(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡散光は、前記光源ユニットの出射光のうち、前記搬送経路を通過するシートのカール量に応じて定まる光路を通過する光線が、前記搬送経路を通過するシートで拡散した光である、請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御回路は、前記受光部の出力情報に対して周波数解析を行って、前記受光部の出力情報が示す受光光量のピーク値に対応する主走査方向位置を抽出する、請求項3に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《実施形態》
以下、図面を参照して、一実施形態に係る画像形成装置について詳説する。
【0012】
まず、
図2A等に示されるX軸、Y軸およびZ軸について説明する。X軸、Y軸およびZ軸は互いに直交する。より具体的には、X軸は、説明の便宜上、センサ部7の光照射箇所P
0をシートShが通過する搬送方向を示す。Y軸は、光L
1,L
2が延びる主走査方向を示す。また、Z軸は、光照射箇所P
0で拡散した光L
2のうち、結像光学系76に入射される光L
3の進行方向(つまり、所定の拡散方向)を示す。
【0013】
《画像形成装置の構成・動作》
図1において、画像形成装置1は、例えば、複写機、プリンタまたはファクシミリもしくはこれら機能を備えた複合機であって、例えば電子写真方式およびタンデム方式により、フルカラー画像をシートSh(例えば、用紙やOHP用フィルム)に印刷する。この画像形成装置1には、大略的に、供給部2と、画像処理部3と、画像形成部4と、定着部5と、カール矯正部6と、インラインセンサ部(以下、単にセンサ部という)7と、信号処理回路8と、制御回路9と、が備わる。
【0014】
供給部2は、予め収納されているシート束からシートShを一枚ずつピックアップして、一点鎖線で示す搬送経路FPに送り出す。
【0015】
画像処理部3には、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータ等から、印刷すべき任意画像を表す画像データが送られてくる。送られてきた画像データでは、各画素値は、例えばR(赤),G(緑),B(青)の値で表現されている。画像処理部3は、例えばゲートアレイであって、例えば、画素値のそれぞれを、画像形成部4で使用されるY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),Bk(ブラック)の値に変換して、YMCBk各色の画像データを生成する。画像処理部3は、生成した各色の画像データを、画像形成部4に送信する。なお、画像処理部3は、上記のような色変換処理をソフトウェア処理で行っても構わない。
【0016】
画像形成部4は、周知の通り、YMCBkの色毎に帯電部、感光体および現像部を含み、露光部、中間転写ベルトおよび二次転写領域を含んでいる。画像形成部4では、色毎に、帯電部は、回転する感光体周面を一様に帯電させる。露光部は、YMCBk各色の画像データを画像処理部3から受信すると、色毎に、画像データに基づいて光ビームを生成する。その後、露光部は、生成した光ビームを対応色の感光体周面に照射して、任意画像を表す色毎の静電潜像を対応色の感光体周面に形成する。
【0017】
また、色毎の現像部は、回転する感光体周面上の静電潜像にトナーが供給される。これによって、任意画像をYMCBkの色毎に分解したトナー像が感光体周面上に形成される。
【0018】
また、各色の感光体周面上のトナー像は、回転する中間転写ベルトの同一エリアに順次転写される。これによって、任意画像をフルカラーで表す合成トナー像が中間転写ベルト上に形成され、その後、中間転写ベルトに担持されながら二次転写領域に搬送される。
【0019】
ところで、供給部2から送り出されたシートShは、搬送経路FP上を搬送され、画像形成部4の二次転写領域に送り込まれる。二次転写領域では、送り込まれたシートShに、中間転写ベルト上の合成トナー像が転写される(二次転写)。二次転写済みのシートShは、未定着シートShとして定着部5に向けて送り出される。
【0020】
定着部5は、定着ニップを形成する二個の回転体を含み、このニップに送り込まれた未定着シートShを二個の回転体で加熱および加圧する。これにより、未定着シートSh上の合成トナー像が定着させられ、任意画像が形成された通常シートShとして、定着部5から、搬送経路FPの下流側に設けられたカール矯正部6に送り出される。
【0021】
カール矯正部6としては、シートShに生じたカールや反りを搬送中に矯正可能であれば、様々な公知のカール矯正部(デカーラと呼ばれる場合もある)が適用可能である。本実施形態では例示的に、カール矯正部6は、円柱状の第一乃至第三ローラを備えている。これらローラはいずれも、搬送経路FPに垂直な方向に延在する。また、第一および第三ローラは、三本のローラの中、搬送経路FPの最上流位置および最下流位置に設けられる。第二ローラは、第一および第三ローラの中間位置に設けられ、第一および第三ローラのそれぞれと当接して二個のニップを形成している。カール矯正部6は、二個のニップで、定着部5から送り出されたシートShを挟み込んでカールや反りを矯正し、矯正済のシートShを搬送経路FPの下流に設けられたセンサ部7に向けて送り出す。ここで、第一乃至第三ローラの表層は弾性体で構成されており、カール矯正部6は、第一および第三のローラに対する第二ローラの相対的な位置を移動させることで、カール矯正の強度変更を行う。
【0022】
センサ部7は、主として、画質検査のために実装される。この画質検査は、上記印刷工程が行われていない時に実施される。画質検査の一具体例を挙げると、画像形成部4および定着部5は、所定の検査チャート画像(つまり、パターン画像)をシートSh上に形成して、検査用のシートShを作成する。センサ部7は、搬送されてきた検査用シートShに対し、主走査方向に略一定光量を有する第一光を照射する。センサ部7はさらに、検査用シートShでの拡散光の一部を受信し光電変換することで、トナー像の色をRGB値や濃度値等を表すアナログ情報(以下、第一アナログ情報という)を生成して信号処理回路8に出力する。
【0023】
また、センサ部7は、印刷工程中にはカール検出に使用される。つまり、センサ部7は、複数用途で共用される。印刷工程中、センサ部7には、トナー像(つまり、任意画像)が形成された通常シートShが順次送られてくる。センサ部7は、詳細は後述するが、搬送されてきた通常シートShに対し、主走査方向位置で光量が異なる第二光を照射する。照射された第二光は、シートShで反射し様々な方向に拡散する。センサ部7はさらに、シートShでの拡散光の一部を受信し光電変換することで、主走査方向に対する受光光量を表すアナログ情報(以下、第二アナログ情報という)を生成して信号処理回路8に出力する。
【0024】
センサ部7はさらに、送り込まれたシートShを搬送経路FPの下流に向けて送り出す。このシートShは、最終的に、図示しない排出トレイに排出される。
【0025】
信号処理回路8は、例えば、ゲートアレイやソフトウェアにより実現され、画質検査時には、センサ部7から出力された第一アナログ情報を第一デジタル情報に変換して、制御回路9に出力する。それに対し、印刷工程中には、カール量検出のために、センサ部7から第二アナログ情報を受け取り、第二デジタル情報に変換して制御回路9に出力する。
【0026】
制御回路9は、マイコン、メインメモリ、不揮発性メモリ等を含んでおり、不揮発性メモリに格納されているプログラムに従って動作することで、上記印刷工程を制御する。
【0027】
また、制御回路9は、画質検査時、信号処理回路8から受け取った第一デジタル情報に基づき、画質安定化制御等を実行する。それに対し、制御回路9は、印刷工程中、信号処理回路8から受け取った第二デジタル情報に基づき、シートShに生じているカールの量を検出し、検出したカール量に基づきカール矯正部6をフィードバック制御する。なお、このカール量検出・フィードバック制御については後述する。
【0028】
《センサ部の詳細な構成》
次に、
図2A,
図2B,
図3を参照して、センサ部7の詳細な構成について説明する。まず、
図2A,
図2Bにおいて、センサ部7は、ガイド71と、画質検査用の第一光源72と、カール検出用の第二光源74およびスリット板75を有する光源ユニット73と、結像光学系76と、受光部77と、を含んでいる。
【0029】
ガイド71は、シートの搬送経路FPのうち、定着部5およびカール矯正部6の下流側の一部を構成する。このガイド71には、カール矯正部6(
図1参照)からシートShが送り込まれる。ここで、ガイド71において、Z軸の正方向側の面(つまり、上面)は、シートShの搬送面(以下、シート搬送面という)となっている。かかるシート搬送面上をシートShは搬送方向に通過し、ガイド71は、通過するシートShの姿勢を規制しつつ、搬送経路FPの下流の排出トレイ(図示せず)に向けて送り出す。
【0030】
また、ガイド71で形成される搬送経路FPには、光照射箇所P
0が予め設定されている。光照射箇所P
0は、
図2A,
図2Bに示すように、X軸方向位置X
0と、Z軸方向位置Z
0とを有し、ガイド71のシート搬送面上を通過するシートShを主走査方向(つまり、Y軸方向)に横切るように延在するライン状のエリアである。
【0031】
図2Aにおいて、第一光源72は、例えば、LED、蛍光灯、ハロゲンランプであり、上記光照射箇所P
0に略平行に、つまり主走査方向に延在する。この光源72は、制御回路9の制御下で、画質検査時に、主走査方向に延在する第一光L
1であって、主走査方向に略一定の光量I
1を有する第一光L
1を出射する。ここで、第一光源72と光照射箇所P
0との間には、光L
1の光路を遮る部材がなく、よって、光L
1は、主走査方向に略一定の光量I
1を保ったまま、通過するシートShに照射される。
【0032】
図2Bにおいて、第二光源74は、第一光源72と同様、LED等であり、主走査方向に延在している。第二光源74は、制御回路9の制御下で、第二光L
2を出射する。この光L
2は、出射時点では主走査方向に略一定の光量I
2を有しており、光照射箇所P
0に向けて出射される。
【0033】
光源ユニット73には、
図2Bに示すように、第二光源74と光照射箇所P
0との間に光L
2の光路を遮るように不透明のスリット板75が設けられている。このスリット板75は、具体的には、
図3の点線枠Aの内部に例示するように、YZ平面に略平行であって、Y軸方向に延在する板状部材である。また、このスリット板75には、i本(iは1以上の自然数)のスリットSL
1〜SL
i(以下、各スリットSLと包括的に呼ぶ場合がある)が形成される。各スリットSLは、搬送方向からの平面視で、互いに同じ形状であってZ軸に対し斜めの平行四辺形状の外形を有する。また、各スリットSLは、主走査方向に等間隔に並ぶように形成されている。以上のスリット板75により、光L
2はスリットSL
1〜SL
iを通過し、通過した光L
2が光照射箇所P
0に照射される。ここで、スリットSLは上記の通り平行四辺形状の外形を有しているので、その通過光L
2は、主走査方向位置、およびシート搬送面に設定された光照射箇所P
0の法線方向位置で異なる光量を有する。
【0034】
再度、
図2Aおよび
図2Bを参照する。各線状光L
1,L
2は、ガイド71上を通過するシートShに照射され、様々な方向に拡散する。このような拡散光の中には、光照射箇所P
0から、所定の拡散方向(つまりZ軸方向)に実質的に向かう主拡散光L
3,L
4が含まれる。結像光学系76には、例えば、光L
3,L
4の光路の上流から下流に向かって、第一乃至第三ミラーと、一個のレンズとが、光照射箇所P
0に対して固定的に配置される。また、さらに具体的には、第一乃至第三ミラーおよび一個のレンズは、光L
3が受光部77に結像するよう軸合わせされている。
【0035】
受光部77は、主走査方向に一次元配列した光電変換素子(例えばCCD(Charge Coupled Device))を含むラインセンサである。この受光部77の諸元の一例は、
図4および下記の通りである。
【0036】
・主走査方向長さ:310[mm]
・読取解像度:600[dpi]
・画素数:単位検出領域あたり1024[pixel]
・単位検出幅UW:主走査方向に約43[mm]
なお、単位検出幅UWは、一回の走査で得られたデータの中からカール検出で用いられる主走査方向幅を意味する。例えば、シートの両端部についてカール検出を行う場合には、端部に相当する2箇所の単位検出幅UW(1024画素)のデータを用いてカール検出を行う。
【0037】
受光部77は、画質検査時には、走査周期ごとに、ガイド71上を通過する検査用シートShの主走査方向1ライン分の画像の色を表す第一アナログ情報を生成して、信号処理回路8に出力する。カール検出時には、走査周期ごとに、ガイド71上を通過するシートShの主走査方向1ライン分の受光光量を表す第二アナログ情報を生成して、信号処理回路8に出力する。なお、この受光部77は、単色のセンサであっても良いが、例えばRGBのカラーセンサであっても構わない。RGBのカラーセンサの場合、R,G,Bの濃度値は、後段の信号処理回路8等でY,M,C,Bkの濃度値に変換されても構わない。
【0038】
《カール検出の原理》
次に、カール検出の原理について説明する。まず、
図5Aに示すように、センサ部7において、シートShは、ガイド71におけるシート搬送面上を通過する。ここで、シートShにカールが無い場合、シートShは概ね光照射箇所P
0を通過する。この間、光照射箇所P
0には、
図5B最上段に示すように、第二光L
2のうち所定の光路を伝搬する光線が照射される。ここで、所定の光路とは、光源74から、各スリットSLにおけるZ軸方向位置Z
1を通過して、光照射箇所P
0に至る。また、以下の説明では、YZ平面上でZ=Z
1の直線において、スリットSL
1〜SL
iの平行四辺形状の外形線で囲まれる区間を第一区間FS
1〜FS
iという。
【0039】
スリット板75の通過光L
2は光照射箇所P
0で拡散し、主拡散光L
4のみがZ軸方向に向かう。この光L
4は、結像光学系76に入射され受光部77にて結像し、
図5B中段に示すように、区間FS
1〜FS
iで他区間と比較して大きい光量を有する。出力第二アナログ情報も、受光部77で結像する光L
4と同様の性質を有する(
図5Bの最下段を参照)。
【0040】
次に、センサ部7を通過するシートShにカールが発生している場合について説明する。この場合、
図6Aに示すように、カール部分は、XY平面と非平行に光照射箇所P
0の上方を通過する。また、カール部分と、ZX平面に平行で光照射箇所P
0を通過する面との交線に、
図6B最上段に示すように、第二光L
2のうち、所定の光路を伝搬した光線が照射される。カールが発生している場合、所定光路は、光源74から、各スリットSLにおけるZ軸方向位置Z
2(Z
2≠Z
1)を通過して、光照射箇所P
0に至る。ここで、YZ平面上でZ=Z
2の直線において、スリットSL
1〜SL
iで囲まれる部分を第二区間SS
1〜SS
iという。
【0041】
スリット板75の通過光L
2は、カール部分で拡散後、結像光学系76を介して受光部77に結像する。受光部77は、結像した光L
4を光電変換してアナログ情報を生成する。ここで、受光部77に結像するのは、
図6B中段に示すよう、区間SS
1〜SS
iで大きな光量を有しかつ主走査方向に周期的に変化する光L
4である。また、区間SS
1は、区間FS
1と比較して、Z
2−Z
1に相関する量Δだけ主走査方向にシフトしている。区間SS
2〜SS
iについても同様である。また、上記の通り、スリット板75の通過光L
2は、シート搬送面に設定された光照射箇所P
0の法線方向位置で異なる光量を有しているため、区間SS
1〜SS
iの光量値は区間SS
1〜SS
iでの光量値とは異なっている。また、第二アナログ情報は、受光部77に結像した光L
4と同様、主走査方向に周期的に変化し、区間SS
1〜SS
iで大きな光量を示す(
図6B最下段を参照)。ここで、カールが生じている場合、アナログ情報が表す波形は、カールが無い場合のアナログ情報の波形と比較して、主走査方向に量Δだけシフトしている。
【0042】
ここで、カール量A
Cを、光照射箇所P
0からのシートShまでのZ軸方向距離とすると、A
CはΔに実質的に比例することになる。したがって、カール量A
Cは、次式(1)で求められることになる。
A
C=α×Δ …(1)
【0043】
ここで、αは比例定数であり、センサ部7の諸元等により定められる値であって、本画像形成装置1の工場出荷前等に求められる既知の値である。Δは、区間SS
1〜SS
iと、対応する区間FS
1〜FS
iとの差分である。
【0044】
また、区間SS
1〜SS
iにおいて受光光量のピーク値に現れる主走査方向位置をY
SS1〜Y
SSiとし、区間FS
1〜FS
iにおいて受光光量のピーク値に現れる主走査方向位置をY
FS1〜Y
FSiとすると、Δは(Y
SSj−Y
FSj)(jは1以上i以下の自然数)となる。この場合、上式(1)は次式(2)のようになる。
A
C=α×(Y
SSj−Y
FSj) …(2)
【0045】
Y
FSjは、Z
1に関連する値であって、本画像形成装置1の工場出荷前等に予め求められる既知の値である。Y
SSjは、シートShの状態で定まる値であり、未知数となる。以上のガイド71上を通過するシートShについて主走査方向位置Y
SSjを検出することにより、カール量A
Cを求めることができる。
【0046】
《カール検出処理》
次に、
図7を参照して、カール検出の詳細な処理手順について説明する。制御回路9は、印刷工程中、第一光源72をオフにし、第二光源74から光L
2を出射させる(
図7;S01)。本説明では、カール量検出のための好ましい処理例として、第一光源72をオフにしている。しかし、これに限らず、第一光源72をオンにしても構わない。
【0047】
ガイド71上をシートShが通過中、受光部77は、走査周期ごとに第二アナログ情報を出力し、信号処理回路8は、入力第二アナログ情報を第二デジタル情報に変換して、制御回路9に出力する(
図7;S02)。
【0048】
制御回路9は、第二デジタル情報を受け取ると、単位検出幅UWに属する受光光量値に対し、パラメータ抽出処理を実行する(
図7;S03)。
【0049】
以下、
図8を参照して、パラメータ抽出処理について詳説する。ここで、
図8上段には、シートShにカールが無い場合におけるパラメータ抽出の過程が、
図8下段には、シートShにカールが有る場合におけるパラメータ抽出の過程がそれぞれ示されている。
【0050】
まず、
図8上段左側には、単位検出幅UW(本説明では約43[mm])に含まれる受光光量値(アナログ値)が実線で例示される。なお、参考のため、
図8上段左側には、他にも、光照射箇所P
0への照射光量値が破線で示される。
【0051】
制御回路9は、単位検出幅UWに属する受光光量値をフーリエ変換する。フーリエ変換の手法としては、例えばFFT(Fast Fourier Transform)が使用される。フーリエ変換の結果、制御回路9は、
図8上段中央に示すように、空間周波数に対するパワースペクトルを得る。その後、制御回路9は、予め定められた低い空間周波数帯域u
0(ここで、空間周波数帯域u
0は、スリット板75に形成された各スリットSLの間隔に相関する)に含まれるパワースペクトルを抽出して、逆フーリエ変換を行う。逆フーリエ変換の結果、制御回路9は、
図8上段右側に示すように、上段中央に示すパワースペクトルの、主走査方向位置に対するエンベロープ波形を得る。制御回路9は、得られたエンベロープ波形から、カール量に相関するパラメータの一例としての、ピーク値が現れる主走査方向位置Y
SSjを抽出する(
図7;S03)。
【0052】
なお、
図8下段左端から右端にかけて、カールがある場合におけるパラメータ抽出処理の遷移が示される。カール有無でパラメータ抽出処理自体は変わらないため、その詳細な説明を省略する。このパラメータ抽出処理により、制御回路9は、カールが無い場合と比較してΔだけシフトした主走査方向位置Y
SSjを得る。
【0053】
次に、制御回路9は、S03で抽出した主走査方向位置Y
SSjを上式(2)に代入して、カール量A
Cを求める(
図7;S04)。上記の通り、シートShにカールが発生していない場合、Y
SSj=Y
FSjとなるため、A
Cはゼロとなる。
【0054】
次に、制御回路9は、S04で得られたカール量A
Cに基づき、センサ部7を今回通過したシートShにカールが無いか否かを判断する(
図7;S05)。YESであれば、制御回路9は、次の単位検出幅UWに対して、S03〜S05を実行する。
【0055】
それに対し、NOであれば、制御回路9は、得られたカール量A
Cをカール矯正部6にフィードバックして、カール矯正部6が以降に送られてくるシートShに発生するカールを補正するよう制御する(
図7;S06)。具体的には、カール矯正部6は、検出されたカール量がゼロもしくは小さい場合、カール矯正を実施しない。それに対し、検出されたカール量が大きい場合、カール矯正を実施する。S06が完了すると、制御回路9は、次の単位検出幅UWに対して、S03以降の処理を実行する。
【0056】
《作用・効果》
以上説明したように、画像形成装置1は、印刷実行時以外のタイミングで、画質安定化制御等を実行する。そのために、画像形成装置1は、定着部5に対し搬送経路FPの下流側に設けられたセンサ部7を備えている。画像形成装置1は、かかるセンサ部7を有効利用するために、上述のような手法にて、印刷実行時にカール量を検出している。このように、画像形成装置1では、センサ部7が、画像安定化制御等と、カール量検出というように複数の用途で共用されている。それゆえ、従来のように、カール量検出のためだけに用いられる二次元エリアセンサ等を画像形成装置に備える必要が無くなる。よって、シートのカール量を低コストで検出可能であると共に、画像形成装置1の大型化を招かないようにすることができる。
【0057】
《付記》
なお、上記実施形態では、センサ部7は、画質検査用に第一光源72を、また、カール検出用に第二光源74を備えていた。しかし、これに限らず、光源72,74に代えて、
図9に示すように単一の光源72Aに置換されても構わない。この場合、光源72Aの出射光のうち、スリットSLを通過するものがカール検出に用いられ、スリット板75の下方を通過するものが画質検査用に用いられる。
【0058】
《第一変形例》
上記実施形態では、光源ユニット73はスリット板75を備えるとして説明した。しかし、これに限らず、光源ユニット73は、スリット板75に代えて、第一変形例に係るスリット板75Aを備えていても構わない。以下、
図10Aおよび
図10Bを参照してスリット板75Aについて説明する。
【0059】
スリット板75Aは、
図10Aの枠Aの内部に示すように、搬送方向からの平面視で、主走査方向に所定間隔に並ぶスリットSL
1〜SL
i(iは2以上の整数)が形成されている。なお、ここで、スリットSL
1〜SL
iの中で、主走査方向に隣り合う二個のスリットSLの主走査方向中心間の距離は、拡散方向位置毎で異なる。
【0060】
上記のようなスリットSL
1〜SL
iにより、第二アナログ情報において、光量値は、
図10Aに示すように、拡散方向位置毎に(つまり、カール量に応じて)異なる周期で変化するとともに、シート搬送面に設定された光照射箇所P
0の法線方向位置毎に異なっている。なお、
図10Aには、拡散方向位置として、Z
0およびZ
1が例示されている。また、スリット板75Aの上方に、拡散方向位置Z
0に対応する第二アナログ情報が破線で示され、拡散方向位置Z
1に対応する第二アナログ情報が実線で示されている。かかる第二アナログ情報に対しては、制御回路9は、下記のようなパラメータ抽出処理を実行する。すなわち、単位検出幅UWに属する受光光量値をフーリエ変換して、
図10Bに示すような、空間周波数に対するパワースペクトルを得る。その結果、空間周波数軸上において、カール量A
Cに相関する位置にピーク値V
Pが検出される。なお、
図10Bには、カールが無い場合のピーク値V
Pとしてピーク値V
P0が示され、カールが有る場合のピーク値V
Pとしてピーク値V
P1が示される。
【0061】
ここで、画像形成装置1に関しては、工場出荷前の実験等により、ピーク値V
P毎のカール量A
Cが収集される。この収集データに基づき、ピーク値V
P毎にカール量A
Cを記述したテーブルを作成し、制御回路9に格納しておく。制御回路9は、検出したピーク値V
Pに対応するカール量A
Cをテーブルから取得する。
【0062】
《作用・効果》
上記実施形態では、受光部77からの出力アナログ情報では、シートSh上に形成されたトナー像の影響により、光量値は、必ずしも、主走査方向に周期的に変化している訳では無く、高周波成分を有している(例えば、
図8の上段左端および上段中央を参照)。この高周波成分により、制御回路9が求める区間SS
1〜SS
i中のピーク値には誤差が生じる可能性がある。
【0063】
それに対し、本変形例では、空間周波数軸上におけるピーク値V
Pからカール量A
Cが求められるため、アナログ情報内の高周波成分のカール検出への影響を格段に低減することが可能となる。
【0064】
《第二変形例》
上記第一変形例の他にも、光源ユニット73は、スリット板75の代わりに第二変形例に係るスリット板75Bを備えていても構わない。以下、
図11Aおよび
図11Bを参照してスリット板75Bについて説明する。
【0065】
スリット板75Bの下部には、
図11Aに示すように、搬送方向からの平面視で、鋸歯のような刻み目N
1〜N
i(Nは1以上の整数)が主走査方向に連続的に形成されている。本変形例では、各刻み目N
1〜N
iは、拡散方向位置が正方向に進むにつれて主走査方向幅が狭くなっており、それぞれの主走査方向中心に対し対称な形状を有している。
【0066】
このようなスリット板75Bは、
図11Aに示すように、下記の条件(1)〜(3)を満たすように配置される。
(1)カールが無いシートSh
0の光照射位置P
0には、光源74の出射光L
2のうち、スリット板75Bに対する下方(例えば、Z軸方向位置Z
0)を通過した光線が照射される。
(2)カール量が小さいシートSh
1の光照射位置P
0には、光源75の出射光L
2のうち、相対的に刻み目N
1〜N
iの下部(例えば、Z軸方向位置Z
1)を通過した光線が照射される。
(3)カール量が大きなシートSh
2の光照射位置P
0には、光源75の出射光L
2のうち、相対的に刻み目N
1〜N
iの上部(例えば、Z軸方向位置Z
2)を通過した光線が照射される。
【0067】
このようなスリット板75Bを設けることで、
図11B上段に示すように、第二アナログ情報において、光量値は、カールが無い場合には、主走査方向に一定となる(直線L
0を参照)。それに対し、カールが有る場合、光量値は、カール量に関わらず概ね同じ周期を有するが、光量値の大きさは、カール量に応じて異なる。例えば、カール量が小さい場合、第二アナログ情報は、相対的に大きな光量値を有する(曲線L
1を参照)。それに対し、カール量が大きい場合、第二アナログ情報は、相対的に小さな光量値を有する(曲線L
2を参照)。
【0068】
以上のような第二アナログ情報に対しては、制御回路9は、下記のようなパラメータ抽出処理を実行する。すなわち、単位検出幅UWに属する受光光量値をフーリエ変換して、
図11Bに示すような、空間周波数に対するパワースペクトルを得て、スリット板75Bに対応する予め定められた空間周波数fに出現するピークを検出する。ここで、検出されたピークのパワーPはカール量に相関する。なお、
図11B下段左端には、カールが無い場合、空間周波数fにおけるパワーPはゼロであることが、
図11B下段中央には、カール量が小さい場合、空間周波数fで相対的に小さなパワーPが検出されることが、また、
図11B下段右端には、カール量が大きい場合、空間周波数fで相対的に大きなパワーPが検出されることが示される。空間周波数f以外のシートの種類や印字状態による反射光量の変動があっても、このように周波数解析することによりその影響を除去することができるので、カールの有無、あるいはカール量を精度よく判断することができる。
【0069】
《第三変形例》
また、上記実施形態では、画像形成装置1は光源ユニット73を備えるとして説明した。しかし、これに限らず、画像形成装置1は、光源ユニット73に代えて、第三変形例に係る光源ユニット73Aを備えていても構わない。以下、
図12を参照して、光源ユニット73Aについて説明する。
【0070】
光源ユニット73Aは、
図12に示すように、光源ユニット73と比較すると、第二光源74に代えて第二光源74Aを備える点と、スリット板75を備えない点とで相違する。
【0071】
光源74Aは、主走査方向に例えば一次元配列されたLEDアレイである。第二光源74Aは、制御回路9の制御により、カール検出時には、光照射箇所P
0にて主走査方向に周期的に光量が変化し、かつ、高さ方向(Z方向)において光量が異なる第二線状光L
2を生成し出射する。かかる線状光L
2の生成手法としては、制御回路9は、
図12に例示するように、光照射箇所Pに対して斜め方向から光を照射するLEDアレイにおいて、主走査方向に奇数番目のLEDを発光させると共に、偶数番目のLEDを発光させないようにする。
【0072】
なお、上記光源74Aに関しては、カール検出だけでなく、画質検査時にも用いることも可能である。この場合、制御回路9は、第一線状光L
1と同様の光を発するように、全てのLEDを発光させる。この構成によれば、第一光源72を省略することが可能となるため、さらに低コストで小型化可能な画像形成装置1を提供することが可能となる。
【0073】
《第四変形例》
ところで、センサ部7を用いて、シートSh上のトナー像の画質検査のためには、ガイド71上でシートShが極力XY平面に平行であることが望ましい。そのため、センサ部7は、
図13に例示するように、搬送経路FPにおいて光照射箇所P
0の上流側および下流側に設けられた上流側押さえローラ79
1および下流側押さえローラ79
2であって、ガイド71上に設けられた上流側押さえローラ79
1および下流側押さえローラ79
2を含んでいる。
【0074】
各ローラ79
1,79
2とガイド71との間にシートShを通過させることで、
図13上段に示すように、少なくとも光照射箇所P
0においてシートShはXY平面に略平行となるため、高精度な画質検査を実施することが可能となる。ただし、
図13下段に示すようにローラ79
1,79
2のいずれか一方は、正確にカール量を検出するために、印刷工程の間中、ガイド71から上方に退避させられる。
【0075】
《第五変形例》
また、精度よくカール量を検出するには、第二アナログ情報における光量値のピーク値が大きい方が好ましい。これを実現するための手法としては、光照射箇所P
0への第二光L
2の入射角は可能な限り0°に近づけることが例示される。より具体的には、
図14に示すように、光源ユニット73が二つ準備され、その一方は、上流側光源ユニット73
1として、光照射箇所P
0を基準として搬送経路FPの上流側に設けられる。また、他方は、下流側光源ユニット73
2として、光照射箇所P
0を基準として搬送経路FPの下流側に設けられる。そして、シートShの先端側のカール検出時には、下流側光源ユニット73
2が用いられ、後端側のカール検出時には、上流側光源ユニット73
1が用いられる。