特許第5929918号(P5929918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929918
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】水素化ニトリルゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20160526BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20160526BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160526BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20160526BHJP
   F16J 15/10 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
   C08L15/00
   C08K3/04
   C08K5/14
   !F16J15/10 Y
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-533570(P2013-533570)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(86)【国際出願番号】JP2012069852
(87)【国際公開番号】WO2013038835
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-199558(P2011-199558)
(32)【優先日】2011年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】村上 英幸
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122105(JP,A)
【文献】 特開2009−085338(JP,A)
【文献】 特開2006−213743(JP,A)
【文献】 特開2006−131700(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/009181(WO,A1)
【文献】 特開2002−080639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10−3/12、
C08K3/00−13/08、
C08L1/00−101/14、
F04B53/00、
F04D29/12、
F16J3/04、
F16J15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合アクリロニトリル含量が31〜50%で、ヨウ素価が30mg/100mg以下の水素化ニトリルゴム100重量部当り、粒子径(ASTM D1765準拠)61nm以上のカーボンブラックおよび/または他の充填剤30〜300重量部、多官能性不飽和化合物共架橋剤0.5〜30重量部および有機過酸化物1〜10重量部を含有せしめた、ウォーターポンプ用メカニカルシールのカップガスケットまたはベローズの加硫成形材料として用いられる水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項2】
可塑剤を含有しない請求項1記載の水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項3】
硬度(デュロメーターA)が70未満の静的シール材料を与える請求項1または2記載の水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項4】
他の充填剤がシリカ、グラファイト、クレー、タルク、コークス、炭酸カルシウム、アルミナ、炭化けい素および酸化チタンの少なくとも一種である請求項1または2記載の水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項5】
シリカと共に、8重量部以下のカップリング剤が併用された請求項4記載の水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項6】
多官能性不飽和化合物共架橋剤が2官能性または3官能性の(メタ)アクリレートである請求項1記載の水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項7】
多官能性不飽和化合物共架橋剤が1〜10重量部の割合で用いられた請求項1または6記載の水素化ニトリルゴム組成物。
【請求項8】
請求項1または2記載の水素化ニトリルゴム組成物から加硫成形されたウォーターポンプ用メカニカルシールのカップガスケットまたはベローズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化ニトリルゴム組成物に関する。さらに詳しくは、自動車、建設機械のラジエータ等のウォーターポンプに用いられるメカニカルシールのカップガスケットまたはベローズの加硫成形材料として好適に用いられる水素化ニトリルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーターポンプは、エチレングリコール等を有効成分とする水溶液が不凍液であるLLC(ロングライフクーラント)として用いられるポンプであり、それをシールするために用いられるウォーターポンプ用メカニカルシールについては、例えば特許文献1にその記載がみられる。メカニカルシールの部材として用いられ、それ自身が摺動しない静的シールであるカップガスケットやベローズは、それらがゴム材料製であり、カップガスケットのゴム材料としてFKM(フッ素ゴム)、NBR、IIR、U(AU、EU等のポリウレタンゴム)、Q(VMQ、FVMQ等のシリコーンゴム)、CR等が用いられると述べられている。
【0003】
これらの部材は、シール材とそれを固定するための部材との間をシール(二次シール)するものであり、例えばリップシールに用いるゴム材は、ゴム自身が摺動体であるためそれ自身に硬度が必要とされるものであるが、そのような材料などとは異なり、ゴム材料自体にシール部材と固定部材との間に隙間を生じさせない程度、より具体的には硬度(デュロメーターA;ASTM D2240に対応するJIS K6253準拠、デュロメータータイプA)が70未満の弾性を必要としている。
【0004】
メカニカルシール部材に一般的に使用されているゴム材料は、部材間の隙間を封ずるように所定の硬度および弾性率を有しなければならないために、補強性の高い充填剤の配合量を少なくしており、その結果ゴムポリマーの容積分率が大きくなり、所望される耐LLC(ロングライフクーラント)性が確保され難くなる。
【0005】
より具体的には、カップガスケットやベローズには次のような性質が要求される。
(1) カップガスケットおよびベローズがその部材として用いられるメカニカルシールは、その使用環境が高温(最大160℃)、高圧(最大0.4MPa)雰囲気下でLLC等の密閉液と常に接触している状態で使用されるので、このような条件下での耐久性が求められており、その性能を十分に発揮させる前提として、耐LLC性の向上が必要とされる。
【0006】
(2) ウォーターポンプ用メカニカルシールの部材であるカップガスケットおよびベローズの加硫成形材料には、ニトリルゴム等の弾力的なエラストマー材料が用いられており、所定の硬度および弾性率を確保するために各種充填材の配合量を少なくしなければならず、その結果ゴムポリマーの容積分率が大きくなり、所望の耐LLC性が確保されない。
【0007】
(3) カップガスケットおよびベローズの耐LLC性が不十分であると、膨潤・軟化に起因する破壊(破れ)によって大量のLLC漏れが発生し、最悪の場合にはオーバーヒートによる機能停止が発生する。
【0008】
(4) このような問題を解決するため、特許文献2〜3などには、ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムに焼成クレーまたは亜鉛化合物を含有せず、水酸化マグネシウムを含有する(水素化)ニトリルゴム組成物が記載されているが、それらの各実施例では充填剤としてFEFカーボンブラックが用いられており、後記比較例1〜3の結果に示される如く、FEFカーボンブラック(粒子径45nm)を用いた場合には、ロール作業性に劣ったものでしかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−265075号公報
【特許文献2】特開2001−354806号公報
【特許文献3】特許第3676338号公報
【特許文献4】特開2006−131700号公報
【特許文献5】特開2002−80639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ロール作業性にすぐれ、かつ耐LLC性にすぐれたウォーターポンプ用メカニカルシールのカップガスケットまたはベローズの加硫成形材料として好適に使用し得る水素化ニトリルゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本発明の目的は、結合アクリロニトリル含量が31〜50%で、ヨウ素価が30mg/100mg以下の水素化ニトリルゴム100重量部当り、粒子径61nm以上のカーボンブラックおよび/または他の充填剤30〜300重量部、多官能性不飽和化合物共架橋剤0.5〜30重量部および有機過酸化物1〜10重量部を含有せしめた水素化ニトリルゴム組成物によって達成される。この水素化ニトリルゴム組成物は、好ましくは可塑剤を含有しない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水素化ニトリルゴム組成物は、ロール作業性にすぐれ、またそれをパーオキサイド架橋させたとき、耐LLC性にすぐれたウォーターポンプ用メカニカルシールのカップガスケットまたはベローズを形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において用いられる水素化ニトリルゴムは、結合アクリロニトリル〔AN〕含量が31〜50%、好ましくは35〜50%であって、かつヨウ素価が30mg/100mg以下のものが用いられる。結合AN含量およびヨウ素価がこの範囲外のものを用いると、耐LLC性に劣るようになる。
【0014】
かかる性状を有する水素化ニトリルゴムには、それの100重量部当り粒子径61nm以上のカーボンブラックおよび/または他の充填剤が30〜300重量部、好ましくは40〜160重量部の割合で配合される。配合割合がこれよりも少ないと、耐LLC性に欠けるようになり、一方これ以上の割合で配合されると、ロール作業性に劣るようになる。
【0015】
カーボンブラックとしては、粒子径(ASTM D1765準拠)が61nm以上、好ましくは61〜500nmのものが用いられる。これよりも小さい粒子径のものを用いると、ロール作業性に劣るようになる。また、カーボンブラック以外の他の充填剤としては、シリカ、グラファイト、クレー、タルク、コークス、炭酸カルシウム、アルミナ、炭化けい素、酸化チタン等が用いられ、好ましくはグラファイト、シリカ、クレー等の少なくとも一種が用いられる。これらの他の充填剤の粒子径については特に制限されないが、一般には0.5〜250μm程度のものが用いられる。
【0016】
これらの充填剤を所定量用いることで、所定の硬度および弾性率を有するものが得られ、またゴムポリマーの容積分率を小さくすることができるので、耐LLC性にもすぐれたゴム材料を得ることができる。一般には、硬度調整のため可塑剤が配合されて用いられるが、可塑剤は使用時に抽出され、その結果として硬度の上昇などの物性変化をひき起こすので、本発明に係る水素化ニトリルゴム組成物では可塑剤が用いられないことが好ましい。
【0017】
これら各種の他の充填剤、殊にシリカを配合して用いる場合には、水素化ニトリルゴム100重量部当り8重量部以下、好ましくは5重量部以下のシラン系、チタン系、ジルコニウム系、アルミニウム系等のカップリング剤を併用することが好ましい。
【0018】
シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のビニル基含有、エポキシ基含有、アミノ基含有のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0019】
チタン系カップリング剤としては、例えばチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)等が挙げられる。
【0020】
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えばジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等が挙げられる。
【0021】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0022】
有機過酸化物としては、例えばジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4′-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレート等が、水素化ニトリルゴム100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜8重量部の割合で用いられる。有機過酸化物の配合量がこれ以下では、十分なる架橋密度の加硫物が得られず、一方これ以上の割合で用いられると、発泡して加硫成形できなかったり、あるいはそれが可能であってもゴム弾性や伸びが低下するようになる。
【0023】
また、多官能性不飽和化合物共架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングルコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の2官能性または3官能性(メタ)アクリレートが好んで用いられるが、有機過酸化物と組合わせて一般的に用いられているトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルイソシアヌレート等のアリル系共架橋剤を用いることもできる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを指している。
【0024】
これらの多官能性不飽和化合物共架橋剤は、水素化ニトリルゴム100重量部当り0.5〜30重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。これ以下の使用割合では、本発明の目的とする所望の耐LLC性(膨潤度、軟化度)が達成されず、結局所望の性状を有するウォーターポンプ用メカニカルシールのカップガスケットまたはベローズが得られず、一方これ以上の割合で用いられると、ゴム弾性や伸びに低下がみられるようになる。
【0025】
本出願人の出願に係る発明を記載した特許文献4には、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が100以下、アクリロニトリル含量が30〜50%、ヨウ素価が28以下の水素化ニトリルゴム100重量部、炭素繊維60〜250重量部および分子量が150〜500でかつ粘度(20℃)が3〜120mPa・sの多官能基系共架橋剤12〜70重量部を含有する水素化ニトリルゴム組成物が記載されており、かかる水素化ニトリルゴム組成物から加硫成形されたシール材は、LLC等の水が主成分である水溶液などの液体をシールするのに適していると述べられている。
【0026】
この場合には、炭素繊維が組成物の一成分として用いられているため、多官能基系共架橋剤を12重量部未満用いられた場合には、混練性や成形加工性の改善や補強効果、各種流体に対する耐抽出性の改善が達成されないと述べられている。これに対して、本発明においては、多官能性不飽和化合物の使用割合が1〜10重量部にあっても、耐LLC性およびロール作業性の改善が有効に達成されている。
【0027】
また、本発明と共同発明者の一名を共通にする特許文献5には、アクリロニトリル結合量が38%以下、水素添加率が90%以上、ヨウ素価(中心値)が28以下である水素化ニトリルゴム100重量部当り、約120重量部以上の合計量となるカーボンブラックおよび他の充填剤を配合してなり、20℃における熱伝導率が0.4W/m・k以上であり、50%モジュラスが14MPa以上の架橋物を与える水素化ニトリルゴム組成物が記載されており、有機過酸化物が用いられた場合には、多官能性不飽和化合物の併用が好ましいとの記載もみられる。
【0028】
その実施例4には、水素添加NBR(AN含量36.2%、水添度96%、ヨウ素価11)、SRFカーボンブラック、シリカ、グラファイト、PTFE粉末、シランカップリング剤、老化防止剤および有機過酸化物よりなる水素化ニトリルゴム組成物が用いられているが、多官能性不飽和化合物は用いられてはおらず他の実施例においても然りである。
【0029】
組成物の調製は、以上の必須各成分に加えて、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の受酸剤、老化防止剤等のゴム工業で一般的に用いられている各種充填材(ただし、可塑剤を除く)が適宜配合され、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機あるいはオープンロールなどを用いて混練することにより行われ、それの加硫は、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス等を用い、一般に約150〜200℃で約3〜60分間程度加熱することによって行われ、さらに必要に応じて約120〜200℃で約1〜24時間加熱するオーブン加硫(二次加硫)も行われ、目的物であるウォーターポンプ用メカニカルシールのカップガスケットまたはベローズに加硫成形される。
【実施例】
【0030】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0031】
実施例1


以上の各成分を3Lニーダおよび10インチロールで混練し、混練物を180℃、10分間の条件下で圧縮成形し、シート状ゴム(厚さ2mm)を成形した。
【0032】
混練物およびシート状ゴムについて、次の各項目の試験が行われた。
耐LLC性:有機酸系LLC 30容積%水溶液中に、120℃、大気圧(自然昇圧)
、2000時間浸漬し、膨潤度および軟化度を評価した
(膨潤度) 浸漬前後の体積変化率(ASTM D471に対応するJIS K6258準
拠)が、+10%未満のものを◎、+10〜+20%のものを○、
+20%を超えるものを×として評価した
(◎および○のものは使用可能であり、×は使用不可能で
ある)
(軟化度) 浸漬前後の硬度(IRHD;ASTM D1415に対応するJIS K6253準
拠)変化が、-15ポイント未満のものを◎、-15〜-25ポイン
トのものを○、-25ポイントを超えるものを×として評価
した
(◎および○のものは使用可能であり、×は使用不可能で
ある)
ロール作業性:ロール作業時にバギング(ロール機による混練り作業に
おいて、ロール間隙を通過したゴムがロールから浮き上
がる現象)などの問題が発生していないものを○、ロー
ル作業ができないものを×として評価した
【0033】
実施例2〜3
実施例1において、MTカーボンブラック量が30重量部または300重量部に変更されて用いられた。
【0034】
実施例4
実施例1において、MTカーボンブラックの代わりに、同量のSRFカーボンブラック(旭カーボン製品旭#55;粒子径66nm)が用いられた。
【0035】
実施例5〜6
実施例4において、SRFカーボンブラック量が30重量部または300重量部に変更されて用いられた。
【0036】
実施例7
実施例1において、MTカーボンブラックの代わりに、同量のシリカ(中央シリカ製品シリカ100F;粒子径8μm)が用いられた。
【0037】
実施例8〜9
実施例7において、シリカ(シリカ100F)が30重量部または300重量部に変更されて用いられた。
【0038】
実施例10
実施例7において、シリカ(シリカ100F)と共にシランカップリング剤(信越シリコーン製品KBM-602;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)5重量部が用いられた。
【0039】
実施例11〜12
実施例10において、シリカ(シリカ100F)が30重量部または300重量部に変更されて用いられた。
【0040】
実施例13
実施例1において、MTカーボンブラックの代わりに、同量のグラファイト(中越黒鉛工業製品グラファイトG-30;粒子径210μm)が用いられた。
【0041】
実施例14
実施例1において、MTカーボンブラックの代わりに、同量のクレー(白石カルシウム製品KAOCAL;粒子径0.9μm)が用いられた。
【0042】
実施例15
実施例1において、MTカーボンブラック量を75重量部に変更し、またシリカ(シリカ100F)75重量部が用いられた。
【0043】
実施例16
実施例1において、MTカーボンブラック量を15重量部に変更し、またシリカ(シリカ100F)15重量部が用いられた。
【0044】
実施例17
実施例1において、シリカ(シリカ100F)150重量部が用いられた。
【0045】
実施例18
実施例15において、それぞれ同量のMTカーボンブラック、シリカ(シリカ100F)と共に、シランカップリング剤(KBM-602)5重量部が用いられた。
【0046】
実施例19
実施例16において、それぞれ同量のMTカーボンブラック、シリカ(シリカ100F)と共に、シランカップリング剤(KBM-602)5重量部が用いられた。
【0047】
実施例20
実施例17において、それぞれ同量のMTカーボンブラック、シリカ(シリカ100F)と共に、シランカップリング剤(KBM-602)5重量部が用いられた。
【0048】
実施例21
実施例1において、水素化ニトリルゴムが同量の日本ゼオン製品Zetpol 0020(結合AN含量49.2%、ヨウ素価23mg/100mg)〔HNBR-B〕に変更されて用いられた。
【0049】
実施例22
実施例1において、水素化ニトリルゴムが同量の日本ゼオン製品Zetpol 2020(結合AN含量36%、ヨウ素価28mg/100mg)〔HNBR-C〕に変更されて用いられた。
【0050】
実施例23
実施例1において、共架橋剤量が1重量部に変更されて用いられた。
【0051】
実施例24
実施例1において、共架橋剤量が30重量部に変更されて用いられた。
【0052】
比較例1
実施例1において、MTカーボンブラックの代わりに、同量のFEFカーボンブラック(旭カーボン製品#60;粒子径45nm)が用いられた。
【0053】
比較例2〜3
比較例1において、FEFカーボンブラック量が30重量部または300重量部に変更されて用いられた。
【0054】
比較例4〜5
実施例1において、MTカーボンブラック量が20重量部または310重量部に変更されて用いられた。
【0055】
比較例6〜7
実施例7おいて、シリカ(シリカ100F)が20重量部または310重量部に変更されて用いられた。
【0056】
比較例8
実施例15において、MTカーボンブラック量が10重量部に、またシリカ(シリカ100F)量が10重量部にそれぞれ変更して用いられた。
【0057】
比較例9
実施例15において、MTカーボンブラック量が160重量部に、またシリカ(シリカ100F)量が160重量部にそれぞれ変更して用いられた。
【0058】
比較例10
実施例1において、共架橋剤が用いられなかった。
【0059】
比較例11
実施例1において、共架橋剤が35重量部に変更されて用いられた。
【0060】
比較例12
実施例1において、水素化ニトリルゴムが同量の日本ゼオン製品Zetpol 3110(結合AN含量25%、ヨウ素価15mg/100mg)〔HNBR-D〕に変更されて用いられた。
【0061】
比較例13
実施例1において、水素化ニトリルゴムが同量の日本ゼオン製品Zetpol 2030L(結合AN含量36%、ヨウ素価57mg/100mg)〔HNBR-E〕に変更されて用いられた。
【0062】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、共通成分である老化防止剤および有機過酸化物以外の組成物各成分量(単位:重量部)と共に、次の表1〜4に示される。





【0063】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 結合AN含量が31〜50%、ヨウ素価が30mg/100mg以下の水素化ニトリルゴム100重量部に対し、MTカーボンまたはSRFカーボンを30〜300重量部および共架橋剤1〜30重量部を用いた場合、耐LLC性が良好でしかもロール作業性に問題はみられない。
また、シリカ30〜300重量部およびシランカップリング剤0〜5重量部を用いた場合やMTカーボン、シリカを合計して30〜300重量部およびシランカップリング剤0〜5重量部を用いた場合にも、同様の効果が奏せられる。
(2) 水素化ニトリルゴムの結合AN含量が規定された値より小さい場合、またはヨウ素価が規定された値より大きい場合には、十分なる耐LLC性が得られない。
(3) MTカーボンおよび/またはシリカ量が規定された値より小さい場合には、十分なる耐LLC性が得られず、一方規定された値より大きい場合には、ロール作業性に問題が発生し、ゴム材料として成立し得ない。
(4) 共架橋剤量が規定された値より小さい場合には、耐LLC性に問題が発生し、一方規定された値より大きい場合には、ロール作業性問題が発生した。