特許第5929862号(P5929862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929862
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20160526BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20160526BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   F25B47/02 550H
   F25B1/00 304Z
   F25B47/02 550K
   F24F11/02 101M
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-203368(P2013-203368)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68567(P2015-68567A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】布 隼人
(72)【発明者】
【氏名】配川 知之
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−243728(JP,A)
【文献】 特開2004−198027(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/013382(WO,A1)
【文献】 特開昭62−138660(JP,A)
【文献】 特開2013−053782(JP,A)
【文献】 特開2011−102678(JP,A)
【文献】 特開昭61−262560(JP,A)
【文献】 特開2010−139097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F24F 11/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)と室内熱交換器(41)と主弁(24)と室外熱交換器(23)とを有しており、前記圧縮機、前記室内熱交換器、前記主弁、前記室外熱交換器の順に冷媒を循環させる暖房運転を行うことが可能な主冷媒回路(11)と、
過熱弁(27)を有しており、前記暖房運転時に前記圧縮機の吐出側から前記圧縮機の吸入側に冷媒をバイパスすることが可能になるように前記主冷媒回路に接続されている吐出−吸入バイパス回路(26)と、
を備えており、
前記圧縮機、前記室内熱交換器、前記主弁、前記室外熱交換器の順に冷媒を循環させつつ前記室外熱交換器を除霜する正サイクル除霜運転時に、前記過熱弁を開けて前記吐出−吸入バイパス回路を通じて前記圧縮機の吐出側から前記圧縮機の吸入側に前記室外熱交換器を通じずに冷媒をバイパスさせるとともに、前記主冷媒回路における冷凍サイクルの高圧が前記暖房運転時における前記高圧の上限値付近の値に設定された目標高圧になるように前記主弁の開度を調節する除霜時主弁高圧制御を行う、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記高圧を前記室内熱交換器(41)に設けられた室内熱交温度センサ(55)によって検出される冷媒の温度から得る、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記暖房運転時に、前記圧縮機(21)の吐出側の冷媒の温度に基づいて前記主弁(24)の開度を調節する暖房時主弁吐出温度制御を行う、
請求項1又は2に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記正サイクル除霜運転時に、前記圧縮機(21)の吐出側の冷媒の過熱度が目標吐出過熱度になるように前記過熱弁(27)の開度を調節する除霜時吐出温度制御を行う、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記室外熱交換器(23)に空気を供給する室外ファン(25)をさらに備えており、
前記正サイクル除霜運転時に、前記室外熱交換器に設けられた室外熱交温度センサ(53)によって検出される冷媒の温度が外気温度付近の値であるファン発停温度まで上昇していない場合には前記室外ファンを運転し、前記ファン発停温度まで上昇した場合には前記室外ファンを停止させる除霜時室外ファン制御を行う、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置、特に、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させつつ室外熱交換器を除霜する正サイクル除霜運転時に使用される吐出−吸入バイパス回路を有する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開昭61−262560号公報)に示すように、圧縮機と室内熱交換器と絞り装置(主弁)と室外熱交換器とを有する空気調和装置がある。この空気調和装置は、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させる暖房運転が可能であり、また、暖房運転時に圧縮機の吐出側から圧縮機の吸入側に冷媒をバイパスすることが可能にする吐出−吸入バイパス回路を有している。そして、この空気調和装置では、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させつつ室外熱交換器を除霜する正サイクル除霜運転時に、吐出−吸入バイパス回路の弁(過熱弁)を開けて吐出−吸入バイパス回路を通じて圧縮機の吐出側から圧縮機の吸入側に冷媒をバイパスさせるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の空気調和装置では、正サイクル除霜運転時に、主弁を全開近くまで開いた状態にしている。このため、冷凍サイクルの高圧が十分に上昇しにくくなり、圧縮機への投入動力が減少してしまい、その結果、除霜に使用できる熱量が減少して、圧縮機への液バックの増加、さらなる冷凍サイクルの高圧の低下、圧縮機への投入動力の減少という悪循環に陥りやすくなる。そして、このような悪循環によって、正サイクル除霜運転を継続できなくなるおそれがある。
【0004】
本発明の課題は、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させつつ室外熱交換器を除霜する正サイクル除霜運転時に使用される吐出−吸入バイパス回路を有する空気調和装置において、冷凍サイクルの高圧を高く維持して、圧縮機への投入動力を大きくし、除霜熱量を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点にかかる空気調和装置は、主冷媒回路と、吐出−吸入バイパス回路とを有している。主冷媒回路は、圧縮機と室内熱交換器と主弁と室外熱交換器とを有しており、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させる暖房運転を行うことが可能である。吐出−吸入バイパス回路は、過熱弁を有しており、暖房運転時に圧縮機の吐出側から圧縮機の吸入側に冷媒をバイパスすることが可能になるように主冷媒回路に接続されている。そして、ここでは、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させつつ室外熱交換器を除霜する正サイクル除霜運転時に、過熱弁を開けて吐出−吸入バイパス回路を通じて圧縮機の吐出側から圧縮機の吸入側に室外熱交換器を通じずに冷媒をバイパスさせるとともに、主冷媒回路における冷凍サイクルの高圧が目標高圧になるように主弁の開度を調節する除霜時主弁高圧制御を行う。
【0006】
ここでは、上記のように、正サイクル除霜運転時に、冷凍サイクルの高圧が目標高圧になるように主弁の開度を調節(除霜時主弁高圧制御)するようにしている。このため、正サイクル除霜運転時に、冷凍サイクルの高圧を所望の目標高圧付近に維持することができる。これにより、ここでは、圧縮機の投入動力が増加し、その結果、除霜に使用できる熱量を確保することができ、そして、正サイクル除霜運転を継続することができるようになる。
【0007】
しかも、ここでは、目標高圧を暖房運転時における高圧の上限値付近の値に設定する。
【0008】
ここでは、上記のように、目標高圧を暖房運転時における高圧の上限値付近の値に設定しているため、正サイクル除霜運転時における冷凍サイクルの高圧を十分に高く維持することができる。これにより、ここでは、正サイクル除霜運転時に、除霜に使用できる熱量を大きく増加させることができる。
【0009】
第2の観点にかかる空気調和装置は、第1の観点にかかる空気調和装置において、高圧を室内熱交換器に設けられた室内熱交温度センサによって検出される冷媒の温度から得る。
【0010】
ここでは、上記のように、室内熱交温度センサによって冷凍サイクルの高圧を得るようにしているため、冷凍サイクルの高圧を得るための圧力センサを設けずに済ませることができる。
【0011】
第3の観点にかかる空気調和装置は、第1又は第2の観点にかかる空気調和装置において、暖房運転時に、圧縮機の吐出側の冷媒の温度に基づいて主弁の開度を調節する暖房時主弁吐出温度制御を行う。
【0012】
ここでは、上記のように、主弁の開度を、暖房運転時には圧縮機の吐出側の冷媒の温度に基づいて制御(暖房時主弁吐出温度制御)し、正サイクル除霜運転時には冷凍サイクルの高圧が目標高圧になるように制御(除霜時主弁高圧制御)するようにしている。これにより、ここでは、運転内容に応じて最適な主弁の開度制御に切り換えることができる。
【0013】
第4の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第3の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、正サイクル除霜運転時に、圧縮機の吐出側の冷媒の過熱度が目標吐出過熱度になるように過熱弁の開度を調節する除霜時吐出温度制御を行う。
【0014】
ここでは、上記のように、正サイクル除霜運転時に、圧縮機の吐出側の冷媒の過熱度が目標吐出過熱度になるように過熱弁の開度を調節(除霜時吐出温度制御)するようにしている。このため、正サイクル除霜運転時に、圧縮機への過度の液バック、及び、圧縮機に吸入される冷媒が過度の過熱状態になることで圧縮機の焼き付けや破損等が発生することの両方を抑制することができる。これにより、ここでは、正サイクル除霜運転時に、圧縮機の信頼性を確保することができる。
【0015】
第5の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第4の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、室外熱交換器に空気を供給する室外ファンをさらに有しており、正サイクル除霜運転時に、室外熱交換器に設けられた室外熱交温度センサによって検出される冷媒の温度が外気温度付近の値であるファン発停温度まで上昇していない場合には室外ファンを運転し、ファン発停温度まで上昇した場合には室外ファンを停止させる除霜時室外ファン制御を行う。
【0016】
ここでは、上記のように、正サイクル除霜運転時に、室外ファンを常に停止させるのではなく、室外熱交換器における冷媒の温度が外気温度付近(ここでは、ファン発停温度)まで上昇するまでは、室外ファンを運転し、その後、室外ファンを停止する制御(除霜時室外ファン制御)を行うようにしている。このため、室外ファンを運転している際には、圧縮機への投入動力による熱量及び空気との熱交換による熱量を使用して、室外熱交換器の除霜を行うことができる。これにより、正サイクル除霜運転の除霜時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
第1の観点にかかる空気調和装置では、正サイクル除霜運転時に、圧縮機の投入動力を増加させ、その結果、除霜に使用できる熱量を確保することができ、そして、正サイクル除霜運転を継続することができる。しかも、正サイクル除霜運転時に、除霜に使用できる熱量を大きく増加させることができる。
【0019】
第2の観点にかかる空気調和装置では、冷凍サイクルの高圧を得るための圧力センサを設けずに済ませることができる。
【0020】
第3の観点にかかる空気調和装置では、運転内容に応じて最適な主弁の開度制御に切り換えることができる。
【0021】
第4の観点にかかる空気調和装置では、正サイクル除霜運転時に、圧縮機の信頼性を確保することができる。
【0022】
第5の観点にかかる空気調和装置では、正サイクル除霜運転の除霜時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気調和装置の概略構成図である。
図2】空気調和装置の制御ブロック図である。
図3】冷房運転時の動作(冷媒の流れ)を示す図である。
図4】暖房運転時の動作(冷媒の流れ)を示す図である。
図5】正サイクル除霜運転時の動作(冷媒の流れ)を示す図である。
図6】正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転時における過熱弁、主弁、圧縮機、室外ファン及び室内ファンの動作を示すタイムチャートである。
図7】本発明の変形例1〜4にかかる空気調和装置の概略構成図(正サイクル除霜運転時の冷媒の流れも図示)である。
図8】本発明の変形例1における正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転時における過熱弁、主弁、圧縮機、室外ファン及び室内ファンの動作を示すタイムチャートである。
図9】本発明の変形例2における正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転時における過熱弁、主弁、圧縮機、室外ファン及び室内ファンの動作を示すタイムチャートである。
図10】本発明の変形例3における正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転時における過熱弁、主弁、圧縮機、室外ファン及び室内ファンの動作を示すタイムチャートである。
図11】本発明の変形例4における正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転時における過熱弁、主弁、圧縮機、室外ファン及び室内ファンの動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態及びその変形例について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0025】
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。
【0026】
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房及び暖房を行うことが可能な装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット4とが接続されることによって構成されている。ここで、室外ユニット2と室内ユニット4とは、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して接続されている。すなわち、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と、室内ユニット4とが冷媒連絡管5、6を介して接続されることによって構成されている。
【0027】
<室内ユニット>
室内ユニット4は、室内に設置されており、冷媒回路10の一部を構成している。室内ユニット4は、主として、室内熱交換器41を有している。
【0028】
室内熱交換器41は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。室内熱交換器41の液側は液冷媒連絡管5に接続されており、室内熱交換器41のガス側はガス冷媒連絡管6に接続されている。
【0029】
室内ユニット4は、室内ユニット4内に室内空気を吸入して、室内熱交換器41において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン42を有している。すなわち、室内ユニット4は、室内熱交換器41を流れる冷媒の加熱源又は冷却源としての室内空気を室内熱交換器41に供給するファンとして、室内ファン42を有している。ここでは、室内ファン42として、回転数制御が可能な室内ファン用モータ42aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等が使用されている。
【0030】
室内ユニット4には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内熱交換器41には、室内熱交換器41における冷媒の温度Txiを検出する室内熱交温度センサ55が設けられている。室内ユニット4には、室内ユニット4内に吸入される室内空気の温度Traを検出する室内温度センサ56が設けられている。
【0031】
室内ユニット4は、室内ユニット4を構成する各部の動作を制御する室内側制御部43を有している。そして、室内側制御部43は、室内ユニット4の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット4を個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、室外ユニット2との間で伝送線7を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0032】
<室外ユニット>
室外ユニット2は、室外に設置されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、主弁24と、吐出−吸入バイパス回路26とを有している。
【0033】
圧縮機21は、冷凍サイクルの低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数制御が可能な圧縮機用モータ21aによって回転駆動する密閉式構造となっている。圧縮機21は、吸入側に付属のアキュムレータ21bを介して吸入管31が接続されており、吐出側に吐出管32が接続されている。吸入管31は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22とを接続する冷媒管である。吐出管32は、圧縮機21の吐出側と四路切換弁22とを接続する冷媒管である。
【0034】
四路切換弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れの方向を切り換えるための切換弁である。四路切換弁22は、冷房運転時には、室外熱交換器23を圧縮機21において圧縮された冷媒の放熱器として機能させ、かつ、室内熱交換器41を室外熱交換器23において放熱した冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、四路切換弁22は、冷房運転時には、圧縮機21の吐出側(ここでは、吐出管32)と室外熱交換器23のガス側(ここでは、第1ガス冷媒管33)とが接続される(図1の四路切換弁22の実線を参照)。しかも、圧縮機21の吸入側(ここでは、吸入管31)とガス冷媒連絡管6側(ここでは、第2ガス冷媒管34)とが接続される(図1の四路切換弁22の実線を参照)。また、四路切換弁22は、暖房運転時には、室外熱交換器23を室内熱交換器41において放熱した冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、室内熱交換器41を圧縮機21において圧縮された冷媒の放熱器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、四路切換弁22は、暖房運転時には、圧縮機21の吐出側(ここでは、吐出管32)とガス冷媒連絡管6側(ここでは、第2ガス冷媒管34)とが接続される(図1の四路切換弁22の破線を参照)。しかも、圧縮機21の吸入側(ここでは、吸入管31)と室外熱交換器23のガス側(ここでは、第1ガス冷媒管33)とが接続される(図1の四路切換弁22の破線を参照)。ここで、第1ガス冷媒管33は、四路切換弁22と室外熱交換器23のガス側とを接続する冷媒管である。第2ガス冷媒管33は、四路切換弁22とガス冷媒連絡管6側とを接続する冷媒管である。
【0035】
室外熱交換器23は、冷房運転時には室外空気を冷却源とする冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には室外空気を加熱源とする冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、液側が液冷媒管35に接続されており、ガス側が第1ガス冷媒管33に接続されている。液冷媒管35は、室外熱交換器23の液側と液冷媒連絡管5側とを接続する冷媒管である。
【0036】
主弁24は、冷房運転時には、室外熱交換器23において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧する弁である。また、主弁24は、暖房運転時には、室内熱交換器41において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧する弁である。主弁24は、液冷媒管35に設けられている。ここでは、主弁24として、開度制御が可能な電動膨張弁が使用されている。
【0037】
吐出−吸入バイパス回路26は、暖房運転時に圧縮機21の吐出側から圧縮機21の吸入側に冷媒をバイパスすることを可能にする冷媒管である。ここでは、吐出−吸入バイパス回路26は、吐出管32から分岐され、吸入管31に合流するように設けられている。吐出−吸入バイパス回路26は、過熱弁27を有している。ここでは、過熱弁27として、開閉制御が可能な電磁弁が使用されている。
【0038】
室外ユニット2は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための室外ファン25を有している。すなわち、室外ユニット2は、室外熱交換器23を流れる冷媒の冷却源又は加熱源としての室外空気を室外熱交換器23に供給するファンとして、室外ファン25を有している。ここでは、室外ファン25として、回転数制御が可能な室外ファン用モータ25aによって駆動されるプロペラファン等が使用されている。
【0039】
室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外熱交換器23には、室外熱交換器23における冷媒の温度Txoを検出する室外熱交温度センサ53が設けられている。室外ユニット2には、室外ユニット2内に吸入される室外空気の温度Toaを検出する外気温度センサ54が設けられている。吐出管32又は圧縮機21には、圧縮機21から吐出される冷凍サイクルの高圧の冷媒の温度Tdを検出する吐出温度センサ52が設けられている。
【0040】
室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部28を有している。そして、室外側制御部28は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット4との間で伝送線7を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0041】
<冷媒連絡管>
冷媒連絡管5、6は、空気調和装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管であり、設置場所や室外ユニットと室内ユニットとの組み合わせ等の設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
【0042】
以上のように、室外ユニット2と、室内ユニット4と、冷媒連絡管5、6とが接続されることによって、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。ここで、冷媒回路10は、主として圧縮機21と室内熱交換器41と主弁24と室外熱交換器23とを有する主冷媒回路11(冷媒回路10のうち吐出−吸入バイパス回路26を除く部分)に、過熱弁27を有する吐出−吸入バイパス回路26が接続されることによって構成されている。そして、冷媒回路10の主冷媒回路11は、後述のように、四路切換弁22を暖房サイクル状態に切り換えることで、圧縮機21、室内熱交換器41、主弁24、室外熱交換器23の順に冷媒を循環させる暖房運転を行うことが可能になっている。
【0043】
<制御部>
空気調和装置1は、室内側制御部43と室外側制御部28とから構成される制御部8によって、室外ユニット2及び室内ユニット4の各機器の制御を行うことができるようになっている。すなわち、室内側制御部43と室外側制御部28との間を接続する伝送線7とによって、暖房運転等を含む空気調和装置1全体の運転制御を行う制御部8が構成されている。
【0044】
制御部8は、図2に示すように、各種センサ52〜56等の検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器及び弁21a、22、24、25a、27、42a等を制御することができるように接続されている。
【0045】
(2)空気調和装置の動作
次に、空気調和装置1の動作について、図3図6を用いて説明する。空気調和装置1は、冷房運転(図3参照)及び暖房運転(図4参照)を行うことが可能である。また、暖房運転時においては、室外熱交換器23に付着した霜を融解させるための正サイクル除霜運転(図5及び図6参照)を行うことも可能である。
【0046】
<冷房運転>
冷房運転時には、四路切換弁22が冷房サイクル状態(図3の実線で示される状態)に切り換えられる。また、吐出−吸入バイパス回路26の過熱弁27は閉止されている。
【0047】
冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。
【0048】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を通じて、室外熱交換器23に送られる。
【0049】
室外熱交換器23に送られた高圧のガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン36によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。
【0050】
室外熱交換器23において放熱した高圧の液冷媒は、主弁24に送られる。
【0051】
主弁24に送られた高圧の液冷媒は、主弁24によって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。主弁24で減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、液冷媒連絡管5を通じて、室内熱交換器41に送られる。
【0052】
室内熱交換器41に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器41において、室内ファン42によって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで室内の冷房が行われる。
【0053】
室内熱交換器41において蒸発した低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管6及び四路切換弁22を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0054】
このように、冷媒回路10(ここでは、主冷媒回路11)において、圧縮機21、室外熱交換器23、主弁24、室内熱交換器41の順に冷媒を循環させる冷房運転が行われる。
【0055】
<暖房運転>
暖房運転時には、四路切換弁22が暖房サイクル状態(図4の破線で示される状態)に切り換えられる。
【0056】
冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。
【0057】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22及びガス冷媒連絡管6を通じて、室内熱交換器41に送られる。
【0058】
室内熱交換器41に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器41において、室内ファン42によって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで室内の暖房が行われる。
【0059】
室内熱交換器41で放熱した高圧の液冷媒は、液冷媒連絡管5を通じて、主弁24に送られる。
【0060】
主弁24に送られた高圧の液冷媒は、主弁24によって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。主弁24で減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23に送られる。
【0061】
室外熱交換器23に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。
【0062】
室外熱交換器23で蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁22を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0063】
このように、冷媒回路10(ここでは、主冷媒回路11)において、圧縮機21、室内熱交換器41、主弁24、室外熱交換器23の順に冷媒を循環させる暖房運転が行われる。
【0064】
<正サイクル除霜運転>
−基本動作−
上記の暖房運転時において、室外熱交換器23における冷媒の温度Txoが所定温度よりも低くなること等によって室外熱交換器23における着霜が検知された場合には、室外熱交換器23に付着した霜を融解させる正サイクル除霜運転を行い、室外熱交換器23に付着した霜が融解した後に、暖房運転に復帰するようになっている。ここで、室外熱交換器23に付着した霜が融解したかどうかの検知は、室外熱交換器23における冷媒の温度Txoが所定温度よりも高くなること等によって行われる。
【0065】
ここで、正サイクル除霜運転とは、暖房運転時と同様に、すなわち、四路切換弁22が図5の破線で示される暖房サイクル状態で、冷媒回路10の主冷媒回路11において、圧縮機21、室内熱交換器41、主弁24、室外熱交換器23の順に冷媒を循環させつつ室外熱交換器23を除霜する運転である。
【0066】
但し、正サイクル除霜運転では、暖房運転時とは異なり、吐出−吸入バイパス回路26の過熱弁27を開けることで、吐出−吸入バイパス回路26を通じて圧縮機21の吐出側から圧縮機21の吸入側に冷媒をバイパスさせる動作が行われる。
【0067】
具体的には、冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。
【0068】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒の一部は、吐出−吸入バイパス回路26を通じて圧縮機21の吸入側にバイパスされ、残りのガス冷媒は、四路切換弁22及びガス冷媒連絡管6を通じて、室内熱交換器41に送られる。
【0069】
室内熱交換器41に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器41において、室内ファン42によって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱する。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで、除霜中においても、室内の暖房が継続して行われる。
【0070】
室内熱交換器41で放熱した高圧の冷媒は、液冷媒連絡管5及び主弁24を通じて、室外熱交換器23に送られる。
【0071】
室外熱交換器23に送られた冷媒は、室外熱交換器23において、室外熱交換器23に付着した霜と熱交換を行って放熱して、液冷媒の多い気液二相状態になる。これにより、室外熱交換器23に付着した霜が融解して、室外熱交換器23の除霜が行われる。
【0072】
室外熱交換器23で放熱した液冷媒の気液二相状態の冷媒は、四路切換弁22を通じて、吸入管31に送られ、吐出−吸入バイパス回路26を通じて圧縮機21の吸入側にバイパスされたガス冷媒と合流することで、液冷媒の少ない気液二相状態又はガス状態になって、再び、圧縮機21に吸入される。
【0073】
このように、冷媒回路10において、圧縮機21、室内熱交換器41、主弁24、室外熱交換器23の順に冷媒を循環させるとともに、過熱弁27を開けて吐出−吸入バイパス回路26を通じて圧縮機21の吐出側から圧縮機21の吸入側に冷媒をバイパスさせる正サイクル除霜運転が行われる。
【0074】
−制御−
正サイクル除霜運転時において、従来と同様に、主弁24を全開近くまで開いた状態にすると、冷凍サイクルの高圧が十分に上昇しにくくなり、圧縮機21への投入動力が減少してしまい、その結果、除霜に使用できる熱量が減少して、圧縮機21への液バックの増加、さらなる冷凍サイクルの高圧の低下、圧縮機21への投入動力の減少という悪循環に陥りやすくなる。そして、このような悪循環によって、正サイクル除霜運転を継続できなくなるおそれがある。
【0075】
そこで、ここでは、主冷媒回路11における冷凍サイクルの高圧Phが目標高圧Phsになるように主弁24の開度を調節する除霜時主弁高圧制御を行うようにしている。以下、正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転を含めた各種機器の制御について、図6に示される正サイクル除霜運転及びその前後の暖房運転時のタイムチャートを使用して説明する。
【0076】
まず、正サイクル除霜運転を開始する前の暖房運転時においては、上記のように、過熱弁27が全閉になっており、そして、主弁24、圧縮機21、室外ファン25及び室内ファン42が、例えば、室内温度センサ56によって検出される室内空気の温度Traが目標室内温度になるように制御されている。ここでは、暖房運転時における主弁24の制御として、圧縮機21の吐出側の冷媒の温度Tdに基づいて主弁24の開度を調節する暖房時主弁吐出温度制御が行われている。具体的には、圧縮機21の吐出側の冷媒の温度Tdが目標吐出温度Tdsになるように主弁24の開度を調節する制御が行われている。すなわち、冷媒の温度Tdが目標吐出温度Tdsよりも低い場合には、主弁24の開度を小さくする制御を行い、冷媒の温度Tdが目標吐出温度Tdsよりも高い場合には、主弁24の開度を大きくする制御を行うようになっている。
【0077】
次に、室外熱交換器23における着霜が検知されると、正サイクル除霜運転を開始する。正サイクル除霜運転時においては、上記のように、過熱弁27を全開にすることで、吐出−吸入バイパス回路26を通じて圧縮機21の吐出側から圧縮機21の吸入側に冷媒をバイパスさせる動作が行われる。また、正サイクル除霜運転時における主弁24の制御として、暖房時主弁吐出温度制御に代えて、上記の除霜時主弁高圧制御が行われる。具体的には、室内熱交温度センサ55によって検出される冷媒の温度Txiが冷凍サイクルの高圧Phにおける冷媒の飽和温度に相当することから、冷媒の温度Txiを冷凍サイクルの高圧Phとして使用し、この高圧Phが目標高圧Phsになるように主弁24の開度を調節する制御が行われる。すなわち、高圧Phが目標高圧Phsよりも低い場合には、主弁24の開度を小さくする制御を行い、高圧Phが目標高圧Phsよりも高い場合には、主弁24の開度を大きくする制御を行う。ここでは、目標高圧Phが、暖房運転時における高圧Phの上限値Phx付近の値に設定されている。この高圧Phの上限値Phxは、冷媒回路10を構成する機器の設計圧力等を考慮して規定されている値であり、この値よりも少し低い圧力値を目標高圧Phとしている。また、圧縮機21は、正サイクル除霜運転用の周波数である除霜周波数で運転が行われる。ここで、除霜周波数は、最高周波数付近の高周波数に設定される。また、室外ファン25は、停止される。さらに、室内ファン42は、正サイクル除霜運転用の回転数である除霜回転数で運転が行われる。ここで、除霜回転数は、最低回転数又は最低回転数付近の低回転数に設定される。
【0078】
そして、室外熱交換器23に付着した霜が融解したことが検知されると、正サイクル除霜運転を終了して、暖房運転に復帰する。具体的には、過熱弁26を全閉にし、主弁24の制御を除霜時主弁高圧制御から暖房時主弁吐出温度制御に戻し、圧縮機21、室外ファン25及び室内ファン42の制御を暖房運転時の制御内容に戻す。
【0079】
このように、冷媒回路10(ここでは、主冷媒回路11)において、正サイクル除霜運転時に、主冷媒回路11における冷凍サイクルの高圧Phが目標高圧Phsになるように主弁24の開度を調節する除霜時主弁高圧制御が行われる。
【0080】
−特徴−
上記の正サイクル除霜運転には、以下のような特徴がある。
【0081】
ここでは、上記のように、正サイクル除霜運転時に、冷凍サイクルの高圧Phが目標高圧Phsになるように主弁24の開度を調節(除霜時主弁高圧制御)するようにしている。このため、正サイクル除霜運転時に、冷凍サイクルの高圧Phを所望の目標高圧Phs付近に維持することができる。これにより、ここでは、圧縮機21の投入動力が増加し、その結果、除霜に使用できる熱量を確保することができ、そして、正サイクル除霜運転を継続することができる。
【0082】
また、ここでは、上記のように、目標高圧Phを暖房運転時における高圧Phの上限値Phx付近の値に設定しているため、正サイクル除霜運転時における冷凍サイクルの高圧Phを十分に高く維持することができる。これにより、ここでは、正サイクル除霜運転時に、除霜に使用できる熱量を大きく増加させることができる。
【0083】
また、ここでは、上記のように、室内熱交温度センサ55によって冷凍サイクルの高圧Phを得るようにしているため、冷凍サイクルの高圧Phを得るための圧力センサを設けずに済ませることができる。
【0084】
また、ここでは、上記のように、主弁24の開度を、暖房運転時には圧縮機21の吐出側の冷媒の温度Tdに基づいて制御(暖房時主弁吐出温度制御)し、正サイクル除霜運転時には冷凍サイクルの高圧Phが目標高圧Phsになるように制御(除霜時主弁高圧制御)するようにしている。これにより、ここでは、運転内容に応じて最適な主弁24の開度制御に切り換えることができる。
【0085】
(3)変形例1
上記の実施形態では、吐出−吸入バイパス回路26の過熱弁27として電磁弁等の開閉制御が可能な弁を使用しているが、これに代えて、図7に示すように、電動膨張弁等の開度制御が可能な弁を使用するようにしてもよい。この場合においても、上記の実施形態と同様の正サイクル除霜運転を行うことができる。
【0086】
また、ここでは、過熱弁27として開度制御が可能な弁を使用することを利用して、正サイクル除霜運転時に、主弁24による除霜時主弁高圧制御とともに、圧縮機21の吐出側の冷媒の過熱度TdSHが目標吐出過熱度TdSHsになるように過熱弁27の開度を調節する除霜時吐出温度制御を行うようにしてもよい。具体的には、圧縮機21の吐出側の冷媒の温度を圧縮機21の吐出側に設けられた吐出温度センサ52によって検出される冷媒の温度Tdから得て、圧縮機21の吐出側の冷媒の飽和温度を室内熱交換器41に設けられた室内熱交温度センサ55によって検出される冷媒の温度Txiから得て、圧縮機21の吐出側の冷媒の過熱度TdSHを、2つの冷媒の温度Td、Txiから得る。ここでは、冷媒の温度Tdから冷媒の温度Txiを差し引くことによって過熱度TdSHを得る。そして、この過熱度TdSHが目標吐出過熱度TdSHsになるように過熱弁27の開度を調節する制御が行われる。すなわち、過熱度TdSHが目標吐出過熱度TdSHsよりも低い場合には、過熱弁27の開度を大きくする制御を行い、過熱度TdSHが目標吐出過熱度TdSHsよりも高い場合には、過熱弁27の開度を小さくする制御を行う。ここでは、目標吐出過熱度TdSHsが、圧縮機21の信頼性を考慮して、5deg.〜15deg.程度の値に設定される。尚、正サイクル除霜運転時の他の機器(主弁24、圧縮機21、室外ファン25及び室内ファン42)の制御は、上記の実施形態と同様である。
【0087】
このように、本変形例では、上記のように、正サイクル除霜運転時に、圧縮機21の吐出側の冷媒の過熱度TdSHが目標吐出過熱度TdSHsになるように過熱弁27の開度を調節(除霜時吐出温度制御)するようにしている。このため、正サイクル除霜運転時に、圧縮機21への過度の液バック、及び、圧縮機21に吸入される冷媒が過度の過熱状態になることで圧縮機21の焼き付けや破損等が発生することの両方を抑制することができる。これにより、ここでは、正サイクル除霜運転時に、圧縮機21の信頼性を確保することができる。
【0088】
(4)変形例2
上記の実施形態及び変形例1では、正サイクル除霜運転中、室外ファン25を常に停止させるようにしているが、正サイクル除霜運転中の運転状況に応じて室外ファン25を運転するようにしてもよい。
【0089】
例えば、図9に示すように、正サイクル除霜運転時に、室外熱交換器23に設けられた室外熱交温度センサ53によって検出される冷媒の温度Txoが外気温度付近の値であるファン発停温度Tfsまで上昇していない場合には室外ファン25を運転し、ファン発停温度Tfsまで上昇した場合には室外ファン25を停止させる除霜時室外ファン制御を行うようにしてもよい。ここでは、ファン発停温度Tfsが外気温度センサ54によって検出される室外空気の温度Toa±2deg.程度の値に設定される。尚、正サイクル除霜運転時の他の機器(過熱弁27、主弁24、圧縮機21及び室内ファン42)の制御は、上記の実施形態又は変形例1と同様である。また、図9においては、変形例1における正サイクル除霜運転(図8参照)に除霜時室外ファン制御を適用した内容を図示しているが、上記の実施形態における正サイクル除霜運転(図6参照)に除霜時室外ファン制御を適用してもよい。
【0090】
このように、本変形例では、上記のように、正サイクル除霜運転時に、室外ファン25を常に停止させるのではなく、室外熱交換器23における冷媒の温度Txoが外気温度Toa付近(ここでは、ファン発停温度Tfs)まで上昇するまでは、室外ファン25を運転し、その後、室外ファン25を停止する制御(除霜時室外ファン制御)を行うようにしている。このため、室外ファン25を運転している際には、圧縮機21への投入動力による熱量及び空気との熱交換による熱量を使用して、室外熱交換器23の除霜を行うことができる。これにより、正サイクル除霜運転の除霜時間を短縮することができる。
【0091】
(5)変形例3
上記の変形例1、2では、正サイクル除霜運転の開始時や正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、主弁24及び過熱弁27の制御の切り換えが行われるが、このとき、冷媒回路10において、過渡的な圧力変動が極力発生しないようにすることが好ましい。
【0092】
そこで、ここでは、図10に示すように、正サイクル除霜運転の開始時や正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、主弁24及び過熱弁27の開度を徐々に変化させる除霜開始時弁開度徐変制御や暖房復帰時弁開度徐変制御を行うようにしてもよい。具体的には、正サイクル除霜運転の開始時に、全閉されている過熱弁27を除霜時吐出温度制御に切り換えるに際して、10秒〜数十秒かけて数段階かけて過熱弁27の開度を除霜時吐出温度制御の初期の目標開度まで徐々に変化させるとともに、暖房時主弁吐出温度制御を行っている主弁24を除霜時主弁高圧制御に切り換えるに際して、10秒〜数十秒かけて数段階かけて主弁24の開度を除霜時主弁高圧制御の初期の目標開度まで徐々に変化させる除霜開始時弁開度徐変制御を行う。また、正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、除霜時吐出温度制御を行っている過熱弁27を全閉に切り換えるに際して、10秒〜数十秒かけて数段階かけて過熱弁27の開度を目標開度としての全閉まで徐々に変化させるとともに、除霜時主弁高圧制御を行っている主弁24を暖房時主弁吐出温度制御に切り換えるに際して、10秒〜数十秒かけて数段階かけて主弁24の開度を暖房時主弁吐出温度制御の初期の目標開度まで徐々に変化させる暖房復帰時弁開度徐変制御を行う。尚、正サイクル除霜運転時の他の機器(圧縮機21、室外ファン25及び室内ファン42)の制御は、変形例1、2と同様である。また、図10においては、変形例2における正サイクル除霜運転(図9参照)に除霜開始時弁開度徐変制御及び暖房復帰時弁開度徐変制御を適用した内容を図示しているが、除霜開始時弁開度徐変制御だけを適用してもよい。また、変形例1における正サイクル除霜運転(図8参照)に除霜開始時弁開度徐変制御や暖房復帰時弁開度徐変制御を適用してもよい。
【0093】
このように、本変形例では、上記のように、正サイクル除霜運転の開始時や正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、主弁24及び過熱弁27の開度を目標開度まで徐々に変化(除霜開始時弁開度徐変制御や暖房復帰時弁開度徐変制御)させるようにしている。このため、正サイクル除霜運転の開始時や正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時の過渡的な圧力変動を抑えることができる。これにより、ここでは、圧縮機21の信頼性を確保することができる。
【0094】
(6)変形例4
上記の変形例3では、正サイクル除霜運転の開始時や正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、主弁24及び過熱弁27の制御の切り換えとともに、室内ファン42の運転も切り換えられる。
【0095】
そこで、ここでは、図11に示すように、正サイクル除霜運転の開始時に、室内ファン42の回転数を徐々に変化させる除霜開始時ファン徐変制御を行うようにし、正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、室内ファン42の回転数を急激に変化させる暖房復帰時ファン急変制御を行うようにしてもよい。具体的には、正サイクル除霜運転の開始時には、主弁24及び過熱弁27と同様に、10秒〜数十秒かけて数段階かけて室内ファン42の回転数を暖房運転時の設定回転数から除霜回転数まで徐々に変化させる除霜開始時ファン徐変制御を行い、正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時には、正サイクル除霜運転の開始時とは異なり、室内ファン42の回転数を除霜回転数から暖房運転時の設定回転数まで急激に変化させる暖房復帰時ファン急変制御を行うようにしてもよい。尚、正サイクル除霜運転時の他の機器(過熱弁27、主弁24、圧縮機21及び室外ファン25)の制御は、変形例3と同様である。
【0096】
このように、本変形例では、上記のように、正サイクル除霜運転の開始時に、室内ファン42の回転数を徐々に変化(除霜開始時ファン徐変制御)させるようにし、正サイクル除霜運転から暖房運転への復帰時に、室内ファンの回転数を急激に変化(暖房復帰時ファン急変制御)させるようにしている。このため、正サイクル除霜運転の開始時の過渡的な圧力変動をさらに抑えるとともに、室内ファン42の運転については、暖房運転への復帰を速やかに行い、室内の快適性の向上を優先することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、圧縮機、室内熱交換器、主弁、室外熱交換器の順に冷媒を循環させつつ室外熱交換器を除霜する正サイクル除霜運転時に使用される吐出−吸入バイパス回路を有する空気調和装置に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 空気調和装置
11 主冷媒回路
21 圧縮機
23 室外熱交換器
24 主弁
25 室外ファン
26 吐出−吸入バイパス回路
27 過熱弁
41 室内熱交換器
53 室外熱交温度センサ
55 室内熱交温度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開昭61−262560号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11