特許第5930304号(P5930304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930304
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20160526BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20160526BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B60N2/42
   B60N2/68
   B60N2/16
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-174955(P2012-174955)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-34226(P2014-34226A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】吉鶴 昌也
(72)【発明者】
【氏名】西岡 隆介
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−240610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42
B60N 2/16
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼児拘束装置を装着可能なシートクッションと、
前記シートクッションをシート前後方向にスライド移動自在に支持する左右一対のスライドレールとを備えている車両用シートであって、
前記スライドレールのスライド移動をロックするロック機構が前記左右一対のスライドレールに設けられ、
前記ロック機構のロックを解除するロック解除ハンドルが前記左右一対のスライドレールに架け渡され、
前記ロック解除ハンドルは、シート幅方向中央側の第1ハンドル部分と、前記第1ハンドル部分よりもシート幅方向外側に位置し、シート幅方向外側ほどシート後方側に位置するように、前記第1ハンドル部分の端部から斜め後方に延びる第2ハンドル部分とを備え、
前記シートクッションのシートフレームは、左右一対のサイドフレームと、
前記左右一対のサイドフレームの前端部に架け渡されて前記シートフレームの前面部を形成するフロントパネルと、
前記フロントパネルよりもシート後方側に位置する状態に前記左右一対のサイドフレームの前部に架け渡され、前記シートクッションに対する前記幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止するリンフォースとを備え、
前記リンフォースの前端部は前記フロントパネルに固着され、
デバイス機構が下方から連結する連結面が前記リンフォースに設けられ、
前記連結面はシート前方側ほど上方に位置するように前上がりに傾斜し、
前記連結面と直交する方向から見て、前記第2ハンドル部分よりも前外側に前記連結面が位置している車両用シート。
【請求項2】
前記デバイス機構は、前記スライドレールと前記リンフォースの間に介在するリンク機構と、前記シートクッションの前端部を昇降させる昇降手段とを備えたチルト機構であり、
前記リンク機構は、横軸芯周りに互いに回転自在に連結された下側リンク部材と上側リンク部材とから成り、
前記下側リンク部材の下端部が前記スライドレールに横軸芯周りに回転自在に連結され、
前記上側リンク部材の上端部が前記リンフォースの連結面に連結されている請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記リンフォースは、リンフォース上壁と、リンフォース上壁のシート前方側の端部から下方に延びるリンフォース前壁とから成り、
前記リンフォース前壁が下端部側ほどシート前方側に位置するように傾斜し、
前記リンフォース前壁の下端部が前記フロントパネルに固着されている請求項1又は2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記フロントパネルは断面L字状に形成されて、フロントパネル上壁と、フロントパネル上壁のシート前方側の端部から下方に延びるフロントパネル前壁とから成る請求項3記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
幼児拘束装置を装着可能なシートクッションと、
前記シートクッションをシート前後方向にスライド移動自在に支持する左右一対のスライドレールとを備えている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の車両用シートを備えた車両では、車体に前方への衝撃力が加わった場合であっても、幼児拘束装置で幼児を安定して拘束できる構造にする必要がある。
そこで、従来、特許文献1に開示されているように、シートクッションの後端部に被係合部を設けるとともに、車体フロアにフックを設けてあった。
そして、前記衝撃力で幼児拘束装置に前方への荷重が加わって、シートクッションが前方に移動した場合、前記被係合部にフックが係合して、シートクッションの前方への移動が阻止され、シートクッションの一定以上の変形が阻止されるようにしてあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−240610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、車体に前方への衝撃力が加わった場合に、シートクッションの一定以上の変形を阻止できるものの、幼児拘束装置に加わる前方への引っ張り荷重で幼児拘束装置の前端部がシートクッションに対して沈み込む現象が生じていた。
すなわち、図6の模擬試験の様子に示すように、幼児拘束装置90は後側の下端部がシートクッション1に固定される(符号9はシートバック、100は車両用シートを示す)。そのために、幼児拘束装置90に前方Zへの荷重が加わった場合、幼児拘束装置90がシートクッション1への固定部Pを中心として前側(白抜き矢印G方向)に回転する。そのために、幼児拘束装置90の前端部がシートクッション1に対して沈み込む。
一般に、シートフレームは左右一対のサイドフレームを備え、左右一対のサイドフレームの前端部に、シートフレーム全体の強度を確保する強度部材としてのパイプ材が架け渡されている。このパイプ材により幼児拘束装置の前端部を受け止めて、シートクッションに対する前記前端部の下方への沈み込みを阻止することも考えられる。
しかしながら、幼児拘束装置のシート前後方向の長さは、シートクッションのシート前後方向の長さよりも短くて、幼児拘束装置の前端部をパイプ材で受け止めることができない。
そのために、上記の沈み込み現象を回避するには、前記パイプ材に加え、幼児拘束装置の沈み込みを阻止する強度部材(図6の符号88の部品)をシートフレームに更に設けなければならなかった。その結果、部品点数や重量が増加していた。
本発明の目的は、車体に前方への衝撃力が加わった場合に、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを防止することができながら、部品点数を少なくすることができ、軽量化できる車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
幼児拘束装置を装着可能なシートクッションと、
前記シートクッションをシート前後方向にスライド移動自在に支持する左右一対のスライドレールとを備えている車両用シートであって、
前記スライドレールのスライド移動をロックするロック機構が前記左右一対のスライドレールに設けられ、
前記ロック機構のロックを解除するロック解除ハンドルが前記左右一対のスライドレールに架け渡され、
前記ロック解除ハンドルは、シート幅方向中央側の第1ハンドル部分と、前記第1ハンドル部分よりもシート幅方向外側に位置し、シート幅方向外側ほどシート後方側に位置するように、前記第1ハンドル部分の端部から斜め後方に延びる第2ハンドル部分とを備え、
前記シートクッションのシートフレームは、左右一対のサイドフレームと、
前記左右一対のサイドフレームの前端部に架け渡されて前記シートフレームの前面部を形成するフロントパネルと、
前記フロントパネルよりもシート後方側に位置する状態に前記左右一対のサイドフレームの前部に架け渡され、前記シートクッションに対する前記幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止するリンフォースとを備え、
前記リンフォースの前端部は前記フロントパネルに固着され、
デバイス機構が下方から連結する連結面が前記リンフォースに設けられ、
前記連結面はシート前方側ほど上方に位置するように前上がりに傾斜し、
前記連結面と直交する方向から見て、前記第2ハンドル部分よりも前外側に前記連結面が位置している点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成によれば、シートフレームのリンフォースが、シートフレームの前面部を形成するフロントパネルよりもシート後方側に位置する状態に左右一対のサイドフレームの前部に架け渡されている。そして、前記リンフォースが、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止する。従って、車体に前方への衝撃力が加わって、シートクッションに装着した幼児拘束装置に前方側への荷重が加わっても、幼児拘束装置の前端部がシートクッションに対して沈み込むことを防止することができ、幼児拘束装置で幼児を安定して拘束することができる。
また、リンフォースの前端部はフロントパネルに固着されているから、リンフォースが、シートフレーム全体の強度を確保する強度部材としての機能も発揮する。これにより、左右一対のサイドフレームの前端部に架け渡されていた強度部材としてのパイプ材を省くことができて、部品点数を少なくすることができ、軽量化することができる。
さらに、シートフレームの前部については、幼児拘束装置の前端部側が配置される位置からシートフレームの前面側にかけて、リンフォースとフロントパネルとで断面L字状の補強構造が形成される。その結果、前記補強構造が、下方及び後方が開口した箱形状となる。従って、リンフォースとフロントパネルがパネル材で形成されていても、前記補強構造に高い強度を備えさせることができ、前記補強構造をパイプ材で形成した場合に比べると、前記補強構造を軽量化することができる。
一方、前記パイプ材を省略した構造では新たな問題が生じる。すなわち、チルト機構などのデバイス機構は、通常、前記パイプ材に固着されたブラケットに連結されている。従って、パイプ材を省略した構造の場合、前記リンフォースにデバイス機構を連結することになる。しかしながら、デバイス機構に対する連結面を広く確保できるリンフォースのメイン部は、幼児拘束装置の前端部に合わせて、前記パイプ材が配置されていた箇所よりもシート後方側に配置されている。そのために、リンフォースへのデバイス機構の連結作業時にロック解除ハンドルが邪魔になって、工具をリンフォースの連結面側まで到達させることができないという問題が生じる。
これに対して、本発明の上記構成によれば、リンフォースをフロントパネル側まで延出してある。さらに、デバイス機構が下方から連結するリンフォースの連結面は、シート前方側ほど上方に位置するように前上がりに傾斜し、前記連結面と直交する方向から見て、前記第2ハンドル部分よりも前外側に前記連結面が位置している。
従って、デバイス機構をリンフォースの連結面に下方から連結する際に、工具の挿入スペースを確保することができる。その結果、工具が前記第2ハンドル部分に干渉することを回避することができ、工具をリンフォースの連結面側に円滑に到達させることができる。これにより、リンフォースの連結面にデバイス機構を連結することができるようになる。つまり、デバイス機構のリンフォースへの組み付け性が損なわれることを回避することができ、組み付け性を確保することができる。
また、従来はパイプ材に固着したブラケットに前記デバイス機構を連結していたが、本発明の上記構成によれば、リンフォースの連結面にデバイス機構を連結しているので、前記ブラケットが不要となる。その結果、更なる部品点数の削減と軽量化と工数の削減とを図ることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記デバイス機構は、前記スライドレールと前記リンフォースの間に介在するリンク機構と、前記シートクッションの前端部を昇降させる昇降手段とを備えたチルト機構であり、
前記リンク機構は、横軸芯周りに互いに回転自在に連結された下側リンク部材と上側リンク部材とから成り、
前記下側リンク部材の下端部が前記スライドレールに横軸芯周りに回転自在に連結され、
前記上側リンク部材の上端部が前記リンフォースの連結面に連結されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
チルト機構によりシートクッションの座面角度を好みに合わせて調整することができる。
また、前記チルト機構のリンク機構をリンフォースの直下に配置することができる。これにより、幼児拘束装置に前方に向かう荷重がかかった時に、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の沈み込み方向の荷重をリンク機構が真下から受けることができる。
従って、リンク機構が前記荷重を前記真下以外の箇所で受ける場合に比べて、リンク機構にモーメント荷重がかからないので、リンク機構の負担を軽減でき、チルト機構の耐久性を向上させることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記リンフォースは、リンフォース上壁と、リンフォース上壁のシート前方側の端部から下方に延びるリンフォース前壁とから成り、
前記リンフォース前壁が下端部側ほどシート前方側に位置するように傾斜し、
前記リンフォース前壁の下端部が前記フロントパネルに固着されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記リンフォース上壁とリンフォース前壁によりL字状の断面形状を形成できて、リンフォースの強度を向上させることができる。しかも、前記リンフォース前壁は下端部側ほどシート前方側に位置するように傾斜しているから、例えば、幼児拘束装置の前端部がシートクッションに対して沈み込もうとして、リンフォースに前側への回転方向の荷重が加わった場合、前記リンフォース前壁がフロントパネルに対してより突っ張りやすくなる。これにより、シートクッションの前端部の沈み込みに対するリンフォースの強度を向上させることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記フロントパネルは断面L字状に形成されて、フロントパネル上壁と、フロントパネル上壁のシート前方側の端部から下方に延びるフロントパネル前壁とから成ると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記フロントパネルが断面L字状に形成されているから、フロントパネルの強度をより向上させることができる。(請求項4)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、
車体に前方への衝撃力が加わった場合に、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを防止することができながら、部品点数を少なくすることができ、軽量化できる車両用シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】組み付け状態のシートフレームとスライドレールの斜視図
図2図1のA矢視図
図3図1のB矢視図
図4】シートクッションとスライドレールの分解斜視図
図5】シートフレームの分解斜視図
図6】シート前方側に向かう力が加わった幼児拘束装置の作動を示す作用図(模擬試験の様子を示す作用図)
図7】比較例を示す図であり、組み付け状態のシートフレームとスライドレールの斜視図
図8】比較例を示す図であり、図7のC矢視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4に、乗員の大腿部及び臀部を支持する車両用シートのシートクッション1と、シートクッション1をシート前後方向にスライド移動自在に支持する左右一対のスライドレール2とを示してある。
【0016】
前記シートクッション1は、矩形の枠状のシートフレーム5と、シートフレーム5に載置されるシートクッションパッド6と、シートクッションパッド6を覆うシートクッショントリム7(表皮材)とから成る。このシートクッション1に幼児拘束装置(チャイルドシート)を装着可能に構成されている。シートクッションパッド6は発泡ウレタンで形成されている。
【0017】
[スライドレール2の構造]
前記スライドレール2は、車体フロアに取り付けられる下側の固定レール11と、固定レール11に対してスライド移動する上側の可動レール12とから成る。また、右側の可動レール12の後端部に側面視(シート幅方向視)三角形状のヒンジブラケット13が立設され、左側の可動レール12の後端部に側面視三角形状のリクライニングブラケット14が立設されている。
【0018】
ヒンジブラケット13とリクライニングブラケット14は第1連結パイプ85で連結されている。そして、第1連結パイプ85に、荷室のボードを支持する左右一対のブラケット16が溶接固着されている。ブラケット16は第1連結パイプ85から後ろ上方に延び、ブラケット16の長手方向中間部に環状の幼児拘束装置用アンカ17が溶接固着されている。幼児拘束装置用アンカ17はブラケット16の長手方向中間部から前上方に突出している。
【0019】
左右一対のスライドレール2には、固定レール11に対する可動レール12のスライド移動をロックするロック機構(図示せず)が設けられている。そして、ロック機構のロックを解除するための左右対称なロック解除ハンドル3が左右一対のスライドレール2に架け渡されている。
【0020】
図2にも示すように、ロック解除ハンドル3は、シート幅方向中央側の第1ハンドル部分3Aと、第1ハンドル部分3Aよりもシート幅方向外側W2に位置する左右一対の第2ハンドル部分3Bと、第2ハンドル部分3Bのシート幅方向外側W2の端部からシート後方側Rrに延びる第3ハンドル部分3Cとを備えている。
【0021】
前記第1ハンドル部分3Aはシート幅方向に沿い、乗員が把持する握り部に構成されている。第2ハンドル部分3Bは、シート幅方向外側W2ほどシート後方側Rrに位置するように、第1ハンドル部分3Aの端部から斜め後方に延びている。第3ハンドル部分3Cは、第2ハンドル部分3Bのシート後方側Rrの端部からシート後方側Rrに延びている。
【0022】
左右一対の第3ハンドル部分3Cの後端部(シート後方側Rrの端部)は横軸芯周りに回転自在に固定レール11に連結され、ロック機構によるロック時は、ロック解除ハンドル3は略水平姿勢を保っている。そして、乗員がロック解除ハンドル3を前記横軸芯周りに上方に回転させるとロック機構によるロックが解除される。
【0023】
[シートフレーム5の構造]
図1図4図5に示すように、前記シートフレーム5は、左右一対のサイドパネル21(サイドフレームに相当)と、左右一対のサイドパネル21の前端部に架け渡されてシートフレーム5の前面部を形成するフロントパネル22と、左右一対のサイドパネル21の前部に架け渡されたリンフォース23と、左右一対のサイドパネル21の後端部に架け渡された第2連結パイプ15とを備えている。
【0024】
[サイドパネル21の構造]
前記サイドパネル21のパネル面はシート幅方向を向いている。サイドパネル21の後端部21Bは、シート後方側Rrほど上方に位置するように後ろ上がりに傾斜するとともに、シート後方側Rrほど上下幅が狭く設定され、シートバックのヒンジ機構に連結される。
【0025】
そして、左右一対のサイドパネル21の前端部からシート幅方向内側W1に上側第1取り付けフランジ21F1が張り出し、一方の(左側の)サイドパネル21の前端部からシート幅方向内側W1に下側第1取り付けフランジ21F1が張り出している。また、左右一対のサイドパネル21の上端部からシート幅方向内側W1に第2取り付けフランジ21F2が張り出している。
【0026】
左右一対のサイドパネル21の長手方向中間部同士の間には波形の第1スプリングS1が架け渡されている。前記第2連結パイプ15は、平面視において、シート前方側Frが開放したハット状に折曲され、シート前後方向に沿う左右一対のパイプ部15S間に波形の第2スプリングS2が架け渡されている。
【0027】
[フロントパネル22の構造]
図1図3(a),図3(b),図4図5に示すように、フロントパネル22は断面L字状に形成されて、フロントパネル上壁28と、フロントパネル上壁28のシート前方側Frの端部から下方に延びるフロントパネル前壁24とから成る。これにより、フロントパネル22の強度を向上させることができる。
【0028】
フロントパネル上壁28とフロントパネル前壁24には、両壁24,28にわたる複数のビード25がシート幅方向に並設されている。これにより、フロントパネル22の強度をより向上させることができる。また、フロントパネル上壁28の後端部(シート後方側Rrの端部)から複数の第3取り付けフランジ28Fが波形状に立ち上がっている。さらに、フロントパネル前壁24のシート幅方向の端部から第4取り付けフランジ24F(図5参照)がシート後方側Rrに延びている。
【0029】
[リンフォース23の構造]
リンフォース23は、リンフォース上壁26と、リンフォース上壁26のシート前方側Frの端部から下方に延びるリンフォース前壁27とから成る。前記リンフォース23は、フロントパネル22よりもシート後方側Rrに位置し、シートクッション1に対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止する。
【0030】
図3(a),図3(b)に示すように、リンフォース前壁27は、下端部側ほどシート前方側Frに位置するように傾斜している。また、図3(a),図3(b),図5に示すように、リンフォース上壁26のシート幅方向の両端部26Aの間であって、かつ、シート後方側Rrの端部26K以外のリンフォース上壁部分26Bは、シート前方側Frほど上方に位置するように傾斜している。前記シート後方側Rrの端部26Kは後ろ上がりに傾斜し、頂部が上側に凸の断面円弧状に形成されている。リンフォース上壁26とリンフォース前壁27には複数の軽量用孔26H,27Hがシート幅方向に並設されている。
【0031】
さらに、後述の左右一対のチルト機構40が下方から各別に連結する左右一対の連結面31(図2図3(a),図3(b)参照)が、前記リンフォース上壁部分26Bのシート幅方向の両端部に形成されている。つまり、前記連結面31はシート前方側Frほど上方に位置するように前上がりに傾斜している。図2に示すように、前記連結面31と直交する方向から見て、前記連結面31はロック解除ハンドル3の第2ハンドル部分3Bよりも前外側に位置している。
【0032】
[サイドパネル21とフロントパネル22とリンフォース23の接合構造]
図1図3(a),図3(b),図5に示すように、リンフォース前壁27の下端部が、左右一対のサイドパネル21の上側第1取り付けフランジ21F1にシート前方側Frから重なって溶接固着されている。また、リンフォース前壁27の下端部がフロントパネル上壁28の第3取り付けフランジ28Fにシート後方側Rrから重なって溶接固着されている。さらに、リンフォース上壁26のシート幅方向の両端部26Aが、サイドパネル21の第2取り付けフランジ21F2に上側から重なって溶接固着されている。そして、フロントパネル22の第4取り付けフランジ24Fがサイドパネル21の下側第1取り付けフランジ21F1にシート前方側Frから重なって溶接固着されている。
【0033】
[チルト機構40の構造]
図3(a),図3(b),図4に示すように、スライドレール2の可動レール12とリンフォース上壁26との間にチルト機構40(デバイス機構に相当)が設けられている。このチルト機構40は、可動レール12とリンフォース23の間に介在するリンク機構41と、シートクッション1の前端部を昇降させる昇降手段(図示せず)とを備えている。このチルト機構40により、シートクッション1の座面角度を好みに合わせて調整する。
【0034】
図4に示すように、前記リンク機構41は、第1横軸芯O1周りに互いに回転自在に連結された下側リンク部材42と上側リンク部材43とから成る。上側リンク部材43の上端部43Aは残部43B(上端部以外の部分)に対しシート幅方向内側W1に折曲されている。すなわち、上側リンク部材43はL字状に形成されている。上側リンク部材43の上端部43Aはボルト挿通孔を備え、リンフォース上壁26の連結面31にボルトB・ナットN(図1参照)で連結されている。ナットNはリンフォース上壁26の上面に溶接固着されている。
【0035】
左右一対の下側リンク部材42には連結ロッド44が架け渡されている。そして、下側リンク部材42の下端部が、可動レール12の上面から立ち上がる支持ブラケット45に第2横軸芯O2周りに回転自在に連結されている。
【0036】
[比較例の構造]
図7図8に比較例の構造を示してある。
この比較例の構造においては、左右一対のサイドパネル21の前端部に、シートフレーム全体の強度を確保する強度部材としてのパイプ材60が架け渡されている。このパイプ材60により幼児拘束装置の前端部を受け止めて前記前端部の下方への沈み込みを阻止することも考えられる。しかしながら、幼児拘束装置のシート前後方向の長さは、シートクッション1のシート前後方向の長さよりも短くて、幼児拘束装置の前端部をパイプ材60で受け止めることができない。そのために、前記パイプ材60に加え、幼児拘束装置の沈み込みを阻止する帯板状のリンフォース88が左右一対のサイドパネル21の前部に架け渡されている。
この構造によれば、前記パイプ材60に加え、幼児拘束装置の沈み込みを阻止するリンフォース88を更に設けなければならならず、部品点数や重量が増加するという問題がある。
また、前記リンフォース88は、幼児拘束装置の前端にあわせて、パイプ材60よりもシート後方側Rrに配置されている。そのため、図8に示すように、ロック解除ハンドル3が邪魔になって、チルト機構のリンク機構をリンフォース88に連結するための工具をリンフォース88の連結部Xに到達させることができないという問題がある。
【0037】
これに対して、本発明の上記の構成によれば、
(1) 前記リンフォース23が、シートクッション1に対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止する。従って、車体に前方への衝撃力が加わって、シートクッション1に装着した幼児拘束装置に前方側(シート前方側Fr)への荷重が加わっても、幼児拘束装置の前端部がシートクッション1に対して沈み込むことを防止することができ、幼児拘束装置で幼児を安定して拘束することができる。
また、リンフォース23の前端部はフロントパネル22に固着されているから、リンフォース23が、シートフレーム5全体の強度を確保する強度部材としての機能も発揮する。これにより、左右一対のサイドパネル21の前端部に架け渡されていた強度部材としてのパイプ材を省くことができて、部品点数を少なくすることができ、軽量化することができる。
さらに、シートフレーム5の前部については、幼児拘束装置の前端部側が配置される位置からシートフレーム5の前面側にかけて、リンフォース23とフロントパネル22とで断面L字状の補強構造が形成される。その結果、前記補強構造が、下方及び後方が開口した箱形状となる。従って、リンフォース23とフロントパネル22がパネル材で形成されていても、前記補強構造に高い強度を備えさせることができ、前記補強構造をパイプ材で形成した場合に比べると、前記補強構造を軽量化することができる。
一方、前記パイプ材を省略した構造では新たな問題が生じる。すなわち、チルト機構40などのデバイス機構は、通常、前記パイプ材に固着されたブラケットに連結されている。従って、パイプ材を省略した構造の場合、前記リンフォース23にデバイス機構を連結することになる。しかしながら、デバイス機構に対する連結面を広く確保できるリンフォース23のメイン部(リンフォース上壁26)は、幼児拘束装置の前端部に合わせて、前記パイプ材が配置されていた箇所よりもシート後方側Rrに配置されている。そのために、リンフォース23へのチルト機構40の連結作業時にロック解除ハンドル3が邪魔になって、工具をリンフォース23の連結面側まで到達させることができないという問題が生じる。
これに対して、本発明の上記構成によれば、リンフォース23をフロントパネル22側まで延出してある。さらに、チルト機構40を連結するリンフォース23の連結面31は、シート前方側Frほど上方に位置するように前上がりに傾斜し(図3(a),図3(b)参照)、連結面31と直交する方向から見て、前記第2ハンドル部分3Bよりも前外側に前記連結面31が位置している(図2参照)。
従って、チルト機構40をリンフォース23の連結面31に連結する際に、工具の挿入スペースS(図2図3(a),図3(b)参照)を確保することができる。その結果、工具が第2ハンドル部分3Bに干渉することを回避することができ、工具をリンフォース23の連結面31側に下方から円滑に到達させることができる。これにより、リンフォース23の連結面31にチルト機構40を連結することができるようになる。つまり、チルト機構40のリンフォース23への組み付け性が損なわれることを回避することができ、組み付け性を確保することができる。
また、従来はパイプ材に固着したブラケットにチルト機構40を連結していたが、本発明の上記構成によれば、リンフォース23の連結面31にチルト機構40を連結しているので、前記ブラケットが不要となる。その結果、更なる部品点数の削減と軽量化と工数の削減とを図ることができる。
【0038】
(2) チルト機構40のリンク機構41をリンフォース23の直下に配置することができる。これにより、幼児拘束装置に前方に向かう荷重がかかった時に、シートクッション1に対する幼児拘束装置の前端部の沈み込み方向の荷重をリンク機構41が真下から受けることができる。
従って、リンク機構41が前記荷重を前記真下以外の箇所で受ける場合に比べて、リンク機構41にモーメント荷重がかからないので、リンク機構41の負担を軽減でき、チルト機構40の耐久性を向上させることができる。
【0039】
(3) 前記リンフォース上壁26とリンフォース前壁27によりL字状の断面形状を形成できて、リンフォース23の強度を向上させることができる。しかも、リンフォース前壁27は下端部側ほどシート前方側Frに位置するように傾斜しているから、例えば、幼児拘束装置の前端部がシートクッション1に対して沈み込もうとして、リンフォース23に前側への回転方向の荷重が加わった場合、前記リンフォース前壁27がフロントパネル22に対してより突っ張りやすくなる。これにより、シートクッション1の前端部の沈み込みに対するリンフォース23の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 シートクッション
2 スライドレール
3 ロック解除ハンドル
3A 第1ハンドル部分
3B 第2ハンドル部分
5 シートフレーム
21 サイドフレーム(サイドパネル)
22 フロントパネル
23 リンフォース
24 フロントパネル前壁
26 リンフォース上壁
27 リンフォース前壁
28 フロントパネル上壁
31 連結面
40 デバイス機構(チルト機構)
41 リンク機構
42 下側リンク部材
43 上側リンク部材
43A 上側リンク部材の上端部
Fr シート前方側
Rr シート後方側
O1 横軸芯(第1横軸芯)
O2 横軸芯(第2横軸芯)
W1 シート幅方向内側
W2 シート幅方向外側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8