特許第5930191号(P5930191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930191
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】墓石用免震具
(51)【国際特許分類】
   E04H 13/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   E04H13/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-128364(P2012-128364)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-253388(P2013-253388A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032635(JP,A)
【文献】 特開2005−016289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 13/00
E04H 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面真円状を呈するバランス用環状重り(2)の中心部に、所要高さを具えた支柱(1)を位置させると共に、当該バランス用環状重り(2)を、当該支柱(1)の上端に取付けた3本以上の所要吊り線(3)を介して、平面上無指向的振れ動きが可能化されるように等角度の位置において吊設して成り、当該支柱(1)は墓石の竿石(A)の頂面中心部に固定されるように構成した墓石用免震具。
【請求項2】
支柱(1)の下端に取付用座盤(1a)を連設すると共に、当該取付用座盤(1a)を墓石の竿石(A)の頂面中心部に対して接着する様に構成した請求項1に記載の墓石用免震具。
【請求項3】
止めリング(4)に対して前記吊り線(3)の基端を等間隔で取り付け、当該止めリング(4)は支柱(1)の上端に嵌着すると共に、支柱(1)の上端寄りに嵌着した滑り止め用ゴム製パイプ材(6)と、支柱(1)の上端に取付けた頭体(5)とに依って挟着固定するように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の墓石用免震具。
【請求項4】
支柱(1)の下端寄りに、バランス用環状重り(2)の衝突力緩和のための緩衝材(7)を取付けて成る請求項1乃至請求項3の何れかに記載の墓石用免震具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時に倒壊を防止するための墓石用免震具に関する。
【背景技術】
【0002】
墓石とは、通常、最下位に位置して土台的役割を担う芝台の上に、中台、上台と称される台板状の石を重ね合わせ、その上に、竿石と称される縦長立方体状の石材を立てた状態で載置して成るものである。 従って、前記竿石は特に倒れ易く、強い地震発生時には倒壊事故を招いてしまうことを余儀なくされた。
【0003】
従来、このような事態発生を防止するための手段として、石材の各部を一括して連結するボルトを収装しておくようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。 そして、これ以外の手段として、縦長立方体状を呈しているため最も倒れ易い部分である竿石の下端面を、台板状の石に対して嵌め込み連結を図るように構成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−137638号公報
【特許文献2】特開2006−152090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の手段は、何れも耐震手段に属し、倒れないように補強すると言う観点に基づくものである。 そして、何れの手段も、墓石の製作時に対応しておくものであり、既存の墓石に対する実施は殆ど不可能とされ、また、可能としても費用が掛かり過ぎてしまうものである。
【0006】
本発明は上記のような問題点の解消化を企図したものである。 そして、耐震と言うよりも、震動を逃がしてやる免震的なものとすると共に、既存の墓石に対しても簡単に取り付けることが出来るような形態とした「墓石用免震具」と言う新規製品の提供を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は請求項1に記載のように、平面真円状を呈するバランス用環状重り2の中心部に、所要高さを具えた支柱1を位置させると共に、当該バランス用環状重り2を、当該支柱1の上端に取付けた3本以上の所要吊り線3を介して、平面上無指向的振れ動きが可能化されるように等角度の位置において吊設して成り、当該支柱1は墓石の竿石Aの頂面中心部に固定されるように構成した墓石用免震具に係る。
【0008】
本発明は請求項2に記載のように、支柱1の下端に取付用座盤1aを連設すると共に、当該取付用座盤1aを墓石の竿石Aの頂面中心部に対して接着する様に構成した請求項1に記載の墓石用免震具を実施の態様とする。
【0009】
本発明は請求項3に記載のように、止めリング4に対して前記吊り線3の基端を等間隔で取り付け、当該止めリング4は支柱1の上端に嵌着すると共に、支柱1の上端寄りに嵌着した滑り止め用ゴム製パイプ材6と、支柱1の上端に取付けた頭体5とに依って挟着固定するように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の墓石用免震具を実施の態様とする。
【0010】
本発明は請求項4に記載のように、支柱1の下端寄りに、バランス用環状重り2の衝突力緩和のための緩衝材7を取付けて成る請求項1乃至請求項3の何れかに記載の墓石用免震具を実施の態様とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は請求項1に記載のような構成、すなわち、平面真円状を呈するバランス用環状重り2の中心部に、所要高さを具えた支柱1を位置させると共に、当該バランス用環状重り2を、当該支柱1の上端に取付けた3本以上の所要吊り線3を介して、平面上無指向的振れ動きが可能化されるように等角度の位置において吊設して成り、当該支柱1は墓石の竿石Aの頂面中心部に固定されるように構成したから、地震により竿石Aが図1に矢印で示す方向に傾いた際は、慣性の法則に基づきバランス用環状重り2には、これと反対方向に動かすような反力が生じ、そのため、当該重り2は同図に矢印で示す方向に振れ動くこととなる。 バランス用環状重り4は、このような地震の震動と常に逆方向の揺れ動きが生じ、これが竿石3に対する倒伏を阻止するような反力として加わり、竿石3に対する免震的作用が奏される。
【0012】
本発明は請求項2に記載のような構成、すなわち、支柱1の下端に取付用座盤1aを連設すると共に、当該取付用座盤1aを墓石の竿石Aの頂面中心部に対して接着する様に構成したから、既存の墓石に対する本発明の実施が著しく容易に達成される。
【0013】
本発明は請求項3に記載のような構成、すなわち、止めリング4に対して前記吊り線3の基端を等間隔で取り付け、当該止めリング4は支柱1の上端に嵌着すると共に、支柱1の上端寄りに嵌着した滑り止め用ゴム製パイプ材6と、支柱1の上端に取付けた頭体5とに依って挟着固定するように構成したから、吊り線3の基端部固定が極めて確固たるものとされ、従って、これに吊設されているバランス用環状重り4の安定的搖動が図られる。
【0014】
本発明は請求項4に記載のような構成、すなわち、支柱1の下端寄りに、バランス用環状重り2の衝突力緩和のための緩衝材7を取付けるように構成したから、バランス用環状重り2が大きく傾いた際、その周縁部が支柱1に接し、これ以上の搖動を阻止すると言うようなストッパー的作用が奏される。 これにより、想定以上の強い地震が発生した場合に、バランス用環状重り2自体が大きく振れた際、当該緩衝材7に当たってそのストッパー的作用が奏されることとなる
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の要部を表した一部切欠正面図である。
図2】本発明の要部を表した正面図である。
図3図1におけるX−X線断面図である。
図4】本発明の作動を示す説明用略図である。
図5】本発明の作動を示す説明用略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図3は本発明の実施例を表したものである。 同図において、Aは墓石の竿石であって、本発明は当該竿石Aの頂面に取付けることに依って、墓石に対する免震機能の付与を成すものである。 なお、その取付け手段は、原則として接着剤の塗布に依存することに依り、既存の墓石に対する取付けが簡便に達成される。 然し乍、当該取付け上の限定性は無く、螺子止め手段、埋め込み手段等適宜なものであって可とする。
【0017】
1は所要高さを具えた支柱であって、竿石Aの頂面中心部に立設するためのものであり、その下端には取付用座盤1aが連設してある。 2は平面ドーナッツを呈するバランス用環状重りであって、上記支柱1の上端に対して平面上無指向的振れ動きが可能化されるように吊設してある。 3は当該バランス用環状重り2に対する吊設用の吊り線であって、所要本数から成り、鎖、ワイヤー、コイルスプリンのようなライン状連結材を用いている。
【0018】
上記したバランス用環状重り2は、石材、コンクリート、鉄材等、重量性を具えた材料で製したものである。 そして、立体的形状には限定性は存在しないが、平面形状においては、これを真円とするように、中心点から周縁に向かう重量バランスが平面上無指向性(同一バランス)を具えた形状とすることを絶対的要件とする。
【0019】
上記構成に基づき、バランス用環状重り2は、地震が発生した際に生じる墓石(竿石A)の揺れ動きに連動し、その逆の方向に揺れ動くような搖動運動、換言すると地震の震動の方向に対してその逆の方向に同期させた搖動運動が行われる。
【0020】
すなわち、上述したような作動は、地震により竿石Aが図1に矢印で示す方向に傾いた際、慣性の法則に基づきバランス用環状重り2には、これと反対方向に揺れ動かすような反力が生じ、そのため、当該重り2は同図に矢印で示す方向に振れ動くこととなる。換言すると、バランス用環状重り2は、このような地震の震動と常に逆方向の揺れ動きが生じ、これが竿石Aに対する倒伏を阻止するような引き起こし力として作用し、竿石Aひいては墓石全体に対する免震的効果が奏される。
【0021】
4は前記吊り線3の基端を等間隔で取り付けた止めリングであって、支柱1の上端に嵌着すると共に、支柱1の上端に取付けた頭体5に依ってその固定化が図られるように構成してある。 また、当該吊り線3の先端は、バランス用環状重り2の内周縁に対して等間隔(等角度)で連結することに依って、当該バランス用環状重り2を水平状態にしてかつ平面上無指向的に搖動可能とするように吊り下げてある。 なお、当該吊り線3は等間隔にして3本以上であれば良いが、この本数を増やすことに依り、平面的振れ角度に関する無指向性の緻密性が高められる。 図示の実施例にあっては当該吊り線3を6本としてあるが、これは一つの実施例を表したに過ぎない。
【0022】
なお、支柱1の高さ、バランス用環状重り2の重量、吊り線3の長さ及び本数は、取付け対象とする竿石Aの大きさ等によって異なってくるため、これらは必要に応じて適宜設定する。 また、バランス用環状重り2の正面等に家紋を設けるようにして実施する場合もある。
【0023】
6は支柱1の上端寄りに嵌着した滑り止め用ゴム製パイプ材であって、止めリング4との接触力を強めて、当該止めリング4がバランス用環状重り2の揺れ動きに引っ張られて回転移動してしまことを防止するためのものである。
【0024】
7は支柱1の下端寄りに取付けた緩衝材であって、バランス用環状重り2が激しく振れた際に、支柱1に対する衝突力を緩和するためのものである。
【0025】
本発明は主として既存の墓石に対して装着して使用に供する。 地震発生時の墓石は、通常、真っ先にその竿石Aが揺れ動き倒壊してしまう。 これに対して本発明を装着した場合、そのバランス用環状重り2が竿石A(墓石)の震動と反対方向へ振動して(図4及び図5参照)、その反力に基づき地震の震動に対す竿石Aの傾動を最小化すると言うような免震作用が奏される。
【符号の説明】
【0026】
A 竿石
1 支柱
1a 取付用座盤
2 バランス用環状重り
3 吊り線
4 止めリング
5 頭体
6 ゴム製パイプ材
7 緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5