【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。この実施例は、本発明を限定するものではない。実施例で使用した、材料、試薬などは、他に特定のない限り、商業的な供給源から入手可能である。
【0070】
(実施例1:ウラルカンゾウの栽培)
実施形態1に係る栽培装置100を用いて、主として根を薬用部位とするウラルカンゾウを栽培した実施例について、以下に説明する。
【0071】
(材料)
以下の方法によって得たウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisher)の培養植物体を材料に養液栽培を行った。シュート培養として継代維持中のウラルカンゾウの2クローン(以下、「Gu」、「GuH」という)のうち、再生植物体の鉢栽培1年生株での生育がより良好で、根及び細根中のグリチルリチン酸がより高含量であったGuを材料に、ストロン(走出枝)様組織の誘導による苗について、6%ショ糖とナフタレン酢酸0.01mg/lとを含むMurashge & Skoogの液体培地、20℃、及び、暗所の条件下、増殖を行った(特開2005-137291参照)。当該苗の増殖後、増殖効率の良い3サブクローン(以下、「Gu2-2-1」、「Gu2-3-2」、「Gu2-5-2」という)を得た。これらのストロン様培養物より、節切片あるいは頂芽切片を調製して、植物体再生培地(ナフタレン酢酸0.1mg/l、カイネチン 0.5mg/l、1%ショ糖、及び、グルタミン 10mg/lを含むWoody Plant液体培地、培養中の支持体としてフロリアライトを使用)、20℃、14時間照明下で培養し、得られた培養植物体を、養液栽培の材料とした。養液栽培の材料であるウラルカンゾウ培養植物体を、栽培装置100に植え付けた。なお、礫片130はミリオンA(ソフトシリカ社製)、支持体140はハイドロボール中粒(都市園芸研究所社製)、支持体150はハイドロボール小粒(都市園芸研究所社製)とした。植え付け直後は、馴化のために苗の地上部をプラカップで覆い、1〜2週間後、プラカップを取り除いた。
【0072】
(養液の調製)
養液肥料は、表1に示されるマツザキ1号及び2号(マツザキアグリビジネス社製)を用いた。養液は、説明書により推奨される濃度(水8Lに対し、マツザキ1号6g、マツザキ2号4g)より、マツザキ1号及び2号の量を減らした25%濃度(水8Lに対し、マツザキ1号1.5g、マツザキ2号1g)に調製して使用した。このときの養液槽内の養液の電気伝導度(EC)は1.332 mS/cm、pH 7.39であった。栽培301日後には、養液濃度を説明書が推奨する濃度の50%濃度に変更した。このときの養液槽内の養液の電気伝導度(EC)は1.128 mS/cm、pH 7.54であった。
【0073】
(栽培環境条件)
ウラルカンゾウが植え付けられた栽培装置100は閉鎖温室内に設置され、当該室内の環境条件は、室温20℃、相対湿度60%、補光照明を用いて16時間照明/日とした。栽培195日後では、室温20℃、相対湿度50%、補光照明を用いて14時間照明/日とした。
【0074】
(比較対照植物)
上径15cm(下径10.5cm)×長さ30.5cmのポリポット(底面穴1個、かど穴4個)の底に鉢底ネットを敷き、調製した培養土[ベラボン(フジック社製):赤玉土:クレハ培養土:堆肥=5:3:1:1]を入れ、ウラルカンゾウ培養植物体(Gu)を植出し、閉鎖温室、室温20℃、相対湿度60%、16時間照明/日(補光照明を使用)で栽培した。以下、本実施例では当該栽培を鉢栽培という。栽培803日後に室温20℃、相対湿度50%、補光照明を用い14時間照明/日とした。液肥としてハイポネックス原液6-10-5(ハイポネックスジャパン社製)1000倍液を週1回散布した。
【0075】
(生育調査と収穫)
養液栽培のGu2-2-1及びGu2-3-2は、栽培401日後に収穫し、最大根長、最大根幅を測定後、根、根茎、細根(径1mm以下の根)に分けて新鮮重量を測定した。
図3は、Gu2-3-2養液栽培401日後の収穫物(根、細根、根茎)である。また、50℃で数日間温風乾燥後、乾燥重量を測定した。同様に、鉢栽培のGuは、栽培1009日後に収穫し、生育調査及び新鮮重量、乾燥重量の測定を行った。反復数は3個体とした。
【0076】
図4は、Gu鉢栽培1009日後とGu2-2-1及びGu2-3-2養液栽培401日後との最大根長及び最大根幅を比較した結果である。図中のエラーバーは、当該測定結果の標準偏差を示すものである。なお、以降の図において示されるエラーバーも同様である。養液栽培401日後のGu2-2-1及びGu2-3-2は、鉢栽培1009日後のGuに比べて最大根長、最大根幅とも大きく、特に最大根幅はそれぞれGuの1.6倍(Gu2-2-1)及び1.9倍(Gu2-3-2)であった。
【0077】
図5は、Gu鉢栽培1009日後とGu2-2-1及びGu2-3-2養液栽培401日後との地下部(根、細根、根茎)の乾燥重量を比較した結果である。地下部の収量(乾燥重量)もGuに比べて、根はそれぞれ1.5倍(Gu2-2-1)及び2.5倍(Gu2-3-2)、根茎は3.2倍(Gu2-2-1)及び13.5倍(Gu2-3-2)であった。なお、Gu2-2-1及びGu2-3-2は、ともにGuのサブクローン化されたものであり、遺伝的背景はGuである。
【0078】
(グリチルリチン酸分析)
次に、Gu鉢栽培1009日後とGu2-2-1及びGu2-3-2養液栽培401日後との地下部(根、細根、根茎)に含まれるグリチルリチン酸を定量した。グリチルリチン酸の定量は、日本薬局方、甘草中のグリチルリチン酸定量法を参考に行った。乾燥後の植物試料を粉末にし、その約100mgを精密に量り取って15ml容のコニカルチューブに入れ、50%エタノール7mlを正確に加え、超音波洗浄機で30分間、ボルテックスミキサーで1分間抽出した。遠心分離(4,500rpm、3分間)後、上清300μLをウルトラフリーMC(日本ミリポア社製)に入れ、15,000rpm、20℃で1分間遠心濾過し、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)分析試料とした。
【0079】
(グリチルリチン酸標準溶液)
生薬試験用のグリチルリチン酸標準品(和光純薬工業製)を精密に5mg量りとって20ml容のメスフラスコにいれ、50%エタノールで正確に20mlとすることにより、グリチルリチン酸標準溶液(0.25mg/ml)とした。この標準溶液を50%エタノールで順次2倍に希釈し、検量線作成用標準液とした。
【0080】
(HPLC条件)
装置は、Waters Alliance PDA HPLC system(セパレーションモジュール:2795、フォトダイオードアレイ検出器:2996)を用い、分析条件は、カラム TSKgel ODS-100V(TOSOH、径4.6mm×250mm、5μm)、移動相 アセトニトリル(溶媒A)-2%酢酸(溶媒B)=2:3、流速:1.0 ml/分、カラム温度 20℃、検出 UV 254 nm(定量)、200-400 nm(定性)とした。
【0081】
(グリチルリチン酸含量及び収量)
図6は、Gu鉢栽培1009日後とGu2-2-1及びGu2-3-2養液栽培401日後との根のグリチルリチン酸含量及び株あたりの収量を比較した結果である。
図7は、Gu鉢栽培1009日後とGu2-2-1及びGu2-3-2養液栽培401日後との細根のグリチルリチン酸含量及び株あたりの収量を比較した結果である。
図8は、Gu鉢栽培1009日後とGu2-2-1及びGu2-3-2養液栽培401日後との根茎のグリチルリチン酸含量及び株あたりの収量を比較した結果である。
【0082】
図6〜
図8に示すように、養液栽培401日後のGu2-2-1及びGu2-3-2は、根及び根茎において、鉢栽培1009日のGuよりも高いグリチルリチン酸含量を示し、Gu2-2-1及びGu2-3-2の1mm以上の根は、約3%のグリチルリチン酸含量であった。これは日本薬局方が規定するグリチルリチン酸含量2.5%以上を満たしており、わずか401日間の栽培で、生薬としての使用に値する根が得られることを示している。Gu2-2-1及びGu2-3-2の根の株あたりのグリチルリチン酸収量は、それぞれGuの1.9倍(Gu2-2-1)及び3.1倍(Gu2-3-2)であった。
【0083】
以上説明したように、本発明に係る栽培装置100及び栽培方法により、栽培期間が半分以下のわずか400日で、鉢栽培1009日の根よりも肥大し、収量の多い根及び根茎が得られた。また、本発明は、グリチルリチン酸生産方法としても優れている。さらに、本発明では地上部の生育も非常に良好であることから、通常は入手が困難なウラルカンゾウ地上部(葉、茎など)も生産が可能である。ウラルカンゾウ地上部は、食品や化粧品分野において機能性素材として注目されているフラボノイド類が豊富であり、ウラルカンゾウ地上部の新たな用途開発も可能である。
【0084】
(実施例2:ベラドンナの栽培)
次に、実施形態1に係る栽培装置100を用いて、主として根及び葉を薬用部位とするベラドンナを栽培した実施例について、以下に説明する。
【0085】
(材料)
3%ショ糖、Murashige & Skoog固形培地で継代維持中のベラドンナ(Atropa belladonna L.)の培養植物体を材料に養液栽培を行った。当該ベラドンナ培養植物体を、栽培装置100に植え付けて栽培した。なお、礫片130はミリオンA(ソフトシリカ社製)、支持体140はハイドロボール中粒(都市園芸研究所社製)、支持体150はハイドロボール小粒(都市園芸研究所社製)とした。植え付け直後は、馴化のために苗の地上部をプラカップで覆い、1〜2週間後、プラカップを取り除いた。
【0086】
(栽培環境条件)
ベラドンナ培養植物体が植え付けられた栽培装置100は閉鎖温室内に設置され、当該室内の環境条件は、室温20℃、相対湿度50%、補光照明を用い14時間照明/日とした。養液肥料は、実施例1と同様に、表1に示されるマツザキ1号及び2号(マツザキアグリビジネス社製)を用いた。養液は、植え付け後は推奨濃度の25%濃度として、栽培32日後に推奨濃度の50%濃度に変更した。
【0087】
(比較対照植物)
素焼きの植木鉢5号に調製した培養土(赤玉土:クレハ培養土:堆肥=3:1:1)を入れ、ベラドンナ培養植物体を植出し、閉鎖温室、室温20℃、相対湿度50%、14時間照明/日(補光照明使用)で栽培した。以下、本実施例では当該栽培を鉢栽培という。液肥としてハイポネックス原液6-10-5(ハイポネックスジャパン社製)1000倍液を週1回散布した。
【0088】
(生育調査と収穫)
養液栽培、鉢栽培ともに栽培141日後に地上部の生育調査を行った。また、栽培146日後に葉の収穫、147日後に地下部の収穫を行い、根と細根(径1mm以下)に分離後、それぞれ新鮮重量を測定した。葉、根及び細根は、凍結乾燥後、乾燥重量を測定した。
図9は、ベラドンナ養液栽培147日後の収穫物(根及び細根)である。
【0089】
図10は、ベラドンナ鉢栽培と養液栽培との141日後の地上部(草丈、葉数、最大葉長、最大葉幅)の生育を比較した結果である。
図11は、ベラドンナ鉢栽培と養液栽培との147日後の最大根長及び最大根幅を比較した結果である。
図12は、ベラドンナ鉢栽培と養液栽培との146日後の葉の乾燥重量または147日後の根及び細根の乾燥重量を比較した結果である。
【0090】
図10に示すように、栽培141日後の地上部の生育(草丈、葉数、最大葉長、最大葉幅)は、いずれも養液栽培の方が優れており、鉢栽培に比べて草丈は4倍、葉数は6.5倍、最大葉長は1.5倍、最大葉幅は1.4倍であった。
【0091】
(根の生育及び葉、根、細根の収量)
図11に示すように、栽培147日後の根の生育は、養液栽培の方が優れており、鉢栽培に比べて、最大根長は1.7倍、最大根幅は1.9倍であった。また、
図12に示すように、葉、根及び細根の収量(乾燥重量)も養液栽培の方が優れており、鉢栽培に比べて葉は6.5倍、根は10.8倍、細根は4.3倍であった。
【0092】
(アルカロイドの抽出)
次に、146日後または147日後の鉢栽培と養液栽培とから得られたベラドンナの葉及び地下部(根、細根)に含まれるアルカロイドを抽出した。ベラドンナの主要な薬用成分としては、副交感神経遮断作用を示すアトロピン、スコポラミン等のアルカロイドが知られており、主アルカロイドはアトロピンである。また、日本薬局方ではベラドンナの根(ベラドンナコン)が生薬として収載されているが、英国薬局方では葉(ベラドンナヨウ)も生薬として収載されており、葉、根の両方が薬用に供される。
【0093】
アルカロイドの抽出及び精製は、日本ウォーターズ社製固相抽出カラムOasisMCX1cc/30mgを用いた。乾燥後の植物試料を粉末にし、その約100mgを精密に量り取って15ml容のコニカルチューブに入れ、5%酢酸溶液3mlを正確に加え、超音波洗浄機で30分間、ボルテックスミキサーで1分間抽出した。OasisMCX1cc/30mgカラムにメタノール1mlを入れて洗浄後、ミリQ水1mlを入れて洗浄した。5%酢酸抽出液を遠心分離(4,500rpm、3分間)後、上清1mLを正確に量りとり、OasisMCXカラムに負荷した。マニホールドを用いながらOasisMCXカラムにメタノール1mlを入れ洗浄し、さらに2%ギ酸溶液1mLで洗浄した。その後、OasisMCXカラムにアンモニア水/メタノール混液(5:95)1mLを入れ、アルカロイドを溶出した。溶媒を留去後、メタノール500μlに再溶解してウルトラフリーMC(日本ミリポア社製)に入れ、15,000rpm、20℃で1分間遠心濾過し、HPLC分析試料とした。
【0094】
(HPLC用標準溶液)
生薬試験用のアトロピン硫酸塩水和物(和光純薬工業製)、生薬試験用のスコポラミン臭化水素酸塩水和物(和光純薬工業製)それぞれ約1mgを精密に量り取り、メタノール1mlを正確に加え溶解した。それぞれ0.5mlを正確に量り取り、良く混和し、アルカロイド標準溶液とした。この標準溶液をメタノールで順次2倍に希釈し、検量線作成用標準液とした。
【0095】
(HPLC条件)
装置は、Waters Alliance PDA HPLC system(セパレーションモジュール:2795、フォトダイオードアレイ検出器:2996)を用い、分析条件は、カラム TSKgel ODS-100V(TOSOH、径4.6mm×250mm、5μm)、移動相 アセトニトリル(溶媒A)-10mM 1-ヘプタンスルホンサンナトリウム(pH 3.5)(溶媒B)=1:3、流速:1.0 ml/分、カラム温度 40℃、検出 UV 210 nm(定量)、200-400 nm(定性)とした。
【0096】
(アルカロイド含量及び収量)
図13は、ベラドンナ鉢栽培と養液栽培との146日後の葉のアルカロイド含量または147日後の根及び細根のアルカロイド含量を比較した結果である。
図14は、ベラドンナ鉢栽培と養液栽培146日後の葉、または147日後の根及び細根のアルカロイド収量を比較した結果である。
【0097】
図13に示すように、養液栽培の根のアトロピン含量は、鉢栽培の60%であったが、葉及び細根においてはほぼ同等の含量であった。また、養液栽培は、鉢栽培に比べて、葉、根及び細根の収量が顕著に多いことから、
図14に示すように、アルカロイド収量が高くなり、それぞれのアトロピン収量は、鉢栽培に比べて葉では6.4倍、根では7.1倍、細根では5.0倍であった。
【0098】
以上説明したように、本発明に係る栽培装置100及び栽培方法により、ベラドンナの地下部の生育が促進されるため、生薬ベラドンナヨウ、ベラドンナコンを生産する方法として、また、アトロピンを生産する方法として優れていることが示された。
【0099】
(実施例3:セリバオウレンの養液栽培)
次に、実施形態2に係る栽培装置200を用いて、主として根茎を薬用部位とするセリバオウレンを栽培した実施例について、以下に説明する。
【0100】
(材料)
3%ショ糖、10mg/lグルタミン、1mg/lナフタレン酢酸、2mg/lカイネチン含有Woody Plant固形培地(WPGN1K2培地)、20℃、暗所で培養中のセリバオウレン[Coptis japonica Makino var.dissecta(Yatabe)Nakai]不定胚より再生した培養植物体(非形質転換体:CjWT)を材料として養液栽培を行った。また、WPGN1K2培地、20℃、暗所で継代維持中の3’hydroxy-N-methylcoclaurine 4’O-methyltransferase(以下、「4’OMT」という)遺伝子(主薬用成分ベルベリン生合成鍵酵素遺伝子の1種)を導入した不定胚より再生した培養植物体(4’OMT遺伝子導入体:CjHE4’)を材料として養液栽培を行った。
セリバオウレン培養植物体(以下「CjWT」、「CjHE4’」という)は3%ショ糖、10mg/lグルタミン含有Woody Plant固形培地、20℃、14時間照明下で培養し育成したものを用いた。養液栽培の材料であるセリバオウレン培養植物体を、支持体240がココピートである栽培装置200に植え付けた。植え付け直後は、馴化のために苗の地上部をプラカップで覆い、1〜2週間後、プラカップを取り除いた。
【0101】
(栽培条件)
セリバオウレンが植え付けられた栽培装置200は閉鎖温室内に設置され、当該室内の環境条件は、室温20℃、相対湿度60%、補光照明を用いて16時間照明/日とした。CjWTについては栽培333日後、CjHE4’については208日後に、環境条件を室温20℃、相対湿度50%、補光照明を用いて14時間照明/日に変更した。
【0102】
養液肥料は、実施例1と同様に、表1に示されるマツザキ1号及び2号(マツザキアグリビジネス社製)を用いた。養液は、植え付け後は推奨濃度の25%濃度として、CjWTについては栽培389日後、CjHE4’については栽培264日後に、推奨濃度の50%濃度に変更した。
【0103】
(比較対照植物)
素焼きの植木鉢3号に調製した培養土(赤玉土:クレハ培養土:堆肥=3:1:1)を入れ、セリバオウレン培養植物体(CjWT及びCjHE4’)を植出し、閉鎖温室、室温20℃、相対湿度60%、補光照明を用いて16時間照明/日で栽培した。養液栽培と同様に、CjWTついては栽培333日後、CjHE4’ついては208日後に相対湿度50%、14時間照明/日に環境条件を変更した。液肥としてハイポネックス原液6-10-5(ハイポネックスジャパン社製)1000倍液を週1回散布した。
【0104】
(生育調査と収穫)
CjWTでは、栽培579日後に地上部の生育調査を行った。また、CjWTは栽培580日後に、CjHE4’は栽培454日後に植物体の収穫を行い、各部位(葉身、葉柄、茎、根茎、根、果茎、実及び花)に分割し、それぞれ新鮮重量を測定した。葉身、葉柄、茎、根茎及び根は、凍結乾燥後、乾燥重量を測定した。
図15は、CjWTの鉢栽培(左)及び養液栽培(右)の栽培580日後の植物体を比較した結果である。
図16は、CjHE4’の鉢栽培(左)及び養液栽培(右)の栽培454日後の植物体を比較した結果である。
【0105】
図15及び
図16に示すように、養液栽培により得られたセリバオウレンは、鉢栽培のセリバオウレンと比較して、地上部及び地下部ともに生育が良好であった。
【0106】
(CjWT地上部の生育)
CjWTの鉢栽培と養液栽培との579日後の地上部(草丈、果茎長、葉数、最大葉身長、最大頂小葉身長、最大側小葉身長、最大葉身幅、最大頂小葉幅、最大側小葉身幅)について、生育の比較を行った。
図17は、CjWTの鉢栽培と養液栽培との579日後の地上部の生育を比較した結果である。
【0107】
図17に示すように、CjWTを579日間、鉢栽培または養液栽培したときの地上部の生育は、測定したすべての項目について養液栽培が勝っており、特に薬用部位である根茎の収量増加に寄与する影響が大きいとされる養液栽培の葉数は、鉢栽培の2.2倍であった。
【0108】
(ベルベリンの抽出)
次に、鉢栽培と養液栽培とから得られたセリバオウレンの地上部及び地下部に含まれるベルベリンを抽出した。「道衛研所報第44集、1-6、1994」に記載される方法に基づいて、ベルベリンの抽出及び精製を行った。乾燥後の植物試料を粉末にし、その約20mgを精密に量り取って15ml容のコニカルチューブに入れ、メタノール・酢酸混液(99:1)5mlを正確に加え、超音波洗浄機で30分間、ボルテックスミキサーで1分間抽出した。遠心分離(4,500rpm、3分間)後、上清500μLをウルトラフリーMC(日本ミリポア社製)に入れ、15,000rpm、20℃で1分間遠心濾過し、HPLC分析試料とした。
【0109】
(HPLC条件)
装置は、Waters Alliance PDA HPLC system(セパレーションモジュール:2795、フォトダイオードアレイ検出器:2996)を用い、分析条件は、カラムTSKgel ODS-100V(TOSOH、径4.6mm×250mm、5μm)、移動相、アセトニトリル(溶媒A)-10 mM 1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム(pH 3.5)(溶媒B)、溶媒グラジェント:0-15分 27-29% 溶媒A、15-25分 29-39% 溶媒A、25-31分 39-51% 溶媒A、31-34分 51% 溶媒A;流速:0.8 ml/分;カラム温度:40℃;検出:UV 284 nm(定量)、200-400 nm(定性)とした。
【0110】
(CjWT及びCjHE4’の各部位の乾燥重量)
図18は、CjWTの鉢栽培と養液栽培との580日後の植物体各部位、及び、薬用部位である根茎の乾燥重量を比較した結果である。
図19は、CjHE4’の鉢栽培と養液栽培との454日後の植物体各部位、及び、薬用部位である根茎の乾燥重量を比較した結果である。
【0111】
図18及び
図19に示すように、栽培580日後のCjWT及び栽培454日後のCjHE4’の植物体各部位の乾燥重量は、いずれも養液栽培が勝っており、特に養液栽培での薬用部位である根茎の収量(乾燥重量)は、それぞれ鉢栽培の4.4倍(CjWT)及び6.7倍(CjHE4’)であった。
【0112】
(各部位のベルベリン含量及び収量)
図20は、CjWTの栽培580日後、及び、CjHE4’の栽培454日後の鉢栽培と養液栽培との植物体各部位のベルベリン含量を比較した結果である。
図21は、CjWTは栽培580日後、及び、CjHE4’の栽培454日後の鉢栽培と養液栽培との植物体各部位のベルベリン収量を比較した結果である。
【0113】
図20に示すように、CjHE4’の根茎ベルベリン含量を除き、CjWT及びCjHE4’ともに、鉢栽培と養液栽培でのベルベリン含量の差は認められなかった。従って、
図21に示すように、CjWT及びCjHE4’のいずれの部位においても養液栽培の方が、ベルベリンの収量が顕著に高かった。
【0114】
(根茎のベルベリン含量及び収量)
図22は、CjWTの栽培580日後、及び、CjHE4’の栽培454日後の鉢栽培と養液栽培との薬用部位である根茎のベルベリン含量を丹波黄連のベルベリン含量の文献値と比較した結果である。
図23は、CjWTの栽培580日後、及び、CjHE4’の栽培454日後の鉢栽培と養液栽培との薬用部位である根茎のベルベリン収量を丹波黄連のベルベリン収量の文献値と比較した結果である。
図22及び
図23において、CjWT及びCjHE4’鉢栽培及び養液栽培時の根茎のベルベリン含量及び収量を、かつての国内最大のオウレン生産地丹波地方で生産された生薬「黄連(基原:セリバオウレン、一般に丹波黄連とよばれる)」の文献値(薬用植物栽培と品質評価 Part1、厚生省薬務局監修、薬事日報社参照)と比較した。
【0115】
図22に示すように、CjWT580日間、CjHE4’454日間の養液栽培の根茎は、畑作5年の丹波黄連のベルベリン含量約7%には達しないものの、日本薬局方が定める規格値「塩化ベルベリンとして4.2%以上(ベルベリンとして3.8%以上)」を達成した。また、
図23に示すように、CjWTでは約1/3の期間で丹波黄連5年の55%のベルベリン収量が得られ、CjHE4’では約1/4の栽培期間で丹波黄連5年の約1/3のベルベリン収量が得られた。
【0116】
次に、CjWTの鉢栽培と養液栽培との189日後の植物体各部位(葉、茎、根茎、根)のベルベリンの乾燥重量及び収量を比較した結果を示す。
図24は、CjWTの鉢栽培とココピートを用いた養液栽培との189日後の植物体各部位のベルベリン含量を比較した結果である。
図25は、CjWTの鉢栽培とココピートを用いた養液栽培との189日後の植物体各部位のベルベリン収量を比較した結果である。
【0117】
図25に示すように、鉢栽培に比べて養液栽培では、ベルベリンの収量が顕著に高かった。
【0118】
以上説明したように、本発明に係る栽培装置200及び栽培方法により、セリバオウレンのベルベリン生合成能に影響を及ぼすことなく、セリバオウレンの地上部及び地下部の生育が促進されるため、栽培期間の短縮、また、ベルベリン収量の増加が望める方法として優れていることが示された。
【0119】
(実施例4:セリバオウレンの養液栽培)
次に、実施形態2に係る栽培装置200を用いて、主として根茎を薬用部位とするセリバオウレンを栽培した実施例について、以下に説明する。
【0120】
(材料)
実施例3と同様の不定胚より再生した培養植物体(非形質転換体:CjWT及び4’OMT遺伝子導入体:CjHE4’)を材料として養液栽培を行った。
図26は、本実施例において行ったCjWT及びCjHE4’の養液栽培を示す図である。
図26に示すように、本実施例では、養液栽培の材料であるセリバオウレン培養植物体を、支持体240がパミスサンドである栽培装置200に植え付けた。植え付け直後は、馴化のために苗の地上部をプラカップで覆い、1〜2週間後、プラカップを取り除いた。
【0121】
(栽培条件)
セリバオウレンが植え付けられた栽培装置200は、閉鎖温室内に設置され、当該室内の環境条件は、室温20℃、相対湿度50%、補光照明を用いて14時間照明/日とした。
【0122】
養液肥料は、実施例1と同様に、表1に示されるマツザキ1号及び2号(マツザキアグリビジネス社製)を用いた。養液は、植え付け後は推奨濃度の25%濃度として、養液栽培57日後に、推奨濃度の50%濃度に変更し、さらに、養液栽培146日後に、推奨濃度、すなわち、100%濃度に変更した。
【0123】
(CjWT及びCjHE4’の地上部の生育)
CjWT及びCjHE4’について、養液栽培162日後に地上部(草丈、果茎長、葉数、最大葉身長、最大頂小葉身長、最大側小葉身長、最大葉身幅、最大頂小葉身幅、最大側小葉身幅)の生育調査を行った。
図27は、CjWT及びCjHE4’の養液栽培162日後の地上部の生育結果を示す図である。
【0124】
図27に示すように、CjWT及びCjHE4’のいずれも良好に生育した。本実施例では、CjWT及びCjHE4’の両者について、生育結果の差は認められなかった。
【0125】
(CjWT及びCjHE4’の各部位の乾燥重量)
CjWT及びCjHE4’について、養液栽培189日後に植物体の収穫を行い、各部位(葉身、葉柄、茎、根茎、根)に分割し、それぞれ新鮮重量を測定した。各部位について、凍結乾燥後、乾燥重量を測定した。
図28は、CjWT及びCjHE4’の養液栽培189日の植物体各部位、及び、薬用部位である根茎の乾燥重量の結果である。
【0126】
図28に示すように、養液栽培189日後のCjWT及びCjHE4’の植物体各部位及び薬用部位である根茎の収量(乾燥重量)はほぼ同等であった。
【0127】
(ベルベリンの抽出)
次に、CjWT及びCjHE4’の養液栽培から得られたセリバオウレンの地上部及び地下部に含まれるベルベリンを抽出した。ベルベリンの抽出及び精製方法は、実施例3と同様である。
【0128】
(各部位のベルベリン含量及び収量)
図29は、CjWT及びCjHE4の養液栽培189日後の植物体各部位のベルベリン含量の結果である。
図30は、CjWT及びCjHE4の養液栽培189日後の植物体各部位のベルベリン収量の結果である。
【0129】
図29に示すように、養液栽培189日後のCjWT及びCjHE4’の植物体各部位のベルベリン含量は、実施例3におけるココピートを支持体とした養液栽培189日間のCjWTの各部位のベルベリン含量(
図24参照)よりも高く、特に、茎、根茎は、日本薬局方が定める規格値「塩化ベルベリンとして4.2%以上(ベルベリンとして3.8%以上)」以上の値であった。また、
図30に示すように、ベルベリン収量は、CjWT及びCjHE4’ともに根が最も高かった。
【0130】
(根茎のベルベリン含量及び収量)
図31は、CjWT及びCjHE4’の薬用部位である根茎のベルベリン含量、及び、ベルベリン収量の結果である。
図31においては、かつての国内最大のオウレン生産地丹波地方で生産された生薬「黄連(基原:セリバオウレン、一般に丹波黄連とよばれる)」の文献値(薬用植物栽培と品質評価 Part1、厚生省薬務局監修、薬事日報社参照)とも比較した。
【0131】
図31に示すように、本実施例のパミスサンドを支持体とする養液栽培では、わずか189日の栽培期間で、CjWT及びCjHE4’の根茎は、日本薬局方が定める規格値「塩化ベルベリンとして4.2%以上(ベルベリンとして3.8%以上)」を達成し、特にCjHE4’のベルベリン含量は、畑作5年の丹波黄連のベルベリン含量約7%に匹敵した。
【0132】
セリバオウレンは、初期生育が遅いことが知られている。パミスサンドを支持体とする本実施例における養液栽培では、
図24及び
図25に示されるココピートを支持体とする実施例3における養液栽培189日のときのベルベリン含量及び収量と比較して、遥かに高い値を示している。
図29に示すように、本実施例では、通常は生薬としない根においても、ベルベリン含量1.7%以上を達成し、根の利用方法を拡大する可能性がある。
【0133】
以上説明したように、本発明に係る栽培装置200及び栽培方法により、セリバオウレンのベルベリン生合成能に影響を及ぼすことなく、セリバオウレンの地上部及び地下部の生育が促進されるため、栽培期間の短縮、また、ベルベリン収量の増加が望める方法として優れていることが示された。