特許第5930285号(P5930285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930285レーザーシンタリング設備のより良好な不活性化のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930285
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】レーザーシンタリング設備のより良好な不活性化のための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20160526BHJP
   B33Y 40/00 20150101ALI20160526BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y40/00
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-21145(P2012-21145)
(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公開番号】特開2012-162077(P2012-162077A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年12月17日
(31)【優先権主張番号】10 2011 003 610.5
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】マイク グレーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ディークマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン アルトケムパー
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/007394(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0090374(US,A1)
【文献】 特開2005−169878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00−67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形室の不活性化を、密度が空気の密度よりも高い反応不活発ガス又はガス混合物を用いて行い、
前記造形室の不活性化とは別に、更に、レンズ及びパイロメーターを反応不活発ガス又はガス混合物で洗浄し、かつ
前記レンズ及びパイロメーターの洗浄を、空気よりも低い密度を有する不活性ガスを用いて行うことを特徴とする三次元物品の積層式製造方法
【請求項2】
ガス又はガス混合物として、希ガス又は希ガス化合物を使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応不活性ガスとして、アルゴン、クリプトン、キセノン、六フッ化キセノン及び/又は二酸化炭素を使用することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
更に、使用される粉末状基材を、リザーバータンク中で反応不活発ガス又はガス混合物で不活性化することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記不活性化を、窒素含有ガス混合物を有するリザーバータンク中で行うことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記反応不活発ガス又はガス混合物を、この造形室のレベルの温度に温度調節することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記造形室がガス密に構成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
造形室、前記造形室に続いて、空気よりも密度が高い反応不活発ガス又はガス混合物のための通路、レンズ、パイロメーター、並びに、前記レンズ及びパイロメーターに続いて、空気よりも密度が低い不活発ガス又はガス混合物のためのノズルを少なくとも含む、三次元物品の積層式製造のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プロトタイプの迅速な調製は、最近頻繁に課せられる課題である。このことを可能にする方法は、ラピッドプロトタイピング/ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Prototyping/ Rapid Manufacturing)又はアディティブファブリケーション(Additive Fabrication)法とも呼ばれる。特に適するのは、粉末状の原材料をベースとして作業し、この際、選択的溶融(selektives Aufschmelzen)及び凝固を介して、この所望の構造体を積層式(schichitweise)に製造する方法である。オーバーハング及びアンダーカットでの支持構造はこの場合に断念できる可能性があり、というのも、この溶融領域を取り囲む粉末床は、十分な支持作用を提供するからである。同様に、支持体を取り除くための後処理はなくなる。この方法は、小規模生産(Kleinserien)の製造にも適する。この造形温度は、造形プロセスの間に積層式に製造した構造の歪み(Verzug)を生じないように選択される。
【0002】
この積層式作業法の選択性は、この場合、例えばサセプター(Suszeptor)、吸収剤、阻害剤の施与により、又はマスクにより、又は集束化したエネルギー導入、例えばレーザー線により、又はガラス繊維により行ってよい。このエネルギー導入は、電磁線を介して達成される。
【0003】
ラピッドプロトタイピング/ラピッドマニュファクチャリングの目的に特に良好に適する方法は、選択的レーザーシンタリング(SLS)である。この方法では、プラスチック粉末がチャンバー内で選択的に短時間、レーザー線で照射され、これによって、レーザー線が衝突する粉末粒子が溶融する。この溶融した粒子は、互いに入り交じって、かつ迅速に凝固して、再び固形の材料を形成する。常に新しく設けられた層に繰り返し照射することによって、この方法を用いると、三次元の物体を簡単かつ迅速に製造することができる。
【背景技術】
【0004】
粉末状のポリマーから成形体を作成するためのレーザーシンタリング(Rapid Prototyping)の方法は、特許公報US6136948及びWO96/06881(両者共にDTM Corporation)に詳しく説明されている。この適用のために多数のポリマー及びコポリマー、例えばポリアセタート、ポリプロピレン、ポリエチレン、イオノマー及びポリアミドが請求されている。
【0005】
その他の良好に適した方法は、例えばWO01/38061に記載されたSIV方法、又はEP1015214に記載された方法である。両者の方法は粉末の溶融のために平面式赤外線加熱を用いて作業する。溶融の選択性は、第一の方法の場合には阻害剤の施与により、第二の方法の場合にはマスクにより達成される。更なる方法はDE10356193に記載されている。この方法では、溶融のために必要なエネルギーを、マイクロ波発生器により導入し、この選択性をサセプターの施与により達成する。
【0006】
更なる適した方法は、吸収剤を用いて作業する方法であり、この吸収剤は粉末中に含まれているか、又は、インクジェット法により設けられており、これは例えばEP1737646に記載されている。
【0007】
前述のラピッドプロトタイピング方法又はラピッドマニュファクチャリング方法(RP方法又はRM方法)のためには、粉末状の基材、特にポリマー、有利にはポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボナート、ポリ−(N−メチルメタクリルイミド)(PMMI)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、イオノマー、ポリアミド、又はこれらの混合物から選択されるポリマーを使用してよい。
【0008】
ポリマー粉末の加工では、収縮問題及び歪み問題を回避するために、しばしば高められた造形温度が必要である。この必要である造形温度は、加工温度とも呼ばれ、加工すべきポリマー粉末に依存し、かつ、大抵は、この加工すべき材料の融点をわずかにだけ下回る。この方法の問題は、空気酸素の有害な影響である。加工の際の高温は、この加工すべきポリマーの損傷を生じる。この理由から、加工の際にはこの造形室は通常は保護ガスで不活性される。この場合、例えば全プロセスの間、この造形室は持続的に窒素で洗浄される。持続的な洗浄が必要であり、というのも、例えば、機械で漏れがあるとこの不活性ガスは造形室から漏れ出るからである。発生器による窒素の調製は、必要な純度を保証することができず、このため、残留酸素の含分が常になお高すぎる。他の側面では、相応して純粋な窒素を用いるこの造形室の洗浄はコストがかかる。前述の方法の造形部分のための使用領域は常に拡張されるために、この造形部分の特性に関する要求も高まる。したがって、様々な要求を将来的には、従来使用される材料よりもより高い融点を有する材料だけを用いて満たさなければならない。これと関連したより高い加工温度は、そうすると、より良好な不活性化を必要とし、というのも、この加工の際の酸素の有害な作用は通常は、温度が高まると共に増加するからである。
【0009】
技術水準に応じた相応する設備中では、この不活性ガスは大抵は、レンズ及びパイロメーターでの沈着物が妨げられるように、レンズ及びパイロメーターを介して導入される。同時に、この不活性ガスはレンズ及びパイロメーターを冷却する。相応する冷却作用を達成するように、不活性ガスは、造形温度に比較して顕著により低温を有しなければならない。しかし、このことは、この冷温不活性ガスが、造形室及び特に造形領域中の粉末を強力に冷却するという欠点を有する。これにより、造形プロセスが妨げられ、というのも、歪み作用を回避すべくこの温度を後制御しなくてはならないからである。加えて、この冷温不活性ガスによって、造形室中で増強した渦動が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US6136948
【特許文献2】WO96/06881
【特許文献3】WO01/38061
【特許文献4】EP1015214
【特許文献5】DE10356193
【特許文献6】EP1737646
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、一つには、造形プロセス自体をその実施において妨げたり或いはこの得られる造形部分の品質を低下させることなく、不活性ガスの輸送量を低下させることができる、簡易化した、三次元物品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
空気よりも重い不活性ガスを用いた造形室の洗浄によって、意外なことに、顕著に改善した不活性化が達成されることができた。加えて、良好な不活性化を達成するために、不活性ガスの顕著により少ない量だけが必要である。これに応じて、本発明の第一の主題は、密度が空気の密度よりも高い、反応不活発(reaktionstraege)ガス又はガス混合物を用いて、造形室の不活性化を実施する、三次元物品の積層式製造方法である。本発明の範囲において、空気とは、大気(Erdatmosphaere)のガス混合物が理解される。反応不活発ガスとして本発明の意味合いにおいては、本方法の条件下で、使用される粉末状基材と反応しない全てのガスが理解される。本発明の範囲において空気よりもより重いとは、その密度が標準条件下で空気の密度よりも大きい全てのガス又はガス混合物が考えられる(標準条件(DIN 1343:温度273.15K及び圧力1.01325bar)下で、空気密度は1.293kg/m3に等しい)。適した不活性ガスは、特に空気よりも重い希ガス又は希ガス化合物、例えばアルゴン、クリプトン、キセノン又は六フッ化キセノンである。しかし、他の重い反応不活発ガス、例えば二酸化炭素も適している。特に好ましくは、不活性ガスとして、アルゴン、クリプトン、キセノン、六フッ化キセノン及び/又は二酸化炭素が使用される。
【0013】
根本的に、本発明による方法における使用のためには当業者に知られている粉末状基材全てが適している。適しているのは特に熱可塑性樹脂及び熱弾性樹脂(Thermoplaste und Thermoelaste)、例えばポリエチレン(PE、HDPE、LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルエステル、ポリエーテルエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアルキレンテレフタラート、特にポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリカーボナート(PC)、ポリエーテルスルホン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、イオノマー、ポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリアリールエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリーレンスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオリド、並びに、この熱可塑性樹脂のコポリマー、例えばポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)−コポリマー、混合物及び/又はポリマーブレンドである。イオノマーは、熱可塑性プラスチックであって、非極性モノマーと極性モノマーとの共重合によって獲得されるものである。これは例えば商品名Nafion(DuPont)で販売されている。この極性結合は、結晶化を抑え、「イオン性架橋」を生じる。従来の熱可塑性樹脂に対して、イオノマーは、その中で副原子価力(Nebenvalenzkraft)もイオン結合も有効になるという利点を有する。このイオン結合は、特に固く、そして、この物質にその特徴的な特性を付与する。
【0014】
特に好ましくは、このポリマー粉末は、少なくとも1のポリアミド又はポリエーテルケトン、特にポリアミド12、ポリアミド6又はポリアミド6.6又はPEEKを含み、その際、前述のポリアミドは特に好ましい。
【0015】
以下において、本発明による粉末から本発明による成形部分を製造できる幾つかの方法が記載されるが、これら方法に本発明が限定されるものではない。以下に挙げる実施態様の組み合わせは、当業者の行動の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、SLS機械の造形室(1)の改善された不活性化の原則を示す図である。
図2図2は、造形レベル(14)の上方にあるリザーバータンク(8)が下方から不活性ガス(12)でもって貫流される実施態様を示す図である。
図3図3は、造形レベル(16)の下方にあるリザーバータンク(17)が下方から不活性ガス(20)でもって貫流される実施態様を示す図である。
図4図4は、更に、この冷温不活性ガスの妨害的な影響の問題を解決する実施態様を示す図である。
【0017】
図1は、SLS機械の造形室(1)の改善された不活性化の原則を示す。ここで好ましいのは、不活性ガスとしてのアルゴン(3)の使用であり、これは空気よりも重く、そうして、直接的に粉末表面(4)に配置され、より軽い空気成分(2)、例えば酸素を押しのける。したがって、加工すべき粉末材料の十分な保護を保証するためには、顕著により少量の保護ガスが必要である。好ましいのは、不活性ガスを更に、レーザー光学機器のレンズからこの沈着物を取り除くために用いる場合である。不活性ガス(6)が相応して成形されたノズル(5)を介してレンズ面を経て噴入される場合には、このレンズ(7)の沈着物は回避されることができる。類似の原理に応じて、パイロメーターのレンズにある沈着物も回避されることができる。相当数のポリマー材料では揮発性成分が好ましくはこの造形室の最も低温な部位で沈着するので、この不活性ガスをこの造形室の温度レベルに加温することが好ましい。相当数の材料に必要な造形室温度が、このレンズにとって有害な高温範囲にある。この場合には、不活性ガスを用いたレンズの洗浄は冷却のためにも用いられることができる。不活性ガスの温度はこの場合に、相応してより低温に調節されなければならない。
【0018】
不活性化の更なる改善は、造形室中の粉末だけが不活性化されるのでなく、更に、レザーバータンク中の粉末も不活性化されることによって達成されることができる。これに応じて、すなわち、付加的に、このレザーバータンク中の使用される粉末状基材が、反応不活発ガス又はガス混合物で不活性化される。この部分的に多孔性の粉末原材料から酸素を取り除くためには、不活性ガスを用いたより長期の洗浄が必要である。このようにして、この多孔性の原材料に付着する酸素が造形領域へと一緒にもたらされることが妨げられる。この実施態様では、リザーバータンクの不活性化は窒素含有ガス混合物を用いて行われることができる。
【0019】
図2に示した実施態様では、造形レベル(14)の上方にあるリザーバータンク(8)が下方から不活性ガス(12)でもって貫流される。ふるい底部(Siebboden)(11)を通じて、この不活性ガスにより、この上にある粉末(9)が流動化される。このことは、不活性ガスを用いて粉末の特に均一な貫流を可能にし、したがって、この粉末床から空気酸素が漏れ出ることを確実にする。このふるい底部は、計量供給装置(10)と組み合わせられることができ、これによって、次にリコーター(13)が充填される。図3に示した更なる実施態様では、造形レベル(16)の下方にあるリザーバータンク(17)が下方から不活性ガス(20)でもって貫流される。ふるい底部(19)によって、ここでも、不活性ガスが特に均一に粉末(18)中に導入されることが可能である。リコーター(15)を用いて、次に、空気酸素を除去した粉末が設けられることができる。
【0020】
図4に示した実施態様では、加えて、この冷温不活性ガスの妨害的な影響の問題が解決され、前記問題は、造形室の高温を必要とし、レンズ及びパイロメーターの冷却を必要とする材料が加工される場合に発生する。本発明の方法のこの実施態様によれば、造形室の不活性化とは別個に、更に、レンズ及びパイロメーターを反応不活発ガス又はガス混合物で洗浄し、これによって冷却する。造形室(24)は、ここでは、別個に導入されたガスによって不活性化される。不活性ガス(25)は、慣用的には、この加工すべき材料の融点をわずかにだけ下回る造形室温度付近の温度で造形室中に導入される。この造形室温度は通常は、60〜400℃の範囲内、特に120〜330℃、特にとりわけ好ましくは160〜220℃の範囲内にある。この造形室中に導入される不活性ガスの温度は好ましくは最大30℃、特に最大20℃、特にとりわけ最大10℃、このプロセス温度を下回る。この造形室の下方領域(26)は、このように不活性化され、同時に、この粉末表面(27)の強力な冷却が回避される。顕著により冷温である不活性ガス(22)は、レンズ(21)及びパイロメーターを冷却するために、ノズル(23)を通じて導入される。特に好ましい一実施態様は、レンズ及びパイロメーターの洗浄のために又は冷却のためにも、空気よりもより少ない密度を有する不活性ガス、例えば窒素含有ガス混合物を利用すること、及び、同時に、この粉末表面の不活性化のために、可能な限り高い密度を有する不活性ガス、例えばアルゴンを選択することにある。極めて高い造形室温度では、レンズ冷却のより冷温の不活性ガスが粉末表面に対して貫通し、そして、その場にある粉末材料を冷却することを妨げるために、造形室の下方領域のためになおより密な不活性ガス、例えばキセノンを選択することが必要となり得る。
【0021】
全ての実施態様では、良好に密閉された造形室が好ましく、というのも、この環境での不活性ガスのより少ない損失によって不活性ガスの消費もより少なくなるからである。造形室の相応する密閉のための手段は、当業者に十分知られており、かつ、任意に使用されることができる。過剰な過圧の回避のためには、過圧弁を用いることができる。空気よりも重い不活性ガスでは、この過圧弁の位置はこの造形レベルの明らかに上方で選択されることが望ましい。
【0022】
本発明の更なる一主題は、本発明の方法の実施のための、造形室、及び、前記造形室に続いて、空気よりも密度が高い反応不活発ガス又はガス混合物のための通路を少なくとも含む、三次元物品の積層式製造のための装置である。本発明による装置の相応する実施態様は、この図面から取り出すことができる。通常は、本発明による装置は、造形室であって、高さ調節可能な造形プラットフォーム、前記造形プラットフォーム上に電磁線の採用によって凝固可能な材料の層を設けるための装置、照射装置を備えたものを有し、前記照射装置は、電磁線を放出する照射源、制御ユニット、及び、電磁線の照射コースにあるレンズを含み、これはこの物品に相応する箇所の層の照射のためのものである。
【0023】
本発明の更なる一主題は、本発明の方法により製造した三次元物品である。
図1
図2
図3
図4