特許第5930298号(P5930298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930298
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】排水口金具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   E03C1/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-114438(P2012-114438)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-241749(P2013-241749A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】川上 将
(72)【発明者】
【氏名】夏目 昌寿
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智哉
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−108130(JP,A)
【文献】 実開平05−015887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向かうほど径が小さくなる形状の排水口に取り付けられる排水口金具であって、
前記排水口に挿入され、排水管を接続するための樹脂製の排水口金具本体と、
前記排水口金具本体の上面および上方の内面を覆う金属製カバー部とを備えており、
前記排水口金具本体の上部は、張り出し部を有し、
前記金属製カバー部は、前記張り出し部の上面を覆うとともに、縁部で該張り出し部を下側から支えるように鋭角的に折り返した折り返し部を有しており、
前記折り返し部の長さは、前記折り返しの外側面の曲率半径よりも長く、
前記排水口金具は、その内側に排水口を塞ぐための栓側パッキンを備えた栓が取り付けられるものであり、
前記排水口金具本体は、前記栓を取り付けた際に前記栓側パッキンと接触する形状となっており、
前記金属製カバー部は、前記折り返し部と逆の端部が前記栓側パッキンと前記排水口金具本体とが接触する部位よりも上方に留まる形状となっている
排水口金具。
【請求項2】
請求項1記載の排水口金具であって、
前記排水口と前記排水口金具本体との間にパッキンを備え、
該パッキンは、前記折り返し部の全周にわたって外側から接触する形状をなしている
排水口金具。
【請求項3】
請求項1または2記載の排水口金具であって、
前記排水口金具本体の下部には、前記張り出し部との間で前記排水口が形成された排水口形成面を直接または間接に挟み込み保持できるよう前記排水管を接続するためのネジ山および前記排水管を接続した際の締め付け状態を規制する規制部が形成されており、
前記張り出し部を覆う部分の前記金属製カバー部の外径は、前記規制部から前記張り出し部に至る高さ分だけ、接続された前記排水管が前記排水口形成面に直接または間接に当たる部位から高い位置における前記排水口の内径と略同一に形成されている
排水口金具。
【請求項4】
排水口に取り付けられる排水口金具の製造方法であって、
前記排水口に挿入され、排水管を接続するための樹脂製の部材であって、その上部に、薄板状に広がる張り出し部を有する排水口金具本体を成形する工程と、
前記排水口金具本体の上面および上方の内面を覆う金属製カバー部を、該上面および内面に沿う形状に形成する工程と、
前記金属製カバー部に、前記排水口金具本体を取り付ける工程と、
前記張り出し部を下側から支えるように、前記金属製カバー部の前記張り出し部からはみ出した部分を、鋭角的、かつ、折り返し部の長さが折り返しの外側面の曲率半径よりも長くなるように折り返すことによって、前記金属製カバー部と前記排水口金具本体とを一体化する工程とを備え
前記排水口金具は、その内側に排水口を塞ぐための栓側パッキンを備えた栓が取り付けられるものであり、
前記排水口金具本体は、前記栓を取り付けた際に前記栓側パッキンと接触する形状となっており、
前記金属製カバー部は、前記折り返し部と逆の端部が前記栓側パッキンと前記排水口金具本体とが接触する部位よりも上方に留まる形状となっている
排水口金具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の排水口に取り付けられ、排水管を接続するための排水口金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽などの槽体の底面に形成された排水口には、例えば、特許文献1に開示されているように、ステンレスなどの金属で形成された排水口金具が取り付けられている。かかる排水口金具を取り付けることにより、外観に高級感を持たせることができるとともに、排水口の形状の変形防止、耐久性向上などの効果が得られる。
排水口金具としては、種々の構造が知られている。特許文献1には、板状のフランジ部を備えている構造を開示しているが、フランジ部の縁を湾曲させてあるものもある。
図7は従来技術としての排水口金具の断面図である。図7(a)には、浴槽の底面Bに設けられた排水口付近を拡大して示した。この排水口金具は、樹脂製の排水口金具本体Aに、ステンレス製の金属製カバー部Sを取り付けることによって構成されている。金属製カバー部Sは、排水口金具本体Aを覆うように、その縁部を湾曲させることによって一体化されている。図7(b)には、金属製カバー部Sの縁部近傍の拡大図を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−241594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術における排水口金具では、金属製カバー部Sの縁部を曲げているため、図7(b)に示すように、この部分の外側面の曲率半径rが大きく、底面Bとの間に隙間が形成されていた。従って、図7(b)に示すように、この隙間に、汚れDが貯まりやすく、外観を損ねたり、清掃に手間がかかるなどの課題があった。
本発明は、かかる課題に鑑み、排水口金具において、排水口が形成されている面との隙間を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
下方に向かうほど径が小さくなる形状の排水口に取り付けられる排水口金具であって、
前記排水口に挿入され、排水管を接続するための樹脂製の排水口金具本体と、
前記排水口金具本体の上面および上方の内面を覆う金属製カバー部とを備えており、
前記排水口金具本体の上部は、張り出し部を有し、
前記金属製カバー部は、前記張り出し部の上面を覆うとともに、縁部で該張り出し部を下側から支えるように鋭角的に折り返した折り返し部を有しており、
前記折り返し部の長さは、前記折り返しの外側面の曲率半径よりも長い
排水口金具である。
【0006】
本発明によれば、金属製カバー部の縁は、排水口金具本体の張り出し部を上下から覆うように鋭角的に折り曲げられる。即ち、図7に示したように湾曲させるのではなく、内側面の曲率半径がほぼ0と言えるほど十分に小さくなるよう折り曲げる。こうすることにより、金属製カバー部の縁の外側面の曲率半径を小さくすることができる。従って、排水口と金属製カバー部との間の隙間を小さくすることができ、汚れの付着などを抑制することができる。
また、本発明では、金属製カバー部の縁の折り返し部は、外側面の曲率半径よりも長く確保されているため、鋭角的に折り曲げた場合であっても、排水口金具本体の張り出し部をしっかりと保持することが可能となる。金属製カバー部の縁を折り返した端部の外側面は、微視的には、円弧状をなすが、折り返し部とは、この円弧からはずれ直線的または折れ線状に延びる部分の長さを言う。折れ線状とは、折り返し部が、さらに途中で折れ曲がり、段付き状になっていることを言う。
【0007】
本発明の排水口金具は、種々の工程で形成することが可能である。
予め折り返し部を設けた形状に金属製カバー部を加工し、ここに樹脂のインサート成形によって排水口金具本体を形成してもよい。この方法によれば、金属製カバー部と排水口金具本体とを密着させ、一体化させやすい利点がある。
また、排水口金具本体と、縁を折り返さない状態の金属製カバー部とを用意し、両者を組み合わせた後、金属製カバー部の縁を折り返して、かしめる方法(以下、「後かしめ」と呼ぶこともある)で形成してもよい。この方法によれば、排水口金具本体の成形工程の自動化が容易であり、全体として製造コストを低減させることができる利点がある。
【0008】
本発明の排水口金具においては、
前記排水口と前記排水口金具本体との間にパッキンを備え、
該パッキンは、前記折り返し部の全周にわたって外側から接触する形状をなしているものとしてもよい。
こうすることにより、折り返し部から、排水口金具本体と金属製カバー部との間の隙間への浸水を抑制することができる。かかるパッキンは、特に、上述の後かしめで製造する場合に、有用性が高い。
【0009】
本発明の排水口金具においては、
該排水口金具は、その内側に排水口を塞ぐための栓側パッキンを備えた栓が取り付けられるものであり、
前記排水口金具本体は、前記栓を取り付けた際に前記栓側パッキンと接触する形状となっており、
前記金属製カバー部は、前記折り返し部と逆の端部が前記栓側パッキンと前記排水口金具本体とが接触する部位よりも上方に留まる形状としてもよい。
金属製カバー部と排水口金具本体との間に隙間がある場合、栓を取り付けても、この隙間を通じて漏水するおそれがある。上記態様では、金属製カバー部よりも下の位置で、栓側パッキンと排水口金具本体とが接触するため、上記隙間を通じた漏水を防止することができる。
【0010】
また、本発明の排水口金具においては、
前記排水口金具本体の下部には、前記張り出し部との間で前記排水口が形成された排水口形成面を直接または間接に挟み込み保持できるよう前記排水管を接続するためのネジ山および前記排水管を接続した際の締め付け状態を規制する規制部が形成されており、
前記張り出し部を覆う部分の前記金属製カバー部の外径は、前記規制部から前記金属製カバー部の上面に至る高さ分だけ、接続された前記排水管が前記排水口形成面に直接または間接に当たる部位から高い位置における前記排水口の内径と略同一に形成されているものとしてもよい。
排水管を直接挟み込むとは、排水口形成面の直下に排水管が接続される状態を言い、間接に挟み込むとは、排水口形成面の下にパッキンなどを介して排水管が接続される状態を言う。
上述の態様によれば、金属製カバー部の外径は、排水管を規制部まで締め付けた状態で排水口の内径と略同一となる。従って、排水管を十分に締め付ける前に、金属製カバー部の外周と排水口とが強く接触することを回避できるため、排水口の損傷を抑制できる。
規制部としては、例えば、排水口本体に排水管の端部が当たることによって締め付けを規制する段部、ネジ山の最上部などとすることができる。
【0011】
本発明は、排水口金具としての態様に限らず、種々の態様で構成することができる。
例えば、
排水口に取り付けられる排水口金具の製造方法であって、
前記排水口に挿入され、排水管を接続するための樹脂製の部材であって、その上部に、薄板状に広がる張り出し部を有する排水口金具本体を成形する工程と、
前記排水口金具本体の上面および上方の内面を覆う金属製カバー部を、該上面および内面に沿う形状に形成する工程と、
前記金属製カバー部に、前記排水口金具本体を取り付ける工程と、
前記張り出し部を下側から支えるように、前記金属製カバー部の前記張り出し部からはみ出した部分を、鋭角的、かつ、折り返し部の長さが折り返しの曲率半径よりも長くなるように折り返すことによって、前記金属製カバー部と前記排水口金具本体とを一体化する工程とを備える
排水口金具の製造方法として構成してもよい。金属製カバー部と排水口金具本体とを一体化する工程は、複数回の折り返し工程に分けて実現してもよい。
上記製造方法は、即ち、後かしめによる製造方法である。かかる製造方法によれば、組み立て前の排水口金具と、排水口金具本体とを個別に並行して製造することができるとともに、各製造工程の自動化が容易であるため、全体として製造コストを低減でき、品質の均一化を図ることができる。
【0012】
本発明において、上述の種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はない。その一部を省略等したり、適宜、組合せたりして構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】排水口金具の断面図である。
図2】排水口金具の製造工程図である。
図3】変形例としての排水口金具の製造工程図である。
図4】実施例2としての排水口金具の断面図である。
図5】実施例2としての排水口金具の製造工程図である。
図6】実施例3としての排水口金具の断面図である。
図7】従来技術としての排水口金具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
図1は、排水口金具の断面図である。この排水口金具は、浴槽などの底面100に設けられた排水口101に取り付けられるものである。
図1(a)には全体構造を示した。図示する通り、排水口金具は、熱可塑性樹脂製の排水口金具本体30、ステンレス製の金属製カバー部10、およびゴム製のパッキン20を有している。
排水口金具本体30の下方は、内面が円筒状、外面には、排水管を接続するためのネジ山32が形成されている。排水口金具本体30の上方は、ラッパ状に開口部の径が広がっている。本実施例では、直線的に径が変化する例を示しているが、曲線的に広がる形状としてもよい。排水口金具本体30の最上部を張り出し部31と呼ぶ。排水口金具本体30の内面には、段差33が設けられているが、この形状および作用については、後述する。
金属製カバー部10の下部は排水口金具本体30の内面に沿う円筒部11となっている。その上方には、やはり排水口金具本体30に沿って径が変化するテーパ部12となっており、最上部は、ほぼ水平となるフランジ部13となっている。フランジ部13の外縁は、鋭角的に折り返された折り返し部14となっており、フランジ部13と折り返し部14で排水口金具本体30の張り出し部31を上下から挟むように保持している。
パッキン20は、底面100と排水口金具本体30および金属製カバー部10との間に挿入される断面コの字状のゴム製の円環部材である。図のように取り付けた場合、パッキン20の上端は、折り返し部14を外側から覆うだけの長さを有している。
【0015】
排水口金具本体30のネジ山32の最上部からフランジ部13の上面までの高さをHとするとき、フランジ部13の外径Reは、パッキン20の最下面から高さHだけ上方における排水口101の内径と略同一となるよう形成されている。こうすることにより、排水管を接続し、ネジを十分に締め付ければ、フランジ部13を排水口101に十分に密着させることができる。また、排水管のネジを十分に締めつけるまでは、フランジ部13が排水口101に強く押しつけられることがないため、フランジ部13によって排水口101を損傷するおそれを抑制できる。ネジ山32の最上部は、排水管のネジの締め付けを規制するという意味で、規制部として機能する。
排水口金具は、本実施例の構造と異なり、底面100の下側にパッキン20が介在しない構造、即ち、排水管が直接に底面100の下面に当たる構造としてもよい。この場合には、フランジ部13の外径Reは、底面100の最下面から高さHだけ上方における排水口101の内径と略同一となるよう形成すればよい。
【0016】
図1(b)には、フランジ部13の拡大図を示した。図示する通り、金属製カバー部10は、排水口金具本体30の張り出し部31をフランジ部13および折り返し部14で挟み込むように、外縁で折り曲げられている。折り返し部14の長さL(以下、折り返し長さという)は、折り曲げの曲率半径Rに対して、十分大きく(2倍以上が好ましい)確保する。こうすることにより、排水口金具本体30を、フランジ部13と折り返し部14とで保持しながらも、折り曲げの曲率半径Rを十分に小さくすることができる。
また、折り返し部14とフランジ部13とがなす角度(以下、折り返し角度という)αは、底面100の上面と排水口101とがなす角βよりも小さくする。こうすることによって、折り返し部14が排水口101に干渉することを回避でき、フランジ部13を排水口101に密着させることができる。
領域Eに示す通り、排水口金具を取り付けた状態で、パッキン20は、その先端が折り返し部14の縁に外側から接触する長さを有している。即ち、取り付けた状態では、折り返し部14と排水口101との間に、パッキン20が挿入された状態となる。こうすることによって、折り返し部14から、金属製カバー部10と排水口金具本体30との間への浸水を抑制することができる。
【0017】
図1(c)には、段差33の拡大図を示した。排水口金具本体30の内面のうち、金属製カバー部10が取り付けられる部分には、金属製カバー部10の厚さに相当する段差33が形成されている。従って、金属製カバー部10を取り付けることによって、排水口の内面が、段差のない面一の滑らかな状態とできるため、外観が向上するとともに、安全性を高めることができる。また、金属製カバー部10と排水口金具本体30との継ぎ目に汚れが付着することを抑制できる。
【0018】
実施例の排水口金具の製造方法について説明する。
図2は、排水口金具の製造工程図である。後かしめによる製造方法である。
この工程では、まず、排水口金具本体30を熱可塑性樹脂により射出成形する(ステップS10)。次に、金属製カバー部10Aをプレス加工する(ステップS11)。この際、折り返し部14Aは、鋭角的に折り曲げるのではなく、直角または鈍角とする。折り曲げない状態としておいてもよい。ステップS10とステップS11との順序は、入れ替えても良いし、並行して行ってもよい。
こうして形成された金属製カバー部10Aに、排水口金具本体30を取り付ける(ステップS12)。そして、金属製カバー部10の縁を折り曲げて、かしめることにより折り返し部14を形成し、排水口金具本体30と一体化する(ステップS13)。かしめは、1回のプレスで完成させる必要はなく、2回またはそれ以上に分けて行ってもよい。かしめる際には、金属製カバー部10の折り曲げの外側面の曲率半径が十分に小さくなるよう、金型を精度良く形成しておくことが望まれる。外側面の曲率半径を小さくするためには、一旦、プレスした縁の部分を、さらにプレスする方法も有効である。
この製造方法によれば、金属製カバー部10と排水口金具本体30とを別工程で製造できるため、全体として製造コストの低減を図ることができる利点がある。
【0019】
排水口金具は、他の製造方法をとることもできる。
図3は、変形例としての排水口金具の製造工程図である。金属製カバー部10に樹脂をインサート成形する製造方法である。
この工程では、まず金属製カバー部10をプレス加工する(ステップ20)。この段階で、折り返し部14も鋭角的に折り曲げた状態で形成しておいてよい。
次に、この金属製カバー部10を金型に取り付け、熱可塑性樹脂によるインサート成形を行う(ステップS21)。樹脂が折り返し部14にも十分に挿入されるよう、成型条件を調整しておくことが望まれる。
この製造方法によれば、金属製カバー部10に、排水口金具本体30を密着させやすいという利点がある。
【実施例2】
【0020】
図4は、実施例2としての排水口金具の断面図である。
実施例2の排水口金具本体30Aは、樹脂で形成されており、下部は実施例1と同様の形状であるが、張り出し部31Aに、実施例1よりも厚みを持たせてある。
金属製カバー部10Aは、ステンレス製であり、下部は筒状部11A、テーパ部12A、フランジ部13Aの形状は、実施例1と同様である。フランジ部13Aの外縁は、折り返し部14A、14Bのように、2段階に折り曲げられている。折り返し部14Aの折り曲げの外側面の曲率半径は、実施例1と同様、十分に小さく形成されている。また、折り返し部14A、14Bの長さは、外側面の曲率半径よりも十分に長く確保されている。従って、張り出し部31Aを折り返し部14A、14Bとフランジ部14Aとの間で保持しつつ、折り曲げの外側面の曲率半径を十分に小さくすることができる。折り返し部14Aとフランジ部13Aとの間は、空隙15となっていても構わない。
また、実施例2では、折り曲げ部14A、14Bを2段階で形成することにより、張り出し部31Aに厚みを持たせることが可能となっている。こうすることにより、樹脂製の張り出し部31Aの断面強度を高めることができ、排水口金具本体30Aの取り付け時などに張り出し部31Aが損傷することを抑制できる。さらに、樹脂製の張り出し部31Aの形状に影響されずに折り曲げ部14Aを折り曲げることが可能であるため、実施例1よりも外側面の曲率半径を一層、小さくすることが可能となる。
図4の例示に加えて、折り曲げ部14A、14Bをさらに延伸し、排水口金具本体30Aに沿うように3段階で折り曲げ部を形成してもよいし、排水口金具本体の形状によっては、さらに多段階で形成してもよい。
【0021】
図5は、実施例2としての排水口金具の製造工程図である。後かしめによる製造方法を示した。この工程は、実施例1における製造方法(図2)における最終工程(ステップS13)が異なる。
実施例2では、この工程において、第1段階として、金属製カバー部10Aをかしめて排水口金具本体30Aと一体化する(ステップS13A)。この段階では、折り返し部14Cは、図示するように直線的に折り返されている。
次に、第2段階として、さらに、金属製カバー部10Aのかしめを行う(ステップS13B)。この段階で、折り返し部14A、14Bのように2段階での折り曲げが実現される。
ここでは、後かしめによる製造方法を示したが、実施例1と同様、インサート成形による製造方法(図3)をとることも可能である。
【実施例3】
【0022】
図6は、実施例3としての排水口金具の断面図である。排水栓40を取り付けた状態を示した。排水栓40には、ゴム製のパッキン41が取り付けられている。
排水口金具は、実施例1、2と同様、排水口金具本体30Bと金属製カバー部10Bから構成される。
排水口金具本体30Bは、ネジ山32の上方に、段部35が設けられている。段部35とは、ネジ山32の頂部の径よりも、drだけ径が大きい部位である。排水管をネジ山32にネジ止めすると、排水管の端部が段部35に当たることで、ネジの締め付けが過剰とならないよう、規制する機能を奏する。段部35は、排水管のネジの締め付けを規制する規制部の一例であり、段部35に代えて、実施例1、2のようにネジ山の最上部を規制部として用いても良い。
排水口金具本体30Bの上部は、上に行くほど内径が広がるテーパ部34となっている。テーパ部34は、排水栓40を排水口金具本体30Bに嵌めこんだ時にパッキン41が接触する形状となっている。
【0023】
排水口金具本体30Bの上部には、金属製カバー部10Bが取り付けられている。金属製カバー部10Bの縁は、張り出し部31を上下から挟み込むように実施例1、2と同様、鋭角的に折り曲げられ、折り返し部14Cが形成されている。
排水口金具本体30Bと底面100との間のパッキン20Bは、折り返し部14Cに接触しない程度の長さである。実施例1、2と同様、折り返し部14Cに外側から接触する程度としてもよい。
金属製カバー部10Bのテーパ部12Bは、実施例1、2とは異なり、排水口金具本体30Bのテーパ部34の途中までで留められている。領域Fに示すように、排水栓40を取り付けたとき、テーパ部12Bは、その端部が、パッキン41よりも上方に来る長さとなっている。かかる形状とすることにより、排水口金具本体30Bと金属製カバー部10Bとに隙間がある場合でも、テーパ部12Bの端部から漏れ出る水は、パッキン41で止水することができるため、漏水を防止することができる。
【0024】
以上で説明した実施例1〜3の排水口金具によれば、金属製カバー部の縁の折り返し部の長さを十分に確保してあるため、この部分で排水口金具本体を保持しつつ、縁の外側面の曲率半径が十分に小さくなるよう折り曲げることができる。従って、排水口金具と排水口との間の隙間を小さくすることができ、汚れの付着を抑制することができる。
以上、本発明の種々の実施例について説明した。以上の実施例で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、一部を省略したり、適宜、組み合わせて用いたりしてもよい。また、本発明は、上述の実施例に限らず、種々の変形例をとることができる。実施例1〜3では、いずれも底面100に形成された排水口に取り付ける排水口金具を例示したが、排水口は、槽体などの側面に設けられたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、排水口に取り付けられる排水口金具に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10、10B…金属製カバー部
11、11A…筒状部
12、12A…テーパ部
13、13A…フランジ部
14、14A、14B、14C…折り返し部
15…空隙
20、20B…パッキン
30、30B…排水口金具本体
31、31A…張り出し部
32…ネジ山
33…段差
34…テーパ部
35…段部
40…排水栓
100…底面
101…排水口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7