【発明の効果】
【0006】
このことを達成するために本発明が提案するのは、可動子内に衝突プランジャが可動に支承されており、この衝突プランジャの、磁極コアに面した側のプランジャ端面が、非通電状態において可動子端面に比べて突出していることである。別の手段は、磁極コアが、衝突プランジャがぶつかる領域に隆起部を有しており、これによりプランジャ端面を可動子端面に対して後退させることができる点にある。それにもかかわらず、このことはまず最初にプランジャ端面をコアに(つまり前記隆起部の領域に、当然相応のディメンショニングの考慮下で)衝突させる。前記隆起部は、例えば円錐として形成可能であり、この場合は僅かに可動子に侵入している。
【0007】
本発明では、本発明に基づき一体に、又は複数部分からも形成されている可動子内に、可動に支承された衝突プランジャが配置され、この衝突プランジャは、可動子の引付け運動に際してまず最初に磁極コアの表面に衝突し、これにより既に運動エネルギの一部を吸収している。この場合、衝突プランジャは、プランジャ端面が非通電状態において可動子と磁極コアとの間に形成される空隙内にやや突入しているように、可動子を越えてやや突出している。これにより、前記可動子端面が、可動子の引付け運動又は行程運動時に(スプールに支承されたコイルの通電時に)可動子の運動方向で見て前方の可動子側として定義される。
【0008】
本発明により提案される配置形式では、非通電状態においてプランジャ端面とコアとの間の間隔が、可動子若しくは可動子の可動子端面と磁極コアとの間の間隔により規定された空隙よりも小さい。
【0009】
本発明による提案は、前記空隙の構成がほぼ不変であり続けるということを可能にする。この空隙は、金属の可動子端面若しくはしばしば金属のプランジャ端面と、磁極コア若しくは磁極コア面との間に形成される。当該空隙内にはその他のエレメントは全く設けられていないので、可動子の前記の特別な構成が磁気的な特性に更に影響を及ぼすことはない。
【0010】
本発明の有利な1変化態様では、可動子が、この可動子の運動エネルギを補償するエレメントを支持しており、これにより、磁極コア面に対する可動子の衝突に基づく可動子端面の破損が可能な限り回避される。
【0011】
このことは例えば、可動子のエネルギを消滅させるエレメントが設けられており、このエレメントが、衝突プランジャを落下状態(スプールを通る電流もやはり遮断されている場合)で再び戻し運動させるために適しており、例えば戻し運動されると、プランジャ端面が再び可動子端面に比べて突出しているように、衝突プランジャが再び位置決めされることによって達成される。このためには、例えば相応のショックアブソーバが考えられる。
【0012】
本発明による別の1変化態様では、可動子内に弾性部材、特に衝突プランジャのためのプランジャばねが設けられており、通電時に可動子が磁極コアに向かって運動し且つプランジャ端面が磁極コアに接触若しくは衝突すると、前記弾性部材が圧縮される。
【0013】
プランジャばねの使用は、より良好な落下特性をもたらす。それというのも、衝突プランジャの付加的な押圧力が、圧縮されたプランジャばねによって供与されているからである。
【0014】
この場合の配置形式は、衝突プランジャが、行程運動中に加速された可動子が有する運動エネルギの少なくとも一部を吸収し且つ補償するように選択されている。未だ残っている残留エネルギは、可動子の損傷を生ぜしめないようにするためには十分に小さい。
【0015】
有利には、本発明による電磁石の更に別の1変化態様は、衝突プランジャを収容するための軸方向の貫通開口を可動子内に有している。このような構成により、衝突プランジャのスペース節約式の配置が可能である。しかも、このような構成は別の複数の利点も有している。可動子内に貫通開口を配置することは、可動子から材料延いては質量をも除去する。挿入された衝突プランジャは、場合によっては貫通開口の全体積を満たすのではなく、この衝突プランジャは貫通開口内である程度の可動性を有している。このことは、衝突プランジャ及びその他のエレメントを備えた可動子の総質量を相応に減少させる。スプールの構成が変わらない場合は、これにより切替特性が改善される、つまり加速されるか、又は同じ機械的特性を実現するために、スプールの構成に関してコイルを節約し延いては相応のスプール材料を節約する手段が提供される。従って、このような構成は驚くべきことに付加的な節約ポテンシャル又は本発明により構成された電磁石の性能向上を有している。
【0016】
この場合、本発明により提案された貫通開口は、例えば段付き孔として形成されており、これにより例えばシール部材をも収容する可能性を開く。この場合、「軸方向」の概念は、行程運動の方向で規定されており、一般に可動子は長手方向軸線を有する円筒体、特に回転対称体として形成されており、貫通開口は前記長手方向軸線に対して平行であり、即ち軸方向に配置されている。
【0017】
この場合、本発明は軸方向の貫通開口の配置に限定されてはいない。本発明の更に別の1変化態様では、可動子内に軸方向で配置された止まり穴又は可動子端面内の切欠きが、衝突プランジャを収容するために設けられているということも提案される。つまり、前記止まり穴の底部に、弾性部材、例えばプランジャばねのための対応する支持手段が形成される。この場合、可動子自体は例えば別のエレメントによって、例えば弁ブロックのシール部材等のような制御部材に作用する。
【0018】
本発明の更に別の有利な1変化態様では、前記弾性部材が可動子の1エレメントに支持されている。弾性部材を支持することのできるこの可動子のエレメントは、例えば止まり穴の底部又は衝突プランジャの収容に役立つ可動子内の軸方向の貫通開口に沿った対応する段部、フランジ又はリングである。
【0019】
弾性部材が、可動子内に不動に配置されたエレメントに支持され得る前記変化態様の他に、本発明は、弾性部材がシール部材に支持されており、このシール部材が、可動子の前記可動子端面に対向位置する背面側で、室内に配置されている構成も有している。この場合、前記シール部材はまさにシール部材のために使用されるような十分に弾性的な材料、例えばポリマー、エラストマー、気泡ゴム又はシリコーン等から成っている。この場合、シール座に確実に載着してこのシール座をシールするために、シール部材はしばしばある程度の弾性を有している。このためにシール部材に形成されているシール面は、有利には可動子背面側と整合する表面を閉鎖するか、又はこの表面をやや越えて突出している。つまり、可動子が弁ブロックに相応に(密接に)支持される前に、まず最初にシール部材がシール座に接触するということが保証される。勿論、シール部材が可動子内である程度の可動性を有していることも可能である。本発明によるこの変化態様の場合、シール部材と衝突プランジャの両方が浮動支承されており且つ弾性部材、特にプランジャばねを介して互いに支持し合っており、これにより、衝撃緩和及びシール部材の製作誤差補償のために、有利には1つのばねしか必要とされない。つまり、可動子の運動エネルギの一部が、プランジャばねの緊張エネルギに変換される若しくはシール部材の圧縮時に場合によっては消滅することもある。この場合に発生する熱は、周辺環境に問題なく放出される。
【0020】
プランジャばねを介して互いに支持し合うシール部材及び衝突プランジャの浮動式の配置形式は、シール部材の製作誤差補償のために1つのばねしか必要でなく、従ってシール部材も可動子背面側に関して常に正しいポジションに配置されている、ということをもたらす。
【0021】
本発明では、電磁石は可動子がシール部材を支持する構成と、可動子が操作ピンに作用する構成の両方を有している。このためには、前記操作ピンが可動子とは無関係に別個に形成されており、例えば対応する調節ばね(Anstellfeder)によって必要な場合に可動子に接触させることができる。
【0022】
有利には、可動子に可動子戻しばねが配置されており、この可動子戻しばねの作用方向は、磁極コアに向かう可動子の運動とは逆の方向に向けられている。可動子戻しばねの配置により、可動子は電流の遮断状態において再びその出発位置へ押し戻される、つまり、可動子端面とコアとの間の空隙が再び拡大する。この場合、可動子戻しばねは、例えば磁極コア又は可動子に適当に支承されている。このために本発明の更に別の1変化態様において有利には、可動子戻しばねが、止まり穴又は貫通開口の磁極コアに面した領域に配置されている。これは可動子戻しばねのためのスペース節約型の配置形式であり、可動子戻しばねは実質的に可動子内に侵入しているので邪魔にならない。
【0023】
本発明に基づき、可動子戻しばねが可動子端面に支持される構成も、勿論規定されている。
【0024】
この場合、貫通開口若しくは止まり穴は十分に大きな直径を有しており、これにより、貫通開口若しくは止まり穴内に、衝突プランジャと可動子戻しばねの両方が収まる。この場合、可動子には相応の狭小部又はショルダが、例えばガイド領域又は中間領域に設けられており、この領域において、一方では可動子戻しばねの端部が支持可能であり且つ他方の側では衝突プランジャがガイドされている。その結果、コンパクトな構成が得られる。
【0025】
本発明の更に別の構成では、前記室が、背面側とは反対の(内)側に、シール部材のための接触ショルダを有している。可動子長手方向軸線に関して半径方向に(即ち可動子長手方向軸線に対して直角に)延びていてよいこの接触ショルダの代わりに、本発明の択一的な構成ではインナコーンが設けられており、このインナコーンは背面側に向かって拡がっている。当該インナコーンは傾斜面とも呼ばれる。
【0026】
これらの異なる両変化態様は、可動子延いては本発明による電磁石全体の電磁的な特性をも調節することを可能にする。
【0027】
特に本発明の更に別の1変化態様では、プランジャばねが可動子戻しばねよりも強く又は弱く形成されている。勿論これら両ばねは、本発明の更に別の1変化態様において、そのばね定数又は剛性に関して同じであってもよい。
【0028】
特に接触ショルダを備えた室の構成の場合、プランジャばねの適合により、本発明では落下電流をその時々の要求に可変に適合させられる、ということが可能である。この場合、プランジャばねは可動子戻しばねよりも(著しく)弱く形成されている。これに対してインナコーンを備えた変化態様では、可動子戻しばねよりも著しく強力なプランジャばねを使用することが有利である。これにより、シール部材が落下状態(即ち電磁石のコイルを通る電流が遮断された状態)で、可動子戻しばねの力によっては後退され得ないということが達成される。但し、比較的強力なこのプランジャばねは逆に、とりわけ可動子の引き付けられた状態で作用して、緩衝特性及び残留空隙(落下電流)に影響を及ぼす大きな力が衝突プランジャにも加えられる、ということを生ぜしめる。
【0029】
前記室が接触ショルダを備えて形成されており、この接触ショルダのショルダ面が長手方向軸線に関して半径方向に延びている本発明による変化態様では、シール部材はまさに当該の接触ショルダに支持され得る。この場合、シール部材が落下状態、即ち電流が遮断された状態で、可動子戻しばねの力に基づき後方に若しくは内側に向かって任意の距離をシフトされる恐れはない。従って、プランジャばねは可動子戻しばねよりも著しく弱く構成されていてよい。
【0030】
これにより、プランジャばね及び可動子戻しばねの剛性、並びにシール部材を収容する室の構成を選択することにより、可動子の特性が広範に調節可能であるということが得られる。緩衝特性及び落下電流を極めて可変に、複数の要求に適合させる可能性が生じる。
【0031】
本発明の更に別の有利な構成では、衝突プランジャが、プランジャ端面とは反対の側の脚部域に拡張部を有しており、この拡張部はプランジャばねにより、非通電状態で可動子のインナストッパに向かって押圧される。プランジャばねは前記脚部域、即ち衝突プランジャの下端部に係合している。可動子内の軸方向の貫通開口は狭小部を有しており、この狭小部により可動子内のストッパを形成している。このような構成により、プランジャ端面が可動子端面に対して突出する(又は後退する)距離が規定されている。同時に衝突プランジャは、軸方向の貫通開口の領域で可動子内のストッパに続く比較的狭い領域内でガイドされている。
【0032】
可動子は、印加された磁界に適当に反応するために、磁化可能な材料から成っている。一般に可動子は金属、例えば相応の合金又は鋼から成っている。この場合、可動子は例えば旋削部材として形成されており、この旋削部材は軸方向の貫通開口又は止まり穴等を形成するために、後で切削加工される。
【0033】
また、本発明の更に別の1変化態様では、可動子が管成形部材の部分として形成されている。この場合、衝突プランジャ若しくは別のエレメント(弾性的なエレメント、シール部材又はプランジャばね等)の確実な支承のためには、相応の形状を付与する加工ステップが続く。管成形部材の使用は当然、比較的手間のかかる切削加工ステップを省くものである。
【0034】
本発明では衝突プランジャは、例えば金属、鋼、軽金属、プラスチック又は繊維強化プラスチックから形成されている。衝突プランジャを金属から形成することは勿論、機械的に比較的激しく負荷される衝突プランジャのヘッド領域が十分に形状安定的であるという利点を有している。また、前記用途に適した高強度プラスチックも知られている。プラスチックを使用する利点は特に、これにより可動子の総重量が減少されるという点にある。その結果得られる利点は既に指摘した。
【0035】
本発明は、説明したような電磁石のみを包含するのではなく、弁、特に説明したような電磁石を有する空圧弁をも包含するものであり、この場合、可動子が、磁極コアとは反対の側にシール部材を支持しており、このシール部材は弁のシール座と協働する。この場合、シール部材は可動子端面とは反対の側の背面側に位置している。このような構成により、迅速に切り替わる、即ち迅速に反応し且つまた持続的に機能する弁、特に空圧弁が供与される。
【0036】
基本的に前記配置形式は液圧弁にも適している。
【0037】
この場合はしばしば、可動子室若しくは可動子の内部が、制御されるべき媒体によって満たされているように、配置形式が選択されている。それというのも、シール座が可動子室の隔壁に続いているからである。