(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願明細書において、「リポソーム」とは、脂質二重層からなり内部に水相をもつ閉鎖小胞を意味する。
【0017】
本願明細書において、「リポソーム組成物」とは、複数のリポソームから構成されるものを意味する。リポソーム組成物は、好ましくは、リポソーム分散液である。
【0018】
本発明において、リポソームは、リポソーム膜の内部に下記式(1)の構造のPQQのフリー体若しくはその塩及び糖を含む。
【化3】
【0019】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンは、ピロロキノリンキノン(フリー体)として使用することもできるし、ピロロキノリンキノンの塩として使用することもできる。
【0020】
本発明において用いられる「ピロロキノリンキノンの塩」としてはピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、好ましくは、アルカリ金属塩である。
【0021】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ルビジュウムなどの塩が挙げられる。好ましくは、入手しやすい点で、ナトリウム塩およびカリウム塩がより好ましい。ピロロキノリンキノンは、1〜3個のアルカリ金属で置換されるピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩であってよく、モノアルカリ金属塩、ジアルカリ金属塩、トリアルカリ金属塩のどれでも良いが、好ましくは、ジアルカリ金属塩である。ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩として、特に好ましくは、ジナトリウム塩およびジカリウム塩である。
【0022】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンまたはその塩は、特に入手しやすい、フリー体、ジナトリム体、ジカリウム体が使用しやすい。
【0023】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンまたはその塩は、市販されているものを入手することができるし、公知の方法により製造することができる。
【0024】
糖は水溶性であることが好ましく、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖類、糖アルコールが使用できる。具体的には、単糖として、グリセリンアルデヒド、トレオース、アラビノース、キシロース、リボース、リブロース、キシルロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、タガトース、アロース、アルトース、グロース、イドース、タロース、ソルボース、プシコース、果糖等が挙げられる。二糖としては、トレハロース、ショ糖、乳糖等が挙げられる。オリゴ糖としては、マルトトリオース、ラフィノース、シクロデキストリンが挙げられる。多糖類としては、水あめ、水素化水あめ等が挙げられる。糖アルコールとしては、トレイトール、エリトリトール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、タリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ズルシトール、イノシトール等が挙げられる。好ましくは、単糖、二糖および糖アルコールであり、より好ましくは糖アルコールである。単糖は、好ましくは、グルコースである。二糖は、好ましくは、ショ糖である。糖アルコールは、好ましくは、ソルビトール、キシリトールである。糖アルコールは一般的な糖類や水あめに水素添加して作られ、活性なカルボニル基を有していない。そのため、酸や熱に安定でカロリーが低い。糖を添加することでPQQの機能性を発揮する濃度範囲を拡大することができる。
【0025】
本発明において用いられる糖は、市販されているものを入手することができるし、公知の方法により製造することができる。
【0026】
リポソーム(リポソーム膜)は、脂質成分から構成され、例えば、リン脂質又は糖脂質が単独又は混合されて構成される。
【0027】
リン脂質としては、生体に含まれるリン脂質の主成分にホスファチジルコリンがあり、レシチンとも呼ばれる。リン脂質としては、卵黄レシチン、大豆レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、およびこれらの混合物等が使用できる。リン脂質は、精製されたものを用いることが好ましい。
【0028】
本発明において、リン脂質としては市販のホスファチジルコリンを用いることができる。例えば、日油製COATSOME NC−21(水素添加大豆リン脂質、PC含量90%以上)、日光ケミカルズ製NIKKOL レシノール S−10EX(水素添加大豆リン脂質、PC含量95%以上)を用いることができる。また、卵黄レシチン、大豆レシチン、精製大豆レシチン、水素添加大豆リン脂質が入手しやすく好ましい。
【0029】
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステル、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4、ジガラクトシルセラミド、およびこれらの混合物等を用いることができる。
【0030】
リポソームの膜構成成分としてリン脂質や糖脂質の脂質と共にステロールを添加してもよい。添加量は、リン脂質或いは糖脂質に対して1/5重量が好ましい量の上限であり、1/10重量が更に好ましい。ステロールとしては、コレステロールが最も好ましいが、その他のステロールを使用してもよい。
【0031】
リポソームは、一般的な定法により製造することが可能である。例えば、レシチンを有機溶剤、例えば、クロロホルムに溶解し、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、フラスコの壁面に付着した脂質のフィルムにPQQ溶液を加えて製造することができる。しかし、この方法は操作が複雑で、毒性のある有機溶媒が残留する危険性があるうえに、そのための分析も必要になるために費用がかかるため、最適とは言えない。
【0032】
本発明によるリポソーム組成物は、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、糖と、脂質成分とを含んでなる40〜190℃の溶液を調製することにより製造することができる。
【0033】
溶液は、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、糖と、脂質成分、溶媒とを混合することにより得ることができる。典型的には、溶媒に、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、糖と、脂質成分とを添加することにより実施することができる。添加の順序は特に限定されない。
【0034】
用いられる溶媒は、反応が進行すれば特に限定されず、水、エタノール等を使用することができるが、製品に残留しても大きな問題とならないという点から、水(水溶液)が好ましい。
【0035】
溶液におけるピロロキノリンキノンまたはその塩の濃度は、例えば、0.0001〜2重量%とすることができるが、好ましくは、0.01〜1.5重量%、より好ましくは、0.1〜1重量%である。
【0036】
溶液における糖の濃度は、例えば、0.5〜50重量%とすることができるが、好ましくは、2〜50重量%、より好ましくは、5〜30重量%、さらに好ましくは、10〜20重量%である。
【0037】
溶液において、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、糖との重量比は、1:0.1〜200、好ましくは、1:1〜200、より好ましくは、1:1〜100、さらに好ましくは、1:10〜100、特に好ましくは、1:30〜70とすることができる。
【0038】
溶液における脂質成分の濃度は、0.001〜10重量%とすることができる。例えば、脂質成分としてリン脂質を使用する場合は、0.001〜10重量%とすることができるが、好ましくは、0.01〜8重量%、より好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0039】
溶液において、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、脂質成分との重量比は、1:0.1〜30、好ましくは、1:1〜20とすることができる。
【0040】
溶液において、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、糖と、脂質成分との重量比は、1:0.1〜200:0.1〜30、好ましくは、1:1〜200:0.1〜30、より好ましくは、1:1〜100:1〜20、さらに好ましくは、1:10〜100:1〜20、特に好ましくは、1:30〜70:1〜20とすることができる。特には、溶液において、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、糖と、リン脂質との重量比は、1:0.1〜200:0.1〜30、好ましくは、1:1〜200:0.1〜30、より好ましくは、1:1〜100:1〜20、さらに好ましくは、1:10〜100:1〜20、特に好ましくは、1:30〜70:1〜20とすることができる。
【0041】
得られた溶液のpHは、pH8以下とすることができるが、好ましくは、pH1〜6、より好ましくは、pH2〜5、さらに好ましくは、pH3〜4とすることができる。pHを調整するために、酸性物質(例えば、塩酸、酢酸等)やアルカリ性物質(例えば、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム等)を使用することができる。
【0042】
得られた溶液の温度は、室温から190℃、好ましくは、40〜190℃、より好ましくは、60〜190℃、さらに好ましくは、60〜150℃、さらにより好ましくは、60〜120℃、特に好ましくは、60〜100℃、特により好ましくは、60〜80℃とすることができる。この温度は、溶媒の温度を調整することにより調整することができる。
【0043】
得られた溶液は、温度調整工程に供することができる。温度の「調整」は、得られた溶液の温度を考慮して、加温(温度の維持も含む)、放置、または冷却して行うことができる。具体的には、得られた溶液を、40〜190℃、好ましくは、60〜190℃、より好ましくは、60〜150℃、さらに好ましくは、60〜120℃、さらにより好ましくは、60〜100℃、特に好ましくは、60〜80℃に調整することができる。
【0044】
溶液の温度は、予め60〜190℃(より好ましくは、60〜150℃、さらに好ましくは、60〜120℃、さらにより好ましくは、60〜100℃、特に好ましくは、60〜80℃)の溶液を得て、その温度を60℃以上(60〜190℃、好ましくは、60〜150℃、より好ましくは、60〜120℃、さらにより好ましくは、60〜100℃、特に好ましくは、60〜80℃)で維持することが好ましい。
【0045】
温度調整された溶液は、さらにホモジナイズ工程に供することができる。ホモジナイズ工程とは、得られた溶液中の成分を高分散化する工程を意味する。
【0046】
ホモジナイズ工程において、溶液は、調整された温度、すなわち、40〜190℃、好ましくは、60〜190℃、より好ましくは、60〜150℃、さらに好ましくは、60〜120℃、さらにより好ましくは、60〜100℃、特に好ましくは、60〜80℃で維持することができる。
【0047】
ホモジナイズ工程においては、ホモジナイザー(乳化機)を使用することができる。乳化機のうち、攪拌乳化機としては、株式会社日本精機製作所社製 NISSEI AMー3ホモジナイザー、IKA製 ウルトラタックスT25等を用いることができる。
【0048】
ホモジナイズ工程においては、高圧乳化機も使用することができる。高圧乳化機としてはプライミクス製 薄膜旋回型高速ホモミキサー(T.Kフィルミックス)、マイクロフルイディックス製 超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)、エム・テクニック製 内部せん断力型ミキサー(クレアミックス)、吉田機械興業製 湿式メディアレス微粒化装置(ナノマイザー)等を用いることができる。
【0049】
ホモジナイズの条件は、使用する装置に基づいて、適宜決定することができるが、例えば、株式会社日本精機製作所社製 NISSEI AMー3ホモジナイザーを使用する場合は、0.5〜180分(好ましくは、1〜60分)で、1000〜10000回転で行うことができる。
【0050】
ホモジナイズ工程は、さらに室温で行うことができる。ホモジナイズの方法や条件は、上記の通りであるが、ホモジナイズ工程の時間は、好ましくは10分以下である。
【0051】
好ましくはPQQを0.0001〜2重量%と糖を2から50重量%になるように溶解した水溶液に、必要に応じステロール、多価アルコール、pH調整剤を加え、60〜190℃に加温し、ホモジナイザーにより分散することにより製造できる。ホモジナイザーを使用することで高い生産性で作ることが可能である。ここでPQQの上限濃度は溶解度の限度であり、これより高いと析出しやすく、下限濃度より低いとPQQの機能が期待できない。
【0052】
PQQはアルカリ性では安定性が低いため、pHは8以下が好ましく、より好ましくは1から6である。8よりpHが高い場合はPQQが分解する。酸性にするのは安定性の面では問題がないが溶解性が下がるために高含有にするのが困難になる。
【0053】
上記工程を経て、本発明のリポソーム組成物を得ることができる。
【0054】
本発明において、リポソームの粒子径は、一般的なリポソームの粒子径の0.5から100μmを使用することができる。より好ましくはリポソームの粒子径が1から10μmである。
【0055】
本発明において、リポソームは、全リポソームに対し、1〜10μmの粒子径が45%以上含まれることが好ましく、より好ましくは、50%以上、さらに好ましくは80ー100%、特に好ましくは、90〜100%である。ここで、「%」は、「体積%」を意味する。小さなリポソーム(例えば、0.1〜0.9μmの粒子径のリポソーム)は吸収性を上げる効果は高いが、ピロロキノリンキノンがその機能を発揮する濃度範囲を広げる効果は低い。大きなリポソーム(例えば、20〜200μmの粒子径のリポソーム)は吸収性向上の機能が低く、製造も難しく好ましくない。
【0056】
本発明において、リポソームの体積平均粒子径は、0.5〜20μmとすることができ、好ましくは、1〜10μmである。
【0057】
本発明において、粒子径は、公知の機器を用いて測定することができる。例えば、粒度分布測定器(例えば、セイシン企業社製SEISHIN LMS−350)を用いて測定することができる。
【0058】
尚、本発明における粒子径は、実施例に記載している様に、リポソームを水に分散させた状態で測定したものである。
【0059】
リポソームの粒子径は、上述のように、原料の選択、製造条件等で制御することができる。あるいは、いったん製造したリポソームをフィルター等でろ過することで制御することは容易である。また、透析、凍結融解、凍結乾燥、遠心分離等の処理を施すことでリポソームの精製やサイズのコントロールを行うことができる。
【0060】
リポソームは小さなものが吸収性に優れることが広く知られているが、本発明は大きなサイズで吸収性が優れる。更に、PQQ特有の機能が発揮される最適な濃度範囲を広げることが可能となる。
【0061】
本願発明において、ピロロキノリンキノンの「機能」とは、細胞増殖促進機能、抗酸化性を意味するが、特には、細胞増殖促進機能である。
【0062】
本発明のリポソームは、リポソームと共にPQQのフリー体若しくはその塩及び糖が外在したリポソーム組成物の形態でも良い。リポソーム組成物を調製する際に、本発明の効果を損なわない範囲で他のステロール、ポリオキシエチレンステロールエーテル、多価アルコール、pH調整剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、コエンザイムQ10、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、アラキドン酸、DHA、レチノール誘導体等のビタミン類やイチョウエキス、カンカエキス等の植物抽出液等を配合しても良い。
【0063】
本発明のリポソーム組成物は、水溶液、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、多重乳化組成物、多層状剤のいずれでもよい。ここで、水溶液とは、リポソームが分散した水溶液を意味する。
【0064】
リポソーム組成物には、更に、薬剤学的に許容されている他の製剤素材を常法により適宜添加混合してもよい。添加しうる製剤素材としては特に限定されず、例えば、乳化剤、緊張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、矯臭剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤などが挙げられる。
【0065】
本発明のリポソーム組成物の保存方法としては、特に限定されず、例えば、低温保存、密閉容器による嫌気的保存、遮光保存などを用いることができる。こうして調製される本発明の組成物は、冷蔵あるいは室温で保存した際に、析出物なく安定に保存できる。
【0066】
本発明のリポソームは、医療用、化粧用、食品用、園芸用、酪農用など広い範囲で使用できる。具体的な形態としては注射剤、輸液、液剤、点眼剤、内服用液剤、ローション剤、ヘヤートニック、化粧用乳液、スプレー液、エアロゾル、ドリンク液、液体肥料、保存用溶液などが挙げられる。
【0067】
動物細胞の培養は研究や医薬品製造に使用されるが、その培地に添加することで抗体医薬の生産や実験を効率的に行うことが可能になる。
【0068】
本発明の好ましい態様によれば、リポソーム組成物であって、該リポソーム組成物におけるリポソームが、ピロロキノリンキノンまたはその塩、並びに、単糖、二糖、および糖アルコールからなる群から選択される糖を含有し、かつ、1〜10μmの粒子径のリポソームが50%以上である、リポソーム組成物が提供される。
【0069】
本発明のより好ましい態様によれば、リポソーム組成物であって、該リポソーム組成物におけるリポソームが、ピロロキノリンキノンまたはその塩、並びに、単糖、二糖、および糖アルコールからなる群から選択される糖を含有し、かつ、1〜10μmの粒子径のリポソームが90%以上である、リポソーム組成物が提供される。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、単糖、二糖、および糖アルコールからなる群から選択される糖と、リン脂質とを含んでなるpH8以下であり、かつ、60〜120℃(好ましくは、60〜80℃)の溶液を調製し、当該溶液をホモジナイズする工程を含んでなるリポソーム組成物の製造方法が提供される。
【0071】
本発明のより好ましい態様によれば、ピロロキノリンキノンまたはその塩と、単糖、二糖、および糖アルコールからなる群から選択される糖と、リン脂質とを重量比1:1〜200:0.1〜30で含んでなる、pH8以下であり、かつ、60〜120℃(好ましくは、60〜80℃)の溶液を調製し、当該溶液をホモジナイズする工程を含んでなるリポソーム組成物の製造方法が提供される。
【0072】
本発明によれば、以下の発明も提供される。
〔1〕下記式(1);
【化4】
で表されるピロロキノリンキノン若しくはその塩及び糖を含み、1から10μmの粒子径が50%以上含まれるリポソーム。
〔2〕糖がソルビトール又はキシリトールである〔1〕記載のリポソーム。
〔3〕〔2〕記載のリポソームを含む食品。
〔4〕〔2〕記載のリポソームを含む医薬品。
〔5〕〔2〕記載のリポソームを含む培地。
〔6〕ピロロキノリンキノンと糖を溶解させた水溶液を、pHを8以下に調製した後、60℃から190℃に加温する工程を含む、リポソームの製造方法。
〔7〕前記水溶液におけるピロロキノリンキノン若しくはその塩の濃度が0.0001〜2重量%であり、糖が2から50重量%である〔6〕記載のリポソームの製造方法。
〔8〕ホモジナイザーを使用する工程を含む、〔7〕記載の製造方法。
【実施例】
【0073】
以下に実施例及び調製例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例および調製例のみに限定されるものではない。
【0074】
試薬
ピロロキノリンキノンジナトリウムは三菱ガス化学、COATSOME NC-21(水素添加大豆リン脂質)は日本油脂、その他はWAKOの試薬を使用した。
【0075】
リポソーム粒子径測定
SEISHIN LMS−350(セイシン企業社製)を使用して、水に分散して粒度分布を求めた。この装置では0.1μmが検出下限である。
【0076】
比較例1:リポソーム組成物の作製
PQQジナトリウム0.3g、COATSOME NCー21(水素添加大豆リン脂質)3.0gを用い、水を全体が100gになるように混合した。この時のpHは3.5であった。得られた溶液を60℃以上に加温しながら、NISSEI AMー3ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所社製)で30分、7000回転、その後、室温に下げ、10分、7000回転で処理した。処理後、蒸発減少した水分を追加した。これを比較例1のリポソーム組成物とした。
【0077】
実施例1−4
PQQジナトリウム0.3g、COATSOME NCー21(水素添加大豆リン脂質)3.0gを用い、ソルビトールの添加を2,10,20,40gで行い、水は全体が100gになるように混合した。この時のpHは3.5であった。また、温度は60℃であった。得られた溶液を比較例1と同様に処理して、実施例1−4のリポソーム組成物を作製した。
【0078】
比較例2:PQQを含まない糖を含むリポソーム組成物の作製
COATSOME NCー21(水素添加大豆リン脂質)3.0g、ソルビトール10gを用い、全体が100gとなる様に水を混合した。比較例1と同様に処理してリポソーム組成物を作製した。
【0079】
比較例3:小さなサイズを含むリポソーム組成物の作製
大豆レシチン0.3g、PQQジナトリウム0.3g、ソルビトール10gを用い、全体が100gとなる様に水を混合した。比較例1と同様の操作を行いリポソーム組成物を作製した。
【0080】
実施例1〜4、比較例1〜3で作製したリポソームの粒子径測定結果を以下の表1に、各粒度分布結果を
図1から7に示す。
【表1】
【0081】
実施例1〜4、比較例1〜2について、
図1−6より1−10μmの粒子径に殆どのリポソームが入っていることが分かった。
ソルビトールの添加による粒子径の変化は小さく、糖添加によるリポソームの粒子径への影響はないことが分かった。PQQ添加の有無も粒子径への影響はないことが分かった。
比較例3は一般的な大豆レシチンにすることで小さな粒子を含むリポソームを作ることができ、小さな粒子の影響を見ることができる。
【0082】
増殖性試験
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−DHFR;大日本住友製薬より入手)をα−MEM+10%牛胎児血清の培地で5%CO
2, 37℃で培養した。イワキ製96穴プレートを使用し、1個の穴に5000個の細胞になるように100μlの培地とともに加え、一晩培養した。培養液を抜き、所定の試験濃度の実施例1ー4、比較例1ー3で調製したリポソーム組成物を含む培地を加えた。1日培養後、培地を入れ替え同仁化学 WSTアッセイキットを使用して1時間反応させ、450nmの吸光度を測定した。この時の吸光度は細胞数に比例する。
【0083】
サンプルとして、実施例1〜4、比較例1〜3で調製したリポソーム組成物及びPQQジナトリウム(比較例4)を用い、これらのサンプルを培地で希釈して試験した。試験濃度は500、250、125、62、31、16、8、4、2、1、0.5、0μMで行った。比較例2はリポソーム組成物の濃度とした。各サンプルについて試験を2回行い平均化した。結果を
図8に示す。縦軸は無添加の細胞濃度を100とした値である。
【0084】
全細胞数が無添加と比較して10%程度少なくなる添加量を増殖停止濃度とし(この濃度が下がると吸収性が向上している)、また細胞濃度が無添加と比較して5%程度高くなる濃度を増殖促進濃度とし、各サンプルの試験結果を表2に示す。
【表2】
【0085】
全細胞数が培地のみと比較して10%少なくなる添加量は比較例4のPQQジナトリウム500μM、比較例1のソルビトール無添加のリポソーム組成物で62μMであった。これに対し、小さなリポソーム組成物を含む比較例3では31μMとなっていた。増殖停止濃度はリポソーム化により吸収性が上がり、低い濃度で効果が表れた。
増殖促進濃度は、比較例1より実施例1−4の方が広い濃度範囲で有効であった。
リポソームにPQQと糖を添加すると増殖停止濃度は上がり、増殖抑制効果は糖の添加により、小さくなった。
比較例2のPQQを添加しない糖添加のリポソーム組成物では500μM相当では細胞増殖に影響がみられたが、その他では影響がない。また、比較例3の小さなリポソーム組成物では低い濃度で増殖阻害が現れ、増殖促進効果は見られない(試験範囲よりも低い濃度になっていると予想される)。
【0086】
さらに、予想外にもPQQによる5%程度の増殖促進が見られる濃度は糖の添加が増えることで広い濃度範囲になった。低濃度から高い範囲で有効であった。
細胞の増殖を促進する濃度が広くなることで培地に添加する際の組成選択が容易になると考えられる。
【0087】
実施例5
PQQジナトリウム0.3g、ソルビトール10g、COATSOME NCー21(水素添加大豆リン脂質)3.0gに、水を全体が100gになるように混合した。この時のpHは3.5であった。また、温度は40℃であった。得られた溶液の温度を上げながら、最終的に60℃以上になるように加温しながら、NISSEI AM−3ホモジナイザーで30分、7000回転、その後、室温に下げ、30分、7000回転で処理した。処理後、合計重量100gになるように蒸発減少した水分を追加した。
【0088】
実施例5で作製したリポソームの粒子径測定結果を以下の表3に、粒度分布結果を
図9に示す。
【表3】
【0089】
実施例6および7
PQQジナトリウム0.3g、ソルビトール50または0.5g、COATSOME NCー21(水素添加大豆リン脂質)3.0gに、水を全体が100gになるように混合した。この時のpHは3.5であった。また、温度は60℃であった。実施例1〜4と同様に処理してリポソーム組成物を作製した。
【0090】
実施例6および7で作製したリポソームの粒子径測定結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0091】
実施例5〜7についての増殖性試験の結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0092】
1−10μmの存在量が53%で、広い濃度範囲で増殖促進できることが確認された(実施例5)。
また、糖の濃度が0.5重量%、50重量%でも広い濃度範囲で増殖促進できることが確認された(実施例6および7)。
【0093】
実施例8〜12
PQQジナトリウム0.3g、COATSOME NCー21(水素添加大豆リン脂質)3.0g、糖を表6に示す重量を用い、全体が100gとなるように水を混合した。この時のpHは3.5であった。また、温度は60℃であった。得られた溶液のNISSEI AMー3ホモジナイザーによる処理は以下のように行い、実施例8−12のリポソーム組成物を作製した。
実施例8:80℃以上に加温しながら1時間、7000回転
実施例9:40℃以上に加温しながら30分、7000回転
実施例10:60℃以上加温しながら30分、7000回転、その後、室温に下げ、1時間、7000回転
実施例11および12:60℃以上加温しながら30分、7000回転
【0094】
実施例8〜12で作製したリポソームの粒子径測定結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0095】
実施例8〜12についての増殖性試験の結果を以下の表7に示す。
【表7】
【0096】
1−10μmの存在量が49.55%で、広い濃度範囲で増殖促進できることが確認された(実施例9)。
また、糖については、糖アルコールのみならず単糖、二糖でも広い濃度範囲で増殖促進できることが確認された(実施例11および12)。