特許第5930193号(P5930193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メジフィジックス株式会社の特許一覧 ▶ 独立行政法人国立循環器病研究センターの特許一覧

特許5930193SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法
<>
  • 特許5930193-SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法 図000004
  • 特許5930193-SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法 図000005
  • 特許5930193-SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法 図000006
  • 特許5930193-SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法 図000007
  • 特許5930193-SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930193
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】SPECT画像の画像変換装置、画像変換プログラム、および画像変換方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   G01T1/161 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-134230(P2012-134230)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-246163(P2013-246163A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100131613
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 章宏
(74)【代理人】
【識別番号】100168848
【弁理士】
【氏名又は名称】黒崎 文枝
(72)【発明者】
【氏名】飯田 秀博
(72)【発明者】
【氏名】中澤 真弓
【審査官】 小田倉 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−300826(JP,A)
【文献】 特開平11−153669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPECT画像の画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換するための変換係数であるベクレルキャリブレーションファクターを、SPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種)にタグ付された形で格納したデータベースと、SPECT画像を取得する機能を有する画像取得部と、
前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを前記データベースから読み出す機能を有する変換係数取得部と、
前記ベクレルキャリブレーションファクターを用い、前記SPECT画像の各画素における画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換する機能を有する第1の画素値変換処理部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換された各画素の画素値を、体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する機能を有する第2の画素値変換処理部をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
SPECT画像データと、SPECT画像の画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換するための変換係数であるベクレルキャリブレーションファクターであって、所定の記憶装置内に構築されたデータベース内に格納されたベクレルキャリブレーションファクターを利用可能であり、コンピュータを画像処理装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、
当該コンピュータに、
SPECT画像を取得する画像取得ステップと、
前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを前記所定の記憶装置内に構築された前記データベースから読み出す変換係数取得ステップと、
ここで、当該ベクレルキャリブレーションファクターは、予め前記データベースにSPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種)にタグ付されて格納されたものであり、
読み出した前記ベクレルキャリブレーションファクターを用いて前記SPECT画像の各画素における画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換する第1の画素値変換ステップと、
を実行させる、画像処理プログラム。
【請求項4】
コンピュータに、
前記第1の画素値変換ステップ実行後の画像の各画素の画素値を、体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する第2の画素値変換ステップをさらに実行させるものである、請求項3に記載の画像処理プログラム。
【請求項5】
コンピュータを用いてSPECT画像の画像処理を行う方法であって、
コンピュータによって、
SPECT画像を取得する画像取得ステップと、
SPECT画像の画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換するための変換係数であるベクレルキャリブレーションファクターであって、前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを取得する変換係数取得ステップと、
ここで、前記ベクレルキャリブレーションファクターは、SPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種)と関連付けられて予め与えられたものであり、前記ベクレルキャリブレーションファクターを用いて前記SPECT画像の各画素における画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換する第1の画素値変換ステップと、
を順次実行する、画像処理方法。
【請求項6】
ベクレルキャリブレーションファクターは、所定の記憶装置内に構築されたデータベースに、SPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種)にタグ付されて予め格納されたものであり、
前記変換係数取得ステップは、コンピュータによって、前記データベースから、前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを読み出すものである、請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータによって、
前記第1の画素値変換ステップ実行後の画像の各画素の画素値を、体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する第2の画素値変換ステップをさらに実行する、請求項5又は6に記載の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPECT画像の画素値を汎用的な単位容量あたりの放射能量の単位に変換する技術に関する。より詳しくは、データベース等に予め格納された変換係数を利用して、SPECT画像の画素値を変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学画像診断技術の一つであるSPECTは、放射性医薬品を被験者に投与し、当該放射性医薬品から放出されるγ線を専用のカメラで検出し、画像化することにより行われる。SPECTは、PET同様に生体の機能を画像化できる事から、広く臨床において利用されている。
【0003】
しかし、SPECTでは、γ線が生体組織による吸収や散乱による影響を受けるため、画像再構成時において、吸収及び散乱補正を行う必要がある。この吸収及び散乱補正は、再構成画像の画質に影響を与える。近年、従来は施設間で統一されていなかったこれらの補正方法を統一し、さらに再構成画像における画素値を単位容量あたりの放射能量をあらわすBq/mLといった共通の単位に変換するQSPECTプラグラムが開発された(非特許文献1)。このプログラムにより、従来は困難であるとされた多施設での共同研究やデータの直接比較が可能となった他、頭部SPECT画像を用いた脳血流量の絶対定量が可能となった。
【先行技術文献】
【0004】
【非特許文献1】 Hidehiro Iida et al.,“Multicenter Evaluation of a Standardized Protocol for Rest and Acetazolamide Cerebral Blood Flow Assessment Using a Quantitative SPECT Reconstruction Program and Split−Dose 123I−Iodoamphetamine.”,J.Nucl.Med.,(2010),vol.51,No.10,p.1624−1631
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、SPECT画像の画素値をBq/mLといった統一された単位に変換するためには、単位容量あたりの放射能量とSPECTカウントとの関係を表す変換係数(ベクレルキャリブレーションファクター、以下、BCFという)を求める必要がある。BCFは、単位容量あたりの放射能量が既知の試料を用いて得られたSPECT横断像上でカウント値を計測し、用いた試料における単位容量あたりの放射能量を当該カウント値で除すといった手順で求められる。これまで、BCFは、SPECT検査を行う各施設において検査ごとに求める必要があるとされていた。これは、用いられるSPECT装置の有する微妙なクセやコンディションがSPECT画像に影響を与えると考えられていたためである。しかし、BCFを施設ごとに行うといった従来の方法では、BCF測定のために別途試料が必要となる他、BCF測定のために一定の時間を要し、不要な被爆の原因となり得るといった問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、SPECT検査を行う施設ごとにおけるBCFの測定を行わずに、SPECT画像の画素値をBq/mLといった統一された単位に変換する方法及び当該方法を実行するための画像処理装置及びコンピュータプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は数多くの実験結果を用いて詳細な検討を重ねた結果、BCFの値はSPECT装置の機種とコリメータの組み合わせが同じであればほぼ等しいといった知見を得た。この知見に基づき、SPECT装置の機種とコリメータ種との組み合わせごとのBCF値をデータベース化し、検査時にはこのデータベースから必要なBCF値を読み出すことによって、施設ごとに別途BCF値を求めることなく、画素値のBq/mL単位への変換が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、SPECT画像の画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換するための変換係数であるベクレルキャリブレーションファクターを、SPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及びコリメータ種)にタグ付された形で格納したデータベースと、SPECT画像を取得する機能を有する画像取得部と、前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを前記データベースから読み出す機能を有する変換係数取得部と、前記ベクレルキャリブレーションファクターを用い、前記SPECT画像の各画素における画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換する機能を有する第1の画素値変換処理部と、を備える。
【0009】
本発明に係る画像処理プログラムは、SPECT画像データと、SPECT画像の画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換するための変換係数であるベクレルキャリブレーションファクターであって、所定の記憶装置内に構築されたデータベース内に格納されたベクレルキャリブレーションファクターを利用可能であり、コンピュータを画像処理装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、当該コンピュータに、SPECT画像を取得する画像取得ステップと、前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを前記所定の記憶装置内に構築された前記データベースから読み出す変換係数取得ステップと、ここで、当該ベクレルキャリブレーションファクターは、予め前記データベースにSPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及びコリメータ種)にタグ付されて格納されたものであり、読み出した前記ベクレルキャリブレーションファクターを用いて前記SPECT画像の各画素における画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換する第1の画素値変換ステップと、を実行させる機能を有する。
【0010】
本発明に係る画像処理装置及び画像処理プログラムは、予めデータベースに格納されたBCFを読み出して利用する構成としているので、施設ごとに煩雑なBCF測定を行う必要がないといった利点を有している。
【0011】
本発明に係る画像処理装置は、単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換された各画素の画素値を、体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する機能を有する第2の画素値変換処理部をさらに備えたものであってよく、同様に、本発明に係る画像処理プログラムは、コンピュータに、前記第1の画素値変換ステップ実行後の画像の各画素の画素値を、体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する第2の画素値変換ステップを実行させる機能をさらに有するものであって良い。
【0012】
本発明に係る画像処理方法は、コンピュータを用いてSPECT画像の画像処理を行う方法であって、コンピュータによって、SPECT画像を取得する画像取得ステップと、SPECT画像の画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換するための変換係数であるベクレルキャリブレーションファクターであって、前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを取得する変換係数取得ステップと、ここで、前記ベクレルキャリブレーションファクターは、SPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種)と関連付けられて予め与えられたものであり、前記ベクレルキャリブレーションファクターを用いて前記SPECT画像の各画素における画素値を単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)の単位に変換する第1の画素値変換ステップと、を順次実行する。
【0013】
本発明に係る画像処理方法において、ベクレルキャリブレーションファクターは、所定の記憶装置内に構築されたデータベースに、SPECT装置に関する情報(SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種)にタグ付されて予め格納されたものであり、前記変換係数取得ステップは、コンピュータによって、前記データベースから、前記SPECT画像の撮像に用いたSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種に対応したベクレルキャリブレーションファクターを読み出すといった構成としても良い。
【0014】
また、本発明に係る画像処理方法は、コンピュータによって、前記第1の画素値変換ステップ実行後の画像の各画素の画素値を、体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する第2の画素値変換ステップをさらに実行するものであって良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、SPECT検査を行う施設ごとでのBCFの測定を行わずに、SPECT画像の画素値をBq/mLといった統一された単位に変換することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る画像処理装置の、好ましい態様における処理の流れを示すフローチャート。
図2】本発明に係る画像処理装置の、好ましい態様における機能ブロック図。
図3】本発明に係る画像処理装置の、好ましい態様におけるシステム構成。
図4】本発明に係る画像処理装置に搭載されたデータベースに格納された情報の一例。
図5】本発明に係る画像処理プログラムの、好ましい態様における構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき、図面を参照して説明する。なお、以下に示す例は、あくまでも好ましい形態について説明するものであり、本発明の内容はこれらの記載により何ら限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る画像処理装置の好ましい態様における処理の概要を示すフローチャートであり、図2は、本発明に係る画像処理装置の好ましい態様における機能ブロック図である。本発明に係る画像処理装置10は、画像処理プログラム300を読み込んだコンピュータによって構成することができ、画像処理装置10を動作させる事によって、本発明に係る画像処理方法を実現することができる。
好ましい態様において、画像処理装置10は、撮像情報取得部20、データ取得部30、変換係数取得部40、第1の変換処理部50、第2の変換処理部60、データベース70、及び出力部90とにより構成される。ここで、データベース70には、複数のBCF値が、SPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータ種にタグ付けされた形で格納されている。そして、好ましい態様において、画像処理装置10は、SPECT装置等の核医学画像撮像装置100と、電気通信回線を通じて接続される。
図3は、本発明に係る画像処理装置10の最も好ましい態様におけるシステム構成である。好ましい態様において、画像処理装置10は、CPU230と、メモリ240と、モニタ等の出力機器250と、通信インターフェース260と、キーボード等の入力装置270と、ハードディスク220とが、バス280を介して接続されている。画像処理装置10は、この他にもCD−ROMドライブやUSBインターフェース等を備えていても良い。通信インターフェース260は、核医学画像撮像装置100と接続するために用いられる。また、メモリ240には、本発明に係る画像処理プログラム300が記憶されている。
【0019】
画像処理装置10は、撮像情報取得部20に撮像情報取得ステップを実行させ、ユーザにSPECT装置の機種名及び搭載されたコリメータに関する情報、投与した放射性医薬品の総量、被験者の体重といった情報の入力を促し、ユーザが入力装置270を介して入力したこれらの情報を取得してメモリに格納する(ステップS01)。取得した各情報は、必要に応じ、画像処理装置10による以下の処理において用いられる。
なお、実施態様によっては、上記の各情報は、次のSPECTデータ取得ステップ(ステップS02)において取得するSPECT画像にタグ付された形で、SPECT画像と同時に与えられるものであっても良い。この場合は、ステップS01を省略することができる。
【0020】
次に画像処理装置10は、データ取得部30にSPECTデータ取得ステップを実行させ、画像処理を行うSPECT画像を取得する(ステップS02)。ここで取得されるSPECT画像は、複数の断層画像により構成される3次元画像である。このSPECT画像は、広く一般に臨床にて行われている公知の方法にて得ることができる。
好ましい態様において、SPECT画像は、DICOM形式等の、コンピュータで読み取り可能な形式で保存されたものを、核医学画像撮像装置100から、ネットワークを通じて直接入力することにより、画像処理装置10に取り込まれる。なお、当該SPECTデータは、ハードディスク、CD−ROM、DVD等といった、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納された状態で取得したものを、コンピュータシステムに備え付けられた読取装置により読み込むといった方法で取り込まれるものであっても良い。
【0021】
次いで、画像処理装置10は、変換係数取得部40に変換係数取得ステップを実行させ、SPECT撮像に用いたSPECT装置の機種名と搭載されたコリメータ種との組み合わせに対応したBCF値を取得する(ステップS03)。図4は、好ましい態様においてデータベース70に格納された情報を示す。この図に示すように、各BCFは、SPECT装置の機種、コリメータ種といった情報とタグ付された形で、データベース70内に格納されている。
好ましい態様において、変換係数取得ステップは、ステップS01にて取得されメモリ上に読み込まれたSPECT装置の機種名と搭載されたコリメータ種に関する情報を読み出し、データベース70にアクセスして対応するBCF値を読み出すといった操作によって行われる。
また好ましい態様において、データベース70は、画像処理装置10を構成しているコンピュータに接続されたハードディスク220内に構築される。データベース70は、CD−ROM、DVD及びUSBメモリといったコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されたものを用いても良い。この場合、データベース70を格納した記憶媒体を、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、又はUSBインターフェースに挿入し、画像処理プログラム300がデータベース70にアクセスできるようにする。
【0022】
なお、データベース70に格納されたBCF値は、種々のコリメータを搭載した複数のSPECT装置を用いて、公知の方法にて測定される。より具体的には、例えば、以下の手順によって求めることができる。
まず、単位容量あたりの放射能量(Bq/mL)既知の放射性医薬品を試料として用意する。ここでの単位容量あたりの放射能量は、SPECT撮像においてカウントの数え落としが生じない程度の放射能量とする。このような放射能量既知の放射性医薬品は、例えば、1日〜2日減衰させた放射性医薬品とすることができる。この試料をSPECT装置の中心に固定してSPECT撮像を行い、画像再構成を行って横断像を得る。そして、中心スライス全体の画素値の積算値を計測し、その値で試料における単位容量あたりの放射能量を除すことにより、BCF値が求められる。ここで、BCFの測定に用いる横断像のスライス厚と、被験者のSPECT画像におけるスライス厚とは、等しい価を用いる。
【0023】
変換係数取得ステップによってBCF値が取得されたら、画像処理装置10は、第1の変換処理部に第1の変換処理ステップを実行させ、データ取得ステップにて取得された被験者のSPECT画像における画素値(元の画素値)を、Bq/mLといった単位に変換する(ステップS04)。この処理は、変換係数取得ステップにて得られたBCF値を、SPECT画像の各画素における画素値に乗ずるといった方法にて行われる。従って、第1の変換処理ステップは、下記の式1に係る演算を、各画素値について実行することにより、行われる。
【0024】
【数1】
【0025】
第1の変換処理ステップが完了したら、画像処理装置10は、第2の変換処理ステップを実行し、画素値を体重あたりの放射性医薬品の取り込み量を表すSUV(Standardized uptake value)に変換する(ステップS05)。この処理は、各画素について、下記の式2に係る演算を実行することにより、行われる。
【0026】
【数2】
【0027】
第2の変換処理ステップが完了したら、画像処理装置10は、各SUVを、対応する画素に配し、ディスプレイといった出力機器に出力する(ステップS06)。好ましい態様において、出力は、SUVの値に応じた輝度や色彩により行われる。なお、実施態様によっては、ある一定の関心領域を設定し、その領域内に含まれる画素のSUVの平均値を算出して、数値によって表示するといった方法を行うことも、もちろん可能である。
【0028】
なお、画像処理装置10は、SUVではなく、Bq/mLの単位に変換された画素値を出力するといった態様とすることもできる。この場合は、第1の変換処理後の画素値を対応する画素に配し、ディスプレイといった出力機器に表示するといった方法により行うことができる。この場合も、輝度や色彩といった方法により、Bq/mLに変換された画素値の大きさを表現することができる。
【0029】
次に、本発明に係る画像処理プログラム300にについて、説明する。上述した様に、画像処理装置10は、画像処理プログラム300を読み込んだコンピュータとして、構成することができる。
画像処理プログラム300は、ハードディスク、CD−ROM、DVDといった、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納したものを、対応するドライブを介してコンピュータに読み込まれるものであってよい。画像処理プログラム300は、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号として、ネットワークを通じてコンピュータに読み込まれるものであっても良い。
図5は、本発明に係る画像処理プログラム300の、好ましい態様における構成を示す。好ましい態様において、画像処理プログラム300は、処理を統括するメインモジュール310と、撮像情報取得モジュール320と、データ取得モジュール330と、変換係数取得モジュール340と、第1の変換処理モジュール350と、第2の変換処理モジュール360と、出力モジュール370と、により構成される。
【0030】
撮像情報取得モジュール320は、ステップS01に係る処理をコンピュータに実行させる。データ取得モジュール330は、ステップS02に係る処理を、コンピュータに実行させる。変換係数取得モジュール340は、ステップS03に係る処理を、コンピュータに実行させる。第1の変換処理モジュール350は、ステップS04に係る処理を、コンピュータに実行させる。第2の変換処理モジュール360は、ステップS05に係る処理を、コンピュータに実行させる。出力モジュール370は、ステップS06に係る処理を、コンピュータに実行させる。
【0031】
本発明に係る画像処理装置10によって、検査ごとにBCFの測定を行うことなく、SPECT画像を、撮像に用いた機種や撮像条件に依存しないBq/mLといった単位の画素値に変換することが可能となる。これにより、より簡便にデータの施設間比較や絶対定量を行う事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、画像処理ソフトウエア及び画像診断機器の分野にて、利用する事ができる。
【符号の説明】
【0033】
10 画像処理装置
20 撮像情報取得部
30 データ取得部
40 変換係数取得部
50 第1の変換処理部
60 第2の変換処理部
70 データベース
90 出力部
220 ハードディスク
230 CPU
240 メモリ
250 モニタ等の出力機器
260 通信インターフェース
270 キーボード等の入力装置
280 バス
300 画像処理プログラム
310 メインモジュール
320 撮像情報取得モジュール
330 データ取得モジュール
340 変換係数取得モジュール
350 第1の変換処理モジュール
360 第2の変換処理モジュール
370 出力モジュール
図1
図2
図3
図4
図5