特許第5929839号(P5929839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5929839ワイヤハーネス用の止水シートおよびワイヤハーネスの止水構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929839
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用の止水シートおよびワイヤハーネスの止水構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20160526BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20160526BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160526BHJP
   F16L 3/14 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H02G3/22
   H02G3/04 037
   B60R16/02 623T
   F16L3/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-114705(P2013-114705)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-236529(P2014-236529A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】福田 隆夫
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−168322(JP,A)
【文献】 実開平06−070411(JP,U)
【文献】 特開平07−105742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H02G 3/04
B60R 16/02
F16L 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索するワイヤハーネスに巻き付ける止水シートであって、独立発泡を有する弾性シートの一面に全面粘着層を設けていると共に、他面の一端縁に沿った部分にのみ部分粘着層を設けており、
前記全面粘着層を前記ワイヤハーネスの電線群の外周に接触する内面側として巻き付け、少なくとも一周巻回して巻き終わり部分を巻き始め部分の外周面に重ね、前記巻き始め部分の外周面に位置する前記部分粘着層と前記巻き終わり部分の内周面に位置する全面粘着層を互いに粘着する構成としていることを特徴とするワイヤハーネス用の止水シート。
【請求項2】
請求項1に記載の止水シートをワイヤハーネスの電線群の外周に巻き付け、該巻き付けた止水シートの外周面に粘着テープを長さ方向に隙間をあけて螺旋状に荒巻きしているワイヤハーネスの止水構造。
【請求項3】
車体パネルの貫通穴に装着するグロメットをワイヤハーネスに外嵌し、該グロメットの小径筒部に請求項1に記載の止水シートをワイヤハーネスの電線群の外周に巻き付けた状態で貫通させているワイヤハーネスの止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネス用の止水シートおよびワイヤハーネスの止水構造に関し、詳しくは、車両のエンジンルーム等の浸水領域と車室を仕切るパネルの貫通穴に通して配索するワイヤハーネスを通して車室への浸水防止を図る止水シートおよび止水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワイヤハーネスの止水構造として、車体パネルの貫通穴に装着するグロメットをワイヤハーネスに外嵌し、該グロメットを挿通する部分のワイヤハーネスの電線間にシリコーン樹脂等の止水剤を充填して線間止水する止水構造が提供されている(特許第3417324号公報等)。
前記止水構造によれば、浸水領域から車室への浸水を防止できるが、人手による難作業が多く、専用治具を必要とし、コスト高になる。さらに、グロメット内部での止水であるため外観検査ができず、水槽等に浸漬した状態の止水検査を必要とし、該検査が全数検査であるため更にコスト高になる問題がある。また、シリコーン樹脂等を充填して硬化させた場合、線間止水部が硬くなり、無理やり曲げた場合、シリコーン樹脂等が剥離市、線間止水が破壊される問題がある。
【0003】
一方、本出願人は、特許第3692969号公報で、上記止水技術とは別の線間止水によらずに止水する止水方法を提供している。該止水方法は、図5および図6(A)〜(C)に示すように、車体パネルの貫通穴に装着するグロメット110をワイヤハーネス100に外嵌し、該グロメット110を挿通する部分のワイヤハーネス100に防水用の発泡シート120を巻き付け、該発泡シート120をグロメット110の小径筒部110aの内周面に密着させてエンジンルームの浸水領域から貫通穴を通して車室側へ伝わる浸水を防止している。
【0004】
詳細には、発泡シート120は独立発泡として外方から内部への浸水を遮断し、表裏両面に粘着層121、122を設けている。図6(A)に示すように、発泡シート120の表面側粘着層の半分の領域にワイヤハーネスの電線100wを間隔をあけて配置し、ついで図6(B)に示すように、残りの半分を折り返して両側の表面側粘着層121の間に電線100wを挟み、ついで図6(C)に示すように、この二つ折りした状態で巻回して、裏面側粘着層121同士を接着している。この状態で図5に示すグロメット110の小径筒部110aを治具で押し広げて、発泡シート120の巻付部分のワイヤハーネス100を挿入し、小径筒部110aで弾性圧縮してグロメット110内に固定している。
【0005】
前記発泡シート120を用いた防水方法によれば、巻回する発泡シート120の内外周面の粘着層同士を重ねて固着させているため、ワイヤハーネスの軸線方向(長さ方向)の浸水を遮断できる。また、洗車時や高圧洗浄時に外周面から内部へ軸直角方向の浸水は発泡シート120を独立発泡シートとしていることで遮断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3692969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電線100wを挟んで発泡シート120を二つ折りし、この二つ折りした状態で少なくとも1周巻きしているため、発泡シートを取り付けた止水部分は大径化する。この大径化した止水部分をグロメット110の小径筒部110aを治具で拡げて押し込む必要があり、グロメット110に止水部分を設けたワイヤハーネス100を通す作業に手数がかかる。かつ、グロメット110の小径筒部110aが大径化した止水部分で容易に湾曲せず、車体パネルの貫通穴を通した直後にワイヤハーネスを車体パネルに沿って90度曲げしたい場合、大きなアールとなり曲げにくい問題がある。
【0008】
さらに、発泡シートの表裏両面の全面に粘着層を設けているため、二つ折りする貼り合わせ作業時および該貼り合わせ後に巻回する作業時、発泡シートにシワがよると、シワがよった状態で粘着される。一旦、粘着されると容易に剥れず、発泡シートをシワの無い状態で貼り合わせ及び巻き付ける作業は難作業となる。前記のように、発泡シートにシワができると、該シワの部分に生じた隙間が浸水経路になり易く、止水性能の信頼性が低下する。
【0009】
これに対して、発泡シートの一方側の表面にのみ粘着層を設け、裏面側に粘着層を設け無い場合、二つ折して張り合わせる作業時および巻回する作業時に、粘着層がはがれ易いため、シワが発生すると作業をやり直しが容易となる。しかしながら、巻き終わり端での粘着力が低下し、巻き終わり端から剥がれが発生しやすくなる問題がある。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスの電線群に巻き付けた時にシワが発生しにくく、シワが発生してもやり直しが容易で、しかも、巻き終わり端からの剥がれが発生しにくい止水シートを提供することを課題としている。かつ、該止水シートを用い、専用治具が不要で、作業性が良く、コスト高にならずに形成できるワイヤハーネスの止水構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1の発明として、車両に配索するワイヤハーネスに巻き付ける止水シートであって、独立発泡を有する弾性シートの一面に全面粘着層を設けていると共に、他面の一端縁に沿った部分にのみ部分粘着層を設けており、
前記全面粘着層を前記ワイヤハーネスの電線群の外周に接触する内面側として巻き付け、少なくとも一周巻回して巻き終わり部分を巻き始め部分の外周面に重ね、前記巻き始め部分の外周面に位置する前記部分粘着層と前記巻き終わり部分の内周面に位置する全面粘着層を互いに粘着する構成としていることを特徴とするワイヤハーネス用の止水シートを提供している。
【0012】
特許文献1の止水シートは表裏両面の全面に粘着層を設けているため、巻き付け作業時に、一旦巻き付けると非常に剥がしにくくなり、シワが生じても巻き直しが困難な問題がある。これに対して、本発明の止水シートは片面のみ全面粘着層としているが、他面は巻き付け時に重ねる部分のみ粘着層を設けているため、巻付作業時に巻き直しが容易にでき、シワの発生を未然に防止できる。かつ、巻き終わり部分では、内周側の巻き始め側と外周側の巻き終わり側の重ね合わせ面にそれぞれ粘着層があるため、粘着力が高まり、巻き終わり端から剥がれが生じるのを防止でき、止水性能の信頼性を高めることができる。
【0013】
本発明の前記止水シートは独立発泡を有する弾性シートから形成しているため、ワイヤハーネスを構成する電線群の外面に密着させて、電線群の外周面に隙間を発生させずに巻き付けることができる。電線群の外周面と止水シートの内周面との間に隙間があると、該隙間が毛細管現象による浸水経路となって、ワイヤハーネス中に電線に沿って浸水が発生しやすくなるが、本発明では電線群の外周面に隙間を発生させずに巻き付けることができるため前記毛細管現象による浸水を防止できる。
また、前記止水シートとする弾性シートは、独立発泡であるため、洗車や高圧洗車時等に外部からの浸水を遮断できる。
【0014】
本発明の止水シートとする弾性シートはEPDM、EPT等の可撓性を有する樹脂に発泡剤を配合した成分で形成することが好ましい。
本発明の止水シートは、厚さを0.1〜5mm、好ましくは1〜2mmとしている。
該止水シートの形状は、巻き付けるワイヤハーネスの外周寸法に、重ね合わせ部分の寸法を加えた幅と、止水領域とするワイヤハーネスの長さに相当する長さ寸法とを有する細長い矩形状としている。
また、本発明の止水シートは全面接着層および部分接着層のいずれの表面にも剥離紙を貼着しており、使用時に剥離紙を剥がすようにしている。
【0015】
第2の発明として、前記第1の発明の止水シートをワイヤハーネスの電線群の外周に巻き付け、該巻き付けた止水シートの外周面に粘着テープを長さ方向に隙間をあけて螺旋状に荒巻きしているワイヤハーネスの止水構造を提供している。
【0016】
ワイヤハーネスの外周面に前記止水シートを巻き付けた状態で、該止水シートの巻き終わり部分の内周面と巻き始め部分の外周面の重ね合わせ面が互いの粘着層同士が接触して固着されるため、巻き終わり端から剥がれにくい。しかしながら、ワイヤハーネスを配索経路に沿って急減に曲げる場合、ワイヤハーネスの軸線方向に延在させている粘着層同士の固着部分に曲げ方向の大きな負荷がかかり、該負荷は巻き終わり端が剥れる方向に作用し、曲げ部分に所謂口開き状の剥がれが生じる恐れがある。よって、本発明では、前記止水シートの巻き付け部分の外周に粘着テープを隙間をあけた螺旋巻きで荒巻きし、急激な曲げ部分でも前記止水シートの巻き終わり端から剥がれが発生するのを防いでいる。
このように、前記止水シートを巻き付けることで止水性能を確保しているため、テープを隙間なく巻き付けで止水を図る必要はなく、かつ、前記粘着テープを隙間なくハーフラップ巻きにすると、ワイヤハーネスが固くなり、配索経路に沿わせる柔軟性が損なわれるため、該粘着テープは前記のように荒巻きにしている。
該粘着テープとし、汎用されている塩化ビニールテープの一面に粘着剤が塗布された粘着テープ等が用いられる。
【0017】
ワイヤハーネスが浸水領域を通過する領域において、該ワイヤハーネスの外周面に巻き付けた前記止水シートの外周面にテープを螺旋巻きで荒巻きすることにより、当該浸水領域での浸水発生を効果的に防止できる。
【0018】
また、第3の発明として、車体パネルの貫通穴に装着するグロメットをワイヤハーネスに外嵌し、該グロメットの小径筒部に前記第1の発明の止水シートをワイヤハーネスの電線群の外周に巻き付けた状態で貫通させているワイヤハーネスの止水構造を提供している。
【0019】
前記グロメットの小径筒部から外部に延在する前記止水シートの外周面にテープを螺旋巻きで荒巻きしていることが好ましい。
【0020】
前記グロメットは、エンジンルームと車室とを仕切る車体パネルに穿設した貫通穴に装着し、該グロメットから浸水領域となる前記エンジンルーム側へ下方傾斜して延在させ、該ワイヤハーネスが最低高さ位置に達する部位と前記グロメットとの間の長さ寸法(L)と高低差の高さ寸法(H1)の積を設定値以上として、前記グロメットを貫通する部位のワイヤハーネスの電線群に止水剤を充填せずに、止水していることが好ましい。
また、前記(L)×(H1)が設定値未満の場合、ワイヤハーネスに外装するプロテクタに排水穴を設けることで、浸水面を下げることが可能で、プロテクタの排水穴下面とグロメットとの高低差の高さ(H2)とすると、前記(L)×(H2)が設定値を満たせば止水剤を充填せずに止水することが可能である。
言い換えれば、前記ワイヤハーネスの配索経路中の最低位置から排水できる構成としても、前記(L)×(H1)もしくは(L)×(H2)が設定値未満であれば、グロメットを貫通する部分のワイヤハーネスの電線群に止水剤を充填し、線間止水して止水性能を高めることが好ましい。
また、グロメットの小径筒部に挿入する部分では、該小径筒部に内嵌することで止水シートの巻付状態を保持できるため、外周面をテープで螺旋巻きする必要がない。
【0021】
自動車のエンジンルームと車室を仕切る車体パネル(所謂ダッシュパネル)に穿設したワイヤハーネス挿通用の貫通穴から車室への浸水を防止するために、グロメットを介在させており、該グロメットにより貫通穴の内周面とワイヤハーネスの外周面の隙間からの浸水発生を防止できる。
車室への浸水発生の要因として、さらに、エンジンルーム側でワイヤハーネスの電線間に侵入した水が毛細管現象によりワイヤハーネスの電線間の隙間を伝って車室へ浸水する場合がある。また、洗車時、特に高圧洗浄時に直接に外部からワイヤハーネスに水が吹き付けられる場合、ワイヤハーネスに外装したシート材を透過してワイヤハーネス中に浸水を生じる場合がある。この洗車時等で外部から直接にワイヤハーネスに水が吹き付けられ場合、本発明の止水シートは独立発泡材から形成しているため、外部からの内部への浸水を防止でき、かつ、止水シートの巻き終わ部をしっかりと巻き付け状態で固着して剥がれを発生させないため、止水シートを長さ方向に伝って生じる浸水も防止できる。
【0022】
しかしながら、エンジンルーム内に位置するワイヤハーネス先端のコネクタ接続側等でワイヤハーネスの電線外周面に水滴が付着し、この水滴が電線群の隙間に浸水すると、前記毛細管現象でグロメット内へ浸水してくる。この毛細管現状による浸水に関して、本発明者が実験を繰り返して結果、浸水発生位置からグロメットまでの長さ寸法(L)と、高低差の高さ寸法(H1)または(H2)の積に応じて、毛細管現象でグロメットまで浸水が生じる場合と、生じない場合があることを知見した。すなわち、前記(L)×(H1)または(L)×(H2)の積が設定値未満であるとグロメット中のワイヤハーネスの線間止水を行い、設定値以上であると前記線間止水をしなくても、止水機能を保持できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の止水シートでは、独立発泡を有する弾性シートの一面に全面粘着層を設けていると共に、他面は一端縁に沿った部分にのみ部分粘着層を設けているため、ワイヤハーネスの電線群の外周に巻き付ける作業および巻き付けをやり直す作業が容易となり、浸水経路となりやすいシワを発生させずに巻き付けることができる。かつ、巻き付け状態で重ねて結合する部分では、巻き始め側の外周面にある粘着層に、巻き終わり部分の内周面の粘着層を重ねて、粘着層同士を固着している。よって、巻き終わり端から剥がれが生じるのを防止でき、止水シートの止水性能の信頼性を高めることができる。
また、従来の特許文献1では、弾性シートを二つ折りして電線を挟持した状態で巻回しているため外径が大きくなるが、本発明では二つ折せずに、ワイヤハーネスの外周に1周の巻回しで重ね合わせて結合しているため、特許文献1と比較して小径化できる。その結果、グロメットの小径筒部に止水シートを巻き付けた状態で挿通しても、グロメットの小径筒部を肥大化させず、かつ、小径筒部が固くならず、容易に屈曲できる等の柔軟性を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態を示し、(A)は車体パネルの貫通穴に装着したグロメットに止水シートを巻き付けたワイヤハーネスを貫通させた状態を示す断面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)の正面図、(D)がワイヤハーネスにプロテクタを外装している部分の拡大斜視図である。
図2】前記止水シートを示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は止水シートの側面図である。
図3】(A)は前記止水シートの巻回状態の正面図、(B)は巻付状態での重ね合わせ部分を示す拡大図である。
図4】他の実施形態を示す概略正面図である。
図5】従来例を示す断面図である。
図6】(A)〜(C)は図5の従来例の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の止水シート1をワイヤハーネス10に巻き付け、該ワイヤハーネス10の止水シート1の巻付部分をグロメット2に挿通し、該グロメット2を自動車のダッシュパネルからなる車体パネル20に設けた貫通穴21に装着している。
【0026】
図1(A)に示すように、車体パネル20はエンジンルームと車室とを仕切るパネルであり、エンジンルーム側を配索するワイヤハーネス10を貫通穴21に通して車室内へと配索している。グロメット2の取付位置から浸水領域のエンジンルーム側に配索するワイヤハーネス10には、該配索経路の最低高さ位置を挟む箇所に排水穴12aを設けたプロテクタ12を外装している。
【0027】
前記グロメット2を貫通する部分および前記プロテクタ12に達する位置まで前記止水シート1をワイヤハーネス10の電線群10wに巻き付けている。また、グロメット2を出た位置からプロテクタ12に達する領域の止水シート1の外周面に粘着テープ11を螺旋巻きで荒巻きしている。
【0028】
前記止水シート1は図2に示すように、独立発泡を有する弾性シート5の一面に全面粘着層6を設けていると共に、他面の幅方向の一端縁に沿った部分にのみ部分粘着層7を設けている。前記全面粘着層6および部分粘着層7の外面には、図1(C)に示すように、使用時に剥す剥離紙8A、8Bを貼着している。
【0029】
止水シート1の形状は図2に示すように細長い矩形状であり、幅寸法(a)は巻き付けるワイヤハーネス10の外周寸法に重ね合わせ部(p)の寸法を加えた寸法と、長さ寸法(b)はワイヤハーネスの止水領域とする長さ寸法に相当する長さ寸法としている。
【0030】
前記弾性シートはEPDM、EPT、ウレタン等の弾性材から形成し、本実施形態ではEPTシートを用いている。止水シート1の厚さは0.1〜5mm、好ましくは1〜2mmとしている。
【0031】
図1(B)および図3に示すように、止水シート1は、その弾性シート5を挟む一方の全面粘着層6をワイヤハーネス10の電線群10wの外周に接触する内面側として巻き付けている。少なくとも一周巻回して巻き終わり部分Meを巻き始め部分Msの外周面に重ね、巻き始め部分Msの外周面に位置する部分粘着層7と巻き終わり部分Meの内周面に位置する全面接着層6を互いに粘着して強固に固着している。
【0032】
ワイヤハーネス10に巻き付けた止水シート1の外周面には粘着テープ11を隙間をあけて螺旋巻きして、所謂荒巻きをしている。この粘着テープ11の巻き付けはグロメット2内を通す部分の止水シート1には施す必要はない。
【0033】
前記グロメット2は、円錐状の拡径筒部2aの大径側外周面に環状の車体係止溝2mを設けると共に、該大径側端面の内周から中央に小径筒部2bを突設した閉鎖壁を設け、かつ、拡径筒部2aの小径側より中径筒部2cを突設している。該グロメット2の中径筒部2c、拡径筒部2a、小径筒部2bの連続した中空部に止水シート1を巻き付け固着したワイヤハーネス10を挿通している。其の際、小径筒部2bは止水シート1を巻き付けワイヤハーネス10の外径より小さいため、拡げ治具(図示せず)を用いて拡げて押し込んでいる。よって、ワイヤハーネス10に巻き付けた止水シート1の外周面は小径筒部2bの内周面に隙間なく密着すると共に止水シート1を巻き付け状態に保持する。このグロメット2を貫通している領域のワイヤハーネス10の電線10w間に止水剤は充填していない。
【0034】
また、ワイヤハーネス10に巻き付けた止水シート1はグロメット2の小径筒部2bからエンジンルーム側の配線部分に延在して巻き付けているが、中径筒部2cから車室側への配線部分には延在して巻き付けていない。前記グロメット2からエンジンルーム側への配線部分に延在して巻き付けた止水シート1の外周には粘着テープ11を隙間をあけた螺旋巻(所謂荒巻き)で巻き付けている。
【0035】
前記グロメット2の取付位置からエンジンルーム側のワイヤハーネスは下向き傾斜して配線し、該ワイヤハーネス10の最低高さ位置で、底面に排水穴12aを設けたプロテクタ12を外装している。該プロテクタ12の内部に貫通させるワイヤハーネス10には止水シート1を巻き付けず、電線10wをバラバラの状態で通し、電線10wの外周面に付着する水滴を排水穴12aから自重落下させるようにしている。
【0036】
なお、前記プロテクタ12の排水穴12aと前記グロメット2の取付位置間の長さ寸法(L)と、排水穴12aとグロメット取付位置の高低差の高さ寸法(H)との積(L)×(H)が予め取得している設定値以上であるため、本実施形態では、前記のように、グロメット2内のワイヤハーネス10の電線間に止水剤を充填していない。前記高低差(H)は、具体的には、前記プロテクタの排水穴下面とグロメットとの高低差の高さ(H2)である。
【0037】
前記構成からなる本発明では、止水シート1は独立発泡を有する弾性シート4の一面に全面粘着層6を設けていると共に、他面は一端縁に沿った部分にのみ部分粘着層7を設けているため、ワイヤハーネス10の電線群の外周に巻き付ける作業および巻き付けをやり直す作業で浸水経路となりやすいシワを発生させずに巻き付けることができる。かつ、巻き付け状態で重ねて固着する部分では、巻き始め側の外周面にある粘着層に、巻き終わり部分の内周面の粘着層を重ねて、粘着層同士を固着している。よって、巻き終わり端から剥がれが生じるのを防止でき、止水シートの止水性能の信頼性を高めることができる。
【0038】
図4に他の実施形態を示す。
該実施形態は、浸水領域に配索するワイヤハーネス10に前記止水シート1を巻き付けて、粘着テープ11で荒巻きしている。該止水シート1を巻き付けた領域をグロメットに貫通させていないが、浸水領域であるエンジンルーム内等に配索するワイヤハーネスに適用することで、ワイヤハーネスへの浸水を防止することができる。止水シート1の構成および巻き付け方は前記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0039】
1 止水シート
2 グロメット
5 弾性シート
6 全面粘着層
7 部分粘着層
10 ワイヤハーネス
11 テープ
12 プロテクタ
12a 排水穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6