(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)は、帯電した感光体に対して、画像データに基づくレーザー光を照射(露光)することにより静電潜像を形成する。そして、静電潜像が形成された感光体(像担持体)へ現像装置よりトナーを供給することにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。さらに、このトナー像を直接又は間接的に用紙に転写させた後、加熱、加圧して定着させることにより用紙に画像を形成する。
【0003】
ところで、上記画像形成装置においては、高速化、両面印字率の上昇、画像品質の向上により用紙の帯電量が高くなり、定着工程後の用紙同士が静電吸着してしまうという問題があった。用紙の帯電は主に、転写工程および定着工程において発生する。転写工程では、トナー像を用紙に静電吸着(転写)させるため、当該用紙に高電圧を印加させている。ここで、用紙の坪量が大きいほど高電圧の印加が必要となるため、用紙の表面電位(帯電電位)は高くなってしまう。また、定着工程では、用紙は、定着ニップで加熱、加圧されながら搬送されるため、当該用紙と定着部材との間で発生する摩擦帯電、当該定着部材から剥離する際に発生する剥離帯電によって帯電してしまう。定着工程後の用紙同士が静電吸着してしまうと、用紙を整列させて断裁処理、穴あけ処理等の後処理を行う前に載置トレイ等に積載する際、当該用紙が揃いにくくなるため、当該後処理の結果に悪影響が及んでしまうことが懸念される。
【0004】
上記問題に対して、用紙排出口における排出ローラ配設部を除いた用紙幅の範囲に第一の除電ブラシを設け、用紙搬送経路の用紙排出口よりも下流側における排出ローラ幅の範囲に第二の除電ブラシを設けた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、排紙ローラ対の下流側近傍に設けられた第一の除電器と、第一の除電器の下流に配された用紙ガイドの入口部に設けられた第二の除電器と、排紙ローラ対の上流側近傍に設けられた第三の除電器とを備える画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
また、シート材を排出トレイ上へ案内して積載性を高める機能と、シート材の積載量を検知するための検知部材としての機能と、シート材に対する除電を行う機能との3つの機能を兼ね備えるシート材押さえ部材を備える画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に転写(一次転写)し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0015】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0016】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60(本発明の「定着装置」に対応)及び制御部100を備える。
【0017】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0018】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0019】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0020】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0021】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0022】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0023】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0024】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0025】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0026】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0027】
感光体ドラム413は、例えばドラム径が80[mm]のアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0028】
制御部100が感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。
【0029】
帯電装置414は、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0030】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成されることとなる。
【0031】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0032】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0033】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0034】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0035】
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に体積抵抗率が8〜11[logΩ・cm]である高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部100からの制御信号によって回転駆動される。なお、中間転写ベルト421については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
【0036】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0037】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるローラー423B(以下「バックアップローラー423B」と称する)に対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0038】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0039】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0040】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用しても良い。
【0041】
定着部60は、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0042】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材又は裏面側支持部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニットが配置されていても良い。
【0043】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対、用紙Sを画像形成部40および定着部60を通過させ、画像形成装置1の排紙トレイ(図示せず)に排出する通常搬送路53bと、定着部60を通った用紙Sの表裏を反転させた後、画像形成部40の上流で再び通常搬送路53bに合流させる反転搬送路53cとを有する。両面印刷時には、最初に通常搬送路53bを通る際に用紙Sの表面(第1面目)にトナー像が形成され、反転搬送路53cを通過した後、再び通常搬送路53bを通る際に用紙Sの裏面(第2面目)にトナー像が形成されるようになっている。
【0044】
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0045】
次に、
図3を参照し、定着部60の構成について説明する。
図3は、定着部60の構成を概略的に示す図である。
【0046】
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト62a、加熱ローラー62b及び定着ローラー62cを有する(ベルト加熱方式)。定着ベルト62aは、加熱ローラー62bと定着ローラー62cとに所定のベルト張力(例えば、40[N])で張架されている。
【0047】
定着ベルト62aは、例えば、厚さ70[μm]のPI(ポリイミド)からなる基体の外周面を弾性層として厚さ200[μm]の耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A30[°])で被覆し、さらに、表層に厚さ30[μm]の耐熱性樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシ)チューブからなる。定着ベルト62aは、加圧ローラー62dとともに、定着ニップNPを形成する。
【0048】
定着ベルト62aは、トナー像が形成された用紙Sに接触して、当該トナー像を用紙Sに定着温度(例えば、160〜200[℃])で加熱定着する。ここで、定着温度とは、用紙S上のトナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される用紙Sの紙種等によって異なる。
【0049】
加熱ローラー62bは、定着ベルト62aを加熱する。加熱ローラー62bは、定着ベルト62aを加熱する加熱源60C(ハロゲンヒーター)を内蔵している。加熱ローラー62bは、例えば、アルミニウム等から形成された円筒状の芯金における外周面をPTFEでコーティングした樹脂層で被覆されている。
【0050】
加熱源60Cの温度は、制御部100によって制御される。加熱源60Cによって加熱ローラー62bが加熱され、その結果、定着ベルト62aが加熱される。
【0051】
定着ローラー62cは、例えば、鉄等の金属から形成された中実の芯金を、弾性層として厚さ10〜20[mm]の耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A5〜30[°])で被覆し、さらに、厚さ5〜30[μm]の低摩擦で耐熱性樹脂であるPTFEでコーティングした樹脂層で被覆したものである。
【0052】
下側定着部60Bは、裏面側支持部材である加圧ローラー62dを有する(ローラー加圧方式)。加圧ローラー62dは、アルミニウム等から形成された円筒状の芯金の外周面を、弾性層として厚さ1〜5[mm]の耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A10〜30[°])で被覆し、さらに、厚さ30〜100[μm]のPFAチューブの樹脂層で被覆したものである。加圧ローラー62dの駆動制御(例えば、回転のオン/オフ、周速度等)は、制御部100によって行われる。制御部100は、加圧ローラー62dを矢印E方向(反時計回り方向)に回転させる。加圧ローラー62dが駆動回転すると、定着ベルト62aが矢印C方向(時計回り方向)に従動回転する。これに伴い、定着ローラー62cおよび加熱ローラー62bはそれぞれ、矢印B方向(時計回り方向)および矢印D方向(時計回り方向)に従動回転する。加圧ローラー62dは、定着ベルト62aを介して定着ローラー62cに所定の定着荷重(例えば、1000[N])で圧接される。このようにして、定着ベルト62aと加圧ローラー62dとの間には、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップNPが形成される。
【0053】
本実施の形態では、
図3に示すように、表面電位検出部80および電圧印加部材としての搬送ローラー対92が、用紙Sの搬送方向Fに対して定着ニップNPの下流側に設けられている。表面電位検出部80は、電位検知センサー82,84を有し、定着ニップNPを通過して用紙ガイド64上を搬送される用紙Sの両面(上面および下面)の表面電位値を検出する。電位検知センサー82は、用紙Sの上面の表面電位値を非接触で検知し、その検知信号を制御部100に出力する。電位検知センサー84は、用紙Sの下面の表面電位値を非接触で検知し、その検知信号を制御部100に出力する。
【0054】
搬送ローラー対92は、用紙Sを排紙部52側に搬送するための搬送ローラー対であり、制御部100からの制御信号を受けて搬送ローラー対92の各々に電圧を印加する高圧電源90が接続されている。高圧電源90は、画像形成装置1の画像形成処理時、搬送ローラー対92を介して、定着ニップNPを通過した用紙Sの両面に対して当該両面の表面電位と逆極性の電圧を印加する。本実施の形態では、高圧電源90は、表面電位検出部80により検出された表面電位を打ち消すように、用紙Sの両面に対して当該両面の表面電位と逆極性の電圧を印加する。なお、高圧電源90および搬送ローラー対92は、本発明の「電圧印加部」に対応する。高圧電源90としては、一次転写用および二次転写用の高圧電源を用いても良い。
【0055】
図4は、高圧電源90が、画像形成装置1の画像形成処理時(より具体的には、用紙Sの両面にトナー像を形成する両面印刷処理における2面目の印刷時)、搬送ローラー対92を介して、定着ニップNPを通過した用紙Sの両面に対して電圧を印加する様子を示す図である。
図4に示すように、用紙Sの上面(両面印刷の2面目)はマイナス極性に帯電している一方、用紙Sの下面(両面印刷の1面目)はプラス極性に帯電している。高圧電源90は、用紙Sの下面(1面目)の表面電位(プラス極性)を打ち消すように、用紙Sの下面に対して当該下面の表面電位と逆極性(マイナス極性)の電圧を印加する。また、高圧電源90は、用紙Sの上面(2面目)の表面電位(マイナス極性)を打ち消すように、用紙Sの上面に対して当該上面の表面電位と逆極性(プラス極性)の電圧を印加する。この結果、用紙Sの両面(上面および下面)における表面電位はほぼ±0[V]となり、定着工程後の用紙S同士が静電吸着してしまうことを確実に防止することができる。
【0056】
以上詳しく説明したように、本実施の形態では、画像形成装置1(定着部60)は、トナー像が形成された用紙の定着面側に配置される定着面側部材(定着ベルト62a、加熱ローラー62b及び定着ローラー62c)と、定着面側部材に圧接された状態において用紙Sを狭持して搬送する定着ニップNPを形成する裏面側支持部材(加圧ローラー62d)と、定着ニップNPを通過した用紙Sの両面の各々に対して当該両面の各々の表面電位と逆極性の電圧を印加する電圧印加部(高圧電源90および搬送ローラー対92)とを備える。
【0057】
このように構成した本実施の形態によれば、定着ニップNPを通過した用紙Sの両面に対して、当該両面の表面電位と逆極性の電圧が印加される結果、片面だけを除電する場合に比べて、用紙Sの両面に帯電した電荷は十分に除去される。そのため、定着工程後の用紙S同士が静電吸着してしまうことを防止することができる。したがって、用紙Sを整列させて断裁処理、穴あけ処理等の後処理を行う前に載置トレイ等に積載する際、当該用紙Sが揃いにくくならず、当該後処理の結果に悪影響が及んでしまうことを防止することができる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、搬送ローラー対92を用紙Sに接触させて、用紙Sの両面に対して電圧を印加する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、搬送ローラー対92の代わりにブラシを用紙Sの両面に接触させて、当該両面に対して電圧を印加しても良い。また、針電極やワイヤーによるコロナ放電によって、用紙Sの両面に何も接触させずに、当該両面に対して電圧を印加しても良い。
【0059】
また、上記実施の形態において、用紙Sに形成されたトナー像のカバレッジに応じて、用紙Sの両面に対して印加する電圧を変更しても良い。この場合、用紙Sに形成されたトナー像のカバレッジが大きくなればなるほど、用紙Sのトナー帯電量が増大して用紙Sの表面電位は高くなってしまうため、用紙Sの両面に対して印加する電圧を大きくすることが好ましい。
【0060】
また、上記実施の形態において、用紙Sの抵抗に応じて、用紙Sの両面に対して印加する電圧を変更しても良い。この場合、用紙Sの抵抗が大きくなればなるほど、転写工程および定着工程の摩擦帯電、剥離放電によって用紙Sに電荷が帯電しやすく、用紙Sの表面電位は高くなってしまう。そこで、用紙Sの抵抗が大きくなればなるほど、用紙Sの両面に対して印加する電圧を大きくすることが好ましい。
【0061】
また、上記実施の形態において、用紙Sの坪量に応じて、用紙Sの両面に対して印加する電圧を変更しても良い。
図5は、用紙S(例えば、グロスコート紙)の両面に高カバレッジのトナー像を形成する両面印刷処理時、用紙Sの坪量と当該用紙Sの表面電位との対応関係を示す表である。
図5に示すように、用紙Sの坪量が大きくなればなるほど、転写工程において高電圧の印加が必要となり、用紙Sの両面の表面電位は高くなってしまうため、当該両面に対して印加する電圧を大きくすることが好ましい。
【0062】
また、上記実施の形態において、用紙Sの片面にトナー像を形成する片面印刷であるか、または、用紙Sの両面にトナー像を形成する両面印刷であるかに応じて、用紙Sの両面に対して印加する電圧を変更しても良い。両面印刷を行う場合は、片面印刷と異なり、定着ニップNPを1度通過することによって抵抗が増大した用紙Sに対してトナー像を形成するため、用紙Sの両面の表面電位が高くなってしまう。そこで、両面印刷時は、片面印刷時よりも用紙Sの両面に対して印加する電圧を大きくすることが好ましい。なお、片面印刷か両面印刷かに関わらず、転写工程および定着工程において用紙Sの両面の各々に帯電が発生するため、片面印刷時にも、定着ニップNPを通過した用紙Sの両面の表面電位と逆極性の電圧を印加することにより、用紙Sの両面に帯電した電荷を十分に除去することができる。
【0063】
また、上記実施の形態において、定着ニップNPを通過した用紙Sの一枚毎に、用紙Sの両面に対して電圧を印加しても良い。これにより、定着工程後の用紙S同士が静電吸着してしまうことをより確実に防止することができる。また、用紙Sの両面に対して電圧を印加するか否かについて印刷ジョブ単位で変更しても良い。この場合、印刷ジョブが印刷後の用紙Sに対して後処理を行わないジョブであるときは、定着工程後の用紙同士が静電吸着してしまうことが容認されるため、用紙Sの両面に帯電した電荷を除去する処理は不要となる。そこで、後処理を行わない印刷ジョブを実行するときに、用紙Sの両面に対する電圧の印加が不必要に行われることを防止し、ひいては高圧電源90の使用電力を減らすことができる。
【0064】
また、上記実施の形態において、電圧印加部材としての搬送ローラー対92は、用紙Sの搬送方向Fに対して定着ニップNPの下流側であれば任意位置に配置することができる。
【0065】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。