特許第5930008号(P5930008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930008変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー及び一軸延伸多孔質体
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  • 特許5930008-変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー及び一軸延伸多孔質体 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930008
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー及び一軸延伸多孔質体
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/26 20060101AFI20160526BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20160526BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C08F214/26
   C08J9/00 ACEW
   C08F2/24 Z
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-242997(P2014-242997)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2015-127411(P2015-127411A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-248706(P2013-248706)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
(72)【発明者】
【氏名】小野 真誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】茶圓 伸一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 又彦
(72)【発明者】
【氏名】平良 隆博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/027850(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/115278(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/046345(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/113950(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/061567(WO,A1)
【文献】 特開平01−247408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−301/00
C08J 9/00−9/42
B29C 55/00−55/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非溶融二次加工性を有し、
標準比重が2.155以下であり、
全単量体単位に対して0.015モル%以上0.150モル%以下のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)に由来する重合単位を含み、
LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下に、テトラフルオロエチレンと少なくともパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を乳化共重合して得られ、
押出圧力が20.0MPa以下である
ことを特徴とする変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項2】
全単量体単位に対して0.025モル%以上のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)に由来する重合単位を含む請求項1記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項3】
破断強度が28N以上である請求項1又は2記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項4】
破断強度が30N以上である請求項1、2又は3記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項5】
破断強度が32N以上である請求項1、2、3又は4記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項6】
破断強度が34N以上である請求項1、2、3、4又は5記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項7】
破断強度が36N以上である請求項1、2、3、4、5又は6記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項8】
平均一次粒子径が210nm以上、300nm以下である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーから形成されたことを特徴とする一軸延伸多孔質体。
【請求項10】
膜である請求項9記載の一軸延伸多孔質体。
【請求項11】
チューブである請求項9記載の一軸延伸多孔質体。
【請求項12】
繊維である請求項9記載の一軸延伸多孔質体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー及び一軸延伸多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押出成形して得られる成形体を延伸すると、空孔率の高い多孔質体が得られることが知られている。このポリテトラフルオロエチレン多孔質体はノード(結節)とフィブリル(繊維)から形成されており、水蒸気などの気体を通すが、ポリテトラフルオロエチレンの強い撥水性のため水滴は通さない。この多孔質の延伸体は、未焼成のままシール用材料として使用したり、焼成し強靭な連続延伸シートやチューブにして、衣類や分離膜に応用されている。
【0003】
このような多孔質の延伸体は、延伸工程、延伸後の巻き取り工程、ラミネート工程等で破断しやすいことや、衣料や分離膜として使用される際も破断しやい問題があり、高い強度を有する多孔質の延伸体を作製することができる材料が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1〜2には、特定の破断強度を有する高分子量のテトラフルオロエチレン単独重合体が記載されている。
【0005】
また、特許文献3〜5には、特定の乳化剤の存在下で重合して得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散液が記載されている。
【0006】
また、特許文献6〜8には、パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)で変性されたテトラフルオロエチレン系共重合体が記載されている。
【0007】
また、特許文献9には、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を重合することにより得られた延伸体成形用非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−143727号公報
【特許文献2】特開2002−201217号公報
【特許文献3】国際公開第2007−046345号
【特許文献4】国際公開第2009/001894号
【特許文献5】国際公開第2010/113950号
【特許文献6】特開平11−240917号公報
【特許文献7】国際公開第2003/033555号
【特許文献8】国際公開第2007/024762号
【特許文献9】特許第4951970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜5には、特定の破断強度を有する高分子量のテトラフルオロエチレン単独重合体が記載されているが、このような単独重合体を延伸して得られる延伸体の強度は十分とはいえなかった。
【0010】
特許文献6〜8で開示されているパーフルオロアルキルエチレン(PFAE)で変性されたPTFEファインパウダーは、ペースト押出時の押出圧力が高いため、圧延時につぶれにくく、得られる成形体の均質性が悪くなる課題があった。また、特許文献9で開示されているパーフルオロ(メチルビニルエーテル)で変性されたPTFEファインパウダーは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)の含有量が多くなると、ペースト押出時の押出圧力が高くなり、パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)で変性されたPTFEファインパウダーと同様、圧延時につぶれにくく、得られる成形体の均質性が悪くなる課題があった。
【0011】
本発明の目的は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体が得られる変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、非溶融二次加工性を有し、標準比重が2.155以下であり、全単量体単位に対して0.015モル%以上のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)に由来する重合単位を含み、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下に、テトラフルオロエチレンと少なくともパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を乳化共重合して得られ、押出圧力が20.0MPa以下であることを特徴とする変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0013】
上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、全単量体単位に対して0.025モル%以上のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)に由来する重合単位を含むことが好ましい。
【0014】
上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、破断強度が、28N以上であることが好ましく、30N以上であることがより好ましく、32N以上であることが更に好ましく、34N以上であることが特に好ましく、36N以上であることが殊更に好ましい。
【0015】
上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、平均一次粒子径が210nm以上、300nm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーから形成されたことを特徴とする一軸延伸多孔質体でもある。
【0017】
上記一軸延伸多孔質体は、膜であることが好ましい。
また、上記一軸延伸多孔質体は、チューブであることも好ましい。
さらに、上記一軸延伸多孔質体は、繊維であることも好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例で用いたロール延伸装置の概要を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダーは、非溶融二次加工性を有し、標準比重が2.155以下であり、全単量体単位に対して0.015モル%以上のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)に由来する重合単位を含み、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下に、テトラフルオロエチレンと少なくともパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を乳化共重合して得られ、押出圧力が20.0MPa以下のPTFEからなる。
本発明の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下に、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を乳化共重合することによって、PMVEに由来する重合単位が多い場合であっても延伸特性が低下せず、また、ごく一般的な成形・延伸設備を用いて、高強度、小孔径かつ均質性に優れた延伸体を得ることができる。
【0022】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、非溶融二次加工性を有する。本明細書において、上記非溶融二次加工性とは、ASTM D−1238及びD−2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、すなわち溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0023】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、標準比重(SSG)が2.155以下である。より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、標準比重(SSG)は、2.150以下であることがより好ましく、2.145以下であることが更に好ましい。
ペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、成形性にも優れる観点からは、上記標準比重(SSG)は、2.130以上であることが好ましい。
上記SSGは、溶融成形加工性を有しないポリテトラフルオロエチレンの分子量の指標としてASTM D4895−89に規定されるSSGである。
【0024】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、PTFEを構成する全単量体単位に対して0.015モル%以上のPMVEに由来する重合単位を含むPTFEからなる。
より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、上記PMVEに由来する重合単位の含有量は、全単量体単位に対して0.025モル%以上であることがより好ましい。
上記PMVEに由来する重合単位の含有量の上限は、例えば、0.150モル%である。0.150モル%を超えると延伸特性を失い、延伸時に破断しやすくなる。
また、より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、0.100モル%以下であることが好ましく、0.050モル%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、TFE及びPMVE以外の単量体に由来する重合単位を含むものであってもよく、TFE及びPMVEに由来する重合体のみからなるものであってもよいが、TFE及びPMVEに由来する重合体のみからなるものが好ましい。
TFE及びPMVE以外の単量体としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等の含フッ素オレフィン;炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール等の環式のフッ素化された単量体;パーフルオロアルキルエチレン;ω―ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。
TFE及びPMVE以外の単量体に由来する重合体の含有量は、0.0001〜0.300モル%であることが好ましく、0.010〜0.100モル%であることがより好ましい。
【0026】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下に、TFEと少なくともPMVEを乳化共重合して得られる。
LogPOWが大きい化合物は環境への負荷が懸念されており、これを考慮すると、LogPOWが3.4以下の化合物を使用することが好ましい。これまで乳化重合による含フッ素ポリマーの製造には、界面活性剤として主にパーフルオロオクタン酸アンモニウム〔PFOA〕が使用されており、PFOAはLogPOWが3.5であるので、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤に切り替えることが好ましい。
一方で、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤は乳化能に劣る問題がある。高い破断強度のポリテトラフルオロエチレンを得るためには、重合時の水性分散液の安定性が重要であると信じられており、実際に乳化能に劣る含フッ素界面活性剤を使用すると充分な破断強度が得られない。
そこで、国際公開第2009/001894号には、LogPOWが小さい含フッ素界面活性剤を水性分散液の安定性を向上させるために多量に使用する方法が記載されている。しかし、この方法により得られたポリテトラフルオロエチレンでも破断強度は充分ではない。
本発明の変性PTFEファインパウダーは、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤存在下にテトラフルオロエチレンと少なくともパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を乳化共重合することによって、PMVEに由来する重合単位の含有量が多くても延伸特性が低下せず、高強度、小孔径かつ均質性に優れた延伸体を得ることができる。
【0027】
上記含フッ素界面活性剤は、LogPOWが2.5以上であってもよいし、3.0以上であってもよい。
【0028】
上記LogPOWは、1−オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
LogPOWで表されるオクタノール/水分配係数は、カラム:TOSOH ODS−120Tカラム(φ4.6mm×250mm)、溶離液:アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速:1.0ml/分、サンプル量:300μL、カラム温度:40℃、検出光:UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0029】
上記LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003−119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、国際公開第2007/119526号、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号に記載されたもの等を使用できる。
【0030】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CF−(CF−COOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属を表す。)、一般式:
CFCFCFOCF(CF)COOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、一般式:
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、及び、一般式:
CFCFOCFCFOCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
【0031】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、一般式:
CFOCFCFOCFCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)、一般式:
CFOCFCFCFOCHFCFCOOX
(式中、Xは水素原子、NH又はアルカリ金属原子を表す。)
等も挙げることができる。
【0032】
上記含フッ素界面活性剤が塩である場合、該塩を形成する対イオンとしては、アルカリ金属イオン又はNH4+等が挙げられ、アルカリ金属イオンとしては、例えば、Na、K等が挙げられる。
【0033】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH、CFCFOCFCFOCFCOOH、CFCFOCFCFOCFCOONH、CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、CFOCFCFCFOCHFCFCOONH4、CF−(CF−COOH、CF−(CF−COONH、CFCFCFOCF(CF)COONH、CFCFCFOCF(CF)COOH等が挙げられる。
なお、上記乳化共重合の詳細は、後述する変性PTFEファインパウダーの製造方法において説明する。
【0034】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、押出圧力が20.0MPa以下である。より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、押出圧力は19.0MPa以下が好ましく、18.0MPa以下がより好ましい。
押出圧力の下限は特に限定されないが、例えば、12.0MPaである。より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、押出圧力は14.0MPa以上がより好ましく、15.0MPa以上が更に好ましい。
押出圧力が高すぎると、押出成形物が硬くなり、後述する圧延時につぶれにくくなって、圧延フィルムおよび一軸延伸膜の均質性が低下する傾向がある。
また、押出圧力が低いPTFEを用いると、二軸延伸多孔質膜の強度が低下する傾向にあるが、本発明の変性ファインパウダーは、驚くべきことに、上記範囲の押出圧力であっても優れた強度を有する。
上記押出圧力は、特開2002−201217号公報の記載に従い、下記方法で求めた値である。
まず、室温で2時間以上放置されたPTFEファインパウダー100gに潤滑剤(商品名「アイソパーH(登録商標)」、エクソン社製)21.7gを添加し、3分間混合してPTFEファインパウダー混合物を得る。
その後、得られたPTFEファインパウダー混合物を、25℃恒温槽に2時間放置した後に、リダクションレシオ(ダイスの入り口の断面積と出口の断面積の比)100、押出速度51cm/分の条件で、25℃にて、オリフィス(直径2.5mm、ランド長1.1cmm、導入角30°)を通してペースト押出しを行い、ビードを得る。
上記押出圧力は、ペースト押出しにおいて押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値である。
【0035】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、破断強度が28N以上であることが好ましい。より好ましくは、30N以上であり、更に好ましくは、32N以上であり、特に好ましくは、34N以上であり、殊更に好ましくは、36N以上である。
上記破断強度は高ければ高いほどよいが、破断強度の上限は、例えば、70Nである。
上記破断強度は、特開2002−201217号公報の記載に従い、下記方法で求めた値である。
まず、下記方法で押出ビードの延伸試験を行い、破断強度測定用のサンプルを作製する。
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分間乾燥し、潤滑剤を除去する。乾燥後のビードを適当な長さに切断し、クランプ間が5.1cmとなるよう、各末端を固定し、空気循環炉中で300℃に加熱する。次いで、クランプを総ストレッチが2400%に相当する分離距離となるまで、延伸速度100%/秒で離し、延伸試験を実施する。『総ストレッチ』とは、延伸試験前のビード長さ(100%)に対する延伸による長さの増加である。
上記延伸条件にて作成された延伸ビードを適当な長さに切断し、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、可動ジョーを300mm/分のスピードで駆動させ、引張り試験機を用いて室温にて破断強度を測定し、延伸ビードから得られる3つのサンプル、延伸ビードの各末端から1つ(クランプの範囲においてネックダウンがあればそれを除く)、およびその中心から1つ、の最小引張り破断負荷(力)を破断強度とする。
【0036】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、応力緩和時間が100秒以上であり、200秒以上であることが好ましく、300秒以上であることがより好ましい。
上記応力緩和時間は、特開2002−201217号公報の記載に従い、下記方法にて測定した値である。
クランプ間隔3.8cm、延伸速度1000%/秒に変更する以外は、上記延伸試験と同様にして乾燥後のビードを延伸し、応力緩和時間測定用のサンプルを作製する。尚、総ストレッチは2400%である。
このサンプルの両方の末端を固定具で固定し、ぴんと張り全長25cmとする。上記応力緩和時間は、このサンプルを390℃のオーブン中に挿入し、オーブンに挿入した時点からサンプルが破断するまでに要する時間である。
【0037】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、より高強度、小孔径かつ均質性に優れる延伸体を得ることができることから、平均一次粒子径が210nm以上、300nm以下であることが好ましい。
また、変性PTFEファインパウダーの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、圧延性にも優れる。
平均一次粒子径は220nm以上であることがより好ましい。
上記平均一次粒子径は、重合により得られたPTFEの水性分散液を用い、ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定できる。
【0038】
本発明の変性PTFEファインパウダーの平均粒子径は、通常、100〜1000μmである。より均質性に優れる延伸体を得ることができることから、平均粒子径は300〜800μmであることが好ましく、400〜700μmであることがより好ましい。
上記変性PTFEファインパウダーの平均粒子径は、JIS K6891に準拠して測定した値である。
【0039】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、通常、延伸性、フィブリル性および非溶融二次加工性を有する。
【0040】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、コアシェル構造を有するPTFEからなるものでもよい。コアシェル構造を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、粒子中に高分子量のポリテトラフルオロエチレンのコアと、より低分子量のポリテトラフルオロエチレンのシェルとを含むポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
このようなポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、特表2005−527652号公報に記載されるポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0041】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、多孔体の成形用材料として特に好適である。
本発明の変性PTFEファインパウダーは、例えば、薬液フィルター、エアフィルター等の各種フィルターや、メンブレン、ファイバー、ロッド、チューブ等に使用できる。また、繊維製品や医療分野、半導体分野で使用する製品の素材としても有用である。
【0042】
下記に本発明の変性PTFEファインパウダーの製造方法について説明する。
本発明の変性PTFEファインパウダーは、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤、水性媒体、TFE及びPMVE、並びに、必要に応じてTFE及びPMVE以外の単量体を重合槽に投入する工程、重合槽に重合開始剤を投入してTFE及びPMVE、並びに、必要に応じてTFE及びPMVE以外の単量体との乳化共重合を開始する工程、及び、得られたPTFE水性分散液中のPTFEを凝集させる工程、を含む製造方法により製造することができる。
TFE、PMVE、必要に応じて使用されるTFE及びPMVE以外の単量体の供給は、重合開始前に一括して添加してもよいし、連続的又は間欠的に添加してもよい。
上記製造方法は、通常、PTFEを凝集させた後のPTFE水性分散液から変性PTFEファインパウダーを回収する工程を含む。
【0043】
上記乳化共重合をより具体的な例を挙げて説明する。上記乳化共重合は、例えば、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に水性媒体及び上記含フッ素界面活性剤を仕込み、脱酸素後、テトラフルオロエチレン〔TFE〕及びPMVE、必要に応じてTFE及びPMVE以外の単量体を仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して乳化共重合を開始し、反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のTFE、並びに、必要に応じて、PMVE、TFE及びPMVE以外の単量体を連続的又は間欠的に追加供給し、所定量のTFE及び微量共単量体を供給した時点で供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了するものである。
【0044】
上記乳化共重合は、通常、水性媒体の存在下で行われる。上記乳化共重合体において、含フッ素界面活性剤の量は、水性媒体に対して0.0001〜10質量%であることが好ましい。
より好ましい下限は0.1質量%であり、より好ましい上限は2質量%、更に好ましい上限は1質量%である。少なすぎると、分散力が不充分となるおそれがあり、多すぎると、添加量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記含フッ素界面活性剤の量は、目的とするPTFEの分子量等によって適宜決定される。
また生産コストを抑制する観点からは、好ましい上限は0.5質量%であり、さらに好ましい上限は0.3質量%である。0.2質量%以下でも、安定な変性PTFEの水性分散液を得ることができる。
【0045】
上記水性媒体は、重合を行わせる媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水のみであるか、又は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0046】
上記乳化共重合における重合開始剤としては、TFEの重合において従来から使用されているものが使用できる。
上記乳化共重合における重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤等が使用できる。
上記重合開始剤の量は、少ないほど、SSGが低いPTFEを得ることができる点で好ましいが、あまりに少ないと重合速度が小さくなり過ぎる傾向があり、あまりに多いと、SSGが高いPTFEが生成する傾向がある。
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、水溶性過酸化物が挙げられ、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキサイド等の水溶性有機過酸化物等が好ましく、過硫酸アンモニウム又はジコハク酸パーオキサイドがより好ましい。
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合温度と目標とするSSGに応じて適宜選択することができるが、一般的に使用される水性媒体の質量の1〜100ppmに相当する量が好ましく、1〜20ppmに相当する量がより好ましく、1〜6ppmに相当する量が更に好ましい。
上記重合開始剤としてラジカル重合開始剤を使用する場合、重合中に亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加することによって、系内のラジカル濃度を調整することもできる。
上記重合開始剤としてラジカル重合開始剤を使用する場合、重合中にラジカル捕捉剤を添加することにより、SSGが低いPTFEを容易に得ることができる。
【0047】
上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、非置換フェノール、多価フェノール、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、キノン化合物等が挙げられるが、なかでもハイドロキノンが好ましい。
上記ラジカル捕捉剤は、SSGが低いPTFEを得る点で、重合反応に消費される全TFEの50質量%が重合される前に添加することが好ましい。より好ましくは、TFEの40質量%、更に好ましくは30質量%が重合される前に添加することである。
上記ラジカル捕捉剤は、使用される水性媒体の質量の0.1〜20ppmに相当する量が好ましく、3〜10ppmに相当する量がより好ましい。
【0048】
上記レドックス重合開始剤としては、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、過硫酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、過酸化水素等の酸化剤と、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、シュウ酸又はコハク酸等の有機酸、チオ硫酸塩、塩化第一鉄、ジイミン等の還元剤との組合せが挙げられる。上記酸化剤、還元剤いずれも1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、過マンガン酸カリウムとシュウ酸との組み合わせが好ましい。
上記レドックス重合開始剤の使用量は、使用するレドックス重合開始剤の種類、重合温度、目標とするSSGに応じて適宜選択することができるが、使用される水性媒体の質量の1〜100ppmに相当する量が好ましい。
上記レドックス重合開始剤は、上記酸化剤又は還元剤を同時に添加することで重合反応を開始しても良いし、予め上記酸化剤又は還元剤の何れか一方を槽内に添加しておき、残る一方を添加することで重合反応を開始しても良い。
上記レドックス重合開始剤は、予め上記酸化剤又は還元剤の何れか一方を槽内に添加しておき、残る一方を添加して重合を開始する場合、残る一方を連続的又は断続的に添加することが好ましい。
上記レドックス重合開始剤は、残る一方を連続的又は断続的に添加する場合、SSGが低いPTFEを得る点で、徐々に添加する速度を減速させることが好ましく、さらに重合途中で中止することが好ましく、該添加中止時期としては、重合反応に消費される全TFEの80質量%が重合される前が好ましい。TFEの65質量%が重合される前がより好ましく、TFEの50質量%が重合される前が更に好ましく、30質量%が重合される前が特に好ましい。
レドックス重合開始剤を用いる場合は水性媒体中のpHをレドックス反応性を損なわない範囲に調整するため、pH緩衝剤を用いることが望ましい。pH緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩類を用いることができ、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物が好ましい。
また、レドックス重合開始剤を用いる場合の、レドックス反応する金属イオンとしては複数のイオン価をもつ各種の金属を用いることができる。具体例としては、鉄、銅、マンガン、クロムなどの遷移金属が好ましく、特に鉄が好ましい。
【0049】
上記水性媒体は、重合を行わせる媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水のみであるか、又は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0050】
上記重合は、0.05〜5.0MPaの圧力下で行うことができる。好ましい圧力の範囲は0.5〜3.0MPaである。
【0051】
上記重合は、10〜100℃の温度で行うことができる。好ましい温度の範囲は50〜90℃である。
【0052】
上記重合において、更に、目的に応じて、公知の安定剤、連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0053】
上記安定剤としては、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素を挙げられ、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40〜65℃が好ましく、50〜65℃がより好ましい。
また、飽和炭化水素以外の安定剤として、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記安定剤は、水性媒体100質量部に対して1〜10質量部で使用することができる。
【0054】
上記連鎖移動剤としては、公知のものが使用でき、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、水素等が挙げられる。上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1〜1000ppmであり、好ましくは1〜500ppmである。
【0055】
また、水性媒体中のpHをレドックス反応性を損なわない範囲に調整するため、pH緩衝剤を用いることが望ましい。pH緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩類を用いることができ、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物が好ましい。
また、レドックス重合開始剤を用いる場合の、レドックス反応する金属イオンとしては複数のイオン価をもつ各種の金属を用いることができる。具体例としては、鉄、銅、マンガン、クロムなどの遷移金属が好ましく、特に鉄が好ましい。
【0056】
上記重合は、重合中に生じる凝固物の量を減少させるために水性媒体に対して5〜500ppmのジカルボン酸の存在下に行ってもよく、その場合、10〜200ppmのジカルボン酸の存在下に行うことが好ましい。上記ジカルボン酸が水性媒体に対して少な過ぎると、充分な効果が得られないおそれがあり、多過ぎると、連鎖移動反応が起こり、得られるポリマーが低分子量のものとなるおそれがある。上記ジカルボン酸は、150ppm以下であることがより好ましい。上記ジカルボン酸は、重合反応の開始前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。
【0057】
上記ジカルボン酸としては、例えば、一般式:HOOCRCOOH(式中、Rは炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)で表されるものが好ましく、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸がより好ましく、コハク酸が更に好ましい。
【0058】
上記PTFEの重合が終了した時点で、固形分濃度が10〜50質量%の水性分散液を得ることができる。上記水性分散液は、上記含フッ素界面活性剤、及び、ポリテトラフルオロエチレンを含有する。ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径は150〜500nmである。
【0059】
上記製造方法は、得られたPTFE水性分散液中のPTFEを凝集させる工程、凝集させて得られたPTFEを回収する工程、及び、回収したPTFEを乾燥する乾燥工程を含むことが好ましい。
上記水性分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレンを凝集させることによりPTFEファインパウダーが得られる。
上記ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液中のPTFEは、凝集、洗浄、乾燥を経てファインパウダーとして回収し、二軸延伸多孔質膜の製造に使用することができる。上記ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液に対して凝集を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて10〜20質量%のポリマー濃度になるように希釈し、5〜50℃に調整し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。凝集させる温度は使用する撹拌翼の形状やサイズ、ポリマー濃度、目的とするファインパウダーの平均粒子径に応じて、適宜選択することができる。上記凝集は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝集は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0060】
上記PTFEを凝集して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに好ましくない影響を与える。これは、この種のポリテトラフルオロエチレンからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。上記乾燥は、10〜250℃、好ましくは120〜230℃の乾燥温度で行うことができる。
【0061】
本発明の一軸延伸多孔質体は、上記変性PTFEファインパウダーから形成されるものである。上記一軸延伸多孔質体は、上記特定の変性PTFEファインパウダーから形成されるものであるため、ごく一般的な成形・延伸設備を用いて、高強度、小孔径かつ均質性に優れる。
【0062】
本発明の一軸延伸多孔質体は、シール材料、繊維または繊維原料、精密濾過フィルター等として好適に利用できる。
【0063】
本発明の一軸延伸多孔質体は、膜であることが好ましい。本発明の一軸延伸多孔質体が膜である場合、目的・用途により膜厚みを適宜調整することができる。その膜厚は、特に限定されないが、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは、10μm以上であり、更に好ましくは、20μm以上である。膜厚が薄すぎると機械的強度が低下するおそれがある。また、膜厚の上限は特に限定されないが、例えば、1mmである。
【0064】
本発明の一軸延伸多孔質体は、チューブであることも好ましい。このようなチューブは、エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材等として好適に利用できる。また、半導体分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、給気/換気/内圧調整分野、液濾過分野、水処理分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材として有用である。このようなチューブは、従来公知の方法にて製造することができる。
【0065】
本発明の一軸延伸多孔質体がチューブである場合、目的・用途によりチューブ厚みを適宜調整することができる。その膜厚は、特に限定されないが、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは、50μm以上であり、更に好ましくは、100μm以上である。膜厚が薄すぎると機械的強度が低下するおそれがある。また、膜厚の上限は特に限定されないが、例えば、5mmである。
【0066】
本発明の一軸延伸多孔質体は、繊維であることも好ましい。このような繊維は、衣類、テント膜等の織布、バグフィルター等として使用される。このような繊維は、従来公知の方法にて製造することができる。
【0067】
本発明の一軸延伸多孔質体が膜(一軸延伸多孔質膜)である場合、変性PTFEファインパウダーをペースト押出して、棒状又はシート状のペースト押出物を得るペースト押出工程、棒状又はシート状のペースト押出物を圧延して、シート状の圧延フィルム(又は圧延シート)を得る圧延工程、圧延フィルムから液状潤滑剤を除去して未焼成圧延フィルムを得る乾燥工程、必要に応じて未焼成圧延フィルムを半焼成して半焼成圧延フィルムを得る工程、得られた未焼成圧延フィルムまたは半焼成圧延フィルムを縦方向(MD)に延伸して一軸延伸多孔質体を得る一軸延伸工程、さらに必要に応じて、得られた一軸延伸多孔質体(一軸延伸膜)を、少なくとも二次融点以上の温度で熱処理する半焼成工程、又は一次融点以上の温度で熱処理する焼成工程、を含む製造方法により製造することができる。なお、上記縦方向(MD)は、長手方向、つまりペースト押出方向と同じ方向である。
【0068】
上記製造方法は、ペースト押出工程の前に、変性PTFEファインパウダーに、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどの液状潤滑剤を添加して液状潤滑剤と混合されたPTFEファインパウダーを得る工程を含むことが好ましい。上記液状潤滑剤の添加量は、後述するペースト押出条件等にもよるが、変性PTFEファインパウダー100質量部に対して、14〜34質量部であることが好ましい。
【0069】
上記ペースト押出工程は、特定の径を有するダイスや、シート形状のダイスを備えた押出機を用いて、棒状又はシート状のペースト押出物を得るものであることが好ましい。
上記ペースト押出工程において、押出圧力は、使用する押出機や、押出速度等に応じて適宜設定すればよい。
【0070】
上記ペースト押出工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質膜が得られることから、押出温度が5〜100℃であることが好ましい。より好ましくは、30〜80℃である。
【0071】
上記ペースト押出工程は、PTFEファインパウダーを予備成形して予備成形体を得て、この予備成形体を押出機に入れて押出して棒状のペースト押出物を得るものであることが好ましい。
【0072】
上記圧延工程は、圧延温度が5〜100℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。
上記圧延後の未焼成PTFEの厚みは、通常、20〜500μmであり、好ましくは50〜400μmである。
【0073】
上記乾燥工程は、常温で行ってもよいし、加熱して行ってもよい。上記のように液状潤滑剤を使用した場合、乾燥することにより液状潤滑剤を除去することができる。乾燥温度は、液状潤滑剤の種類等によるが、70〜280℃であることが好ましく、100〜250℃であることがより好ましい。
【0074】
上記圧延は、圧延ロール等を用いる方法、ベルトプレス等により行うことができる。
【0075】
上記製造方法は、必要に応じてPTFE未焼成体を半焼成してPTFE半焼成体を得る工程を含む。
上記半焼成は、PTFEの一次融点以下、かつ二次融点以上の温度で加熱するものである。
上記一次融点は、未焼成のPTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。
上記二次融点は、一次融点以上の温度(例えば、360℃)に加熱したPTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。
本明細書において、上記吸熱カーブは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。
【0076】
上記一軸延伸工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質膜が得られることから、延伸倍率が2〜50倍であることが好ましく、5〜30倍であることがより好ましい。
【0077】
上記一軸延伸工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質膜が得られることから、延伸温度が常温〜一次融点未満であることが好ましく、200〜330℃であることがより好ましく、250〜300℃であることが更に好ましい。
【0078】
上記一軸延伸工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質膜が得られることから、延伸速度が5〜2000%/秒であることが好ましく、7〜1000%/秒であることがより好ましく、10〜700%/秒であることが更に好ましい。
【0079】
一軸延伸を行う方法としては、特に限定されない。工業的にはロール延伸、熱板延伸等が挙げられる。
【0080】
本発明の一軸延伸多孔質体がチューブ(一軸延伸多孔質チューブ)である場合、変性PTFEファインパウダーをペースト押出して、チューブ状のペースト押出物を得るペースト押出工程、チューブ状のペースト押出物から液状潤滑剤を乾燥して未焼成チューブを得る乾燥工程、必要に応じて未焼成チューブを半焼成して半焼成チューブを得る工程、得られた未焼成チューブまたは半焼成チューブを縦方向(MD)に延伸して一軸延伸多孔質体を得る一軸延伸工程、さらに必要に応じて、得られた一軸延伸多孔質体(一軸延伸チューブ)を、少なくとも二次融点以上の温度で熱処理する半焼成工程、又は一次融点以上の温度で熱処理する焼成工程、を含む製造方法により製造することができる。なお、上記縦方向(MD)は、長手方向、つまりペースト押出方向と同じ方向である。
【0081】
上記製造方法は、ペースト押出工程の前に、変性PTFEファインパウダーに、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどの液状潤滑剤を添加して液状潤滑剤と混合されたPTFEファインパウダーを得る工程を含むことが好ましい。
上記液状潤滑剤の添加量は、後述するペースト押出条件等にもよるが、変性PTFEファインパウダー100質量部に対して、14〜34質量部であることが好ましい。
【0082】
上記ペースト押出工程は、特定の径を有するダイスと、ダイスより小さい径を有するコアピンを備えた押出機を用いて、チューブ状のペースト押出物を得るものであることが好ましい。
上記ペースト押出工程において、押出圧力は、使用する押出機や、押出速度等に応じて適宜設定すればよい。
【0083】
上記ペースト押出工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質チューブが得られることから、押出温度が5〜100℃であることが好ましい。より好ましくは、30〜80℃である。
【0084】
上記ペースト押出工程は、PTFEファインパウダーを予備成形して予備成形体を得て、この予備成形体を押出機に入れて押出してチューブ状のペースト押出物を得るものであることが好ましい。
【0085】
上記乾燥工程は、常温で行ってもよいし、加熱して行ってもよい。上記のように液状潤滑剤を使用した場合、乾燥することにより液状潤滑剤を除去することができる。乾燥温度は、液状潤滑剤の種類等によるが、70〜280℃であることが好ましく、100〜250℃であることがより好ましい。
【0086】
上記一軸延伸工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質チューブが得られることから、延伸倍率が1倍より大きく50倍より小さいことが好ましく、1倍より大きく〜30倍より小さいことがより好ましい。
【0087】
上記一軸延伸工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質チューブが得られることから、延伸温度が常温〜一次融点未満であることが好ましく、200〜330℃であることがより好ましく、250〜300℃であることが更に好ましい。
【0088】
上記一軸延伸工程は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質チューブが得られることから、延伸速度が1〜2000%/秒であることが好ましく、3〜1000%/秒であることがより好ましく、5〜700%/秒であることが更に好ましい。
【0089】
一軸延伸を行う方法としては、特に限定されない。一般的にはロール延伸、熱板延伸、バッチ延伸等が挙げられる。
【0090】
上記製造方法は、高強度、小孔径かつ均質性に優れる一軸延伸多孔質チューブが得られることから、二軸延伸工程の後に、熱固定する工程を含むことが好ましい。熱固定の温度は、300〜420℃であることが好ましく、350〜400℃であることがより好ましい。
【実施例】
【0091】
実施例において、各物性の測定は以下の方法により行った。
【0092】
(1)ポリマー濃度
ポリテトラフルオロエチレン水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、30分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する加熱残分の質量の割合を百分率で表した数値をポリマー固形分濃度とする。
【0093】
(2)平均一次粒子径
ポリテトラフルオロエチレン水性分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から平均一次粒子径を決定する。
【0094】
(3)微量共単量体の含量
非溶融加工性PTFEファインパウダーを高温下で溶融させて、F19−NMR測定を行い、得られる微量共単量体中の官能基に由来するシグナルから算出した。
例えば、本願実施例にて使用したPMVEの含有量は、360℃にてF19−NMR測定を行い、以下の式に基づき算出した。
微量共単量体含有量(mol%)=(4B/3)/(A+(B/3))×100
(A=−118ppm付近に現れるCFシグナルとCFシグナルとの合計、B=−52ppm付近に現れるPMVE由来のCFシグナルの積分値)
【0095】
(4)標準比重〔SSG〕
ASTM D−4895−89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定する。
【0096】
(5)RR100の押出圧力
特開2002−201217号公報の記載に従い、室温で2時間以上放置されたPTFEファインパウダー100gに潤滑剤(商品名「アイソパーH(登録商標)」、エクソン社製)21.7gを添加し、3分間混合してPTFEファインパウダー混合物を得た。
得られたPTFEファインパウダー混合物を、25℃恒温槽に2時間放置した後に、リダクションレシオ(ダイスの入り口の断面積と出口の断面積の比)100、押出速度51cm/分の条件で、25℃にて、オリフィス(直径2.5mm、ランド長1.1cmm、導入角30°)を通してペースト押出しを行い、ビードを得た。
上記押出圧力は、ペースト押出しにおいて押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値である。
【0097】
(6)破断強度
特開2002−201217号公報の記載に従い、まず、下記方法で押出ビードの延伸試験を行い、破断強度測定用のサンプルを作製した。
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分間乾燥し、潤滑剤を除去した。乾燥後のビードを適当な長さに切断し、クランプ間が5.1cmとなるよう、各末端を固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いで、クランプを総ストレッチが2400%に相当する分離距離となるまで、延伸速度100%/秒で離し、延伸試験を実施した。『総ストレッチ』とは、延伸試験前のビード長さ(100%)に対する延伸による長さの増加である。
上記延伸条件にて作成された延伸ビードを適当な長さに切断し、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、可動ジョーを300mm/分のスピードで駆動させ、引張り試験機を用いて室温にて破断強度を測定し、延伸ビードから得られる3つのサンプル、延伸ビードの各末端から1つ(クランプの範囲においてネックダウンがあればそれを除く)、およびその中心から1つ、の最小引張り破断負荷(力)を破断強度とした。
【0098】
(7)応力緩和時間
特開2002−201217号公報の記載に従い、クランプ間隔3.8cm、延伸速度1000%/秒に変更する以外は、上記延伸試験と同様にして乾燥後のビードを延伸し、応力緩和時間測定用のサンプルを作製した。尚、総ストレッチは2400%である。
このサンプルの両方の末端を固定具で固定し、ぴんと張り全長25cmとした。応力緩和時間は、このサンプルを390℃のオーブン中に挿入し、オーブンに挿入した時点からサンプルが破断するまでに要する時間として求めた。
【0099】
(8)圧延性評価
PTFEのファインパウダー100重量部あたり押出助剤として炭化水素油(出光興産株式会社製「IPソルベント2028」)を28重量部,および32重量部をそれぞれ加えて混合し、12時間静置した。
次に100φmmの予備成形機に上記ファインパウダーと押出助剤の混合物を投入し、圧力3MPaで圧縮し、プレフォームを得た。続いて、予め内径16mmφのダイスを内径100mmの押出機に、上記プレフォームを入れてペースト押出を行い、PTFE成形体を得た。
更に得られたPTFE成形体を、カレンダーロールによりフィルム状に成形(圧延)し圧延フィルムを得た。
熱風乾燥炉に通して炭化水素油を蒸発除去し、平均厚み約100μmの帯状の圧延フィルムを得た。
圧延フィルムの外観評価を行った。圧延フィルムの外観評価基準は、以下の通りである。
◎:均一
○:均一(一部にムラ)
△:ムラが多い
×:部分的に破断または亀裂等の欠陥が存在
【0100】
(9)一軸延伸評価
図1で示す複数のロールを備えた延伸装置を用い、得られた圧延フィルムを温度250℃の条件で、縦方向に15倍に延伸し、一軸延伸膜を得た。
一軸延伸膜の外観評価を行った。一軸延伸膜の外観評価基準は、以下の通りである。
○:均一
△:部分的に破断または亀裂等の欠陥が存在
×:全体的に破断又は亀裂等の欠陥が存在
【0101】
(10)一軸延伸膜の強度
一軸延伸多孔質膜から5つの試料を切り出した。各試料は、縦方向(長手方向、つまりペースト押出方向)に15.0cm、横方向(幅方向、つまりペースト押出方向とは直角方向)に2.0cmの寸法を有する。5つの試料について、縦方向の引張強度測定を行い、5つの試料それぞれが示す最大荷重を求めた。
次に、5つの試料が示した最大荷重の値のうち、最も大きな値と最も小さな値とを除き、残りの3つの値の平均値を算出し、一軸延伸膜の強度とした。
尚、上記引張強度測定は、50Nロードセルを備える引張試験機を用い、チャック長さを5.0cm、クロスヘッド速度を300mm/分として行った。
【0102】
(11)一軸延伸チューブの強度
PTFEファインパウダー100重量部に、炭化水素系薬剤であるアイソパーG20.5部を混合し、12時間静置した。次に90φmmの予備成形機に上記ファインパウダーと押出助剤の混合物を投入し、圧力3MPaで圧縮し、プレフォームを得た。続いて、予め内径16.6mmφの断面が円形のダイスと外径が14.6mmφのコアピンを備えた内径90mmφの押出機に、上記プレフォームを入れてペースト押出を行い、チューブ状のPTFE成形体を得た。得られたチューブ状のPTFE成形体を電気炉で1時間乾燥させた後、300℃の炉内でチューブ長手方向に4倍延伸した。得られた延伸後のチューブを切り開き、チューブの長手方向にASTM D1708ミクロダンベルで打ち抜き得られたサンプルを、50Nロードセルを備える引張試験機を用い、チャック長さを5.0cm、クロスヘッド速度を200mm/分として行った。
【0103】
(12)一軸延伸チューブの平均孔径
ASTM F−316−86に準拠し、ミーンフローポアサイズ(MFP)を測定し、平均孔径とした。
【0104】
実施例1
ステンレス鋼(SUS316)製アンカー型撹拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水3560ml、パラフィンワックス104g及び含フッ素界面活性剤としてCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH(界面活性剤A)5.4gを仕込み、70℃に加温しながら窒素ガスで3回、TFEガスで2回、系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで槽内圧力を0.60MPaにして250rpmで撹拌し、槽内温度を70℃に保った。
【0105】
次に、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)0.30gをTFEで圧入し、オートクレーブの槽内圧力を0.70MPaとした。
続いて、脱イオン水20mlに過硫酸アンモニウム15.4mgを溶かした水溶液をTFEで圧入し、オートクレーブの槽内圧力を0.78MPaにし、重合反応を開始した。
重合反応の進行に伴い、槽内圧力が低下するが、オートクレーブの槽内圧力を常に0.78±0.05MPaに保つようにTFEを連続的に供給した。また、槽内温度を70℃、撹拌速度を250rpmに維持した。
TFEの消費量が429gになった時点(TFEの全重合量1225gに対して、35.0質量%)で、脱イオン水20mlにラジカル補足剤としてヒドロキノン14.32mg(水性媒体に対して4.0ppm)を溶かした水溶液をTFEで圧入した。
重合はその後も継続し、TFEの消費量が1225gになった時点で、撹拌及びモノマー供給を停止して、直ちにオートクレーブ内のガスを常圧まで放出し、反応を終了させ、変性PTFEの水性分散液を得た。重合槽内のポリマー凝固物は痕跡程度であった。
【0106】
次に、攪拌翼と邪魔板を備え、内容量が6リットルの脱イオン水で希釈したPTFE水性分散液を仕込み、撹拌を開始した。このとき、硝酸を凝析槽内に仕込んだ。ポリマー粉末が水と分離した後、撹拌を停止した。得られた湿潤粉末を濾別し、新たに脱イオン水で水洗した。210℃に設定した熱風循環式乾操機にて18時間乾燥させることにより、変性PTFEファインパウダーを得た。
【0107】
実施例2
PMVEの仕込量を0.45gに変更する以外は、実施例1と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0108】
比較例1
特許第4951970号公報の実施例5記載の方法に従い、含フッ素界面活性剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)を用いて変性PTFE水性分散液を得た。
得られた変性PTFEの水性分散液を実施例1と同様にして凝析、水洗、乾燥を行い、変性PTFEファインパウダーを得た。尚、湿潤粉末の乾燥は210℃で行った。
【0109】
比較例2
湿潤粉末の乾燥温度を160℃に変更する以外は、比較例1と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0110】
比較例3
含フッ素界面活性剤をAPFO(仕込量5.4g)に変更する以外は、実施例2と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0111】
実施例1および2、比較例1〜3で得られた変性PTFE水性分散液、および変性PTFEファインパウダーについて、各種測定および評価を行った。
測定、評価結果を表1に示す。
【0112】
含フッ素界面活性剤にパーフルオロオクタン酸アンモニウムを用いた比較例1〜3では、得られた変性ファインパウダーの破断強度はいずれも30Nを超えるが、押出圧力は20MPaを超えるものであり、圧延フィルムには部分的に破断等の欠陥が存在し、外観は悪く、圧延性に劣るものであった。一方、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHを用いた実施例1、2では、得られた変性ファインパウダーの押出圧力はいずれも19MPa以下であり、破断強度はいずれも30Nを超えるものであった。圧延フィルム、および一軸延伸膜の外観にも優れるものであり、一軸延伸膜の強度も高い。
【0113】
実施例3
PMVEの仕込量を0.60gに変更する以外は、実施例1と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0114】
実施例4
実施例3で得られた湿潤粉末の乾燥温度を180℃に変更する以外は、実施例3と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0115】
実施例5
実施例3で得られた湿潤粉末の乾燥温度を160℃に変更する以外は、実施例3と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0116】
実施例6
PMVEの仕込量を0.75g、湿潤粉末の乾燥温度を180℃に変更する以外は、実施例1と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0117】
実施例7
PMVEの仕込量を1.00gに変更する以外は、実施例6と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0118】
実施例8
PMVEの仕込量を2.00gに変更する以外は、実施例6と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0119】
比較例4
含フッ素界面活性剤をAPFO(仕込量5.4g)に変更する以外は、実施例3と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0120】
比較例5
特許第4951970号公報の比較例1記載の方法に従い、含フッ素界面活性剤としてAPFOを用いて変性PTFE水性分散液を得た。得られた変性PTFEの水性分散液を実施例1と同様にして凝析、水洗、乾燥を行い、変性PTFEファインパウダーを得た。尚、湿潤粉末の乾燥は210℃で行った。
【0121】
比較例6
湿潤粉末の乾燥温度を160℃に変更する以外は、比較例5と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0122】
比較例7
特許第4951970号公報の比較例2記載の方法に従い、含フッ素界面活性剤としてAPFOを用いて変性PTFE水性分散液を得た。得られた変性PTFEの水性分散液を実施例1と同様にして凝析、水洗、乾燥を行い、変性PTFEファインパウダーを得た。尚、湿潤粉末の乾燥は210℃で行った。
【0123】
比較例8
湿潤粉末の乾燥温度を160℃に変更する以外は、比較例7と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0124】
実施例3〜8、比較例4〜8で得られた変性PTFE水性分散液、および変性PTFEファインパウダーについて、各種測定および評価を行った。測定、評価結果を表2および3に示す。
含フッ素界面活性剤にパーフルオロオクタン酸アンモニウムを用いた比較例4〜8では、得られた変性ファインパウダーはいずれも延伸時に破断した。
一方、LogPOWが3.4以下である含フッ素界面活性剤CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHを用いた実施例3〜8では、得られた変性ファインパウダーは延伸時に破断することなく延伸体が得られた。押出圧力はいずれも19MPa以下であり、破断強度は30Nを超えるものであった。圧延フィルム、および一軸延伸膜の外観にも優れるものであり、一軸延伸膜の強度も高い。
【0125】
比較例9
PMVEの仕込量を3.60gに変更する以外は、実施例1と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0126】
比較例10
PMVEの仕込量を0.11gに変更する以外は、実施例1と同様にして変性PTFEファインパウダーを得た。
【0127】
比較例11
国際公開第2010/113950号の実施例2に記載の方法に従い、ホモPTFEの水性分散液、およびホモPTFEファインパウダーを得た。
【0128】
比較例9〜11で得られた変性PTFE水性分散液、および変性PTFEファインパウダーについて、各種測定および評価を行った。
測定、評価結果を表4に示す。
PMVEの含量が高い比較例9では、得られた変性ファインパウダーはいずれも延伸時に破断した。
PMVEの含量が低い比較例10では、押出圧力は18MPa以下であるが、破断強度が28Nに満たなかった。圧延フィルム、および一軸延伸膜の外観は優れるものであったが、一軸延伸膜の強度は低く、満足できるものではなかった。
微量共単量体を仕込まずに重合したホモPTFEである比較例11では、破断強度は35Nを超える優れたものであったが、圧延フィルム、および一軸延伸膜には部分的に破断等の欠陥が存在した。一軸延伸膜の強度は低く、満足できるものではなかった。
【0129】
実施例3で得られた変性PTFEファインパウダー及び比較例11で得られたホモPTFEファインパウダーを用いて一軸延伸チューブの強度および平均孔径を測定した。
測定結果を表5に示す。
実施例3で得られた変性PTFEファインパウダーを成形した一軸延伸チューブは、比較例11で得られたホモPTFEファインパウダーを成形した一軸延伸チューブと比べて、強度が高く、平均孔径が小さかった。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の変性PTFEファインパウダーは、一軸延伸多孔質膜等の多孔質体を形成するのに有用である。
【符号の説明】
【0136】
1:圧延フィルムの巻出しロール
2:巻き取りロール
3、4、5、8、9、10、11、12:ロール
6、7:ヒートロール
図1