(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータロータと、前記モータロータを回転させるステータコアを備えるモータステータと、三相毎に少なくとも2系統の第1コイルグループ及び第2コイルグループとに分けられ、かつ前記ステータコアを3相交流で励磁する複数のコイルグループと、を含む電動機と、
前記モータロータを回転駆動させる電流値を指令値として出力する制御装置と、前記指令値に基づいて3相交流の第1モータ駆動電流を前記第1コイルグループに供給する第1モータ駆動回路と、前記第1モータ駆動電流の位相に対して位相差を有する3相交流の第2モータ駆動電流を前記第2コイルグループに供給する第2モータ駆動回路と、を含むモータ駆動回路と、
を備え、
前記位相差は、電気角で45°を超えず、
前記ステータコアは、環状のバックヨークと、前記バックヨークの内周面で周方向に並んで配置される複数のティースと、を備え、
nを自然数としたとき、
前記第1コイルグループは、隣接して並ぶ前記複数のティースのそれぞれに集中巻きされて第1U相、第1V相および第1W相を含む三相交流を生成する第1インバータにより励磁される複数の第1コイルからなるグループであって、前記ステータコアの周方向に等間隔に3n個配置され、
前記第2コイルグループは、前記第1コイルが集中巻きされる前記ティースとは異なる位置で隣接して並ぶ前記複数のティースのそれぞれに集中巻きされて第2U相、第2V相および第2W相を含む三相交流を生成する第2インバータにより励磁される複数の第2コイルからなるグループであって、前記ステータコアの周方向に等間隔に3n個配置され、
前記複数の第1コイルは、前記第1U相の電流により励磁される複数の第1U相コイルと、前記第1V相の電流により励磁される複数の第1V相コイルと、前記第1W相の電流により励磁される複数の第1W相コイルと、を含み、
前記複数の第2コイルは、前記第2U相の電流により励磁される複数の第2U相コイルと、前記第2V相の電流により励磁される複数の第2V相コイルと、前記第2W相の電流により励磁される複数の第2W相コイルと、を含み、
前記3n個の第1コイルグループは、前記第1U相コイルおよび前記第1V相コイルのみからなる第1UVコイルグループと、前記第1V相コイルおよび前記第1W相コイルのみからなる第1VWコイルグループと、前記第1U相コイルおよび前記第1W相コイルのみからなる第1UWコイルグループと、からなり、
前記3n個の第2コイルグループは、前記第2U相コイルおよび前記第2V相コイルのみからなる第2UVコイルグループと、前記第2V相コイルおよび前記第2W相コイルのみからなる第2VWコイルグループと、前記第2U相コイルおよび前記第2W相コイルのみからなる第2UWコイルグループと、からなる
電動機制御装置。
前記制御装置は、前記指令値として所定のデューティ比のパルス幅調変信号を演算する制御部と、前記所定のデューティ比のパルス幅調変信号を第1パルス幅変調信号として、前記第1パルス幅変調信号に対して同じデューティ比かつ前記位相差を与えた第2パルス変調信号を演算する位相差調整部とを備える、請求項1に記載の電動機制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
(実施形態1)
(電動パワーステアリング装置)
図1は、実施形態1に係る電動機を備える電動パワーステアリング装置の構成図である。実施形態1は、
図1を用いて、電動機10を備える電動パワーステアリング装置80の概要を説明する。
【0019】
電動パワーステアリング装置80は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ステアリングギヤ88と、タイロッド89とを備える。また、電動パワーステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bとを備える。
【0020】
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部がトルクセンサ91aを介して操舵力アシスト機構83に連結される。出力軸82bは、一方の端部が操舵力アシスト機構83に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。実施形態1では、入力軸82aおよび出力軸82bは、鉄等の磁性材料から形成される。
【0021】
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。
【0022】
ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを含む。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ラックアンドピニオン形式として構成される。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。タイロッド89は、ラック88bに連結される。
【0023】
操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動機10とを含む。減速装置92は、出力軸82bに連結される。電動機10は、減速装置92に連結され、かつ、補助操舵トルクを発生させる電動機である。なお、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングシャフト82と、トルクセンサ91aと、減速装置92とによりステアリングコラムが構成されている。電動機10は、ステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、実施形態1の電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
【0024】
コラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置80は、操作者と電動機10との距離が比較的近く、電動機10のトルク変化又は摩擦力が操舵者に影響を与えるおそれがある。このため、電動パワーステアリング装置80では、電動機10の摩擦力の低減が求められる。
【0025】
図2は、実施形態1の電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。
図2は、一部を断面として示してある。減速装置92はウォーム減速装置である。減速装置92は、減速装置ハウジング93と、ウォーム94と、玉軸受95aと、玉軸受95bと、ウォームホイール96と、ホルダ97とを備える。
【0026】
ウォーム94は、電動機10のシャフト21にスプライン、または弾性カップリングで結合する。ウォーム94は、玉軸受95aと、ホルダ97に保持された玉軸受95bとで回転自在に減速装置ハウジング93に保持されている。ウォームホイール96は、減速装置ハウジング93に回転自在に保持される。ウォーム94の一部に形成されたウォーム歯94aは、ウォームホイール96に形成されているウォームホイール歯96aに噛み合う。
【0027】
電動機10の回転力は、ウォーム94を介してウォームホイール96に伝達されて、ウォームホイール96を回転させる。減速装置92は、ウォーム94およびウォームホイール96によって、電動機10のトルクを増加する。そして、減速装置92は、
図1に示すステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。
【0028】
図1に示すトルクセンサ91aは、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ91bは、電動パワーステアリング装置80が搭載される車両の走行速度を検出する。ECU90は、電動機10と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bとが電気的に接続される。
【0029】
ECU90は、電動機10の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ91aおよび車速センサ91bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ91aから操舵トルクTを取得し、かつ、車速センサ91bから車両の走行速度Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと走行速度Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動機10へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、電動機10から誘起電圧の情報又は後述するレゾルバからロータの回転の情報を動作情報Yとして取得する。
【0030】
ステアリングホイール81に入力された操舵者(運転者)の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時に、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、かつ、走行速度Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、電動機10の動作を制御する。電動機10が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。
【0031】
出力軸82bを介して出力された操舵トルクT(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介してロアシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に伝達される。ピニオンシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、操舵輪を転舵させる。次に、電動機10について説明する。
【0032】
(電動機)
図3は、中心軸を含む仮想平面で実施形態1の電動機の構成を切って模式的に示す断面図である。
図4は、実施形態1の電動機の構成を中心軸に直交する仮想平面で切って模式的に示す断面図である。
図3に示すように、電動機10は、ハウジング11と、軸受12と、軸受13と、レゾルバ14と、モータロータ20と、ブラシレスモータ用としてのモータステータ30とを備える。
【0033】
ハウジング11は、筒状ハウジング11aと、フロントブラケット11bとを含む。フロントブラケット11bは、略円板状に形成されて筒状ハウジング11aの一方の開口端部を閉塞するように筒状ハウジング11aに取り付けられる。筒状ハウジング11aは、フロントブラケット11bとは反対側の端部に、この端部を閉塞するように底部11cが形成される。底部11cは、例えば、筒状ハウジング11aと一体に形成される。筒状ハウジング11aを形成する材料としては、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄、アルミニウム等が適用できる。また、フロントブラケット11bは、電動機10を所望の機器に取り付ける際のフランジの役割を果たしている。
【0034】
軸受12は、筒状ハウジング11aの内側であって、フロントブラケット11bの略中央部分に設けられる。軸受13は、筒状ハウジング11aの内側であって、底部11cの略中央部分に設けられる。軸受12は、筒状ハウジング11aの内側に配置されたモータロータ20の一部であるシャフト21の一端を回転可能に支持する。軸受13は、シャフト21の他端を回転可能に支持する。これにより、シャフト21は、回転中心Zrの軸を中心に回転する。
【0035】
レゾルバ14は、シャフト21のフロントブラケット11b側に設けられる端子台15によって支持される。レゾルバ14は、モータロータ20(シャフト21)の回転位置を検出する。レゾルバ14は、レゾルバロータ14aと、レゾルバステータ14bとを備える。レゾルバロータ14aは、シャフト21の円周面に圧入等で取り付けられる。レゾルバステータ14bは、レゾルバロータ14aに所定間隔の空隙を介して対向して配置される。
【0036】
モータロータ20は、筒状ハウジング11aに対して回転中心Zrを中心に回転できるように、筒状ハウジング11aの内部に設けられる。モータロータ20は、シャフト21と、ロータヨーク22と、マグネット23とを含む。シャフト21は、筒状に形成される。ロータヨーク22は、筒状に形成される。なお、ロータヨーク22は、外周が円弧状である。この構成により、ロータヨーク22は、外周が複雑形状である場合に比較して、打ち抜き加工の加工工数を低減できる。
【0037】
ロータヨーク22は、電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板が、接着、ボス、カシメなどの手段により積層されて製造される。ロータヨーク22は、順次金型の型内で積層され、金型から排出される。ロータヨーク22は、例えばその中空部分にシャフト21が圧入されてシャフト21に固定される。なお、シャフト21とロータヨーク22とは、一体で成型されてもよい。
【0038】
マグネット23は、ロータヨーク22の周方向に沿って表面に固定され、複数設けられている。マグネット23は、永久磁石であり、S極およびN極がロータヨーク22の周方向に交互に等間隔で配置される。これにより、
図4に示すモータロータ20の極数は、ロータヨーク22の外周側にN極と、S極とがロータヨーク22の周方向に交互に配置された8極である。
【0039】
モータステータ30は、筒状ハウジング11aの内部にモータロータ20を包囲するように筒状に設けられる。モータステータ30は、筒状ハウジング11aの内周面11dに例えば嵌合されて取り付けられる。モータステータ30の中心軸は、モータロータ20の回転中心Zrと一致する。モータステータ30は、筒状のステータコア31と、複数の第1コイル37と、複数の第2コイル38を含む。
【0040】
図4に示すように、ステータコア31は、環状のバックヨーク33と、バックヨーク33の内周面で回転中心Zrを中心とした周方向に並んで配置される複数のティース34と、を備える。以下の説明において、回転中心Zrを中心とした周方向(ステータコア31の周方向)は、単に周方向と記載される。ステータコア31は、電磁鋼板などの磁性材料で形成される。ステータコア31は、略同形状に形成された複数のコア片が回転中心Zrの軸と平行な軸方向に積層されて束ねられることで形成される。バックヨーク33は、例えば円筒形状の部材である。ティース34は、バックヨーク33の内周面から突出している。実施形態1において、ティース34は、周方向に12配置されている。ティース34は、バックヨーク33とは反対側の端部に、ティース先端32を備える。ティース先端32は、ティース34から周方向に突出している。ティース34は、ロータヨーク22の外周面と対向する。ステータコア31は、ロータヨーク22の径方向外側に所定の間隔を有して環状に配置される。
【0041】
ステータコア31が筒状ハウジング11a内に圧入されることで、モータステータ30は、環状の状態で筒状ハウジング11aの内部に設けられる。なお、ステータコア31と筒状ハウジング11aとは、圧入の他に接着、焼き嵌め又は溶接等によって固定されてもよい。
【0042】
図4に示すように、第1コイル37は、複数のティース34のそれぞれに集中巻きされている。第1コイル37は、ティース34の外周にインシュレータ37a(
図3参照)を介して集中巻きされる。インシュレータ37aは、第1コイル37とステータコア31とを絶縁するための部材であり、耐熱部材で形成される。全ての第1コイル37は、同一のインバータ(後述する第1インバータ52)によって励磁される系統である第1コイル系統に含まれる。実施形態1において、第1コイル系統は、例えば第1コイル37を6つ含む。6つの第1コイル37は、2つの第1コイル37が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第1コイル37を1つのグループとした第1コイルグループG1が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第1コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第1コイルグループG1を備えている。なお、第1コイルグループG1は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0043】
図4に示すように、第2コイル38は、複数のティース34のそれぞれに集中巻きされている。第2コイル38は、ティース34の外周にインシュレータを介して集中巻きされる。第2コイル38が集中巻きされるティース34は、第1コイル37が集中巻きされるティース34とは異なるティース34である。全ての第2コイル38は、同一のインバータ(後述する第2インバータ54)によって励磁される系統である第2コイル系統に含まれる。実施形態1において、第2コイル系統は、例えば第2コイル38を6つ含む。6つの第2コイル38は、2つの第2コイル38が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第2コイル38を1つのグループとした第2コイルグループG2が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第2コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第2コイルグループG2を備えている。なお、第2コイルグループG2は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0044】
図5は、ECUによる電動機の駆動を説明するための模式図である。電動機制御装置100は、ECU90及び電動機10を備える。電動機制御装置100は、例えば、トルクセンサ91aなどのセンサからECU90へ入力信号を入力可能である。ECU90は、三相交流により電動機10の動作を制御する。ECU90は、電動機10を制御する制御装置40と、モータ駆動回路50とを含む。制御装置40は、モータロータ20を回転駆動させる電流値を指令値として出力する。モータ駆動回路50は、制御装置40の指令値に基づきPWM(Pulse Width Modulation)と呼ばれる所定のデューティ比のパルス幅調変信号を生成し、電動機10の電流値を制御する3相交流信号を出力する電力供給回路である。モータ駆動回路50は、制御装置40と電気的に接続されていればよく、モータ駆動回路50の発熱の影響を抑制するため、制御装置40が設置されている場所とは異なる場所に設置されている。
【0045】
制御装置40は、機能ブロックとして主制御部41と、第1コイル系統制御部42と、第2コイル系統制御部44と、を含む制御部40Aと、第1位相調整部43と、第2位相調整部45と、含む位相差調整部40Bとを備える。
【0046】
モータ駆動回路50は、指令値に基づいて3相交流の第1モータ駆動電流を第1コイルグループG1に供給する第1モータ駆動回路50Aと、3相交流の第2モータ駆動電流を第2コイルグループG2に供給する第2モータ駆動回路50Bと、を含む。第1モータ駆動回路50Aは、第1ゲート駆動回路51と、第1インバータ52と、を含む。第2モータ駆動回路50Bは、第2ゲート駆動回路53と、第2インバータ54と、を含む。
【0047】
主制御部41は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得する。主制御部41は、トルクセンサ91aから取得した情報に応じて、モータロータ20を回転駆動させる電流値を指令値として演算する。第1コイル系統制御部42は、主制御部41の指令値に基づき、所定のデューティ比の第1パルス幅調変信号を演算する。第1コイル系統制御部42は、第1位相調整部43へ第1パルス幅調変信号の情報を送る。第2コイル系統制御部44は、主制御部41の指令値に基づき、所定のデューティ比の第2パルス幅調変信号をそれぞれ演算する。第2コイル系統制御部44は、第2位相調整部45へ第2パルス幅調変信号の情報を送る。実施形態1において、第1位相調整部43および第2位相調整部45は、第1コイルグループG1に供給する電流の位相と第2コイルグループG2に供給する電流の位相とが同一になるように調節する。なお、第1コイル系統制御部42および第2コイル系統制御部44が出力する時点で、第1パルス幅調変信号の情報と第2パルス幅調変信号の情報との位相差がなく同期している場合、位相差調整部40Bがなくてもよい。第1位相調整部43は、調整後の第1パルス幅調変信号の情報を第1ゲート駆動回路51に送る。第2位相調整部45は、調整後の第2パルス幅調変信号の情報を第2ゲート駆動回路53に送る。
【0048】
第1ゲート駆動回路51は、第1位相調整部43から取得した第1パルス幅調変信号の情報に基づいて、第1インバータ52を制御する。第1インバータ52は、第1ゲート駆動回路51における第1パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるように電界効果トランジスタをスイッチングして第1U相、第1V相および第1W相を含む三相交流を生成する。第1インバータ52が生成した三相交流は、3つの配線Lu1、Lv1、Lw1によって電動機10に送られ、複数の第1コイル37を励磁する。配線Lu1は、第1U相の電流を電動機10に送る。配線Lv1は、第1V相の電流を電動機10に送る。配線Lw1は、第1W相の電流を電動機10に送る。
【0049】
第2ゲート駆動回路53は、第2位相調整部45から取得した第2パルス幅調変信号の情報に基づいて、第2インバータ54を制御する。第2インバータ54は、第2ゲート駆動回路53における第2パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるように電界効果トランジスタをスイッチングして第2U相、第2V相および第2W相を含む三相交流を生成する。第2インバータ54が生成した三相交流は、3つの配線Lu2、Lv2、Lw2によって電動機10に送られ、複数の第2コイル38を励磁する。配線Lu2は、第2U相の電流を電動機10に送る。配線Lv2は、第2V相の電流を電動機10に送る。配線Lw2は、第2W相の電流を電動機10に送る。
【0050】
以上説明したように、制御装置40は、第1ゲート駆動回路51および第2ゲート駆動回路53に対して、モータロータ20を所望の回転駆動させる電流値となる所定のデューティ比の第1パルス幅調変信号および第2パルス幅調変信号を供給し、第1モータ駆動回路50Aおよび第2モータ駆動回路50Bを制御することができる。
【0051】
図6は、第1コイルの配線および第2コイルの配線を示す模式図である。
図6に示すように、6つの第1コイル37は、第1U相の電流により励磁される2つの第1U相コイル37Ua、37Ubと、第1V相の電流により励磁される2つの第1V相コイル37Va、37Vbと、第1W相の電流により励磁される2つの第1W相コイル37Wa、37Wbと、を含む。第1U相コイル37Ubは、第1U相コイル37Uaに対して直列に接続されている。第1V相コイル37Vbは、第1V相コイル37Vaに対して直列に接続されている。第1W相コイル37Wbは、第1W相コイル37Waに対して直列に接続されている。第1コイル37のティース34に対する巻き方向は、全て同じ方向である。また、配線Lu1、Lv1、Lw1は、Y結線で接合されている。
【0052】
図6に示すように、6つの第2コイル38は、第2U相の電流により励磁される2つの第2U相コイル38Ua、38Ubと、第2V相の電流により励磁される2つの第2V相コイル38Va、38Vbと、第2W相の電流により励磁される2つの第2W相コイル38Wa、38Wbと、を含む。第2U相コイル38Ubは、第2U相コイル38Uaに対して直列に接続されている。第2V相コイル38Vbは、第2V相コイル38Vaに対して直列に接続されている。第2W相コイル38Wbは、第2W相コイル38Waに対して直列に接続されている。第2コイル38のティース34に対する巻き方向は、全て同じ方向であり、第1コイル37の巻き方向と同じである。また、配線Lu2、Lv2、Lw2は、Y結線で接合されている。
【0053】
実施形態1の電動機は、
図6に示すように、Y結線された6つの第1コイル37、第2コイル38を例示するが、Δ結線された6つの第1コイル37、第2コイル38であってもよい。
【0054】
図4に示すように、3つの第1コイルグループG1は、第1UVコイルグループG1UVと、第1VWコイルグループG1VWと、第1UWコイルグループG1UWと、からなる。第1UVコイルグループG1UVは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ubおよび第1V相コイル37Vaを含む。第1VWコイルグループG1VWは、周方向で互いに隣接する第1V相コイル37Vbおよび第1W相コイル37Waを含む。第1UWコイルグループG1UWは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Uaおよび第1W相コイル37Wbを含む。
【0055】
図4に示すように、3つの第2コイルグループG2は、第2UVコイルグループG2UVと、第2VWコイルグループG2VWと、第2UWコイルグループG2UWと、からなる。第2UVコイルグループG2UVは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ubおよび第2V相コイル38Vaを含む。第2VWコイルグループG2VWは、周方向で互いに隣接する第2V相コイル38Vbおよび第2W相コイル38Waを含む。第2UWコイルグループG2UWは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Uaおよび第2W相コイル38Wbを含む。
【0056】
第1U相の電流により励磁される第1コイル37は、第2U相の電流により励磁される第2コイル38に、ステータコア31の径方向で対向している。以下の説明において、ステータコア31の径方向は、単に径方向と記載される。例えば、
図4に示すように、径方向で第1U相コイル37Uaが第2U相コイル38Uaに対向し、第1U相コイル37Ubが第2U相コイル38Ubに対向している。
【0057】
第1V相の電流により励磁される第1コイル37は、第2V相の電流により励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、
図4に示すように、径方向で第1V相コイル37Vaが第2V相コイル38Vaに対向し、第1V相コイル37Vbが第2V相コイル38Vbに対向している。
【0058】
第1W相の電流により励磁される第1コイル37は、第2W相の電流により励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、
図4に示すように、径方向で第1W相コイル37Waが第2W相コイル38Waに対向し、第1W相コイル37Wbが第2W相コイル38Wbに対向している。
【0059】
上述したように、第1インバータ52により複数の第1コイル37が励磁され、第2インバータ54により複数の第2コイル38が励磁される。これにより、第1インバータ52と第2インバータ54とが互いに独立して三相交流を電動機10に供給しているので、仮に第2コイル38に電流が供給されなくなった場合でも、第1コイル37が電動機10を駆動できる。また、仮に第1コイル37に電流が供給されなくなった場合でも、第2コイル38が電動機10を駆動できる。以下の説明においても、第2コイル38に電流が供給されなくなった場合を例に挙げて説明し、第1コイル37に電流が供給されなくなった場合は同様の説明となるため省略する。
【0060】
また、複数の第1コイル37からなる第1コイルグループG1が周方向に等間隔に3つ配置されている。これにより、第1コイルグループG1が周方向に等間隔に2つ配置されている場合に比較して、第1コイルグループG1間の周方向の距離が小さくなる。このため、仮に第2コイル38に電流が供給されなくなった場合でも、第1コイル37がトルクを発生させる位置の周方向でのバラつきが小さくなる。よって、電動機10は、互いに独立して励磁される2つのコイルの系統のうち1つの系統のみによる駆動でも、トルクリップルの増大を抑制できる。
【0061】
また、3つの第1コイルグループG1は、第1UVコイルグループG1UVと、第1VWコイルグループG1VWと、第1UWコイルグループG1UWと、からなる。第2コイルグループG2は、第2UVコイルグループG2UVと、第2VWコイルグループG2VWと、第2UWコイルグループG2UWと、からなる。これにより、同相の電流で励磁される2つの第1コイル37が1つの第1コイルグループG1に属することがなくなり、同相の電流で励磁される2つの第2コイル38が1つの第2コイルグループG2に属することがなくなる。同相の電流で励磁される2つの第1コイル37とは、2つの第1U相コイル37Ua、37Ub、2つの第1V相コイル37Va、37Vb、または2つの第1W相コイル37Wa、37Wbのうちいずれかを意味する。このため、トルクの発生位置が周方向に分散しやすくなる。よって、電動機10は、トルクリップルをより抑制できる。
【0062】
上述した特許文献1に記載の技術を用いた場合、一方の系統でモータを駆動するとき、当該系統のうち周方向の端部に配置されるのは特定の二相(U相およびV相の組み合わせ、V相およびW相の組み合わせ、またはU相およびW相の組み合わせのいずれか)で励磁されるコイルとなっている。これにより、三相交流の各相の位相の変化に応じてトルクの発生量が変動しやすくなり、トルクリップルが増大する可能性があった。これに対して、実施形態1に係る電動機10においては、第1コイルグループG1のうち周方向の端部には、第1U相コイル37Ua、37Ub、第1V相コイル37Va、37Vbまたは第1W相コイル37Wa、37Waが配置されている。第2コイルグループG2のうち周方向の端部には、第2U相コイル38Ua、38Ub、第2V相コイル38Va、38Vbまたは第2W相コイル38Wa、38Wbが配置されている。これにより、電動機10は、三相交流の各相の位相の変化に応じてトルクの発生量が変動しにくくなるので、トルクリップルの増大をより抑制できる。
【0063】
なお、実施形態1の電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式を例にして説明しているが、ピニオンアシスト方式およびラックアシスト方式についても適用することができる。
【0064】
以上述べたように、電動機10は、環状のバックヨーク33と、バックヨーク33の内周面で周方向に並んで配置される複数のティース34と、を備える環状のステータコア31を備える。電動機10は、nを自然数としたとき、隣接して並ぶ複数(実施形態1においては2つ)のティース34のそれぞれに集中巻きされて第1U相、第1V相および第1W相を含む三相交流を生成する第1インバータ52により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第1コイル37からなるグループであって、ステータコア31の周方向に等間隔に3n個(実施形態1においては3つ)配置される第1コイルグループG1を備える。電動機10は、第1コイル37が集中巻きされるティース34とは異なる位置で隣接して並ぶ複数(実施形態1においては2つ)のティース34のそれぞれに集中巻きされて第2U相、第2V相および第2W相を含む三相交流を生成する第2インバータ54により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第2コイル38からなるグループであって、ステータコア31の周方向に等間隔に3n個(実施形態1においては3つ)配置される第2コイルグループG2を備える。
【0065】
これにより、第1コイルグループG1が周方向に等間隔に2つ配置されている場合に比較して、第1コイルグループG1間の周方向の距離が小さくなる。このため、仮に第2コイル38に電流が供給されなくなった場合でも、第1コイル37がトルクを発生させる位置の周方向でのバラつきが小さくなる。よって、電動機10は、互いに独立して励磁される2つのコイルの系統のうち1つの系統のみによる駆動でも、トルクリップルの増大を抑制できる。
【0066】
また、複数(実施形態1においては6つ)の第1コイル37は、第1U相の電流により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第1U相コイル37Ua、37Ubと、第1V相の電流により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第1V相コイル37Va、37Vbと、第1W相の電流により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第1W相コイル37Wa、37Wbと、を含む。複数(実施形態1においては6つ)の第2コイル38は、第2U相の電流により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第2U相コイル38Ua、38Ubと、第2V相の電流により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第2V相コイル38Va、38Vbと、第2W相の電流により励磁される複数(実施形態1においては2つ)の第2W相コイル38Wa、38Wbと、を含む。3n個(実施形態1においては3つ)の第1コイルグループG1は、第1U相コイル37Ubおよび第1V相コイル37Vaを含む第1UVコイルグループG1UVと、第1V相コイル37Vbおよび第1W相コイル37Waを含む第1VWコイルグループG1VWと、第1U相コイル37Uaおよび第1W相コイル37Wbを含む第1UWコイルグループG1UWと、からなる。3n個(実施形態1においては3つ)の第2コイルグループG2は、第2U相コイル38Ubおよび第2V相コイル38Vaを含む第2UVコイルグループG2UVと、第2V相コイル38Vbおよび第2W相コイル38Waを含む第2VWコイルグループG2VWと、第2U相コイル38Uaおよび第2W相コイル38Wbを含む第2UWコイルグループG2UWと、からなる。
【0067】
これにより、同相の電流で励磁される2つの第1コイル37が1つの第1コイルグループG1に属することがなくなり、同相の電流で励磁される2つの第2コイル38が1つの第2コイルグループG2に属することがなくなる。このため、トルクの発生位置が周方向に分散しやすくなる。よって、電動機10は、トルクリップルをより抑制できる。
【0068】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る第1コイルの配線および第2コイルの配線を示す模式図である。上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0069】
変形例1に係る電動機10においては、第2コイル38のティース34に対する巻き方向は、第1コイル37のティース34に対する巻き方向と逆方向である。また、変形例1に係る電動機10において、第1位相調整部43および第2位相調整部45は、第1コイルグループG1に供給する電流の位相と第2コイルグループG2に供給する電流の位相とが互いに180°異なるように調節する。これにより、各第1コイル37および各第2コイル38によって発生する磁界の向きは、上述した実施形態1と同じとなる。
【0070】
第2コイル38のティース34に対する巻き方向が第1コイル37のティース34に対する巻き方向と逆方向であるため、第1コイル37と第2コイル38とでティース34に対する巻き始めの位置が相違する。例えば、第1コイル37がティース34の径方向外側端部から巻き始められる場合、第2コイル38はティース34の径方向内側端部から巻き始められる。このため、
図7に示すように、配線Lu1、Lv1、Lw1のうち第1インバータ52に接続される側の端部が電動機10の径方向外側寄りに位置し、配線Lu2、Lv2、Lw2のうち第2インバータ54に接続される側の端部が電動機10の径方向内側寄りに位置する。よって、電動機10に接続される配線の位置がバラつきやすくなる。したがって、変形例1に係る電動機10は、複数の配線が互いに干渉する可能性を低減することができる。
【0071】
また、第1コイルグループG1に供給する電流の位相と第2コイルグループG2に供給する電流の位相とが互いに180°異なることによって、第1インバータ52から電動機10までの間の配線Lu1、Lv1、Lw1からの放射ノイズと、第2インバータ54から電動機10までの間の配線Lu2、Lv2、Lw2からの放射ノイズとが相殺する。このため、ECU90から電動機10までの間の配線での放射ノイズが低減される。
【0072】
(変形例2)
図8は、変形例2に係る電動機の構成を中心軸に直交する仮想平面で切って模式的に示す断面図である。
図8に示すように、変形例2におけるモータロータ20の極数は、ロータヨーク22の外周側にN極と、S極とがロータヨーク22の周方向に交互に配置された20極である。また、ティース34は、周方向に24配置されている。
【0073】
図8に示すように、変形例2において、第1コイル37は12配置されている。12の第1コイル37は、4つの第1コイル37が周方向で隣接して並ぶように配置されている。隣接して並ぶ4つの第1コイル37を1つのグループとした第1コイルグループG1が、周方向に等間隔に3つ配置されている。3つの第1コイルグループG1は、第1UVコイルグループG1UV、第1VWコイルグループG1VWおよび第1UWコイルグループG1UWからなる。
【0074】
第1UVコイルグループG1UVは、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第1U相コイル37Ubの組と、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第1V相コイル37Vaの組との2組からなる。第1VWコイルグループG1VWは、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第1V相コイル37Vbの組と、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第1W相コイル37Waの組との2組からなる。第1UWコイルグループG1UWは、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第1U相コイル37Uaの組と、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第1W相コイル37Wbの組との2組からなる。
【0075】
1組の第1U相コイル37Ua、1組の第1V相コイル37Va、1組の第1W相コイル37Wa、1組の第1U相コイル37Ub、1組の第1V相コイル37Vbおよび1組の第1W相コイル37Wbは、それぞれ直列に接続されている。また、1組の第1U相コイル37Ubは、1組の第1U相コイル37Uaに対して直列に接続されている。1組の第1V相コイル37Vbは、1組の第1V相コイル37Vaに対して直列に接続されている。1組の第1W相コイル37Wbは、1組の第1W相コイル37Waに対して直列に接続されている。
【0076】
図8に示すように、変形例2において、第2コイル38は12配置されている。12の第2コイル38は、4つの第2コイル38が周方向で隣接して並ぶように配置されている。隣接して並ぶ4つの第2コイル38を1つのグループとした第2コイルグループG2が、周方向に等間隔に3つ配置されている。3つの第2コイルグループG2は、第2UVコイルグループG2UV、第2VWコイルグループG2VWおよび第2UWコイルグループG2UWからなる。
【0077】
第2UVコイルグループG2UVは、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第2U相コイル38Ubの組と、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第2V相コイル38Vaの組との2組からなる。第2VWコイルグループG2VWは、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第2V相コイル38Vbの組と、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第2W相コイル38Waの組との2組からなる。第2UWコイルグループG2UWは、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第2U相コイル38Uaの組と、ティース34に対する巻き方向が互いに逆方向であって周方向で互いに隣接する2つの第2W相コイル38Wbの組との2組からなる。
【0078】
1組の第2U相コイル38Ua、1組の第2V相コイル38Va、1組の第2W相コイル38Wa、1組の第2U相コイル38Ub、1組の第2V相コイル38Vbおよび1組の第2W相コイル38Wbは、それぞれ直列に接続されている。また、1組の第2U相コイル38Ubは、1組の第2U相コイル38Uaに対して直列に接続されている。1組の第2V相コイル38Vbは、1組の第2V相コイル38Vaに対して直列に接続されている。1組の第2W相コイル38Wbは、1組の第2W相コイル38Waに対して直列に接続されている。
【0079】
変形例2において、1組の第1コイル37は、互いに逆方向の磁界を形成するように励磁される。1組の第2コイル38は、互いに逆方向の磁界を形成するように励磁される。これにより、互いに逆向きに励磁された第1コイル37および第2コイル38が、周方向に交互に配置されることになる。
【0080】
したがって、変形例2に係る電動機10は、上述した実施形態1に比較して、磁極の数が多くなる。このため、変形例2に係る電動機10は、トルクの発生位置を周方向でより分散しやすくなる。このため、変形例2に係る電動機10は、トルクリップルをより抑制できる。
【0081】
(変形例3)
図9は、変形例3に係る電動機の構成を中心軸に直交する仮想平面で切って模式的に示す断面図である。変形例3において、マグネット23は、ロータヨーク22に設けられた複数のスロットに埋め込まれている。マグネット23は、ロータヨーク22の外周面よりも径方向内側に配置されている。これにより、変形例3に係る電動機10は、リラクタンストルクを付加したトルクを発生させることができる。
【0082】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係る電動機に供給される第1U相および第2U相の電流波形を示す説明図である。
図11は、第1モータ駆動電流の位相と第2モータ駆動電流との位相差に対する、平均トルクおよびトルクリップルの大きさ変化量を説明するための説明図である。実施形態2に係る電動機10および電動機制御装置100は、
図1から
図6に示す実施形態1に係る電動機10及び電動機制御装置100と同じであるが、制御装置40の位相差調整部40Bの動作が異なる。以下、
図1から
図6、
図10及び
図11を適宜参照して説明する。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0083】
図5に示すように、主制御部41は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得する。主制御部41は、トルクセンサ91aから取得した情報に応じて、モータロータ20を回転駆動させる電流値を指令値として演算する。第1コイル系統制御部42は、主制御部41の指令値に基づき、所定のデューティ比の第1パルス幅調変信号を演算する。第1コイル系統制御部42は、第1位相調整部43へ第1パルス幅調変信号の情報を送る。第2コイル系統制御部44は、主制御部41の指令値に基づき、所定のデューティ比の第2パルス幅調変信号をそれぞれ演算する。第2コイル系統制御部44は、第2位相調整部45へ第2パルス幅調変信号の情報を送る。
【0084】
実施形態2において、第1位相調整部43および第2位相調整部45は、第1コイルグループG1に供給する電流の位相に対して第2コイルグループG2に供給する電流の位相が進むように調節する。第1位相調整部43は、調整後の第1パルス幅調変信号の情報を第1ゲート駆動回路51に送る。第2位相調整部45は、調整後の第2パルス幅調変信号の情報を第2ゲート駆動回路53に送る。
【0085】
第1ゲート駆動回路51は、第1位相調整部43から取得した第1パルス幅調変信号の情報に基づいて、第1インバータ52を制御する。第1インバータ52は、第1ゲート駆動回路51における第1パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるように電界効果トランジスタをスイッチングして第1U相、第1V相および第1W相を含む三相交流を生成する。第1インバータ52が生成した三相交流は、3つの配線Lu1、Lv1、Lw1によって電動機10に送られ、複数の第1コイル37を励磁する。配線Lu1は、第1U相の電流を電動機10に送る。配線Lv1は、第1V相の電流を電動機10に送る。配線Lw1は、第1W相の電流を電動機10に送る。
【0086】
第2ゲート駆動回路53は、第2位相調整部45から取得した第2パルス幅調変信号の情報に基づいて、第2インバータ54を制御する。第2インバータ54は、第2ゲート駆動回路53における第2パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるように電界効果トランジスタをスイッチングして第2U相、第2V相および第2W相を含む三相交流を生成する。第2インバータ54が生成した三相交流は、3つの配線Lu2、Lv2、Lw2によって電動機10に送られ、複数の第2コイル38を励磁する。配線Lu2は、第2U相の電流を電動機10に送る。配線Lv2は、第2V相の電流を電動機10に送る。配線Lw2は、第2W相の電流を電動機10に送る。
【0087】
実施形態1と同様に、第1モータ駆動電流は、電気角で120°ずつずれた正弦波である第1U相、第1V相および第1W相の対称三相交流である。また、第2モータ駆動電流は、電気角で120°ずつずれた正弦波である第2U相、第2V相および第2W相の対称三相交流である。第1モータ駆動電流と第2モータ駆動電流との位相差は、第1U相と第2U相との位相差が、第1V相と第2V相との位相差および第1W相と第2W相との位相差と同じになることから、
図10に示す第1U相と第2U相との位相差で説明する。
【0088】
図10に示すように、第1モータ駆動電流の第1U相の電流Au1は、第1U相の逆起電力と逆起電力に対応する相の電流の位相差が0°である基準相に対して位相差β1が0である。このため、第1コイルグループG1は、ステータコア31の周方向に等間隔に3つ配置されているので、モータロータ20の回転角に関係なく、第1コイルグループG1だけを考えれば、第1コイルグループG1に供給する電流に比例した回転トルクが発生し、平均トルクは一定になるように考えられる。しかしながら、第2モータ駆動電流の第2U相の電流Au2は、第2U相の逆起電力と逆起電力に対応する相の電流の位相差が0になる基準相に対して位相差β2分進んでいる。このため、第1コイルグループG1及び第2コイルグループG2の相互作用により、
図11に示すように、位相差β2が基準相に対し進むにつれて、平均トルクTaが減少する。ところで、本発明者らは、第1コイルグループG1及び第2コイルグループG2の相互作用により、
図11に示す位相差β2が基準相に対し進むにつれて、トルクリップルTrが減少して、所定の極値でトルクリップルTrが増加に転じることを見いだした。これに対して、第1コイルグループG1及び第2コイルグループG2の相互作用により、
図11に示す位相差β2が基準相に対し遅れるにつれて、トルクリップルTrが増加してしまうと想定される。
【0089】
図11に示すように、位相差β1が0の場合、位相差β2は、電気角で10°が最も好ましい。
【0090】
以上説明したように、実施形態2に係る電動機制御装置100は、電動機10と、制御装置40と、モータ駆動回路50を備える。電動機10は、モータロータ20と、モータステータ30と、三相毎に少なくとも2系統の第1コイルグループG1及び第2コイルグループG2とに分けられ、かつステータコア31を3相交流で励磁する複数のコイルグループと、を含む。制御装置40は、モータロータ20を回転駆動させる電流値を指令値として出力する。モータ駆動回路50は、第1モータ駆動回路50Aと第2モータ駆動回路50Bとを備え、第1モータ駆動回路50Aが上述した指令値に基づいて3相交流の第1モータ駆動電流を第1コイルグループG1に供給し、第2モータ駆動回路50Bが第1モータ駆動電流の位相に対して進む位相差を有する3相交流の第2モータ駆動電流を第2コイルグループG2に供給する。
【0091】
これにより、互いに独立して励磁される2つの第1コイルグループG1及び第2コイルグループG2を同時に励磁した場合、トルクリップルを抑制することができる。
【0092】
制御装置40は、上述したように指令値として所定のデューティ比のパルス幅調変信号を演算する制御部40Aと、位相差調整部40Bとを備える。位相差調整部40Bは、所定のデューティ比のパルス幅調変信号を第1パルス幅変調信号として、第1パルス幅変調信号に対して同じデューティ比かつ位相差(β2−β1)を与えた第2パルス幅変調信号を演算する。制御装置40の位相差調整部40Bは、平均トルクの減少率よりも、トルクリップルの減少率の大きい範囲で位相差β2を調整し、電動機10は、モータロータ20に対してトルクリップルの低減された回転が付与されるよう制御される。また、位相差調整部40Bは、平均トルクTaを増加する場合は、位相差(β2−β1)を0に近づけ、トルクリップルTrを低減する場合は、位相差(β2−β1)を大きくする制御を行うことができる。
【0093】
第1モータ駆動回路50Aは、第1パルス幅変調信号のPWM制御により第1モータ駆動電流を第1コイルグループG1に供給し、第2モータ駆動回路50Bは、第2パルス幅変調信号のPWM制御により第2モータ駆動電流を第2コイルグループG2に供給する。これにより、独立した第1モータ駆動回路50A及び第2モータ駆動回路50Bを備えることにより、冗長性を高め、モータ駆動回路50のフェールセーフ性を高めることができる。
【0094】
上述した位相差(β2−β1)は、電気角で45°を超えない。位相差(β2−β1)は、電気角で45°を超えないので、平均トルクTaの減少を抑制できる。
【0095】
実施形態2に係る電動機において、出力トルクTsは、下記式(1)により求められる。
【0097】
ここで、Tmは、マグネット23の磁束φmによるトルク、Trはリラクタンストルクである。リラクタンストルクTrは、下記式(2)により求められる。
【0099】
ここで、Pはマグネット23の極対数である。Lqはq軸インダクタンスである。Ldはd軸インダクタンスである。Iqは、電機子電流のq軸成分である。Idは電機子電流のd軸成分である。
【0100】
一般に、式(2)によれば、q軸インダクタンスLqが大きく、d軸インダクタンスLdが小さければ、リラクタンストルクTrを大きくできることが分かる。なお、マグネット23によるトルクTmは、下記式(3)で定まる。
【0102】
ここで、Φmは、各極対ごとの磁石磁束総量である。
【0103】
上述したように、実施形態2に係る電動機は、第1コイルグループG1と第2コイルグループG2とを備えている。このため、実施形態2に係る電動機の出力トルクTsは、第1コイルグループG1によるトルクTg1と、第2コイルグループG2によるトルクTg2とに分けて考えることができる。つまり、出力トルクTsは、下記式(4)により求められる。
【0105】
トルクTg1は、式(1)を適用すると、下記式(5)により求められる。
【0107】
ここで、Tm1は、第1コイルグループG1に対するマグネット23の磁束φmによるマグネットトルクである。Tr1は、第1コイルグループG1に対するリラクタンストルクである。同様に、トルクTg2は、式(1)を適用すると、下記式(6)により求められる。
【0109】
ここで、Tm2は、第2コイルグループG2に対するマグネット23の磁束φmによるマグネットトルクである。Tr2は、第2コイルグループG2に対するリラクタンストルクである。
【0110】
図12は、dq軸において、第1コイルグループの電機子磁束と、第2コイルグループの電機子磁束とのベクトル関係を示した図である。
図12に示すように、ロータ磁極のq軸に対して、第1コイルグループG1の電機子磁束mf1と、第2コイルグループG2の電機子磁束mf2との間に位相差2δを設ける場合を以下に検討する。
【0111】
ロータ磁極のq軸に対して、第1コイルグループG1と第2コイルグループG2とのそれぞれの進角の加算値の平均をβとする。
【0112】
そうすると、ロータd軸を基準に、第1コイルグループG1の回転磁界の進角は、(β−δ)になる。入力電流の振幅値をIaとした場合、Tm1は、下記式(7)により求められる。
【0114】
同様に、Tr1は、下記式(8)により求められる。
【0116】
Tm2は、下記式(9)により求められる。
【0118】
同様に、Tr2は、下記式(10)により求められる。
【0120】
βは、−90°以上90°以下であるが、実施形態2では、理解しやすくするためβ=0°の場合を考える。この場合、第1コイルグループG1に対するリラクタンストルクと、第2コイルグループG2に対するリラクタンストルクとの成分の加算値は、0となる。
【0121】
つまり、式(8)及び式(10)に、β=0を代入すると、下記式(11)が成り立つ。
【0123】
式(11)によれば、第1コイルグループG1と第2コイルグループG2とのトルク波形の位相を意図的にずらすことによって、第1コイルグループG1および第2コイルグループG2による2グループ間のトルクリップル成分同士が打ち消しあう。その結果、ステータ巻き線にスキューなどを加えなくてもトルクリップル成分を抑制することができる。
【0124】
図13は、実施形態1または実施形態2に係る電動機を備える電動パワーステアリング装置を搭載した車両の模式図である。
図13に示すように、車両101は、上述した実施形態1または実施形態2に係る電動機10を備える電動パワーステアリング装置80を搭載している。車両101は、上述した実施形態1または実施形態2に係る電動機10を電動パワーステアリング装置80以外の用途で搭載してもよい。