(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クロスフィンチューブ式熱交換器用のフィン(1)の素材である金属製薄板(P)に対し、カラー部(10)のリフレア部(13)の加工を行うためのリフレアパンチ(61)を備えた上型(60)と、この上型(60)に対向して配置される下型(70)とを備え、
前記下型(70)は、前記リフレアパンチ(61)の先端部の進入を許容する孔部(71a)を有するダイブッシュ(71)と、前記ダイブッシュ(71)を保持するダイプレート(72)と、前記ダイブッシュ(71)の孔部(71a)に入った金属製薄板の切り屑(80)を払い出す払出しピン(73)と、前記払出しピン(73)を上下方向に摺動可能に保持するとともに、前記ダイブッシュ(71)の下方部への移動を規制するバッキングプレート(74)と、前記払出しピン(73)の下面を上方へ付勢するばね部材(75)と、このばね部材(75)を固定する埋込みブロック(76)とを有する
熱交換器用フィンのリフレア加工装置。
前記昇降装置(77)は、テーパジブ下部材(77b)とテーパジブ上部材(77a)を備えたテーパジブであって、テーパジブ下部材(77b)が移動し、テーパジブ上部材(77a)が固定しているように構成されている
請求項3に記載の熱交換器用フィンのリフレア加工装置。
前記払出しピン(73)は、型開き状態において、移送されてくる金属製薄板(P)のカラー部の下面を支持するのに適した上面高さ位置となるように前記ばね部材(75)により調整されている
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の熱交換器用フィンのリフレア加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように逃がし穴を有するリフレア加工装置において、アンコイラやピッチフィーダの異常等により金属製薄板の送り量に狂いが生じると、リフレアパンチ202の位置と送られてくる金属製薄板204のカラー部の位置とに狂いが生じる。このため、金属製薄板204の送り量に狂いが生じると、リフレア加工されるカラー部から切り屑が生じ、この切り屑が逃がし穴に落下する。そして、逃がし穴に落下した切り屑は、そのまま逃がし穴に貯まったり、さらに逃がし穴下方の昇降装置であるテーパジブ上に落下したりするおそれがある。このような状態になると、リフレアパンチ202の上下動に支障を来したり、テーパジブの調整機能に影響を与えたりする恐れがある。したがって、このような場合、リフレア加工を含むフィン製造装置を停止して保守点検する必要があり、リフレア加工装置のみならずこのリフレア加工装置を含むフィン製造装置の稼働率を低下させる恐れがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み成されたものであって、リフレアパンチの下方に逃がし穴を有するリフレア加工装置、
同リフレア加工装置によりカラー部のリフレア部を製作する熱交換器用フィン製造方法、及び、同熱交換器用フィン製造方法により製作された熱交換器用フィンを用いる熱交換器製造方法を提供するものであって、フィン製造装置の稼働率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決する熱交換器用フィンのリフレア加工装置は、クロスフィンチューブ式熱交換器用のフィンの素材である金属製薄板に対し、カラー部のリフレア部の加工を行うためのリフレアパンチを備えた上型と、この上型に対向して配置される下型とを備え、前記下型は、前記リフレアパンチの先端部の進入を許容する孔部を有するダイブッシュと、前記ダイブッシュを保持するダイプレートと、前記ダイブッシュの孔部に入った金属製薄板の切り屑を払い出す払出しピンと、前記払出しピンを上下方向に摺動可能に保持するとともに、前記ダイブッシュの下方部への移動を規制するバッキングプレートと、前記払出しピンの下面を上方へ押圧するばね部材と、このばね部材を固定する埋込みブロックとを有する。
【0009】
このような構成によれば、ダイブッシュの孔部がリフレアパンチの逃がし孔を形成する。また、何らかの異常のためにリフレアパンチ及びダイブッシュの位置と、送られてくる金属製薄板のカラー部の位置とに狂いが生じた場合等において、金属製薄板の切り屑がダイブッシュの孔部に嵌まり込んだとしても、この切り屑は型開きのときに払出しピンによりダイプレートの上面へ押し上げられる。したがって、リフレア加工装置、並びに、この加工装置を含むフィン製造装置の保守点検を必要とする頻度が低減され、リフレア加工装置、惹いては、この加工装置を含むフィン製造装置の稼働率を向上させることができる。
【0010】
前記ダイプレートとバッキングプレートとは固定され、前記ダイブッシュは、下端部に形成したフランジ部が前記ダイプレートに形成された段付孔により上方への移動が規制され、前記払出しピンは、上方部分に対し下方部分が大径の段付き円柱状に形成されるとともに、この上方部分が前記ダイブッシュ内を上下動するように組み込まれ、前記バッキングプレートは、前記払出しピンの下方部分を上下方向に摺動可能とする孔部を有し、このバッキングプレートの孔部の径は、前記ダイブッシュのフランジ部の外径より小さく、かつ、前記ダイブッシュの孔部の内径より大きく形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、下型を固定させて上型を上下スライドさせるリフレア加工用の金型において、ダイブッシュ及び払出しピンの上下方向の抜け止めが、ダイプレート、バッキングプレート、及び埋込みブロックの組み合わせ構造により行われているので、下型の部品点数が削減される。
【0012】
前記払出しピンは、型開き状態において、移送されてくる金属製薄板のカラー部の下面を支持するのに適した上面高さ位置となるように前記ばね部材により調整されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、払出しピンの先端部がダイプレートの上方への無意味な突出を回避することができる。したがって、金属製薄板の移送を阻害する要因となる払出しピンの先端部の突出を回避することができる。
【0014】
前記下型は、埋込みブロックの下面を支持するように設置された昇降装置を有し、前記昇降装置は、前記埋込みブロック、前記バッキングプレート及び前記ダイプレートを一体的に上下動させることにより前記ダイプレートの上面高さ位置を制御するように構成され、前記リフレアパンチの下死点は、前記上型の上下動のストロークにより設定され、前記リフレア部の高さは、型閉じ状態における前記上型の下面と前記下型の上面との間の寸法により調整されるものであって、型閉じ状態における前記上型の下面と前記下型の上面との間の寸法は、前記ダイプレートの上面高さ位置により調整され、前記ダイプレートの上面高さ位置は、前記昇降装置により前記埋込みブロック、前記バッキングプレート及び前記ダイプレートを一体的に上下動して調整するように構成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、リフレアパンチの下死点の位置は上型の上下動のストロークにより設定され、カラー部の高さ位置はダイプレートの上面高さ位置を調整する下型に含まれる昇降装置により設定される。したがって、二つの設定機能が上型と下型に分散されているので、このリフレア加工装置の機構の簡略化及び設定作業の容易化を図ることができる。
【0016】
前記昇降装置は、テーパジブ下部材とテーパジブ上部材を備えたテーパジブであって、前記テーパジブは、テーパジブ下部材の移動により高さ調整を行うように構成されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、昇降装置として多用されているテーパジブを適用することができる。また、このテーパジブは、高さ調整時にテーパジブ上部材が移動しないので、払出しピンを安定的に支持することができる。したがって、昇降装置を作動させた場合に、埋込みブロック上のばね部材により支持される払出しピンの先端の位置調整に与える影響が少ない。
【0018】
前記上型は、リフレア加工時にカラー部の周辺をダイプレートの上面の方へ押し付けるリフレアブッシュを有することが好ましい。
このような構成によれば、リフレア加工によりフィンに加えられる変形を抑制することができる。
【0019】
また、上記課題を解決する熱交換器用フィン
製造方法は、前記熱交換器用フィンのリフレア加工装置によりカラー部のリフレア部を製作
するものである。
このような構成によれば、リフレア加工装置を含むフィン製造装置の稼働率が向上するので、安価な熱交換器用フィンを提供することができる。
【0020】
また、上記課題を解決する熱交換器
製造方法は、
熱交換器用フィン製造方法により製作された熱交換器用フィンを用いるものである。
このような構成によれば、安価なフィンを使用するので、安価な熱交換器を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記発明によれば、リフレア加工装置、惹いては、この加工装置を含むフィン製造装置の稼働率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る熱交換器用フィンのリフレア加工装置の具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0024】
[本加工装置により製造される熱交換器用フィンの説明]
先ず、本実施の形態に係る熱交換器用フィンの概略構成を説明する。
図1(a)に示すように、本熱交換器用のフィン1は、例えば空気調和機の室内機などの熱交換器に使用されるものであって、千鳥状に伝熱管を貫通させるカラー部10を備えている。カラー部10は、2列6段に形成されている。カラー部10の各列の段間には4個一組の膨出フィン(以下ルーバーフィン20と称する)が形成されている。カラー部10の列間にはミシン目のスリット30が形成されている。
【0025】
図1(b)に示すように、カラー部10は、小さな立ち上げを成す大径の、皿型の座部11が形成され、その上方に垂直円筒部12が形成されている。この垂直円筒部12の上方はリフレア部13が形成されている。垂直円筒部12は、伝熱管40の挿入部であり、伝熱管40とフィン1との伝熱を良好にするものである。伝熱管40は、所定の形状に成形されたカラー部10に挿入された後に拡管される。これにより、伝熱管40は、垂直円筒部12の内面と密接に接触するように形成される。座部11は、フィン1を積層するときのガイド機能を有する、リフレア部13は、フィン1を積層するときのピッチを一定に維持する機能を有する。
【0026】
ルーバーフィン20は、前縁効果によりフィン1の熱伝達率を向上させるものである。ルーバーフィン20は、段方向に切り込みが施され、段方向の両端においてフィン1の基部から立ち上げられた形状を成している。
図1に示したものはルーバーフィン20の一例であって、様々な形状のものと置き換え可能である。
【0027】
カラー部10の列間に形成されているミシン目のスリット30は、段方向に切り目を入れたものであって、列間でフィン1を容易に分割できるようにするために形成されている。なお、列間に加工されるスリットとしては、このようなもの以外に、凝縮器として使用される室外コイルなどの熱交換器において、入口側の伝熱管40と出口側の伝熱管40との間における熱伝導を低減させることにより、冷媒の液化や過冷却を促進させる目的のものがある。また、他のスリットとしては、単純に列を分割するために段方向に連続するスリットを形成する場合もある。本実施の形態におけるミシン目加工のスリット30はこれらスリットに置換することが可能である。
【0028】
[本熱交換器用のフィン製造装置の全体概要]
次に、このようなフィンを製造するフィン製造装置の概要について説明する。
図2に示すように、本フィン製造装置は、フィン1の素材であるアルミニウム等の金属製薄板Pがコイル状に巻かれたアンコイラ50を備えている。そして、金属製薄板Pは、アンコイラ50からループコントローラ51を経てプレス装置52へ送られる。プレス装置52は、ベッドに固定される下型と、プレス機械のスライドに固定される上型とを有する。このフィン製造装置では、工程が多岐にわたるため1台のプレス装置52の金属製薄板Pの送り方向の長さ範囲内に各工程の金型を収容することができない。このため、プレス装置52においては下型を支持する下型ダイセット52aを送り方向の下手側へ延長させている。同様に、上型を支持する上型ダイセット52bについても送り方向の下手側へ延長させている。なお、上型の延長寸法の不足を補うようにオーバーハング部材52cが送り方向の外方へさらに延長されている。この実施の形態では、このオーバーハング部材52cにより最終工程のシャーリング装置が保持されている。
【0029】
このように構成された1台のプレス装置52によりA〜Iの各工程の加工が行われる。
図2における表内に示すように、工程Aでは、ルーバーフィン20の加工が行われる。工程B〜工程Fではカラー部10の加工が順次行われる。工程Fを経てカラー部10が形成された金属製薄板Pは、工程Gにおいて列間スリット加工やトリミング加工が行われる。そして、工程Hでは、ピッチフィードにより全体のピッチ送りが行われている。工程Iは、最終工程であり金属製薄板Pを所定の長さで切断するシャーリング加工が行われる。金属製薄板Pは、この工程Iを最終工程として熱交換器用のフィン1として完成される。また、完成されたフィン1は、工程Iの下手に配置されているスタッカー53に収容される。スタッカー53は、鉛直方向に立設された複数のピン53aを有しており、カラー部10内にピン53aを挿入することによりフィン1を一定のピッチで積層している。
【0030】
また、フィン製造装置は、従来公知のものと同様に、金属製薄板Pから複数のフィンを同時に仕上げるように各工程が複数列同時進行するように構成されている。なお、連続する列間スリットをどの位置の列間で行うかによりフィンの列数が設定されるとともに、列数の異なるフィンを同時に加工することができる。また、これらの設定により、同時に製作されるフィンの枚数が決定されることになる。例えば、図示2列6段のフィン1であれば、同時に生産する枚数は二十枚以上となる。本実施の形態に係るフィン製造装置は、このために各工程の加工を行う金型が複数並列に設置されている。
【0031】
ここで、工程B〜工程Fのカラー部10の加工について、
図3を参照しながら具体的に説明する。
図3(a)に示すように、工程Bでは張出し部101を形成する張出し加工が行われる。
図3(b)に示すように、工程Cでは絞り部102を加工する絞り加工が行われる。
図3(c)に示すように、工程Dでは中心部に下孔103をあけると同時にバーリング部104を形成するピアスバーリング加工が行われる。また、この工程Dでは、座部105が形成される。
図3(d)に示すように、工程Eでは所定の内径となるような垂直円筒部106を形成するアイアニング加工が行われる。
図3(e)に示すように、工程Fでは、垂直円筒部106の先端にリフレア部を形成するリフレア加工が行われる。
図3(e)に示した形状は、工程Fの加工を経て完成されたカラー部10を示す。この図における括弧内の符号は加工途中の符号を示す。すなわち、最終工程を経たカラー部10は、座部11、垂直円筒部12、及びリフレア部13を備えている。
【0032】
[リフレア加工を行う金型の説明]
次に、フィン製造装置におけるリフレア加工を行う金型について、
図4の型開き状態を基準に説明する。
【0033】
図4に示すように、リフレア加工を行う金型は、他の工程の金型と同様に上型ダイセット52bに固定される上型60と、下型ダイセット52aに固定される下型70とから構成されている。上型ダイセット52bは、上下方向に移動するスライド(不図示)に固定され、下型ダイセット52aは静止するベッドに固定されている。なお、本実施の形態に係るフィン製造装置は、複数のフィン1を同時に加工するものであって、所定列数に対応する数の金型が並行的に配置されている。ただし、以下の説明においては、説明を簡略化するために1個の金型についてのみ説明する。
【0034】
図4に示すように、上型60は、上型ダイセット52b,リフレアパンチ61、このリフレアパンチ61を固定するパンチホルダ62、リフレアブッシュ63、リフレアブッシュ63を保持するブッシュホルダ64、ブッシュホルダ64を下方へ付勢するばね部材65などを備えている。
【0035】
図4に示すように、下型70は、ダイブッシュ71、ダイブッシュ71を保持するダイプレート72、払出しピン73、ダイブッシュ71を支持するバッキングプレート74、払出しピン73を押圧するばね部材75、ばね部材75を固定する埋込みブロック76、ダイプレート72の上面高さ位置を調整する昇降装置77を備えている。そして、これら部品は、下型ダイセット52a上に取り付けられている。なお、下型70は、これら部品以外にガイドプレート78、キーパ79などを備えている。
【0036】
次に、上型60を構成する部品について具体的に説明する。
上型ダイセット52bは、上型60を取り付ける基礎部材である。そして、この上型ダイセット52bは、シャンク(不図示)により上下に移動する駆動体であるスライダ(不図示)に固定されている。
【0037】
図4に示すように、リフレアパンチ61は、上端部にフランジ部61aを備えた、略円柱状の部材である。一方、このリフレアパンチ61を取り付けるパンチホルダ62には、上方部が大径とされた段付孔62aが形成されている。そして、リフレアパンチ61は、フランジ部61aを段付孔62aの大径部に配置することにより、上方部の抜けが上型ダイセット52bにより規制され、下方への抜けが段付孔62aの段部により規制されている。
【0038】
このように、リフレアパンチ61は、上型60に保持され、上型60と共に上下動するように構成されている。
他方、パンチホルダ62は、シャンク(不図示)により上型ダイセット52bに固定されている。また、リフレアブッシュ63を取り付けるブッシュホルダ64は、シャンク(不図示)によりパンチホルダ62に固定されている。
【0039】
リフレアパンチ61は、前工程から送られてくるカラー部の垂直円筒部106の内部に挿入される小さな径の先端部61bと、前工程で形成された垂直円筒部106を押圧して所定形状のリフレア部13を形成するための鍔部61cとを有する。
【0040】
リフレアブッシュ63は、上端部にフランジ部63aを備えた、略円筒状の部材である。一方、リフレアブッシュ63を取り付けるブッシュホルダ64には、上方部が大径とされた段付孔64aが形成されている。また、リフレアブッシュ63は、フランジ部63aが段付孔64aの大径部の下方部分内に配置され、リフレアブッシュ63の内部をリフレアパンチ61の先端部61bが貫通するように組み付けされている。このように組み付けられた構成物において、フランジ部63aの上面と、リフレアパンチ61の外周面と、パンチホルダ62の下面とにより形成される円筒状の空間部には、リフレアブッシュ63を下方に付勢するばね部材65が取り付けられている。このばね部材65により、型閉じ状態におけるリフレアブッシュ63による金属製薄板Pをダイプレート72の方へ押し付ける押付力が調整されている。
【0041】
また、リフレアブッシュ63の先端部は、リフレアパンチ61の鍔部61cと協働してリフレア部13を形成するための段部63bを備えた大径部に形成されている。この段部63bは、組み付け状態において、リフレアパンチ61の鍔形の鍔部61cの面を延長した形状を成し、リフレアパンチ61のリフレア部の加工機能を補完している。
【0042】
次に、下型70の構成について具体的に説明する。
下型70のダイブッシュ71は、上型60を下方に移動させたときにリフレアパンチ61の先端部が進入することを許容する孔部71aを有する。ダイブッシュ71は、この孔部71aを有することにより、リフレアパンチ61の先端が下型70の上面に衝突することを回避する機能を奏する。そして、このダイブッシュ71は、ダイプレート72に形成された段付孔72aに保持されている。より具体的には、ダイブッシュ71は、下端部にフランジ部71bを有し、フランジ部71bの上面がダイプレート72に形成された段付孔72aの段部に当接し、フランジ部71bの下面がバッキングプレート74の上面に当接して支持されている。
【0043】
また、ダイブッシュ71は、リフレア加工時、ダイブッシュ71の上端部が座部105の内部に収納されることにより、リフレア加工が安定して行うことができるように、座部105の内部高さ寸法分がダイプレート72の上面から突出している。
【0044】
ダイプレート72は、ダイブッシュ71を保持する部材であって、前記のような構造により、段付孔72aの内部にダイブッシュ71を保持している。このダイプレート72は、シャンク(不図示)によりバッキングプレート74に固定されている。
【0045】
払出しピン73は、ダイブッシュ71内に落下する金属製薄板の切り屑を払い出すためのものであって、バッキングプレート74内に形成された孔部74a内に保持されている。払出しピン73の上方部は、ダイブッシュ71の孔部71a内を摺動しながら上下動できる細径部73aに形成され、下方部がバッキングプレート74内に形成された孔部74a内を摺動しながら上下動できる大径部73bに形成されている。大径部73bの直径は、ダイブッシュ71のフランジ部71bの外径より小さく、かつ、ダイブッシュ71の孔部71aの孔径より大きく形成されている。したがって、払出しピン73は、ダイブッシュ71のフランジ部71bにより上方への抜けが規制されている。
【0046】
また、払出しピン73は、上部から力が作用しないときに払出しピン73の上面がダイブッシュ71の上面と略同一となるように、下面、すなわち大径部73bの下面が上方へ付勢するばね部材75により支持されている。
【0047】
バッキングプレート74は、ダイブッシュ71を支持する部材であって、孔部74aの周辺部によりダイブッシュ71を支持している。また、バッキングプレート74の孔部74aは、払出しピン73の大径部73bの上下に空間部74b、74cを形成し得る高さ寸法に形成されている。この空間部74b、74cは、型閉じ状態時にはリフレアパンチに押圧されて下方に移動し、型開き状態時にはばね部材75により払出しピン73を上方へ付勢するための調整用空間として機能している。
【0048】
埋込みブロック76は、一体化されたダイプレート72とバッキングプレート74とを支持する部材である。また、埋込みブロック76は、払出しピン73の下方に取り付けられるばね部材75を収納する収納孔を備えている。
【0049】
昇降装置77は、ダイプレート72の上面高さ位置を調整するものであって、埋込みブロック76の下面を支持するように取り付けられている。すなわち、昇降装置77は、埋込みブロック76を介して、バッキングプレート74及びダイプレート72を一体的に上下動させることにより、ダイプレート72の上面高さ位置を制御するように構成されている。
【0050】
また、昇降装置77としては、テーパジブ上部材77aとテーパジブ下部材77bとからなるテーパジブが用いられている。このテーパジブは、テーパジブ下部材77bが下型ダイセット52a内において水平方向にスライド式に移動することにより、テーパジブ上部材77aの上面高さが調整される。そして、テーパジブ上部材77aの上面高さが調整されると、バッキングプレート74及びダイプレート72とが一体的に上下動され、その結果としてダイプレート72の上面の高さ位置が所定位置に調整される。
【0051】
ガイドプレート78は、埋込みブロック76の周囲の空間部を埋め、埋込みブロック76を保持するものである。
また、キーパ79は、昇降装置77により支持される埋込みブロック76、バッキングプレート74、及びダイプレート72からなる集合物の上方への移動を規制するものであって、ばね部材79aを介して規制している。このキーパ79は、シャンクにより下型ダイセット52aに固定されている。
【0052】
[本リフレア加工装置の作用]
次に、本リフレア加工装置の作用としてこの加工装置の動作を説明する。
図4に示すように、本リフレア加工装置では、型開き状態時に工程Dのアイアニング加工工程を経た金属製薄板Pがダイプレート72上の所定位置に移送される。次いで、
図5に示すように上型60が下方に移動して型閉じ状態へ移行する。
【0053】
ダイブッシュ71は、金属製薄板Pがこのリフレア加工装置に移送される際、その上部がダイプレート72の上面よりわずかに突出している。しかし、
図5に示すように、金属製薄板Pは、ダイプレート72の上面を移動して送られ、座部105がこの突出部を覆う位置で停止される。
【0054】
次いで、
図5に示すように、スライダ(不図示)に固定されている上型60が下方へ移動されて、型閉じ状態となる。型閉じ状態になるときに、リフレアパンチ61の先端面が下降して、カラー部の垂直円筒部106の内部に進入する。そして、リフレアパンチ61の先端部61bは、そのまま下降を続けてダイブッシュ71の孔部71aの内部へ進入する。このように本実施の形態においては、ダイブッシュ71の孔部71aが、リフレアパンチ61の先端部61bが下型70の上面に衝突することを回避するための逃がし穴として機能する。
【0055】
ダイブッシュ71の孔部71aの内部へ進入した先端部61bの先端面は払出しピン73の上端面に当接する。このとき、払出しピン73は、ばね部材75により上方へ付勢されているので、払出しピン73の上端面が先端部61bの先端面に当接した状態で下方に押圧される。なお、リフレアパンチ61の下降動作は、上型60の下降動作と同一である。したがって、リフレアパンチ61の下死点は、上型60のストロークの設定と同時に設定されることになる。
【0056】
また、リフレアパンチ61が下死点まで下降して型閉じされると、座部11(前の工程では座部105)の周囲の金属製薄板Pがリフレアブッシュ63によりダイプレート72の上面に押し付けられる。これにより、金属製薄板Pがリフレア加工時に変形することが防止される。また、リフレアパンチ61の鍔部61cとリフレアブッシュ63の段部63bとが協働してリフレア部13が形成される。
【0057】
このようなリフレア加工を行うフィン製造装置において、アンコイラ50やピッチフィーダの異常等により金属製薄板Pの送り量に狂いが生じると、リフレアパンチ61の位置と送られてくる金属製薄板Pのカラー部10の位置とに狂いが生じる。このため、
図6に示すように、リフレア加工されるリフレア部13から切り屑80が生じ、この切り屑80が逃がし穴として機能するダイブッシュ71の孔部71a内に落下する。
【0058】
リフレア部13が形成された後、リフレアパンチ61が上方位置に引き上げられると、型開き状態になる。
型開き状態になると、ばね部材75の作用によりリフレアパンチ61が上方に押し上げられる。ばね部材75は、型開き状態時に、払出しピン73の上端面をダイブッシュ71の上端位置まで押し上げるものであって、リフレアパンチ61の下死点を設定するものではない。払出しピン73は、ばね部材75の押し上げ作用を受け、ダイブッシュ71の孔部71a内に金属製薄板Pの切り屑80が落ち込んでいた場合は、この切り屑80をダイプレート72の上面へ払い出すように機能する。なお、ダイプレート72の上面へ払い出された切り屑80は、金属製薄板Pとともに移動し、ダイプレート72の外側に運ばれる。
【0059】
本リフレア加工装置において、カラー部10の高さは、リフレアパンチ61の下死点が上型60のストロークにより定まっていることに鑑み、下型70の上面、すなわち、ダイプレート72の上面の高さを調整することにより行われている。また、ダイプレート72の高さ調整は、昇降装置77の調整機能により行われる。
【0060】
これをより具体的に説明する。昇降装置77は、テーパジブ上部材77aとテーパジブ下部材77bとからなるテーパジブである。昇降装置77は、テーパジブ下部材77bを下型ダイセット52a内において水平方向にスライド式に移動することにより、テーパジブ上部材77aの上面高さが調整される。したがって、昇降装置77は、テーパジブ上部材77aの上面に支持されている埋込みブロック76、バッキングプレート74及びダイプレート72の組み合わせ物を一体として上下動させることにより、ダイプレート72の上面の高さを調整している。この調整により、型閉じ状態における上型60のブッシュホルダ64の下面と下型70のダイプレート72の上面との距離が調整されることになり、カラー部の高さが調整される。
【0061】
[実施の形態の効果]
本実施の形態に係るリフレア加工装置は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
【0062】
(1)ダイブッシュ71の孔部71aがリフレアパンチ61の逃がし孔を形成する。したがって、何らかの異常により、リフレアパンチ61及びダイブッシュ71の位置と、送られてくる金属製薄板Pのカラー部10の位置とに狂いが生じた場合等において、
図6のように金属製薄板Pの切り屑80がダイブッシュ71の内部(孔部)に嵌まり込むことがある。しかし、この切り屑80は、型開き状態時に払出しピン73によりダイプレート72の上面へ押し上げられ、金属製薄板Pとともにダイプレート72の外側へ運ばれる。したがって、リフレア加工装置、並びに、この加工装置を含むフィン製造装置の保守点検を必要とする頻度が低減され、リフレア加工装置、惹いては、この加工装置を含むフィン製造装置の稼働率を向上させることができる。
【0063】
(2)ダイブッシュ71及び払出しピン73の上下方向の抜け止めが、ダイプレート72、バッキングプレート74、及び埋込みブロック76の組み合わせ構造により行われているので、下型70の部品点数が削減される。
【0064】
(3)リフレアパンチ61の下死点位置が上型60の上下動のストロークにより設定され、カラー部10の高さ位置がダイプレート72の上面高さ位置を調整する下型70の昇降装置77により設定される。したがって、二つの設定機能が上型60と下型70に分散されるので、このリフレア加工装置の機構の簡略化及び設定作業の容易化を図ることができる。
【0065】
(4)昇降装置77として多用されているテーパジブを適用することができる。また、このテーパジブは、高さ調整時にテーパジブ上部材77aが移動しないので、リフレアパンチ61を安定的に支持することができる。したがって、昇降装置77を作動させた場合に、埋込みブロック76上のばね部材75により支持される払出しピン73の先端の位置調整に与える影響が少ない。
【0066】
(5)払出しピン73は、型開き状態において、移送されてくる金属製薄板Pのカラー部の下面を支持するのに適した上面高さ位置となるようにばね部材75により調整されているので、払出しピン73の先端部がダイプレート72の上方への無意味な突出を回避することができる。したがって、金属製薄板Pの移送を阻害する要因となる払出しピン73の突出を回避することができる。
【0067】
(6)上型60は、リフレア加工時にカラー部10の周辺をダイプレート72の上面の方へ押し付けるリフレアブッシュ63を有するので、リフレア加工により金属製薄板Pに加えられる変形を抑制することができる。
【0068】
(7)本実施の形態に係るフィン1は、本実施の形態に係るリフレア加工装置によりリフレア部13が加工されるので、本リフレア加工装置を含むフィン製造装置の稼働率が向上し、安価な熱交換器用フィンを提供することができる。
【0069】
(8)本実施の形態に係る熱交換器は、本実施の形態に係る熱交換器用フィンを用いるものであるので、安価な熱交換器を提供することができる。
[変形例]
上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
【0070】
・カラー部10の形状は、垂直円筒部12の下方部に皿型の座部11が形成されているものを例示しているが、この座部11を設けないものでもよい。また、座部11の形状は、平面視円形としているが、平面視の形状を他の形状、例えば六角形、四辺形などとしてもよい。なお、座部11を有さないフィン1を製造するリフレア装置の場合は、ダイブッシュ71の上端部をダイプレート72から突出させないで、ダイプレート72の上面とほぼ同一になるようにすればよい。
【0071】
・前記実施の形態においては、ダイブッシュ71を用い、このダイブッシュ71の内部の孔部71aをリフレアパンチ61の先端部の衝突を回避する逃がし孔としているが、ダイブッシュ71を用いずにダイプレート72に直接逃がし孔を形成し、この逃がし孔に払出しピン73を設けるようにしてもよい。
【0072】
・なお、前記のようにダイブッシュを71設けることをしない場合において、逃がし孔をダイプレート72からバッキングプレート74に渡って形成するようにしてもよい。すなわち、ダイプレート72には、ダイブッシュ71の孔部71aに相当するものを形成し、バッキングプレート74には、前記実施の形態における孔部74aと同様のものを形成するようにしてもよい。
【0073】
・ダイプレート72の上端面の高さを調整する昇降装置77として、テーパジブ下部材77bを水平方向に移動するテーパジブを例示したが、テーパジブ上部材77aを水平方向に移動させるものとすることもできる。また、昇降装置としては、テーパジブ以外の適宜のものに変更することを妨げるものではない。
【0074】
・フィン1の一例として、2列6段のものを示したが、列数については1列又は3列以上としてもよい。また、段数についても6段ではなく、5段以下のものや7段以上のものとしてもよい。また、フィン1の一例としてルーバーフィン20を有するものとしたが、ルーバーフィン20のないものでもよい。また、ルーバーフィン20も他の形状のものや、他の構造のものとしてもよい。