(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記整流デューティは、前記位相の正弦値の絶対値(|sin(ωt)|)と、前記放電デューティ(dc)を1から差し引いた値(1−dc)のいずれか小さい方を採る、請求項1記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.直接形電力変換装置の構成.
図1は、本実施の形態で示される制御方法が適用される直接形電力変換装置の構成を示すブロック図である。当該直接形電力変換装置は、コンバータ3と、電力バッファ回路4と、インバータ5と、直流リンク7とを備えている。
【0024】
コンバータ3は例えばフィルタ2を介して単相交流電源1と接続されている。フィルタ2はリアクトルL2とコンデンサC2とを備えている。リアクトルL2は単相交流電源1の2つの出力端のうちの一つとコンバータ3との間に設けられている。コンデンサC2は単相交流電源1の2つの出力端の間に設けられている。フィルタ2は電流の高周波成分を除去する。フィルタ2は省略しても良い。簡単のため、以下ではフィルタ2の機能を無視して説明する。
【0025】
直流リンク7は直流電源線LH,LLを有する。
【0026】
コンバータ3は例えばダイオードブリッジを採用し、ダイオードD31〜D34を備えている。ダイオードD31〜D34はブリッジ回路を構成し、単相交流電源1から入力される入力電圧である単相交流電圧Vinを単相全波整流して整流電圧Vrecに変換し、これを直流電源線LH,LLの間に出力する。直流電源線LHには直流電源線LLよりも高い電位が印加される。コンバータ3には単相交流電源1から入力電流Iinが流れ込む。
【0027】
電力バッファ回路4は放電回路4a及び充電回路4bを有し、直流リンク7との間で電力を授受する。放電回路4aはコンデンサC4を含み、充電回路4bは整流電圧Vrecを昇圧してコンデンサC4を充電する。
【0028】
放電回路4aはダイオードD42と逆並列接続されたトランジスタ(ここでは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ:以下「IGBT」と略記)Scを更に含んでいる。トランジスタScはコンデンサC4に対して直流電源線LH側で、直流電源線LH,LLの間で直列に接続されている。ここで逆並列接続とは、順方向が相互に逆となって並列に接続されていることを指す。具体的にはトランジスタScの順方向は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向であり、ダイオードD42の順方向は直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向である。トランジスタScとダイオードD42とはまとめて一つのスイッチ素子(スイッチSc)として見ることができる。スイッチScの導通によってコンデンサC4が放電して直流リンク7へと電力を授与する。
【0029】
充電回路4bは、例えばダイオードD40と、リアクトルL4と、トランジスタ(ここではIGBT)Slとを含んでいる。ダイオードD40は、カソードと、アノードとを備え、当該カソードはスイッチScとコンデンサC4との間に接続される。かかる構成はいわゆる昇圧チョッパとして知られている。
【0030】
リアクトルL4は直流電源線LHとダイオードD40のアノードとの間に接続される。トランジスタSlは直流電源線LLとダイオードD40のアノードとの間に接続される。トランジスタSlにはダイオードD41が逆並列接続されており、両者をまとめて一つのスイッチ素子(スイッチSl)として見ることができる。具体的にはトランジスタSlの順方向は直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向であり、ダイオードD41の順方向は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向である。
【0031】
コンデンサC4は充電回路4bにより充電され、コンデンサC4には整流電圧Vrecよりも高い両端電圧Vcが発生する。具体的には直流電源線LHからスイッチSlを経由して直流電源線LLへと電流を流すことによってリアクトルL4にエネルギーを蓄積し、その後にスイッチSlをオフすることによって当該エネルギーがダイオードD40を経由してコンデンサC4に蓄積される。
【0032】
両端電圧Vcは整流電圧Vrecより高いので、基本的にはダイオードD42には電流が流れない。従ってスイッチScの導通/非導通は専らトランジスタScのそれに依存する。ここで、ダイオードD42は両端電圧Vcが整流電圧Vrecより低い場合の逆耐圧を確保するとともに、インバータ5が異常停止したときに誘導性負荷6から直流リンク7へ還流する電流を逆導通させるように作用する。
【0033】
直流電源線LHの方が直流電源線LLよりも電位が高いので、基本的にはダイオードD41には電流が流れない。従ってスイッチSlの導通/非導通は専らトランジスタSlのそれに依存する。ここで、ダイオードD41は逆耐圧や逆導通をもたらすためのダイオードであり、IGBTで実現されるトランジスタSlに内蔵されるダイオードとして例示したが、ダイオードD41それ自体は回路動作には関与しない。
【0034】
インバータ5は直流電源線LH,LLの間の直流電圧を交流電圧に変換して出力端Pu,Pv,Pwに出力する。インバータ5は6つのスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnを含む。スイッチング素子Sup,Svp,Swpはそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwと直流電源線LHとの間に接続され、スイッチング素子Sun,Svn,Swnはそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwと直流電源線LLとの間に接続される。インバータ5はいわゆる電圧形インバータを構成し、6つのダイオードDup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnを含む。
【0035】
ダイオードDup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnはいずれもそのカソードを直流電源線LH側に、そのアノードを直流電源線LL側に向けて配置される。ダイオードDupは、出力端Puと直流電源線LHとの間で、スイッチング素子Supと並列に接続される。同様にして、ダイオードDvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnは、それぞれスイッチング素子Svp,Swp,Sun,Svn,Swnと並列に接続される。出力端Pu,Pv,Pwからは、それぞれ交流電流Iu,Iv,Iwが出力され、これらは三相交流電流を構成する。例えばスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,SwnにはIGBTが採用される。
【0036】
誘導性負荷6は例えば回転機であり、誘導性負荷であることを示す等価回路で図示されている。具体的には、リアクトルLuと抵抗Ruとが相互に直列に接続され、この直列接続体の一端が出力端Puに接続される。リアクトルLv,Lwと抵抗Rv,Rwについても同様である。またこれらの直列接続体の他端同士が相互に接続される。
【0037】
誘導性負荷6を同期機として制御系を例示すると、速度検出部9は、誘導性負荷6に流れる交流電流Iu,Iv,Iwを検出し、これらから回転角速度ωmならびにq軸電流Iq及びd軸電流Idを制御部10に与える。
【0038】
制御部10では、回転角速度ωmならびにq軸電流Iq及びd軸電流Idの他、後述する波高値Vm,Im、電源角速度ω、回転角速度の指令値ωm*を入力し、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*(後に
図20を用いて説明する)に基づいて、図示しない演算処理(例えば特許文献1を参照)によって、インバータ5のスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnの動作をそれぞれ制御する信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnが得られる。
【0039】
制御部10では、スイッチSc,Slの動作をそれぞれ制御する信号SSc,SSlも生成され、これらはデューティdrec,dc,dz,dlに基づいて生成される(例えば特許文献1参照)。
【0040】
B.制御方法.
(b-1)電力低減の基本的な考え方.
コンバータ3に入力する瞬時入力電力Pinは、入力力率を1として、次式(1)で表される。ここで単相交流電圧Vinの波高値Vm及び電源角速度ω、交流の入力電流Iinの波高値Im、時間tを導入した。電源角速度ωと時間tとの積ωtは単相交流電圧Vinの位相を表すことになる。交流波形は、当該交流波形の位相ωtの正弦値と波高値との積として把握した。
【0042】
瞬時入力電力Pinは、式(1)の右辺の第2項で示される交流成分(−1/2)・Vm・Im・cos(2ωt)を有する(以下、「交流成分Pin^」とも称す)。よって以下では瞬時入力電力Pinを脈動電力Pinと称することもある。
【0043】
図1に示された電力変換装置は、下記のように見ることができる。
【0044】
直流リンク7は直流電源線LH,LLを含む;
コンバータ3は単相交流電圧Vinを入力し、脈動電力Pinを出力する;
電力バッファ回路4は、充電電力Plを直流リンク7から入力し、放電電力Pcを直流リンク7へ出力する;
インバータ5は直流リンク7から、脈動電力Pinと放電電力Pcとの和から充電電力Plを引いた入力電力Pdc(=Pin+Pc−Pl)を入力し、交流電流Iu,Iv,Iwを出力する。
【0045】
図2は
図1に示された直接電力変換装置での電力の収支を模式的に示すブロック図である。電力バッファ回路4でバッファリングされる電力(以下、「バッファリング電力Pbuf」と称す)は放電電力Pcから充電電力Plを差し引いた電力差(Pc−Pl)と等しい。コンバータ3からインバータ5へと向かう電力PrecはPin−Plに等しい。よってPdc=Prec+Pcが成立する。
【0046】
非特許文献2や特許文献1で示された技術では、上述の交流成分Pin^を打ち消すべく、単相交流電圧Vinの四半周期((1/4)周期)毎に交互に異なる制御を行っていた(以下、このような制御を便宜的に「四半周期制御」とも称す)。具体的にはPl=Pin^,Pc=0とする制御と、Pl=0,Pc=−Pin^とする制御とを、単相交流電圧Vinの四半周期毎に交互に行っていた。これにより、全期間においてPdc=Pin+Pc−Pl=Pin−Pin^=(1/2)・Vm・Imが成立し、電力の脈動が回避されていた。しかしながら、このような技術では、上述のように、電圧利用率の最大値は1/√2に留まる。
【0047】
他方、特許文献2で示された技術では、電圧利用率を高めることができても、直流リンクの電圧やこれに流れる電流が、単相交流電圧Vinの四半周期で歪む傾向が増大する。
【0048】
そこで、単相交流電圧Vinの四半周期毎にPl=0とPc=0とを交互に設定するという前提を取り払った制御を考察する。
【0049】
(b-2)充電電力Plと放電電力Pcの具体的な例.
本節以降では、上述の充電電力Pl及び放電電力Pcの一例として、これらをそれぞれ式(2)(3)で定める。
【0052】
つまり、充電電力Plは脈動電力Pinの半分の電力であり、放電電力Pcは充電電力Plから交流成分Pin^を差し引いた電力である。
【0053】
充電電力Plは、脈動電力Pinから直流リンク7を介して電力バッファ回路4に分配率1/2で分配された電力(1/2)・Pinであると見ることができる。
【0054】
式(2),(3)と、Pbuf=Pc−Plであることから、バッファリング電力Pbufは式(4)でも表される。
【0056】
このような充電電力Pl及び放電電力Pcが、上記の四半周期制御におけるそれらと異なることは明白である。
【0057】
Pc>Pl(すなわちPbuf>0)となる期間(以下「放電主体期間」とも称す)では充電よりも放電が主体であって、Pc<Pl(すなわちPbuf<0)となる期間(以下「充電主体期間」とも称す)では放電よりも充電が主体である。式(2),(3)から理解されるように、(n+1/4)π≦ωt≦(n+3/4)πの期間が充電主体期間であり、(n+3/4)π≦ωt≦(n+5/4)πの期間が放電主体期間である(nは整数:以下同様)。
【0058】
このように充電電力Plおよび放電電力Pcを定めることにより、電圧利用率を1まで設定可能なことを以下に説明する。
【0059】
(b-3)電流の分配.
本節では、コンバータ3が出力する電流irecのうち、コンバータ3からインバータ5へと流れる電流irec1を、電流irecの半分に設定する技術を説明する。
【0060】
コンバータ3の出力側には、式(5)で示される整流電圧Vrecが印加される。
【0062】
Prec=Pin−Plであるので、下式(6)が成立する。
【0064】
よって電流irec1は下式(7)で表される。
【0066】
式(1)においては、入力電流IinがIm・sin(ωt)で表されること、即ち正弦波状の波形を呈することを前提としているので、電流ilは下式(8)を満足する。
図2から分かるように、コンバータ3が出力する電流irecは、電流irec1と電流ilとの和と等しいからである。
【0068】
コンデンサC4からインバータ5に流れる放電電流icを導入すると、電力バッファ回路4から出力される放電電力Pcは積Vc・icで表される。よって放電電力Pcが式(3)を満足するためには、放電電流icは下式(9)を満足すればよい。
【0070】
図3は、
図1に示された回路の等価回路を示す。当該等価回路は、例えば特許文献1で紹介されている。当該等価回路において電流irec1は、スイッチSrecが導通するときにこれを経由する電流irec1として等価的に表されている。同様に、放電電流icは、スイッチScが導通するときにこれを経由する電流icとして等価的に表されている。
【0071】
インバータ5において出力端Pu,Pv,Pwが直流電源線LH,LLのいずれか一方に共通して接続されるときにインバータ5を介して誘導性負荷6に流れる電流は、スイッチSzが導通するときにこれを経由して流れる零相電流izとして等価的に表されている。
【0072】
図3では、充電回路4bを構成するリアクトルL4とダイオードD40とスイッチSlとが示され、リアクトルL4を流れる電流ilが付記されている。
【0073】
このようにして得られた等価回路においては、スイッチSrec,Sc,Szが導通するそれぞれのデューティdrec,dc,dzとインバータ5に入力される直流電流Idcとを導入して、次式(10)が成立する。
【0075】
電流irec1,ic,izはそれぞれ直流電流Idcにデューティdrec,dc,dzを乗算したものであるので、これらはスイッチSrec,Sc,Szのスイッチング周期における平均値である。
【0076】
直流電流IdcはスイッチSrec,Sc,Szをそれぞれ導通する電流irec1,ic,izの総和であるので、次式が成立する。ここで0≦drec≦1,0≦dc≦1,0≦dz≦1である。
【0078】
よってデューティdrec,dc,dzは、各電流irec1,ic,izに対する直流電流Idcの電流分配率と見ることができる。デューティdrecはコンバータ3が直流リンク7と接続されて電流をインバータ5に流し得る期間を設定するデューティであるので、これ以降では整流デューティdrecと称することがある。デューティdcは、コンデンサC4が放電するデューティであるので、これ以降では放電デューティdcと称することがある。デューティdzはインバータ5においてその出力する電圧によらずに必ず零相電流izが流れるデューティであるので、これ以降では零デューティdzと称することがある。
【0079】
式(7),(9),(10)から、整流デューティdrec、放電デューティdcはそれぞれ次式(12),(13)で設定される。
【0082】
つまり電力収支の要請から式(7),(9),(12),(13)が採用され、更に入力電流Iinを正弦波状にして、上記の諸式の前提となる式(1)を満足させる要請から式(8)が採用される。
【0083】
コンバータ3がダイオードブリッジを採用する場合、コンバータ3が能動的に式(12)で示される整流デューティdrecでスイッチングすることはできない。よって式(11),(12),(13)で決定される零デューティdzと、放電デューティdcとに従って、それぞれインバータ5と、スイッチScがスイッチングすることによって、式(7)で示される電流irec1が得られる。
【0084】
インバータ5は零相電流izが流れる期間においては、直流リンク7における直流電圧を利用することができない。よって、直流リンク7においてインバータ5への電力供給に利用される直流電圧が電力変換において意味を持つ。換言すれば瞬時的な直流電圧であってインバータ5が電力変換に用いないものは、電圧利用率を考察するに際しても意味を有しない。よって電力変換において意味をもつ直流電圧Vdcは下記のように表現できる。
【0086】
他方、直流電圧Vdcは、インバータ5が出力できる電圧の最大値の、スイッチSc,Slやインバータ5のスイッチングを制御する周期についての平均として、直流リンク7に印加される電圧と見ることもできる。インバータ5は零デューティdzという比率で直流リンク7の電圧に寄与し得るものの、零デューティdzに対応する期間においてはインバータ5は直流リンク7の直流電源線LL,LHのいずれか一方と絶縁されているからである。
【0087】
直流電圧Vdcは、
図3において、インバータ5及びその負荷を表す電流源Idc(これは直流電流Idcを流す)の両端に生じる電圧として付記した。
【0088】
直流リンク7からインバータ5に入力する入力電力Pdcは直流電圧Vdcと直流電流Idcとの積となる。そしてインバータ5は直流リンク7から、脈動電力Pinと放電電力Pcとの和から充電電力Plを引いた入力電力Pdc(=Pin+Pc−Pl)を得るのであるから、下式(15)が成立する。
【0090】
式(12),(13)は下式(16),(17)のように表現できる。
【0093】
式(16),(17)を用いて式(14)の右辺を計算すると、下式(18)が得られ、式(14)の左辺と一致する。
【0095】
換言すれば、直流電圧Vdcを一つ定めれば整流デューティdrec及び放電デューティdcは、それぞれ式(16),(17)で定められる、といえる。
【0096】
式(16),(17)の関数の形から、また整流デューティdrec及び放電デューティdcの最大値が1であることから、Vdc≦Vm,Vdc≦Vcであれば、直流電圧Vdcを一定値に制御できることがわかる。この際、整流デューティdrecは、波高値Vmを測定し、直流電圧Vdcの指令値を一つ指定すれば決定される。
【0097】
電圧利用率は、波高値Vmに対する直流電圧Vdcの比R(=Vdc/Vm)として表すことができる。式(10),(11),(14)から、零デューティdzを小さくするほどインバータ5が零相電流を流す期間を短くし、以て直流リンク電圧に引加された電圧を利用する期間が長くなることが判る。これは電圧利用率Rを高めることになる。
【0098】
入力電流IinがIm・sin(ωt)で表されること、即ち正弦波状の波形を呈することを前提としているので、電流ilは直流電流Idcに依存して下式(19)を満足する。ここで式(7),(15)を考慮した。
【0100】
つまり、式(8)と同様に、入力電流Iinの絶対値の半分が電流ilとして流れる。従って入力電流Iinが正弦波状の波形を呈するように整流デューティdrecと放電デューティdcとが定められていることがわかる。
【0101】
図4は位相ωtの全区間においてdz≧0を維持しつつ、上述のように式(16),(17)でそれぞれ整流デューティdrec、放電デューティdcを設定した場合(後述する「デューティの基本設定」に相当:例えば特許文献4参照)における、Vc=1.5Vmとした場合の直接形電力変換装置の動作を示すグラフである。
【0102】
図4において、第1段目にはデューティdrec,dc,dzを、第2段目には直流電圧Vdcならびにその第1成分drec・Vrec及び第2成分dc・Vcと直流電流Idcを、第3段目にはコンバータ3から出力される電流irec(これは入力電流Iinの絶対値に等しい)と電流irec1,il,icを、第4段目には電力Pin,Pc,Pbuf,Precを、それぞれ示す。いずれのグラフも横軸には「度」を単位とする位相ωtを採用している。
【0103】
直流電圧Vdcの第1成分drec・Vrecは式(14)の第1項に現れる電圧であり、直流電圧Vdcに対するコンバータ3の寄与分を示す。直流電圧Vdcの第2成分dc・Vcは式(14)の第2項に現れる電圧であり、直流電圧Vdcに対するコンデンサC4の寄与分を示す。
【0104】
ここで、電圧については波高値Vmで正規化し、直流電流Idcは入力電流Iinの波高値Imを√2として換算した。
【0105】
零デューティdzの下限は零であるので、直流電圧Vdcを最大とするときのデューティdrec,dcは、零デューティdzが零のときに得られる。
【0106】
零デューティdzが零であれば、式(11),(16),(17)から、式(20)が得られる。ここでx=|sin(ωt)|を導入した。
【0108】
式(20)を変形して式(21)が得られる。
【0110】
直流電圧Vdcの最大値を与える位相ωtは式(21)の右辺の分母の最小値を与える。そのような位相ωtは、当該分母の微分を示す式(22)の値が零となるときの位相ωtとして求められる。
【0112】
このときx=Vc/(2・Vm)となる。例えば上述の例で言えば、Vc=1.5Vmであるので、一定となる直流電圧Vdcの最大値は約0.96Vmであることがわかる。式(15)から直流電流Idcは波高値Imの0.96/√2倍となることがわかる。
【0113】
このように分配率1/2を採用すると、各デューティを式(11),(12),(13)に従って固定し、直流電圧Vdcを一定にすることができる。しかも零デューティdzを小さくすることにより、かかる技術では式(21)においてx=Vc/(2・Vm)として、電圧利用率Rがα/(1+α・α/4)(α=Vc/Vm:以下「電圧比α」と称す)になることがわかる。
【0114】
当該電圧利用率R=α/(1+α・α/4)が非特許文献2や特許文献1で紹介された電圧利用率(1/√2)よりも大きいために電圧比αが満足すべき条件は、2√2−2<α<2√2+2である。両端電圧Vcは波高値Vmよりも高く充電され、電圧比αは1より大である。そして直流電圧Vdcを一定にするためにはx=|sin(ωt)|=α/2からVc/Vm≦2となる。よって、当該条件は満足され、非特許文献2や特許文献1で紹介された電圧利用率(1/√2)よりも大きな電圧利用率Rが得られる。
【0115】
電圧利用率Rを電圧比αで微分した値が零となるとき、つまりα=2の時に電圧利用率Rは最大値1を採ることが判る。つまり両端電圧Vcを波高値Vmの二倍に設定することにより、電圧利用率Rとして最大値1が得られる。
【0116】
しかしながら、両端電圧Vcを高めるには、コンデンサC4の耐圧を高めることが要求される。例えば、200V系に使用される400V耐圧の電解コンデンサを用いた場合、ディレーティングを0.9として、電源電圧の実効値が230Vならばα=400/(230×√2)×0.9=1.11となる。ディレーティングを0.95とすればα=1.17である。更に、電源電圧が10%上昇することも考慮するとなれば、450V耐圧の電解コンデンサを用いてα=1.13〜1.19(ディレーティングは0.9〜0.95)である。
【0117】
図5は電圧比αに対する電圧利用率Rを示すグラフである。上述のように電圧利用率Rを高めるためには両端電圧Vcを高めなければならないことが示されている。例えばα=1.17ではR=0.87程度に留まる。
【0118】
図6は特許文献3に示された技術を用いた場合の、直接形電力変換装置の動作を示すグラフであり、諸量は
図4と同様にして示した。ここでα=1.17とした。特許文献3に示された技術では、α=1.17程度であっても、電圧利用率Rを1とし(即ちVdc=Vm)、直流電流Idcは入力電流Iinの波高値Imの1/√2にまで高まる。
【0119】
特許文献3に示された技術では直流電圧Vdcが波高値Vmまで高まるものの、
図4のグラフと比較して電流ilが大きく、電流irec1が小さい。よって充電電力Plが大きく(グラフでは電力(−Pl)を示している)、電力Precが小さいことがわかる。これは、上述の通り、効率を高める観点からは不利である。
【0120】
(b-4)デューティの修正.
そこで整流デューティdrec、放電デューティdcを修正し、充電電力Plを高めること無く、低い電圧比αで電圧利用率Rを高めることにする。但し当該修正により、前節とは異なり、電流irec1は電流irecの半分とはならない。
【0121】
まず整流デューティdrec、放電デューティdcは、それぞれ式(16),(17)において直流電圧Vdcとして波高値Vmを用いて求められる値を採用することにする。これは、指令値Vdc*として波高値Vmを用いたことに相当する。
【0122】
整流デューティdrecは、零デューティdzと、放電デューティdcとに従って受動的に決定される。よって整流デューティdrecと、放電デューティdcとの和が1を越えてしまうことは式(11)に反することになる(dz≧0なので)。
【0123】
そこで整流デューティdrecと、放電デューティdcとの和が1を越えてしまう場合には、零デューティdzを0として整流デューティdrecを決定する。
【0124】
つまり、整流デューティdrecは、式(16)においてVdc=Vmとして得られる値(以下「第1修正値」と称す)と、1から放電デューティdc(これは式(17)においてVdc=Vmとして得られる値である)を差し引いた値(以下「第2修正値」と称す)との、いずれか小さい方に設定する。かかる設定を、以下では「デューティの第1修正」と称す。デューティの第1修正では、整流デューティdrecが第2修正値に設定されるとき、零デューティdzは0となる。
【0125】
零デューティdzの最小値を零以上に維持しつつ、式(16),(17)により整流デューティdrec、放電デューティdcを設定することを、以下では「デューティの基本設定」と称す。
【0126】
整流デューティの第1修正を採用すれば、デューティの基本設定を採用した場合と比較して、上述の第1成分drec・Vrecが低下する。よって式(18)は成立しなくなる。得られる直流電圧Vdcは指令値Vdc*=Vm以下になる。
【0127】
具体的には、後述するように、直流電圧Vdcは指令値Vdc*=Vm以下で脈動する。直流電流Idcは、直流電圧Vdcに反比例するので(式(15)参照)、直流電圧Vdcの脈動とは逆相で脈動する。
【0128】
しかしながら、電圧比αが同じであれば、脈動して得られる直流電圧Vdcの最小値は非特許文献2や特許文献1を用いて得られる直流電圧Vdcよりも高くなり、電圧利用率Rが高まる。
【0129】
図7はデューティの第1修正を採用した場合の、直接形電力変換装置の動作を示すグラフであり、諸量は
図4と同様にして示した。ここでα=1.17とした。
【0130】
このように整流デューティの第1修正を採用することにより、α=1.17であっても、平均的にはVdc=0.95Vmが得られ、電圧利用率R=0.95となることがわかる。これはデューティの基本設定を用いた場合ではα=1.17の場合にはR=0.87しか得られなかったことに鑑みれば、大きく改善されたことを示している。
【0131】
式(16),(17)から、(Vdc=Vmに設定しても)整流デューティdrec及び放電デューティdcは、位相0〜90度において位相45度を軸として対称に折り返した値を採用し、位相90〜180度において位相135度を軸として対称に折り返した値を採用し、位相180〜270度において位相225度を軸として対称に折り返した値を採用し、位相270〜360度において位相315度を軸として対称に折り返した値が採用されることがわかる。
【0132】
以下、このように電圧利用率Rが改善される理由を順を追って説明する。
【0133】
まず、簡単のために、整流デューティdrecは、常に第2修正値に設定する場合について説明する。かかる設定を、以下では「デューティの第2修正」と称す。デューティの第2修正で得られる結果は、デューティの第1修正で得られる結果と、特に電圧比α(≧1)が小さい場合にはほとんど同じであることを説明する。
【0134】
図7の零デューティdzは位相が0,180,360度近傍でのみ正となり、それ以外では零となる。そして零デューティdzが正となる期間においては第1修正値は小さく、第2修正値を採用した場合との相違は小さい。
【0135】
図8はデューティの第1修正を採用した場合及びデューティの第2修正を採用した場合の、整流デューティdrecと放電デューティdcと零デューティdzとを示すグラフである。
図7と同様にα=1.17とした。デューティの第1修正で設定された整流デューティdrecを波形drec1で、デューティの第2修正で設定された整流デューティdrecを波形drec2でそれぞれ示した。
【0136】
ここでは零デューティdzは、整流デューティdrecに常に第1修正値を設定した場合において、式(11)で計算される値である。
【0137】
零デューティdzが正となる期間においては、整流電圧Vrecも小さいので、第1成分drec・Vrecについては整流デューティの第1修正で得られる第1成分drec・Vrecと、整流デューティの第2修正で得られる第1成分drec・Vrecとの相違は小さい。よって式(14)で求められる直流電圧Vdcの相違も小さくなる。
【0138】
図7を得る際に用いた諸量で、整流デューティdrecを整流デューティの第2修正で設定しても、
図7の中段で示された波形の相違が視認されない。
【0139】
次に、式(14)で求められる直流電圧Vdcについて説明する。整流デューティdrecの第2修正値が(1−dc)であることに着目すると、式(14)から直流電圧Vdcは下式(23)で計算される。
【0141】
式(23)の関数形から直流電圧Vdcの平均値は、式(23)において位相ωtに値π/4を代入して求められる。例えば電圧比αとして1.17を採用すれば、Vdc≒0.952Vmとなる。よって平均的な電圧利用率Rは0.952となり、
図5で示されたR=0.87よりも高いことがわかる。
【0142】
このように、電圧利用率Rを高めることができたのは、直流電圧Vdcの脈動を許したためであると考えられる。そこで、この脈動の振る舞いについて検討する。直流電圧Vdcの脈動成分ΔVは、下式(24)で示される。
【0144】
上述のように、コンデンサC4の耐圧に鑑みて、電圧比αは小さい方が望ましいので、電圧比αを1と近似する。これにより式(24)は下式(25)で近似される。
【0146】
更に、下式(26)の近似式を導入する。
【0148】
よって式(25),(26)から、脈動成分ΔVは、下式(27)で近似される。
【0150】
このようにして、直流電圧Vdcは単相交流電圧Vinの周波数(以下「電源周波数」と称す)の4倍の周波数で脈動することがわかる。
【0151】
図9と
図10とは式(25)から式(27)への近似の妥当性を示すグラフである。
図9及び
図10において波形G1は関数(1/2)(1−cos(2ωt))を示す。
図9において波形G2は関数(|sin(ωt)|−1)を、波形G3は関数(1/2)(1−cos(2ωt))・(|sin(ωt)|−1)を、それぞれ示す。
図10において波形G4は関数(−1)・(1+cos(2ωt))/2を、波形G5は関数(1/2)(1−cos(2ωt))・(−1)・(1+cos(2ωt))/2を、それぞれ示す。
【0152】
式(25)に対応する波形G3と、式(27)に対応する波形G5とは非常に似ており、式(26)の近似を導入したことが妥当であることがわかる。
【0153】
式(27)から、脈動成分ΔVは、単相交流電圧Vinの四半周期で脈動することがわかる。そしてその最大値は0であり、0以下の値をとる。換言すれば、直流電圧Vdcが、上記の四半周期で脈動し、かつその最大値を波高値Vmとなることで、電圧利用率Rが改善されるといえる。
【0154】
電圧比αが大きいと、式(25)の近似は適当とは言えなくなる。以下、電圧比αが直流電圧Vdcに与える影響を、デューティの第1修正及び第2修正による影響も含めて説明する。
【0155】
図11及び
図12は、いずれも電圧利用率Rの位相依存性を示すグラフであり、電圧比αを異ならせた複数の波形を示している。
図11はデューティの第2修正を採用した場合を、
図12はデューティの第1修正を採用した場合を、それぞれ示している。
【0156】
上述のように波高値Vmに対する直流電圧Vdcの比が電圧利用率Rであるので、電圧利用率Rの脈動は直流電圧Vdcのそれに比例する。
【0157】
図12の波形は、
図11の波形をR≧1においてR=1へとクランプした波形となっている。
図11の波形でR≧1となる位相領域は、デューティの第1修正において、整流デューティdrecが第1修正値を採る場合、すなわちdz≧0の場合に相当するからである。
【0158】
図11及び
図12を比較することにより、電圧比αが1〜1.2ではデューティの第1修正及び第2修正のいずれを採用しても大差なく、かつその波形は上記の四半周期で脈動する正弦波状であることがわかる。
【0159】
逆に、電圧比αが1.5程度となると、直流電圧Vdcの波形は正弦波状から大きく歪む。
【0160】
参考までに、デューティの基本設定を採用した場合の電圧利用率Rの位相依存性を示すグラフを、
図13に示す。このような場合には直流電圧Vdcは一定となる。
図13におけるα=1.5の場合が、
図4の諸量のグラフに対応する。
図4において直流電圧Vdcは一定値を採っており、これが
図13においても現れている。
【0161】
図13において現れる、電圧利用率Rの電圧比αに対する依存性は、
図5において既に示された。
【0162】
(b-5)結果の比較.
図14は電圧利用率Rの電圧比αに対する依存性を示すグラフである。波形G7は
図5において示されたグラフと同じ内容を示す。
【0163】
波形G6は、デューティの第1修正を採用した場合の、電圧利用率Rの平均値を示す。電圧比αとして1.17を採用して式(23)から求められた直流電圧Vdcの平均値0.952Vmからは、電圧利用率Rの平均値が値0.952を採ることがわかる。これは波形G6がα=1.17において示す電圧利用率Rとほぼ一致している。電圧比αが1近傍では上述のように、デューティの第1修正及び第2修正のいずれを採用しても大差ないことがわかる。波形G7と比較して波形G6の方が(同じ電圧比αにおいて)大きな電圧利用率Rを示すことから、デューティの第1修正を採用する方が、デューティの基本設定を採用するよりも電圧利用率Rを高めることがわかる。コンデンサC4の耐圧の観点から望ましい電圧比α=1〜1.2程度では電圧利用率Rは0.03〜0.04程度改善されている。
【0164】
これはデューティの第1修正や第2修正を採用する場合には、第2修正値を決定する関係上、放電デューティdcとして式(17)においてVdc=Vmと設定しているのに対し、デューティの基本設定を採用する場合には放電デューティdcが式(17)のように直流電圧Vdcに比例し、以て電圧比(1/α)に比例するからである。
【0165】
このようにデューティの基本設定を採用する場合には、電圧比αが小さいほど放電デューティdcが大きくなり、電圧利用率Rの低下が顕著となる。これに対してデューティの第1修正を採用する場合(及び電圧比αが小さい領域でデューティの第2修正を採用する場合)には、ほぼ位相π/2毎に直流電圧Vdcが波高値Vmを採るので、結果的に直流電圧Vdcの平均値が大きくなる。よって、波形G6,G7の差は電圧比αが小さいほど顕著となる。
【0166】
図15及び
図16はいずれも諸デューティの位相依存性を示すグラフであり、電圧比α=1に設定している。
図15はデューティの基本設定を用いた場合を示し、
図16はデューティの第1修正を用いた場合及び第2修正を用いた場合を示す。
【0167】
既に
図8において、
図16と同じ諸量を示している。
図8は電圧比α=1.17の場合を示し、波形drec1,drec2で相違があった。しかし
図16では電圧比α=1の場合を示しており、これらの波形の相違は視認できない。よって
図16において零デューティdzを式(11)に従って表示すると、その値はほとんど全ての位相において零以下となっている。
【0168】
図15と
図16の比較からも明確なように、デューティの基本設定を採用する場合には、電圧比αが小さいと放電デューティdcが大きい。これは上述のように、電圧利用率Rの低下を招来することとなる。
【0169】
図14に戻り、波形G8はデューティの第1修正において、直流電圧Vdcの最小値を用いて求めた電圧利用率Rの電圧比αに対する依存性を示す。つまり脈動する直流電圧Vdcの平均値ではなく、その最小値ですら、デューティの第1修正を採用する方が、デューティの基本設定を採用するよりも電圧利用率Rが高まることがわかる。
【0170】
直流電圧Vdcの最小値を用いて電圧利用率Rを求めることには次の意義がある。即ち、インバータ5の変調率を、インバータ5が出力する電圧の振幅の指令値V*を導入して、V*/Vdcとする。これにより、直流電圧Vdcの脈流を補償した変調率の制御が可能となる。
【0171】
指令値V*が直流電圧Vdcの最小値に至る場合には、変調率を振幅変調する。これにより直流電圧Vdcの最小値を用いた電圧利用率Rが、インバータ5が利用する直流電圧Vdcの電圧利用率Rに当てはまる。換言すれば、インバータ5は直流電圧Vdcの最小値を上限として直流/交流変換を行うことができる。
【0172】
図17、
図18は、
図6と同様に、直接形電力変換装置の動作を示すグラフであり、諸量は
図4と同様にして示した。これら
図6、
図17、
図18において電圧比αは共通した値1.17を採用する。
図6は特許文献3に示された技術が採用された場合を示すのに対し、
図17はデューティの第1修正を採用した場合を示す。特許文献3に示された技術よりもデューティの第1修正を採用した方が、直流電圧Vdcがその脈動する分で低下するものの、電流ilは小さく、効率は高いことが見て取れる。
【0173】
図18は、デューティの基本設定を用いて直流電圧Vdcを一定とした場合を示し、
図5を用いて示したように(また
図14の波形G7で示されるように)α=1.17であればR=0.87程度に留まる。
【0174】
図19は、(コンバータ3からインバータ5へと向かう)電力Precと、(電力バッファ回路4へ入力する)充電電力Plとの割合を示すグラフである。ここで式(1)の左辺第1項で示される入力電力Pdc(=(1/2)・Vm・Im)は、
図4に倣ってVm=1,Im=√2を用いて、√2/2(≒0.7)とした。
【0175】
デューティの基本設定を採用した場合には、式(19)で示されたようにirec1=ilであるので、Prec=Pl≒0.35で一致する。この値は電圧比αには依存しない。これらの電力Prec,Plを波形G10で示した。
【0176】
図18と
図17とを比較してわかるように、電圧比αが同じなら、デューティの第1修正を採用した場合には、デューティの基本設定を採用した場合よりも電流irec1が大きくなり、電流ilは小さくなる。しかしながら、デューティの第1修正を採用した場合の電力Prec(波形G11で示す)や充電電力Pl(波形G12で示す)の、値0.35からの乖離は、電圧比αが小さいほど顕著となるものの、10%程度以下に留まる。
【0177】
これらに対し、特許文献3に示された技術では、
図6を用いて説明したように、電流ilが増大し、電流irec1が減少し、その傾向は特に電圧比αが小さい領域で顕著となる。上述の通り、コンデンサC4のディレーティングを考慮すれば電圧比αは1.2以下に抑制したいところ、そのような領域では電力Prec1(波形G13で示す)は充電電力Pl(波形G14で示す)よりも大差で小さい。よって、特許文献3に示された技術では、デューティの基本設定を採用した場合と比較して効率が低下する。これに対して、波形G10,G11の比較及び波形G10,G12同士の比較からも、デューティの第1修正を採用することで、効率は低減するどころか、若干の改善すら見られる。
【0178】
以上のように、デューティの第1修正を採用することにより、効率を低下させること無く電圧利用率Rが高められる。これは換言すれば、電力バッファ回路4が分担する電力を高めずに、直流電圧Vdcが高められる、といえる。
【0179】
このような利点を得られたことの一つの理由としては、上述のように放電デューティdcを式(17)においてVdc=Vmとおいて求めたことが挙げられる。即ち、放電デューティdcが、波高値Vmと、位相ωtの余弦値cos(ωt)の二乗cos
2(ωt)との積をコンデンサC4の両端電圧Vcで除した値(Vm/Vc)cos
2(ωt)とされることが、上記利点を得られたことの一つの理由である。
【0180】
また、他の理由としては、直流電圧Vdcが上記の四半周期、つまり単相交流電圧Vinの周期の1/4を基本周期として脈動することが挙げられる。直流電圧Vdcが、放電デューティdcの変動する周期の半分を基本周期として変動することになる。これにより、放電デューティdcに影響を与える、両端電圧Vcに対する波高値Vmの比(電圧比αの逆数)を大きくして(つまり両端電圧Vcを小さくして)、直流電圧Vdcが高められる。これは所望の直流電圧Vdcを得るために要求される両端電圧Vcを低下させることになり、ひいてはコンデンサC4に要求される耐圧低減される。
【0181】
このような直流電圧Vdcの脈動は、整流デューティdrecをデューティの第1の設定、あるいはデューティの第2の設定で設定することによって実現可能である。整流デューティdrecの第1修正値は位相ωtの正弦値sin(ωt)の絶対値|sin(ωt)|であり、第2修正値は放電デューティdcを1から差し引いた値(1−dc)である。
【0182】
デューティの基本設定では、零デューティdzの最小値を零以上に維持する必要上、零デューティdzを小さくしにくい。そこで、デューティの第1の設定、あるいはデューティの第2の設定を用いることにより、零デューティdzの最小値を零以上に維持しつつ、零デューティdzを小さくすることが容易となる。
【0183】
上述のように電圧比αが1以上1.2以下であれば、デューティの第1の設定を用いた結果と、デューティの第2の設定を用いた結果とは大差なく、かつ直流電圧Vdcの脈動はほぼ正弦波状となる。デューティの第2の設定を用いれば、第1修正値と第2修正値との大小比較を行う必要が無く、制御が簡易となる点で有利である。
【0184】
なお、後述する第2の変形及び第3の変形で説明するように、直流電圧Vdcが単相交流電圧Vinの周期の1/2を周期として脈動しても上記の利点が得られる。換言すれば直流電圧Vdcが、放電デューティdcの変動する周期で変動してもよい。
【0185】
(b-6)デューティの修正に伴う指令値の修正.
上述のように放電デューティdc、整流デューティdrecを修正することにより、インバータ5の動作も修正されることになる。一般に、整流デューティdrec、放電デューティdc、零デューティに基づいてインバータ5を制御する手法については、例えば非特許文献2,4や特許文献1において、インバータ用キャリアとそれに対する指令値とを用いた技術が公知である。
【0186】
よって以下ではデューティの修正に伴って、上記指令値がどのように修正されるかについて述べるに留め、詳細なインバータ5の制御についての詳細な説明は省略する。
【0187】
図20は
図3に示された等価回路のスイッチSrec,Sc,Szの動作と、インバータ5のスイッチング素子Sup,Svp,Swpの動作とを示すグラフである。インバータ5のスイッチング素子Sun,Svn,Swnは、基本的にはスイッチング素子Sup,Svp,Swpの動作と相補的であるので、ここでは省略する。
【0188】
以下、簡単のため、電力バッファ回路4を制御するためのキャリアと、インバータ5を制御するためのキャリアとをキャリアCで兼用する場合について説明する。このような手法は非特許文献2や特許文献1でも採用されている。
【0189】
キャリアCの一周期の期間tsを導入し、整流デューティdrecの第1修正値drec1、第2修正値drec2を導入する。
【0190】
図20には、整流デューティの第1修正が採用される場合において整流デューティdrecが第2修正値drec2を採る場合が示されている。つまり、drec1+dc=|sin(ωt)|+(1/α)cos
2(ωt)>1の場合である。
【0191】
期間tcは、キャリアCが値(1−dc)以上となる期間であり、スイッチScが導通する期間(図中「on」で示す:他も同様)である。期間tcは放電デューティdcと期間tsとの積dc・tsと等しい。
【0192】
期間trecは、キャリアCが第1修正値drec1以下となる期間であり、第1修正値drec1と期間tsとの積drec1・tsと等しい。但し、drec1+dc>1の場合を示しているので、期間trecはスイッチSrecが導通する期間ではない。これは電圧比αが1以上であるので、スイッチScが導通してコンデンサC4の両端電圧Vcが直流リンク7に印加されているときには、コンバータ3から直流リンク7には電流が流れず、スイッチSrecが導通しないからである。これはまた、仮想的な零デューティdz1=1−drec1−dcが負となることとも対応する。
【0193】
参考までに、
図20では、期間trecでスイッチSrecが導通したと仮定した場合に、スイッチSrecが導通する期間を破線で延ばして示している。但し実際にはスイッチSrecはスイッチScと相補的に導通し、スイッチSzは期間tsにおいて常に非導通(図中「off」で示す:他も同様)となる。
【0194】
デューティの第1の設定を用いた場合、実際にスイッチSrecが導通する期間は、キャリアCが第2修正値drec2以下となる期間である。第2修正値drec2は値(1−dc)と等しい。これはまた、第1修正値drec1と仮想的な零デューティdz1との和(drec1+dz1)とも等しい。
【0195】
以上のようにして、キャリアCと値(1−dc)との比較によって、スイッチScの動作を制御する信号SScが得られる。
【0196】
信号SSlについては電流ilが定まれば公知の手法(例えば特許文献1)で得られるので、ここではその説明を省略する。当該電流ilは式(19)の最初の等号からみた右辺の計算(Im・|sin(ωt)|−drec・Vdc)で求められる。この際、drec=1−dc、Idc=Pdc/Vdc=Vm・Im/(2・Vdc)を採用すればよい。このような計算において、直流電圧Vdcを簡易に求める観点でも、式(27)の近似式は有用である。
【0197】
上述のように整流デューティdrecとしてその第2修正値drec2を用いるのであるから、インバータ5が出力すべき三相電圧の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を得るための、キャリアCに対する指令値は、drec2+dc・Vw*,drec2+dc・Vv*,drec2+dc・Vu*,drec2・(1−Vu*),drec2・(1−Vv*),drec2・(1−Vw*)となる。
【0198】
スイッチング素子SupはキャリアCが指令値drec2+dc・Vu*以上であるか、指令値drec2・(1−Vu*)以下である場合に導通する。スイッチング素子SvpはキャリアCが指令値drec2+dc・Vv*以上であるか、指令値drec2・(1−Vv*)以下である場合に導通する。スイッチング素子Swpは期間tsにおいて常に非導通となる。
【0199】
図20では電圧ベクトルV0,V4,V6も付記されている。電圧ベクトルV0はスイッチング素子Sup,Svp,Swpの全てが非導通であり(従ってスイッチング素子Sun,Svn,Swnの全てが導通し)、電圧ベクトルV4はスイッチング素子Supが導通してスイッチング素子Svp,Swpが非導通であり(従ってスイッチング素子Sunが非導通であってスイッチング素子Svn,Swnが導通し)、電圧ベクトルV6はスイッチング素子Sup,Svpが導通してスイッチング素子Swpが非導通である(従ってスイッチング素子Sun,Svnが非導通であってスイッチング素子Swnが導通する)状態を示す。
【0200】
このようなdz1<0となる場合の指令値の修正は、drec2=drec1+dz1であることに鑑みれば、例えば特許文献2でも紹介されているので、詳細な説明は省略する。また当該修正に伴う信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnの生成についても、例えば特許文献2でも紹介されているので、詳細な説明は省略する。
【0201】
C.変形.
(c-1)第1の変形:上記で示されたいずれの技術を採用する場合であっても、フィルタ2をコンバータ3と電力バッファ回路4との間に設けることもできる。
【0202】
図21は当該変形として、フィルタ2をコンバータ3と電力バッファ回路4との間に設けた場合の、それらの近傍のみを示す回路図である。
【0203】
このような構成を採用する場合、直流電源線LHにおいて、フィルタ2と放電回路4aとの間に、ダイオードD0を設けることが望ましい。ダイオードD0のアノードはフィルタ2側に、カソードは放電回路4a側に、それぞれ配置される。
【0204】
コンデンサC2の両端電圧が、スイッチScのスイッチングによってコンデンサC4の両端電圧Vcの影響を受けることを、ダイオードD0が防止する。
【0205】
(c-2)第2の変形及び第3の変形:
デューティの基本設定と、デューティの第1修正とを混在させてもよい。具体的には単相交流電圧Vinの周期の1/4毎に、デューティの基本設定と、デューティの第1修正とを交互に採用することができる。これにより直流電圧Vdcは、上記周期を4等分する区間のうち、隣接しない一対の区間において変動し、他の一対の区間において一定となる。
【0206】
図22は位相ωtが180度の整数倍を中心とした1/4周期においてデューティの基本設定を採用し、それ以外の1/4周期においてデューティの第1修正を採用(以下「第2の変形」と称す)した場合の直接型電力変換装置の動作を示すグラフである。
図23は位相ωtが180度の整数倍を中心とした1/4周期においてデューティの第1修正を採用し、それ以外の1/4周期においてデューティの基本設定を採用(以下「第3の変形」と称す)した場合の直接型電力変換装置の動作を示すグラフである。これらはいずれも電圧比αに値1.17を採用したため、
図17に示されたグラフと
図18に示されたグラフとが1/4周期毎に交互に採用された波形を呈している。これらのいずれにおいても電圧利用率Rは0.913であり、これはデューティの第1修正を採用した場合の電圧利用率Rの値0.95と、デューティの基本設定を採用した場合の電圧利用率Rの値0.87との間の値となる。
【0207】
第2の変形及び第3の変形のいずれも、直流電圧Vdcが単相交流電圧Vinの周期の1/2を基本周期として変動すると見ることもできるし、直流電流Idcが上記周期の1/2を基本周期として変動すると見ることもできる。デューティの第1修正を採用した場合の直流電圧Vdcは、上記周期の1/4を基本周期として変動するのであるから、その基本周期の2倍である1/2周期で変動すると見ることもできる。
【0208】
式(15)で示される様に、また
図22及び
図23のいずれにおいても波形で示されるように、入力電力Pdcは一定値を採る場合が想定されている。このような場合、直流電圧Vdcを上記周期の1/Nを基本周期として変動させる場合、制御部10には電源周波数のN倍以上の電流制御帯域が要求される。よってデューティの第1設定を採用する場合と比較して、第2の変形及び第3の変形には、制御部10に要求される電流制御帯域を緩和する利点がある。
【0209】
特許文献4で示される様に、電力バッファ回路4の電力容量を低減するには、バッファリング電力Pbufは交流成分Pin^よりも小さくする制御が望まれる。換言すれば交流成分Pin^がバッファリング電力Pbufに対して大きい制御が望まれる。この場合、直流電流Idcは、整流電圧Vrecが大きい期間において大きく、整流電圧Vrecが小さい期間において小さいことが望まれる。よって第2の変形のように、位相ωtが180度の整数倍を中心とした1/4周期においてデューティの基本設定を採用し、それ以外の1/4周期においてデューティの第1修正を採用することが望ましい。
【0210】
このような直流電流Idcの振る舞いは、空気調和機の圧縮機を駆動するモータ(例えば磁石埋め込み型モータ)のように、トルク負荷が比較的に小さい誘導性負荷6を採用した場合に好適である。これは回転数を高めるためにトルク電流が必要な領域において、インバータ5が出力可能な電圧を高めることにより、いわゆる弱め磁束領域で要求される電流位相の進相が抑制されるからである。これはデューティの基本設定を採用する場合や、第3の変形と比較して、回転速度の上限を高める観点で望ましい。