(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下本発明をDLP(登録商標)方式のデータプロジェクタ装置に適用した場合の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るデータプロジェクタ装置10が備える電子回路の概略機能構成を示すブロック図である。
11は入出力コネクタ部であり、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子、D−sub15タイプのRGB入力端子、及びUSB(Universal Serial Bus)コネクタを含む。
【0013】
入出力コネクタ部11より入力される各種規格の画像信号は、入出力インタフェース(I/F)12、システムバスSBを介し、一般にスケーラとも称される画像変換部13に入力される。
【0014】
画像変換部13は、入力された画像信号を投影に適した所定のフォーマットの画像信号に統一し、適宜表示用のバッファメモリであるビデオRAM14に書込んだ後に、書込んだ画像信号を読出して投影画像処理部15へ送る。
【0015】
この際、OSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じてビデオRAM14で画像信号に重畳加工され、加工後の画像信号が読出されて投影画像処理部15へ送られる。
【0016】
投影画像処理部15は、送られてきた画像信号に応じて、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば120[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子(SLM)であるマイクロミラー素子16を表示駆動する。
【0017】
このマイクロミラー素子16は、アレイ状に配列された複数、例えばXGA(横1024画素×縦768画素)分の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作することでその反射光により光像を形成する。
【0018】
一方で、光源部17から時分割でR,G,Bの原色光が循環的に出射される。この光源部17からの原色光が、ミラー18で全反射して上記マイクロミラー素子16に照射される。
【0019】
そして、マイクロミラー素子16での反射光で光像が形成され、形成された光像が投影レンズユニット19を介して、投影対象となる図示しないスクリーンに投影表示される。
【0020】
光源部17は、具体的な光学構成については後述するが、2種類の光源、すなわち青色のレーザ光を発する半導体レーザ20と、赤色光を発するLED21とを有する。
【0021】
半導体レーザ20の発する青色のレーザ光は、ミラー22で全反射された後、ダイクロイックミラー23を透過して、カラーホイール24の周上の1点に照射される。このカラーホイール24は、モータ25により基本的に定速で回転される。レーザ光が照射されるカラーホイール24の周上には、緑色蛍光反射板24Gと青色用拡散板24Bとが合わせてリング状となるように形成されている。
【0022】
カラーホイール24の緑色蛍光反射板24Gがレーザ光の照射位置にある場合、レーザ光の照射により緑色光が励起され、励起された緑色光がカラーホイール24で反射された後、上記ダイクロイックミラー23でも反射される。その後、この緑色光は、さらにダイクロイックミラー28で反射され、インテグレータ29で輝度分布が略均一な光束とされた後にミラー30で全反射されて、上記ミラー18へ送られる。
【0023】
また、
図1に示すようにカラーホイール24の青色用拡散板24Bがレーザ光の照射位置にある場合、レーザ光は該拡散板24Bで拡散されながらカラーホイール24を透過した後、ミラー26,27でそれぞれ全反射される。その後、この青色光は、上記ダイクロイックミラー28を透過し、インテグレータ29で輝度分布が略均一な光束とされた後にミラー30で全反射されて、上記ミラー18へ送られる。
【0024】
さらに、上記LED21の発した赤色光は、上記ダイクロイックミラー23を透過した後にダイクロイックミラー28で反射され、インテグレータ29で輝度分布が略均一な光束とされた後にミラー30で全反射されて、上記ミラー18へ送られる。
【0025】
以上の如く、ダイクロイックミラー23は、青色光、及び赤色光を透過する一方で、緑色光を反射する分光特性を有する。
【0026】
また、ダイクロイックミラー28は、青色光を透過する一方で、赤色光、及び緑色光を反射する分光特性を有する。
【0027】
加えて、上記インテグレータ29の出射光側に向けて光センサLSを配設する。この光センサLSは、光の色に関係なく輝度のみを検知するものであり、その検知出力は投影光処理部31へ出力される。
【0028】
しかるに、上記光源部17の半導体レーザ20とLED21の各発光タイミング及び発光強度、上記モータ25によるカラーホイール24の回転、及び上記光センサLSによる検知を投影光処理部31が制御する。この投影光処理部31には、上記投影画像処理部15から画像データのタイミング信号が与えられる。
【0029】
投影光処理部31は、後述するCPU32の統括制御の下に、上記光源部17を構成する半導体レーザ20とLED21の各発光タイミング及び発光強度、上記モータ25によるカラーホイール24の回転、及び上記光センサLSによる検知を実行する投影光処理部31の制御を実行する。
【0030】
上記各回路の動作すべてをCPU32が制御する。このCPU32は、DRAMで構成されたメインメモリ33、及び動作プログラムや各種定型データ等を記憶した電気的書換可能な不揮発性メモリで構成されたプログラムメモリ34を用いて、このデータプロジェクタ装置10内の制御動作を実行する。
【0031】
上記CPU32は、操作部35からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。この操作部35は、データプロジェクタ装置10の本体に設けられるキー操作部と、このデータプロジェクタ装置10専用の図示しないリモートコントローラの間で赤外光を受光するレーザ受光部とを含み、ユーザが本体のキー操作部またはリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU32へ直接出力する。
【0032】
操作部35は、上記キー操作部、及びリモートコントローラ共に、例えばフォーカス調整キー、ズーム調整キー、入力切換キー、メニューキー、カーソル(←,→,↑,↓)キー、セットキー、キャンセルキー等を備える。
【0033】
上記プログラムメモリ34には、上述した動作プログラムや各種定型データ等に加え、工場出荷時のホワイトバランスがとれた状態での上記R,G,B各発光時のLED21と半導体レーザ20の各駆動電流値が定格電流値として固定的に記憶されているものとする。
【0034】
上記CPU32はさらに、上記システムバスSBを介して音声処理部36とも接続される。音声処理部36は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部37を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
【0035】
次に、
図2により主として光源部17の具体的な光学系の構成例を示す。同図は、上記光源部17周辺の構成を平面的なレイアウトで表現したものである。
【0036】
ここでは、同一の発光特性を有する複数、例えば3つの半導体レーザ20A〜20Cを設け、これら半導体レーザ20A〜20Cはいずれも青色、例えば波長約450[nm]のレーザ光を発振する。
【0037】
これら半導体レーザ20A〜20Cの発振した青色光は、レンズ41A〜41Cを介してミラー22A〜22Cで全反射され、さらにレンズ42,43を介した後に上記ダイクロイックミラー23を透過し、レンズ群44を介してカラーホイール24に照射される。
【0038】
図3は、本実施形態におけるカラーホイール24の構成を示す。同図に示すようにカラーホイール24上では、例えば中心角約150°の円弧状の青色用拡散板24Bと、中心角約210°の円弧状の緑色蛍光体反射板24Gとが合わせて1つのリングを形成する。
【0039】
本実施形態では、青色用拡散板24Bの中心角が、全周360°の1/3に相当する120°より大きく、且つ2/3に相当する240°より小さい角度として、例えば約150°と設定した。これにより、緑色蛍光体反射板24Gは中心角が残る約210°となるように設定した。このような角度設定とすることにより、後述する1画像フレームを構成するR,G,B各フィールドの時間幅を可変する場合に対処可能となる。
【0040】
図3では、カラーホイール24の基準位置を0°とし、カラーホイール24の回転により、半導体レーザ20A〜20Cからの青色光が照射される位置が、図中の矢印MVで示すように青色用拡散板24B及び緑色蛍光体反射板24Gで構成される周上を移動することを表している。
【0041】
カラーホイール24の青色用拡散板24Bが半導体レーザ20A〜20Cからの青色光の照射位置にある場合、照射された青色光は該拡散板24Bで拡散されながらカラーホイール24を透過し、背面側にあるレンズ50を介してミラー26で全反射される。
【0042】
さらに青色光は、レンズ51を介してミラー27で全反射され、レンズ52を介した後に上記ダイクロイックミラー28を透過し、レンズ46を介してインテグレータ29で輝度分布が略均一な光束とされた後にレンズ47を介し、ミラー30で全反射されて、レンズ48を介して上記ミラー18へ送られる。
ミラー18で全反射した青色光は、レンズ49を介してマイクロミラー素子16に照射される。そして、その青色光の反射光で青色成分の光像が形成され、レンズ49、上記投影レンズユニット19を介して外部へ投射される。
【0043】
一方、緑色蛍光体反射板24Gが半導体レーザ20A〜20Cからの青色光の照射位置にある場合、その照射により例えば波長約530[nm]を中心とした波長帯の緑色光が励起され、励起された緑色光がカラーホイール24で反射された後、レンズ群44を介してダイクロイックミラー23でも反射される。
【0044】
ダイクロイックミラー23で反射した緑色光は、レンズ45を介してさらにダイクロイックミラー28で反射され、レンズ46を介してインテグレータ29で輝度分布が略均一な光束とされた後にレンズ47を介し、ミラー30で全反射されて、レンズ48を介して上記ミラー18へ送られる。
ミラー18で全反射した緑色光は、レンズ49を介してマイクロミラー素子16に照射される。そして、その緑色光の反射光で緑色成分の光像が形成され、レンズ49、上記投影レンズユニット19を介して外部へ投射される。
【0045】
また、上記LED21は、例えば波長620[nm]の赤色光を発生する。LED21の発した赤色光は、レンズ群53を介し、上記ダイクロイックミラー23を透過した後にレンズ45を介して上記ダイクロイックミラー28で反射され、さらにレンズ46を介してインテグレータ29で輝度分布が略均一な光束とされた後にレンズ47を介し、ミラー30で全反射されて、レンズ48を介して上記ミラー18へ送られる。
ミラー18で全反射した赤色光は、レンズ49を介してマイクロミラー素子16に照射される。そして、その赤色光の反射光で赤色成分の光像が形成され、レンズ49、上記投影レンズユニット19を介して外部へ投射される。
【0046】
次に上記実施形態の動作について説明する。
ここでは、投影するカラー画像1フレームを構成するB,R,Gの各原色画像を投影する期間(以下「Bフィールド、Rフィールド、Gフィールド」と称する)を等分し、その時間比を1:1:1とする。
【0047】
すなわち、定速回転するカラーホイール24の1回転360°に対して、Bフィールド、Rフィールド、及びGフィールドの時間比b:r:gは、カラーホイール24の中心角度に置換すると120°:120°:120°となる。
【0048】
図4は、データプロジェクタ装置10の電源オン当初に実行される光源部17の輝度チェック処理の内容を示すフローチャートである。
同輝度チェック処理は、電源オン当初のみならず、このデータプロジェクタ装置10のユーザが手動で調整動作を選択した場合、及び一定時間、例えば10時間投影動作を続行した場合に自動的に実行するものとしてもよい。
【0049】
図4の処理は、CPU32がプログラムメモリ34に記憶していた動作プログラムを読出し、メインメモリ33上で展開した上で実行する。
【0050】
その処理当初にCPU32は、変数nに初期値「1」を代入する(ステップS101)。
【0051】
ついて、その時点の変数nの値、例えば「1」にしたがい、Bフィールドで半導体レーザ20A〜20Cを定格電流により発光させ、インテグレータ29の出力側における輝度Lbn(Lb1)を光センサLSにより測定させて、記録する(ステップS102)。
【0052】
ここで半導体レーザ20A〜20Cに流す定格電流は、プログラムメモリ34から読出して設定するもので、上述した如く工場出荷時にホワイトバランスがとれていた初期状態でB光を発光させるのに必要であった電流値である。
【0053】
同様に、続くRフィールドでLED21を定格電流により発光させて、インテグレータ29の出力側における輝度Lrn(Lr1)を光センサLSにより測定させて、記録する(ステップS103)。
【0054】
ここで半導体レーザ20A〜20Cに流す定格電流も、プログラムメモリ34から読出して設定するもので、上述した如く工場出荷時にホワイトバランスがとれていた初期状態でR光を発光させるのに必要であった電流値である。
【0055】
さらに、続くGフィールドで半導体レーザ20A〜20Cを定格電流により発光させて、インテグレータ29の出力側における輝度Lgn(Lg1)を光センサLSにより測定させて、記録する(ステップS104)。
【0056】
ここで半導体レーザ20A〜20Cに流す定格電流も、プログラムメモリ34から読出して設定するもので、上述した如く工場出荷時にホワイトバランスがとれていた初期状態でG光を発光させるのに必要であった電流値である。
【0057】
ついて、変数nを「+1」更新設定する(ステップS105)。更新設定した変数nの値が「4」となっていないことを確認した上で(ステップS106)、再び上記ステップS102からの処理に戻る。
【0058】
こうして合計3フレームにわたってBフィールド、Rフィールド、及びGフィールドでの輝度Lb1,Lr1,Lg1,Lb2,Lr2,Lg2,Lb3,Lr3,Lg3を順次測定する。
【0059】
図5は、この輝度チェック処理実行時の光源部17の駆動状態を示す図である。
図5(A)は、マイクロミラー素子16に対して照射される光源光の色を示す。このように、1カラー画像フレームを時間的に等分のBフィールド、Rフィールド、Gフィールドの各期間で各色の光像を同時間ずつ形成するように制御する。
【0060】
図5(B)はLED21の駆動電流、
図5(C)は半導体レーザ(B−LD)20A〜20Cの駆動電流を示している。フレーム当初のBフィールドでは、半導体レーザ20A〜20Cに青色画像用の定格駆動電流IstBが与えられ、上述した如くその時点のインテグレータ29出力側の輝度Lbn(Lb1〜Lb3)が測定される。
【0061】
同様に、Rフィールドでは、LED21に赤色画像用の定格駆動電流IstRが与えられ、上述した如くその時点のインテグレータ29出力側の輝度Lrn(Lr1〜Lr3)が測定される。
【0062】
さらに、Gフィールドでは、半導体レーザ20A〜20Cに緑色画像用の定格駆動電流IstGが与えられ、上述した如くその時点のインテグレータ29出力側の輝度Lgn(Lg1〜Lg3)が測定される。
【0063】
なお、上記
図5(C)では、半導体レーザ20A〜20Cに与える青色画像用の定格駆動電流IstBと、緑色画像用の定格駆動電流IstGとが同値となった状態で示しているが、工場出荷時のホワイトバランスがとれた状態では緑色蛍光体反射板24Gの蛍光特性等により、予め緑色画像用の定格駆動電流IstGと緑色画像用の定格駆動電流IstGとが異なるものであってもよい。
【0064】
上述した如く3フレームにわたって輝度値を測定した後、ステップS105で変数nをさらに「+1」更新設定した「4」とすると、続くステップS106でそれを確認し、輝度の測定を一旦停止する。
【0065】
次いで、3フレーム分の測定値から定格電流で駆動した場合の各色輝度Lb,Lr,Lgの平均Lbav,Lrav,Lgavを求める(ステップS107)。
【0066】
これら求めた平均輝度Lbav,Lrav,Lgavに基づいて、最適なホワイトバランスが得られるような、上記定格駆動電流IstB,IstR,IstGを基準としたBフィールド、Rフィールド、及びGフィールドでの各駆動電流IB1,IR1,IG1を算出して設定する(ステップS108)。
【0067】
具体的には、本来のホワイトバランスに対して最も輝度の低下が著しい光源色を基準として、他の2つの光源色が最適なホワイトバランスとなるように調整を行なう。
【0068】
図6は、こうして新たな駆動電流を設定した場合の光源部17の駆動状態を示す図である。
図6(A)は、マイクロミラー素子16に対して照射される光源光の色を示す。
【0069】
図6(B)はLED21の駆動電流、
図6(C)は半導体レーザ(B−LD)20A〜20Cの駆動電流を示している。フレーム当初のBフィールドでは、半導体レーザ20A〜20Cに青色画像用の定格駆動電流IstBよりも低い駆動電流IB1が与えられている。
【0070】
続くRフィールドでは、LED21に赤色画像用の定格駆動電流IstRよりも高い駆動電流IR1が与えられている。その後のGフィールドでは、半導体レーザ20A〜20Cに緑色画像用の定格駆動電流IstGよりも高い駆動電流IG1が与えられている。
【0071】
ここではLED21の発光輝度の低下が最も著しいものとして、LED21の駆動電流IR1を定格駆動電流IstRよりも大幅に高い値に設定すると共に、そのR光の新たな発光輝度に対して適正なホワイトバランスがとれるように、半導体レーザ20A〜20Cへの緑色画像用の駆動電流IG1も定格駆動電流IstGより若干高いものとして設定し、併せて半導体レーザ20A〜20Cへの青色画像用の駆動電流IB1は逆に定格駆動電流IstBよりも低い値に設定した例を示す。
【0072】
こうして定格駆動電流での駆動に基づいた輝度の測定と、その測定結果に基づいて各色の劣化を勘案した最適なホワイトバランスが得られるような新たな駆動電流の設定とを行なうことで、通常の投影動作への準備を終える。
【0073】
加えて、ここではさらに上記算出した平均輝度値により光源部17の素子を構成する半導体レーザ20A〜20CとLED21の劣化判断を行なう。
すなわち、青色画像用に定格電流で半導体レーザ20A〜20Cを駆動した場合の平均輝度Lbavが、赤色画像用に定格電流でLED21を駆動した場合の平均輝度Lravに所定係数K1を乗じた積に比して低いか否かにより、半導体レーザ20A〜20Cのいずれかが実用限界を下回るほど劣化しているか否かを判断する(ステップS109)。
【0074】
ここで上記係数K1は、製品出荷時の半導体レーザ20A〜20Cの発する青色光の輝度特性とカラーホイール24の青色用拡散板24Bの透過特性、及びLED21の発する赤色光の輝度特性に応じて予めプログラムメモリ34に記録された係数である。
【0075】
上記赤色画像用に定格電流でLED21を駆動した場合の平均輝度Lravを比較対象として、緑色画像用に定格電流で半導体レーザ20A〜20Cを駆動した場合の平均輝度Lgavではなく、青色画像用に定格電流で半導体レーザ20A〜20Cを駆動した場合の平均輝度Lbavから半導体レーザ20A〜20Cの劣化を判断するのは、カラーホイール24の緑色蛍光体反射板24Gに塗布された蛍光体が劣化を生じる可能性が高いのに対し、レーザ光が透過、拡散するだけのカラーホイール24の青色用拡散板24B部分が劣化することは実用上考え難いからである。
【0076】
上記ステップS109で半導体レーザ20A〜20Cが所定値以上劣化していると判断した場合には、半導体レーザ20A〜20C、あるいは光源部17がアセンブリユニットで提供するものであればそのアセンブリユニット自体を交換するようなガイドメッセージを投影画像として出力させる(ステップS110)。
【0077】
次いで、青色画像用に定格電流で半導体レーザ20A〜20Cを駆動した場合の平均輝度Lbavが、緑色画像用に定格電流で半導体レーザ20A〜20Cを駆動した場合の平均輝度Lgavに所定係数K2を乗じた積に比して、高いか否かにより、カラーホイール24の緑色蛍光体反射板24G部分に塗布されている蛍光体が実用限界を下回るほど劣化しているか否かを判断する(ステップS111)。
【0078】
ここで上記係数K2は、製品出荷時の半導体レーザ20A〜20Cの発する青色光の輝度特性とカラーホイール24の青色用拡散板24Bの透過特性、及び同緑色蛍光体反射板24G部分に塗布された蛍光体の蛍光特性に応じて予めプログラムメモリ34に記録された係数である。
【0079】
上記ステップS111でカラーホイール24の緑色蛍光体反射板24Gが所定値以上劣化していると判断した場合には、カラーホイール24、あるいは光源部17がアセンブリユニットで提供するものであればそのアセンブリユニット自体を交換するようなガイドメッセージを投影画像として出力させる(ステップS112)。
こうして
図4の輝度チェック処理を完了した後、通常の投影動作に移行する。
【0080】
以上詳記した如く本実施形態によれば、光源部17を構成する複数の光源素子や蛍光体を用いる場合に、個々の素子等が経年劣化を生じた場合にもそれを補償して、色再現性と投影画像の明るさを長く両立することが可能となる。
【0081】
なお上記実施形態においては、光センサLSをインテグレータ29の出力側に配置し、青色光、赤色光、及び緑色光の各発光輝度を1つの光センサLSで検知するものとした。
【0082】
これにより、必要な回路素子の構成を極力簡素化しながらも、必要な全色光の発光輝度を検知することが可能となり、装置全体の製造コストの増大を最小限に抑えることができる。
【0083】
また上記実施形態では、輝度チェックの結果に基づいて、1フレームを構成するR,G,Bの各フィールド期間の時間幅を変えることなく、光源側の発光素子の発光強度を可変調整することで対処するものとした。
これにより、投影画像処理部15及びマイクロミラー素子16を含む光像を形成する側の回路での動作タイミングを可変する必要がなく、制御が容易になる。
【0084】
なお、上記
図4の処理では、ステップS109でLED21の発光輝度に比して半導体レーザ20A〜20Cの発光輝度の値が所定の割合以下となっているか否かにより半導体レーザ20A〜20Cのいずれかの発光輝度が実用限界を下回るほど劣化したかどうかを判断するものとしたが、LED21が半導体レーザ20A〜20Cとともに劣化していた場合には、上記ステップS109で示した判断処理ではそれらの劣化を検出することができない。
【0085】
したがって、LED21と半導体レーザ20A〜20Cそれぞれに輝度を測定してその絶対値を本来の輝度と比較するものとしてもよく、そのような処理を加えることで、LED21と半導体レーザ20A〜20Cそれぞれの輝度劣化を正確に判断できる。そして、上述のように半導体レーザ、LED21、緑色蛍光体反射板24G部分に塗布されている蛍光体のうちいずれかが所定値以上劣化していた場合は、交換指示等を報知することができる。
【0086】
なお、上記
図6に示したような、光源側の発光素子の駆動電流を制御することで発光強度を可変調整するのではなく、各発光素子の発光電力は一定としながらも、1フレームを構成するR,G,Bの各フィールド期間の時間幅を変えることで対処するものとしてもよい。
【0087】
図7は、上記ステップS108での処理に代えて、1フレームを構成するR,G,Bの各フィールド期間の時間幅を変えるように設定した場合の光源部17の駆動例を示す。
【0088】
ここでは、輝度チェック処理後も上記
図5で説明した状態と同様に半導体レーザ20A〜20C及びLED21共に定格電流IstB,IstR,IstGでの駆動を継続しているが、各フィールドの時間幅を大きく変更している。
【0089】
すなわち、Bフィールドは、回転するカラーホイール24の中心角度で120°分に相当する時間幅から大きく減少して78°分に相当する時間幅となっている。続くRフィールドは、回転するカラーホイール24の中心角度で120°分に相当する時間から大きく増加して150°分に相当する時間幅となっている。その後のGフィールドは、回転するカラーホイール24の中心角度で120°分に相当する時間から若干増加して132°分に相当する時間幅となっている。
【0090】
上記CPU32は、投影光処理部31により半導体レーザ20A〜20C及びLED21の駆動電流と駆動タイミングとを上述した如く制御させるのと同時に、投影画像処理部15及びマイクロミラー素子16を含む投影系で光像を形成するタイミングを上記光源光の調整内容と同期させる必要がある。
【0091】
このように、光源の素子を駆動する電力で発光強度を調整するのではなく、各発光素子を定電力で駆動しながら1フレームを構成する各フィールド単位でその時間幅を調整することにより、画像を投影する側の時間制御が複雑になる一方で、各発光素子は常に一定の電力で駆動されるために、発光素子の劣化を早めるような虞がなく、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0092】
なお上記実施形態では、光センサLSをインテグレータ29の出力側に設けることで、B,R,G各色の発光強度を検知することが可能であるものとして説明したが、装置の設計及び発光素子の特性上、発光素子である半導体レーザ20A〜20C、またはLED21のいずれか一方が他方に比して特に発光強度の低下が著しいか、あるいは劣化を生じ易いと思われる場合には、光センサLSを当該発光素子の発光部位に直接対向するように配置してもよい。
【0093】
また上記実施形態では、半導体レーザ20A〜20CまたはLED21のいずれか一方を選択的に駆動してB(青色)光、R(赤色)光、及びG(緑色光)によるBフィールド、Rフィールド、及びGフィールドから1カラー画像フレームが構成されるものとして説明したが、本発明はこれに限らず、複数の発光素子を同時に発光させてその混色による画像フィールドを含むようにしてもよい。
【0094】
具体的には、例えばB(青色)光とR(赤色)光Bとを同時に発光させることで混色によりM(マゼンタ)色の光像を投影する画像フィールドが1画像フレーム中に存在するものとしてもよいし、G(緑色)光とR(赤色)光Bとを同時に発光させることで混色によりY(黄)色の光像を投影する画像フィールドが1画像フレーム中に存在するものとしてもよい。
【0095】
こうした混色による画像フィールドを設けることで、色の表現性や画像の明るさをより増加させることができ、結果としてデータプロジェクタ装置10が使用される環境に応じた投影が実施できる。
【0096】
(第2の実施形態)
以下本発明をDLP(登録商標)方式のデータプロジェクタ装置に適用した場合の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
【0097】
図8は、本実施形態に係るデータプロジェクタ装置10′が備える電子回路の概略機能構成を示すブロック図である。
なお、データプロジェクタ装置10′を構成する基本的な電子回路、及び特に光源部17の具体的な光学系の構成例については、ほぼ上記
図1及び
図2に示した内容と同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0098】
なお、光源部17は上記
図1及び
図2で示した光センサLSを有さない点で第1の実施形態とは異なる。
【0099】
また、CPU32に代わるCPU32′は、内部に、発光時間をカウントするタイマー32aを備える。
【0100】
さらに、プログラムメモリ34に代わるプログラムメモリ34′は、発光時間ログ記憶部34aと駆動電流変換テーブル34bとを備える。発光時間ログ記憶部34aは、光源部17の半導体レーザ20A〜20C及びLED21の積算発光時間を保持する。駆動電流変換テーブル34bは、半導体レーザ20A〜20CとLED21それぞれの積算発光時間に対応した基準駆動電流値をルックアップテーブルの形で予め記憶している。この駆動電流変換テーブル34bの記憶内容は、半導体レーザ20A〜20C及びLED21の経時変化特性から、必要とされる発光輝度を得るための基準駆動電流値が予測値として記憶されたものである。
【0101】
次に上記実施形態の動作について説明する。
なお、本実施形態においては、データプロジェクタ装置10′が複数のカラー投影モードとして、例えばノーマルモード、プレゼンテーションモード、シアターモード、グラフィックスモード、及び黒板モードから1つを選択することが可能であるものとする。
ノーマルモードは、本データプロジェクタ装置10′のカラー投影モードの基準として用いるもので、色表現を重視した設定とする。
プレゼンテーションモードは、明るい場所での一般的なプレゼンテーションに適した、明るさを重視した設定とする。
シアターモードは、映画の暗部の表現を重視した設定とする。
グラフィックスモードは、写真などが自然に見えるように階調表現を重視した設定とする。
黒板モードは、黒板に画像を投影する場合でも投影内容がはっきりと判別可能となる設定とする。
【0102】
これらノーマルモード以外の各カラーモードに関して、ノーマルモード時を基準とした半導体レーザ20A〜20CとLED21それぞれの駆動電流値の違いに基づく投影時間の換算係数が予めプログラムメモリ34′に記憶されているものとする。
【0103】
図4は、データプロジェクタ装置10′の電源オン後に投影動作と平行して実行される光源部17の駆動制御の処理内容を示すものである。この
図9の処理は、CPU32′がプログラムメモリ34′に記憶していた動作プログラムを読出し、メインメモリ33上で展開した上で実行する。
【0104】
その処理当初にCPU32′は、駆動時間ログ記憶部34aを読出し、半導体レーザ20A〜20CとLED21それぞれの積算発光時間を読出す(ステップS301)。
【0105】
そして、読出した積算発光時間に応じて駆動電流変換テーブル34bを参照し、半導体レーザ20A〜20C及びLED21それぞれの基準駆動電流を読出す(ステップS302)。
【0106】
これら読出したそれぞれの基準駆動電流値を投影光処理部31に設定する(ステップS303)。その上でさらに、前回電源をオフした時点で設定されていたカラー投影モードの情報をプログラムメモリ34′から読出す(ステップS304)。
【0107】
読出したカラー投影モードの情報を基に、半導体レーザ20A〜20CによるB(青色)光、及びG(緑色)光発光時の駆動電流の各割り増し比率と、LED21によるR(赤色)光発光時の駆動電流の割り増し比率とを上記設定した基準駆動電流に乗算してその積を新たな駆動電流として投影光処理部31で設定させる(ステップS305)。
【0108】
さらに、CPU32′内のタイマー32aをリセットして投影時間のカウントを開始させる(ステップS306)。
【0109】
以後、設定されたカラー投影モードでの投影動作を平行して実行しながら、併せて操作部35により電源オフのキー操作がなされたか否か(ステップS307)、カラー投影モードの変更指示の操作がなされたか否か(ステップS308)、を繰返し判断することで、これらの操作がなされるのを待機する。
【0110】
投影動作途中でカラー投影モードの変更指示の操作がなされた場合、上記ステップS308でそれを判断し、その時点でのタイマー32aの計時値を読出す(ステップS309)。
【0111】
次いで、読出した計時値とそれまで設定されていたカラー投影モードとにより、ノーマルモード時に換算した半導体レーザ20A〜20CとLED21それぞれの発光時間を算出し、算出した発光時間を用いて発光時間ログ記憶部34aの内容を更新設定する(ステップS310)。
【0112】
次いで、上記操作された通り、あらたなカラー投影モードへの切換処理を実行した上で(ステップS311)、再び上記ステップS306からの処理に戻る。
【0113】
また、上記ステップS307で電源オフを指示する操作がなされと判断すると、その時点でのタイマー32aの計時値を読出す(ステップS312)。
【0114】
次いで、読出した計時値とそれまで設定されていたカラー投影モードとにより、ノーマルモード時に換算した半導体レーザ20A〜20CとLED21それぞれの発光時間を算出し、算出した発光時間を用いて発光時間ログ記憶部34aの内容を更新設定する(ステップS313)。
【0115】
次いで、上記操作された通り、アフタークーリング処理を含むこのデータプロジェクタ装置10′の電源をオフするための処理を実行した上で(ステップS314)、以上でこの
図9の処理を終了する。
【0116】
以上詳述した如く本実施形態によれば、特に直接半導体レーザ20A〜20CやLED21の発光輝度を検知するセンサ等の回路素子を設けることなく、発光素子の経年劣化の度合が予測可能であれば、複数の光源や蛍光体医を用いる場合に個々の素子等が経年劣化を生じた場合にもそれを補償し、色再現性と投影画像の明るさを長く両立することが可能となる。
【0117】
加えて上記実施形態では、複数のカラー投影モードから1つを選択可能とし、各カラー投影モードでの発光素子の発光時間を、基準となる1つのカラー投影モードに換算した上で発光素子毎に発光時間を積算して管理するものとした。
【0118】
これにより、積算発光時間の管理が容易となると共に、カラー投影モード毎に異なる、複数の発光素子の消耗度合も勘案して、正確な管理手法が確立できる。
【0119】
なお、上記第1及び第2の実施形態はいずれも、半導体レーザ20A〜20Cで青色のレーザ光を発振してカラーホイール24により青色光及び緑色光を発生させる一方で、LED21で赤色光を発生するものとして説明したが、本発明はこれに限らず、1つの光源で発生しうる原色光の輝度バランスが実用に適さない場合に、他の光源を用いてそれを補償するような、複数種類の光源を用いる光源部、及びそのような光源部を用いる投影装置であれば同様に適用可能である。
【0120】
また、上記各実施形態は共に本発明をDLP(登録商標)方式のデータプロジェクタ装置に適用した場合について説明したものであるが、例えば透過型のモノクロ液晶パネルを用いて光像を形成する液晶プロジェクタ等にも同様に本発明を適用することができる。
【0121】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。