(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929891
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】温水ユニット
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20160526BHJP
F24H 9/06 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
F24H9/02 301A
F24H9/06 301Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-271026(P2013-271026)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124956(P2015-124956A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】三谷 俊数
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋司
(72)【発明者】
【氏名】西田 照男
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−148236(JP,A)
【文献】
特開2007−107856(JP,A)
【文献】
特開2002−089889(JP,A)
【文献】
特開昭58−137635(JP,A)
【文献】
実開平02−128021(JP,U)
【文献】
特開2002−195159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 9/20
F24D 1/00 − 19/10
F24F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底フレーム(1a)を有するケーシング(1)と、
上記ケーシング(1)の上記底フレーム(1a)に、内側に突出して立設された棒状部材(12)と、
上記棒状部材(12)が挿通される挿通孔(13a)を有する弾性部材(13)と、
上記弾性部材(13)に取り付けられる取付板(11)と、
上記取付板(11)に取り付けられた湯水ポンプ(2)と、
上記湯水ポンプ(2)における上記棒状部材(12)の軸方向への移動を規制する規制部材(18a)と
を備え、
上記棒状部材(12)は、上記弾性部材(13)における上記挿通孔(13a)の内周面との間に隙間を有して挿通されており、
上記取付板(11)は、上記棒状部材(12)とは非接触状態で、上記弾性部材(13)に取り付けられていると共に、
上記湯水ポンプ(2)の吸入口(2a)に接続された給湯管(6)および上記湯水ポンプ(2)の吐出口(2b)に接続された吐出管(7)によって、上記湯水ポンプ(2)を保持することで、上記弾性部材(13)における上記挿通孔(13a)の内周面と上記棒状部材(12)との間の隙間が保たれている
ことを特徴とする温水ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の温水ユニットにおいて、
上記弾性部材(13)は、上記取付板(11)を挟持する挟持用溝(13b)を備えている
ことを特徴とする温水ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の温水ユニットにおいて、
上記湯水ポンプ(2)と上記規制部材(18a)とは、上記棒状部材(12)の軸方向に隙間を有しており、
上記棒状部材(12)における上記内側への突出長さは、上記湯水ポンプ(2)と上記規制部材(18a)との上記隙間よりも長く設定されている
ことを特徴とする温水ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の温水ユニットにおいて、
上記棒状部材(12)は、頭部(12a)と軸部(12b)とを有するネジであり、
上記ネジ(12)は、上記軸部(12b)における上記頭部(12a)側の端部には、上記底フレーム(1a)に螺合する雄ネジ(14)が形成されたネジ部(12c)が設けられる一方、上記軸部(12b)における上記ネジ部(12c)以外の部分には、平滑な側面を有する円柱部(12d)が設けられており、上記円柱部(12d)のみが上記ケーシング(1)の内側に突出するようになっている
ことを特徴とする温水ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯装置等に用いられる温水ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温水を生成する温水ユニットを備えた給湯装置として、特開2007‐10241号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この給湯装置はヒートポンプ式の給湯装置であり、圧縮機,給湯用熱交換器,電子膨張弁および熱源側熱交換器を含む熱源ユニットと、上記給湯用熱交換器に接続された給湯用ポンプと、給湯用タンクユニットとを備えている。そして、上記給湯用熱交換器に給水された水が上記給湯用熱交換器での熱交換によって加熱され、上記給湯用ポンプによって上記給湯用タンクユニットに蓄積されるようになっている。
【0003】
上記給湯用ポンプは、給湯装置筺体内下部に設けられた底フレームに載置されて固定されている。その場合、一般的には、上記給湯装置筺体の取付板と上記底フレームとの間に防振ゴムを挟み込み、ビスを上方から上記取付板および上記防振ゴムを介して上記底フレームに螺合させることによって、上記給湯用ポンプを上記底フレームに固定する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の給湯装置においては、以下のような問題がある。すなわち、上記給湯用ポンプと上記取付板と上記防振ゴムと上記底フレームを上記ビスで一体に強固に固定しているので、上記給湯用ポンプの振動および振動音の一部が上記底フレームに伝わる。そのため、特に上記底フレームが板金構造の場合には、振動音を無くすことができないと言う問題がある。
【0005】
さらに、上述した給湯用ポンプを底フレームに固定する方法においては、上記給湯用ポンプを、ビスを上方から上記底フレームに螺着させて固定している。そのために、上記ビスの先端部が上記底フレームから突出しており、運搬時や据付時に上記ビスの先端部に作業員の手が触れて怪我をする恐れがあり、危険であると言う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007‐10241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、湯水ポンプの振動に起因するケーシングの振動および振動音を十分に、且つ安全に防止することが可能な温水ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の温水ユニットは、
底フレームを有するケーシングと、
上記ケーシングの上記底フレームに、内側に突出して立設された棒状部材と、
上記棒状部材が挿通される挿通孔を有する弾性部材と、
上記弾性部材に取り付けられる取付板と、
上記取付板に取り付けられた湯水ポンプと、
上記湯水ポンプにおける上記棒状部材の軸方向への移動を規制する規制部材と
を備え、
上記棒状部材は、上記弾性部材における上記挿通孔の内周面との間に隙間を有して挿通されており、
上記取付板は、上記棒状部材とは非接触状態で、上記弾性部材に取り付けられている
と共に、
上記湯水ポンプの吸入口に接続された給湯管および上記湯水ポンプの吐出口に接続された吐出管によって、上記湯水ポンプを保持することで、上記弾性部材における上記挿通孔の内周面と上記棒状部材との間の隙間が保たれている
ことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、上記湯水ポンプに取り付けられた上記取付板は、上記弾性部材に取り付けられている。そして、上記弾性部材の上記挿通孔には、上記底フレームに内側に突出して立設された上記棒状部材が挿通されている。したがって、上記湯水ポンプは、上記取付板および上記弾性部材を介して上記底フレームによって支持されている。その場合、上記弾性部材の上記挿通孔の内周面と上記棒状部材との間に隙間を有しているため、上記弾性部材は上記底フレームに立設された上記棒状部材に対して固定されてはおらず、上記湯水ポンプと上記取付板との重量のみによって上記底フレームに対して固定されている。
【0010】
したがって、上記弾性部材に伝わって来た上記湯水ポンプの振動は、上記弾性部材と離間している上記棒状部材に直接伝わることが無い。その結果、上記底フレームに伝わる上記湯水ポンプの振動と振動音とを、大幅に減少させることができる。
【0011】
さらに、上記棒状部材は、上記底フレームの内側に突出して立設されているので、上記棒状部材の先端部は上記底フレームの外側に露出しておらず、上記先端部に作業員の手が触れて怪我をすることを防止できる。
【0012】
さらに、上記湯水ポンプにおける上記棒状部材の軸方向への移動を上記規制部材で規制するようにしている。したがって、上記湯水ポンプが取り付けられた温水ユニットを横向きに搬送する場合に、上記湯水ポンプが上記棒状部材の軸方向に移動することが上記規制部材で規制され、上記弾性部材が上記棒状部材から抜けることを防止できる。その結果、上記棒状部材から抜けた上記弾性部材を元に戻す作業が不要となり、設置作業の利便性を向上することができる。
【0013】
また、一実施の形態の温水ユニットでは、
上記弾性部材は、上記取付板を挟持する挟持用溝を備えている。
【0014】
この実施の形態によれば、上記取付板は、上記弾性部材の上記挟持用溝に挟持されることによって、上記弾性部材に取り付けられている。したがって、上記取付板を、上記弾性部材に対して、簡素な構成で確実に取り付けることができる。
【0015】
また、一実施の形態の温水ユニットでは、
上記湯水ポンプと上記規制部材とは、上記棒状部材の軸方向に隙間を有しており、
上記棒状部材における上記内側への突出長さは、上記湯水ポンプと上記規制部材との上記隙間よりも長く設定されている。
【0016】
この実施の形態によれば、上記棒状部材の突出長さは上記湯水ポンプと上記規制部材との隙間よりも長いので、上記湯水ポンプが上記棒状部材の軸方向に移動して上記規制部材に当接しても、上記湯水ポンプと一体になっている上記弾性部材が上記棒状部材から抜けることを防止できる。
【0017】
したがって、搬送先で横向きの温水ユニットを起こした場合に、上記弾性部材を元の組み立て時の状態に戻ることができる。
【0018】
また、一実施の形態の温水ユニットでは、
上記棒状部材は、頭部と軸部とを有するネジであり、
上記ネジは、上記軸部における上記頭部側の端部には、上記底フレームに螺合する雄ネジが形成されたネジ部が設けられる一方、上記軸部における上記ネジ部以外の部分には、平滑な側面を有する円柱部が設けられており、上記円柱部のみが上記ケーシングの内側に突出するようになっている。
【0019】
この実施の形態によれば、上記ネジの上記ネジ部を上記底フレームに螺合することによって、上記ネジ部より先端側の上記円柱部のみを上記ケーシングの内側に突出させることができる。したがって、丸棒をカシメにより上記ケーシングに立設させる場合に比して、簡単に上記ネジの上記円柱部を上記ケーシングに立設させることができる。
【0020】
さらに、上記ネジの上記円柱部には雄ネジが形成されていないので、上記弾性部材の上記挿通孔の内周面と上記円柱部との間に隙間を有していることと相まって、上記弾性部材の貫通孔に上記ネジの上記円柱部を挿通させる際に、上記円柱部が上記貫通孔の内周面に接触しても、上記内周面の損傷が防止される。
【0021】
さらに、上記ネジは上記底フレームに下方から上方に向かって立設されているので、上記円柱部の先端部は上記底フレームの外側に露出することがなく、上記先端部に作業員の手が触れて怪我をすることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
以上より明らかなように、この発明の温水ユニットは、上記弾性部材の上記挿通孔の内周面と上記棒状部材との間に隙間を有しているので、上記弾性部材は上記湯水ポンプと上記取付板との重量のみによって上記底フレームに対して固定されている。
【0023】
したがって、上記弾性部材に伝わって来た上記湯水ポンプの振動は、上記弾性部材と離間している上記棒状部材に直接伝わることが無い。その結果、上記底フレームに伝わる上記湯水ポンプの振動と振動音とを、大幅に減少させることができる。
【0024】
さらに、上記棒状部材は、上記底フレームの内側に突出して立設されているので、上記棒状部材の先端部は上記底フレームの外側に露出しておらず、上記先端部に作業員の手が触れて怪我をすることを防止できる。
【0025】
さらに、上記湯水ポンプが取り付けられた温水ユニットを横向きに搬送する場合に、上記湯水ポンプが上記棒状部材の軸方向に移動することを上記規制部材で規制でき、上記弾性部材が上記棒状部材から抜けることを防止できる。その結果、上記棒状部材から抜けた上記弾性部材を元に戻す作業が不要となり、設置作業の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明の温水ユニットにおける全体の構成を示す図である。
【
図2】
図1における湯水ポンプの底フレームへの取付構造を示す図である。
【
図3】
図2における防振ゴムの正面図および平面図である。
【
図5】
図2における防振ゴム取付箇所の拡大平面図である。
【
図6】防振ゴムの取付板への取付状態の変遷を示す図である。
【
図7】防振ゴムの貫通孔に固定用ビスを挿通させた状態を示す断面図である。
【
図8】湯水ポンプと断熱材との位置関係を示す側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の温水ユニットにおける全体の構成を示す図である。
【0028】
本温水ユニットは、直方体のケーシング1と、このケーシング1の底フレーム1aに取付固定された湯水ポンプ2と、ケーシング1の側面フレーム1b側に設置されたプレート熱交換器3とを含んでおり、室内機を構成している。
【0029】
上記プレート熱交換器3は、冷媒配管で環状に接続されて室外機を構成している圧縮機,熱源側熱交換器および電動膨張弁(共に図示せず)における上記圧縮機と上記電動膨張弁との間に介設されて、ヒートポンプを構成している。そして、上記圧縮機から供給される高温高圧の冷媒が、冷媒供給ポート4から冷媒供給管4aを介してプレート熱交換器3に供給される。これに対し、プレート熱交換器3内での熱交換した後の低温高圧の冷媒が、冷媒排出管5aを介して冷媒排出ポート5から上記電動膨張弁に供給される。
【0030】
上記湯水ポンプ2は、吸入口2aが、プレート熱交換器3の給湯口3aと給湯管6で連通されている。また、吐出口2bには吐出管7の一端が接続されており、吐出管7の他端は給湯ポート8に接続されている。さらに、プレート熱交換器3の吸水口3bと吸水ポート9とが吸水管10で接続されている。
【0031】
上記構成において、上記ヒートポンプが駆動されると、上述のように、上記圧縮機からの高温高圧の冷媒が、プレート熱交換器3に供給される。そして、プレート熱交換器3内で、吸水ポート9および吸水管10を介して供給される水と熱交換を行う。そして、熱交換後の低温高圧の液冷媒が上記電動膨張弁に送出される。一方、プレート熱交換器3において熱交換後の温水は、湯水ポンプ2の駆動による負圧によって給湯管6を介して吸入口2aから湯水ポンプ2に吸入され、吐出口2bから吐出管7および給湯ポート8を介して給湯される。
【0032】
図2は、上記湯水ポンプ2におけるケーシング1の底フレーム1aへの取付構造を示す図である。湯水ポンプ2は回転軸を水平方向に向けて底フレーム1a上に配置される。そして、湯水ポンプ2の側面における底フレーム1a上に配置された際に底フレーム1aと対向する位置には、平面状の取付板11が取り付けられている。
【0033】
上記底フレーム1aには、矩形の取付板11の一側における二隅と他側における中央とに対応する位置の夫々に、固定用ビス12が下方から上方に向かって螺合すると共に、貫通して立設されている。13は防振ゴムであり、円筒形状を成すと共に、中心軸に沿って固定用ビス12の軸部を挿通するための貫通孔13aが形成されている。さらに、防振ゴム13の外周面における軸方向中間部には、取付板11を挟持するための水平な挟持用溝13bが形成されている。すなわち、固定用ビス12で上記棒状部材を構成し、防振ゴム13で上記弾性部材を構成し、貫通孔13aで上記挿通孔を構成している。
【0034】
図3は、上記防振ゴム13の正面図(
図3(a))と平面図(
図3(b))とを示す。取付板11が挟持される挟持用溝13bは、防振ゴム13の周面に、貫通孔13aとの間に所定の厚みを残して環状に形成されている。
【0035】
図4は、上記取付板11の平面図を示す。取付板11は、概略矩形の形状を成し、互いに対向する2辺11d,11eの一端部と上記2辺11d,11eの他端部間に在る1辺11fの中央部との3箇所の縁に、防振ゴム13挿通用のU型溝11aが形成されている。
図5は、取付板11における防振ゴム13の取付箇所の平面図を示す。U型溝11aは、直線状を成す取付板11の縁に対して直角方向に延在しており、その幅は、防振ゴム13の挟持用溝13bの内径dと同じである。そして、U型溝11aの最奧には、直径がdよりやや大きい円形状に切り欠かれた円形領域11bが形成されている。また、U型溝11aの入口には、防振ゴム13の挿入を容易にするための傾斜領域11cが形成されている。
【0036】
図6は、上記防振ゴム13の取付板11への取付状態の変遷を示す図である。先ず、
図6(a)に示すように、防振ゴム13の挟持用溝13bを、取付板11におけるU型溝11aの両側の傾斜領域11cに矢印方向に嵌め込む。さらに、
図6(b)に示すように、取付板11に対して防振ゴム13を押し込む。こうして、
図6(c)に示すように、防振ゴム13を取付板11のU型溝11aにおける奥部まで挿入すると、防振ゴム13の貫通孔13aが取付板11の円形領域11bの略中央部に位置することになる。
【0037】
このようにして、上記湯水ポンプ2の取付板11に取り付けられた防振ゴム13の貫通孔13aに、底フレーム1aに螺合して立設されている固定用ビス12を、下方から上方に向かって挿通させる。こうして、湯水ポンプ2を、取付板11および防振ゴム13を介して、底フレーム1aによって下側から受けるのである。
【0038】
図7は、上記防振ゴム13の貫通孔13aに固定用ビス12を挿通させた状態を示す断面図を示す。
【0039】
図7において、上記固定用ビス12は、頭部12aと棒状の軸部12bから構成されている。さらに、軸部12bは、ネジ部12cと円柱部12dとから構成されている。ネジ部12cは、軸部12bにおける頭部12a側に位置しており、軸方向の長さは底フレーム1aの厚さtと略等しく、外周面には雄ネジ14が形成されている。一方、底フレーム1aにおける防振ゴム13の取付位置には、固定用ビス12取付用の孔が穿たれ、その孔にネジ部12cの雄ネジ14に螺合する雌ネジ15が形成されている。そして、固定用ビス12の雄ネジ14を底フレーム1aの雌ネジ15と螺合させることによって、底フレーム1aに対して固定用ビス12を立設させて、円柱部12dを突出させることができる。
【0040】
上記円柱部12dは、その外周面に雄ネジは形成されておらず、単に円柱状を成している。そして、円柱部12dの直径d2は、防振ゴム13の貫通孔13aの直径d1よりも小さく設定されている。具体的には、例えば、固定用ビス12の円柱部12dの直径d2が4mmφであるのに対して、防振ゴム13の貫通孔13aの直径d1は6.5mmφである。こうすることによって、円柱部12dには雄ネジが形成されていないことと相まって、防振ゴム13の貫通孔13aに固定用ビス12を挿通させる際に、貫通孔13aの内周面が円柱部12dに接触しても、雄ネジ等による上記内周面の損傷が防止される。
【0041】
以上のごとく、本実施の形態においては、湯水ポンプ2の取付板11に取り付けられた防振ゴム13は、底フレーム1aに立設している固定用ビス12に対して実際に固定されてはおらず、湯水ポンプ2と取付板11との重量のみによって底フレーム1aに対して固定されている。したがって、防振ゴム13に伝わって来た湯水ポンプ2の振動は、防振ゴム13とは離間している固定用ビス12に直接伝わることが無い。その結果、底フレーム1aに伝わる湯水ポンプ2の振動と振動音を、大幅に減少させることができる。さらに、固定用ビス12は底フレーム1aに下方から上方に向かって立設されているので、固定用ビス12の先端部は底フレーム1aの外側に露出することがなく、上記先端部に作業員の手が触れて怪我をすることを防止できるのである。
【0042】
ところで、上述のように上記湯水ポンプ2が取り付けられた温水ユニットを搬送する場合、縦長であるが故に横向きにされる場合が多々ある。その場合には、防振ゴム13は、固定用ビス12に挿通されているだけで積極的に固定されてはいないため、温水ユニットが斜めになった場合に固定用ビス12が案内となって湯水ポンプ2が固定用ビス12の軸方向に移動しようとする。その場合、その移動を防止できるのは給湯管6および吐出管7のみであるために、上記移動を完全に防止できず、防振ゴム13が固定用ビス12から抜けてしまう場合がある。そして、搬送先で横向きの温水ユニットを起こした際に、固定用ビス12から抜けた防振ゴム13が元の固定用ビス12の位置に戻らず、固定用ビス12から抜けたままの状態になることがある。その場合には、底フレーム1aに伝わる湯水ポンプ2の振動と振動音とが大きくなり、固定用ビス12から抜けた防振ゴム13を元に戻す作業が必要となってしまう。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、以下のような構成によって、搬送時における防振ゴム13の抜けを防止するようにしている。
【0044】
すなわち、
図1において、上記湯水ポンプ2の吐出口2bから吐出される湯が供給される給湯タンク16の周囲には、保温と位置決めとのために発泡スチロールの断熱材17が配置されている。
図8は、湯水ポンプ2と断熱材17との位置関係を示す湯水ポンプ2を側方から見た図である。断熱材17における湯水ポンプ2の端面2cと上面2dとに対向する位置には、湯水ポンプ2が固定用ビス12の軸後方に移動した場合に、湯水ポンプ2の端面2cと上面2dとを受けて移動を規制するL字型の規制部18が形成されている。さらに、規制部18には、固定用ビス12の軸後方に移動した湯水ポンプ2の上面2dを受ける上記規制部材の一例としての上部受面18aを設けている。そして、湯水ポンプ2の上面2dと断熱材17の上部受面18aとの間隔L2を、固定用ビス12の円柱部12d(
図7参照)の長さL1よりも小さく設定している。
【0045】
こうすることによって、上記湯水ポンプ2が取り付けられた温水ユニットを横向きに搬送する場合に、湯水ポンプ2が固定用ビス12の軸方向に移動する移動量は最大でもL2である。したがって、湯水ポンプ2がL2だけ移動して断熱材16の上部受面18aに当接した場合に、固定用ビス12の円柱部12dの長さL1が湯水ポンプ2の最大移動量L2よりも大きく設定されているため、防振ゴム13が固定用ビス12から抜けることが防止される。
【0046】
したがって、搬送先で横向きの温水ユニットを起こした場合に、湯水ポンプ2の防振ゴム13は固定用ビス12から抜けることなく元の組み立て時の状態に戻ることができる。その結果、固定用ビス12から抜けた防振ゴム13を元に戻す作業が不要となり、設置作業の利便性を向上することができるのである。
【0047】
尚、本実施の形態においては、本温水ユニット内に上記プレート熱交換器3を搭載している。しかしながら、この発明では必ずしもその必要はなく、プレート熱交換器3を本温水ユニット外の上記室外機側に設置しても差し支えない。
【0048】
また、本実施の形態においては、上記防振ゴム13の外周に形成された挟持用溝13bで取付板11を挟持するようにしている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、例えば防振ゴム13の上端面に取付板11を載置して固定するようにしても差し支えない。要は、取付板11は、固定用ビス12とは非接触状態で防振ゴム13に取り付けられていればよいのである。
【0049】
また、本実施の形態においては、上記防振ゴム13の挟持用溝13bを、防振ゴム13の周面に環状に形成している。しかしながら、この発明はこの形状に限定されるものではなく、取付板11の縁に形成されたU型溝11aの直線の部分が挿通可能な形状であればよい。例えば、貫通孔13aを挟んで互いに対向する2箇所に平行して形成しても良い。または、貫通孔13aの周囲3方向を囲むように形成しても良い。
【0050】
また、本実施の形態においては、上記温水ユニットを横向きに搬送する場合に湯水ポンプ2が固定用ビス12の軸方向に移動するのを規制する規制部材として、給湯タンク16の断熱材17に設けられた規制部18の上部受面18aで形成している。しかしながら、断熱材17に限定されるものではなく、他の部材に形成しても一向に差し支えない。
【0051】
また、本実施の形態においては、上記棒状部材として固定用ビス12を用いている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、円形断面の棒状体をカシメ(圧入)によって底フレーム1aに立設させたものを用いても良い。但し、固定用ビス12の場合には、ネジ部12cを底フレーム1aに螺合させるだけでよく、カシメによる場合に比して、簡単に固定用ビス12の円柱部12dを底フレーム1aに立設させることができる。
【0052】
また、本実施の形態においては、上記弾性部材として防振ゴム13を用いているが、ゴム以外の弾性体や粘性流体注入部材であっても差し支えない。
【符号の説明】
【0053】
1…ケーシング、
1a…底フレーム、
2…湯水ポンプ、
3…プレート熱交換器、
11…取付板、
11a…U型溝、
11b…円形領域、
12…固定用ビス、
12a…頭部、
12b…軸部、
12c…ネジ部、
12d…円柱部、
13…防振ゴム、
13a…貫通孔、
13b…挟持用溝、
14…雄ネジ、
15…雌ネジ、
16…給湯タンク、
17…断熱材、
18…規制部、
18a…上部受面。