(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を備えた加圧式歪取装置において、
前記油圧シリンダを支持する主軸ヘッドが、前記フレームの梁部と摺動可能なスライド部に垂下され、前記主軸ヘッドは、前記梁部の下面より下方側に離間した位置に、前記下面に平行な支持板を1つ以上有すること、
前記油圧シリンダは、前記定盤の上面に対し、前記油圧シリンダのロッドを、垂直方向下向きとする姿勢で、または、前記油圧シリンダの前記ロッドを、水平方向に沿った姿勢で、前記主軸ヘッドの前記支持板に、着脱可能に懸架されること、
前記ロッドが水平方向に沿う姿勢で配置された前記油圧シリンダを保持すると共に、前記主軸ヘッドの前記支持板に懸架可能な係留部を有するシリンダ保持手段を備えていること、
を特徴とする加圧式歪取装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2の技術は、曲げ型を移動させるのに、遠隔操作で電動機を駆動して自動搬送しており、門型フレームとプレス装置本体部における搬送機構では、部品点数が増え、構造が複雑化して、装置コストが高価となる問題があった。特に、機械加工業界では近年、コスト競争が非常に激しく、製品の製造コストが安価に求められている状況の下、歪取りを行う加工者は、歪取装置に掛かる設備コストの抑制を求めていた。
【0006】
また、特許文献1,2の技術では、定盤上に載置したワークに対し、曲げ型を下向きに動作させて歪取りを行うことはできるが、ワークが、例えば、H型鋼のような断面形状(H型鋼のウェブに相当する接続部が、フランジに相当する互いに平行な平板部と直交する形状)の場合、曲げ型の動作が上下方向だけでは、歪取りが適切にできないことがある。その理由として、ワークが定盤上に載置された状態で、接続部の歪や、平板部において、その厚みを視野に入れた位置から見て、ワーク長手方向に沿う基準線に対して反る端部の歪を、曲げ型で取り除こうとすると、歪部位を挟む両端でワークを支持し、両支点の間から押圧力を掛けなければ、歪取りが効率良くできない。
【0007】
特に、例えば、全長7000mmのH型形状のワークに対し、平板部の端部で反った歪み1mmを取り除こうとする場合等では、歪み抜き作業時に、ワークの向きを変えることや、定盤上でワークを移動させることが必要となり、吊り上げてワークを動かすと、ワークの自重が大きいため、吊り上げによって、新たな歪がワークに生じてしまう。それを極力抑えるために、平板部を、その端部側から、定盤面に沿う水平方向に、より大きな押圧力で押圧する必要があるが、このような歪取り作業は、特許文献1,2の技術では、全く対応できない。加えて、歪取り作業の中には、油圧シリンダのロッド動作を速くして、比較的小さい押圧力で歪を、次々と抜き取っていく作業や、ロッド動作を遅くして、より大きな押圧力をかけて、取り除き難い歪を抜き取る作業もあり、特許文献1,2は、このような作業内容に対応した歪取装置になっていない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、安価な装置コストで、被加工物の歪を、精度良く効率的に取り除くことができる加圧式歪取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加圧式歪取装置は、上記目的を達成するために、以下の構成を有する。
(1)被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を備えた加圧式歪取装置において、前記油圧シリンダを支持する主軸ヘッドが、前記フレームの梁部と摺動可能なスライド部に垂下され、前記主軸ヘッドは、前記梁部の下面より下方側に離間した位置に、前記下面に平行な支持板を1つ以上有すること、前記油圧シリンダは、前記定盤の上面に対し、前記油圧シリンダのロッドを、垂直方向下向きとする姿勢で、または、前記油圧シリンダの前記ロッドを、水平方向に沿った姿勢で、前記主軸ヘッドの前記支持板に、着脱可能に懸架されること、
前記ロッドが水平方向に沿う姿勢で配置された前記油圧シリンダを保持すると共に、前記主軸ヘッドの前記支持板に懸架可能な係留部を有するシリンダ保持手段を備えていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する加圧式歪取装置において、前記油圧シリンダは、前記ロッドを垂直方向下向きとする姿勢で、前記梁部の前記下面と前記主軸ヘッドの前記支持板との間に収容され、前記ロッドの反対側にある反ロッド側端面が前記梁部の前記下面と平行
になるよう、前記油圧シリンダの前記ロッド
側にある端面を前記支持板に係留することにより、前記主軸ヘッドに取り付けられていること、を特徴とする。
(3)(
1)または(2)に記載する加圧式歪取装置において、前記シリンダ保持手段は、前記主軸ヘッドに対し
、垂直方向に沿う軸を中心に、前記係留部を前記主軸ヘッドの前記支持板に回動可能に係留することにより、前記主軸ヘッドに取り付けられること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(
3)のいずれか1つに記載する加圧式歪取装置において、被加工物に有した歪の状態を、定量的に把握可能な歪量把握手段を備えていること、を特徴とする。
【0010】
(5)(
4)に記載する加圧式歪取装置において、前記歪量把握手段は、前記スライド部に取付けられ、前記フレームの前記梁部と相対的に移動可能に設けられていること、を特徴とする。
(6)(
4)または(
5)に記載する加圧式歪取装置において、歪を含む前記被加工物の表面から離れた原点位置と、前記被加工物の表面に対し、計測時に正とする基準部位である計測基準位置と、前記計測基準位置と異なる部位にある1つ以上の計測対比位置と、を設定し、前記計測基準位置と前記原点位置との距離を基準距離とし、前記計測対比位置と前記原点位置との距離を対比距離とすると、前記歪量把握手段は、前記基準距離と前記対比距離との相対的な距離差に基づいて、歪の大きさを計測する歪量計測手段であること、を特徴とする。
(7)(
6)に記載する加圧式歪取装置において、前記歪量計測手段は、前記油圧シリンダの前記ロッドの動作方向に沿う方向に動作可能に配設され、前記被加工物の表面に接触可能な被加工物接触部と、動いた分の前記被加工物接触部の変位を検知する変位検出部と、前記変位検出部により検出された変位を表示する表示部と、を有すること、を特徴とする。
(8)(
7)に記載する加圧式歪取装置において、前記歪量計測手段は、流体の流れを制御することにより、ピストンロッドがシリンダと相対的に伸縮する計測用流体シリンダを有しており、前記被加工物接触部は、前記ピストンロッドに連結され、前記ピストンロッドの動きに連動して動作すること、前記変位検出部は、前記ピストンロッドのストローク範囲内で、動いた分の前記ピストンロッドの変位を検知すること、を特徴とする。
(9)(1)乃至(
8)のいずれか1つに記載する加圧式歪取装置において
、前記定盤は、骨材を組み合わせて構成された定盤フレームに、板材が溶接された溶接構造で形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する本発明の加圧式歪取装置の作用・効果について説明する。
本発明の加圧式歪取装置では、被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を備えた加圧式歪取装置において、油圧シリンダを支持する主軸ヘッドが、フレームの梁部と摺動可能なスライド部に垂下され、主軸ヘッドは、梁部の下面より下方側に離間した位置に、下面に平行な支持板を1つ以上有すること、油圧シリンダは、定盤の上面に対し、油圧シリンダのロッドを、垂直方向下向きとする姿勢で、または、油圧シリンダのロッドを、水平方向に沿った姿勢で、主軸ヘッドの支持板に、着脱可能に懸架されること、を特徴とする。この特徴により、歪み抜き作業時に、歪み抜きを行う部位によって、被加工物の向きを変えることや、定盤上で被加工物を移動させる頻度が低減できるため、自重が大きい被加工物の吊り上げによって、新たな歪が被加工物に生じるのが抑制できる。そのため、被加工物の歪み抜きが、より短い時間で、かつ高い精度で、効率良くできる。また、本発明の加圧式歪取装置のコストが安価である上に、この加圧式歪取装置を用いた歪み抜き作業では、製品の製造コストうち、被加工物の加工を主とする一次工程(プレス工程、曲げ工程等)を行うことにより、副次的に生じてしまう二次工程(歪取り工程、バリ取り工程等)のコストを抑制することができる。
【0012】
従って、本発明に係る加圧式歪取装置によれば、安価な装置コストで、被加工物の歪を、精度良く効率的に取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0013】
また、本発明の加圧式歪取装置では、油圧シリンダは、ロッドを垂直方向下向きとする姿勢で、梁部の下面と主軸ヘッドの支持板との間に収容され、ロッドの反対側にある反ロッド側端面が梁部の下面と平行となるよう、油圧シリンダのロッド側端面を支持板に係留することにより、主軸ヘッドに取り付けられていること、を特徴とする。この特徴により、油圧シリンダのロッド動作を速くして、比較的小さい押圧力で歪を、次々抜き取っていく作業や、ロッド動作を遅くして、より大きな押圧力をかけて、取り除き難い歪を抜き取る作業を行う場合に、その作業に適したシリンダ径(ロッド径)の油圧シリンダを、主軸ヘッドに取付けることや、主軸ヘッドから取り外すことが簡単にできる。そのため、歪取り作業の段取りが効率良くできる。
【0014】
また、本発明の加圧式歪取装置では、ロッドが水平方向に沿う姿勢で配置された油圧シリンダを保持すると共に、主軸ヘッドの支持板に懸架可能な係留部を有するシリンダ保持手段を備えていること、を特徴とするので、例えば、
図23に示すように、全長7000mm、H型形状で、自重が大きい被加工物等が定盤上に載置された状態で、接続部の歪や、平板部において、その厚みを視野に入れた位置から見て、ワーク長手方向に沿う基準線に対して反る端部の歪を取り除こうとするとき、歪部位を挟む両端で被加工物を支持し、両支点の間から押圧力を水平方向に掛けて、歪取りが効率良くできる。
【0015】
また、本発明の加圧式歪取装置では、シリンダ保持手段は、主軸ヘッドに対し、垂直方向に沿う軸を中心に、係留部を主軸ヘッドの支持板に回動可能に係留することにより、主軸ヘッドに取り付けられること、を特徴とするので、例えば、
図23に示すように、全長7000mm、H型形状の被加工物の長手方向に生じた平板部の歪を取り除く場合等に、ロッドが垂直方向に沿う姿勢で配置された油圧シリンダで歪み抜き作業を行う場合に比して、歪み抜きを行う部位によって、自重が大きい被加工物の向きを変えることや、定盤上で被加工物を移動させる頻度を低減することができる。
【0016】
また、本発明の加圧式歪取装置では、被加工物に有した歪の状態を、定量的に把握可能な歪量把握手段を備えていること、を特徴とする。この特徴により、作業者が被加工物の歪部位の歪量を知得する上で必要な計測作業に対し、ハイトゲージ等の計測機器を用いて糸と歪部位との距離を測定した従来の計測作業が、被加工物の歪取り作業で全く不要となり、歪取り作業に係る生産性と効率が、従来の計測作業を含んだ歪取り作業に比して、大幅に向上する。また、歪取り作業に掛かる時間や、作業者の手間が、大幅に削減できる。
【0017】
また、本発明の加圧式歪取装置では、歪量把握手段は、スライド部に取付けられ、フレームの梁部と相対的に移動可能に設けられていること、を特徴とする。この特徴により、油圧シリンダの押圧力で被加工物の歪を取り除くのにあたり、歪量把握手段によりその歪の大きさを把握することが、被加工物に押圧力を掛けるその位置で可能となり、作業の段取りも簡素化できる。特に、定盤の上面に載置された被加工物に、歪部位が複数箇所に亘って分散している場合、複数の歪部位に対して、一箇所毎に順に歪取り作業を行うとき、必要に応じてフレームやスライド部を移動するだけで、それぞれの歪部位で、歪量の把握と押圧力よる押圧の2工程を、合理的にかつ容易に行うことができる。そのため、歪取り作業に対し、作業者に掛かる作業負担を削減することができる。また、歪取り作業の生産性が向上するため、歪取りを行う加工コストの低減化に寄与することができる。
【0018】
また、本発明の加圧式歪取装置では、歪を含む被加工物の表面から離れた原点位置と、被加工物の表面に対し、計測時に正とする基準部位である計測基準位置と、計測基準位置と異なる部位にある1つ以上の計測対比位置と、を設定し、計測基準位置と原点位置との距離を基準距離とし、計測対比位置と原点位置との距離を対比距離とすると、歪量把握手段は、基準距離と対比距離との相対的な距離差に基づいて、歪の大きさを計測する歪量計測手段であること、を特徴とする。この特徴により、作業者は、被加工物に生じた歪部位の歪量を、より正確な数値で把握できるため、得られた距離差に基づいて、油圧シリンダの押圧力を歪部位に掛ける位置や、掛ける押圧力の大きさを、適切に判断することができる。ひいては、より精度の高い歪取りが実現できるため、歪取り後の被加工物(製品)の付加価値を高めることができる。
【0019】
また、本発明の加圧式歪取装置では、歪量計測手段は、油圧シリンダのロッドの動作方向に沿う方向に動作可能に配設され、被加工物の表面に接触可能な被加工物接触部と、動いた分の被加工物接触部の変位を検知する変位検出部と、変位検出部により検出された変位を表示する表示部と、を有すること、を特徴とする。この特徴により、被加工物接触部のうち、被加工物の表面に接触可能な押圧ヘッドが、直に被加工物の表面に接触するまでの、動いた分の被加工物接触部の変位が、変位検出部により検出されるため、表示部に表示される変位は、信頼性の高い測定値となる。
【0020】
また、本発明の加圧式歪取装置では、歪量計測手段は、流体の流れを制御することにより、ピストンロッドがシリンダと相対的に伸縮する計測用流体シリンダを有しており、被加工物接触部は、ピストンロッドに連結され、ピストンロッドの動きに連動して動作すること、変位検出部は、ピストンロッドのストローク範囲内で、動いた分のピストンロッドの変位を検知すること、を特徴とする。この特徴により、被加工物の表面に接触する部材として、例えば、押圧ヘッド等において、歪量の計測時に、歪量の計測の起点となる押圧ヘッド等の動作開始位置と、被加工物の表面に接触した状態になった接触位置との距離が、直進性の精度を高くして構成されたピストンロッドの移動量に基づいているため、検知される変位の精度も高くなる。また、先に例示した押圧ヘッド等は、歪部位の歪取りを行うのにあたり、被加工物の歪部位を押圧する役割を担うと共に、その歪部位の歪量を計測するのにあたり、被加工物の表面に接触する測定触子としての役割をも、併用させることができるため、本発明の加圧式歪取装置の構造が簡素化でき、歪取り作業をより合理的に行うことができる。
【0021】
また、本発明の加圧式歪取装置では、定盤を備え、定盤は、骨材を組み合わせて構成された定盤フレームに、板材が溶接された溶接構造で形成されていること、を特徴とするので、載置する被加工物の大きさ、本発明の加圧式歪取装置の設置スペース等の仕様に応じて、定盤の上面の大きさが、製造する当該加圧式歪取装置毎に異なっていても、定盤を鋳物で形成する場合に比して、定盤の製造が簡単で、製造期間が短くできるため、定盤のコストが安価にできる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る加圧式歪取装置について、実施形態1,2を図面に基づいて詳細に説明する。実施形態1,2の加圧式歪取装置は、例えば、H型形状の鋼材同士を、その繋ぎ目に平板を当て溶接で繋ぎ合わせた全長7000mmのワーク(被加工物)の長手方向に対し、その直交する方向に部分的に1mm程度反った歪み等を取り除く目的で用いられる。
【0024】
(実施形態1)
図1は、実施形態に係る加圧式歪取装置であり、主軸ヘッドに油圧シリンダを取付けた状態の加圧式歪取装置を示す正面図である。
図1に示す加圧式歪取装置の門型フレームの平面図を
図3に、その側面図を
図4に、それぞれ示す。
図6は、加圧式歪取装置に構成された定盤を、下方から見た平面図であり、その側面図を
図7に示す。
【0025】
加圧式歪取装置1は、ワークW(被加工物)を載置する定盤2と、この定盤2の左右方向RLを跨ぐと共に、左右方向RLかつ上下方向(垂直方向VT)と直交する前後方向FRに移動可能な門型形状の門型フレーム10(フレーム)と、押圧力を発生させる油圧シリンダ70と、を備えている。油圧シリンダ70を保持する主軸ヘッド40が、門型フレーム10の梁部15と摺動可能なスライド部30に、垂下して設けられている。定盤2は、鋼材4(骨材)により、四角枠状に組み合わせた枠内に、リブを縦横にクロスして剛性と強度を高めた定盤フレーム3に、板材5を溶接で固着して形成されている。
【0026】
定盤2は、定盤フレーム3と板材5との溶接構造で形成されているため、載置するワークWの大きさ、加圧式歪取装置1の設置スペース等の仕様に応じて、上面2aの大きさが、製造する加圧式歪取装置1毎に異なっていても、定盤を鋳物で形成する場合に比して、定盤2の製造が簡単で、製造期間が短くできるため、定盤2のコストが安価にできる。なお、本実施形態1では、定盤2を構成した加圧式歪取装置1を挙げて説明しているが、
図1に示す定盤2に代えて、加圧式歪取装置1の使用者が所有する既存の設備のテーブル(定盤2に相当する部分)に、
図2に示す門型フレーム10を取付けて、加圧式歪取装置1Aとしても良い。また、
図5に示すように、一部が左右方向RL両側の上面側ローラ13より内側に突出した柱部11Aと、梁部15とを門型に組み付けた門型フレーム10Aであっても良い。
【0027】
門型フレーム10は、2つの柱部11,11を梁部15で門型形状に繋ぎ合わされている。門型フレーム10の柱部11には、油圧シリンダ70に作動油を供給する油圧ユニット73が、ブラケット75上に設けられている。柱部11,11の下端にそれぞれ、定盤2の板材5と係合する受け部12を有しており、受け部12が、板材5と共に、油圧シリンダ70で発生した垂直方向下向きの押圧力の反力を受ける。また、各柱部11の下端には、定盤2の上面2aを、前後方向FRに相対的に転動する上面側ローラ13が2つ設けられ、上面側ローラ13が上面2aを走行することにより、門型フレーム10が、前後方向FRに移動し易くなっている。さらに、各柱部11の下端には、定盤2の側面2bを、前後方向FRに相対的に転動する端面側ローラ14が2つ設けられている。
【0028】
スライド部30は、梁部15を全周覆う略口字型形状で、梁部15と自在に着脱できる構造で形成されている。梁部15の下面15aの反対側には、互いに平行な2つのカム転動面17が、梁部15の長手方向(左右方向RL)に延設されており、このスライド部30は、これらのカム転動面17を転動しながら走行するカムフォロア31を4つ有している。梁部15に対するスライド部30の移動は、作業者による手動動作で行われる。転動面17,17同士の間には、溝16が凹設され、この溝16の上方位置に、ヘッド固定具32が設けられている。このヘッド固定具32は、スライド部30を梁部15に向けて締め込むことにより、梁部15の所定位置で、スライド部30を固定させる。
【0029】
(実施例1)
実施例1は、主軸ヘッド40に油圧シリンダ70を取付け、油圧シリンダ70のロッド71による押圧力Fを上方から下方に作用させて、ワークWの歪取りを行う場合である。
図8は、
図1に示す加圧式歪取装置のうち、スライド部及び主軸ヘッドを示す側面図であり、門型フレームの梁部を断面で示した図であり、
図8に示す主軸ヘッドを下方から見た平面図を、
図9に示す。主軸ヘッド40は、
図8に示すように、門型フレーム10の梁部15と摺動可能なスライド部30と、着脱可能に一体化して設けられている。主軸ヘッド40は、梁部15の下面15aより下方側に離間した位置に、下面15aに平行な支持板41を1つ以上(
図8には1つ)有している。支持板41は、四角形状の板材の一辺を、
図9に示すように、奥側に向けて半円弧状に切り欠いた切欠き41aを有しており、支持板41は、切欠き41aのある一辺側を開口し、その他の三辺に沿う周囲を側板で覆って、油圧シリンダ70の収納スペースである空間を内部に形成した箱状となっている。
【0030】
油圧シリンダ70は、定盤2の上面2aに対し、油圧シリンダ70のロッド71を、垂直方向VT下向きとする姿勢で、主軸ヘッド40の支持板41に、着脱可能に懸架される。具体的には、油圧シリンダ70は、梁部15の下面15aと主軸ヘッド40の支持板41との間に収容され、ロッド71の反対側にある反ロッド側端面72bが梁部15の下面15aと平行となるよう、油圧シリンダ70のロッド側端面72aを支持板41に係留することにより、主軸ヘッド40に載置されて取り付けられる。すなわち、油圧シリンダ70のロッド側端面72aの外径は、支持板41の切欠き41aにおいて、円弧の曲率半径より大きく、ロッド側端面72aの外周縁が、切欠き41aの外周縁上に載置されることにより、油圧シリンダ70が主軸ヘッド40に保持される。
【0031】
ところで、歪取り作業の中には、油圧シリンダ70のロッド動作を速くして、比較的小さい押圧力で歪を、次々と抜き取っていく作業や、ロッド動作を遅くして、より大きな押圧力をかけて、取り除き難い歪を抜き取る作業もある。このような作業で、比較的小さな押圧力を必要とする場合には、シリンダ径(ロッド径)が小径の油圧シリンダ70が用いられ、より大きな押圧力を必要とする場合には、シリンダ径(ロッド径)が大径の油圧シリンダ70が用いられる。本実施形態では、油圧シリンダ70は、ボルト締結等の固定手段により、主軸ヘッド40に固定することもなく、支持板41に載置されているだけである。そのため、油圧シリンダ70の交換は、油圧ユニット73から延びる図示しない油圧ホースを、交換前の油圧シリンダ70のカプラ74側で抜き取り、交換する油圧シリンダ70のカプラ74に接続するだけで良く、作業性が非常に良い。
【0032】
油圧シリンダの推力が異なると、油圧シリンダの径が異なるため、必要とする推力に合わせた油圧シリンダ70を、主軸ヘッド40の支持板41に載置できるよう、切欠き41aの円弧の曲率半径が、載置する油圧シリンダ70の径に合わせて調整される。
図10〜
図14に示すように、その調整は、曲率半径R1,R2(R1≠R2)が異なるスペーサ42(42B,42C)を支持板41に重ね置きすることのほか、用いる油圧シリンダ70の径に合わせて、切欠き41aの円弧の曲率半径を設定した支持板41を備えた主軸ヘッド40を、スライド部30に取り付けても良い。また、載置する油圧シリンダ70の径が異なると、主軸ヘッド40の内部空間の隙間調整が必要となることもあり、この場合には、スペーサ42(42A,42D,42E)を油圧シリンダ70周りに配設しても良い。
【0033】
(実施例2)
実施例2は、油圧シリンダ70を保持するシリンダ取付け具50(シリンダ保持手段)を、主軸ヘッド40に取付けて、油圧シリンダ70のロッド71による押圧力Fを水平方向に作用させて、ワークWの歪取りを行う場合である。
図15は、実施形態の実施例2に係る加圧式歪取装置の正面図であり、主軸ヘッドにシリンダ取付け具を取付けた状態の加圧式歪取装置を示す図である。
図16は、
図15に示す加圧式歪取装置の側面図であり、定盤の図示を省略した図である。
【0034】
加圧式歪取装置1による歪取り作業は、例えば、歪が生じたワークWの形状や自重、歪を押圧する位置、歪取りの精度等の作業条件に応じて、油圧シリンダ70による押圧力の向きを選択的に変えて行われる。実施例1では、油圧シリンダ70は、主軸ヘッド40に直接取付けられたが、本実施例2では、
図15及び
図16に示すように、主軸ヘッド40が、シリンダ取付け具50を支持し、油圧シリンダ70は、このシリンダ取付け具50に取り付けて保持される。
【0035】
図17は、
図15に示す加圧式歪取装置のうち、スライド部及び主軸ヘッドの正面図であり、その側面図であり、門型フレームの梁部を断面で示した図を、
図18に示す。
図19は、
図15に示す加圧式歪取装置の平面図であり、カムフォロアをカバーで覆った状態を示す図である。油圧シリンダ70は、定盤2の上面2aに対し、ロッド71を、水平方向HZ(左右方向RL、前後方向FR)に沿った姿勢で、主軸ヘッド40の支持板41に、着脱可能に懸架される。具体的には、梁部15の下面15aより下方側に離間した位置に、下面15aに平行な支持板41を1つ以上(
図17には3つ)有している。3つの支持板41は、ワークWの歪取りを行う高さに応じて、油圧シリンダ70のロッド71による押圧位置を変化させるため、シリンダ取付け具50を吊るす垂直方向VTの位置を調整するために設けられる。支持板41は、四角形状の板材の一辺を、
図9に示すように、奥側に向けて半円弧状に切り欠いた切欠き41aを有しており、支持板41は、
図17に示すように、切欠き41aのある一辺側を開口し、その他の三辺に沿う周囲を側板で覆って、シリンダ取付け具50の係留部51の収納スペースである空間を内部に形成した箱状となっている。
【0036】
図20は、
図15に示す加圧式歪取装置のうちのシリンダ取付け具の正面図であり、その側面図を
図21に、その平面図を
図22に、それぞれ示す。シリンダ取付け具50は、ロッド71が水平方向HZに沿う姿勢で配置された油圧シリンダ70を保持すると共に、主軸ヘッド40の3つの支持板41に懸架可能な係留部51を有している。このシリンダ取付け具50は、主軸ヘッド40に対し、
図15に示すように、垂直方向VTに沿う軸Mを中心に、係留部51を主軸ヘッド40の支持板41に回動可能に係留することにより、主軸ヘッド40に取り付けられる。
【0037】
具体的には、シリンダ取付け具50では、
図20〜
図22に示すように、シリンダ支持部53と、被加工物支持部54とが、主軸52に連結する中間支持部材を挟んで配置され、シリンダ支持部53と、被加工物支持部54と、中間支持部材の両端部が、接続部55により連接されている。油圧シリンダ70は、ロッド71を、定盤2の上面2aと平行な水平方向HZに沿った姿勢で、シリンダ支持部53に取り付けられている。支持板41の切欠き41aの曲率半径より、径大な外径を有する円板状の係留部51が、主軸52に、本実施例2では、2つ形成されている。
【0038】
シリンダ取付け具50は、梁部15の下面15aより下方で、主軸ヘッド40の内部空間に係留部51を収容して、支持板41の切欠き41aに係留することにより、主軸ヘッド40に吊り下げられて取り付けられる。係留部51が主軸ヘッド40の支持板41と相対的に回転することにより、このシリンダ取付け具50が180度回転できる。
【0039】
図23は、
図15に示す加圧式歪取装置により、歪取りを行うワークを模式的に示した斜視図であり、
図23に示すワークとは別のワークを模式的に示した説明図を、
図24に示す。一例として、
図23に示すワークWは、板材を、例えば、全長7000mm、幅100mm、高さ500mm等、H型鋼材のような形状に溶接したフレームであり、輸送用車両の床材に用いられるものである。ワークWには、太字の矢印に示すように、溶接に起因した反りが生じており、例えば、ワークWの長手方向に対し、1mm程度のこの反り、すなわち歪や、
図24に示すワークWに生じた歪が、加圧式歪取装置1によって取り除かれる。ワークWに生じた歪を取り除くとき、
図20に示すように、油圧シリンダ70のロッド71とワークWとの間に介在物56を挟み込み、被加工物支持部54の反力支持部57にワークWを当接した状態で、油圧シリンダ70による押圧力を、介在物56を介してワークWの歪部位に作用させる。
【0040】
以上、詳細に説明したように本実施形態1に係る加圧式歪取装置1では、ワークWを載置する定盤2の左右方向RLを跨ぐと共に、左右方向RLかつ上下方向(垂直方向VT)と直交する前後方向FRに移動可能な門型フレーム10,10Aと、押圧力を発生させる油圧シリンダ70と、を備えた加圧式歪取装置1,1Aにおいて、油圧シリンダ70を支持する主軸ヘッド40が、門型フレーム10,10Aの梁部15と摺動可能なスライド部30に垂下され、主軸ヘッド40は、梁部15の下面15aより下方側に離間した位置に、下面15aに平行な支持板41を1つ以上有すること、油圧シリンダ70は、定盤2の上面2aに対し、ロッド71を、垂直方向VT下向きとする姿勢で、または、ロッド71を、水平方向HZに沿った姿勢で、主軸ヘッド40の支持板41に、着脱可能に懸架されること、を特徴とする。この特徴により、歪み抜き作業時に、歪み抜きを行う部位によって、ワークWの向きを変えることや、定盤2の上面2aでワークWを移動させる頻度が低減できるため、自重が大きいワークWの吊り上げによって、新たな歪がワークWに生じるのが抑制できる。そのため、ワークWの歪み抜きが、より短い時間で、かつ高い精度で、効率良くできる。また、加圧式歪取装置1のコストが安価である上に、この加圧式歪取装置1を用いた歪み抜き作業では、製品の製造コストうち、ワークWの加工を主とする一次工程(プレス工程、曲げ工程等)を行うことにより、副次的に生じてしまう二次工程(歪取り工程、バリ取り工程等)のコストを抑制することができる。
【0041】
従って、本実施形態1に係る加圧式歪取装置1によれば、安価な装置コストで、ワークWの歪を、精度良く効率的に取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0042】
また、本実施形態1に係る加圧式歪取装置1では、油圧シリンダ70は、ロッド71を垂直方向VT下向きとする姿勢で、梁部15の下面15aと主軸ヘッド40の支持板41との間に収容され、ロッド71の反対側にある反ロッド側端面72bが梁部15の下面15aと平行となるよう、油圧シリンダ70のロッド側端面72aを支持板41の切欠き41aに係留することにより、主軸ヘッド40に取り付けられていること、を特徴とする。この特徴により、油圧シリンダ70のロッド動作を速くして、比較的小さい押圧力で歪を、次々抜き取っていく作業や、ロッド動作を遅くして、より大きな押圧力をかけて、取り除き難い歪を抜き取る作業を行う場合に、その作業に適したシリンダ径(ロッド径)の油圧シリンダ70を、主軸ヘッド40に取付けることや、主軸ヘッド40から取り外すことが簡単にできる。そのため、歪取り作業の段取りが効率良くできる。
【0043】
また、本実施形態1に係る加圧式歪取装置1では、ロッド71が水平方向HZに沿う姿勢で配置された油圧シリンダ70を保持すると共に、主軸ヘッド40の支持板41の切欠き41aに懸架可能な係留部51を有するシリンダ取付け具50を備えていること、を特徴とする。この特徴により、例えば、
図23に示すように、全長7000mm、H型形状で、自重が大きいワークWが定盤2の上面2a上に載置された状態で、接続部の歪や、平板部において、その厚みを視野に入れた位置から見て、ワーク長手方向に沿う基準線に対して反る端部の歪を取り除こうとするとき、歪部位を挟む両端でワークWを支持し、両支点の間から押圧力を水平方向HZに掛けて、歪取りが効率良くできる。
【0044】
また、本実施形態1に係る加圧式歪取装置1では、シリンダ取付け具50は、主軸ヘッド40に対し、垂直方向VTに沿う軸Mを中心に、係留部51を主軸ヘッド40の支持板41の切欠き41aに回動可能に係留することにより、主軸ヘッドに取り付けられること、を特徴とするので、例えば、
図23に示すように、全長7000mm、H型形状のワークWの長手方向に生じた平板部の歪を取り除く場合等に、ロッドが垂直方向に沿う姿勢で配置された油圧シリンダで歪み抜き作業を行う場合に比して、歪み抜きを行う部位によって、自重が大きいワークWの向きを変えることや、定盤2の上面2aでワークWを移動させる頻度を低減することができる。
【0045】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る加圧式歪取装置について、説明する。前述した実施形態1の加圧式歪取装置1では、油圧シリンダ70を直接的に、または間接的に支持する主軸ヘッド40だけが、スライド部30に取り付けられていた。本実施形態2の加圧式歪取装置では、このような主軸ヘッドに加えて、歪量計測手段である歪量計測ユニットが、スライド部毎に設けられている。従って、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、その他について説明を簡略または省略する。
【0046】
図25は、実施形態2に係る加圧式歪取装置を示す図であり、歪量計測ユニット付きのスライド部を2つ取付けた加圧式歪取装置の正面図である。なお、
図25では、説明の都合上、左側に図示した歪量計測ユニット付きのスライド部については、カバーを外した図示となっているため、歪量計測ユニットの表示部は図示されていないが、実際には、歪量計測ユニットの表示部は、左右両側のスライド部に取り付けられている。
図26は、
図25に示す加圧式歪取装置の平面図であり、その側面図を
図27に示す。なお、前述の実施形態1と同様、本実施形態2でも、図面を見易くするため、
図25以降の各図は、電気配線、油圧配管、エア配管、配管機器等の図示を省略している。
【0047】
本実施形態2では、油圧シリンダ70のロッド71による押圧力Fを上方から下方に作用させてワークWの歪取りを行う垂直方向押圧機能(
図25中、右側)と、油圧シリンダ70のロッド71による押圧力Fを水平方向に作用させてワークWの歪取りを行う水平方向押圧機能(
図25中、左側)とを兼ね備えた加圧式歪取装置101を挙げて説明する。
【0048】
はじめに、加圧式歪取装置101の門型フレーム110について、説明する。
図28は、
図25中、X部の拡大図であり、
図25中、A−A矢視方向から見た上面側ローラの取付部の構造を示す説明図を、
図29に示す。門型フレーム110は、2つの柱部111,111を梁部115で門型形状に繋ぎ合わされている。
図28及び
図29に示すように、各柱部111の下方に配設した上面側ローラ取付部119には、軸心t1を中心に回転する上面側ローラ113が、2つ設けられている。この2つの上面側ローラ113は、定盤102の上面102aを、前後方向FRに相対的に転動しながら走行する。上面側ローラ取付部119は、カバー120で覆われている。
【0049】
また、各柱部111の下端側に配設したブラケットには、軸心t2を中心に回転する端面側ローラ114が、2つ設けられている。この2つの端面側ローラ114は、定盤102の両側面102bで、各側面102bに配設した側部ローラ転動面106を、前後方向FRに相対的に転動しながら走行する。上面側ローラ113と端面側ローラ114において、グリス等の潤滑剤が、常に回転軸に注入された状態になっているため、上面側ローラ113や端面側ローラ114は滑らかに回転する。
【0050】
門型フレーム110は、定盤102の上面102aに対し、4つの上面側ローラ113による転動走行と、定盤102の側部ローラ転動面106に対し、4つの端面側ローラ114による転動走行とにより、前後方向FRに移動する。特に、この門型フレーム110は、
図26及び
図27等に示すように、コ字型形状の鋼材や、平板状の鋼材等を溶接で立体的に組み付けた構造であるため、耐強度と高剛性を確保しながらも、比較的軽量に構成されている。この門型フレーム110の移動は、作業者による手押し動作によって行われるが、4つの上面側ローラ113と4つの端面側ローラ114による転動走行により、門型フレーム110は、比較的小さな外力(例えば、大人が片手で軽く押す程度の力)でも、ハンドル134を使ってスムーズに移動し易くなっている。
【0051】
門型フレーム110では、定盤102の板材105の端部と係合する受け部112が、柱部111,111の下端にそれぞれ設けられており、垂直方向押圧機能を利用するときに、この受け部112が、板材105と共に、油圧シリンダ70で発生した押圧力の反力を受ける。また、門型フレーム110は、左右方向RLに対し、一方側で2つの端面側ローラ114を側部ローラ転動面106に当接させ、他方側で2つの端面側ローラ114を側部ローラ転動面106に当接させることにより、左右方向RLへの振れを抑えて定盤102に取り付けられている。
【0052】
次に、スライド部130について、説明する。スライド部130は、梁部115を全周覆う略口字型形状で、梁部115と自在に着脱できる構造で形成されている。梁部115の下面115aの反対側には、互いに平行な2つのカム転動面117が、梁部115の長手方向(左右方向RL)に延設されており、梁部115の側面にそれぞれ、互いに平行な2つの梁部ローラ転動面118が、梁部115の長手方向に延設されている。スライド部130は、4つのカムフォロア131がカム転動面117を転動しながら走行すると共に、両側面で計8つの梁部ローラ132が梁部ローラ転動面118を転動しながら走行することにより、梁部115を相対的に移動する。このスライド部130の移動は、ハンドル134を用いて、作業者による手動動作で行われ、比較的小さな外力(例えば、大人が片手で軽く押す程度の力)で、スムーズに移動する。スライド部130の固定は、実施形態1と同様、図示しないヘッド固定具で行う。
【0053】
図30は、
図25に示す加圧式歪取装置のうち、主軸ヘッド及び歪量計測ユニット付きのスライド部を示す側面図であり、門型フレームの梁部を断面で示した図である。
図31は、
図30中、B−B矢視方向から見た図であり、主軸ヘッドの構造と歪量計測ユニットの一部の構造を示す説明図である。
図32は、
図30中、Y部の拡大図である。主軸ヘッド140は、梁部115の下面115aより下方側に離間した位置に、下面115aに平行な第1支持板141(支持板)を1つ以上(
図30には1つ)有している。第1支持板141は、スライド部130の下側側面部に接続した4つの支持板懸架部材142により、吊設されている。第1支持板141は、四角形状の板材の一辺を、
図31に示すように、奥側に向けて半円弧状に切り欠いた切欠き141aを有している。
【0054】
加圧式歪取装置101で、垂直方向押圧機能(
図25中、右側)を利用する場合には、油圧シリンダ70は、ロッド側端面72a(
図33参照)を第1支持板141の切欠き141aの外周縁上に載置することにより、第1支持板141に保持される。第1支持板141には、切欠き141aの開口に対し、開閉可能な安全バー143が、取り付けられており、何らかの理由で、載置した油圧シリンダ70が第1支持板141の開口から外れて落下してしまうのを防止している。
【0055】
次に、歪量計測ユニット180について、説明する。
図33は、実施形態2に係る加圧式歪取装置に構成された押圧ヘッドとヘッド位置調整部材を示す説明図である。
図34は、歪量計測ユニットの表示部を示す説明図である。歪量計測ユニット180は、ワークWに有する歪の状態を、定量的に把握可能な歪量把握手段の一つとして、1つのスライド部130に1つ取付けられ、フレーム110の梁部115と相対的に移動可能に設けられている。この歪量計測ユニット180は、油圧シリンダ70のロッド71の動作方向に沿う方向に動作可能に配設され、ワークWの表面Waに接触可能な被加工物接触部181と、動いた分の被加工物接触部181の変位を検知する変位検出部182と、変位検出部182により検出された変位を表示する表示部183と、を有する。
【0056】
具体的に説明する。本実施形態2では、歪量計測ユニット180は、
図30に示すように、流体であるエアの流れを制御することにより、ピストンロッド192がシリンダ本体部191(シリンダ)と相対的に伸縮する単動押出し式の空圧シリンダ190(計測用流体シリンダ)を備えている。シリンダ本体部191は、その反ロッド側をスライド部130に対向させ、ピストンロッド192を上向きにした姿勢で、ピストンロッド192先端位置より低い位置に、シリンダ取付部材193を介してシリンダ固定部材194に固定されている。歪量計測ユニット180は、このような空圧シリンダ190のほか、被加工物接触部181と、第2支持板198と、被押圧部199と、ジョイント部200等とからなる。
【0057】
空圧シリンダ190では、工場内にある既設のコンプレッサ等のエア供給源からエアが、エアレギュレータ(図示省略)を通じてシリンダ本体部191の入力ポートに供給されると、所定値(例えば、490kPa)のエア圧によりピストンロッド192が直線的に伸長して上昇する。一方、出力ポートからシリンダ本体部191のエアを外部に排気すると、シリンダ本体部191に内蔵されたバネの弾性力により、伸びたピストンロッド192が縮短してシリンダ本体部191側に戻され、下降する。
【0058】
また、空圧シリンダ190は、ピストンロッド192のストローク範囲内で、動いた分のピストンロッド192の変位Hを検知する変位検出部182を有している。変位検出部182は、図示しない電気制御部、及び表示部183と電気的に接続されている。表示部183は、ストローク範囲内で設定された原点位置を基点に、原点位置から停止位置まで相対的に移動した分のピストンロッド192の変位Hを、変位検出部182で計測し、その計測値として、
図34に示すように、数値で画面に表示する。原点位置は、必要に応じて可変できるものであり、表示部183に表示される計測値は、設定により、小数点以下の有効数字の桁数を、任意に変更できる。
【0059】
歪量計測ユニット180では、被加工物接触部181は、ピストンロッド192に連結され、ピストンロッド192の動きに連動して動作する。被加工物接触部181は、ピストンロッド192と、第1連結部材195と、第2連結部材196と、第2支持板198と、ジョイント部200と、必要な長さに応じた使い分けで取り付けられるヘッド位置調整部材163と、ワークWに接触させる押圧ヘッド161とからなる。ピストンロッド192と連結する第1連結部材195は、計8つの第2連結部材ガイド197で保持された2本の第2連結部材196を介して、第2支持板198に連結されている。これにより、第2支持板198は、ピストンロッド192の伸長運動により上下動する。
【0060】
第2支持板198は、主軸ヘッド140の第1支持板141より低い位置に配置されており、第2支持板198の上面側(
図30の上側)には、被押圧部199が設けられている。なお、本実施形態2では、油圧シリンダ70のロッド71による押圧力Fを水平方向に作用させてワークWの歪取りを行う水平方向押圧機能の場合、この第2支持板198は、梁部115の下面115aより下方側に離間した位置に、下面115aに平行な主軸ヘッド140の支持板としての機能も果たす。被押圧部199は、加圧式歪取装置101で垂直方向押圧機能を利用する場合に、第1支持板141に保持された油圧シリンダ70で、伸長するロッド71の押圧力を直接受ける部分である。被押圧部199に作用した油圧シリンダ70の押圧力は、ジョイント部200、ヘッド位置調整部材163を経て押圧ヘッド161に伝達される。
【0061】
すなわち、加圧式歪取装置101の垂直方向押圧機能を利用するときには、エアレギュレータにより、先に例示した490kPa等の一定のエア圧値でピストンロッド192を上死点位置まで伸長して、
図30に示す位置まで第2支持板198を上昇させておく。一方、第1支持板141に保持された油圧シリンダ70のロッド71が、下方に向けて伸長すると、ロッド71が被押圧部199を押圧する。油圧シリンダ70では、数十MPa等の大きな油圧値で作動するロッド71の推進力(押圧力)は、数十トンもあり、ピストンロッド192による推進力に抗して、油圧シリンダ70のロッド71による押圧力が、ジョイント部200、ヘッド位置調整部材163を経て押圧ヘッド161に伝達される。このとき、空圧シリンダ190では、シリンダ本体部191内のエア圧は、エアレギュレータにより制御され、設定された一定のエア圧値を超えないよう、調整されている。
【0062】
なお、被押圧部199に作用した押圧力をジョイント部200側に伝えるときには、
図33に示すように、複数の補助連結部材201が、第1支持板141と第2支持板198との間に介装される。これにより、油圧シリンダ70の押圧力により、第2支持板198に過大な曲げ応力が掛かるのを抑制できるため、油圧シリンダ70の押圧力を押圧ヘッド161に、機械的に効率良く伝達することができている。
【0063】
ヘッド位置調整部材163は、定盤102に載置したワークWに対し、歪を取り除く部位の表面Wa(
図39〜
図41参照)と、ジョイント部200とのワーク間距離を考慮して使い分けられる。ワーク間距離が比較的大きい場合には、
図33(b)に示すように、第1ヘッド位置調整部材163A(163)が用いられる。その反対に、ワーク間距離が比較的小さい場合には、
図33(d)に示すように、第3ヘッド位置調整部材部材163C(163)が用いられる。ワーク間距離がこれらの間にある大きさである場合には、
図33(c)に示すように、第2ヘッド位置調整部材163B(163)が用いられる。
【0064】
ヘッド位置調整部材163は、
図33に示すように、一端側に凸部162を、他端側に接合部164を有する略丸棒状に形成されている。凸部162は、当該ヘッド位置調整部材163の外周より径小の段付きで設けられた部分である。この凸部162は、その一部に、さらに縮径して凹設した環状の溝を有している。接合部164は、当該ヘッド位置調整部材163の中央部を軸心方向(
図33中、左右方向)に、別の凸部162を挿入可能に形成した座ぐりと、この座ぐりを通って当該ヘッド位置調整部材163を径方向に貫通する貫通孔と、締結具202の雄ネジと螺合可能な雌ネジと、を有する。また、押圧ヘッド161は、ヘッド位置調整部材163と同じ構造の凸部162を有する。
【0065】
第2支持板198には、ヘッド位置調整部材163の接合部164と自在に着脱可能なジョイント部200が配設されている。このジョイント部200は、
図32等に示すように、挿入されたヘッド位置調整部材163の接合部164を包囲する環状の包囲部を有した形状に形成されている。この包囲部には、貫通孔と雌ネジが形成されている。ジョイント部200では、包囲部の貫通孔と、この包囲部に挿入されたヘッド位置調整部材163の接合部164の貫通孔に、図示しないピンを挿通することにより、ヘッド位置調整部材163が、ジョイント部200に、位置決めされた状態で連結される。そして、締結具202の雄ネジと包囲部の雌ネジとを螺合させ、締結具202の雄ネジ先端部を凸部162の溝に向けて、この締結具202を締め込むと、ヘッド位置調整部材163は、ジョイント部200に固定される。
【0066】
他方、押圧ヘッド161をヘッド位置調整部材163に挿着するときには、押圧ヘッド161の凸部162が、ヘッド位置調整部材163の接合部164の座ぐりに挿入され、締結具202の雄ネジと接合部164の雌ネジとを螺合させる。そして、締結具202の雄ネジ先端部を押圧ヘッド161の凸部162の溝に向けて、この締結具202を締め込むと、押圧ヘッド161は、ヘッド位置調整部材163に固定される。
【0067】
図35は、第2支持板と懸架用連結ユニットとの連結構造を説明する図である。加圧式歪取装置101で、水平方向押圧機能(
図25中、左側)を利用する場合には、
図35に示すように、懸架用連結ユニット165が、ジョイント部200に取付けられる。懸架用連結ユニット165は、上端側で径方向に貫通する貫通孔を有する丸棒状の懸架用連結部材166と、スラスト玉軸受である2組の軸受167と、円筒状の本体部にフランジを内周側に設けた形状の挟み込み部と平板とを一体化したシリンダ取付け具固定部168と、締結具169とからなる。
【0068】
懸架用連結部材166の下方では、軸受167が、シリンダ取付け具固定部168の挟み込み部を挟んだ両側に、それぞれ配置され、当該懸架用連結部材166の下端部と共に、当該懸架用連結部材166と螺合する締結具169を締め付けることにより、シリンダ取付け具固定部168が、軸Mを中心に180度回動可能に、懸架用連結部材166に取り付けられている。
【0069】
懸架用連結部材166の上端部は、ジョイント部200の包囲部内に挿入され、包囲部の貫通孔と懸架用連結部材166の貫通孔に、図示しないピンを挿通することにより、懸架用連結部材166が、ジョイント部200に、位置決めされた状態で連結される。そして、締結具202の雄ネジと包囲部の雌ネジとを螺合させ、締結具202の雄ネジ先端部を凸部162の溝に向けて、この締結具202を締め込むと、懸架用連結部材166は、ジョイント部200に固定される。
【0070】
シリンダ取付け具固定部168の下面168aには、シリンダ取付け具150が、ボルト締めにより固着して、連結される。
図36は、実施形態2に係る加圧式歪取装置で用いるシリンダ取付け具の正面図であり、その平面図を、
図37に示す。
図38は、実施形態2に係る加圧式歪取装置の水平方向押圧機能により、ワークの歪取りを行う様子を示した図である。
【0071】
図36及び
図37に示すように、シリンダ取付け具150は、実施形態1のシリンダ取付け具150の基本構造と共通しており、シリンダ支持部153と、被加工物支持部154とが、シリンダ取付け具固定部168の取付け位置であるシリンダ取付け具固定部取付け部位151を含む中間支持部材を挟んで、配置されている。シリンダ支持部153と、被加工物支持部154と、中間支持部材の両端部が、接続部155により連接されている。この被加工物支持部154には、2つの反力支持部157が配設されている。反力支持部157はそれぞれ、被加工物支持部154を自在に移動可能に取付けられている。これにより、
図38に示すように、歪取りの作業にあたり、油圧シリンダ70による押圧力をワークWに作用したときに、その押圧力の反力を受ける位置が、ワークWに生じた歪みの状態に応じて自在に可変できるため、歪取り作業を効率良く行うことができる。
【0072】
次に、加圧式歪取装置101の垂直方向押圧機能を用いて、ワークWの歪を取り除くことを前提とし、このワークWに生じている歪部位の歪量を歪量計測ユニット180により計測する場合の計測手順について、説明する。
図39は、歪量計測ユニットにより、ワークに生じている歪部位の歪量を計測する要領を模式的に示す説明図であり、ワークの表面を上方から見た図である。
図40は、
図39に示すワークの長辺方向を、その手前端面側から見た説明図であり、ワークの短辺方向を、その右方端面側から見た説明図を、
図41に示す。なお、
図39〜
図41は、説明の便宜上、内容の理解を容易にするため、歪部位を誇張した図示となっている。また、
図39〜
図41は、歪部位に対し、歪量の計測と歪取りとを加圧式歪取装置101で行う作業について、あくまでも解り易くモデル化して例示した図に過ぎず、上記作業は、
図39〜
図41の図示内容に限定されるものではなく、実際の作業内容は、ワークWの形状や、生じた歪部位の位置や大きさ、歪部位の数等、歪取り加工条件によって異なる。
【0073】
図39〜
図41に示すように、ワークWには、大きな歪が、基準部位Pの周囲にある4つの第1〜第4歪部位Q1,Q2,Q3,Q4に、生じている。従来、このような歪(第1〜第4歪部位Q1,Q2,Q3,Q4)を取り除く作業ではまず、作業者は、定盤102の上面102aに沿って水平に、測定基準とする糸(
図40及び
図41中、二点鎖線と平行に張設される糸)を張り、視覚で歪の存在を確認する。その確認後、作業者は、第1〜第4歪部位Q1〜Q4に、油圧シリンダによる押圧力をスポット的に掛けて押圧し、ワークを変形させる。
【0074】
このとき、押圧力がワークに適切に掛けられていたかを確認するため、糸と歪部位との距離(油圧シリンダ70の押圧力を下方に作用させたワークの歪取りでは、糸と歪部位との高低差、油圧シリンダ70の押圧力を水平に作用させたワークの歪取りでは、歪部位毎に、糸と歪部位との水平距離)を、ハイトゲージやダイヤルゲージ等の計測機器を用いて測定する。作業者は、その計測結果に基づいて、押圧力を引き続き掛けてワークを変形させる必要があるか否かを判断し、許容範囲以内の歪量に収まるまで、ワークへの押圧作業と計測機器による測定作業とを交互に繰り返しながら、ワークの歪を取り除く。そして、作業者は、ワーク全体に生じている全箇所の歪について、この作業をそれぞれ行う。このような作業工程は、非常に手間と時間が掛かる作業で、その作業効率は低かった。
【0075】
これに対し、本実施形態2の加圧式歪取装置101では、作業者は、歪を含むワークWの表面Waに対し、計測時に正とする基準部位である計測基準位置Pと、この計測基準位置Pと異なる部位にある1つ以上(本実施形態では、
図39に4つ例示)の計測対比位置(第1計測対比位置Q1、第2計測対比位置Q2、第3計測対比位置Q3、第4計測対比位置Q4)を確認する。この計測対比位置は、すなわちワークWの表面Waに生じている歪部位(第1〜第4歪部位Q1,Q2,Q3,Q4)である。計測基準位置Pと原点位置との距離を基準距離とし、計測対比位置(第1計測対比位置Q1、第2計測対比位置Q2、第3計測対比位置Q3、第4計測対比位置Q4)と原点位置との距離を対比距離とすると、歪量計測ユニット180は、基準距離と対比距離との相対的な距離差h(h1,h2、h3、h4)に基づいて、歪の大きさを計測する。
【0076】
具体的に説明する。
図25に示すように、加圧式歪取装置101において、垂直方向押圧機能の仕様とした右側のスライド部130で、第2支持板198下方に、ヘッド位置調整部材163を介して取り付けられた押圧ヘッド161が、ワークWの歪部位を押圧して、歪取りを行うための役割を担う。また、この押圧ヘッド161は、
図39〜
図41に示すワークWの表面Waに接触する測定触子の役割をも担う。
【0077】
作業者は、第1〜第4歪部位Q1,Q2,Q3,Q4の存在を視覚で確認した後、ピストンロッド192を下降させることにより、押圧ヘッド161を、まず基準部位P(計測基準位置P)に接触させる。この基準部位Pは、
図40及び
図41に示すように、歪量ゼロ(または、許容範囲以内の歪量でゼロに近い大きさ)の部位であり、測定上、「正」の部位として、第1〜第4計測対比位置Q1〜Q4との相対原点となり得る計測基準位置Pである。押圧ヘッド161が、計測基準位置Pに向けて下降すると、その移動に伴ったピストンロッド192の変位Hp(基準距離)が、歪量計測ユニット180の表示部183に表示される。
【0078】
次に、作業者は、一旦ピストンロッド192を原点位置に復帰させた後、門型フレーム110とスライド部130を必要に応じて移動させ、再びピストンロッド192を下降させて、押圧ヘッド161を、第1歪部位Q1(第1計測対比位置Q1)に接触させる。そして、押圧ヘッド161が、第1歪部位Q1に向けて下降すると、その移動に伴ったピストンロッド192の変位Hq1(対比距離)が、歪量計測ユニット180の表示部183に表示される。次に、作業者は、計測基準位置Pに対し、表示された変位Hpと、第1計測対比位置Q1に対し、表示された変位Hq1との高低差h1(距離差)を確認する。次に、作業者は、押圧ヘッド161を第1計測対比位置Q1に接触したままの状態で、油圧シリンダ70のロッド71を下方に推進させ、高低差h1が限りなく0に近づくよう、油圧シリンダ70の押圧力を、被押圧部199介して押圧ヘッド161に伝達する。
【0079】
第1歪部位Q1と同様、第2歪部位Q2、第3歪部位Q3、及び第4歪部位Q4についても、作業者は、押圧ヘッド161を、第2,3,4歪部位Q2,Q3,Q4(第2,3,4計測対比位置Q2,Q3,Q4)に接触させる。次に、作業者は、第2,3,4歪部位Q2,Q3,Q4に向けた下降に伴うピストンロッド192の変位Hq2,Hq3,Hq4(対比距離)をそれぞれ、表示部183で確認する。そして、作業者は、押圧ヘッド161を第2計測対比位置Q2(第3計測対比位置Q3、第4計測対比位置Q4)に接触したままの状態で、油圧シリンダ70のロッド71を下方に推進させ、変位Hq2と変位Hpとの高低差h2(変位Hq3と変位Hpとの高低差h3、変位Hq4と変位Hpとの高低差h4)(距離差)が限りなく0に近づくよう、油圧シリンダ70の押圧力を、被押圧部199介して押圧ヘッド161に伝達する。かくして、本実施形態2の加圧式歪取装置101は、歪部位において、歪量の計測と歪取りとを行う。
【0080】
本実施形態2の加圧式歪取装置101の作用・効果について、説明する。前述した実施形態1の加圧式歪取装置1と同様、本実施形態2の加圧式歪取装置101でも、安価な装置コストで、ワークWの歪を、精度良く効率的に取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0081】
また、本実施形態2では、段落〔0042〕〜〔0044〕に記載した作用・効果と同じ作用・効果がある。それらの作用・効果に加えて、以下の作用・効果もある。
【0082】
本実施形態2に係る加圧式歪取装置101では、ワークWに有した歪の状態を、定量的に把握可能な歪量計測ユニット180を備えていること、を特徴とするので、ハイトゲージ等の計測機器を用いて糸と歪部位との距離を測定した従来の計測作業が、ワークWの歪取り作業で全く不要となり、歪取り作業に係る生産性と効率が、従来の計測作業を含んだ歪取り作業に比して、大幅に向上する。また、歪取り作業に掛かる時間や、作業者の手間が、大幅に削減できる。
【0083】
また、本実施形態2に係る加圧式歪取装置101では、歪量計測ユニット180は、スライド部130に取付けられ、門型フレーム110の梁部115と相対的に移動可能に設けられていること、を特徴とする。この特徴により、油圧シリンダ70の押圧力でワークWの歪を取り除くのにあたり、歪量計測ユニット180によりその歪の大きさを把握することが、ワークWに押圧力を掛けるその位置で可能となり、作業の段取りも簡素化できる。特に、定盤102の上面102aに載置されたワークWに、歪部位が複数箇所に亘って分散している場合、複数の歪部位に対して、一箇所毎に順に歪取り作業を行うとき、必要に応じて門型フレーム110やスライド部130を移動するだけで、それぞれの歪部位で、歪量の把握と押圧力よる押圧の2工程を、合理的にかつ容易に行うことができる。そのため、歪取り作業に対し、作業者に掛かる作業負担を削減することができる。また、歪取り作業の生産性が向上するため、歪取りを行う加工コストの低減化に寄与することができる。
【0084】
また、本実施形態2に係る加圧式歪取装置101では、歪を含むワークWの表面Waから離れた原点位置と、ワークWの表面Waに対し、計測時に正とする基準部位である計測基準位置Pと、計測基準位置Pと異なる部位にある1つ以上の第1計測対比位置Q1(本実施形態では、第1計測対比位置Q1のほかにも、第2計測対比位置Q2、第3計測対比位置Q3、第4計測対比位置Q4も例示)と、を設定し、計測基準位置Pと原点位置との距離を変位Hpとし、第1計測対比位置Q1(第2,第3,第4計測対比位置Q2,Q3,Q4)と原点位置との距離を変位Hq1(変位Hq2,Hq3,Hq4)とすると、歪量計測ユニット180は、変位Hpと変位Hq1(変位Hq2,Hq3,Hq4)との相対的な高低差h1(h2、h3、h4)に基づいて、歪の大きさを計測すること、を特徴とする。この特徴により、作業者は、ワークWに生じた歪部位の歪量(高低差h1等に相当)を、より正確な数値で把握できるため、得られた高低差h1等に基づいて、油圧シリンダ70の押圧力を歪部位に掛ける位置や、掛ける押圧力の大きさを、適切に判断することができる。ひいては、より精度の高い歪取りが実現できるため、歪取り後のワークW(製品)の付加価値を高めることができる。
【0085】
また、本実施形態2に係る加圧式歪取装置101では、歪量計測ユニット180は、油圧シリンダ70のロッド71の動作方向に沿う方向に動作可能に配設され、ワークWの表面Waに接触可能な被加工物接触部181と、動いた分の被加工物接触部181の変位Hを検知する変位検出部182と、変位検出部182により検出された変位Hを表示する表示部183と、を有すること、を特徴とする。この特徴により、被加工物接触部181に含まれる押圧ヘッド161が、直にワークWの表面Waに接触するまでの、動いた分の被加工物接触部181の変位Hが、変位検出部182により検出されるため、表示部183に表示される変位Hは、信頼性の高い測定値となる。
【0086】
特に定盤102の上面102aは、平面度の精度を高くして形成されている。ワークWは、このような高精度の上面102aに載置された状態で、歪量の計測は、門型フレーム110に設けた歪量計測ユニット180により、被加工物接触部181の押圧ヘッド161を、定盤102の上面102aに向けて降ろし、ワークWの表面Waに直接接触させて行われる。そのため、歪量の計測の起点となる被加工物接触部181の動作開始位置は、計測時に、作業者による人為的な誤差要因の影響を受け難く、第1計測対比位置Q1以外に、第2計測対比位置Q2、第3計測対比位置Q3や、第4計測対比位置Q4を計測する場合でも、取得した変位Hq1、Hq2,Hq3,Hq4は、信頼性の高い測定値となる。
【0087】
また、本実施形態2に係る加圧式歪取装置101では、歪量計測ユニット180は、エアの流れを制御することにより、ピストンロッド192がシリンダ本体部191と相対的に伸縮する空圧シリンダ190を有しており、被加工物接触部181は、ピストンロッド192に連結され、ピストンロッド192の動きに連動して動作すること、変位検出部182は、ピストンロッド192のストローク範囲内で、動いた分のピストンロッド192の変位Hを検知すること、を特徴とする。この特徴により、歪量の計測時に、歪量の計測の起点となる押圧ヘッド161の動作開始位置と、ワークWの表面Waに接触した状態になった接触位置との距離が、直進性の精度を高くして構成されたピストンロッド192の移動量に基づいているため、検知される変位Hの精度も高くなる。また、押圧ヘッド161は、歪部位の歪取りを行うのにあたり、ワークWの歪部位を押圧する役割を担うと共に、その歪部位の歪量を計測するのにあたり、ワークWの表面Waに接触する測定触子としての役割をも、併用させることができている。そのため、加圧式歪取装置101の構造が簡素化でき、歪取り作業をより合理的に行うことができる。
【0088】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態1の実施例1,2、及び変形例と、上記実施形態2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態1の実施例1では、固定した支持板41を1つ設けた主軸ヘッド40を例示したが、主軸ヘッド40において、支持板41の取り付け位置を適宜変更できる構造にしても良い。
(2)また、実施形態1の実施例2で、シリンダ保持手段を、
図20〜
図22に示すシリンダ取付け具50を例示して挙げたが、シリンダ保持手段は、油圧シリンダを保持すると共に、油圧シリンダの押圧力を被加工物から反力を受けることができる構造で、主軸ヘッド等によりスライド部と連結されていれば良く、
図20〜
図22に示すシリンダ取付け具50や、
図35〜
図38に示すシリンダ取付け具150の構造に限定されるものではない。
【0089】
(3)例えば、実施形態2では、歪量把握手段を、空圧シリンダ190を用いた歪量計測ユニット180とした。しかしながら、歪量把握手段は、実施形態2のほかにも、例えば、1mm、1.5mm、2mmのように、寸法毎に設定された高精度のブロックゲージや、シムを計測治具として用い、従来の糸に代えて、水平度の高い計測用の基準バーを、定盤の上面と平行な姿勢で、スライド部から吊設で配置し、この基準バーと、歪部位のある被加工物の表面との間に、サイズの合った計測治具を介入させても良い。そして介入した計測治具の寸法等から歪量を取得して、被加工物の歪の状態を把握するものでも良い。
(4)例えば、実施形態2では、歪量計測手段を、空圧シリンダ190を用いた歪量計測ユニット180とした。しかしながら、歪量計測手段は、実施形態2のほかにも、例えば、フレームのスライド部付近に、赤外線測長センサ、超音波測長センサ、レーザー測長器等によって、被加工物上方から被加工物の表面までの距離を測定しても良い。
【0090】
(5)例えば、実施形態2では、加圧式歪取装置101の垂直方向押圧機能を用いて、ワークWの歪を取り除くことを前提に、このワークWの歪量を計測した。しかしながら、本発明に係る加圧式歪取装置が、油圧シリンダのロッドによる押圧力を水平方向に作用させて被加工物の歪取りを行う水平方向押圧機能として利用される場合でも、歪量把握手段または歪量計測手段は、被加工物の歪部位の歪量を計測できる構成としても良い。
(6)例えば、実施形態1,2では、前後方向FRに対し、門型フレーム10,110の移動量や位置情報を取得する手段を特に具備していないが、例えば、実施形態2の加圧式歪取装置101に構成された側部ローラ転動面106等に沿って、リニアスケールや帯状のエンコーダ等を設けることや、コスト高にはなるが、門型フレーム110を電動モータ等で駆動させ、電動モータの回転量を検出するロータリーエンコーダを設けても良い。これにより、作業者は、フレームの移動量や位置情報を取得することができる。
【0091】
(7)例えば、実施形態2では、歪量計測ユニット180に構成した空圧シリンダ190を、バネを内蔵した単動押出し式の空圧シリンダとしたが、計測用流体シリンダは、実施形態2のほかにも、複動シリンダや、単動押出し式の空圧シリンダの中でも、バネを内蔵せず、自重だけでピストンロッドを戻す空圧シリンダであっても良い。