【文献】
Yoshimitsu Sagara and Takashi Kato,Brightly Tricolored Mechanochromic Luminescence from a Single-Luminophore Liquid Crystal: Reversible Writing and Erasing of Images,Angewandte Chemie International Edition,2011年 7月27日,Vol.50, No.39,pp.9128-9132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、分液操作性の優れた酢酸イソプロピルに易溶で、各工程で各中間体を晶析単離することなく抽出分離のみを経て最終生成物へと導くペプチド等の製造方法(ワンポット合成方法ともいう)に使用しうる、新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の分岐鎖含有芳香族化合物によって前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。本発明は以下の態様を含む。
【0009】
[1] 式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、
k個のQは、単結合を示すか、あるいは−O−、−S−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−または−NH−を示し;
k個のR
aは、独立してそれぞれ、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を示し;
kは、1〜4の整数を示し;
R
1は、水素原子であるか、あるいはZが下記式(a)で表される基である場合には、R
2と一緒になって単結合を示して、環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;
環Aは、R
1、k個のQR
a、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよく;
Xは、水素原子またはフェニル基を示し;
Yは、ヒドロキシル基または−NHR基(Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す)を示し;かつ
Zは、水素原子または式(a):
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
*は結合位置を示し;
mは、0〜4の整数を示し;
m個のQは、前記と同意義を示し;
m個のR
bは、独立してそれぞれ、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を示し;
R
2は、水素原子を示すか、またはR
1と一緒になって単結合を示して、環Aと共にフルオレン環を形成していてもよく;かつ
環Bは、m個のQR
b、およびR
2に加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい)で表される基を示し;
前記R
aおよびR
bにおける分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基が、式(b):
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R
3およびR
4は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
X
1は、単結合、C
1−4アルキレン基または酸素原子を示す。
但し、R
3およびR
4が共に水素原子であることはない。)で表される同一または異なる2価の基を3以上有する基である。]で表される分岐鎖含有芳香族化合物。
[2] 前記R
aおよびR
bにおける分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基が、式(c):
【0016】
【化4】
【0017】
[式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
R
5およびR
6は、共に水素原子を示すか、または一緒になって=Oを示し;
n
0は、2〜40の整数を示し;
n
0個のR
7およびR
8は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
0個のX
2は、独立してそれぞれ、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;かつ
R
9は、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
R
10は、C
1−4アルキル基または式(I’):
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、
*は、結合位置を示し;
他の記号は、前記と同意義を示す。ここで、環A’は、R
1、Q、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。)を示す。
但し、R
7およびR
8が共に水素原子であることはなく、かつn
0が2の場合には、R
9はC
1−4アルキル基を示す。]で表される基である、
前記[1]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[3] 前記式(c)中、
R
5およびR
6は、共に水素原子であり;
n
0個のR
7およびR
8は、独立してそれぞれ、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n
0個のX
2は、独立してそれぞれ、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;かつ
R
9は、水素原子、メチル基またはエチル基である、
前記[2]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[4] 前記R
aおよびR
bにおける分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基が、式(d):
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
m
1個のOR
11は、式(c’):
【0022】
【化7】
【0023】
[式中、
*は、Oとの結合位置を示し;
R
5およびR
6は、共に水素原子を示すか、または一緒になって=Oを示し;
n
0は、2〜40の整数を示し;
n
0個のR
7およびR
8は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
0個のX
2は、独立してそれぞれ、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;かつ
R
9は、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
R
10は、C
1−4アルキル基または式(I’):
【0024】
【化8】
【0025】
(式中、
*は、結合位置を示し;
他の記号は、前記と同意義を示す。ここで、環A’は、R
1、Q、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。)で表される基を示す。
但し、R
7およびR
8が共に水素原子であることはなく、かつn
0が2の場合には、R
9はC
1−4アルキル基を示す。]で表される基により置換されたヒドロキシル基を示し;
m
1は、1〜3の整数を示す。)で表される基である、
前記[1]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[5] 前記R
aおよびR
bにおける分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基が、式(e):
【0026】
【化9】
【0027】
(式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
n
1は、1〜10の整数を示し;
n
2は、1〜10の整数を示し;
n
1個のR
15およびR
16は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
1個のX
3は、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;
n
2個のR
17およびR
18は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
2個のX
5は、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;
X
4は、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;かつ
R
12、R
13、R
14、R
19、R
20およびR
21は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示す。
但し、R
15およびR
16、および/またはR
17およびR
18が共に水素原子であることはなく、かつn
1+n
2が2の場合には、R
12、R
13およびR
14の2個以上が独立してそれぞれ、C
1−4アルキル基を示すか、またはR
19、R
20およびR
21の2個以上が独立してそれぞれ、C
1−4アルキル基を示す。)で表される基である、
前記[1]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[6] 前記式(e)中、
n
1は、1〜5の整数であり;
n
2は、1〜5の整数であり;
n
1個のR
15およびR
16は、独立してそれぞれ、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n
1個のX
3は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
n
2個のR
17およびR
18は、独立してそれぞれ、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n
2個のX
5は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
X
4は、単結合、メチレン基またはエチレン基である、
前記[5]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[7] 前記式(e)中、
n
1個のR
15およびR
16は、独立してそれぞれ、水素原子またはメチル基であり;
n
1個のX
3は、単結合またはメチレン基であり;
n
2個のR
17およびR
18は、独立してそれぞれ、水素原子またはメチル基であり;
n
2個のX
5は、単結合またはメチレン基であり;
X
4は、単結合またはメチレン基であり;かつ
R
12、R
13、R
14、R
19、R
20およびR
21は、メチル基である、
前記[6]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[8] R
aおよびR
bが、独立してそれぞれ、3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル基、3,7,11−トリメチルドデシル基、2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイル基、3,4,5−トリ(3’,7’,11’,15’−テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基、3,5−ジ(3’,7’,11’,15’−テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基、式(f):
【0028】
【化10】
【0029】
[式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
10は、23〜34であり、R
10は、式(I’):
【0030】
【化11】
【0031】
(式中、
*は、結合位置を示し;
他の記号は、前記と同意義を示す。ここで、環A’は、R
1、Q、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。)で表される基である。]で表される基、
式(g):
【0032】
【化12】
【0033】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
11は、1〜10である。)で表される基、
式(h):
【0034】
【化13】
【0035】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
12は、2〜10である。)で表される基、
式(i):
【0036】
【化14】
【0037】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
13およびn
14は、独立してそれぞれ、1〜10である。)で表される基、または
式(j):
【0038】
【化15】
【0039】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
15は、2〜20である。)で表される基、
である、前記[1]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[9] XとZが共に水素原子であり、かつR
1が水素原子である、前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[10] Xが水素原子であり、R
1が水素原子であり、kが1であり、かつZが式(a)(式中、R
2が水素原子であり、mが0である。)で表される基である、前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[11] Xがフェニル基であり、kが1であり、Zが式(a)(式中、mが0である。)で表される基であり、かつR
2がR
1と一緒になって単結合を示して、環Aと共にフルオレン環を形成する、前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[12] Qが−O−である、前記[1]〜[11]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[13] Yがヒドロキシル基である、前記[1]〜[12]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[14] Yが−NHR基である、前記[1]〜[12]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[15] 2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミン;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
2−[3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミン;
2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(4−ヒドロキシメチル)フェニルアミド;
4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアルコール;
2−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オール;
式:
【0040】
【化16】
【0041】
(式中、n
16は、23または34を示す。)で表される化合物;
式:
【0042】
【化17】
【0043】
(式中、n
17は、23または34を示す。)で表される化合物;
式:
【0044】
【化18】
【0045】
(式中、n
18は、5〜7を示す。)で表される化合物;および
式:
【0046】
【化19】
【0047】
で表される化合物、からなる群から選択される、前記[1]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[16] 20℃における酢酸イソプロピル100g中の飽和溶解度が、1〜95重量%である、前記[1]〜[15]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[17] 20℃における酢酸イソプロピル100g中の飽和溶解度が、10〜95重量%である、前記[1]〜[15]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物。
[18] 前記[1]〜[17]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物を含む、アミノ酸またはペプチドのカルボキシル基またはアミド基の保護化試薬。
[19] アミノ酸またはペプチドの保護箇所がC末端である、前記[18]に記載の保護化試薬。
[20] 前記[1]〜[17]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物によって保護された、分岐鎖含有芳香族化合物付加体。
[21] 工程(1)〜(4)を含む、ペプチドの製造方法。
(1)前記[1]〜[17]のいずれか1つに記載の分岐鎖含有芳香族化合物を、該化合物の可溶性溶媒中で、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドのC末端と縮合させて、該化合物由来の保護基であるアンカーでC末端が保護されたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドを得る工程、
(2)得られたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得る工程、
(3)得られたC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程、および
(4)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基およびC末端のアンカーを除去して、ペプチドを得る工程。
[22] さらに工程(5)〜(7)の繰り返しを1以上含む、前記[21]に記載の方法;
(5)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護ペプチドを得る工程、
(6)得られたC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程、および
(7)工程(6)後に、反応系に水を添加し、不純物を水層に抽出分離する工程。
[23] さらに工程(5)〜(7’)の繰り返しを1以上含む、前記[21]に記載の方法;
(5)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護ペプチドを得る工程、
(6)得られたC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程、および
(7’)工程(6)後に、反応系に親水性有機溶媒を添加し、不純物を親水性有機溶媒層に抽出分離する工程。
[24] 前記[21]〜[23]のいずれか1つに記載のペプチド製造方法を含む、有機合成方法。
[25] 式(I):
【0048】
【化20】
【0049】
[式中、
k個のQは、単結合を示すか、あるいは−O−、−S−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−または−NH−を示し;
k個のR
aは、独立してそれぞれ、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を示し;
kは、1〜4の整数を示し;
R
1は、水素原子であるか、あるいはZが下記式(a)で表される基である場合には、R
2と一緒になって単結合を示して、環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;
環Aは、R
1、k個のQR
a、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよく;
Xは、水素原子またはフェニル基を示し;
Yは、ヒドロキシル基、−NHR基(Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す)またはハロゲン原子(好ましくはハロゲン原子)を示し;かつ
Zは、水素原子または式(a):
【0050】
【化21】
【0051】
(式中、
*は結合位置を示し;
mは、0〜4の整数を示し;
m個のQは、前記と同意義を示し;
m個のR
bは、独立してそれぞれ、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を示し;
R
2は、水素原子を示すか、またはR
1と一緒になって単結合を示して、環Aと共にフルオレン環を形成していてもよく;かつ
環Bは、m個のQR
b、およびR
2に加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい)で表される基を示し;
前記R
aおよびR
bにおける分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基が、式(b):
【0052】
【化22】
【0053】
(式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R
3およびR
4は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
X
1は、単結合、C
1−4アルキレン基または酸素原子を示す。
但し、R
3およびR
4が共に水素原子であることはない。)で表される同一または異なる2価の基を3以上有する基である。]で表される分岐鎖含有芳香族化合物。
[26] 上記[25]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物を含む、アミノ酸またはペプチドのカルボキシル基またはアミド基の保護化試薬。
[27] 上記[25]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物によって保護された、分岐鎖含有芳香族化合物付加体。
[28] 工程(1)〜(4)を含む、ペプチドの製造方法。
(1)上記[25]に記載の分岐鎖含有芳香族化合物を、該化合物の可溶性溶媒中で、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドのC末端と縮合させて、該化合物由来の保護基であるアンカーでC末端が保護されたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドを得る工程、
(2)得られたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得る工程、
(3)得られたC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程、および
(4)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基およびC末端のアンカーを除去して、ペプチドを得る工程。
[29] さらに工程(5)〜(7)の繰り返しを1以上含む、上記[28]に記載の方法;
(5)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護ペプチドを得る工程、
(6)得られたC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程、および
(7)工程(6)後に、反応系に水を添加し、不純物を水層に抽出分離する工程。
[30] さらに工程(5)〜(7’)の繰り返しを1以上含む、上記[28]に記載の方法;
(5)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護ペプチドを得る工程、
(6)得られたC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程、および
(7’)工程(6)後に、反応系に親水性有機溶媒を添加し、不純物を親水性有機溶媒層に抽出分離する工程。
[31] 上記[28]〜[30]のいずれか一つに記載のペプチド製造方法を含む、有機合成方法。
【発明の効果】
【0054】
本発明の分岐鎖含有芳香族化合物は、分液操作性の優れた酢酸イソプロピルに易溶である。そのため、本発明の分岐鎖含有芳香族化合物を使用すれば、各工程で各中間体を晶析単離することなく、抽出分離のみを経て最終生成物へと導くペプチド等の製造方法を実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物および方法論を記載および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0056】
〔本発明化合物〕
本発明の分岐鎖含有芳香族化合物(以下、本発明化合物と略称することもある。)は、下記式(I)で表される。本発明化合物は、特定のベンジル化合物(式(I)中、XとZが共に水素原子であり、かつR
1が水素原子である);特定のジフェニルメタン化合物(式(I)中、Xが水素原子であり、R
1が水素原子であり、kが1であり、かつZが式(a)(式中、R
2が水素原子であり、mが0である。)で表される基である);および特定のフルオレン化合物(式(I)中、Xがフェニル基であり、kが1であり、Zが式(a)(式中、mが0である。)で表される基であり、かつR
2がR
1と一緒になって単結合を示して、環Aと共にフルオレン環を形成する)を包含する。
式(I):
【0058】
[式中、
k個のQは、単結合を示すか、あるいは−O−、−S−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−または−NH−を示し;
k個のR
aは、独立してそれぞれ、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を示し;
kは、1〜4の整数を示し;
R
1は、水素原子であるか、あるいはZが下記式(a)で表される基である場合には、R
2と一緒になって単結合を示して、環Bと共にフルオレン環を形成していてもよく;
環Aは、R
1、k個のQR
a、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよく;
Xは、水素原子またはフェニル基を示し;
Yは、ヒドロキシル基、−NHR基(Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す)またはハロゲン原子を示し;かつ
Zは、水素原子または式(a):
【0060】
(式中、
*は結合位置を示し;
mは、0〜4の整数を示し;
m個のQは、前記と同意義を示し;
m個のR
bは、独立してそれぞれ、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を示し;
R
2は、水素原子を示すか、またはR
1と一緒になって単結合を示して、環Aと共にフルオレン環を形成していてもよく;かつ
環Bは、m個のQR
b、およびR
2に加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい)で表される基を示す。]。
【0061】
本発明の式(I)で表される化合物と保護化を意図する化合物とは、Y基であるヒドロキシル基、NHR基またはハロゲン原子と、保護化を意図する化合物のカルボキシル基等との縮合反応によって、結合する。
【0062】
本明細書中、Rで示される「アルキル基」としては、C
1−30アルキル基が挙げられ、好ましくはC
1−10アルキル基、より好ましくはC
1−6アルキル基である。好適な具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられ、特にメチル、エチルが好ましい。
【0063】
本明細書中、Rで示される「アラルキル基」としては、C
7−30アラルキル基が挙げられ、好ましくはC
7−20アラルキル基、より好ましくはC
7−16アラルキル基(C
6−10アリール−C
1−6アルキル基)である。好適な具体例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、α−ナフチルメチル、1−(α−ナフチル)エチル、2−(α−ナフチル)エチル、1−(α−ナフチル)プロピル、β−ナフチルメチル、1−(β−ナフチル)エチル、2−(β−ナフチル)エチル、1−(β−ナフチル)プロピル等が挙げられ、特にベンジルが好ましい。
【0064】
Rとしては、水素原子、C
1−6アルキル基またはC
7−16アラルキル基が好ましく、水素原子、メチル、エチルまたはベンジルがより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0065】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。Yの「ハロゲン原子」としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0066】
本明細書中、R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」とは、その分子構造中に分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基である。
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」における「分岐鎖」としては、直鎖または分岐状の飽和脂肪族炭化水素基であり、C
1−6アルキル基が好ましく、C
1−4アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が一層好ましい。また、該「分岐鎖」は、1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」における「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、C
2−C
300アルキル基(好ましくは、C
3−C
100アルキル基、より好ましくは、C
3−C
60アルキル基)、C
2−C
300アルケニル基(好ましくは、C
3−C
100アルケニル基、より好ましくは、C
3−C
60アルケニル基)またはC
2−C
300アルキニル基(好ましくは、C
3−C
100アルキニル基、より好ましくは、C
3−C
60アルキニル基)である。
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」における「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」の部位は、特に限定されず、末端に存在しても(1価基)、それ以外の部位に存在してもよい(例えば2価基)。
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」としては、具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基、オレイル基、リノリル基、リグノセリル基等の分岐異性体であって、1以上の分岐鎖を有する1価基およびそれらから誘導される2価基が挙げられ、好ましくは、3,7,11−トリメチルドデシル基、3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル基(以下、2,3−ジヒドロフィチル基ということもある。)、2,2,4,8,10,10−ヘキサメチルウンデカン−5−イル基、式:
【0068】
(式中、
*は、Qとの結合位置を示す。)で表される基等である。
【0069】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」中に「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」が複数存在する場合には、その各々は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0070】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」中の「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」以外の部位は任意に設定することができる。例えば−O−、−S−、−CO−、−NH−、−COO−、−OCONH−、−CONH−、−NHCO−、炭化水素基(1価基または2価基)等の部位を有していてもよい。「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基が用いられる。「アルキル基」としては、例えば、C
1−6アルキル基等が好ましく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。「アルケニル基」としては、例えば、C
2−6アルケニル基等が好ましく、例えば、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等が挙げられる。「アルキニル基」としては、例えば、C
2−6アルキニル基等が好ましく、例えば、エチニル、プロパルギル、1−プロピニル等が挙げられる。「シクロアルキル基」としては、例えば、C
3−6シクロアルキル基等が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。「アリール基」は、例えば、C
6−14アリール基等が好ましく、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等が挙げられる。中でもC
6−10アリール基がより好ましく、フェニルが特に好ましい。「アラルキル基」としては、例えば、C
7−20アラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、ナフチルメチル、1−ナフチルエチル、1−ナフチルプロピル等が挙げられる。中でも、C
7−16アラルキル基(C
6−10アリール−C
1−6アルキル基)がより好ましく、ベンジルが特に好ましい。当該「炭化水素基」は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、オキソ基等から選択される置換基で置換されていてもよい。
【0071】
本発明化合物は、k個のQR
a基を有する。ここで、Qは、単結合であるか、あるいは−O−、−S−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−または−NH−であり、好ましくはOである。k個のQR
a基は、それぞれ同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0072】
本発明化合物においては、R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」における、炭素数合計は、14以上であり、16以上が好ましく、18以上がより好ましい。一方、R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上である脂肪族炭化水素基を有する有機基」における、炭素数合計は、300以下であり、200以下が好ましく、160以下がより好ましい。また、本発明化合物においては、R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上である脂肪族炭化水素基を有する有機基」における、総分岐鎖数は3以上であり、4以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。当該総分岐鎖数が多いほど、ペプチド鎖が長鎖になった場合でも本発明化合物により保護された化合物は、各種有機溶媒に対する溶解性が良好な油状物となる。
【0073】
R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」としては、式(b):
【0075】
(式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R
3およびR
4は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
X
1は、単結合、C
1−4アルキレン基または酸素原子を示す。
但し、R
3およびR
4が共に水素原子であることはない。)で表される同一または異なる2価の基を3以上有する基が好ましく、例えば、下記式(c)〜(e)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0076】
なお、式(c)〜(e)における各記号の定義中の炭素数、繰り返し単位の数(m
1、n
0〜n
9)等は便宜上示されたものであって、総炭素数が14以上(好ましくは16以上、より好ましくは18以上)、300以下(好ましくは200以下、より好ましくは160以下)になるよう上記した定義の範囲内で適宜変更することができる。以下、式(c)〜(e)について、順に説明する
【0079】
[式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
R
5およびR
6は、共に水素原子を示すか、または一緒になって=Oを示し;
n
0は、2〜40の整数を示し;
n
0個のR
7およびR
8は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
0個のX
2は、独立してそれぞれ、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;かつ
R
9は、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
R
10は、C
1−4アルキル基または式(I’):
【0081】
(式中、
*は、結合位置を示し;
他の記号は、前記と同意義を示す。ここで、環A’は、R
1、Q、およびC(X)(Y)Zに加えて、さらにハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルキル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC
1−6アルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。)を示す。
但し、R
7およびR
8が共に水素原子であることはなく、かつn
0が2の場合には、R
9はC
1−4アルキル基を示す。]
【0082】
式(c)の基において、
R
5およびR
6は、共に水素原子であり;
n
0は、2〜40の整数であり;
n
0個のR
7およびR
8は、独立してそれぞれ、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n
0個のX
2は、独立してそれぞれ、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;かつ
R
9は、水素原子、メチル基またはエチル基である基が好ましい(但し、R
7およびR
8が共に水素原子であることはなく、かつn
0が2の場合には、R
9はメチルまたはエチル基を示す。)。
【0083】
より好適な式(c)の基は、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基等の炭素数14〜160の分岐異性体であって、総分岐鎖数が3以上である基であり、中でも2,3−ジヒドロフィチル基、3,7,11−トリメチルドデシル基、2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイル基が特に好ましい。
【0086】
(式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
m
1個のOR
11は、式(c’)で表される基により置換されたヒドロキシル基または総分岐鎖数が3以上であるポリアルキレングリコール基を有する基(例えば、ポリプロピレングリコール基、ポリネオペンチルグリコール基)により置換されたヒドロキシル基を示し;
m
1は、1〜3の整数を示す。)
なお、上記式(c’)で表される基の説明は、
*が、Qとの結合位置ではなく、Oとの結合位置を示すこと以外は、上記式(c)で表される基の説明と同じである。
【0087】
式(d)の基において、R
11は、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基等の炭素数14〜30の分岐異性体であって、総分岐鎖数が3以上である基がより好ましく、中でも2,3−ジヒドロフィチル基、3,7,11−トリメチルドデシル基が特に好ましい。
【0090】
(式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
n
1は、1〜10の整数を示し;
n
2は、1〜10の整数を示し;
n
1個のR
15およびR
16は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
1個のX
3は、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;
n
2個のR
17およびR
18は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示し;
n
2個のX
5は、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;
X
4は、単結合またはC
1−4アルキレン基を示し;かつ
R
12、R
13、R
14、R
19、R
20およびR
21は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基を示す。
但し、R
15およびR
16、および/またはR
17およびR
18が共に水素原子であることはなく、かつn
1+n
2が2の場合には、R
12、R
13およびR
14の2個以上が独立してそれぞれ、C
1−4アルキル基を示すか、またはR
19、R
20およびR
21の2個以上が独立してそれぞれ、C
1−4アルキル基を示す。)
【0091】
式(e)の基において、
n
1は、1〜5の整数であり;
n
2は、1〜5の整数であり;
n
1個のR
15およびR
16は、独立してそれぞれ、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n
1個のX
3は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
n
2個のR
17およびR
18は、独立してそれぞれ、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n
2個のX
5は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
X
4は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;かつ
R
12、R
13、R
14、R
19、R
20およびR
21は、独立してそれぞれ、水素原子またはC
1−4アルキル基である基がより好ましい(但し、R
15およびR
16、および/またはR
17およびR
18が共に水素原子であることはなく、かつn
1+n
2が2の場合には、R
12、R
13およびR
14の2個以上が独立してそれぞれ、C
1−4アルキル基を示すか、またはR
19、R
20およびR
21の2個以上が独立してそれぞれ、C
1−4アルキル基を示す。)。
【0092】
特に好適な式(e)の基としては、
n
1は、1〜5の整数であり;
n
2は、1〜5の整数であり;
n
1個のR
15およびR
16は、独立してそれぞれ、水素原子またはメチル基であり;
n
1個のX
3は、単結合またはメチレン基であり;
n
2個のR
17およびR
18は、独立してそれぞれ、水素原子またはメチル基であり;
n
2個のX
5は、単結合またはメチレン基であり;
X
4は、単結合またはメチレン基であり;かつ
R
12、R
13、R
14、R
19、R
20およびR
21は、メチル基である基が挙げられる(但し、R
15およびR
16、および/またはR
17およびR
18が、共に水素原子であることはない)。
【0093】
R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」としては、上記式(c)〜(e)のいずれかで表される基の他、上記式(b)におけるX
1が酸素原子である基を3以上有する基、すなわち、総分岐鎖数が3以上であるポリプロピレングリコール基、ポリネオペンチルグリコール基等のポリアルキレングリコール基を含有する基であってもよい。
【0094】
R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」の具体例として、以下の基が挙げられる。各基中の
*は結合位置を示し、式中のn
3は、3以上の整数を示し、n
4は、該基の総炭素数が14以上300以下になるように適宜設定され得る。
【0096】
また、R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」の別の態様として、以下の基が挙げられる。各基中の
*は結合位置を示す。
【0098】
式中、n
5〜n
9は、各基の総炭素数が14以上、300以下になるよう適宜設定し得る。
【0099】
R
a、R
bとして示される「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基」の好ましい具体例として、以下の基が挙げられる:
3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル基;
3,7,11−トリメチルドデシル基;
2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイル基;
3,4,5−トリ(3’,7’,11’,15’−テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基;
3,5−ジ(3’,7’,11’,15’−テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基;
式(f):
【0101】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
10は、23〜34であり、R
10は、式(I’)で表される基である。)で表される基;
式(g):
【0103】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
11は、1〜10である。)で表される基;
式(h):
【0105】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
12は、2〜10である。)で表される基;
式(i):
【0107】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
13およびn
14は、独立してそれぞれ、1〜10である。)で表される基;および
式(j):
【0109】
(式中、
*は、Qとの結合位置であり、n
15は、2〜20である。)で表される基。
【0110】
本発明化合物の好ましい例として、以下のベンジル化合物、ジフェニルメタン化合物またはフルオレン化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるわけではない:
2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミン;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
2−[3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミン;
2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(4−ヒドロキシメチル)フェニルアミド;
4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアルコール;
2−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オール;
式:
【0112】
(式中、n
16は、23〜34を示す。)で表される化合物;
式:
【0114】
(式中、n
17は、23〜34を示す。)で表される化合物;
式:
【0116】
(式中、n
18は、1〜10を示す。)で表される化合物;および
式:
【0118】
(式中、n
19は、2〜10を示す。)で表される化合物。
【0119】
中でも、
2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミン;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
2−[3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミン;
2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(4−ヒドロキシメチル)フェニルアミド;
4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアルコール;
2−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オール;
式:
【0121】
(式中、n
16は、23または34を示す。)で表される化合物;
式:
【0123】
(式中、n
17は、23または34を示す。)で表される化合物;
式:
【0125】
(式中、n
18は、5〜7を示す。)で表される化合物;および
式:
【0128】
〔本発明化合物の製造方法〕
本発明化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば次のような反応を経て合成することができる。
原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
以下の各方法で得られる化合物の収率は用いる反応条件によって異なりうるが、これらの生成物から通常の手段(再結晶、カラムクロマトグラフィー等)によって単離・精製し、次いで、溶液温度を変化させる手段や溶液組成を変化させる手段等によって沈殿化することができる。
また、各反応において、原料化合物がヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基等を有する場合、これらの基にペプチド化学等で一般的に用いられるような保護基が導入されていてもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0129】
本発明化合物は、例えば、以下の工程により製造することができる。
【0131】
[式中のQ’は、−O−、−S−、−C(=O)O−または−NH−を示し、R
cは、水素原子、OR
d基(ここで、R
dはC
1−6アルキル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基等を示す。)または式(a):
【0133】
(式中の各記号は、前記と同意義である。)で表される基を示し、Y
1はハロゲン原子等の脱離基を示し、他の記号は、前記と同意義である。]
【0134】
工程(a)
当該工程は、式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)と略称する。)のQ’H基(ここで、Q’は、−O−、−S−、−C(=O)O−または−NH−を示す。)にR
a基を導入することにより、式(IIa)で表される化合物(以下、化合物(IIa)と略称する。)を製造する工程である。
当該反応は、Q’が、−O−、−S−または−NH−の場合、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基の存在下または非存在下で、R
a基に対応するハロゲン化物(塩化物、臭化物またはヨウ化物)、R
a基に対応するカルボン酸若しくは酸ハロゲン化物またはR
a基に対応するアルキルスルホニルオキシ化物(例えば、メタンスルホニルオキシ化物等)若しくはアリールスルホニルオキシ化物(例えば、p−トルエンスルホニルオキシ化物等)を用いて行われる。また、Q’が−O−の場合、化合物(II)とR
a基に対応する水酸化物をトリフェニルホスフィンおよびアゾジカルボン酸ジイソプロピル存在下で反応させる光延反応条件下で、当該反応を行うこともできる。さらにQ’が−C(=O)O−の場合、例えば、化合物(II)とR
a基に対応するアミン若しくは水酸化物を後述する縮合剤の存在下で反応させることにより化合物(IIa)を合成することができる。
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、カリウム tert−ブトキシド等のアルカリ金属塩;ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等のアミン類等が挙げられ、中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等が好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類、N−メチルピロリドン等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、N−メチルピロリドン等が好ましい。
反応温度は、通常50〜150℃であり、好ましくは60〜130℃である。反応時間は、通常2〜30時間であり、好ましくは3〜10時間である。
【0135】
工程(b)
当該工程は、化合物(IIa)を還元することにより、式(I−a)で表される化合物(以下、化合物(I−a)と略称する。)を製造する工程である。当該還元反応は、還元剤を用いる方法により行うことができる。
【0136】
当該還元反応に用いる還元剤としては、例えば、金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジブチルアルミニウム、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム等)等が挙げられ、中でも、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジブチルアルミニウム等が好ましい。
【0137】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でもテトラヒドロフラン、トルエン等が好ましい。
反応温度は、通常0〜100℃であり、好ましくは30〜70℃であり、反応時間は、通常1〜24時間であり、好ましくは2〜5時間である。
【0138】
工程(c)
当該工程は、化合物(IIa)(式(IIa)中、R
cが水素原子でもOR
d基でもない。)を、上記工程(b)と同様の方法により還元するか、またはグリニャール反応によりフェニル基(上記Z基に該当)を導入する工程である。
【0139】
当該グリニャール反応では、市販のグリニャール試薬(例えば、フェニルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムクロライド等)を使用するか、またはマグネシウムとハロベンゼン(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン)とを、ヨウ素またはジブロモエタン存在下で反応させることにより調製した試薬を使用し得る。
【0140】
当該グリニャール反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でもテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等が好ましい。
反応温度は、通常−20〜100℃であり、好ましくは0〜70℃であり、反応時間は、通常1〜24時間であり、好ましくは2〜10時間である。
【0141】
工程(d−1)
当該工程は、化合物(IIa)(式(IIa)中、R
cが水素原子である)を、オキシム化することにより、式(I’−a)で表される化合物(以下、化合物(I’−a)と略称する。)を製造する工程である。
【0142】
当該オキシム化反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下で化合物(IIa)とヒドロキシルアミンの酸付加塩とを反応させることにより行われる。
ヒドロキシルアミンの酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられるが、塩酸塩が特に好ましい。
かかる塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩;ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンなどの有機アミン類等が挙げられ、中でも、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が好ましい。
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;および/または、それらの混合物が挙げられ、中でも、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン等が好ましい。
反応温度は、通常10〜100℃、好ましくは20〜60℃であり、反応時間は、通常0.5〜30時間、好ましくは2〜20時間である。
【0143】
工程(d−2)
当該工程は、化合物(I’−a)を、パラジウム−炭素、ラネーニッケル等の金属触媒存在下の接触水素添加反応、または前記工程(b)と同様の金属水素化物等の還元剤により還元することにより、本発明化合物である式(I−b)で表される化合物(以下、化合物(I−b)と略称する。)を製造する工程である。
【0144】
化合物(I−b)は、工程(d−3)から工程(d−4)および工程(d−5)を経て製造することもできる。
【0145】
工程(d−3)
当該工程は、化合物(I−a)を、例えば塩化アセチル、塩化チオニル等のクロル化剤、または、例えば臭化アセチル、三臭化リン、ジフェニルホスフィン/臭素等のブロム化剤を用いてハロゲン化することにより、式(I’−b)で表される化合物(以下、化合物(I’−b)と略称する。)を製造する工程である。
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;それらの混合物が挙げられ、中でも、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン等が好ましい。
反応温度は、通常10〜150℃、好ましくは30〜80℃であり、反応時間は、通常0.5〜30時間、好ましくは2〜20時間である。
【0146】
工程(d−4)
当該工程は、化合物(I’−b)をアジ化ナトリウム等のアジド化剤を用いてアジド化することにより、式(I’−c)で表される化合物(以下、化合物(I’−c)と略称する。)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(I’−b)をアジド化剤と反応させることにより行われる。
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;それらの混合物が挙げられ、中でも、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましい。
反応温度は、通常10〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は、通常0.5〜30時間、好ましくは2〜20時間である。
【0147】
工程(d−5)
当該工程は、化合物(I’−c)をアミノ化することにより、化合物(I−b)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、水存在下、化合物(I’−c)をトリフェニルホスフィンと反応させるか、接触水素化還元により行われる。
トリフェニルホスフィンの使用量としては、化合物(I’−c)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、特に好ましくは1〜5モルである。
水の使用量は、化合物(I’−c)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、特に好ましくは1〜5モルである。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;および、それらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
反応温度は、通常10〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は、通常0.5〜30時間、好ましくは2〜20時間である。
【0148】
工程(d−6)
当該工程は、化合物(I’−b)をRNH
2(Rは前記と同義である)と反応させることにより、本発明化合物においてYが−NHR基である式(I−c)で表される化合物(以下、化合物(I−c)と略称する。)を製造する工程である。
当該工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、必要により、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第3級アミン等の塩基の存在下、化合物(I’−b)をR−NH
2で表されるアミンと反応させることにより行われる。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;および、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン溶媒または、それらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等が好ましい。
反応温度は、通常10〜100℃、好ましくは20〜60℃であり、反応時間は、通常0.5〜30時間、好ましくは2〜20時間である。
【0149】
工程(d−7)
当該工程は、化合物(I−d)を−CONH
2基または−OCONH
2基を有する化合物と反応させた後、塩基で処理することにより、化合物(I−e)を製造する工程である。
化合物(I−d)と−CONH
2基または−OCONH
2基を有する化合物との反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、酸触媒下で行われる。
酸触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等が挙げられ、中でもメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸が好ましい。
酸触媒の使用量は、化合物(I−d)1モルに対して、好ましくは0.05〜0.5モル、特に好ましくは0.1〜0.3モルである。
−CONH
2基または−OCONH
2基を有する化合物としては、例えば、Fmoc−NH
2、HCONH
2、CF
3CONH
2、AcNH
2、EtOCONH
2、Cbz−NH
2等が挙げられ、中でもFmoc−NH
2、EtOCONH
2等が好ましい。
ここで、「Fmoc−」とは、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう。)を意味し、「Cbz−」は、ベンジルオキシカルボニル基(以下、Cbz基ともいう。)を意味する。
【0150】
なお、工程(a)の原料化合物として使用するR
a化試薬[すなわち、R
a基に対応する水酸化物、ハロゲン化物、アルキルスルホニルオキシ化物(例えば、メタンスルホニルオキシ化物等)またはアリールスルホニルオキシ化物(例えば、p−トルエンスルホニルオキシ化物等)]は、市販品を用いることができる。また、R
a化試薬は、例えば、
(1)R
a基に対応する水酸化物のハロゲン化、アルキルスルホニルオキシ化またはアリールスルホニルオキシ化により、或いは
(2)R
a基に対応する不飽和水酸化物の還元反応(例えば、白金−炭素(Pt/C)、パラジウム−炭素(Pd/C)、ロジウム−炭素(Rh/C)、ラネーニッケル等の金属触媒の存在下での接触水素添加反応等)、およびそれに続くハロゲン化、アルキルスルホニルオキシ化またはアリールスルホニルオキシ化により、
製造することができる。
【0151】
当該R
a化試薬の製造において、ヒドロキシル基から脱離基への変換に用いる試薬としては、例えば、塩化チオニル、N−クロロスクシンイミド(NCS)等のクロロ化剤、臭化水素酸、臭化アセチル、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、三臭化リン、ジフェニルホスフィン/臭素等のブロモ化剤等のハロゲン化剤の他、塩化メタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル等のアルキルスルホニル化剤、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル等のアリールスルホニル化剤等が挙げられ、中でも、ハロゲン化剤である塩化チオニル、臭化水素酸等が好ましい。
【0152】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われ、溶媒としては、例えば、水;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類が挙げられ、中でも水、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が好ましい。
反応温度は、通常10〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常1〜72時間、好ましくは3〜24時間である。
【0153】
本発明化合物(前記Qが単結合である式(I)で表される化合物)は、例えば、以下の方法によっても製造することができる。すなわち、ベンゼン環上へのR
a基の導入は、
(1)R
a基に対応するハロゲン化物(塩化物、臭化物、またはヨウ化物)、R
a基に対応するカルボン酸若しくは酸ハロゲン化物を用いるフリーデルクラフツ反応、
(2)上記化合物(II)に対応する化合物(但し、Q’H基が−CHO基に置き換わった化合物)をWittig反応により増炭させた後に、接触水素添加等する方法、または
(3)金属触媒を使用したクロスカップリング等の慣用の有機合成反応
によって行うことができる。
【0154】
なお、上記各スキーム中、R
a基で示される有機基の炭素数やハロゲン原子の種類、反応試薬等は便宜上示されたものであって、上記した定義の範囲内で適宜変更することができる。
【0155】
〔有機合成反応〕
本発明化合物は、ペプチド、オリゴ核酸、その他の有機化合物の有機合成反応における保護化試薬として使用することができる。本発明化合物を、ペプチド合成等において、アミノ酸またはペプチドの保護化試薬として使用することが好ましい。具体的には、C末端のカルボキシル基、C末端を形成するアミノ酸が有するカルボキサミド基(アミド基ともいう)、即ち−CONHR’基(R’は水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す)、−SH基などの官能基、および側鎖官能基(以下、C末端等という。)の保護基として、本発明化合物をアミノ酸またはペプチドに導入することが好ましい。R’のアルキル基およびアラルキル基の説明は、上述したRの説明と同じである。R’は、好ましくは水素原子である。保護化試薬として使用する場合には、本発明化合物を活性化したり、等価体に変換してから、保護される置換基と反応させても構わない。なお、「本発明の分岐鎖含有芳香族化合物によって保護された有機化合物」を、「分岐鎖含有芳香族化合物付加体」と呼ぶ。
【0156】
本発明化合物は、各種有機合成反応用の保護化試薬として使用できる。例えば、以下の工程により、有機合成反応を実施することができる:
工程(i):本発明化合物を可溶性溶媒に溶解する工程(溶解工程)、
工程(ii):上記工程で得られた可溶性溶媒に溶解された本発明化合物と反応基質を結合させる工程(結合工程)、
工程(iii):上記工程で得られた結合物を含む反応液に水を加えて洗浄し、分層して、水層を除去する工程(分層工程)、
工程(iv):上記工程で得られた結合物を含む水洗後の溶液を反応に供し、当該反応後の生成物を含む反応液に水を加えて洗浄し、分層して、水層を除去する工程(反応および分層工程)、
工程(v):上記工程で得られた生成物を含む水洗後の溶液中の生成物から、本発明化合物由来の保護基および他の保護基を除去する工程(脱保護工程)。
なお、本明細書では、「本発明化合物由来の保護基」および「他の保護基」を区別するために、これらを、それぞれ「アンカー」および「一時保護基」と呼ぶことがある。
【0157】
上記各工程について、以下に詳細に説明する。
【0158】
工程(i)(溶解工程)
当該工程は、本発明化合物を可溶性溶媒に溶解する工程である。
可溶性溶媒としては、一般的な有機溶媒を反応に用いることができる。本発明化合物は、長鎖の分岐鎖脂肪族炭化水素基を有することから各種有機溶媒に対する溶解度が高く、これにより優れた反応性が期待できる。
可溶性溶媒としては、具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。良好な抽出操作が期待でき、工業的に使用可能であるという観点から、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエンが好ましく、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、シクロペンチルメチルエーテル、トルエンがより好ましく、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、シクロペンチルメチルエーテルが更に好ましく、酢酸イソプロピル、シクロペンチルメチルエーテルが更に一層好ましい。
【0159】
なお、「本発明化合物に求められる有機溶剤に対する溶解度」は、本来は「各反応における各原料および各生成物を基質とする場合の、これら基質と本発明化合物との結合物の有機溶剤に対する溶解度」として評価されるべきであるが、様々な基質毎に、基質と本発明化合物との結合物の溶解度を全て想定して確認することは極めて困難であるため、「本発明化合物自体の有機溶剤に対する溶解度」として評価した。
【0160】
以下、可溶性溶媒の代表として、酢酸イソプロピルを例示して、本発明化合物の特徴を示す。
20℃における酢酸イソプロピル100g中の本発明化合物の飽和溶解度の下限値は、反応基質との結合やその後の反応が進行しさえすれば特に制限はないが、工業的にあらゆる基質に対しても安定的に反応を進行させられるという観点から、1重量%が好ましく、2重量%がより好ましく、5重量%が更に好ましく、10重量%が更に一層好ましく、25重量%が殊更好ましく、50重量%が特に好ましい。
【0161】
20℃における酢酸イソプロピル100g中の本発明化合物の飽和溶解度の上限値は、十分に高濃度な反応溶液が得られれば特に制限はないが、工業的に反応の進行度合いによらず安定的に反応を進行させられるという観点から、80重量%が好ましく、85重量%がより好ましく、90重量%が更に好ましく、95重量%が更に一層好ましい。
【0162】
なお、上記可溶性溶媒には、反応時点における基質の溶解性を向上させるため;抽出時点における未反応物および副生物の水層への溶解度を向上させるため(すなわち、未反応物および副生物の除去を容易にするため);または分層性を向上させるために、各種親水性有機溶媒を添加しても構わない。
【0163】
また、抽出時点で未反応物や副生物を除去・洗浄するために、水の代わりに、各種親水性有機溶媒を使用しても構わない。具体的には、ヘプタンを反応溶媒として使用した場合に、アセトニトリルを用いて抽出・洗浄しても構わない。
【0164】
各種親水性有機溶媒としては、具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。溶解性を補助しつつ、分層性に影響を与えないという観点から、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンがより好ましく、N−メチルピロリドンが更に好ましい。
【0165】
工程(ii)(結合工程)
当該工程は、上記工程(i)で得られた可溶性溶媒に溶解された本発明化合物と反応基質を結合させる工程である。
【0166】
ここで反応基質とは、保護アミノ酸等のカルボキシル基等を有するものであり、反応基質の使用量は、本発明化合物1モルに対して、1〜10モル、好ましくは1〜5モルである。
【0167】
Yがヒドロキシル基である場合は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ジメチルアミノピリジン触媒下、縮合剤を添加することによりエステル結合が形成される。
Yが−NHR基である場合、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−5−カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBt)等の縮合添加剤の存在下、縮合剤を添加してアミド結合が形成される。
Yがハロゲン原子である場合、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基を添加することにより、エステル結合が形成される。
縮合添加剤の使用量は、反応が進行しさえすれば特に制限はないが、本発明化合物1モルに対して、好ましくは0.05〜1.5モルである。
縮合剤としては、反応が進行しさえすれば特に制限はないが、具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられる。
縮合剤の使用量は、本発明化合物1モルに対して、1〜10モル使用することができ、好ましくは1〜5モルである。
溶媒としては、例えば、上述の可溶性溶媒が好適である。
反応温度は、通常−10〜30℃、好ましくは0℃〜20℃であり、反応時間は、通常1〜30時間である。
反応の進行の確認は一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。すなわち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて反応を追跡することができる。
【0168】
工程(iii)(分層工程)
当該工程は、上記工程(ii)で得られた結合物を含む反応液に水(および/またはアセトニトリルなどの親水性有機溶媒)を添加し、攪拌、洗浄し、水溶性の反応残渣(および/または親水性有機溶媒に可溶の反応残渣)を分層(分液操作)により除去する工程である。
【0169】
工程(iv)(反応および分層工程)
当該工程は、上記工程(iii)で得られた結合物を含む水洗後の有機溶液中で所望の有機合成反応を行う工程、および当該有機合成反応後に得られる生成物を粗精製するために、該生成物が溶解している反応液に水を添加し、攪拌、洗浄し、水溶性の反応残渣を分層(分液操作)により除去する工程である。
【0170】
工程(v)(脱保護工程)
当該工程は、上記工程(iv)の分層工程後の溶液に含まれる該生成物から、最終的に本発明化合物由来の保護基(アンカー)のみ、または同時に該アンカーおよび一時保護基を除去し、目的物を得る工程である。
ここで除去されるアンカーは、式(I−f):
【0172】
(式中の各基は、前記と同義である)
で表される基である。
Yがヒドロキシル基またはハロゲン原子である場合、本発明化合物は、最初の反応基質のカルボキシル基と反応し、エステル結合を形成している。この場合、アンカーの脱保護では、ペプチドのC末端がカルボキシル基となる。
一方、Yが−NHR基である場合、本発明化合物は、最初の反応基質のカルボキシル基と反応し、アミド結合を形成している。この場合、アンカーの脱保護では、ペプチドのC末端が−CONHR基に変換される。
当該工程では、一時保護基を除去することなく、アンカーのみを選択的に除去することが可能である。例えば、XおよびZが水素原子であり、Yがヒドロキシル基であり、かつベンゼン環上の基QR
a(特にOR
a)が2位および4位に存在するか、または2位、4位および6位に存在する本発明化合物(アンカー)を使用し、ペプチド等の一時保護基がFmoc基またはCbz基である場合には、脱保護は好適には酸処理により行われる。
使用する酸としては、トリフルオロ酢酸(以下、TFAという。)、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、中でも、TFAが好ましく、これらの酸の濃度が0.1%〜5%のクロロホルムやジクロロメタンまたはTHF溶液の溶液条件下に行うことができる。
【0173】
本発明化合物に由来する保護基(アンカー)を、一時保護基と同時に除去することも可能である。その場合には、当該分野、特にペプチド合成において行われている慣用の方法が用いられるが、水素還元条件や酸性条件等で行う方法が好適に採用される。酸としてTFA、塩酸、硫酸、メシル酸、トシル酸、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が使用される。中でもTFAが特に好ましい。
酸は、用いる酸の種類によって適宜設定され、アンカーを除去するのに適当な量が用いられる。酸の使用量は、結合物1モルに対して、例えば3〜100モル、好ましくは5〜50モルである。上記TFA等の使用とともに、更なる強酸源として、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、三フッ化ホウ素・エーテラート(BF
3・Et
2O)などを加えることもできる。
反応温度は、通常0℃〜80℃、好ましくは0℃〜30℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間である。
【0174】
上記工程を利用することによりペプチドを製造することができる。本発明化合物は、アミノ酸またはペプチドのC末端等の保護化試薬として主に使用することができるが、それに限定されるわけではない。また、Yがヒドロキシル基である本発明化合物は、当該分野における慣用の方法(例えば、ホスゲンとの反応)により対応するクロロホルメート体へと変換することができるので、当該クロロホルメート体をN末端等の保護化試薬として使用することも可能である。
【0175】
上記工程を利用したペプチドの製造方法は、具体的には以下の工程を含む:
(1)本発明化合物を、該化合物の可溶性溶媒中でN−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドのC末端等と縮合させて、アンカーでC末端が保護されたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドを得る工程(C末端等の保護工程)、
(2)得られたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得る工程(N末端の脱保護工程)、
(3)得られたC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程(ペプチド鎖の伸長工程)、および
(4)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基およびC末端のアンカーを除去して、目的のペプチドを得る工程(脱保護工程)。
【0176】
本発明において「N−保護アミノ酸」および「N−保護ペプチド」とは、それぞれ、N末端のアミノ基が一時保護基で保護されており、C末端のカルボキシル基が保護されていないアミノ酸およびペプチドを意味する。これらを、以下では「P−AA−OH」等と表示することがある(PはN末端の保護基である)。
本発明において「N−保護C−保護アミノ酸」および「N−保護C−保護ペプチド」とは、それぞれ、N末端のアミノ基が一時保護基で保護されており、C末端のカルボキシル基がアンカーで保護されているアミノ酸およびペプチドを意味する。
本発明において「C−保護アミノ酸」および「C−保護ペプチド」とは、それぞれ、N末端のアミノ基が保護されておらず、C末端のカルボキシル基がアンカーで保護されているアミノ酸およびペプチドを意味する。
【0177】
工程(1)(C末端等の保護工程)
当該工程は、本発明化合物を、該化合物の可溶性溶媒中でN−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドのC末端等と縮合し、N−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドを得る工程である。当該工程は、例えば、上記工程(ii)および工程(iii)に準じて実施することができる。
【0179】
(式中、P
1はN末端のアミノ基の保護基を示し、AA
1はアミノ酸由来の基を示し、Y’はOまたはNRを示す。他の記号は前記と同意義を示す。)
本発明化合物とN−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドとのC末端での縮合反応は、好適には反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。例えば、Yがヒドロキシル基または−NHR基である場合には、縮合剤の存在下で縮合反応が行われ、Yがハロゲン原子である場合には、塩基の存在下で縮合反応が行われる。その結果、Yがヒドロキシルまたはハロゲン原子である場合は、エステル結合が形成され、Yが−NHR基である場合は、アミド結合が形成される。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)等が挙げられる。エステル結合形成反応の際には、ジメチルアミノピリジン存在下で、アミド結合形成反応の際には、HOBtやHOCt等の縮合添加剤を用いて実施される。
当該工程に用いる溶媒としては、上述の可溶性溶媒が好適である。溶媒の使用量は、本発明化合物1gに対し、好適には、2〜50mlである。
更にペプチド鎖の長さや種類に応じて、溶媒として、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル、クロロホルム等を選択することができる。これら溶媒は、2種以上の混合物を使用してもよい。
反応温度は、通常−10℃〜40℃、好ましくは0℃〜30℃である。反応時間は、通常1〜70時間である。
反応終了後、水を添加し、洗浄し、分層することにより、目的のC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを含む溶液が得られ、単離することなく、そのまま次の工程に使用することが可能である。
また、Yがヒドロキシル基である本発明化合物とP
1−AA
1−NHRで表されるアミド化合物(例えば、Fmoc−Ala−NH
2、Fmoc−Gly−NH
2等)とを酸触媒(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)下、反応に影響を及ぼさない溶媒中で、高温処理(好ましくは、50℃〜150℃、より好ましくは60℃〜120℃)することによりアミド結合によりアンカー保護された化合物を得ることも可能である。
【0180】
工程(2)(N末端の脱保護工程)
当該工程は、工程(1)で得られたN−保護C−保護アミノ酸またはN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドを得る工程である。
【0182】
(式中の記号は前記と同意義を示す。)
N末端の保護基としては、ペプチド化学等の技術分野で一般的に用いられる後述のアミノ基の保護基が使用可能であるが、本発明においては、tert−ブトキシカルボニル基(以下、Boc基ともいう。)、Cbz基、および/またはFmoc基が好適に用いられる。
脱保護条件としては、N末端の保護基の種類により適宜選択されるが、アンカーの除去とは異なる脱保護条件が好ましい。例えば、N末端の保護基がFmoc基である場合は、塩基(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、DBU、ジエチレントリアミン、アミノメチルピペリジン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等)で処理することにより行なわれ(国際公開第2009/014177号参照);Cbz基である場合は、接触還元に付すことにより行われ;Boc基である場合は、酸で処理することにより行われる(国際公開第2009/014176号参照)。当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中(例えば、上述の可溶性溶媒中)で行われる。反応終了後は分層抽出することにより、目的の脱保護体を含む溶液が得られ、単離することなく、そのまま次の工程に使用することが可能である。
【0183】
工程(3)(ペプチド鎖の伸長工程)
当該工程は、工程(2)で得られたC−保護アミノ酸またはC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程であり、例えば工程(iv)に準じて実施することができる。
【0185】
(式中、P
2はN末端のアミノ基の保護基を示し、AA
2はアミノ酸由来の基を示し、他の記号は前記と同意義を示す。)
当該工程は、工程(1)に記載の縮合剤、縮合添加剤等を使用し、ペプチド化学の分野において一般的に用いられるペプチド合成条件下で行われる。
反応終了後、水および/または親水性有機溶媒(アセトニトリル、DMF等)を添加し、洗浄し、分層することにより、N−保護C−保護ペプチドを含む溶液が得られる。N−保護C−保護ペプチドを単離することなく、そのまま次の工程に使用することが可能である。
【0186】
工程(4)(脱保護工程)
当該工程は、工程(3)で得られたN−保護C−保護ペプチドから、N末端の保護基およびC末端のアンカーを除去して、目的のペプチドを得る工程であり、上記工程(2)のN末端の保護基の脱保護工程、および工程(v)に準じて行われる。
【0188】
(式中の記号は前記と同意義を示す。)
【0189】
本発明のペプチドの製造方法において、工程(3)で得られたN−保護C−保護ペプチドに対して、工程(5)、(6)、および(7)または(7’)を1以上繰返した後に、工程(4)を行うこともできる。
(5)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護ペプチドを得る工程(N末端の脱保護工程)、
(6)得られたC−保護ペプチドのN末端に、N−保護アミノ酸またはN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る工程(ペプチド鎖の伸長工程)、および
(7)工程(6)後に、反応系に水を添加し、不純物を水層に抽出分離する工程(抽出分離工程)、または
(7’)工程(6)後に、反応系に親水性有機溶媒を添加し、不純物を親水性有機溶媒層に抽出分離する工程(抽出分離工程)。
【0190】
工程(5)(N末端の脱保護工程)
当該工程は、上記工程(2)と同様にして行われる。
【0191】
工程(6)(ペプチド鎖の伸長工程)
当該工程は、上記工程(3)と同様にして行われる。
【0192】
工程(7)、(7’)(抽出分離工程)
当該工程は、工程(6)で得られたN−保護C−保護ペプチドを分層によって有機層に残し、縮合反応により生じる不純物等を水層および/または親水性有機溶媒(アセトニトリル、DMF等)層へと追い出すことにより行われる。
【0193】
本発明の有機合成反応またはペプチド合成反応が多工程を含む場合には、途中工程で単離する工程を適宜加えてもよく、また、次工程の反応に影響を及ぼさない範囲で抽出洗浄等の前記分層工程を適宜省略することも可能である。
【0194】
各反応において、原料化合物がヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基を有する場合(特にアミノ酸またはペプチドの側鎖に官能基を有する場合)、これらの基にペプチド化学等で一般的に用いられるような保護基が導入されていてもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0195】
ヒドロキシル基の保護基としては、例えば、(C
1−C
6)アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル)、フェニル基、トリチル基、(C
7−C
10)アラルキル基(例、ベンジル)、ホルミル基、(C
1−C
6)アルキル−カルボニル基(例、アセチル、プロピオニル)、ベンゾイル基、(C
7−C
10)アラルキル−カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基、シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル)、(C
2−C
6)アルケニル基(例、1−アリル)、N−(アセチル)アミノメチル基(Acm)等が挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、(C
1−C
6)アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、(C
1−C
6)アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、ニトロ基等から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい。
【0196】
アミノ基の保護基としては、例えば、ホルミル基、(C
1−C
6)アルキル−カルボニル基(例、アセチル、プロピオニル)、(C
1−C
6)アルコキシ−カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、Boc基)、ベンゾイル基、(C
7−C
10)アラルキル−カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、(C
7−C
14)アラルキルオキシ−カルボニル基(例、CBz基、クロロベンジルオキシカルボニル基、ブロモベンジルオキシカルボニル基、Fmoc基)、トリチル基、フタロイル基、N,N−ジメチルアミノメチレン基、シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル)、(C
2−C
6)アルケニル基(例、1−アリル)等が挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、(C
1−C
6)アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、ニトロ基等から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい。
【0197】
カルボキシル基の保護基としては、例えば、(C
1−C
6)アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル)、(C
7−C
10)アラルキル基(例、ベンジル、ブロモベンジル、クロロベンジル、ニトロベンジル)、フェニル基、トリチル基、シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル)、(C
2−C
6)アルケニル基(例、1−アリル)等が挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、(C
1−C
6)アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、ニトロ基等から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい。
【0198】
カルボニル基の保護基としては、例えば、環状アセタール(例、1,3−ジオキサン)、非環状アセタール(例、ジ−(C
1−C
6)アルキルアセタール)等が挙げられる。
また、これらの保護基の除去方法は、自体公知の方法、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載の方法等に準じて行えばよい。例えば、酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウム、トリアルキルシリルハライド(例、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルブロミド等)等を使用する方法、還元法等が用いられる。
【0199】
〔ペプチドの製造用キット〕
本発明は、また、本発明化合物を必須の構成成分として含む、ペプチドの製造用キットを提供する。当該キットには、本発明化合物に加えて、ペプチドの製造方法反応を実施するのに必要な他の成分、例えば反応に用いる各種溶媒、原料となるアミノ酸(またはペプチド)等が含められていてもよい。所望により本発明化合物を用いたペプチドの製造の為のマニュアルを添付することもできる。
【実施例】
【0200】
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
以下の参考例および実施例中の収率は、mol/mol%を示す。特段の定義がない限り、本明細書中における「%」は、「重量%」を表す。また、以下の参考例および実施例中の溶媒の比率は、体積比を示す。
1H−NMRスペクトルは内部標準としてテトラメチルシランを用い、測定溶媒としてCDCl
3を使用した。NMRスペクトルは、Bruker AVANCE AV300(300MHz)核磁気共鳴装置を用いて測定した。
エレクトロスプレーイオン化液体クロマトグラフィー/質量分析(以下、LC/MSと略す。)は、LC−MSD(liquid chromatography) system 1100 Series(Agilent Technologies)を用い、フローインジェクション分析(FIA)した(溶媒:0.05%TFA THF水、イオン化モード:ESI、イオンモード:ポジティブ、質量分析部:四重極、フラグメンター電圧:100V)。
【0201】
参考例1:2,3−ジヒドロフィトールの合成【0202】
【化53】
【0203】
フィトール(10.00g,33.7mmol)をメタノールに溶解させ、Pt/C(2%,1.00g)を懸濁させて水素雰囲気下で一晩攪拌した。反応終了後、濾過してPt/Cを除去し、濾液を濃縮して2,3−ジヒドロフィトールを得た。これは精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(300MHz):δ0.80−0.93(15H,m,Me),0.98−1.70(24H,br,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−OH),3.62−3.75(2H,−C
H2−OH).
【0204】
参考例2:2,3−ジヒドロフィチルブロミドの合成【0205】
【化54】
【0206】
2,3−ジヒドロフィトール(33.7mmol)を48%臭化水素酸(100ml)に懸濁し、濃硫酸(0.17ml)を滴下して100℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後ヘキサン(200ml)で抽出し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(70ml)で2回、20%食塩水(70ml)で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム、ヘキサンのみ)で精製し、2,3−ジヒドロフィチルブロミド(「2,3−ジヒドロフィチル基」を、以下「Phy」と称することもある。)(10.41g,28.8mmol,85% vs. フィトール)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.79−0.92(15H,m,Me),0.95−1.95(24H,br,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−Br),3.35−3.52(2H,−C
H2−Br).
【0207】
参考例3:3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールの合成【0208】
【化55】
【0209】
ファルネソール(3.00g,13.5mmol)をメタノール(30ml)に溶解させ、Pt/C(2%,0.30g)を懸濁させて水素雰囲気下で一晩攪拌した。反応終了後、濾過してPt/Cを除去し、濾液を濃縮して、3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールを得た。これは精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(300MHz):δ1.09−1.43(m,24H),1.48−1.66(m,5H),3.63−3.70(m,2H).
【0210】
参考例4:1−ブロモ−3,7,11−トリメチルドデカンの合成【0211】
【化56】
【0212】
参考例3で得られた3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールを48%臭化水素酸(31ml)に懸濁し、濃硫酸(57μl)を滴下して120℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘキサン(45ml)で抽出し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で2回、20%食塩水(20ml)で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム、ヘキサンのみ)で精製し、1−ブロモ−3,7,11−トリメチルドデカン(2.98g,10.2mmol,76% vs. ファルネソール)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ1.12−1.43(m,24H),1.48−1.70(m,4H),1.84−1.90(m,1H),3.36−3.49(m,2H).
【0213】
参考例5:GI−1000(日本曹達株式会社製)(末端ジオール体;数平均分子量:約1500;n=約23)からジブロミド体(GI−1000(Br))への変換【0214】
【化57】
【0215】
GI−1000(日本曹達株式会社製)(5.02g)をヘプタン(50ml)に溶解させ、80%アセトニトリル水溶液(25ml)で2回洗浄した。ヘプタン層を濃縮して得られた残渣を48%臭化水素酸(50ml)に懸濁し、濃硫酸(100μl)を滴下して120℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘプタン(100ml)で抽出し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)で2回、20%食塩水(25ml)で1回、90%アセトニトリル水溶液(40ml)で2回洗浄した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム、ヘキサンのみ)で精製し、GI−1000のジブロミド(GI−1000(Br))(2.63g)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.90−1.06(m),1.83−1.86(m,4H),3.38−3.44(m,4H).
【0216】
参考例6:GI−2000(日本曹達株式会社製)(末端ジオール体;数平均分子量:約2100;n=約34)からジブロミド体(GI−2000(Br))への変換【0217】
【化58】
【0218】
GI−2000(日本曹達株式会社製)(5.33g)をヘプタン(50ml)に溶解させ、80%アセトニトリル水溶液(25ml)で2回洗浄した。ヘプタン層を濃縮して得られた残渣を48%臭化水素酸(50ml)に懸濁し、濃硫酸(100μl)を滴下して120℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘプタン(100ml)で抽出し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)で2回、20%食塩水(25ml)で1回、90%アセトニトリル水溶液(40ml)で2回洗浄した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム、ヘキサンのみ)で精製し、GI−2000のジブロミド(GI−2000(Br))(2.83g)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.91−1.54(m),1.81−1.88(m,4H),3.38−3.42(m,4H).
【0219】
参考例7:TERGITOL(登録商標)−TMN6(シグマ・アルドリッチ社製)(市販品(数平均分子量:543;n=約5)を以下に示す前処理した後(n:約7)に使用した。)からブロミド体(TERGITOL(Br))への変換【0220】
【化59】
【0221】
TERGITOL−TMN6(7.42g)をクロロホルム(70ml)に溶解させ、水(35ml)で分液洗浄を行った。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、濃縮乾固させ、クロロホルム(70ml)に溶解させて、氷冷下でPBr
3(1148μl,12.1mmol,1.0eq)、ピリジン(1074μl,12.1mmol,1.0eq)を滴下し、室温で4h攪拌した。溶媒を除去し、酢酸エチル(100ml)に溶解させ、0.5N塩酸(50ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)で3回、20%食塩水(50ml)で1回分液洗浄を行った。溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル→酢酸エチル:メタノール=1:1)で精製した。溶媒を除去し、酢酸エチル(100ml)で溶解させ、濾過でシリカゲルを除去してTERGITOL−TMN6のBr置換体(5.21g)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.80−0.90(m,15H,CH
3),1.00−1.60(m,11H,CH,CH
2),3.37−3.47(m,3H,CH−O,CH
2−Br),3.50−3.68(m,(O
CH2CH2)n),3.79−3.83.(t,2H,O
CH2CH
2−Br).
13C−NMR:δ20.42−27.39(CH
3,CH),30.81(CH
2−Br),42.78−47.67(CH
2),68.04(OCH
2),70.79−71.55(O
CH2CH2O).
【0222】
実施例1:2,4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールの合成【0223】
【化60】
【0224】
2,3−ジヒドロフィチルブロミド(4.50g,12.5mmol)、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(851mg,6.16mmol)、炭酸カリウム(2.58g,18.7mmol)をDMF(45ml)中に懸濁し、90℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル(150ml)で抽出し、1N塩酸(50ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)で3回、20%食塩水(50ml)で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、2,4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルデヒド(3.65g,5.22mmol,85% vs. 2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド)を得た。
【0225】
前記2,4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルデヒド(3.65g,5.22mmol)をTHF−メタノール混合溶液(40+2ml)に溶解させ、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(263mg,90%,6.26mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応混合液を0℃に冷却後1N塩酸(5ml)で反応を停止し、酢酸エチル(100ml)を加えて、1N塩酸(30ml)で2回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で1回、20%食塩水(30ml)で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ショートカラム、ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、2,4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(3.29g,4.69mmol,90%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.81−0.90(24H,m,Me(Phytyl)),0.94(6H,dd,J=2.1,6.3Hz,Me(Phytyl)),1.00−1.95(48H,br,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.23(1H,t,J=6.6Hz,OH),3.93−4.07(4H,m,−C
H2−O−Ar),4.61(2H,d,J=6.6Hz,Ar−C
H2−OH),6.43(1H,dd,J=2.1,8.1Hz,C5−
H),6.46(1H,d,J=2.1Hz,C3−
H),7.13(1H,d,J=8.1Hz,C6−
H).
【0226】
実施例2:2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズヒドロールの合成【0227】
【化61】
【0228】
ジヒドロフィチルブロミド(1.02g,2.82mmol)にDMF(15ml)、2−クロロ−5−ヒドロキシベンゾフェノン(0.99g,4.23mmol)、K
2CO
3(0.78g,5.64mmol)を加え、90℃で3時間攪拌した。反応液を室温に戻し、酢酸エチル(25ml),1N塩酸(25ml)を加えて攪拌し、分層させ水層を分離・廃棄した。有機層を精製水(25ml)で2回洗浄し、有機層を減圧留去させ、2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンゾフェノンを得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.75−0.90(15H,m,
Me),0.95−1.70(24H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.82−3.92(2H,br,−O−C
H2−C
19H
39),6.89(1H,d,J=8.3Hz,C3−
H),7.35−7.80(7H,m,C4,6−
H,Ph−
H).
【0229】
前記2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンゾフェノンにクロロホルム(20ml)、メタノール(2ml)、水素化ホウ素ナトリウム(440mg,11.6mmol)を加え、50℃で一晩攪拌した。反応液を室温に戻し、さらに氷浴下で1N塩酸(15ml)を滴下して未反応の水素化ホウ素ナトリウムを分解させた後、水層を捨て、有機層を精製水(10ml)で2回洗浄した。有機層を減圧留去し、さらにアセトニトリルで水分を共沸させ、2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズヒドロールを得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.82−0.90(15H,m,
Me),1.00−1.90(24H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.88−4.00(2H,br,−O−C
H2−C
19H
39),5.98(1H,s,Ar−C
HOH−Ph),6.75−6.90(1H,m,C3−
H),7.10−7.45(7H,m,C4,6−
H,Ph−
H).
【0230】
実施例3:1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミンの合成【0231】
【化62】
【0232】
実施例2で得られた2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズヒドロールにクロロホルム(20ml)、DMF(43μl,559μmol)、塩化チオニル(1.03ml,14.1mmol)を加え、50℃で4時間攪拌した。反応液を室温に戻して溶媒を減圧留去し、残った塩化チオニルをトルエンで共沸させ、1−クロロ−1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)フェニルメタンを得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.80−0.90(15H,m,
Me),1.00−1.90(24H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.88−4.05(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),6.48(1H,d,J=1.6Hz,Ar−C
HCl−Ph),6.77(1H,d,J=8.7Hz,C3−
H),7.10−7.55(7H,m,C4,6−
H,Ph−
H).
【0233】
前記1−クロロ−1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)フェニルメタンにDMF(15ml)、アジ化ナトリウム(786mg,12.1mmol)を加え、80℃で一晩攪拌した。反応液を室温に戻して酢酸エチル(20ml)、ヘキサン(20ml)を加え、精製水(30ml)で1回、精製水(15ml)で2回分液洗浄した後、有機層を減圧留去し、1−アジド−1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)フェニルメタンを得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85−0.95(15H,m,
Me),0.95−1.85(24H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.75−4.02(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),5.90−6.10(1H,m,Ar−C
HN
3−Ph),6.79(1H,d,J=9.0Hz,C3−
H),7.10−7.50(7H,m,C4,6−
H,Ph−
H).
【0234】
前記1−アジド−1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)フェニルメタンにTHF(20ml)、精製水(2ml)、トリフェニルホスフィン(813mg,3.10mmol)を加え、50℃で2時間攪拌した。反応液を室温に戻してTHFを留去し、ヘプタン(30ml)−50%アセトニトリル水溶液(15ml)で3回分液させ、ヘプタン層を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0→5:1)で精製し、1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミンの油状物(1.35g,2.63mmol,収率93% vs. 2,3−ジヒドロフィチルブロミド)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85−0.95(15H,m,
Me),0.95−1.85(24H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.85−4.00(2H,br,−O−C
H2−C
19H
39),5.43(1H,s,Ar−C
HNH
2−Ph),6.75(1H,d,J=8.7Hz,C3−
H),7.10−7.50(7H,m,C4,6−
H,Ph−
H).
【0235】
実施例4:(4’,4’−ビスジヒドロフィチルオキシ)ベンズヒドロールの合成【0236】
【化63】
【0237】
ジヒドロフィチルブロミド(14.3g,39.6mmol)にDMF(120ml)、4,4−ビスヒドロキシベンゾフェノン(4.04g,18.9mmol)、炭酸カリウム(7.82g,56.6mmol)を加え、80℃で5時間攪拌した。反応液を室温に戻し、酢酸エチル(300ml),1N塩酸(100ml)を加えて攪拌し、分層させ、水層を分離・廃棄した。有機層を精製水(100ml)で2回洗浄し、有機層を減圧留去させ、4,4−ビスジヒドロフィチルオキシベンゾフェノン油状物を得た。これをクロロホルム(60ml)とメタノール(10ml)に溶解させて水素化ホウ素ナトリウム(4.49g,119mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。反応液に1M塩酸(80ml)を添加し、濃縮し、酢酸エチル(100ml)を加え、1M塩酸と水にて順次洗浄した。有機層を濃縮し、(4’,4’−ビスジヒドロフィチルオキシ)ベンズヒドロール油状物を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.86−0.90(24H,m,
Me),1.10−1.40(48H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.03(1H,s,OH),3.90−3.94(4H,m,−O−C
H2−C
19H
39),5.76(1H,s,Ar−C
HN
3−Ph),6.85(4H,m,C3−
H),7.20−7.26(4H,m,C4,6−
H,Ph−
H).
【0238】
実施例5:3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールの合成【0239】
【化64】
【0240】
2,3−ジヒドロフィチルブロミド(40.6g,112mmol)、没食子酸メチル(5.90g,32.0mmol)、炭酸カリウム(22.14g,160mmol)をDMF(400ml)に懸濁させ、110℃で一晩攪拌した。反応混合液をヘキサン(800ml)で抽出し、1N塩酸(400ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(400ml)、20%食塩水(400ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後濾液の溶媒を留去して、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)安息香酸メチル(29.3g,収率93%)を得た。
【0241】
前記3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)安息香酸メチル(29.3g,30.0mmol)をTHF(400ml)に溶解させ、窒素雰囲気下、0℃で水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(1.0mol/l トルエン溶液,96ml,96mmol)を30分間かけて滴下した。室温で一晩攪拌した後、0℃で0.2N塩酸(50ml)を滴下して反応を停止した。溶媒を半分程度留去したものを、酢酸エチル(600ml)に溶解させ、1N塩酸(300ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(300ml)で1回、20%食塩水(300ml)で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾液の溶媒を留去して、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(26.8g,収率94%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85(36H,t,J=6.3Hz,Me),0.94(9H,t,J=6.3Hz,Me),1.00−2.00(72H,br,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.93−4.07(6H,m,−C
H2−O−Ar),4.60(2H,s,−O−C
H2−OH),6.57(2H,s,C2,6−
H).
【0242】
実施例6:2−(3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンジルアルコールの合成【0243】
【化65】
【0244】
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(5.00g,4.87mmol)をクロロホルム(20ml)に溶解させ、0℃で塩化チオニル(1.16g,9.74mmol)を添加して室温で1時間攪拌した。溶媒を除去して3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルクロリド(4.88g,4.82mmol,収率96%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85(36H,t,J=6.3Hz,Me),0.94(9H,t,J=6.3Hz,Me),1.00−2.00(72H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−),3.93−4.07(6H,m,CH
2−O−),4.40(2H,s,CH
2−Cl),6.57(2H,s,C2,6−
H).
【0245】
前記3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルクロリド(4.88g,4.82mmol)、炭酸カリウム(1.68g,12.2mmol,2.5eq)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(0.82g,5.36mmol,1.1eq)をDMF(50ml)に懸濁させ、80℃で一晩攪拌した。反応液をヘキサン(500ml)で抽出し、1N塩酸(250ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(250ml)で3回、20%食塩水(250ml)で1回分液洗浄を行った。溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:12)で精製して、2−(3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンズアルデヒド(5.53g,4.77mmol,収率99%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85(36H,t,J=6.3Hz,Me),0.94(9H,t,J=6.3Hz,Me),1.00−2.00(72H,br,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−),3.85(3H,s,O
Me),3.93−4.13(6H,m,CH
2−O−),5.05(2H,s,C
H2−CHO),6.51(1H,s,C3−
H),6.56(1H,d,J=9Hz,C6−
H),6.63(2H,s,C2’,6’−
H),7.83−7.86(1H,d,J=9Hz,C6−
H),10.20(1H,s,CHO).
【0246】
2−(3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンズアルデヒド(32.0mmol)をTHF−メタノール(400ml+20ml)に溶解させ、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(1.45g,38mmol)を加えた。室温で5.5時間攪拌した後、0℃で0.2N塩酸(20ml)を加えて反応を停止した。溶媒を半分程度留去し、酢酸エチル(600ml)に溶解させて、0.1N塩酸(300ml)で2回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(300ml)で1回、20%食塩水(300ml)で1回洗浄した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→ヘキサン:酢酸エチル=7:1)で精製して2−(3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンジルアルコール(30.41g,26.8mmol,収率97%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85(45H,t,J=6.3Hz,
Me(Phytol)),1.00−1.95(72H,br,C3’,4’,5’−O−CH
2C
H2C
HMe−[C
3H6C
HMe]
3−Me),2.18(1H,br,O
H),3.80(3H,s,C4−O
Me),3.90−4.08(6H,m,C3’,4’,5’−O−C
H2−C
19H
39),4.65(2H,d,J=3.6Hz,Ar−C
H2−OH),4.98(2H,s,Ar−O−C
H2−Ar),6.48(1H,dd,J=2.1,8.1Hz,C5−
H),6.54(1H,d,J=2.1Hz,C3−
H),6.61(2H,s,C2’,6’−H),7.19(1H,d,J=8.1Hz,C6−
H).
【0247】
実施例7:3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミンの合成【0248】
【化66】
【0249】
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルクロリド(6.46g,6.63mmol)をDMF−クロロホルム(60+20ml)に溶解させ、アジ化ナトリウム(861mg,13.2mmol)を加えて70℃で2時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル(160ml)を加えて、水(80ml)で2回、20%食塩水(50ml)で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアジド油状物を得て、そのまま次工程に移行させた。
【0250】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアジド油状物をTHF(80ml)に溶解させ、水(1.19ml,66.1mmol)、トリフェニルホスフィン(1.91g,7.28mmol)を加えて70℃で1時間攪拌した。室温まで冷却後、溶媒を留去し、残渣をヘプタン(160ml)に溶解させ、50%アセトニトリル水溶液(50ml)で3回、20%食塩水(50ml)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1→クロロホルム:メタノール:アンモニア水=100:10:1)で精製して3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン(5.31g,5.32mmol,収率80% vs.クロル体)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85(36H,t,J=6.3Hz,Me),0.93(9H,t,J=6.3Hz,Me),1.00−2.00(72H,br,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.79(2H,s,benzyl−
H),3.85−4.10(6H,m,−C
H2−O−Ar),6.52(2H,s,C2,6−
H).
【0251】
実施例8:3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールの合成【0252】
【化67】
【0253】
2,3−ジヒドロフィチルブロミド(895mg,2.48mmol)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル(204mg,1.21mmol)、炭酸カリウム(513mg,3.71mmol)をDMF(10ml)に懸濁させ、100℃で7時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチル(30ml)で抽出し、1N塩酸(10ml)で3回、20%食塩水(10ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾液の溶媒を留去して、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)安息香酸メチル(0.78g,収率92%)を得た。
【0254】
前記3,4,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)安息香酸メチル(0.70g,1.00mmol)をTHF(10ml)に溶解させ、窒素雰囲気下0℃で水素化アルミニウムリチウム(2.0mol/l THF溶液,1.2ml,2.4mmol)を滴下した。室温で5時間攪拌した後、0℃で水を滴下して反応を停止した。溶液を酢酸エチル(30ml)に溶解させ、1N塩酸(10ml)で3回、20%食塩水(20ml)で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ→ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して、3,4,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(0.61g,収率90%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.80−0.90(24H,m,Me),0.93(6H,d,J=6.3Hz,Me),1.00−1.90(48H,br,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.92−4.02(4H,m,C
19H
39−C
H2−O−Ar),4.62(2H,s,Ar−C
H2−OH),6.38(1H,t,J=2.1Hz,C4−H),6.50(2H,d,J=2.0Hz,C2,6−
H).
【0255】
実施例9:4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールの合成【0256】
【化68】
【0257】
2,3−ジヒドロフィチルブロミド(600mg,1.66mmol)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(223mg,1.83mmol)、炭酸カリウム(344mg,2.49mmol)をDMF(6ml)中に懸濁し、60℃で3日間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル(30ml)で抽出し、1N塩酸(6ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(6ml)で3回、20%食塩水(6ml)で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1→5:1)で精製して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルデヒド(640mg,収率100% vs. 2,3−ジヒドロフィチルブロミド)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.82−0.89(12H,m,Me),0.95(3H,d,J=6.4Hz,Me),1.00−1.95(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),4.03−4.13(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),4.62(2H,s,Ar−C
H2−OH),6.99(2H,m,C3,5−
H),7.83(2H,m,C2,6−
H),9.88(1H,s,CHO).
【0258】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルデヒド(640mg,1.66mmol)をTHF−メタノール混合溶液(7+0.3ml)に溶解させ、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(110mg,90%,2.62mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合液を0℃に冷却後、1N塩酸で反応を停止し、酢酸エチル(30ml)を加えて1N塩酸(5ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)で3回、20%食塩水(5ml)で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(619mg,1.53mmol,収率92% vs. 2,3−ジヒドロフィチルブロミド)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.81−0.90(12H,m,Me),0.94(3H,d,J=6.4Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.94−4.05(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),6.89(2H,m,C3,5−
H),7.28(2H,m,C2,6−
H).
【0259】
実施例10:4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミンの合成【0260】
【化69】
【0261】
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(619mg,1.53mmol)をクロロホルム(6ml)に溶解させ、塩化チオニル(167μl,2.29mmol)を加えて5時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−ベンジルクロリドの油状物を得て、そのまま次工程に移行させた。
【0262】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルクロリド(1.53mmol)をDMF−CHCl
3混合溶媒(6+3ml)に溶解させ、アジ化ナトリウム(298mg,4.58mmol)を加えて70℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル(20ml)を加えて、水(10ml)で5回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアジド(632mg,収率96% vs. 4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.81−0.90(12H,m,Me),0.94(3H,d,J=6.4Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.94−4.04(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),4.26(2H,s,Ar−C
H2−N
3),6.90(2H,d,J=8.6Hz,C3,5−
H),7.23(2H,d,J=8.6Hz,C2,6−
H).
【0263】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアジド(632mg,1.47mmol)をTHF(6ml)に溶解させ、水(265μl,14.7mmol)、トリフェニルホスフィン(424mg,1.62mmol)を加えて70℃で一晩攪拌した。室温まで冷却後、溶媒を留去し、残渣をヘキサン(10ml)に溶解、50%アセトニトリル水溶液(5ml)で3回洗浄した。溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1→クロロホルム:メタノール:アンモニア水=50:5:1)で精製して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン(555mg,1.37mmol,収率94%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.86(12H,t,J=6.0Hz,Me),0.94(3H,d,J=6.6Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.80(2H,s,Ar−C
H2−NH
2),3.92−4.04(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),6.87(2H,d,J=8.6Hz,C3,5−
H),7.21(2H,d,J=8.6Hz,C2,6−
H).
【0264】
実施例11:2−メトキシ−4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミンの合成【0265】
【化70】
【0266】
2,3−ジヒドロフィチルブロミド(2.00g,5.53mmol)、2−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(884mg,5.81mmol)、炭酸カリウム(1.15g,8.32mmol)をDMF(20ml)中に懸濁し、80℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル(50ml)で抽出し、1N塩酸(20ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で3回、20%食塩水(20ml)で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製して、2−メトキシ−4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルデヒド油状物を得て、次工程に移行させた。
【0267】
前記2−メトキシ−4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルデヒド、ヒドロキシルアミン塩酸塩(1.15g,16.5mmol)をジクロロメタン(25ml)に懸濁し、0℃でトリエチルアミン(3.84ml,27.7mmol)を加えて室温で3時間攪拌した。反応混合液にクロロホルム(30ml)を加え1N塩酸(15ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(15ml)で3回、20%食塩水(15ml)で1回洗浄し、溶媒を留去して、2−メトキシ−4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルドキシムを得、NMRで構造を確認後、次工程に移行させた。
1H−NMR(300MHz):δ0.82−0.92(12H,m,Me),0.95(3H,d,J=6.4Hz,Me),1.00−1.95(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.83(3H,s,O
Me),3.97−4.10(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),6.44(1H,d,J=2.2Hz,C3−
H),6.49(1H,dd,J=2.2,8.6Hz,C5−
H),7.15(1H,s,−CHNO
H),7.62(1H,d,J=8.6Hz,C6−
H),8.41(1H,s,−C
HNOH).
【0268】
前記2−メトキシ−4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンズアルドキシムをメタノール−THF混合溶媒(20+10ml)に溶解させ、10%パラジウム−炭素(K)(200mg)を加えて水素雰囲気下室温で一晩攪拌した。濾液の溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:アンモニア水=100:10:1)で精製して、2−メトキシ−4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン(1.87g,4.31mmol,収率78% vs. 2,3−ジヒドロフィチルブロミド)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.80−0.90(12H,m,Me),0.94(3H,d,J=6.4Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),3.74(2H,s,Ar−C
H2−NH
2),3.82(3H,s,O
Me),3.90−4.05(2H,m,−O−C
H2−C
19H
39),6.42(1H,dd,J=2.3,8.1Hz,C5−
H),6.46(1H,d,J=2.1Hz,C3−
H),7.09(1H,d,J=8.1Hz,C6−
H).
【0269】
実施例12:4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアルコールの合成【0270】
【化71】
【0271】
0℃で、メタノール(10ml)に塩化チオニル(1.92ml,26.3mmol)を滴下し、4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸(2.00g,13.1mmol)を加えて、60℃で一晩攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、残渣を酢酸エチル(20ml)に溶解させて5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)で2回、1N塩酸(10ml)で1回、水(10ml)で1回洗浄し、溶媒を留去して、4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸メチル(2.24g,収率100%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ2.57(3H,s,C2−
Me),3.86(3H,s,−COO
Me),5.68(1H,s,br,−O
H),6.66−6.72(2H,m,C3,5−
H),7.89(1H,dd,J=2.4,6.9Hz,C6−
H).
【0272】
前記4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸メチル(269mg,1.62mmol)、2,3−ジヒドロフィチルブロミド(389mg,1.08mmol)、炭酸カリウム(297mg,2.15mmol)をDMF(5ml)中に懸濁し、90℃で5時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘキサン−酢酸エチル(10+10ml)で抽出し、1N塩酸(15ml)で1回、水(10ml)で2回洗浄し、溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチル安息香酸メチルを得、NMRで構造を確認後、次工程に移行させた。
1H−NMR(300MHz):δ0.85(12H,t,J=6.6Hz,Me),0.94(3H,d,J=6.6Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.59(3H,s,C2−
Me),3.85(3H,s,−COO
Me),4.02(2H,dt,J=3.0,6.7Hz,O−C
H2−C
19H
39),6.65−6.76(2H,m,C3,5−
H),7.85−7.96(1H,m,C6−
H).
【0273】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチル安息香酸メチル(1.08mmol)をTHF(6ml)に溶解させ、DIBAL(1.0M,4.9ml,4.9mmol)を加え、室温で100分間攪拌した。反応混合液を0℃に冷却後、1N塩酸(15ml)で反応を停止し、ヘキサン(10ml)、酢酸エチル(10ml)を加えて分液し、0.5N塩酸(10ml)で1回、水(10ml)で1回洗浄し、溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアルコールを得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.86(12H,t,J=6.3Hz,Me),0.94(3H,d,J=6.4Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.36(3H,s,C2−
Me),3.98(2H,dt,J=3.0,6.7Hz,O−C
H2−C
19H
39),4.63(2H,d,J=4.7Hz,Ar−C
H2−OH),6.60−6.77(2H,m,C3,5−
H),7.15−7.25(1H,m,C6−
H).
【0274】
実施例13:4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミンの合成【0275】
【化72】
【0276】
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチル−ベンジルアルコール(1.08mmol)をクロロホルム(8ml)に溶解させ、チオニルクロリド(393μl,5.38mmol)を加えて50℃で4.5時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルクロリドを得、NMRで構造を確認後、次工程に移行させた。
1H−NMR(300MHz):δ0.86(12H,t,J=6.3Hz,Me),0.93(3H,d,J=6.3Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.40(3H,s,C2−
Me),3.97(2H,dt,J=2.7,6.7Hz,O−C
H2−C
19H
39),4.59(2H,s,Ar−C
H2−Cl),6.69(1H,dd,J=2.4,8.3Hz,C5−
H),6.74(1H,d,J=2.3Hz,C3−
H),7.21(1H,d,J=8.3Hz,C6−
H).
【0277】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルクロリド(1.08mmol)をDMF(6ml)に溶解させ、アジ化ナトリウム(350mg,5.38mmol)を加えて70℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘキサン(10ml)、酢酸エチル(5ml)を加えて、水(10ml)で3回洗浄した。濾液の溶媒を留去して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアジドを得、NMRで構造を確認後、次工程に移行させた。
1H−NMR(300MHz):δ0.86(12H,t,J=6.3Hz,Me),0.94(3H,d,J=6.3Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.34(3H,s,C2−
Me),3.98(2H,dt,J=3.0,6.6Hz,O−C
H2−C
19H
39),4.28(2H,s,Ar−C
H2−N
3),6.71(1H,dd,J=2.6,8.2Hz,C5−
H),6.77(1H,d,J=2.3Hz,C3−
H),7.15(1H,d,J=8.3Hz,C6−
H).
【0278】
前記4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアジド(1.08mmol)をTHF(10ml)に溶解させ、水(2ml)、トリフェニルホスフィン(565mg,2.15mmol)を加えて60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、溶媒を留去し、残渣をヘプタン(10ml)に溶解させ、50%アセトニトリル水溶液(10ml)で3回洗浄した。溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1→クロロホルム:メタノール:アンモニア水=50:5:1)で精製して、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミン(281mg,0.67mmol,収率62% vs. 2,3−ジヒドロフィチルブロミド)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.86(12H,t,J=6.3Hz,Me),0.93(3H,d,J=6.6Hz,Me),1.00−1.90(24H,m,Me
2C
H−[C
3H6−C
HMe]
3−C
H2CH
2−O−Ar),2.32(3H,s,C2−
Me),3.79(2H,s,Ar−C
H2−NH
2),3.97(2H,dt,J=3.0,6.7Hz,O−C
H2−C
19H
39),6.71(1H,dd,J=2.6,8.2Hz,C5−
H),6.68−6.75(2H,br,C3,5−
H),7.17(1H,d,J=8.7Hz,C6−
H).
【0279】
実施例14:2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(4−ヒドロキシメチル)フェニルアミドの合成【0280】
【化73】
【0281】
2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(2.81g,9.88mmol)、4−アミノベンジルアルコール(1.00g,8.12mmol)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBt)(133mg,0.812mmol)を、クロロホルム(10ml)に懸濁させて、0℃でEDC・HCl(2.05g,10.7mmol)加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(4−ヒドロキシメチル)フェニルアミド(2.69g,6.67mmol,収率82%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.92−0.99(m,24H),1.01−1.09(m,6H),1.19−1.23(m,4H),4.58(s,2H),7.21(d,2H,J=6Hz),7.43(d,2H,J=9Hz),7.53−7.66(b,1H).
【0282】
実施例15:4−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアルコールの合成【0283】
【化74】
【0284】
参考例4で得られた1−ブロモ−3,7,11−トリメチルドデカン(1.00g,3.43mmol)をDMF(5ml)に溶解させ、4−ヒドロキシベンジルアルコール(0.85g,6.85mmol)と炭酸カリウム(1.42g,10.3mmol)を加えて120℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、クロロホルム(50ml)で抽出し、1N塩酸(30ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で1回、精製水(30ml)で1回洗浄した。有機層の溶媒を留去して、4−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアルコール(1.09g,3.26mmol,収率95% vs. 1−ブロモ−3,7,11−トリメチルドデカン)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.81−0.89(m,12H),1.08−1.37(m,12H),1.48−1.83(m,5H),3.96−4.02(m,2H),4.62(s,2H),6.89(d,2H,J=9Hz),7.29(d,2H,J=9Hz).
【0285】
実施例16:2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オールの合成【0286】
【化75】
【0287】
参考例4で得られた1−ブロモ−3,7,11−トリメチルドデカン(780mg,2.68mmol)をDMF(5ml)に溶解させ、2−ヒドロキシ−9−フルオレノン(1.05g,5.35mmol)と炭酸カリウム(1.06g,7.67mmol)を加えて100℃で5時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘプタン(30ml)で抽出し、1N塩酸(15ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(15ml)で1回、メタノール(15ml)で3回洗浄した。有機層の溶媒を留去して、2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−フルオレノン(650mg,1.60mmol,収率60% vs. 1−ブロモ−3,7,11−トリメチルドデカン)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.84−0.96(m,12H),1.08−1.30(m,12H),1.50−1.70(m,5H),4.04−4.07(m,2H),6.98(d,1H,J=9Hz),7.17−7.22(m,1H),7.28−7.30(m,1H),7.38−7.44(m,3H),7.60(d,1H,J=9Hz).
【0288】
窒素雰囲気下、マグネシウム(280mg,11.5mmol)を脱水THF(2ml)に懸濁し、ヨウ素(45mg,0.18mmol)を加えた後、ブロモベンゼン(390μl,3.70mmol)をゆっくり滴下してから、40℃で4時間攪拌した。反応混合液に前記2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−フルオレノン(300mg,0.74mmol)を加え、50℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、1N塩酸(30ml)で反応を停止した。クロロホルム(40ml)で抽出し、1N塩酸(20ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で3回、20%食塩水(20ml)で1回洗浄した。有機層の溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離・精製し(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)、2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オール(181mg,0.37mmol,収率51%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.86−0.92(m,12H),1.04−1.25(m,12H),1.50−1.59(m,5H),2.49(s,1H),3.92−3.96(m,2H),6.80−6.91(m,3H),7.16−40(m,7H),7.52−7.63(m,2H).
【0289】
実施例17:2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−ブロモ−9−フェニルフルオレンの合成【0290】
【化76】
【0291】
前記2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オール(181mg,0.37mmol)をクロロホルム(2ml)に溶解させ、臭化アセチル(55μl,0.74mmol)を滴下して6時間攪拌した。反応終了後溶媒を留去し、残渣をヘプタンに溶解させ、アセトニトリルで3回洗浄し、ヘプタン層の溶媒を留去し、2−(3’,7’,11’−トリメチルドデシルオキシ)−9−ブロモ−9−フェニルフルオレン(126mg,0.23mmol,収率62%)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.83−0.94(m,12H),1.09−1.36(m,12H),1.50−1.59(m,5H),3.96−4.01(m,2H),6.90−6.93(m,1H),7.03(s,1H),7.21−7.35(m,5H),7.44−7.48(m,2H),7.54−7.58(m,3H).
【0292】
実施例18:GI−1000(日本曹達株式会社製)のジ(2−ヒドロキシメチル−5−メトキシフェノキシ)体(GI−1000(2−ヒドロキシメチル−5−メトキシフェノキシ))の合成【0293】
【化77】
【0294】
参考例5で得られたGI−1000(Br)(1.70g)をDMF(20ml)に溶解させ、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(1.00g,6.57mmol)と炭酸カリウム(1.17g,8.47mmol)を加えて120℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル/ヘキサン(1:1,20ml)で抽出し、1N塩酸(10ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で1回、精製水(30ml)で1回洗浄した。有機層の溶媒を留去し、メタノールでデカントし、濃縮して、GI−1000(2−ホルミル−5−メトキシフェノキシ)(1.60g)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.98−1.49(m),1.82−1.87(m,4H),3.87(s,6H),4.01−4.06(m,4H),6.43(s,2H),6.53(d,2H,J=7.8Hz),7.82(d,2H,J=7.8Hz),10.34(s,2H)
【0295】
前記GI−1000(2−ホルミル−5−メトキシフェノキシ)(1.60g)をクロロホルム(16ml)/メタノール(1.6ml)混合溶液に溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム(0.38g,9.99mmol)を加えて60℃で2時間半攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、1N塩酸(16ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(16ml)で3回、20%食塩水(16ml)で1回洗浄した。有機層の溶媒を留去し、メタノールでデカントし、濃縮して、GI−1000(2−ヒドロキシメチル−5−メトキシフェノキシ)(1.84g)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ1.06−1.43(m),1.71−1.83(m,4H),3.80(s,6H),3.98−4.01(m,4H),4.61(s,2H),6.42−6.45(m,4H),7.16(d,2H,J=7.9Hz).
【0296】
実施例19:GI−1000(日本曹達株式会社製)のジ(3−ヒドロキシメチルフェノキシ)体(Bzl(3−O−GI−1000)−OH)の合成【0297】
【化78】
【0298】
参考例5で得られたGI−1000(Br)(563mg)をDMF(5ml)に溶解させ、3−ヒドロキシベンジルアルコール(280mg,2.26mmol)と炭酸カリウム(389mg,2.81mmol)を加えて100℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル/ヘキサン(1:1,25ml)で抽出し、1N塩酸(10ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)で1回、メタノール(10ml)で1回洗浄した。有機層の溶媒を留去して、Bzl(3−O−GI−1000)−OH(580mg)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85−1.28(m),3.94−3.98(m,4H),4,67(s,4H),6.83(d,2H,J=9Hz),6.91−6,93(m,4H),7.23−7.26(m,2H).
【0299】
実施例20:GI−2000(日本曹達株式会社製)のジ(3−ヒドロキシメチルフェノキシ)体(Bzl(3−O−GI−2000)−OH)の合成【0300】
【化79】
【0301】
参考例6で得られたGI−2000(Br)(503mg)をDMF(5ml)に溶解させ、3−ヒドロキシベンジルアルコール(125mg,1.00mmol)と炭酸カリウム(174mg,1.26mmol)を加えて100℃で一晩攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、酢酸エチル/ヘキサン(1:1,25ml)で抽出し、1N塩酸(10ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)で1回、メタノール(10ml)で1回洗浄した。有機層の溶媒を留去して、Bzl(3−O−GI−2000)−OH(512mg)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.88−1.31(m),3.94−4.01(m,4H),4,67(s,4H),6.83(d,2H,J=9Hz),6.91−6.93(m,4H),7.23−7.28(m,2H).
【0302】
実施例21:3−ヒドロキシメチルフェノールのTERGITOL化体の合成【0303】
【化80】
【0304】
参考例7で得られたTERGITOL(登録商標) TMN−6のBr体(5.21g)、炭酸カリウム(2.93g,21.2mmol,2.5eq)、3−ヒドロキシ−ベンジルアルコール(1.16g,9.32mmol,1.1eq)をDMF(50ml)に懸濁させ、80℃で一晩攪拌した。反応液を酢酸エチル(500ml)で抽出し、0.5N塩酸(250ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(250ml)で3回、20%食塩水(250ml)で1回分液洗浄を行った。溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル→酢酸エチル:メタノール=1:1)で精製した。溶媒を除去し、酢酸エチル(100ml)で溶解させ、濾過でシリカゲルを除去してBzl(3−TERGITOL)−OH(3.93g)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.80−0.90(m,15H,CH
3),1.00−1.60(m,11H,CH,CH
2),3.50−3.68(m,(O
CH2CH2)n),4.55−4.59.(s,2H,
CH2−OH),6.70−6.79(m,2H,C2,C4−H),6.87(s,1H,C6−H),7.08−7.13(t,1H,C5−H).
13C−NMR:δ20.42−27.39(CH
3,CH),42.78−47.67(CH
2),68.04(OCH
2,CH
2OH),70.79−71.55(O
CH2CH2O),71.07(
CH2O−BzlOH),114.21(C4),114.62(C2),118.19(C6),129.47(C5),143.19(C1),157.29(C3).
【0305】
実施例22:サーフォナミンB−30(三井化学ファイン社製またはハンツマンコーポレーション製)(数平均分子量:約325;n=約2)の(4−ヒドロキシメチル)カルボキサミド体の合成【0306】
【化81】
【0307】
サーフォナミンB−30(2.0g)をクロロホルム(20ml)に溶解させ、水(10ml)で3回洗浄して有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、濃縮乾固した。残査をクロロホルム(20ml)にて溶解させ、テレフタル酸モノメチル(1.0g)を加えて、EDC・HCl(1.15g)とHOBt(72mg)を加えて室温下、3時間反応させた後、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄し、濃縮して油状物を得た。該油状物にテトラヒドロフランを加えて、氷冷下で1M DIBALトルエン溶液を4.2当量加えて反応させた。1M塩酸を加えて反応を停止させ、クロロホルムを加えて、1M塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄し、ベンジルアルコール体(1.30g)を得た。
【0308】
実施例1、3、5、19、20の化合物を保護化試薬として使用し、ペプチド合成を行った。
【0309】
実施例23:2,4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールとFmoc−Ser(tBu)−OHとの縮合によるFmoc−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
Fmoc−Ser(tBu)−OH(3.28g,8.56mmol)を酢酸イソプロピル(30ml)に溶解させ、0℃でEDC・HCl(1.80g,9.39mmol)を加え、室温で30分攪拌後、実施例1で得られた2,4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(3.00g,4.28mmol)の酢酸イソプロピル(15ml)溶液、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(105mg,0.86mmol)を加えて一晩攪拌した。反応混合液を0.1N塩酸(15ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(15ml)で3回、20%食塩水(15ml)で1回洗浄することにより、反応系中で縮合体(Fmoc−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy))へと変換し、続く反応に用いた。
【0310】
実施例24:Fmoc−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の脱FmocによるH−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
Fmoc−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)(4.28mmol)の酢酸イソプロピル溶液(45ml)に、0℃で4−アミノメチルピペリジン(1.47g,12.9mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応混合液に二酸化炭素を通気し、生成した炭酸塩を濾過により除去し、濾液をpH=5.5に調整した1Mリン酸ナトリウム水溶液(30ml)で3回、10%炭酸ナトリウム水溶液(30ml)で1回、20%食塩水(30ml)で1回洗浄することにより、反応系中で脱Fmoc体(H−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy))へと変換し、続く反応に用いた。
【0311】
実施例25:H−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)とFmoc−Lys(Boc)−OHとの縮合によるFmoc−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
H−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)(4.18mmol)の酢酸イソプロピル溶液(55ml)にHOBt(57mg,0.42mmol)、Fmoc−Lys(Boc)−OH(2.16g,4.61mmol)を溶解させ、0℃でEDC・HCl(970mg,5.06mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応混合液を0.1N塩酸(30ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で3回、20%食塩水(30ml)で1回洗浄することにより、反応系中でFmoc−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)へと変換し、続く反応に用いた。
【0312】
実施例26:Fmoc−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の脱FmocによるH−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
Fmoc−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)(4.18mmol)の酢酸イソプロピル溶液(55ml)に、0℃で4−アミノメチルピペリジン(1.91g,16.7mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応混合液に二酸化炭素を通気し、生成した炭酸塩を濾過により除去し、濾液を、pH=5.5のリン酸ナトリウム1M水溶液(30ml)で3回、10%炭酸ナトリウム水溶液(30ml)で1回、20%食塩水(30ml)で1回洗浄することにより、反応系中でH−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)へと変換し、続く反応に用いた。
【0313】
実施例27:H−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)とFmoc−Glu(OtBu)−OHとの縮合によるFmoc−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
H−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)(4.18mmol)の酢酸イソプロピル溶液(105ml)にHOBt(57mg,0.42mmol)、Fmoc−Glu(OtBu)−OH(2.32g,5.23mmol)を溶解させ、0℃でEDC・HCl(1.09g,5.69mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応混合液を0.1N塩酸(30ml)で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で3回、20%食塩水(30ml)で1回洗浄することにより、反応系中でFmoc−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)へと変換し、続く反応に用いた。
【0314】
実施例28:Fmoc−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の脱FmocによるH−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
Fmoc−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の酢酸イソプロピル溶液(50ml)に、0℃で4−アミノメチルピペリジン(1.43g,12.5mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応混合液に二酸化炭素を通気し、生成した炭酸塩を濾過により除去し、濾液を、pH=6.86のリン酸ナトリウム1M水溶液(20ml)で3回、10%炭酸ナトリウム水溶液(20ml)で1回、20%食塩水(20ml)で1回洗浄することにより、反応系中でH−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)へと変換し、続く反応に用いた。
【0315】
実施例29:H−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)とFmoc−Ala−OHとの縮合によるFmoc−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
H−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の酢酸イソプロピル溶液(150ml)にHOBt(57mg,0.42mmol)、Fmoc−Ala(1.52g,4.62mmol)を溶解させ、0℃でEDC・HCl(970mg,5.06mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応混合液を0.1N塩酸(30ml)で3回、5%炭酸ナトリウム水溶液(30ml)で3回、20%食塩水(30ml)で1回洗浄することにより、反応系中でFmoc−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)へと変換し、続く反応に用いた。
【0316】
実施例30:Fmoc−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の脱FmocによるH−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の合成
Fmoc−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の酢酸イソプロピル溶液(100ml)に、0℃で4−アミノメチルピペリジン(1.43g,12.5mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応混合液に二酸化炭素を通気し、生成した炭酸塩を濾過により除去し、濾液を、pH=6.86の1Mリン酸ナトリウム水溶液(20ml)で3回、10%炭酸ナトリウム水溶液(20ml)で1回、20%食塩水(20ml)で1回洗浄し、濃縮することにより、H−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)を油状物として得た。
【0317】
実施例31:H−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の脱保護によるH−Ala−Glu−Lys−Ser−OH・2TFA塩の合成
実施例30で得られたH−Ala−Glu(OtBu)−Lys(Boc)−Ser(tBu)−OBzl(2,4−OPhy)の油状物の全重量の1/20をクロロホルム(10ml)に溶解させ、濃縮し、残留する酢酸イソプロピルを留去した。その後に氷冷下でトリフルオロ酢酸(TFA):H
2O:トリイソプロピルシランの95:2.5:2.5にした溶液中で脱保護し、反応完結後に濃縮し、残査にジエチルエーテル(5ml)を加えて攪拌し、沈殿物を濾過して乾燥することにより、H−Ala−Glu−Lys−Ser−OH・2TFA塩を101mg取得した。これは、全9工程を通して、収率71%(vs. HOBzl(2,4−OPhy))に相当する。
ESIMS MH
+ 434.0
【0318】
実施例32:1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミン(以下、NH2−Dpm(COP)と略称する。)とBoc−Cys(Acm)−OHとの縮合によるBoc−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の合成
実施例3で得られたNH
2−Dpm(COP)(950mg,1.85mmol)を酢酸イソプロピル(20ml)に溶解させ、10%炭酸ナトリウム水溶液、および20%食塩水で分液洗浄した後、有機層に室温下で、Boc−Cys(Acm)−OH(594mg,2.03mmol)、HOBt(27mg,0.20mmol)、氷浴下でEDC・HCl(428mg,2.24mmol)をそれぞれ加え、室温で3時間攪拌させた。ジメチルプロパンジアミン(46μl,0.37mmol)を加えて10分間攪拌した後、反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で2回、0.1N塩酸(20ml)で2回、20%食塩水(20ml)で1回分液洗浄した。有機層を減圧留去し、Boc−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を油状物として得た。
【0319】
実施例33:Boc−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Pro−OHとの縮合によるBoc−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の合成
実施例32で得られたBoc−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)(1.85mmol)を酢酸イソプロピル(20ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(600μl,9.2mmol)を氷浴下で滴下した。室温に戻して3時間攪拌した後、再度氷浴下で10%炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を加え、攪拌した。水層を分離・廃棄し、有機層を20%食塩水(20ml)で1回洗浄することにより、反応系中でH−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)へと変換した。
Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)(1.55mmol)を含む上記反応液に室温下でBoc−Pro−OH(367mg,1.70mmol)、HOBt(23mg,0.17mmol)、氷浴下でEDC・HCl(360mg,1.88mol)をそれぞれ加え、室温に戻し一晩攪拌した。ジメチルプロパンジアミン(39μl,0.31mmol)を加えて10分間攪拌した後、反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で2回、0.1N塩酸(20ml)で2回、20%食塩水(20ml)で1回分液洗浄した。有機層を減圧留去することにより、Boc−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を油状物として得た。
【0320】
実施例34:Boc−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Trp(CHO)−OHとの縮合によるBoc−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の合成
実施例33で得られたBoc−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)(1.55mmol)を酢酸イソプロピル(15ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(500μl,7.7mmol)を氷浴下で滴下した。室温に戻して3時間攪拌した後、再度氷浴下で10%炭酸ナトリウム水溶液(20ml)、精製水(10ml)を加え、少しの間攪拌した。水層を分離・廃棄し、有機層を20%食塩水(20ml)で1回洗浄することにより、反応系中でPro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)へと変換した。
Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を含む上記反応液に室温下で、Boc−Trp(CHO)−OH(566mg,1.69mmol)、HOBt(23mg,0.17mmol)、氷浴下でEDC・HCl(360mg,1.88mol)をそれぞれ加え、室温に戻し一晩攪拌した。ジメチルプロパンジアミン(39μl,0.31mmol)を加えて10分間撹拌した後、反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で2回、0.1N塩酸(20ml)で2回、20%食塩水(20ml)で1回分液洗浄した。有機層を減圧留去することにより、Boc−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を油状物として得た。
【0321】
実施例35:Boc−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Asp(OBzl)−OHとの縮合によるBoc−Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の合成
実施例34で得られたBoc−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)(1.29mmol)を酢酸イソプロピル(20ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(400μl,6.2mmol)を氷浴下で滴下し、室温で3時間攪拌した。メタンスルホン酸(100μl,1.5mmol)を追加し、さらに3時間攪拌した後、メタンスルホン酸(200μl,3.1mmol)を加え、2時間攪拌した。氷浴下で10%炭酸ナトリウム水溶液(25ml)を加え、攪拌した後、水層を分離・廃棄し、有機層を20%食塩水(20ml)で1回洗浄することにより、反応系中で、Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)へと変換した。
Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を含む上記反応液に室温下でBoc−Asp(OBzl)−OH(451mg,1.39mmol)、HOBt(19mg,0.14mmol)、氷浴下でEDC・HCl(297mg,1.55mol)をそれぞれ加え、室温に戻し一晩攪拌した。ジメチルプロパンジアミン(39μl,0.31mmol)を加えて10分間撹拌した後、反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で2回、0.1N塩酸(20ml)で2回、20%食塩水(20ml)で1回分液洗浄した。有機層を減圧留去することにより、Boc−Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を油状物として得た。
【0322】
実施例36:Boc−Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Gly−OHとの縮合によるBoc−Gly−Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)の合成
実施例35で得られたBoc−Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)(1.29mmol)を酢酸イソプロピル(20ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(400μl,6.2mmol)を氷浴下で滴下し室温で3時間攪拌した。メタンスルホン酸(300μl,4.6mmol)を追加しさらに2時間攪拌した後、氷浴下で10%炭酸ナトリウム水溶液(25ml)を加え、少しの間攪拌した。水層を分離・廃棄し、有機層を20%食塩水(20ml)で1回洗浄することにより、反応系中で、Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)へと変換した。
Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を含む上記反応液に室温下でBoc−Gly−OH(245mg,1.40mmol)、HOBt(19mg,0.14mmol)、氷浴下でEDC・HCl(297mg,1.55mol)をそれぞれ加え、室温に戻し一晩攪拌した。ジメチルプロパンジアミン(39μl,0.31mmol)を加えて10分間撹拌した後、反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)で2回、0.1N塩酸(20ml)で2回、20%食塩水(20ml)で1回分液洗浄した。有機層を減圧留去することにより、Boc−Gly−Asp(OBzl)−Trp(CHO)−Pro−Cys(Acm)−NH−Dpm(COP)を油状物として得た。
【0323】
実施例37:Bzl−(3−O−GI−1000)−OHとBoc−Leu−OHとの縮合によるBoc−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)の合成【0324】
【化82】
【0325】
実施例19で得られたBzl−(3−O−GI−1000)−OH(450mg)を酢酸イソプロピル(4ml)に溶解させ、DMAP(13mg,0.11mmol)とBoc−Leu・H
2O(321mg,1.29mmol)とEDC・HCl(270mg,1.41mmol)を加えて40℃で6時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘプタン(30ml)を加え、90%アセトニトリル水溶液(15ml)で6回洗浄した。有機層の溶媒を留去して、Boc−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)(376mg)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.86−1.57(m),2.01−2.04(m,3H),3.93−3.97(m,2H),4.88(t,1H),5.11(s,2H),6.84−6.91(m,3H),7.23−7.26(m,1H).
【0326】
実施例38:Boc−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Tyr(Bzl)−OHとの縮合によるBoc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)の合成【0327】
【化83】
【0328】
実施例37で得られたBoc−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)(100mg)を酢酸イソプロピル(1ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(32μl,0.49mmol)を滴下し、5時間攪拌した。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、20%食塩水で1回洗浄することにより、反応系中で、H−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)へと変換した。
H−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)を含む上記反応液に、HOBt(5mg,0.04mmol)とBoc−Tyr(Bzl)−OH(140mg,0.38mmol)とEDC・HCl(79mg,0.41mmol)を加え、一晩攪拌した。反応液にN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMPDA)(5μl,0.04mmol)を加えて反応を停止し、1N塩酸で3回洗浄し、有機層を濃縮することにより、Boc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)(120mg)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85−1.59(m),2.02−2.10(m,3H),2.98−3.12(m,2H),3.93−3.96(m,2H),4.51−4.62(m,1H),4.39−5.09(m,5H),6.87−6.93(m,5H),7.09−7.12(m,3H),7.29−7.43(m,5H).
【0329】
実施例39:Boc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Glu(OBzl)−OHとの縮合によるBoc−Glu(OBzl)−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)の合成【0330】
【化84】
【0331】
実施例38で得られたBoc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)(100mg)を酢酸イソプロピル(1ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(32μl,0.49mmol)を滴下し、6時間攪拌した。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、20%食塩水で1回洗浄した。この有機層に、HOBt(5mg,0.04mmol)とBoc−Glu(OBzl)−OH(140mg,0.38mmol)とEDC・HCl(79mg,0.41mmol)を加え、40℃で一晩攪拌した。反応液にDMPDA(5μl,0.04mmol)を加えてクエンチし、1N塩酸で3回洗浄し、有機層を濃縮してBoc−Glu(OBzl)−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−1000)(100mg)を得た。
【0332】
実施例40:Bzl(3−O−GI−2000)−OHとBoc−Leu−OHとの縮合によるBoc−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)の合成
実施例20で得られたBzl(3−O−GI−2000)−OH(402mg)を酢酸イソプロピル(4ml)に溶解させ、DMAP(5mg,0.06mmol)とBoc−Leu−OH(151mg,0.65mmol)とEDC・HCl(128mg,0.70mmol)を加えて40℃で4時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、ヘプタン(30ml)を加え、90%アセトニトリル水溶液(15ml)で6回洗浄した。有機層の溶媒を留去して、Boc−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)(310mg)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.88−1.51(m),2.01−2.04(m,3H),3.93−3.99(m,2H),4.88−4.90(m,1H),5.13(s,2H),6.84−6.91(m,3H),7.23−7.24(m,1H).
【0333】
実施例41:Boc−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Tyr(Bzl)−OHとの縮合によるBoc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)の合成
実施例40で得られたBoc−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)(100mg)を酢酸イソプロピル(1ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(16μl,0.25mmol)を滴下し、3時間攪拌した。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、20%食塩水で1回洗浄した。この有機層に、HOBt(3mg,0.02mmol)とBoc−Tyr(Bzl)−OH(70mg,0.19mmol)とEDC・HCl(40mg,0.20mmol)を加え、40℃で一晩攪拌した。反応液にDMPDA(5μl,0.04mmol)を加えて反応を停止させ、1N塩酸で3回洗浄し、有機層を濃縮してBoc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)(120mg)を得た。
1H−NMR(300MHz):δ0.85−1.59(m),2.04−2.10(m,3H),2.99−3.15(m,2H),3.92−3.99(m,2H),4.50−4.63(m,1H),4.41−5.08(m,5H),6.86−6.95(m,5H),7.09−7.15(m,3H),7.27−7.44(m,5H)
【0334】
実施例42:Boc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)の脱Boc、およびそれに続くBoc−Glu(OBzl)−OHとの縮合によるBoc−Glu(OBzl)−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)の合成
Boc−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)(100mg)を酢酸イソプロピル(1ml)に溶解させ、メタンスルホン酸(32μl,0.49mmol)を滴下し、6時間攪拌した。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、20%食塩水で1回洗浄した。この有機層に、HOBt(5mg,0.04mmol)とBoc−Glu(OBzl)−OH(140mg,0.38mmol)とEDC・HCl(79mg,0.41mmol)を加え、40℃で一晩攪拌した。反応液にDMPDA(5μl,0.04mmol)を加えてクエンチし、1N塩酸で3回洗浄し、有機層を濃縮してBoc−Glu(OBzl)−Tyr(Bzl)−Leu−OBzl(3−O−GI−2000)(100mg)を得た。
【0335】
実施例43:3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールとFmoc−Leu−OHとの縮合によるFmoc−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成、およびそれに続く脱FmocによるH−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(5g,5.01mmol)をシクロペンチルメチルエーテル(CPME)(50ml)に溶解させ、Fmoc−Leu−OH(1.95g,5.52mmol)を加えた後、これらに、氷浴下、EDC・HCl(1.16g,6.05mmol)、DMAP(61mg,0.50mmol)を加え、室温で3時間攪拌し、その後クロロホルム(50ml)を加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液中の溶媒を25mlまで減圧留去し、その残渣にCPME(50ml)を加え、反応液中の溶媒を再度25mlまで減圧留去した後、その残渣にCPME(25ml)を加えて、反応液中の溶媒量を50mlとした。この反応液に5分間窒素バブリングを行った後、窒素雰囲気の氷浴下にて、ジエチレントリアミン(2.71ml,25.1mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、反応液を10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で2回分液洗浄し、得られた有機層へ20%食塩水(50ml)を加え、有機層および水層(20%食塩水)を攪拌しながら、水層のpHが6.8になるまで1N塩酸を滴下した後、有機層および水層を分液漏斗へ移し、水層を除いた。再度同様の操作を行い、pH=6.8である水層(20%食塩水)で有機層を撹拌洗浄し、水層を除いた。得られた有機層を、20%食塩水(50ml)で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で1回、20%食塩水(50ml)で1回分液洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、硫酸ナトリウムを濾過で除いて、H−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(50ml)を得た。
【0336】
実施例44:H−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)とFmoc−Tyr(tBu)−OHとの縮合によるFmoc−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成、およびそれに続く脱FmocによるH−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成
H−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(50ml)に、HOBt(68mg,0.50mmol)、Fmoc−Tyr(tBu)−OH(2.53g,5.52mmol)を加えた後、これらに、氷浴下、EDC・HCl(1.16g,6.05mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液中の溶媒を25mlまで減圧留去し、その残渣にCPME(50ml)を加え、反応液中の溶媒を再度25mlまで減圧留去した後、その残渣にCPME(25ml)を加えて、反応液中の溶媒量を50mlとした。この反応液に5分間窒素バブリングを行った後、窒素雰囲気の氷浴下にて、ジエチレントリアミン(2.71ml,25.1mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応終了後、反応液を10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で2回分液洗浄し、得られた有機層へ20%食塩水(50ml)を加え、有機層および水層(20%食塩水)を攪拌しながら、水層のpHが6.8になるまで1N塩酸を滴下した後、有機層および水層を分液漏斗へ移し、水層を除いた。再度同様の操作を行い、pH=6.7である水層(20%食塩水)で有機層を撹拌洗浄し、水層を除いた。得られた有機層を、20%食塩水(50ml)で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で1回、20%食塩水(50ml)で1回分液洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、硫酸ナトリウムを濾過で除いて、H−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(50ml)を得た。
【0337】
実施例45:H−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)とFmoc−Glu(OtBu)−OHとの縮合によるFmoc−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成、およびそれに続く脱FmocによるH−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成
H−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(50ml)に、HOBt(68mg,0.50mmol)、Fmoc−Glu(OtBu)−OH(2.35g,5.52mmol)を加えた後、これらに、氷浴下、EDC・HCl(1.16g,6.05mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液中の溶媒を25mlまで減圧留去し、その残渣にCPME(50ml)を加え、反応液中の溶媒を再度25mlまで減圧留去した後、その残渣にCPME(25ml)を加えて、反応液中の溶媒量を50mlとした。この反応液の少量を、トリフルオロ酢酸(TFA)/H
2O/トリイソプロピルシラン溶液に加えて脱保護して、LC/MSで分析したところ、Fmoc−Glu−Tyr−Leu−OHのESIMS MH
+ 646.2を確認した。
前記反応液に5分間窒素バブリングを行った後、窒素雰囲気の氷浴下にて、ジエチレントリアミン(2.71ml,25.1mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で2回分液洗浄し、得られた有機層へ20%食塩水(50ml)を加え、有機層および水層(20%食塩水)を攪拌しながら、水層のpHが6.8になるまで1N塩酸を滴下した後、有機層および水層を分液漏斗へ移し、水層を除いた。再度同様の操作を行い、pH=6.0である水層(20%食塩水)で有機層を撹拌洗浄し、水層を除いた。得られた有機層を、10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で1回、20%食塩水(50ml)で1回分液洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、硫酸ナトリウムを濾過で除き、有機層の溶媒を減圧留去して、H−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(50ml)を得た。
【0338】
実施例46:H−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)とFmoc−Glu(OtBu)−OHとの縮合によるFmoc−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成、およびそれに続く脱FmocによるH−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成
H−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(50ml)に、HOBt(68mg,0.50mmol)、Fmoc−Glu(OtBu)−OH(2.35g,5.52mmol)を加えた後、これらに、氷浴下、EDC・HCl(1.16g,6.05mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液中の溶媒を35mlまで減圧留去し、その残渣にCPME(50ml)を加え、反応液中の溶媒を再度30mlまで減圧留去した後、その残渣にCPME(25ml)を加えて、反応液中の溶媒量を55mlとした。この反応液を少量採取し、それを脱保護して分析したところ、Fmoc−Glu−Glu−Tyr−Leu−OHのESIMS MH
+ 775.2を確認した。
前記反応液に5分間窒素バブリングを行った後、窒素雰囲気下の氷浴下にて、ジエチレントリアミン(2.71ml,25.1mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応終了後、反応液を10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で2回分液洗浄し、得られた有機層へ20%食塩水(50ml)を加え、有機層および水層(20%食塩水)を攪拌しながら、水層のpHが6.8になるまで1N塩酸を滴下した後、有機層および水層を分液漏斗へ移し、水層を除いた。再度同様の操作を行い、pH=6.7である水層(20%食塩水)で有機層を撹拌洗浄し、水層を除いた。得られた有機層を、20%食塩水(50ml)で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で1回、20%食塩水(50ml)で1回分液洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、硫酸ナトリウムを濾過で除いて、H−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(5.01mmol)のCPME溶液(55ml)を得た。
【0339】
実施例47:H−Asp(OtBu)−Phe−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Ile−Pro−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)の合成
H−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)並びに次の保護アミノ酸:Fmoc−Pro、Fmoc−Ile、Fmoc−Glu(OtBu)、Fmoc−Glu(OtBu)、Fmoc−PheおよびFmoc−Asp(OtBu)をこの順序で用いて、実施例43〜46と同様の操作にて、縮合反応、脱保護反応および後処理操作を繰り返してペプチド鎖を伸張させた後、生成物をアセトニトリル水溶液にて沈殿化させて、H−Asp(OtBu)−Phe−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Ile−Pro−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(10.8g,4.15mmol,収率82% vs. 3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール,ESIMS MH
+ 2598.5)を得た。
この化合物を少量用い、トリフルオロ酢酸(TFA)にて脱保護して分析したところ、H−Asp−Phe−Glu−Glu−Ile−Pro−Glu−Glu−Tyr−Leu−OHのESIMS MH
+ 1283.5を確認した。
【0340】
比較実験例:本発明の分岐鎖含有芳香族化合物および直鎖含有芳香族化合物の各種溶媒に対する溶解度(20℃)
実験方法
本発明の分岐鎖含有芳香族化合物(実施例4、5、19、20および21の化合物)、および比較例として直鎖含有芳香族化合物(比較例1〜3)を20℃で溶媒に飽和させ、その溶解度(単位:重量%)を測定した(表1、2)。
【0341】
【表1】
【0342】
【表2】
【0343】
実験結果
本発明化合物(すなわち、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、総分岐鎖数が3以上であって、かつ総炭素数14以上300以下である有機基を1個以上有する特定の分岐鎖含有芳香族化合物)はいずれも、対応する有機基が直鎖である比較例化合物1〜3と比べて、酢酸イソプロピルや酢酸エチルのみならず、様々な有機溶媒に対する溶解度が格段に高く、ほとんどの場合において、10〜1000倍以上、場合により5000倍以上の溶解性を示すことが分かった(表1、2参照)。このことから、ペプチドの製造方法において、本発明化合物がアミノ酸および/またはペプチドの優れた保護化試薬として機能し得ることを見出した。