(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波高値制御部は、前記最終セグメント期間には、前記平均値に最も近い前記積分値を示した前記セグメント期間を配置することを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ点灯装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[画像形成装置]
点灯装置の構成に先駆けて、まず本発明の点灯装置の利用が想定される画像形成装置の構成について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、光変調素子として液晶パネルを利用する方式の画像形成装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。ここでは、画像形成装置60として、液晶プロジェクタを想定している。画像形成装置60は、光源装置61、液晶パネル63、投射光学系64、映像制御部65、パネル制御部66、及びランプ制御部67を備えている。
【0026】
光源装置61は、放電ランプ点灯装置1、放電ランプ10及び凹面反射鏡62を備える。放電ランプ10は交流点灯タイプのランプであり、ランプのアーク輝点と凹面反射鏡62の第一焦点がほぼ一致するように配置されている。放電ランプ10は放電ランプ点灯装置1によって点灯制御がなされる。放電ランプ10の構成、及び放電ランプ点灯装置1の構成については後述される。
【0027】
凹面反射鏡62からの反射光は液晶パネル63に照射される。本実施形態では、液晶パネル63は透過型の液晶パネルであり、パネル制御部66からの駆動信号に応じて照射光を変調する光変調素子(ライトバルブ)として利用される。光源装置61から放出された光が液晶パネル63を通過することで画像が形成され、当該画像光が投射光学系64を介してスクリーン72に投射される。
【0028】
映像制御部65は、PCやDVDなどで構成された映像情報入力部71から映像信号Saが入力される。映像制御部65は、映像信号Saを処理可能なデータ形式に変換すると共に、輝度調整、コントラスト調整、シャープネス調整、台形歪補正などの画像処理を施す。更に、映像制御部65は、液晶パネル63の駆動周波数に同期するように、この映像データに対してフレームレートの変換処理を行い、パネル制御部66に出力する。すなわち、映像制御部65は、処理後の映像データ信号Sb及び映像同期信号Scをパネル制御部66に出力する。
【0029】
パネル制御部66は、映像制御部65で生成された映像データ信号Sb及び映像同期信号Scに基づいて、液晶パネル63を駆動するための駆動信号Sdを生成し、液晶パネル63の制御を行う。
【0030】
ランプ制御部67は、映像制御部65から映像同期信号Scの入力を受け付け、当該同期信号を点灯装置1に出力する。また、ランプ制御部67は、放電ランプ10の消費電力を調整する際の設定電力信号Seを放電ランプ点灯装置1に出力する。設定電力信号Seは、例えば光源装置60の消費電力を低下させて駆動するなどの制御を行う際に、当該設定電力信号Seのレベルを変化させ、点灯装置1側で当該設定電力信号Seのレベルを検知して出力を低下させる制御を行うために用いられる信号である。なお、映像同期信号Scは、映像制御部65から直接点灯装置1に出力されるものとしても構わない。
【0031】
点灯装置1は、入力される映像同期信号Sc及び設定電力信号Seに基づいて、後述するように、放電ランプ10に投入する電流の制御を行う。
【0032】
なお、
図1では図示を省略しているが、画像形成装置60は、R,G,Bの3色に対応した3枚の液晶パネル63を備えており、映像制御部65及びパネル制御部66は、3色分の画像データを処理する機能を有している。また、光源装置61は、白色光を3色の光に分離する光学系を備えており、投射光学系64は3色の画像光を合成してカラー画像を示す画像光を生成する合成光学系を備えている。
【0033】
[ランプの構成]
次に、放電ランプ10の構成につき、説明する。
図2A及び
図2Bに、放電ランプの断面模式図を示す。
図2Bは、
図2Aの電極先端付近を拡大した断面模式図である。
【0034】
放電ランプ10は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された、ほぼ球形の発光部11を有する。放電容器の材料は石英ガラスに限定されず、他の材料で構成されていても構わない。
【0035】
この発光部11の中には、一対の電極20a、20bが例えば2mm以下という極めて小さい間隔で対向配置している。
【0036】
また、発光部11の両端部には封止部12が形成される。この封止部12には、モリブデン等で構成された導電用の金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。金属箔13の一端には電極20a、20bの軸部が接合しており、金属箔13の他端には外部リード14が接合し、後述する放電ランプ点灯装置から電力が供給される。
【0037】
放電ランプ10の発光部11には、水銀、希ガス、及びハロゲンガスが封入されている。
【0038】
水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360〜780nmの放射光を得るためのものであり、具体的数値でいうと、0.20mg/mm
3以上封入されている。この封入量は温度条件によっても異なるが、点灯時における発光部内部の圧力を200気圧以上という高い蒸気圧を実現するものである。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧が250気圧以上や300気圧以上といった高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができる。水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクタに適した光源を実現できる。
【0039】
希ガスとしては、例えばアルゴンガスが約13kPa封入される。その機能は点灯始動性を改善することにある。
【0040】
また、ハロゲンガスとしては、ヨウ素、臭素、塩素などが水銀又はその他の金属との化合物形態で封入される。ハロゲンの封入量は、10
−6μmol/mm
3〜10
−2μmol/mm
3の範囲から選択される。ハロゲンを封入する最大の理由は、いわゆるハロゲンサイクルを利用した放電ランプの長寿命化のためである。また、放電ランプ10を極めて小型で且つ極めて高い点灯蒸気圧とした場合には、ハロゲンを封入することで放電容器の失透防止という作用も得られる。失透とは、準安定のガラス状態から結晶化が進行し、多くの結晶核から成長した結晶粒の集合体へと変化することをいう。仮にこのような現象が生じると、結晶の粒界で光が散乱されて放電容器が不透明になってしまう。
【0041】
なお、同様の機能を実現できるのであれば、発光部11に封入されるガスは上記ガスに限定されるものではない。
【0042】
放電ランプ10の一実施例としては、発光部の最大外径9.4mm、電極間距離1.0mm、放電容器内容積55mm
3、定格電圧70V、定格電力180Wであり交流方式で電力が供給される構成とすることができる。
【0043】
また、近年において小型化が進行するプロジェクタに放電ランプ10を内蔵して利用することを想定した場合、放電ランプ10は全体寸法として極めて小型化が要請され、その一方で高い発光光量も要求される。このため、発光部内の熱的影響は極めて厳しいものとなり、ランプの管壁負荷値は0.8〜2.5W/mm
2、具体的には2.4W/mm
2となる。このように、高い水銀蒸気圧や管壁負荷値を有する放電ランプ10が、プロジェクタやオーバーヘッドプロジェクタのようなプレゼンテーション用機器に搭載されることで、プレゼンテーション用機器に演色性の良い放射光を提供することができる。
【0044】
図2Bに示すように、電極20aは頭部29aと軸部30aによって構成され、電極20bは頭部29bと軸部30bによって構成される。そして、電極20a及び電極20bには、いずれも先端に突起21が形成されている。この突起21は、ランプ点灯時、電極先端において溶融した電極材料が凝集して形成されるものである。本実施形態では、電極20a及び電極20bがいずれもタングステンで構成されるものとして説明するが、材料はこれに限定されるものではない。
【0045】
電極20a及び電極20bに対して通電がされると、白熱して高温化され、これらを構成するタングステンが昇華する。昇華したタングステンは、比較的に低温部である発光部11の内壁面領域において、封入されていたハロゲンガスと結合して、ハロゲン化タングステンを形成する。ハロゲン化タングステンの蒸気圧は比較的高いことから、ガスの状態で再び電極20a及び電極20bの先端付近に移動する。そして、この箇所で再度加熱されると、ハロゲン化タングステンはハロゲンとタングステンに分離される。このうちタングステンは、電極20a及び電極20bの先端に戻って凝集され、ハロゲンは発光部11内のハロゲンガスとして復帰する。これが上記の「ハロゲンサイクル」に対応する。なお、この凝集されたタングステンが、電極20a及び電極20bの先端近傍に付着することで、突起21が形成される。
【0046】
[点灯装置の構成]
次に、上述した放電ランプ10を点灯する点灯装置1の構成について説明する。
【0047】
図3は、本発明の放電ランプ点灯装置の構成を模式的に示す回路ブロック図である。
図3に示すように、点灯装置1は、給電部3、及び給電制御部5を含んで構成される。
【0048】
〈給電部3〉
給電部3は、降圧チョッパ部31、DC/AC変換部32、及びスタータ部33を備える。なお、この給電部3の構成はあくまで一例である。
【0049】
降圧チョッパ部31は、供給される直流電圧Vdcを所望電圧の直流電圧に降圧し、後段のDC/AC変換部32に出力する。
図3では、具体的な構成例として、降圧チョッパ部31は、スイッチング素子Qx、リアクトルLx、ダイオードDx、平滑コンデンサCx、抵抗Rx、及び分圧抵抗(R1,R2)を有するものが図示されている。
【0050】
スイッチング素子Qxは、直流電圧Vdcが供給される+側電源端子に一端が接続され、他端がリアクトルLxの一端に接続される。ダイオードDxは、カソード端子がスイッチング素子Qx及びリアクトルLxの接続点に接続され、アノード端子が−側電源端子に接続される。平滑コンデンサCxは、一端(+側端子)がリアクトルLxの出力側端子に接続され、他端(−側端子)が抵抗Rxの出力側端子に接続される。抵抗Rxは、平滑コンデンサCxの−側端子とダイオードDxのアノード端子の間に接続され、電流検出の機能を実現している。また、分圧抵抗(R1,R2)は、平滑コンデンサCxの−側端子と+側端子の間に接続され、電圧検出の機能を実現している。
【0051】
スイッチング素子Qxは、給電制御部5が出力するゲート信号Gxによって駆動される。このゲート信号Gxのデューティにより、降圧チョッパ部31は入力直流電圧Vdcをこのデューティに応じた電圧に降圧して後段のDC/AC変換部32に出力する。つまり、給電制御部5からの信号によって放電ランプ10への印加電圧が決定される。
【0052】
DC/AC変換部32は、入力された直流電圧を所望の周波数の交流電圧に変換して、後段のスタータ部33に出力する。
図3では、具体的な構成例として、DC/AC変換部32が、ブリッジ状に接続したスイッチング素子Q1〜Q4から構成されたものが図示されている(フルブリッジ回路)。
【0053】
スイッチング素子Q1は、ドライバ35から出力されるゲート信号G1によって駆動される。同様に、スイッチング素子Q2はゲート信号G2によって駆動され、スイッチング素子Q3はゲート信号G3によって駆動され、スイッチング素子Q4はゲート信号G4によって駆動される。ドライバ35は、対角に配置されたスイッチング素子Q1及びQ4の組と、スイッチング素子Q2及びQ3の組に対して、交互にオン/オフを繰り返すようにゲート信号を出力する。これにより、スイッチング素子Q1及びQ2の接続点と、スイッチング素子Q3及びQ4の接続点の間に、矩形波状の交流電圧が発生する。
【0054】
スタータ部33は、放電ランプ始動時にDC/AC変換部32から供給される交流電圧を昇圧して放電ランプ10に供給するための回路部である。
図3では、具体的な構成例として、スタータ部33が、コイルLh及びコンデンサChで構成されたものが図示されている。放電ランプ始動時に、コイルLh、コンデンサChからなるLC直列回路の共振周波数近傍の、高いスイッチング周波数(例えば数百kHz)の交流電圧をDC/AC変換部32から印加することで、スタータ部33の二次側において放電ランプの始動に必要な高い電圧が生成され、これが放電ランプ10に供給される。なお、放電ランプが点灯した後はDC/AC変換部32から供給される交流電圧の周波数を定常周波数(例えば60〜1000Hz)に移行し、定常点灯動作が行われる。
【0055】
なお、上記回路において、スタータ部33に供給される交流電圧の周波数の変更は、DC/AC変換部32におけるスイッチング素子Q1及びQ4の組と、スイッチング素子Q2及びQ3の組のオン/オフ切替の周期を調整することで達成できる。上述したように、各スイッチング素子(Q1、Q2、Q3、及びQ4)のオンオフ制御は、ドライバ35からの制御信号に基づいて行われる。このドライバ35は、給電制御部5から出力される信号を受け取り、この信号に基づいて制御信号を各スイッチング素子(Q1、Q2、Q3、及びQ4)に出力する。
【0056】
また、スタータ部33に供給される交流電圧の波高値の変更は、降圧チョッパ部31におけるスイッチング素子Qxの動作デューティを調整することで達成できる。すなわち、降圧チョッパ部31のスイッチング素子Qxは、給電制御部5が出力するゲート信号Gxのデューティに応じたスイッチング周波数でオン/オフし、これによって放電ランプ10に供給される電力が変化する。例えば放電ランプ10への供給電力を上昇させたい場合、給電制御部5は、所望の電力値となるようにゲート信号Gxのデューティを上げる制御を行う。
【0057】
〈給電制御部5〉
本実施形態では、給電制御部5は、セグメント信号生成部51、周波数制御部53、電力制御部55、及び波高値制御部57を備えている。
【0058】
セグメント信号生成部51は、外部から入力される映像同期信号Scに基づいてセグメント信号Sgを生成する。より詳細には、セグメント信号生成部51は、映像同期信号Scの周期を測定すると共に、この周期(「特定期間」に対応する。)を所定の比率で複数に時間分割した情報を含むセグメント信号Sgを生成する。本実施形態では、セグメント信号生成部51が映像同期信号Scの周期を均等な複数の期間に分割することでセグメント信号Sgを生成する場合について説明する。
【0059】
図4は、映像同期信号Scとセグメント信号Sgを対比したタイムチャートである。ここでは、セグメント信号生成部51が、映像同期信号Scの周期Taを、6つの期間に分割する場合を例に挙げて説明する。セグメント信号生成部51は、時刻t0において映像同期信号Scの立ち下がりを検知すると、そのタイミングでセグメント信号Sgの出力を変化させる(時間tg)。その後、時間T0が経過すると、セグメント信号生成部51は、再びセグメント信号Sgの出力を変化させる。以後、時間T1、時間T2、時間T3、時間T4が経過する毎にセグメント信号生成部51はセグメント信号Sgの出力を変化させる。その後、時間T5が経過すると、再びセグメント信号生成部51は、映像同期信号Scの立ち下がりを検知する。以後、この動作が繰り返される。
【0060】
かかる動作により、セグメント信号生成部51は、映像同期信号Scの1周期内に6回の出力変化を示すセグメント信号Sgを生成する。このセグメント信号Sgは、連続する2つの出力変化のタイミングの間隔によって、セグメント期間を生成する。すなわち、本実施形態では、セグメント信号生成部51が生成したセグメント信号Sgによって、映像同期信号Scの1周期Taが、6つのセグメント期間S0〜S5に分割される。
【0061】
映像同期信号Scの周期Taは、通常フレームレートに依存する。このため、この周期Taの長さは給電制御部5側で把握することができる。そこで、セグメント信号生成部51は、この周期Taの長さに基づいてセグメント信号Sgの出力を変化させるタイミングを認識することができる。本実施形態の場合は、各セグメント期間の長さ(T0〜T5)を全て同じ長さとしているため、周期Taの長さを6分割して得られる時間が経過するごとに、セグメント信号生成部51がセグメント信号Sgの出力を変化させるものとすればよい。
【0062】
上述したように、映像同期信号Scは、映像制御部65において映像情報入力部71から入力された映像信号Saに基づいて、液晶パネル63の駆動周波数に同期するように生成される。このため、通常、映像同期信号Scは一定の周期を示す信号となる。しかし、映像信号Saの長さにバラツキが生じている場合、映像同期信号Scの長さもこれに起因してバラツキが生じる場合がある。
【0063】
図5は、映像同期信号Scの長さにバラツキが生じている場合における、映像同期信号Scとセグメント信号Sgを対比したタイムチャートである。
図5において、フレーム100及びフレーム103が適正な時間で構成され、フレーム101が適正な状態よりも短い時間で構成され、フレーム102が適正な状態よりも長い時間で構成されている場合を示している。
【0064】
セグメント信号生成部51は、映像同期信号Scの変化のタイミングを検知するまでフレームが切り替わるタイミングを認識することができない。ただし、上述したように、映像制御部65から出力される映像同期信号Scは、通常は所定の周期を示す信号である。このため、セグメント信号生成部51は、この所定の周期(適正なフレーム期間)に基づいて、予め定められた比率で複数のセグメント期間に分割するよう、セグメント信号Sgを生成する。ここでは、
図4に示した映像同期信号Scの周期Taが適正なフレーム期間であるものとして説明する。
【0065】
本実施形態では、6つのセグメント期間(S0〜S5)を均一の時間で構成するため、セグメント信号生成部51は、映像同期信号Scを検知した直後にセグメント信号Sgの出力を変化させた後、周期Taを6分割した時間(Ts)が経過する毎に同信号の出力を変化させる。この構成により、映像同期信号Scが適正な周期を有している限り、
図4に示されるように、各フレーム期間Taが同一の時間Tsを有するセグメント期間(S0〜S5)に分割される。
【0066】
ところが、
図5に示すフレーム101のように、映像同期信号Scの長さが適正な状態よりも短い場合には、フレーム101の最後のセグメント期間の開始を示すべくセグメント信号Scの出力変化を時刻t14で行うと、その時刻t14から時間Tsが経過する前に次のフレーム102の開始を示す映像同期信号Scの出力変化が検知されてしまう(時刻t2)。従って、仮に時刻t14から時間Tsが経過したタイミングでセグメント信号生成部51がセグメント信号Sgの出力を変化させてしまうと、セグメント信号Sgと映像同期信号Scの同期が取れなくなってしまう。
【0067】
また、
図5に示すフレーム102のように、映像同期信号Scの長さが適正な状態よりも長い場合には、フレーム102の最後のセグメント期間の開始を示すべくセグメント信号Scの出力変化を時刻t24で行うと、その時刻t14から周期Taを6分割した時間が経過しても次のフレーム103の開始を示す映像同期信号Scの出力変化が検知されない。従って、仮に時刻t24から時間Tsが経過したタイミングでセグメント信号生成部51がセグメント信号Sgの出力を変化させてしまうと、セグメント信号Sgと映像同期信号Scの同期が取れなくなってしまう。
【0068】
このような事態を避けるために、セグメント信号生成部51は、フレーム期間(100、102,102,103,…)を複数のセグメント期間に分割するためのセグメント信号Sgを生成するに際し、フレーム期間の最終に位置するセグメント期間(「最終セグメント期間」に対応する。)S5の開始タイミングを示すための出力変化を行った後は、映像同期信号Scの出力変化を検知するまでセグメント信号Sgの出力変化を行わない。
【0069】
つまり、フレーム101であれば、セグメント信号生成部51は、時刻t14から時間Tsが経過する前であっても、次のフレーム102の開始を示す映像同期信号Scの出力変化を検知するとセグメント信号Sgのレベルを変化させる。同様に、フレーム102であれば、セグメント信号生成部51は、時刻t24から時間Tsが経過した時点では映像同期信号Scのレベルを変化させず、その後に次のフレーム103の開始を示す映像同期信号Scの出力変化を検知した時点でセグメント信号Sgのレベルを変化させる。
【0070】
このように構成することで、映像同期信号Scによって規定されるフレーム期間にバラツキが生じている場合であっても、セグメント信号生成部51は、映像同期信号Scに同期したセグメント信号Sgを生成することができる。ただし、この構成によれば、フレーム期間のバラツキに伴って、各フレーム期間を分割して生成される複数のセグメント期間のうち、フレームが切り替わる直前に位置するセグメント期間(最終セグメント期間)の長さにバラツキが生じる。
図5の例でいえば、セグメント期間S5が最終セグメント期間に対応する。フレーム100及びフレーム103に属する最終セグメント期間S5の長さT5は適正なフレーム期間Taの下で形成されたものであるため、予め定められた時間に等しい。これに対し、フレーム101に属する最終セグメント期間S5の長さは適正な長さよりも短くなり、フレーム102に属する最終セグメント期間S5の長さは適正な長さより長くなる。
【0071】
セグメント信号生成部51が生成したセグメント信号Sgは、周波数制御部53及び波高値制御部57に出力される。周波数制御部53は、セグメント信号Sgに基づいて予め定められた周波数で極性反転をする極性信号Spを生成し、ドライバ35に出力する。例えば、セグメント信号Sgの周期に応じて極性反転する交流電流を放電ランプ10に供給する場合、周波数制御部53は、セグメント信号Sgの出力が変動するタイミングで極性が反転する極性信号Spを生成してドライバ35に出力する。ドライバ35は、この極性信号Spに基づいて各スイッチング素子(Q1、Q2、Q3、及びQ4)に対してゲート信号(G1,G2,G3,G4)を出力する。これにより、極性信号Spに応じた周波数で極性が反転する矩形波の交流電流が放電ランプ10に供給される。極性信号Spが「第二制御信号」に対応する。
【0072】
図6A及び
図6Bは、
図5に示されるセグメント信号Sgを受信した周波数制御部53が生成する極性信号Spの一例を示すタイムチャートである。
図6Aの例では、周波数制御部53は、セグメント信号Sgの出力が変化する各タイミングで出力を変化させた極性信号Spを生成している。また、
図6Bの例では、周波数制御部53は、セグメント信号Sgの出力が変化するタイミングのうち、所定のタイミングで出力を変化させた極性信号Spを生成している。
図6A及び
図6Bに示すように、極性信号Spの出力を変化させるタイミングを異ならせることで、放電ランプ10に投入する交流電流の周波数を変更することができる。なお、
図6Bでは、各極性の周期を均一にしているが、極性毎に周期を異ならせることも可能である。
【0073】
より具体的には、周波数制御部53が、セグメント期間(
図5の例であれば、セグメント期間S0〜S5)毎に、放電ランプ10に投入する交流電流の極性に関する情報(正極性であるか負極性であるか)を記憶しており、この情報に基づいて、極性信号Spの出力を変更させる構成とすることができる。
【0074】
電力制御部55は、分圧抵抗(R1,R2)によって検出した電圧信号V
L、及び抵抗Rxによって検出した電流信号I
Lが入力され、現時点における電力を算定する。また、外部から入力された設定電力信号Seが示す電力値(目標電力値)と、算定された現時点の電力値を比較し、比較結果に応じた波高値設定信号Swを波高値制御部57に出力する。波高値制御部57は、電力制御部55から入力された波高値設定信号Swに基づいて設定されるデューティ比を示し、セグメント信号生成部51から入力されたセグメント信号Sgに同期したゲート信号Gxを生成する。このゲート信号Gxが「第一制御信号」に対応する。
【0075】
電圧信号V
Lは、降圧チョッパ部31で降圧された直流電圧が分圧抵抗(R1,R2)で分圧されて生成された電圧に対応するものであり、放電ランプ10に印加される電圧に応じた電圧である。また、電流信号I
Lについても、放電ランプ10に投入される電流に対応する電流である。よって、給電制御部5は、放電ランプ10の消費電力を変更する指示が外部から与えられない限り、すなわち、設定電力信号Seの値が変化しない限り、放電ランプ10の点灯電力が一定になるようにフィードバック制御する機能を有している。
【0076】
本実施形態の放電ランプ点灯装置1は、所定のタイミングで放電ランプ10に投入する交流電流の絶対値(波高値)を異ならせる制御を行う。より詳細には、所定のタイミングで放電ランプ10に投入される電流量の絶対値を上昇させて、アークの輝点を安定化させることを目的としている。ここでは、各フレーム期間(T100,T101,T102,T103,…)を分割して生成される各セグメント期間(S0〜S5)のうち、最初のセグメント期間S0において投入電流量を増加させる制御を行う場合について説明する。
【0077】
なお、このような制御を行うに際しては、例えば以下の方法で行うことができる。波高値制御部57は、予め各セグメント期間(S0〜S5)における投入電流量に関する情報(例えば電流比の情報など)を記憶しておく。そして、波高値制御部57は、セグメント信号生成部51から供給されるセグメント信号Sgに基づいて、各セグメント期間(S0〜S5)の到来を検知し、セグメント期間毎に記憶された電流量になるように、デューティ比を調整したゲート信号Gxを生成する。これにより、例えば、
図7に示すような交流電流Ipが放電ランプ10に供給される。
図7は、
図6のタイムチャートに放電ランプ10に投入されるランプ電流Ipの波形を付加した図面である。
【0078】
ところで、上述したように、映像信号Saの長さに起因してフレーム期間の長さにバラツキが生じる場合がある。
図7の例では、最初のセグメント期間S0の期間において投入電流量が高くなるように、波高値制御部57がゲート信号Gxを生成していた場合を想定して説明した。ここで、仮に、
図8に示すように、波高値制御部57が最終セグメント期間S5において投入電流量が高くなるようにゲート信号Gxを生成していた場合、フレーム間で明滅が生じる可能性がある。この点につき説明する。
【0079】
図8では、ランプ電流Ipの波形と共に、各フレーム(100,101,102,103)における平均電流IpAの変化を示している。なお、ここでいう「平均電流」とは投入した電流量の絶対値の時間平均値を指している。
【0080】
フレーム101では、フレーム100と比べて最終セグメント期間S5の時間が短くなっている。
図8の例では、この最終セグメント期間S5のタイミングで投入電流量を高くしている。このため、フレーム101における投入電流の平均値IpAは、フレーム100における投入電流の平均値IpAよりもIa01だけ低下している。逆に、フレーム102では、フレーム103と比べて最終セグメントS5の時間が長くなっているため、フレーム102における投入電流の平均値IpAは、フレーム103における投入電流の平均値IpAよりもIa23だけ上昇している。
【0081】
ここで、連続するフレーム101とフレーム102を比較すると、フレーム101における投入電流の平均値IpAとフレーム102における投入電流の平均値IpAは、極めて大きな差が生じている。このような状況が発生すると、フレーム101からフレーム102に切り替わったときに、スクリーン72で投射される映像の明度が視認される範囲内で変化してしまう。
【0082】
このような事態が生じるのは、映像信号Saの長さに起因して最終セグメント期間S5の長さにバラツキが生じる場合があるためである。最終セグメント期間S5は、各フレーム期間の長さを調整する機能を有している。よって、
図7に示すように、最終セグメント期間S5以外のセグメント期間に投入電流量を上昇させることで、投入される電流量の平均値に関してフレーム間で差をできるだけ小さくし、明滅の視認を抑制することができる。
図7の例では、セグメント期間S0において投入電流量を上昇させているが、セグメント期間S0〜S4のいずれか一の期間内で投入電流量を上昇させれば、フレーム間における明滅を抑制する効果が得られる。
【0083】
なお、本実施形態では、各セグメント期間の長さを均一にした上で、一のセグメント期間においてのみ投入電流量を変化させる場合を説明した。しかし、複数のセグメント期間において投入電流量を変化させる態様も可能である。また、フレーム期間(上記「特定期間」に対応する。)を、異なる長さのセグメント期間を含む複数のセグメント期間に分割することも可能である。
【0084】
かかる場合を鑑み、波高値制御部57は、複数のセグメント期間(S0〜S5)のうち、セグメント期間の長さと当該セグメント期間に設定される電流値(波高値)の積である積分値が、フレーム期間内における当該積分値の平均値(以下、適宜「積分平均値」と呼ぶ。)から最も離れた値を示すセグメント期間(以下、適宜「特定セグメント期間」と呼ぶ。)を、最終セグメント期間以外のセグメント期間に配置する。この内容につき、まず
図7の例を再び参照して説明する。
【0085】
図9Aは、
図7のタイムチャートから、映像同期信号Sc及びランプ電流Ipの波形を抜き出した図面である。セグメント期間Siにおける前記積分値は、セグメント期間Siの長さTiと、当該セグメント期間に投入されたランプ電流Iiの積で規定される。また、積分値の平均値は、全てのセグメント期間に関してΣ(Ti・Ii)を計算し、この計算結果をフレーム期間すなわちΣTiで除した値で規定される。
図9Bは、一例として、映像同期信号Scを120Hzとし、すなわちフレーム期間を0.0083秒とし、セグメント期間S1〜S5におけるランプ電流量を1(A)とし、セグメント期間S0におけるランプ電流量を3(A)とした場合の、各セグメント期間における上記積分値と、当該積分値の積分平均値からの乖離率を計算した表である。
【0086】
図9A及び
図9Bの態様によれば、積分値が積分平均値から最も乖離している特定セグメント期間がセグメント期間S0に該当し、この期間は最終セグメント期間S5には該当していない。このため、波高値制御部57が、
図9Aに示すようなランプ電流Ipになるようにデューティ比を制御したゲート信号Gxを生成することで、フレーム間における明滅を抑制しながら、アークの起点が移動することに伴うフリッカの発生を抑えることができる。
【0087】
なお、上述した例では、放電ランプ10のアーク起点の移動を抑制することを意図して、一時的にランプ電流を上昇させる場合について説明した。しかし、本発明の点灯装置1は、かかる場合に限られず、一般的にランプ電流Ipを所定のタイミングで変化させる場合においても、フレーム間での明滅を抑制する機能を示す。以下、このような例について説明する。
【0088】
図10Aは、
図9Aとは別の状態における、映像同期信号Sc及びランプ電流Ipの波形を抜き出した図面である。
図10Aにおけるランプ電流Ipは、
図9Aにおけるランプ電流Ipと比較して放電ランプ10に対して投入される交流電流が同一の極性を示す期間が長くなっている。このようなランプ電流Ipを放電ランプ10に投入することで、調光やランプ電圧が上昇した場合におけるフリッカ抑制の効果が得られる。
【0089】
図10Aに示すランプ電流Ipは、セグメント期間S0及びセグメント期間S3において電流絶対値が高く、他のセグメント期間(S1,S3,S4,S5)において電流絶対値が低くなっている。
図10Bは、
図9Bと同様にフレーム期間を0.0083秒とした場合において、各セグメント期間(S0〜S5)における上記積分値、及び当該積分値の積分平均値からの乖離率を計算した表である。
【0090】
図10A及び
図10Bの態様によれば、積分値が積分平均値から最も乖離している特定セグメント期間はセグメント期間S0及びS3に該当し、この期間は最終セグメント期間S5には該当していない。このため、波高値制御部57において、
図10Aに示すようなランプ電流Ipになるようにデューティ比を制御したゲート信号Gxを生成することで、フレーム間における明滅を抑制しながら、アークの起点が移動することに伴うフリッカの発生を抑えることができる。
【0091】
図11Aは、
図9A及び
図10Aとは別の状態における、映像同期信号Sc及びランプ電流Ipの波形を抜き出した図面である。
図11Aのランプ電流波形は、画像形成装置60を3D駆動する場合に対応している。画像形成装置60は、3D駆動時においては、右目用映像の生成、シャッター駆動、左目用映像の生成、シャッター駆動という処理を繰り返す。この画像形成装置60は、映像を生成するタイミングで放電ランプ10に投入する電流絶対値を上昇させ、シャッターを駆動するタイミング放電ランプ10に投入する電流絶対値を低下させる。放電ランプ10に投入される交流電流をこのように制御することで、3D映像特有の現象であるクロストークの発現を抑制することができる。
【0092】
図11Aのランプ電流Ipでは、セグメント期間S0〜S2及びS5において電流絶対値が高く、セグメント期間S3〜S4において、電流絶対値が低くなっている。
図11Bは、
図9Bと同様にフレーム期間を0.0083秒とした場合において、各セグメント期間(S0〜S5)における上記積分値及び各積分値の積分平均値からの乖離率を計算した表である。
【0093】
図11A及び
図11Bの態様によれば、積分値が積分平均値から最も乖離している特定セグメント期間はセグメント期間S3及びS4に該当し、この期間は最終セグメント期間S5には該当していない。このため、波高値制御部57において、
図11Aに示すようなランプ電流Ipになるようにデューティ比を制御したゲート信号Gxを生成することで、フレーム間における明滅を抑制しながら、アークの起点が移動することに伴うフリッカの発生を抑えることができる。
【0094】
また、
図11Aに示すようなランプ電流Ipを放電ランプ10に投入した場合、右目期間と左目期間が、それぞれフレームを跨いでいる。しかし、本実施形態のように波高値制御部57がランプ電流Ipの波高値を制御することで、フレーム間における平均投入電流量の乖離を小さくすることができるため、右目期間と左目期間でのチラツキを抑制することができる。
【0095】
更に、上述した実施形態では、各セグメント期間S0〜S5の長さが均一な場合について説明したが、セグメント期間S0〜S5のうち、少なくとも一つのセグメント期間の長さが異なっていても構わない。この場合は、上述したように、セグメント信号生成部51がフレーム期間を予め定められた比率で分割して各セグメント期間S0〜S5を示すセグメント信号Scを生成する。
【0096】
図12Aは、
図9A、
図10A、及び
図11Aとは更に別の状態における、映像同期信号Sc及びランプ電流Ipの波形を抜き出した図面である。
図12Aに示す波形は、連続するフレーム120とフレーム121において、同一のセグメント期間内に放電ランプ10に投入する電流絶対値は等しいものの、極性については一部異なる態様を示している。フレーム121は、
図10Aに示されるランプ電流Ipと同様に、調光やランプ電圧が上昇した場合におけるフリッカ抑制の効果を意図したものである。
【0097】
図12Bは、
図9Bと同様にフレーム期間を0.0083秒とした場合において、各セグメント期間(S0〜S5)における上記積分値及び当該積分値の積分平均値からの乖離率を計算した表である。
【0098】
図12A及び
図12Bの態様によれば、積分値が積分平均値から最も乖離している特定セグメント期間はセグメント期間S0及びS1に該当し、この期間は最終セグメント期間S5には該当していない。このため、波高値制御部57において、
図12Aに示すようなランプ電流Ipになるようにデューティ比を制御したゲート信号Gxを生成することで、フレーム間における明滅を抑制しながら、アークの起点が移動することに伴うフリッカの発生を抑えることができる。
【0099】
なお、
図12Aに示す電流波形において、フレーム120のように交流電流の周波数の高いフレームの発現頻度は、フレーム121のように交流電流の周波数の低いフレームの発現頻度よりも極めて高いものとすることができる。フレーム120とフレーム121の割合を調整することで、電極(20a,20b)の温度を適切に制御でき、放電ランプ10の長寿命化が図られる。
【0100】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0101】
〈1〉 上述した実施形態では、セグメント信号生成部51は、適正なフレーム期間(「特定期間」)の長さ及び各セグメント期間の長さの比率を記憶しており、これらの情報に基づいて、セグメント信号Scの出力を変化させるタイミングを決定するものとして説明した。しかし、セグメント信号生成部51は、直前のフレーム期間の長さ又は直前の数フレーム期間の長さの平均値を検知し、当該検知されたフレーム期間の長さに基づいてセグメント信号Scの出力を変化させるタイミングを決定するものとしても構わない。
【0102】
なお、上記において、各セグメント期間の長さが均一である場合には、単に映像同期信号Scを逓倍処理することでセグメント信号Sgを生成するものとして構わない。
【0103】
〈2〉 上述した実施形態では、フレーム期間を6つのセグメント期間に分割する場合を例に挙げて説明した。しかし、セグメント期間の数はこの例に限られるものではない。
【0104】
また、
図12Aに示すように、セグメント期間毎に極性を反転させたランプ電流Ipを投入する期間(高周波期間)と、複数のセグメント期間にわたって同一極性を示すランプ電流Ipを投入する期間(低周波期間)とを組み合わせて、放電ランプ10の点灯制御を行う構成としても構わない。つまり、セグメント期間は、必ずしも放電ランプ10に投入されるランプ電流Ipの極性反転のタイミングとは限らない。
【0105】
ここで、例えば低周波期間に関してのみ、特定セグメント期間が最終セグメント期間に配置されていた場合であっても、この低周波期間が出現する周期でスクリーン72に投射される映像の明度が変化する結果、明滅が視認されるおそれが生じる。よって、放電ランプ10に投入されるランプ電流に関して高周波期間と低周波期間の両者を有する場合においては、両期間に関して、上記特定セグメント期間を最終セグメント期間以外に配置するように波高値制御部57が各セグメント期間における波高値を制御するのが好ましい。
【0106】
〈3〉 上記実施形態では、光変調素子として液晶パネル63を用いた画像形成装置について説明したが、DMD(デジタル・ミラー・デバイス)を利用する方式に本発明を適用しても構わない。