【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板(W)の主面内の一部の領域だけに液滴を供給する液滴供給工程と、前記基板上の液滴の温度を変化させる温度変化工程とを含
み、前記温度変化工程は、前記基板上の液滴を冷却する冷却工程と、前記基板上の液滴を加熱する加熱工程とを含み、前記温度変化工程は、前記液滴の冷却と加熱とを交互に複数回行う繰り返し工程を含む、基板処理方法である。基板の主面は、デバイス形成面である基板の表面であってもよいし、表面とは反対側の裏面であってもよい。
この方法によれば、基板の主面内の一部の領域だけに液滴が供給される。その後、基板の主面に保持されている液滴が冷却または加熱される。これにより、基板上の液滴の温度が変化する。基板上の異物が液滴に接している場合、この異物は、液滴によって冷却または加熱され、収縮または膨張する。そのため、基板と異物との間に応力が発生し、基板に対する異物の付着力が低下する。これにより、異物が基板から剥がれやすい状態となる。さらに、基板の主面内の一部の領域だけに液滴が供給されるから、基板の主面全域に液体を供給する場合よりも液体の消費量が少ない。しかも、基板上の液量が少ないから、液滴の温度を変化させる物質(たとえば、後述の冷却剤)やエネルギー(たとえば、赤外線を発生させるときのエネルギー)を低減できる。これにより、ランニングコストを低減できる。
さらにこの方法によれば、基板上の液滴が冷却および加熱されるから、冷却または加熱だけが行われる場合よりも、液滴温度の変化量が大きい。そのため、液滴に接する異物の変位量を増加させることができる。これにより、基板に対する異物の付着力を確実に低下させて、異物が基板から剥がれやすい状態にすることができる。
さらにこの方法によれば、前記温度変化工程が前記液滴の冷却と加熱とを交互に複数回行う繰り返し工程を含んでいるから、液滴に接する異物が収縮および膨張を交互に繰り返すので、冷却および加熱が一回だけしか行われない場合よりも、基板に対する異物の付着力を低下させることができる。これにより、異物が基板から剥がれやすい状態にすることができる。
【0008】
温度変化工程は、基板上の液滴を冷却または加熱する工程であっても
よい。
【0009】
冷却工程は、基板上の液滴を室温(20〜30℃)より低い温度まで冷却する工程であってもよい。また、加熱工程は、基板上の液滴を室温より高い温度まで加熱する工程であってもよい。たとえば請求項
2に記載の発明のように、前記冷却工程は、前記基板上の液滴を凍結させる凍結工程を含んでいてもよいし、前記加熱工程は、前記基板上の液滴を解凍させる解凍工程を含んでいてもよい。すなわち、基板の主面に供給される液体が水を主成分とする液体である場合、冷却工程は、基板上の液滴を0℃以下まで冷却する工程であってもよいし、加熱工程は、基板上の液滴を0℃より高い温度まで加熱する工程であってもよい。この場合、液滴温度の変化量を増加させることができるから、液滴に接する異物の変位量を増加させることができる。これにより、基板に対する異物の付着力を確実に低下させて、異物が基板から剥がれやすい状態にすることができる。
【0010】
また、温度変化工程は、基板上の液滴を冷却した後に加熱する工程であってもよいし、それとは反対に、基板上の液滴を加熱した後に冷却する工程であってもよい
。
【0011】
また、液滴の冷却および加熱が複数回行われる場合、請求項
3に記載の発明のように、基板の主面内の一部の領域だけに液滴を供給する液滴供給工程と、基板上の液滴を凍結させる凍結工程と、基板上の液滴を蒸発させる蒸発工程とが、この順番で複数回行われてもよい。この場合、基板上の液滴が冷却され凍結する。その後、凍結状態の液滴が加熱され蒸発する。これにより、基板上から液滴が除去される。そのため、再び液滴が基板の主面に供給される。そして、再び液滴の凍結および蒸発が行われる。このように、液滴の凍結および蒸発が繰り返されるから、基板の主面に供給される液体が水を主成分とする液体である場合には、基板上の液滴の温度は、0℃以下から室温より高い温度(たとえば、100℃以上)まで変化する。したがって、液滴に接する異物の変位量を増加させて、基板に対する異物の付着力を確実に低下させることができる。
【0012】
冷却工程は、基板を冷却することにより基板上の液滴を冷却する工程であってもよいし、加熱工程は、基板を加熱することにより基板上の液滴を加熱する工程であってもよい。また、冷却工程は、基板を殆ど冷却することなく、基板上の液滴を冷却する工程であってもよいし、加熱工程は、基板を殆ど加熱することなく、基板上の液滴を加熱する工程であってもよい。
【0013】
すなわち、請求項
4に記載の発明のように、前記冷却工程は、前記基板上の液滴を選択的に冷却する選択的冷却工程を含んでいてもよいし、前記加熱工程は、前記基板上の液滴を選択的に加熱する選択的加熱工程を含んでいてもよい。この場合、基板上の液滴が選択的に冷却および加熱されるから、液滴およびこの液滴に接する部分(液滴と基板との接触部や、液滴に接する異物)の温度だけが大幅に変化し、基板全体の温度は殆ど変化しない。したがって、液滴に接する異物の温度が大幅に変化する一方で、基板の温度は殆ど変化しない。たとえば、異物および基板の両方の温度が大幅に上昇した場合には、異物および基板の両方が大幅に膨張するから、異物および基板の接触部での相対的な変位量は、異物だけが膨張する場合よりも小さい。したがって、基板上の液滴だけが選択的に冷却および加熱されることにより、基板に対する異物の付着力がさらに低下する。これにより、異物が基板からさらに剥がれやすい状態となる。
【0014】
また、液滴供給工程において液滴が供給される基板の主面内の領域は、基板毎に設定されてもよい。すなわち、請求項
5に記載の発明のように、前記基板処理方法は、前記液滴供給工程が行われる前に、前記基板の主面において異物が付着している汚染部分を特定する汚染状態測定工程をさらに含み、前記液滴供給工程は、前記汚染部分だけに液滴を供給する工程を含んでいてもよい。この場合、異物が付着している汚染部分だけに液滴が供給されるから、異物に対して液滴を確実に接触させることができる。したがって、液滴の温度を変化させることにより、異物を確実に収縮または膨張させることができる。これにより、基板に対する異物の付着力を低下させることができる。さらに、汚染部分だけに液滴が供給されるから、基板を腐食させる腐食液によって液滴が形成されている場合には、汚染部分以外の領域にダメージが発生することを抑制または防止できる。
【0015】
また、液滴供給工程において液滴が供給される基板の主面内の領域は、予め設定されていてもよい。すなわち、請求項
6に記載の発明のように、前記液滴供給工程は、前記基板の主面内の予め定められた部分(特定部分)に液滴を供給する特定部分供給工程を含んでいてもよい。また、特定部分は、基板の主面周縁部であってもよい。すなわち、基板の主面周縁部は、基板を搬送する搬送ロボットのハンドや、スピンチャックなどの基板保持手段と接触する。そのため、基板の主面周縁部は、基板の他の領域よりも汚染され易い。したがって、液滴が供給される領域は、この汚染され易い領域に設定されていてもよい。これらの場合、液滴が供給される領域が予め定められているから、基板の主面に対する液滴の供給位置を基板毎に変更しなくてもよい。
【0016】
また、基板の主面に供給される液体(液滴を形成する液体)は、水を含む液体であってもよいし、基板を腐食させる腐食成分を含む液体であってもよいし、その他の液体であってもよい。たとえば、請求項
7に記載の発明のように、前記液滴供給工程は、基板を腐食させる腐食液の液滴を基板の主面内の一部の領域だけに供給する工程を含んでいてもよい。この場合、基板の表層が腐食液によって腐食されるので、基板に対する異物の付着力を低下させたり、異物を基板から剥がしたり(リフトオフ)することができる。
【0017】
また、前記目的を達成するための請求項
8に記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(8)と、前記基板保持手段に保持されている基板の主面内の一部の領域だけに液滴を供給する液滴供給手段(9)と、
前記基板上の液滴を冷却する冷却手段(10)と、前記基板上の液滴を加熱する加熱手段(11)とを含み、前記基板保持手段に保持されている基板上の液滴の温度を変化させる温度変化手段(10、11)と
、前記冷却手段および加熱手段によって前記液滴の冷却と加熱とを交互に複数回実行させる制御手段(5)とを含む、基板処理装置(1)である。この構成によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、前記冷却手段は、前記基板上の液滴を凍結させる凍結手段(10)を含み、前記加熱手段は、前記基板上の液滴を解凍させる解凍手段(11)を含む、請求項
8に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項
2の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、前記冷却手段は、前記基板上の液滴を凍結させる凍結手段(10)を含み、前記加熱手段は、前記基板上の液滴を蒸発させる蒸発手段(11)を含み、前記制御手段は、前記液滴供給手段、凍結手段、および蒸発手段によって、基板への液滴の供給、前記液滴の凍結、および前記液滴の蒸発をこの順番で複数回実行させる、請求項
8または9に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項
3の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0020】
請求項
11に記載の発明は、前記冷却手段は、冷却剤を前記基板保持手段に保持されている基板の主面内の一部の領域だけに供給する冷却ノズル(18)を含み、前記加熱手段は、加熱剤を前記基板保持手段に保持されている基板の主面内の一部の領域だけに供給する加熱ノズル(22)、前記基板保持手段に保持されている基板に赤外線を照射する赤外線照射手段(30)、および前記基板保持手段に保持されている基板の主面上の液滴だけに接触可能な発熱部材(31)のうちの少なくとも一つを含む、請求項
8〜10のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0021】
冷却剤は、加熱剤よりも低温の物質である。たとえば、冷却剤は、室温よりも低温の物質であり、加熱剤は、室温よりも高温の物質である。冷却剤は、気体であってもよいし、液体であってもよいし、固体であってもよい。加熱剤についても同様である。冷却ノズルから吐出された冷却剤は、基板の主面内の一部の領域だけに供給される。したがって、液滴が存在する領域だけに冷却剤を供給できる。そのため、基板上の液滴を選択的に冷却できる。同様に、加熱ノズルが加熱手段に含まれている場合、加熱ノズルから吐出された加熱剤が、基板の主面内の一部の領域だけに供給される。したがって、液滴が存在する領域だけに加熱剤を供給できる。そのため、基板上の液滴を選択的に加熱できる。
【0022】
また、赤外線照射手段が加熱手段に含まれている場合、赤外線照射手段からの赤外線が基板に照射される。基板保持手段に保持される基板がシリコン基板であり、この基板に供給される液滴が水を含む液体によって形成されている場合、赤外線照射手段が発する赤外線の波長は、約3μmから4μm未満であることが好ましい。すなわち、たとえば特許文献2に記載されているように、この範囲内の波長の赤外線は、シリコン基板に殆ど吸収されずに、シリコン基板を透過する。その一方で、この範囲内の波長の赤外線は、水を含む液体に効率的に吸収される。したがって、この範囲内の波長の赤外線を基板に照射すると、基板上の液体だけが加熱される。そのため、基板上の液滴を選択的に加熱できる。
【0023】
また、発熱部材が加熱手段に含まれている場合、発熱部材が基板上の液滴だけに接触し、液滴だけが加熱される。したがって、基板上の液滴を選択的に加熱できる。このように、この構成によれば、基板上の液滴を選択的に冷却および加熱できる。したがって、請求項
4に記載の発明と同様に、基板に対する異物の付着力を低下させることができ、ランニングコストを低減できる。
【0024】
請求項
12に記載の発明は、
基板を保持する基板保持手段と、液滴を吐出する液滴ノズル(15)と、前記液滴ノズルを移動させる液滴ノズル移動手段(16)とを含み、
前記基板保持手段に保持されている基板の主面内の一部の領域だけに液滴を供給する液滴供給手段と、前記基板保持手段に保持されている基板上の液滴の温度を変化させる温度変化手段と、前記基板保持手段に保持されている基板の主面において異物が付着している汚染部分を特定する汚染状態測定手段(7)と、前記汚染状態測定手段からの出力に基づいて前記液滴ノズル移動手段を制御することにより、前記液滴ノズルからの液滴の供給位置を前記汚染部分に位置させる制御手段(5)と
を含む、基板処理装置である。
【0025】
この構成によれば、基板の主面において異物が付着している汚染部分が、汚染状態測定手段によって特定される。制御装置は、汚染状態測定手段からの出力に基づいて液滴ノズル移動手段を制御することにより、基板の主面に対する液滴の供給位置(狙い位置)を汚染部分に位置させる。そして、制御装置は、この状態で、液滴ノズルから汚染部分に向けて液滴を吐出させる。これにより、汚染部分だけに液滴が供給される。したがって、請求項
5に記載の発明と同様に、基板に対する異物の付着力を低下させることができ、ランニングコストを低減できる。
【0026】
請求項
13に記載の発明は、前記液滴供給手段は、前記基板保持手段に保持されている基板の主面内の予め定められた部分に液滴を供給するように構成されている、請求項
8〜11のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項
6の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項
14に記載の発明は、前記液滴供給手段は、基板の主面を腐食させる腐食液の液滴を前記基板保持手段に保持されている基板の主面内の一部の領域だけに供給する、請求項
8〜13のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、請求項
7の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0027】
請求項
15に記載の発明は、前記液滴供給手段は、液体を滴下させるピペット(15)を含む、請求項
8〜14のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、微量の液体がピペットから滴下される。これにより、基板保持手段に保持されている基板の主面の一部の領域だけに液滴が供給される。また、液体が滴下されるので、基板の主面内の所定位置(狙い位置)の上方にピペットを位置させた状態で、ピペットから液体を滴下させることにより、狙い位置に液滴を確実に供給できる。さらに、基板に供給される液量が少ないので、液滴の温度を変化させる物質やエネルギーを低減できる。これにより、基板処理装置のコストを低減できる。
【0028】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。