分散し、低減することができる。これにより、第4実施形態に係る光走査素子は、梁部12a〜12d,14a〜14dのばね定数を更に大きく設計することが可能となり、更に、共振周波数を高く、且つ走査角を大きく設計可能である。
【0085】
また、第4実施形態に係る光走査素子によれば、梁部14a〜14dをそれぞれ支持するアーム部15a〜15dを備えることにより、梁部14a〜14dに加わる応力が更に分散され、梁部14a,14bが更に破壊されにくい構造となっている。
【0086】
また、第4実施形態に係る光走査素子は、梁部14a〜14dの他端側がアーム部15a〜15dに連結していることにより、ミラー部11の振動時における揺動を低減することができる。また、第4実施形態に係る光走査素子によれば、揺動抑制部16Aa,16Abを備えることにより、ミラー部11の振動時における揺動を更に低減することができる。
【0087】
[第1変形例]
揺動抑制部16Aa,16Abは、
図10に示すように、フレーム部17に連結せず、それぞれ、アーム部15a,15cの間、アーム部15b,15dの間を連結する連結部である揺動抑制部16Ba,16Bbであっても同様の効果を得ることができる。第4実施形態の第1変形例に係る光走査素子が備える揺動抑制部16Ba,16Bbは、形成時において、それぞれ、アーム部15a,15cの間、アーム部15b,15dの間を、梁部14a,14c、梁部14b,14d側の辺から切り欠いた残余部となっている。
【0088】
第4実施形態の第1変形例に係る光走査素子によれば、揺動抑制部16Ba,16Bbが、それぞれ、幅がアーム部15a〜15dの幅より狭く形成されることにより、梁部14a〜14dに加わる応力を更に低減しつつ、ミラー部11の振動時における揺動を更に低減することができる。
【0089】
また、揺動抑制部16Ba,16Bbは、
図11に示すように、それぞれ、形成時において、それぞれ、アーム部15a,15cの間、アーム部15b,15dの間を、両辺側から切り欠いた残余部である揺動抑制部16Ca,16Cbであってもよい(
図11において揺動抑制部16Caのみを図示している)。
【0090】
[第2変形例]
また、揺動抑制部16Aa,16Abは、
図12に示すように、揺動抑制部16Ba,16Bbを更に備える揺動抑制部16Da,16Dbであってもよい。第4実施形態の第2変形例に係る光走査素子が備える揺動抑制部16Da,16Dbは、フレーム部17に連結して支持される梁部14b,14dの終端部と、アーム部15a,15cの間、アーム部15b,15dの間を連結する連結部とからなる。
【0091】
第4実施形態の第2変形例に係る光走査素子によれば、揺動抑制部16Da,16Dbが、アーム部15a,15cの間、アーム部15b,15dの間を連結し、フレーム部17に連結するので、ミラー部11の振動時における揺動を更に低減することができる。
【0092】
[第3変形例]
また、揺動抑制部16Ba,16Bbは、
図13に示すように、それぞれ、アーム部15a,15cの間、アーム部15b,15dの間を蛇行するような、互い違いにU字型に屈曲した平面パターンを有する揺動抑制部16Ea,16Ebであってもよい(
図13において揺動抑制部16Eaのみを図示している)。
【0093】
第4実施形態の第3変形例に係る光走査素子によれば、互い違いに屈曲した揺動抑制部16Ea,16Ebを備えることにより、それぞれ、梁部14a〜14dに加わる応力を更に低減しつつ、ミラー部11の振動時における揺動を更に低減することができる。
【0094】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態として、第1〜第4実施形態に係る光走査素子を用いた表示装置5について説明する。表示装置5は、例えば、レーザプロジェクタやヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイである。第5実施形態に係る表示装置5は、
図14に示すように、2軸光走査素子1Aと、光源部55と、2軸光走査素子1A及び光源部55の駆動を制御する制御部50Aとを備える。表示装置5は、光源部55が、制御部50Aの制御により、画像Qの情報である画像情報に応じて輝度を変調して出射したレーザ光Lを、2軸光走査素子1Aが反射してスクリーンPを走査することにより、スクリーンP上に画像Qを表示する。
【0095】
2軸光走査素子1Aは、
図15に示すように、第1〜第4実施形態に係る光走査素子のいずれかである光走査素子1を備える。なお、
図15に示す例では、第1実施形態の第3変形例に係る光走査素子を光走査素子1としている。光走査素子1は、ミラー部11が回転軸Xについて振動することにより、水平方向の走査を行う。
【0096】
2軸光走査素子1Aは、更に、光走査素子1が、回転軸Xと直交する回転軸Yについて振動可能なように光走査素子1を支持する一対の梁部12Aa,12Abと、梁部12Aa,12Abを支持するフレーム部17Aとを備える。フレーム部17Aは、上面から下面に貫通する窓部を有し、光走査素子1は、フレーム部17Aの窓部に配置される。
【0097】
2軸光走査素子1Aは、図示を省略した垂直走査用のアクチュエータを備え、光走査素子1を回転軸Yについて振動させることにより、ミラー部11が垂直方向の走査を行う。回転軸Yについての駆動方式としては、圧電体の圧電効果を利用した圧電駆動方式、コイルと磁石との間のローレンツ力を利用したムービングコイル(MC)方式やムービングマグネット(MM)方式等の電磁駆動方式、電極間の静電気力を利用した静電駆動方式等が採用可能である。
【0098】
制御部50Aは、画像情報に応じた駆動信号を、光源部55に出力する。光源部55は、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光を出射可能な各光源を備え、制御部50Aから入力した駆動信号に応じて、各光源が変調したレーザ光を出射する。光源部55は、各光源が出射したレーザ光を、図示を省略したレンズ、ミラー、ダイクロイックミラー、ダイクロイックプリズム等の光学素子を介して、光走査素子1のミラー部11に、レーザ光Lとして入射する。
【0099】
制御部50Aは、2軸光走査素子1Aの回転軸Yについてアクチュエータと、回転軸Xについてのアクチュエータである圧電素子21a〜21dとにそれぞれ駆動信号を出力し、ミラー部11が2軸方向にラスタ走査を行うように、2軸光走査素子1Aを駆動する。
【0100】
制御部50Aは、圧電素子23a〜23dにそれぞれ生じた電圧を検出し、その検出信号に応じて、2軸光走査素子1Aの回転軸Xについての振動が共振周波数となるように、圧電素子21a〜21dに出力する駆動信号をフィードバック制御する。2軸光走査素子1Aのミラー部11において、レーザ光Lが反射し、スクリーンPが走査されることにより、スクリーンPに画像Qが表示される。
【0101】
第5実施形態に係る表示装置5によれば、共振周波数を高く、且つ走査角を大きく設計可能であり、ミラー部11の揺動が低減された光走査素子1を用いることにより、高解像度かつ高画質の画像を表示することができる。
【0102】
また、第5実施形態に係る表示装置5によれば、ミラー部11を支持する梁部に加わる応力が分散され、破壊が生じにくい光走査素子1を用いることにより、信頼性を向上することができる。
【0103】
[変形例]
第5実施形態の変形例に係る表示装置5Bは、
図16に示すように、垂直方向の走査を、光走査素子1と別個の、ミラー部を備える光走査素子1Bが行うことにより、2軸方向にラスタ走査を行う。
【0104】
光源部55は、制御部50Bの制御により、画像Qの情報である画像情報に応じて輝度が変調されたレーザ光Lを、光走査素子1のミラー部11に出射する。光走査素子1は、ミラー部11が回転軸Xについて振動することにより、水平方向の走査を行う。光走査素子1Bは、光走査素子1のミラー部11が反射したレーザ光Lを、ミラー部おいて反射し、ミラー部が回転軸Yについて振動することにより、垂直方向の走査を行う。光走査素子1BはスクリーンPにレーザ光Lを反射することにより、2軸方向のラスタ走査をして、スクリーンP上に画像Qを表示する。
【0105】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0106】
既に述べた第1〜第4実施形態においては、光走査素子は、ミラー部11を振動させず、対象を走査しない用途に用いてもよい。例えば、光走査素子は、レーザ光による距離測定装置のポインタ等へ応用することができる。また、第5実施形態において、光走査素子1を用いた投射型の表示装置について例示的に説明したが、光走査素子1は、種々のスキャナやセンサ等に対しても適用可能である。
【0107】
また、第1〜第4実施形態においては、ミラー部11の振動周波数を検出する検出部を、圧電素子23a〜23d、25a〜25dとして説明したが、検出部は、梁部14a〜14d、アーム部15a〜15d等に埋め込まれたピエゾ抵抗素子から構成されてもよい。ピエゾ抵抗素子は、梁部14a〜14d、アーム部15a〜15d等のSi層に不純物をドーピングすることにより、形成可能である。
【0108】
上述の他、第1〜第5実施形態を相互に応用した構成等、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。