(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930251
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】電池パックの送風構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6563 20140101AFI20160526BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20160526BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20160526BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20160526BHJP
B60K 1/04 20060101ALI20160526BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
H01M10/6563
H01M10/613
H01M10/625
H01M2/10 S
H01M2/10 K
B60K1/04 Z
B60K11/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-506039(P2015-506039)
(86)(22)【出願日】2014年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2014066691
(87)【国際公開番号】WO2015045526
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-203968(P2013-203968)
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 慶
【審査官】
吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−260458(JP,A)
【文献】
特表2009−510686(JP,A)
【文献】
特開2002−064291(JP,A)
【文献】
特開2013−086605(JP,A)
【文献】
特開2003−045392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K1/00−6/12
7/00−8/00
11/00−15/10
H01M2/10
10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源に電力を供給する電池パックと、前記電池パックの吸気口または排気口にダクトを介して接続されて、前記電池パック内の空気を吸排するファンと、を備え、
前記ダクトは、一端が前記ファンの前記車両の車体上下方向の下部に接続されると共に、前記ファンの下部から前記電池パック側の前記ファンの外側形状に沿って前記車体上下方向の上方に延伸し、当該延伸した先の端部となる他端が前記吸気口または前記排気口に接続され、
前記電池パックは、前記ファンの位置する側の前記ファンに対向する部位に前記ファンに向かうにつれ前記車体上下方向の下方に傾斜する傾斜部が形成されることを特徴とする、電池パックの送風構造。
【請求項2】
前記電池パックの吸気口または排気口の上縁と前記ファンの上面は、略同一平面上に位置することを特徴とする、請求項1に記載の電池パックの送風構造。
【請求項3】
前記ダクトは、上面に凹み部が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の電池パックの送風構造。
【請求項5】
前記ファンは、前記車両の車体に脆弱部を有する取付部材を介して取り付けられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の電池パックの送風構造。
【請求項6】
前記電池パック、前記ダクト及び前記ファンは、前記車両の荷室の下方に配設されることを特徴とする、請求項1から3及び5のいずれか1項に記載の電池パックの送風構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの送風構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動源として電動機を有する車両では、電動機に電力を供給する電池パックが備えられている。そして、このような電池パックでは、電池パック内の電池モジュールは、充放電時に発熱することが知られている。
そこで、電池パックの周辺に排出ファンを備え、排出ファンによって電池パック内に冷却風を導入して電池モジュールの温度上昇を抑制している。
【0003】
しかしながら、排出ファンを電池パックの側方に備える車両では、車両衝突時に排出ファンに衝突荷重が加わり、排出ファンが移動することで排出ファンが電池パックと接触し、電池パック内の電池モジュールを損傷させる虞がある。
このようなことから、特許文献1では、排出ファン(冷却ファン)を載置するファン載置部にガイド部を設け、排出ファンに衝突荷重が加わっても、ガイド部が変形することで排出ファンと電池パックとの接触を回避する構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−86605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の車両用電池パックユニットでは、ファン載置部にガイド部を設けて、冷却ファンへ衝突荷重が加わっても、ガイド部が変形することで、排出ファンと電池パックとの接触を回避している。
しかしながら、このようなガイド部を設けることは、部品点数の増加及び構造の複雑化に繋がり、延いてはコストの増加に繋がり好ましいことではない。
【0006】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡易な構造で排出ファンと電池パックとの接触を回避することのできる電池パックの送風構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電池パックの送風構造は、車両の駆動源に電力を供給する電池パックと、前記電池パックの吸気口または排気口にダクトを介して接続されて、前記電池パック内の空気を吸排するファンとを備え、前記ダクトは、一端が前記ファンの前記車両の車体上下方向の下部に接続されると共に、前記ファンの下部から前記電池パック側の前記ファンの外側形状に沿って前記車体上下方向の上方に延伸し、当該延伸した先の端部となる他端が前記吸気口または前記排気口に接続されることを特徴とする。
【0008】
また、好ましくは、前記電池パックの吸気口または排気口の上縁と前記ファンの上面は、略同一平面上に位置するのがよい。
また、好ましくは、上面に凹み部が設けられるのがよい。
また、好ましくは、前記電池パックは、前記ファンの位置する側の前記ファンに対向する部位に前記ファンに向かうにつれ前記車体上下方向の下方に傾斜する傾斜部が形成されるのがよい。
【0009】
また、好ましくは、前記ファンは、前記車両の車体に脆弱部を有する取付部材を介して取り付けられるのがよい。
また、好ましくは、前記電池パック、前記ダクト及び前記ファンは、前記車両の荷室の下方に配設されるのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池パックの吸気口または排気口とファンとを接続するダクトを、一端がファンの下部に接続されると共に、ファンの車体上下方向の下部から電池パック側のファンの外側形状に沿って車体上下方向の上方に延伸し、当該延伸した先の端部が電池パックの吸気口または排気口に接続するように形成している。したがって、例えば、車両の衝突等でファンに衝突荷重が加わるような場合には、ファンが上方に移動するようにダクトが変形するので、新たな構成部品を用いずに、簡易な構成でファンと電池パックとの接触を防止することができる。
【0011】
また、電池パックの吸気口または排気口の上縁とファンの上面とを略同一平面上に位置させることで、電池パックの吸気口または排気口とファンとの間にダクトが介在することになり、例えば、車両の衝突時にダクトが電池パックの吸気口または排気口とファンとの間で変形することにより、より多くの衝突エネルギを吸収することができる。
また、電池パックの吸気口または排気口の上縁とファンの上面を略同一平面上に位置させることで、平らな面を形成することができ、上方へ突出する部位を無くすことができるので、例えば、電池パック、ダクト及びファンの車両の荷室の下方への搭載を容易にすることができる。
【0012】
また、ダクトの上面に凹み部を設けることで、車両の衝突等でファンに衝突荷重が加わるような場合には、ダクトが凹み部より上方に変形しやすくなるので、ファンと電池パックとの接触を防止することができる。
また、ファンの位置する側の側面の電池パックのファンと対向する部位にファン側に向かうにつれ車体上下方向の下方に傾斜する傾斜部を形成することで、例えば、車両の衝突等でファンが電池パック側に移動しても、傾斜部にてファンを上方に移動させることができるので、例え、ファンと電池パックとが接触しても、ファンによる電池パック内の機器の損傷を防止することができる。
【0013】
また、車両の車体に脆弱部を有する取付部材を介して、ファンを取り付けているので、例えば、車両の衝突等でファンに衝突荷重が加わると、取付部材の脆弱部が破断することになり、取付部材によるファンの上方への移動の阻害を防止することができる。
また、電池パック、ダクト及びファンを車両の荷室の下部に配設することで、車両の荷室容積をより多く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電池パックの送風構造が適用された車両の後方部分の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る電池パックの送風構造が適用された車両の後方部分の概略構成を示す上面視図である。
【
図4】冷却ファンモジュールの概略構成を示す斜視図である。
【
図6】冷却ファンモジュール固定用ブラケットの概略形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る電池パックの送風構造が適用された車両の後方部分の概略構成を示す斜視図である。
図2は、本発明に係る電池パックの送風構造が適用された車両の後方部分の概略構成を示す上面視図である。
図3は、
図2のA−A線における断面図である。なお、
図2及び
図3は、冷却ファンモジュールを車体に固定するためのブラケットの記載を省略している。
図4は、冷却ファンモジュールの概略構成を示す斜視図である。
図5は、冷却ファンモジュールの側面視である。そして、
図6は、冷却ファンモジュール固定用ブラケットの概略形状を示す斜視図である。なお、それぞれの図中の矢印「前」は、車両の車体前方向を、矢印「横」は、車両の車体幅方向を、矢印「上」は、車両の車体上方向をそれぞれ示す。
【0016】
図1から
図3に示すように、本発明に係る電池パックの送風構造が適用された車両1は、駆動源としての電動モータを有する電動車両である。そして、車両1は、車両1を構成する車体2、吸気ダクト10、電池パック20、冷却ファンモジュール30、ブラケット40(取付部材)、ブラケット41(取付部材)及び排気ダクト42で構成されている。
【0017】
車両1の車体2は、車両1の後方部分に荷室3を有するように形成されている。荷室3の下部を形成するフロアパネル4には、凹んで収納部5が形成されている。そして、荷室3は、車体2の前方部分と収納部5とを荷室ボード6にて間仕切りされている。
吸気ダクト10は、車両1の車室内より電池パック20内に空気を導入可能なように管状に形成されている。
【0018】
電池パック20は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されるものである。そして、電池パック20は、電池セルを監視するセルモニタリングユニットを備え複数の電池セルで構成される複数の電池モジュールと、セルモニタリングユニットの出力に基づき電池モジュールの温度及び電池残量等を監視するバッテリモニタリングユニットと、高電圧を導電する導電部品とが、薄板の金属製の電池パックカバー21と、薄板の金属製の電池パックケース22とに内包されて一体に構成されている。
【0019】
電池パックカバー21は、車載状態において、冷却ファンモジュール30と対向する側面(本発明のファンの位置する側の側面、及びファンの位置する側のファンに対向する部位に相当)23を冷却ファンモジュール30側に向かうにつれ下方に傾斜させるようにして形成されている(本発明の傾斜部に相当)。また、電池パックカバー21の側面23には、冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33を接続する図示しない排気口が形成されている。また、電池パックカバー21の側面23の反対側の側面24には、吸気ダクト10を接続する図示しない吸気口が形成されている。
【0020】
そして、このような電池パック20は、車載状態において、車両1の車体幅方向となる側のそれぞれの側部に、車体幅方向に突出する二対の取付フレーム25を備えている。
図4及び
図5に示すように、冷却ファンモジュール30は、排出ファンである冷却ファン(本発明のファンに相当)31、排気側ダクト32及び吸気側ダクト(本発明のダクトに相当)33で構成されている。
【0021】
冷却ファン31は、図示しないモータによりファンを回転させ、電池パック20内から電池パック20内で熱せられた空気を排出するものである。なお、モータは、強固な金属部品にて構成されている。
排気側ダクト32は、冷却ファン31より排出される空気を排気ダクト42に導く略管状のものである。そして、排気側ダクト32は、排出口34を有している。また、排気側ダクト32は、冷却ファンモジュール30の車載状態において、車体下方視で、冷却ファン31を挿入可能な図示しない開口部を有して排気側ダクト32を上下に貫通する貫通部を有している。また、排気側ダクト32は、当該貫通部より時計回りに通路面積が徐々に大きくなる略渦巻き状に形成され、排出口34に接続する図示しない空気通路を有している。また、排気側ダクト32には、冷却ファンモジュール30をブラケット40及びブラケット41を介して車体2のフロアパネル4に取り付けるための取付部35が形成されている。なお、排気側ダクト32は、樹脂材で形成されている。
【0022】
吸気側ダクト33は、冷却ファン31により電池パック20より排出される空気を冷却ファン31に導く略管状のものであって、樹脂材で形成されている。そして、吸気側ダクト33は、排気側ダクト32と接続する図示しない開口部を有している。また、吸気側ダクト33は、冷却ファンモジュール30の車載状態における車体幅方向視で、冷却ファン31の車体上下方向の下方より排気側ダクト32の外側形状(本発明の電池パック側のファンの外側形状に相当)に沿って上方に延伸するように形成されている。そして、吸気側ダクト33は、当該上方に延伸するように形成された部位から電池パック20の電池パックカバー21の排気口に向かって屈曲する屈曲部39を有している。また、吸気側ダクト33は、屈曲部39から電池パックカバー21の排気口に向かって延伸し、上面が平らな延伸部38を有するように形成されている。そして、延伸部38には、電池パックカバー21の排気口と接続する吸気口36が形成されている。なお、延伸部38の上面は、冷却ファンモジュール30の組み立て状態で、冷却ファン31の上面と略同一平面上に位置するように形成されている。また、冷却ファンモジュール30の車載状態において、屈曲部39と吸気口36との間の吸気側ダクト33の延伸部38の上面(本発明の上面に相当)には、車体幅方向視で車体2の前方側が傾斜し、後方側が直立した断面略V字形状の凹み部37が形成されている。
【0023】
そして、吸気側ダクト33の開口部と排気側ダクト32の貫通部とが連通するように、吸気側ダクト33上に排気側ダクト32が配設されている。そして、排気側ダクト32の開口部に冷却ファン31が挿入されて冷却ファンモジュール30が形成されている。即ち、吸気側ダクト33は、冷却ファン31を介して排気側ダクト32と連通している。
図6に示すように、ブラケット40は、薄板の金属で、断面略Z字状に形成されている。ブラケット40のそれぞれの端部には、フロア取付部40aとファン固定部40bとが形成されている。フロア取付部40aには、ブラケット40を車体2のフロアパネル4に固定するための複数(本実施形態では2個)の取付穴40cが形成されている。そして、ファン固定部40bには、冷却ファンモジュール30を固定するための取付穴40dが形成されている。
【0024】
図6に示すように、ブラケット41は、薄板の金属で、ブラケット41の側面視で、略Z字状に形成されている。ブラケット41のそれぞれの端部には、フロア取付部41aとファン固定部41bとが形成されている。フロア取付部41aには、ブラケット41を車体2のフロアパネル4の収納部5に固定するための複数(本実施形態では2個)の取付穴41cが形成されている。そして、ファン固定部41bには、冷却ファンモジュール30を固定するための複数(本実施形態では2個)の取付穴41dが形成されている。
また、ブラケット41の縦壁41eには、切欠状にして脆弱部41fが設けられている。
【0025】
そして、ブラケット40のファン固定部40bとブラケット41のファン固定部41bは、冷却ファンモジュール30の車載状態において、冷却ファン31のモータと電池パックカバー21の排気口とが同一の高さとなるように高さが設定されている。
排気ダクト42は、管状に形成され、冷却ファンモジュール30より排出される空気を車体2の外に導くものである。
【0026】
このように構成されたそれぞれの部品は、
図1から
図3に示すように、車載時には、電池パック20については、車体2の収納部5内に位置するように、二対の取付フレーム25を介して車体2のフロアパネル4に固定され、冷却ファンモジュール30については、電池パック20の後方で、車体2の収納部5内に位置するように、ブラケット40及びブラケット41を介して車体2の収納部5に固定される。また、冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33の吸気口36は、電池パック20の電池パックカバー21の排気口に、電池パックカバー21の排気口の上縁と冷却ファン31の上面とが略同一平面上に位置するように接続されている。即ち、冷却ファンモジュール30は、冷却ファン31のモータと電池パック20の排気口とが同一の高さとなるように固定される。そして、吸気側ダクト33の吸気口36と電池パックカバー21の排気口とは連通している。また、電池パックカバー21の吸気口と吸気ダクト10とが連通するように接続され、冷却ファンモジュール30の排気側ダクト32と排気ダクト42とが連通するように接続される。なお、これら吸気ダクト10、電池パック20、冷却ファンモジュール30、ブラケット40、ブラケット41及び排気ダクト42は、車載時には、荷室ボード6の下方に配置される。
【0027】
次に、このように構成された車両1において、車両1の後方から車両1に他車両等が衝突してきた時の車両1の状態を説明する。
図7は、衝撃入力時の変形状態を示す模式図である。
図7の矢印「前」は、車両の車体前方向を、矢印「上」は、車両の車体上方向をそれぞれ示す。なお、
図7の上段は、衝突前、中段は、衝突初期、下段は、衝突後期をそれぞれ示している。そして、
図7の黒塗り矢印は、衝突荷重の入力方向を示している。なお、
図7では、ブラケット40とブラケット41の記載を省略している。
【0028】
図7の中段に示すように、車両1の後方から車両1に他車両等が衝突すると、車両1の後方から前方に向け、車体2を介して冷却ファンモジュール30に衝突荷重が加わる。すると、車体2のうち車両1の収納部5及びフロアパネル4が変形すると共に、冷却ファンモジュール30に荷重が加わることで、ブラケット41の脆弱部41fよりブラケット41が破断し、冷却ファンモジュール30が車両1の前方に移動を開始する。このとき、冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33は、冷却ファンモジュール30の車体上下方向の下部より、排気側ダクト32の外側形状に沿って上方に延伸し、冷却ファンモジュール30の組み立て時に冷却ファン31と同一の高さとなる位置から電池パック20側に向かって延伸するよう構成され、吸気側ダクト33の延伸部38に凹み部37が形成されているので、冷却ファン31が上方向に移動するように吸気側ダクト33が変形する。
【0029】
そして、
図7の下段に示すように、衝突荷重の入力が継続すると、衝突荷重の入力に伴い収納部5及びフロアパネル4の変形、及び冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33と排気側ダクト32の変形が進行することになるが、冷却ファン31が電池パック20上に移動することになり、電池パック20と冷却ファン31との接触を回避することができる。
したがって、電池パック20と冷却ファン31との接触を回避するための新たな構成部品を用いずに、簡易な構成で冷却ファン31と電池パック20との接触を防止することができる。
【0030】
また、例え冷却ファン31が、電池パック20の電池パックカバー21と接触しても、電池パックカバー21の冷却ファンモジュール30側の側面23は冷却ファンモジュール30側に向かうにつれ車体上下方向の下方に傾斜するように形成されているので、冷却ファン31が当該傾斜と接触することで、冷却ファン31を電池パック20の上方に向かって移動させることができ、冷却ファン31による電池パック20内の電池モジュール等の損傷を防止することができる。
【0031】
また、冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33の吸気口36を電池パック20の電池パックカバー21の排気口に、電池パックカバー21の排気口の上縁と冷却ファン31の上面とが略同一平面上に位置するように接続している。即ち、電池パック20の排気口と冷却ファンモジュール30の冷却ファン31とを同一の高さに位置させ、冷却ファンモジュール30の車載時に冷却ファン31と同一の高さとなる位置から電池パック20側に向かって延伸する形状に冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33を形成している。これにより、吸気側ダクト33が電池パック20の排気口と冷却ファン31との間に介在し、車両の衝突時に吸気側ダクト33が電池パック20の排気口と冷却ファン31との間で変形することになるので、より多くの衝突エネルギを吸収することができる。
【0032】
また、冷却ファンモジュール30の吸気側ダクト33の吸気口36を電池パック20の電池パックカバー21の排気口に、電池パックカバー21の排気口の上縁と冷却ファン31の上面とが略同一平面上に位置するように接続することで、吸気側ダクト33の延伸部38の上面を平面にすることができる。そして、延伸部38の上面を冷却ファンモジュール30の組み立て状態で、冷却ファン31の上面と略同一平面上に位置するように形成することで、車載時には、吸気ダクト10、電池パック20、冷却ファンモジュール30、ブラケット40、ブラケット41及び排気ダクト42を荷室ボード6の下方に配置することができ、荷室3の荷室容積をより多く確保することができる。
【0033】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、発明の形態は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、凹み部37を断面略V字形状に形成したが、これに限定されるものではなく、凹み部37は、車両1の後方からの冷却ファン31への衝突荷重入力時に当該冷却ファン31を車両1の上方向に移動させるように吸気側ダクト33が変形可能であれば、断面略U字状であっても、その他の形状であってもよい。
また、本実施形態では、ブラケット41の縦壁41eに脆弱部41fを設けているが、これに限定されるものではなく、脆弱部は、車両1の後方からの追突等で冷却ファンモジュール30に衝突荷重が加わったときに、冷却ファンモジュール30が車体2より外れる構造となっていれば、どのような構造であってもよい。
【0034】
また、本実施形態では、本発明を電池パック20内を冷却する冷却ファンモジュール30に適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、本発明を、吸入ファンを有してダクトが電池パックの吸気口に接続され、低温時に電池パックを加熱する暖房装置に適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 車両
2 車体
20 電池パック
21 電池パックカバー
22 電池パックケース
30 冷却ファンモジュール
31 冷却ファン(ファン)
32 排気側ダクト
33 吸気側ダクト(ダクト)
37 凹み部
40 ブラケット
41 ブラケット
41e 縦壁
41f 脆弱部