【文献】
柳讚錫 他,ハイパースペクトルセンシングによるチャの収量と品質判定,農業機械学会誌,2010年 1月 1日,Vol. 72, No. 1,pp. 46-53
【文献】
境谷栄二, 井上吉雄,航空機リモートセンシングによる津軽中央地域における玄米タンパク含有率の推定,日本作物学会講演会,2007年 3月27日,第223回,pp. 206-207
【文献】
野々村敦子, 増田拓朗,分光反射特性を用いた植生の活力度と緑被率の評価に関する基礎的研究,日本緑化工学会誌,2007年 8月31日,Vol. 33, No. 1,pp. 83-88
【文献】
Anatoly A. GITELSON,Novel Algorithms for Remote Estimation of Vegetation Fraction,Remote Sensing of Environment,2002年 4月,Vol. 80, No. 1,pp. 76-87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記植生指数の算出において、茶期に応じて前記3つの光域に重み付けを行って、前記重みづけによる計算値として前記植生指数を算出する請求項1に記載の茶葉の摘採適性評価方法。
近赤外光域の光学データをIR、赤色光域の光学データをR、緑色光域の光学データをGとし、植生指数を下記式によって算出することによって、係数α(但し、αは1〜3の実数)を用いて光域に対する重み付けを行う請求項2に記載の茶葉の摘採適性評価方法。
植生指数=[(3−α)*IR+(α−1)*G−2R]/
[(3−α)*IR+(α−1)*G+2R]
前記光学データは、茶葉の放射輝度を含み、前記光学データの加工は、各光域毎に、基準とする反射体を用いて測定される前記反射体の放射輝度と照度との関係において、照度が0の時の放射輝度として得られる切片値を前記茶葉の放射輝度から減算することを含む請求項5に記載の茶葉の摘採適性評価方法。
全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群から選択される少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを有するデータベースを利用して、茶葉の摘採適性の評価を実行可能な摘採適性評価装置としてコンピュータを機能させるコンピュータが読み取り可能なプログラムコードを有するコンピュータ使用可能な媒体であって、前記プログラムコードは、
茶葉の画像情報に含まれる光学データを用いて、コンピュータに植生指数の算出を実行させる、コンピュータが読み取り可能な第1プログラムコードと、
算出された前記植生指数を用いて、前記データベースの少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係に基づいて、前記評価項目について茶葉の摘採適性の評価をコンピュータに実行させる、コンピュータが読み取り可能な第2プログラムコードと
を有し、前記茶葉の画像情報に含まれる光学データは、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含み、前記第1プログラムコードは、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択するコンピュータ使用可能な媒体。
茶葉の摘採適性の評価を実行可能な摘採適性評価装置としてコンピュータを機能させるコンピュータが読み取り可能なプログラムコードと、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群から選択される少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを格納するデータベースとを有するコンピュータ使用可能な媒体であって、前記プログラムコードは、
茶葉の画像情報に含まれる光学データを用いて、コンピュータに植生指数の算出を実行させる、コンピュータが読み取り可能な第1プログラムコードと、
算出された前記植生指数を用いて、前記データベースの少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係に基づいて、前記評価項目について茶葉の摘採適性の評価をコンピュータに実行させる、コンピュータが読み取り可能な第2プログラムコードと
を有し、前記茶葉の画像情報に含まれる光学データは、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含み、前記第1プログラムコードは、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択するコンピュータ使用可能な媒体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
撮影された画像情報に基づいた農作物の生育状況の分析は、運搬や仕分け等の作業が不要であり、広範囲な領域や遠隔地にも適用可能であり、分析結果を速やかに得ることができるので、極めて有用な方法である。
【0010】
しかし、農作物の画像撮影は野外で行われるので、天候や時間によって撮影条件が異なり、画像データにばらつきが生じて、評価結果の精度を低下させる。従って、画像データに基づく評価精度を高めて適確に判断するためには、撮影条件の違いによって評価結果に含まれる誤差を小さくするための改善を施す必要がある。
【0011】
本発明は、茶樹の新芽の摘採の適否を短時間且つ高い精度で簡易に判断可能な茶葉の摘採適性評価方法、摘採適性評価装置、摘採適性評価判断システム及び摘採適性の評価を実施するためのコンピュータ使用可能な媒体を提供することを課題とする。
【0012】
又、本発明は、茶葉のサンプリングが不要である非接触且つ非破壊的な手法によって、茶樹の新芽の摘採の適否を適確に判断可能な、茶葉の摘採適性評価方法、摘採適性評価装置、摘採適性評価システム及び摘採適性の評価を実施するためのコンピュータ使用可能な媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題解決のために検討を行った結果、茶園の撮影画像を利用して茶樹の新芽が摘採に適した状態にあるか否かを判断する際に、使用する光学データを収穫期によって選定したり、特定の撮影条件に関する補正を行うことによって評価・判断の精度を向上可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の一態様によれば、茶葉の摘採適性評価方法は、茶葉の画像情報に含まれる光学データを用いて植生指数を算出し、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群より選択される少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係に基づいて、算出された前記植生指数を用いて前記評価項目について茶葉の摘採適性を評価する茶葉の摘採適性評価方法であって、前記光学データは、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含
み、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域は、茶期に応じて前記3つの光域から選択されることを要旨とする。
【0015】
上記植生指数の算出において、茶期に応じて3つの光域に重み付けを行って、重みづけ計算値として前記植生指数を算出することができる。
【0016】
上記茶葉の摘採適性の評価によって、茶葉が摘採適期にあるか否かを判断することができる。
【0017】
又、本発明の一態様によれば、茶葉の摘採適性評価システムは、茶葉の画像情報を作成する撮影装置と、前記画像情報に含まれる光学データを用いて植生指数を算出し、算出された植生指数を用いて、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群より選択される少なくとも1つの評価項目について茶葉の摘採適性を評価する情報処理部とを有し、前記撮影装置は、前記光学データとして、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含む画像情報を作成し、前記情報処理部は、前記少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを有するデータベースを用いて、前記評価項目について茶葉の摘採適性の評価が可能であ
って、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択することを要旨とする。
【0018】
本発明の他の態様によれば、茶葉の摘採適性評価システムは、茶葉の画像情報を作成する撮影装置と、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群から選択される少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを有するデータベースと、前記画像情報に含まれる光学データを用いて植生指数を算出し、前記データベースの少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係に基づいて、算出された植生指数を用いて前記評価項目について茶葉の摘採適性を評価する情報処理部とを有し、前記撮影装置は、前記光学データとして、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含む画像情報を作成
し、前記情報処理部は、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択することを要旨とする。
【0019】
又、本発明の一態様によれば、茶葉の摘採適性評価装置は、茶葉の画像情報を取得する入力部と、前記入力部が取得する茶葉の画像情報に含まれる光学データを用いて植生指数を算出し、算出された植生指数を用いて、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群より選択される少なくとも1つの評価項目について茶葉の摘採適性を評価する演算処理部であって、前記少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを有するデータベースを用いて、前記評価項目について茶葉の摘採適性の評価が可能である前記演算処理部と、前記演算処理部によって評価される茶葉の摘採適性を表示する表示部とを有し、前記入力部は、前記光学データとして、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含む画像情報を取得
し、前記情報処理部は、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択することを要旨とする。
【0020】
更に、本発明の一態様によれば、コンピュータ使用可能な媒体は、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群から選択される少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを有するデータベースを利用して、茶葉の摘採適性の評価を実行可能な摘採適性評価装置としてコンピュータを機能させるコンピュータが読み取り可能なプログラムコードを有するコンピュータ使用可能な媒体であって、前記プログラムコードは、茶葉の画像情報に含まれる光学データを用いて、コンピュータに植生指数の算出を実行させる、コンピュータが読み取り可能な第1プログラムコードと、算出された前記植生指数を用いて、前記データベースの少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係に基づいて、前記評価項目について茶葉の摘採適性の評価をコンピュータに実行させる、コンピュータが読み取り可能な第2プログラムコードとを有し、前記茶葉の画像情報に含まれる光学データは、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含
み、前記第1プログラムコードは、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択することを要旨とする。
【0021】
又、本発明の他の態様によれば、コンピュータ使用可能な媒体は、茶葉の摘採適性の評価を実行可能な摘採適性評価装置としてコンピュータを機能させるコンピュータが読み取り可能なプログラムコードと、全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数からなる群から選択される少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係を定めるデータを格納するデータベースとを有するコンピュータ使用可能な媒体であって、前記プログラムコードは、茶葉の画像情報に含まれる光学データを用いて、コンピュータに植生指数の算出を実行させる、コンピュータが読み取り可能な第1プログラムコードと、算出された前記植生指数を用いて、前記データベースの少なくとも1つの評価項目と植生指数との相関関係に基づいて、前記評価項目について茶葉の摘採適性の評価をコンピュータに実行させる、コンピュータが読み取り可能な第2プログラムコードとを有し、前記茶葉の画像情報に含まれる光学データは、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域の3つの光域の各々における、茶葉の反射光に関するデータを含
み、前記第1プログラムコードは、前記植生指数の算出に用いる光学データの光域を、茶期に応じて前記3つの光域から選択することを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、茶園の撮影画像を利用した非接触且つ非破壊的な手法によって、茶樹の新芽の摘採適性を評価し、新芽が摘採に適した時期であるか否かを短時間で簡易に判断でき、収穫期に応じた使用データの選定や撮影条件によるデータ補正によって評価精度が向上するので、広範囲に渡る茶園について区画毎に正確且つ速やかに摘採を判断することが可能であり、目的の品質を有する茶葉を効率よく収穫できる。又、摘採される生茶葉の均質化や、収穫予定の設定によって生産を安定化し生産効率を向上することができる。試料のサンプリングや成分分析などの煩雑且つ時間を要する作業を省略することができるので、摘採判断に関連する労力が軽減される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
茶葉に含まれる各種成分の量は、摘採した茶葉新芽の生長度合いによって異なり、茶製品の製造に用いられる生茶葉に必要とされる品質は、製造する製品の種類及びランクによって異なる。従って、茶葉の摘採時期は、摘採される茶葉が、製造する目的製品に適した品質を有し、且つ、高い収穫量で得られるように決定する必要がある。このような摘採適期の決定は、客観的な評価項目に基づいて茶園の調査・観察を行うことによって、熟練者の技能に頼らずに行うことが可能である。しかし、広範な茶園においては、場所によって日当たり等の環境条件が異なるため、区画毎に逐一観察を行って適期を決定すると長時間を要し、適期を逃しかねない。
【0025】
広範な圃場において栽培される農作物の生育状態を調査する方法として、飛行機等を用いて撮影した農作物の撮影画像を利用して生育状態を把握するリモートセンシングが検討されており、撮影において検出される可視光及び近赤外光の光学データに基づいて算出される様々な植生指数によって農作物の生育状態を評価することが試みられている。本願発明者らは、茶園の撮影によって様々な画像情報を作成して、撮影画像情報に基づいた茶葉の摘採適性の評価及び適期判断を可能とする相関性が存在することを見出し、これに基づいて、リモートセンシングによって茶葉の客観的評価及び摘採適期の判断を可能とする方法及びシステムを前記特許文献3において提案している。本発明は、これらの改善に関し、より高い精度での評価・判断を実現するために、評価に使用する光学データの更なる選定や、撮影条件に応じた適確なデータ補正を行う。以下、本発明の画像情報に基づいた茶葉の摘採適性評価方法及び摘採適性評価システムについて詳細に説明する。
【0026】
画像情報に含まれる光学データは、撮影装置が検出する光種に関するものであるので、必要とされる光学データに応じてその波長域(光域)を測定可能な撮影装置を用いて画像情報が作成される。画像情報を利用して植物の生育活性を評価するには、画像情報に含まれる光学データを用いて算出される数値によって植物活性度を示す。具体的には、赤色光及び近赤外光の検出データを用いて算出されるNDVI,SAVI,MSAVI,TSAVI,EVI,WDVI,RVI等の植生指数が考案されており、本発明の摘採適性の評価及び適期判断においてもこのような植生指数を利用でき、特に、光の反射率を用いて算出される正規化植生指数(NDVI)は極めて有用であり、茶葉の摘採適性の評価に指標として用いられる評価項目について、植生指数を用いて数値評価が可能である。茶葉の化学分析データに基づいた研究によって、茶葉に含まれる窒素量[質量%]及び繊維量[質量%、乾物換算](中性デタージェント繊維)について、茶葉の画像情報から得られるNDVIとの高い相関性が認められ、これに基づいて窒素量及び繊維量を評価することによって摘採適期の判断が可能である。また、従来の観察による摘採適性の評価項目である茶葉の出開き度[%]、芽重[g/400cm
2]及び開葉数[枚]についてもNDVIとの相関性が認められ、摘採適性の評価に利用可能である。出開き度は、茶園の一定面積の区画において出開き芽が全新芽中に占める割合で、芽重は、茶園の一定面積区画において新芽として摘採される茶葉の質量を表す面積平均重量値であり、何れも、摘採者が茶葉の摘採時に目視観察によって客観的に摘採判断を行う項目であるので、植生指数との相関関係に基づく評価によって、熟練者と同様の茶葉の評価及び摘採判断が可能である。又、開葉数は、茶園の一定面積の区画における全新芽について1芽が有する開葉(葉が展開して中肋が全部見える)状態の葉の枚数を求めた平均値である。つまり、撮影による画像情報を用いることによって、広範な茶園について、茶葉の摘採の可否判断や摘採適期の予測が短時間で非破壊的に実施可能である。茶葉の評価項目の値は、新芽の生育に従って変化するが、茶の新芽は1年に複数回の摘採が可能であり、1番茶、2番茶、3番茶と茶期が進行するに従って茶葉に含まれる成分含有量が変化するので、茶葉の評価項目と植生指数との相関関係は、茶期によっても変化する。従って、茶期による生育の違いを考慮に入れた摘採判断を行うことが必要である。このような茶葉の評価項目と植生指数の基本的な相関関係については前記特許文献3を参照することができ、下記のような関係式(1)〜(5)によって表すことができる。
【0027】
NDVIと全窒素[質量%]との関係(x:NDVI、y:全窒素)
(1): y=ax+b
(式中、a=−5.96、b=9.23、R
2=0.56)
NDVIと繊維量[質量%、乾物換算]との関係(x:NDVI、y:繊維量)
(2): y=cx+d
(式中、c=33.97、d=−4.44、R
2=0.66)
NDVIと芽重との関係(x:NDVI、y:芽重[g/400cm
2])
(3): y=e×log(x+f)+g
(式中、e=47.44、f=−0.3、g=65.77、R
2=0.63)
NDVIと出開き度[%]との関係(x:NDVI、y:出開き度)
(4): x=hy
3+iy
2+jy+k
(式中、h=0.60×10
−6、i=−0.80×10
−4、j=0.42×10
−2、k=0.64、R
2=0.62)
NDVIと開葉数[枚]との関係(x:NDVI、y:開葉数)
(5): y=mx+n
(式中、m=5.53、n=−1.15、R
2=0.66)
【0028】
上述の関係式(1)〜(5)は、やぶきた種の1番茶によるものであり、摘採される茶葉の茶期や品種、立地環境等による相違は、式中の定数a,b,c,・・・・,nの変動となって現れるが、茶期や品種等が異なっても上記と同様の相関性は共通して保持される。例えば、NDVIと全窒素との関係について1番茶と2番茶とを比較すると、2番茶においては、a=−4.18、b=6.92となり、NDVIと繊維量との関係について比較すると、2番茶においては、c=38.7、d=2.00となる。
【0029】
リモートセンシングにおいては、可視光(400〜700nm)、近赤外光(700〜1300nm)などの光域(波長域)の検出データが通常用いられるが、本発明において利用する波長域は、近赤外光(700〜1300nm)、赤色光(600〜700nm)及び緑色光(500〜600nm)の3つの波長域の光学データであり、茶期に応じてこれらの波長域から適正な波長域を選定して、選定した波長域において得られる画像情報を摘採適性の評価に用いる。この理由は、茶葉を摘採する茶期によって、算出される植生指数と茶葉の評価項目との相関性が最も高くなる波長域が異なることにある。つまり、茶葉の評価項目の値と植生指数との相関係数は、植生指数を算出する際に使用する光学データが測定される波長域によって異なり、選択する波長域によって、算出される植生指数と評価項目との相関性が変動し、評価結果の精度に影響を与える。従って、茶期によって植生指数を算出する波長域を変更して、評価項目と植生指数との相関性が最も高くなる最適な波長域における光学データを使用して植生指数を算出することによって、茶葉の摘採適性を高い精度で評価することができる。或いは、波長域毎に茶期による重みづけを行って、重み付け計算値としての植生指数を算出することによって、高精度での評価が可能である。
【0030】
茶葉の評価項目と植生指数との相関性について、茶葉の繊維量と植生指数との関係を一例として説明する。植生指数として正規化植生指数(NDVI)を算出する場合、赤色光域での反射率R及び近赤外光域での反射率IRを用いて算出される植生指数は、NDVI(IR)=(IR−R)/(IR+R)であり、赤色光域での反射率R及び緑色光域での反射率Gを用いて算出される植生指数は、NDVI(G)=(G−R)/(G+R)となる。又、近赤外光域、赤色光域及び緑色光域のうちの2つの波長域における反射率を用いて算出される上述の植生指数に対して、下記式のように係数α(但し、αは1〜3の実数である)を用いて近赤外光及び緑色光の波長域に重みづけした計算を行うと、重み付け計算値としての植生指数が算出できる。
【0031】
植生指数(α)=[(3−α)*IR+(α−1)*G−2R]/
[(3−α)*IR+(α−1)*G+2R]
【0032】
上記式において、α=1では、赤色光域及び近赤外光域における反射率を用いた植生指数が得られ、α=3では、赤色光域及び緑色光域における反射率を用いた植生指数が得られ、α=2においては、3つの光域の反射率を用いて近赤外光域及び緑色光域の重み付け比を1:1として計算した重み付け計算値の植生指数が得られる。茶葉の繊維量と植生指数との関係を、係数αを1、2.6、2.95又は3とした場合について求めると、
図1に示すようなグラフが得られる。
図1において、(a)は茶期が1番茶についてのグラフ、(b)は2番茶のグラフ、(c)は3番茶のグラフであり、これらのグラフから、1番茶においては、α=1である場合の方が係数α=3である場合よりばらつきが小さく、3番茶においては、α=3である時の方が係数α=1である時よりばらつきが小さい。繊維量と植生指数との相関関係の各グラフについて相関係数を求めると、表1のようになり、1番茶においてはα=1の場合に最も相関性が高く、2番茶及び3番茶においては、α=3の場合に最も相関性が高いことが理解される。従って、植生指数の算出において、茶期が1番茶の場合には、波長域として赤色光域及び近赤外光域を選択し、茶期が2番茶及び3番茶の場合には、波長域として赤色光域及び緑色光域を選択することによって、撮影画像の光学データを用いて算出される植生指数から高い相関性で繊維量を決定することができ、繊維量に基づく摘採適性の評価精度が高くなる。
【0033】
(表1)
繊維量と植生指数との相関関係における相関係数
α=1 α=2.6 α=2.95 α=3
1番茶 0.86 0.86 0.83 0.77
2番茶 0.46 0.76 0.98 0.98
3番茶 0.42 0.58 0.88 0.94
【0034】
表1のような相関係数の変動は、繊維量だけでなく他の評価項目についても見られるので、植生指数を算出する光学データの波長域は、摘採適性を評価する評価項目に関わらず、茶期に応じて最適な波長域を選択するとよい。
【0035】
表1によると、1番茶において、α=2.6とした重み付け計算値を用い、2番茶において、α=2.95とした重み付け計算値を用いた時にも、同等の高い相関性で繊維量を決定することが可能であり、同様に摘採適性の評価精度が高くなる。従って、植生指数の算出において、茶期に応じて係数αを設定して植生指数を重み付け計算し、これを用いて摘採適性の評価を行ってもよい。植生指数の重み付け計算値を利用する場合、1番茶に関するαは、1〜2.97程度、2番茶に関するαは2.7程度〜3とし、3番茶に関するαは2.8程度〜3であると好ましい。
【0036】
又、撮影画像に含まれる光学データの精度は、測定する波長域の幅が狭いほど高いので、測定波長幅を狭くすることによって、算出される植生指数と評価項目との相関性を高めることができる。例えば、1番茶の茶葉の植生指数をα=2.6における重み付け計算値として算出し、全窒素量と植生指数との相関関係を求めると、
図2のグラフのようになり、赤色光及び緑色光に関する光学データの測定波長幅を変化させると、グラフにおけるばらつきは変化する。全窒素量と植生指数との相関関係における相関係数を求めると、表2のように、相関係数は測定波長幅によって変化する(尚、波長幅5nmの測定域は、赤色光:651〜655nm、緑色光:551〜555nmであり、波長幅15nmの測定域は、赤色光:651〜665nm、緑色光:546〜560nmであり、波長幅60nmの測定域は、赤色光:621〜680nm、緑色光:521〜580nmである)。従って、測定波長幅を縮小することによって、全窒素量と植生指数との相関関係に基づく摘採適性の評価精度が向上する。
【0037】
(表2)
全窒素量と植生指数との相関関係における相関係数
測定波長幅
5nm 15nm 60nm 100nm
1番茶(α=2.6) −0.62 −0.64 −0.60 −0.56
【0038】
表2のような測定波長幅の縮小による相関性の向上は、他の評価項目においても見られる。従って、植生指数の算出に使用する光学データの測定波長幅の縮小は、摘採適性の評価精度の向上に有効である。但し、過度の縮小はノイズによる精度低下の虞れがあるので、測定波長幅を好ましくは5nm以上で60nm以下、より好ましくは10nm以上で30nm以下に設定するとよい。近赤外光域についても同様である。
【0039】
前述のように、植生指数は、測定波長域における茶葉の反射率を用いて算出されるが、光学データから算出される反射率は、撮影時の照度によって変動するので、光学データから算出される植生指数は、画像撮影時の照度によって変動する。従って、植生指数と評価項目との相関性を高めるには、照度条件による植生指数の補正が行われる。野外の照度条件は、天候の変動や時間によって変化するので、光学データの測定、つまり、画像撮影は、植生指数の算出に使用する全波長域について同時に行うと、照度による補正の有効性が損なわれないので好ましい。従って、近赤外光、赤色光及び緑色光の全てにおける測定を同時に行えば、植生指数の重み付け計算値を利用する場合にも好適な補正ができる。同一茶園において一日間に得られる画像撮影データを用いて撮影時の照度とNDVIとの関係を調べると、下記式(6)のような相関性が見出される(x:照度[lx]、y:NDVI)。従って、撮影時の照度による補正は、この式に従って行うことができる。
【0040】
(6): y=px+q
(式中、p=5×10
−7、q=0.69、R
2=0.84)。
【0041】
植生指数の算出に用いる反射率の数値自体を、照度に関わらず一定値として得ることができれば、画像撮影時の照度による影響を排除することができるので、雲の流れ等の急速な条件変化による影響を軽減できる。本発明では、以下に説明するようなデータ加工を行うことによって、これを実現する。
【0042】
図3の(a)は、日中の屋外で計測した茶葉の放射輝度及び反射板の放射輝度(赤色光域)と撮影時の照度との関係を示すグラフであり、以下の式によって算出される茶葉の反射率Rを併せて示している[下記式中、Rは、茶葉の反射率を、Iは、茶葉の放射輝度(茶葉からの反射光の強さ)を、I’は、反射板の放射輝度を、R’は、反射板の反射率を各々示す]。
【0044】
図3(a)のグラフによれば、茶葉及び反射板の何れにおいても、照度Xと放射輝度Yとの関係は、Y=βX+γの一次関数で表すことができ、この時、茶葉の反射率は、照度が増加するにつれて減少する曲線を描く。照度X=0における放射輝度Yの切片値γは、反射板と茶葉とで極めて近い値であるので、茶葉における切片γの代わりに反射板における切片γ’を近似的に用いて、茶葉及び反射板の放射輝度から反射板における切片値γ’を各々減算した値を茶葉及び反射板の新たな放射輝度として、照度との関係をグラフに示すと、
図3の(b)のようになり、茶葉における一次関数もほぼ原点を通ると見なすことができる。この時、茶葉及び反射板の新たな放射輝度の値(I−γ’),(I’−γ’)から茶葉の反射率を上記式によって計算すると、
図3(b)のように照度に関わらずほぼ一定の値となる。反射板の反射率も一定値である。
【0045】
従って、基準として使用する反射板における切片値γ’及び反射率を予め決定しておき、反射板と共に撮影される茶葉の画像から得られる反射板及び茶葉の放射輝度の各々から切片値γ’を減算した値を新たな放射輝度として、上記式のI,I’として計算することにより、茶葉の反射率Rが得られる。測定する波長域が異なっても、照度と放射輝度との関係は、一次関数で表すことができるので、近赤外光、赤色光及び緑色光の各々における反射率が同様にして得られ、使用する反射率の測定波長域を茶期に応じて選択し、選択した波長域における反射率を用いて植生指数を算出すればよい。或いは、波長域の重み付け計算によって求めてもよい。上記のようにして得られる反射率の値は照度によって変動しないので、反射率から算出される植生指数は、照度による補正を行う必要がない。
【0046】
照度による補正を必要としない植生指数の算出は、以下に示すもう1つの手法によって行ってもよい。
【0047】
図4の(a)は、基準とする反射板の放射輝度と撮影時の照度との関係を、近赤外光及び赤色光について示すグラフであり、
図4の(b)は、茶葉の放射輝度と照度との関係を示すグラフである。
図4(a)の反射板における照度と放射輝度との関係から、各波長域毎に、一次関数の切片値γ'(IR),γ'(R)を求めて、画像から得られる反射板の放射輝度の各々から切片値γ'(IR),γ'(R)を減算し、更に、照度=0の時の放射輝度=0、照度100000Lxの時の放射輝度=100となるような一定の係数δ'(IR),δ'(R)を積算して新たな放射輝度とすると、
図4の(c)のようになり、両波長域における照度と新たな放射輝度との関係を一致させることができる(つまり、係数δ'(IR)=1/[1000×β'(IR)]、δ'(R)=1/[1000×β'(R)]であり、β'(IR),β'(R)は、近赤外光又は赤色光における照度Xと放射輝度Yとの一次関数の傾き(変化率)βの値であるので、γ'の減算後の放射輝度を傾きβ'で除算している)。これらの切片値γ'(IR),γ'(R)及び係数δ'(IR),δ'(R)を用いて、
図4(b)の各波長域における茶葉の放射輝度に対して、同様に切片値の減算及び係数の積算を各々行うと、新たな放射輝度は、
図4の(d)のようになる。反射率から植生指数を算出する前述の式において、反射率の代わりにこれらの新たな放射輝度を使って以下のように植生指数を計算する(式中のIR,Rは、茶葉における近赤外光又は赤色光の新たな放射輝度、IR’,R’は、反射板における近赤外光又は赤色光の新たな放射輝度とする)と、
図4の(e)のようになり、植生指数は照度に関わらず一定となる。従って、このようにして得られる植生指数も、照度による補正を行う必要がない。
【0048】
植生指数(IR)=(IR/IR’−R/R’)÷(IR/IR’+R/R’)
【0049】
尚、上述のデータ加工では、
図4(c)に示すように、反射板における放射輝度IR’及びR’を一致させる加工を行っているので、上記式においては、IR’=R’として、植生指数=(IR−R)÷(IR+R)によって近似的に計算することができる。一般に、放射輝度の計測感度は波長域によって異なるので、
図4に示すようなデータ加工を行うことによって、計測感度の相違による問題が軽減される。
【0050】
高品質の画像情報を得るには、撮影装置の絞りやシャッター速度(露光時間)の調節が肝要であるのは一般的な撮影と同様であるが、画像情報に含まれる基本的光学データである光強度検出値は、撮影装置の露光条件(絞りやシャッター速度)によって変動するので、露光条件が異なると、植生指数の算出において光学データを検出値から実勢値へ標準化する(例えば、露光時間当たりの検出値に変換する)必要が生じる。このような処理をできる限り簡略化するためには、標準とする露光条件を予め決定しておく。又、撮影装置毎の個体差等によるデータのずれについても、装置毎に適宜補正を行うことが望ましい。
【0051】
茶園において、茶樹は、通常、幅1.5〜1.8m、高さ(段差)0.3〜1mの畝で栽培されるので、近接撮影における画像の撮影位置は、上方〜水平横方向〜斜め下方の範囲に設定可能であるが、撮影対象は茶樹の樹冠面から上伸した新芽であるので、撮影位置は、樹冠面の上方〜水平横方向になる。樹冠面下の古葉や日陰部分が撮影されると、画像情報に影響が生じて上述の評価項目とNDVIとの相関性が低下し易くなるので、斜め上方からの撮影が適切である。同一茶園の近接撮影を角度を変えて同時に行った場合に撮影画像から得られるNDVIと撮影角度との関係は、下記式(7)のようになるので、この式に従って撮影角度による補正が行える(x:撮影角度[°]、y:NDVI)。実測データのばらつきは、撮影角度が小さい方が少なく、撮影対象が新芽に集中するように撮影角度を設定して撮影を行うことが有効である。撮影角度が樹冠面に対して0〜10°の範囲(但し、0°を除く)となる斜め上方位置に画像撮影装置を配置すると好ましい。尚、茶樹の樹冠面はしばしば緩やかな曲面に整えられる場合があり、この場合、撮影角度の基準は、各茶樹の樹冠面頂部を通る面とする。
【0052】
(7):y=rx
2+sx+t
(式中、r=−0.0001、s=0.0069、t=0.72、R
2=0.99)
【0053】
衛星や飛行機等を用いた遠景撮影の場合、撮影は上方からであり、撮影角度に応じてNDVI値の補正が行われる。
【0054】
太陽光での野外撮影では、天候や太陽の方位が経時変化するので、撮影日時によって照度等の撮影条件が変化し、これに伴って、光学データから算出される植生指数も変動する。従って、昼間の太陽光での(=明条件下)撮影の代わりに、光源を太陽光から人工光に換えて夜間に(=暗条件下)撮影を行ってもよい。この場合、撮影に使用する人工光は、植生指数の算出に用いられる波長の光を含むものであれば良く、一般的に用いられる撮影用照明灯や人工太陽照明灯、赤外及び近赤外用のランプ、LED等を光源として使用することができる。撮影に際して、撮影対象である茶葉と光源との距離や照射角度、照度を一定に設定すると、補正後の植生指数の精度を上げる点で好ましいので、茶葉及び撮影装置に対して光源を位置決めするための固定手段を必要に応じて用いるとよい。暗幕や遮蔽板等を用いて照明灯及び撮影装置の周囲を覆って茶葉の照射領域を一定範囲に定めるように構成すると、照度の変動が抑制され、データの信頼性を高めることができる。暗条件下の光照射での撮影で得られる光学データから算出される植生指数に基づいて、植生指数と茶葉の評価項目との関係を調べると、例えば、やぶきた茶の4番茶時期(秋茶)の茶葉について、夜間に人工太陽照明灯(太陽光と類似波長の照明)を用いて撮影(撮影角度:20°)した光学データを使用して、植生指数としてNDVIを算出した場合、茶葉中の繊維(中性デタージェント繊維)量とNDVIとの関係は、明条件下の場合と同様に、前述の式(2):y=cx+dで表され(x:NDVI、y:繊維量)、c=74.20、d=−22.16となる(R
2=0.86)。他の評価項目についても、暗条件下において植生指数と茶葉の評価項目との間に明条件下と類似の相関関係があり、明条件下(太陽光)の場合と同様にして、植生指数と全窒素、芽重、出開き度又は開葉数との関係式及び定数を用いて茶葉の摘採適性を評価し、適正範囲との比較により摘採の可否を判断することができる。更に、摘採に不適と判断される場合の摘採適期の予測も同様に実施可能である。暗条件下の撮影においても、得られる光学データから算出される植生指数は、撮影条件、つまり、照度及び撮影角度によって変動するので、植生指数は、必要に応じて、照度データ及び角度データによって補正するとよい。
【0055】
尚、明条件と暗条件とでは照射光が異なり、植生指数と評価項目との関係式及び定数は、明/暗条件の区別(つまり、太陽光/人工光の区別=波長分布の相違)に基づいて、茶葉の種類及び茶期に従って決定される。又、人工光では、照明装置によって照射光の配光分布が異なって照射の中心と周縁部とで照度等にばらつきが生じる可能性があるので、上記関係式及び定数に影響を与える要因には、照射装置の規格や照射条件も含まれる。従って、上記関係式及び定数を明/暗条件の区別に基づいて決定する際に、照射装置の設定(規格、照射条件等)を考慮するとよい。暗条件における照射光の相違によるデータの複雑化や算出される植生指数のばらつきを防止するためには、暗条件で使用する照射光の規格を統一することが望ましい。更に、茶葉の反射光を撮影する撮影装置の測定/検出波長によっても上記関係式の定数が変化するので、上記関係式及び定数を決定する際には、検出部の設定(波長等の検出条件)を考慮するとよい。撮影装置における検出部の設定を統一することは、明/暗条件の何れにおいても、上記関係式及び定数を決定する際にデータの複雑化や植生指数のばらつきを防止する上で有用である。
【0056】
評価項目と植生指数との相関関係を利用して茶葉の摘採判断を実行可能な摘採適性評価システムの実施形態について、図面を参照して以下に説明する。
【0057】
図5は、本発明に係る摘採判断システムの一実施形態を示す概略構成図であり、摘採判断システムは、茶葉の画像情報を取得する撮影部1と、撮影部1が取得した画像情報を用いて撮影された茶葉の摘採適性を評価して摘採適期にあるか否かを判断する情報処理部2と、前記情報処理部2による評価及び摘採適期の判断結果を出力する出力部3とを有する。撮影部1は、近接撮影用の形態であっても、飛行機や衛星などの飛行手段に搭載して上空から撮影する遠景撮影用の形態であってもよく、両方を併用しても良い。図中では、樹冠面に対する撮影角度θでの近接撮影を示している。近接撮影は、例えば、防霜ファン用ポール等を用いて固定した定点観測用の撮影装置1aや、茶園近傍の撮影位置に適宜移動して手持ちや三脚等で位置決めして撮影する移動観測用の撮影装置1bによって実施できる。暗条件下での撮影の場合には、赤色光及び近赤外光の波長域を含む人工光を茶葉に照射するための光源1cが使用される。光源1cは、人工光を所望の照度で茶葉に照射可能である限り特に制限する必要はなく、茶園に固定しても撮影時に設置しても、或いは、近接撮影用の撮影装置1a,1bに添設してもよい。光源1cの使用に際しては、照度、照射方向等に留意して光源1cの位置決めを行うことが望ましい。
【0058】
太陽光又は人工光が茶葉によって反射される反射光において、赤色光及び近赤外光には、葉緑素の吸光特性によって生じる強度差が顕著に現れる。リモートセンシングにおいてはこれを利用して、両光の反射係数からNDVI等の植生指数が算出される。つまり、情報処理部2が画像情報から利用する光学データは、赤色光域及び近赤外光域の反射光データであり、撮影部1において光源1cから照射される人工光、及び、撮影装置1a、1bにおいて反射光から抽出・検出される光の波長域は、赤色光及び近赤外光を含むものであればよい。従って、撮影装置1a,1bとして、リモートセンシング用の専用機だけでなく、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話等のような携帯可能な端末に必要な光学データを検出可能な装備を施したものも使用できる。例えば、CCDイメージセンサを有するデジタルカメラに所定の光学フィルターを装備することによって、赤色光、緑色光及び近赤外光とが検出可能である。実用的な一例として、
図5の実施形態では、検出域が760〜900nmの近赤外センサ、600〜660nmの赤色センサ及び530〜580nmの緑色センサが用いられている。光源1cとして、例えば、赤色光、緑色光及び近赤外光を含むハロゲンランプ、人工太陽灯、LED等の各種照射装置から適宜選択して使用することができる。
【0059】
撮影部で作成される画像情報は、複数の領域に区画して領域毎に取り扱い可能な画像と、画像の各領域に対応した赤色光,緑色光及び近赤外光に関する光学データとを含んでおり、データ供給手段によって撮影部1から情報処理部2に送られる。データ供給手段は、有線又は無線通信による送受信、フロッピディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体を介する情報の記録/読み出しなどが利用できる。
【0060】
情報処理部2は、入力部2a、演算処理部2b、表示部2c及びメモリ部2dを有し、入力部2aは、撮影部1で作成された画像情報を、通信によって直接的に又は記録媒体を介して間接的に取得するための受信装置又は読み取り装置を有し、取得された画像情報は、必要に応じてメモリ部2dに格納される。又、入力部2aは、データの手動入力や訂正を可能とするためのキーボード等を備えることができ、必要に応じて、評価・判断作業で使用される品種、茶期などの初期条件や製品ランク等の用途の設定;使用する光学データに関する明/暗条件の区別及び撮影条件;評価項目の選定;評価・判断を実行する画像領域の指定;などに関する入力・訂正を行うことができる。
【0061】
演算処理部2bは、初期条件及び評価・判断を実行する画像領域が指定された時に、撮影画像の指定された領域における赤色光及び近赤外光の光学データを画像情報から取り込み、光学データの標準化を適宜行った後、その光学データを用いてNDVI等の植生指数を算出する演算処理を実行し、明/暗条件の区別に基づいて、撮影条件による補正を適宜行う。更に、演算処理部2bは、評価項目が指定された時に、明/暗条件の区別に基づいてデータベースを参照して、茶葉の評価及び摘採判断に必要な相関関係に関するデータ、つまり、評価項目と植生指数との相関関係を示す関係式と関係式の定数とを初期条件に従って取得し、この関係式と算出された植生指数とを用いて、撮影画像の指定された領域における茶葉の評価項目に関する評価を行う。つまり、評価項目の関係式に基づいて、算出された植生指数に対応する評価項目の値を決定して、この値を摘採に適した評価項目の数値(適正範囲)と比較することによって、摘採適期にあるか否かを判断する。或いは、摘採に適した評価項目の数値(適正範囲)に対応する植生指数の数値(適正範囲)を関係式に基づいて決定して、これと、算出した植生指数とを比較する。
【0062】
上記データベースは、茶葉の評価及び摘採判断に必要なデータを保有するものであれば特に制限はなく、専用装置として情報処理部2に予め付設されるものでも、或いは、データが記録されている記録媒体から直接に読み込んだり、遠隔地のデータベースから通信網を介して間接に取り込んでメモリ部2dに格納・更新するものであってもよい。データベースが保有するデータには、上述の関係式(1)〜(5)のような各評価項目と植生指数との相関性を示す関係式;初期条件に従って各関係式の定数として適正な値を設定するための定数データ(a,b・・・n)及び各評価項目における1日当たりの標準変動量;演算処理によって得た植生指数を撮影条件等によって補正するための補正データなどが含まれる。定数データは、撮影システムの設定(前述した照射装置及び検出部の設定)及び明/暗条件の区別に基づいて、各評価項目における関係式の定数の数値を、茶の品種、茶期等の各初期条件と対応させた形態で含んでおり、各初期条件の決定によって対応した定数が関係式に設定されるように構成される。撮影システムの設定を統一すると、定数データの構成は簡略化できる。補正データには、上述の式(6),(7)のような、照度、絞り、シャッター速度、撮影角度等の撮影条件が植生指数に及ぼす影響を補正するための関係式及び定数(p,q,r,s,t)などのデータが含まれ、各撮影条件による補正を行う関係式が明/暗条件の区別に基づいて設定されるように構成される。更に、植生指数の算出に用いる光学データの測定波長域を茶期に応じて選択又は重みづけするための茶期と係数αとの対応に関するデータ、
図3又は
図4のような茶葉の放射輝度に関するデータ加工を行う際に使用する反射板についての切片γ'及び傾き(変化率)β'に関するデータなどが含まれる。
【0063】
演算処理部2bが画像情報から読み出した光学データ、算出された植生指数、茶葉の摘採適性の評価・摘採判断の結果等のデータは、表示部2cに表示される。これらのデータは、必要に応じて、データ供給手段を用いて出力部3に出力したり、メモリ部2dに格納することができ、出力部3に供給されたデータに従って、各茶園の摘採作業の開始が決定される。データ供給手段には、有線又は無線通信による送受信、フロッピディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体を介する情報の記録/読み出しが利用できる。表示部2cには、画面表示によってデータを提示するディスプレイや、紙等の記録材に印刷等として提示するプリンターなどが利用できる。出力部3は、モバイルコンピュータ3a、携帯電話3b等の移動端末や、デスクトップパソコン、ファックス、プリンター等の固定端末3cから任意に選択される端末によって構成することができ、供給されたデータは、出力部3において、任意に、表示・印刷・保存される。
【0064】
上述の摘採適性評価システムは、撮影部1、情報処理部2及び出力部3を一体化した摘採適性評価装置として構成することも可能であり、例えば、カメラ付き携帯電話やカメラ付きモバイルコンピュータ等を基盤として、これに摘採適性評価方法を実施する機能を搭載することができる。或いは、情報処理部2単独による摘採適性評価装置を構成して提供し、使用者が必要に応じて適宜撮影部1及び出力部3を追加・削除できるようにしてもよい。
【0065】
上記摘採適性評価システムを用いて実施される茶葉の摘採適性評価方法の一実施形態を、図面を参照して以下に説明する。以下のような方法をコンピュータで実施させるプログラムコードを、記録媒体に記録したコンピュータ使用可能なアプリケーションソフト、又は、有線又は無線により他のコンピュータに伝送される信号配信として提供することができる。
【0066】
図6は、茶葉の摘採適性評価方法の手順を概略的に示すフローチャ−トであり、概して、茶葉の画像情報から植生指数を算出する数値化と、算出された植生指数を用いて茶葉が摘採適期にあるか否かを調べる評価・判断とが実行される。この実施形態においては、植生指数としてNDVIが用いられるが、RVI等の他の植生指数であっても良い。
【0067】
茶葉の摘採適性判断は、まず、茶園の撮影によって作成される画像情報を入力し(工程S1)、画像情報に含まれる光学データから植生指数を計算する(工程S2)。算出された植生指数は撮影条件に応じて一定撮影条件の植生指数に補正され(工程S3)、算出・補正された植生指数を用いて、植生指数と評価項目との関連性に基づいて、評価項目についての摘採適性を数値として評価する(工程S4)。摘採適性の判断実行を確認し(工程S5)、評価した数値を用いて、茶葉が評価項目について摘採適期にあるか否かを判断する(工程S6)。オペレータが摘採熟練者である場合は、工程S6の評価値による摘採適期の判断を省略して工程S5の確認後に終了することも可能である。
【0068】
工程S1の画像情報の入力においては、参照情報として、撮影装置に関する撮影条件である絞り、シャッター速度及び撮影角度、対照用グレイ板画像の有無、及び、環境に関する撮影条件である明/暗条件の区別(照射光の区別)、撮影時の照度が同時に取り込まれ、更に、光学データの測定波長域を茶期に応じて選択又は重みづけするための茶期と係数αとの対応に関するデータも取り込まれる。撮影角度のデータは、工程S3の補正において用いられ、照度のデータは、工程S2の植生指数の計算又は工程S3の補正において用いられる。或いは、
図3又は
図4に示すような反射板についての切片及び傾きに関するデータを取り込むと、これを用いて茶葉の放射輝度に関するデータ加工を行って工程S2の植生指数の計算に用い、工程S3の植生指数の補正において照度による補正を行わずに工程S4の評価に進むことができる。明/暗条件の区別は、工程S4の評価において、植生指数と評価項目との関係式及び定数を初期条件に従って読み込む際に使用され、植生指数と評価項目との相関関係が設定される。
図3又は
図4のようなデータ加工に使用する切片及び傾きに関するデータは、予め作成してデータベースに格納しておき、上述のように参照情報として画像情報と共に取り込む。照度と放射輝度との一次関数の切片及び傾きに関するデータは、例えば、
図7のような手順で作成することができる。
【0069】
先ず、測定条件(測定機器、場所、日時等)を記録し(工程P1)、各波長域について、測定場所における照度、及び、基準とする反射板の放射輝度の測定を同時に行い、この測定を所定時間にわたって繰り返す(工程P2)。測定の繰り返しによって、経時的に変化する照度とその時の放射輝度とが得られるので、照度をX,放射輝度をYとして、これらの関係のグラフを各波長域毎に作成する(工程P3)。得られたグラフから切片値γ'(X=0におけるYの値)を求める(工程P4)。この切片値γ'を用いて、
図3に示すデータ加工が実行できる。
図4に示すデータ加工を行うには傾き(変化率)β'が必要であるので、何れのデータ加工を行うかによって傾きβ'を計算するか否かを判断し(工程P5)、
図2のデータ加工を行う場合には、照度の変化分に対する放射輝度の変化分の割合を計算することによって傾きβ'が得られる(工程P6)。これらの値は、測定条件と共にデータベースに格納し、様々な測定条件におけるデータを収集することによって、測定条件に応じた切片値γ'及び傾きβ'を読込むことができる。
【0070】
図6の工程S2を具体的に説明すると、
図8に示すような工程が含まれる。まず、画像を撮影した茶期を入力する(工程S20)。これにより、係数αが決定される。次に、反射光強度に関する光学データとして、近赤外センサの検出値IR、赤色センサの検出値R及び緑色センサの検出値Gを画像情報から読み取る(工程S21)。この時、工程S20で入力される茶期に対応するαが1又は3の場合は、これに従って使用する光学データの測定波長域が決定されるので、読み取る検出値を上記3つのうちの2つに特定でき、以後の工程の作業についても2つの波長域に特定できる。尚、近赤外、赤色及び緑色データに関して撮影装置に起因する画像の位置ずれ等がある場合には、適宜ずれ補正がなされ、対照用グレイ板画像が含まれる場合には、グレイ板の画像領域についても近赤外センサの検出値IRG、赤色センサの検出値RG及び緑色センサの検出値GGを読み取る。
【0071】
各検出値IR,R,G,IRG,RG,GGについて、露光時間による標準化処理(標準化値=検出値/露光時間t、IR←IR/t、R←R/t、G←G/t、IRG←IRG/t、RG←RG/t、GG←GG/t)を行い(工程S22)、グレイ板画像の有無を確認し(工程S23)、グレイ板画像がある場合には、この値を用いて補正された近赤外強度及び赤色強度の値(IR’=IR/IRG、R’=R/RG、G’=G/GG)を算出する(工程S24)。補正された強度をそのまま用いて植生指数を得る場合には、上記強度値を用いた演算によって、反射率から植生指数を算出する(工程S27)。植生指数としてNDVIを計算する場合の演算は、NDVI=(IR’−R’)/(IR’+R’)であり、グレイ板画像がない場合の演算は、NDVI=(IR−R)/(IR+R)となる。一方、
図3又は
図4のようなデータ加工を行う場合、データ加工を行うか否かの判断(工程S25)を経て加工を実行し(工程S26)、加工された値を用いて植生指数を算出する(工程S27)。
【0072】
工程S26におけるデータの加工は、
図9に示すような工程を含む。先ず、画像撮影時の測定条件(測定機器、場所、日時等)を入力し(工程S261)、入力された測定条件に対応した(又は最も近似した)切片値γ'が各波長域について決定される。傾きβ'の使用の有無を工程S263において判断して、
図3のようなデータ加工を行う場合は、各波長域について、前述の補正された強度(つまり放射輝度)から切片値γ'を減算して新たな強度(放射輝度)に変換する加工を行い(工程S264)、
図4のようなデータ加工を行う場合は、各波長域について、入力された測定条件に対応した傾きβ'を決定し(工程S265)、各波長域について、前述の補正された強度(放射輝度)から切片値γ'を減算して、傾きβ'から得られる係数δ'を積算することによって新たな強度(放射輝度)に変換する加工を行う(工程S265)。工程S264におけるデータ加工を行った場合は、前述したように新たな強度から反射率を計算し、得られた反射率を用いて工程S27における植生指数の演算を行う。工程S265におけるデータ加工を行った場合は、新たな強度を用いて工程S27における植生指数の演算を行い、前述したように、植生指数=(IR−R)÷(IR+R)によって近似的に計算することができる。
【0073】
そして、画像中から一部の領域を指定すると、その領域の光学データに基づいた植生指数が得られる(工程S28)。この際、工程S20で入力した茶期に応じて決定される係数αにより、植生指数の算出に用いる光学データの測定波長域の選択又は重み付けが行われるので、得られる植生指数は、茶期に応じて、最適な波長域に特定した,又は、重み付け計算した植生指数となる。尚、重み付け計算による植生指数を算出する場合は、工程S20の茶期の入力は、植生指数を演算する工程27より前であればよい。暗条件下の撮影の場合、光学データを取得可能な画像範囲、つまり、工程S21,S28におけるデータ読み込み及び領域指定を実行する範囲は、光照射されている画像部分に限られる。
【0074】
工程S2で算出した植生指数は、明/暗条件の区別に基づき、
図10に示す手順で補正される。但し、工程S26(つまり工程S264又は工程S265)のデータ加工を行った場合には、照度による補正は不要であるので、まず、データ加工を実施したか否かを確認し(工程S30)、実施した場合は工程S34に進む。データ加工を実施していない場合は、撮影時の照度データの有無を確認して(工程S31)、照度データがある場合にはこれを入力して(工程S32)、明条件下の場合は前述の式(6)に従って、暗条件下の場合は対応する類似の関係式に従って、補正を行う(工程S33)。更に、撮影角度データの有無を確認して(工程S34)、角度データがある場合にはこれを入力して(工程S35)、明条件下の場合は前述の式(7)に従って、暗条件下の場合は対応する類似の関係式に従って、補正を行う(工程S36)。つまり、工程S33,S36で用いる補正のための関係式(6)、(7)及び定数は、明/暗条件によって区別して取得される。こうして得られる植生指数が、茶葉の摘採適性の評価に用いられる。
【0075】
摘採適性の評価(工程S4)は、以下のように行う。まず、
図11に示すように、評価する茶葉の初期条件の設定として、茶葉の品種を入力する(工程S41)。次に、評価を行う評価項目を選定する(工程S42)。選定する評価項目の数は1つでも複数でもよい。評価項目が選定されると、明/暗条件の区別に基づき、評価に用いる関係式が評価項目毎に決定される。つまり、工程S20で入力された茶期、工程S41,42で入力・選定した品種及び評価項目に従って、選定した評価項目についての評価に用いる関係式及びその定数がデータベースから読み込まれ、評価値の計算に使用する関係式が決定される(工程S43)。この関係式に基づいて、工程S3(工程30〜36)で補正された植生指数を用いて評価を行う(工程S44)。この実施形態では、植生指数を関係式に代入することによって植生指数に対応する評価項目の値(評価値)が計算され、この値が摘採適期の判断(工程S6)に用いられる。工程S42において複数の評価項目を選定した場合は、評価項目毎に対応する値が計算される。全評価項目について評価値を算出してもよい。
【0076】
摘採適期の判断(工程S6)においては、
図12に示すように、まず、評価項目及び茶葉の用途の何れによって判断するかを選択する(工程S61)。茶葉の用途による判断を選択した場合は、玉露、抹茶などの製品種や上級、中級などの製品ランクに関する具体用途を入力する(工程S62)。入力された具体用途に従って評価項目の適正範囲が判断基準としてデータベースから読み込まれて設定される(工程S63)。他方、工程S61において評価項目による判断を選択した場合には、評価項目について目標値を入力する(工程S64)と、この目標値を判断基準として適正範囲が設定される。尚、判断形態については、適正範囲の上限値又は下限値を利用して摘採適期の始まり又は終わりについて判断する形態でも、上下限の両値を利用して摘採適期中に有るか否かについて判断する形態でもよく、摘採適期の始まりは、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数については適正範囲の下限、全窒素については適正範囲の上限を基準として判断され、逆に、摘採適期の終了時は、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数については適正範囲の上限、全窒素については適正範囲の下限によって判断される。従って、工程62及び工程64において、用途又は目標値を入力する際に、判断形態についても入力するように設定するとよい。
【0077】
この後、工程S63又はS64で設定された適正範囲に基づいて、工程S45で得た評価項目の評価値を適正範囲と比べて適正範囲にあるか否かを判断して(工程S65)、摘採の可否を判定する(工程S65,S66)。摘採不適と判定された場合(工程S67)、評価項目の適正範囲と評価値との差Dに基づいて、摘採適期を予測することができる(工程S68)。この予測は、例えば、評価項目についての1日当たりの標準変化量Vをデータベースから読み込んで、画像撮影日よりD/V日後の期日を摘採適期とすることができ、予測の実行を任意に選択できるようにしてもよい。
【0078】
評価値の計算(工程S45)及び評価値が適正範囲にあるか否かの判断(工程S65)を複数の評価項目について実行した場合、各評価項目毎に摘採の可否が決定される。これらの表示については、評価項目の優先順位を任意に指定して、その順に評価・判断の結果を表示したり、全評価項目中で摘採適期と判定される項目数の割合を適性度として表示することもできる。
【0079】
上記工程中に使用されるデータ及び演算処理等によって得られる各種データは、必要に応じて、拡大、縮小、切り抜き等の画像の加工処理や、合成画像又はバンド毎画像等のような画像の出力形態の変更、ヒストグラムのような画像内にデータを分布させる処理などを行って出力しても良い。
【0080】
尚、上述においては、緑茶に関連して説明しているが、茶樹新芽の全窒素、繊維量、芽重、出開き度及び開葉数の各々と植生指数との相関関係は、茶樹の品種が異なっても同様に見られるので、紅茶や烏龍茶等の製造に使用される茶品種についても、上記評価項目の測定及び植生指数の算出によって相関関係のデータを作成することによって、茶樹新芽の生育程度を知ることができる。紅茶や烏龍茶等の製造においても、摘採時期は茶葉の生育程度に関連して決定されるので、紅茶や烏龍茶等の茶葉の摘採に本発明を適用して、摘採に適した時期における上記評価項目の適正範囲を設定し、植生指数を用いて茶葉の摘採適性を評価して摘採判断及び摘採時期の予測を行うことができる。