【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、車体に前方への衝撃力が加わった場合に、シートクッションの一定以上の変形を阻止できるものの、幼児拘束装置に加わる前方への引っ張り荷重で幼児拘束装置の前端部がシートクッションに対して沈み込む現象が生じていた。
すなわち、
図6の模擬試験の様子に示すように、幼児拘束装置90は後側の下端部がシートクッション1に固定される(符号9はシートバック、100は車両用シートを示す)。そのために、幼児拘束装置90に前方Zへの荷重が加わった場合、幼児拘束装置90がシートクッション1への固定部Pを中心として前側(白抜き矢印G方向)に回転する。そのために、幼児拘束装置90の前端部がシートクッション1に対して沈み込む。
一般に、シートフレームは左右一対のサイドフレームを備え、左右一対のサイドフレームの前端部に、シートフレーム全体の強度を確保する強度部材としてのパイプ材が架け渡されている。このパイプ材により幼児拘束装置の前端部を受け止めて、シートクッションに対する前記前端部の下方への沈み込みを阻止することも考えられる。
しかしながら、幼児拘束装置のシート前後方向の長さは、シートクッションのシート前後方向の長さよりも短くて、幼児拘束装置の前端部をパイプ材で受け止めることができない。
そのために、上記の沈み込み現象を回避するには、前記パイプ材に加え、幼児拘束装置の沈み込みを阻止する強度部材(
図6の符号88の部品)をシートフレームに更に設けなければならなかった。その結果、部品点数や重量が増加していた。
本発明の目的は、車体に前方への衝撃力が加わった場合に、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを防止することができながら、部品点数を少なくすることができ、軽量化できる車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
幼児拘束装置を装着可能なシートクッションと、
前記シートクッションをシート前後方向にスライド移動自在に支持する左右一対のスライドレールとを備えている車両用シートであって、
前記スライドレールのスライド移動をロックするロック機構が前記左右一対のスライドレールに設けられ、
前記ロック機構のロックを解除するロック解除ハンドルが前記左右一対のスライドレールに架け渡され、
前記ロック解除ハンドルは、シート幅方向中央側の第1ハンドル部分と、前記第1ハンドル部分よりもシート幅方向外側に位置し、シート幅方向外側ほどシート後方側に位置するように、前記第1ハンドル部分の端部から斜め後方に延びる第2ハンドル部分とを備え、
前記シートクッションのシートフレームは、左右一対のサイドフレームと、
前記左右一対のサイドフレームの前端部に架け渡されて前記シートフレームの前面部を形成するフロントパネルと、
前記フロントパネルよりもシート後方側に位置する状態に前記左右一対のサイドフレームの前部に架け渡され、前記シートクッションに対する前記幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止するリンフォースとを備え、
前記リンフォースの前端部は前記フロントパネルに固着され、
デバイス機構が下方から連結する連結面が前記リンフォースに設けられ、
前記連結面はシート前方側ほど上方に位置するように前上がりに傾斜し、
前記連結面と直交する方向から見て、前記第2ハンドル部分よりも前外側に前記連結面が位置している点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成によれば、シートフレームのリンフォースが、シートフレームの前面部を形成するフロントパネルよりもシート後方側に位置する状態に左右一対のサイドフレームの前部に架け渡されている。そして、前記リンフォースが、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の下方への沈み込みを阻止する。従って、車体に前方への衝撃力が加わって、シートクッションに装着した幼児拘束装置に前方側への荷重が加わっても、幼児拘束装置の前端部がシートクッションに対して沈み込むことを防止することができ、幼児拘束装置で幼児を安定して拘束することができる。
また、リンフォースの前端部はフロントパネルに固着されているから、リンフォースが、シートフレーム全体の強度を確保する強度部材としての機能も発揮する。これにより、左右一対のサイドフレームの前端部に架け渡されていた強度部材としてのパイプ材を省くことができて、部品点数を少なくすることができ、軽量化することができる。
さらに、シートフレームの前部については、幼児拘束装置の前端部側が配置される位置からシートフレームの前面側にかけて、リンフォースとフロントパネルとで断面L字状の補強構造が形成される。その結果、前記補強構造が、下方及び後方が開口した箱形状となる。従って、リンフォースとフロントパネルがパネル材で形成されていても、前記補強構造に高い強度を備えさせることができ、前記補強構造をパイプ材で形成した場合に比べると、前記補強構造を軽量化することができる。
一方、前記パイプ材を省略した構造では新たな問題が生じる。すなわち、チルト機構などのデバイス機構は、通常、前記パイプ材に固着されたブラケットに連結されている。従って、パイプ材を省略した構造の場合、前記リンフォースにデバイス機構を連結することになる。しかしながら、デバイス機構に対する連結面を広く確保できるリンフォースのメイン部は、幼児拘束装置の前端部に合わせて、前記パイプ材が配置されていた箇所よりもシート後方側に配置されている。そのために、リンフォースへのデバイス機構の連結作業時にロック解除ハンドルが邪魔になって、工具をリンフォースの連結面側まで到達させることができないという問題が生じる。
これに対して、本発明の上記構成によれば、リンフォースをフロントパネル側まで延出してある。さらに、デバイス機構が下方から連結するリンフォースの連結面は、シート前方側ほど上方に位置するように前上がりに傾斜し、前記連結面と直交する方向から見て、前記第2ハンドル部分よりも前外側に前記連結面が位置している。
従って、デバイス機構をリンフォースの連結面に下方から連結する際に、工具の挿入スペースを確保することができる。その結果、工具が前記第2ハンドル部分に干渉することを回避することができ、工具をリンフォースの連結面側に円滑に到達させることができる。これにより、リンフォースの連結面にデバイス機構を連結することができるようになる。つまり、デバイス機構のリンフォースへの組み付け性が損なわれることを回避することができ、組み付け性を確保することができる。
また、従来はパイプ材に固着したブラケットに前記デバイス機構を連結していたが、本発明の上記構成によれば、リンフォースの連結面にデバイス機構を連結しているので、前記ブラケットが不要となる。その結果、更なる部品点数の削減と軽量化と工数の削減とを図ることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記デバイス機構は、前記スライドレールと前記リンフォースの間に介在するリンク機構と、前記シートクッションの前端部を昇降させる昇降手段とを備えたチルト機構であり、
前記リンク機構は、横軸芯周りに互いに回転自在に連結された下側リンク部材と上側リンク部材とから成り、
前記下側リンク部材の下端部が前記スライドレールに横軸芯周りに回転自在に連結され、
前記上側リンク部材の上端部が前記リンフォースの連結面に連結されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
チルト機構によりシートクッションの座面角度を好みに合わせて調整することができる。
また、前記チルト機構のリンク機構をリンフォースの直下に配置することができる。これにより、幼児拘束装置に前方に向かう荷重がかかった時に、シートクッションに対する幼児拘束装置の前端部の沈み込み方向の荷重をリンク機構が真下から受けることができる。
従って、リンク機構が前記荷重を前記真下以外の箇所で受ける場合に比べて、リンク機構にモーメント荷重がかからないので、リンク機構の負担を軽減でき、チルト機構の耐久性を向上させることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記リンフォースは、リンフォース上壁と、リンフォース上壁のシート前方側の端部から下方に延びるリンフォース前壁とから成り、
前記リンフォース前壁が下端部側ほどシート前方側に位置するように傾斜し、
前記リンフォース前壁の下端部が前記フロントパネルに固着されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記リンフォース上壁とリンフォース前壁によりL字状の断面形状を形成できて、リンフォースの強度を向上させることができる。しかも、前記リンフォース前壁は下端部側ほどシート前方側に位置するように傾斜しているから、例えば、幼児拘束装置の前端部がシートクッションに対して沈み込もうとして、リンフォースに前側への回転方向の荷重が加わった場合、前記リンフォース前壁がフロントパネルに対してより突っ張りやすくなる。これにより、シートクッションの前端部の沈み込みに対するリンフォースの強度を向上させることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記フロントパネルは断面L字状に形成されて、フロントパネル上壁と、フロントパネル上壁のシート前方側の端部から下方に延びるフロントパネル前壁とから成ると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記フロントパネルが断面L字状に形成されているから、フロントパネルの強度をより向上させることができる。(請求項4)