特許第5930310号(P5930310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930310
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】電子弦楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20160526BHJP
   G10D 3/04 20060101ALI20160526BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   G10H1/00 A
   G10D3/04
   G10D1/08 100
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-258172(P2012-258172)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-106312(P2014-106312A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】出嶌 達也
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−012299(JP,U)
【文献】 特開昭59−176783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/08
G10H 1/00
G10D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器本体と、
前記楽器本体上に張設される導電性を有する複数の弦と、
前記楽器本体に設けられ、前記複数の弦の各一端部がそれぞれ挿入して取り付けられる複数の弦取付孔が形成された導電性ブリッジ本体と、
前記ブリッジ本体上に前記複数の弦それぞれに対応して配置され前記複数の弦をそれぞれ支持する複数の絶縁性ブリッジ駒と、
前記弦が挿入可能な小径孔部を有するとともに、前記複数の弦それぞれの一端部が前記小径孔部に挿入された状態で前記ブリッジ本体の前記複数の弦取付孔にそれぞれ挿入して配置された複数の絶縁チューブと、
前記複数の弦それぞれの一端部に取り付けられ、前記複数の絶縁チューブそれぞれが有する小径孔部より径の大きい複数の導電性エンドボールと、
前記楽器本体に設けられ、前記複数の導電性エンドボールそれぞれを介して前記各弦に対して電気信号を供給すると共に、前記複数の弦がそれぞれ導電性を有する複数のフレットのいずれかに押し付けられて導通したかを検知することにより、発音すべき楽音の音高を決定する音高決定部と、
を備えていることを特徴とする電子弦楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子弦楽器において、前記複数の絶縁チューブの内部にそれぞれ設けられて前記複数の弦にそれぞれ導通する複数の導電部と、これら複数の導電部にそれぞれ接続される複数の接続ケーブルとをさらに有し、前記複数の弦それぞれに対して、対応する前記複数の接続ケーブル及び複数の導電部それぞれを介して電気信号を供給することを特徴とする電子弦楽器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記複数の絶縁チューブそれぞれには、前記小径孔部より径が大きく前記導電性エンドボールが挿入可能な大径孔部がさらに形成されていることを特徴とする電子弦楽器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子弦楽器において、前記小径孔部と大径孔部との間にテーパ部を形成したことを特徴とする電子弦楽器。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の電子弦楽器において、導電性ブリッジ本体に形成された複数の弦取付孔それぞれには、前記絶縁チューブの前記小径孔部が形成された部分が挿入可能でかつ、前記大径孔部より径の小さい小径孔部が形成されていることを特徴とする電子弦楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギター、マンドリン、ウクレレ、三味線などの電子弦楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子ギターにおいては、特許文献1に記載されているように、ギター本体を胴部とネックとで構成し、胴部に複数の楽音トリガー弦を張り渡し、ネックに設けられた指板上にも同じ数のフレット弦を張り渡した構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−29193号公報
【0004】
このような電子ギターは、胴部に張り渡された複数の楽音トリガー弦にそれぞれ楽音トリガースイッチが設けられ、複数のフレット弦が張り渡されるネックの指板上に音高指定スイッチが設けられた構成になっている。楽音トリガースイッチは、楽音トリガー弦の振動を電気信号として検出するように構成されている。
【0005】
また、音高指定スイッチは、フレット弦の張り渡し方向に沿って複数のフレット部を有するゴムシートと、このゴムシートの下面に設けられた導電性シートと、この導電性シートの下面に設けられたスペーサシートと、このスペーサシートの下面に設けられて複数の接点電極を有する配線基板とを備えている。
【0006】
これにより、この音高指定スイッチは、フレット弦を指で押してフレット部の間に位置するゴムシートを押し下げると、ゴムシートが弾性変形して導電性シートを押し下げ、この導電シートがスペーサシートの開口部を通して配線基板の接点電極に接触し、この接触した導電シートが接点電極同士を導通させることにより、押弦位置に応じた音高を電気信号として出力するように構成されている。
【0007】
このような電子ギターは、ネックの指板上に張り渡された複数のフレット弦を指で押さえながら、胴部に張り渡された複数の楽音トリガー弦を指で弾くと、指板上の音高指定スイッチが押弦位置に応じた音高を電気信号として出力すると共に、胴部の楽音トリガースイッチが楽音トリガー弦の弦振動を電気信号として出力することにより、指定された音高で弦振動に応じた楽音を発生するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような電子ギターでは、複数の楽音トリガー弦が胴部に張り渡され、複数のフレット弦がネックに設けられた指板上にも張り渡されていることにより、本来連続している各弦が分割されているため、フレット弦を指で押さえながら楽音トリガー弦を指で弾いて演奏する際に、楽音トリガー弦の弦振動がフレット弦に伝わらず、演奏に違和感が生じるという問題がある。
【0009】
すなわち、この電子ギターでは、演奏者が演奏する際に、指で押さえているフレット弦と、指で弾いている楽音トリガー弦とが、位置ずれして、一直線上に対応していないと、楽音トリガー弦の弦振動がフレット弦に伝わらないため、演奏者がフレット弦と楽音トリガー弦との位置ずれに気付かずに演奏してしまい、誤った楽音を発生するという問題がある。
【0010】
また、この電子ギターでは、ネックの指板上に張り渡されたフレット弦を指で押える際に、音高指定スイッチのゴムシートが弾性変形して押し下げられるので、フレット弦を強い力で押え付けなければ、フレット弦を指で確実に押えることができず、このため演奏に違和感が生じるばかりか、弦の操作性が悪いという問題もある。
【0011】
そこで、このような問題を解消するために、導電性を有する複数の弦を複数の楽音トリガー弦と複数のフレット弦とに分割せずに連続させてギター本体の胴部とネックとに張り渡すと共に、音高指定スイッチの複数のフレットを金属で形成し、複数の弦に電流を流した状態で、複数の弦を押弦操作して複数のフレットのいずれかに導通させることにより、音高を検出するように構成した電子ギターが検討されている。
【0012】
しかし、このような電子ギターでは、複数の弦の張力が高くなるため、ギター全体の強度を高める必要が生じ、これに伴って複数の弦の各一端部が取り付けられるブリッジ部を強度の高い金属で形成する必要があるが、ブリッジ部を金属で形成すると、複数の弦が相互に導通してしまうため、正確に音高を検出することができず、正しい楽音を発生させることができないという問題が生じる。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、弦の操作に違和感なく、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる電子弦楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、楽器本体と、前記楽器本体上に張設される導電性を有する複数の弦と、 前記楽器本体に設けられ、前記複数の弦の各一端部がそれぞれ挿入して取り付けられる複数の弦取付孔が形成された導電性ブリッジ本体と、前記ブリッジ本体上に前記複数の弦それぞれに対応して配置され前記複数の弦をそれぞれ支持する複数の絶縁性ブリッジ駒と、 前記弦が挿入可能な小径孔部を有するとともに、前記複数の弦それぞれの一端部が前記小径孔部に挿入された状態で前記ブリッジ本体の前記複数の弦取付孔にそれぞれ挿入して配置された複数の絶縁チューブと、前記複数の弦それぞれの一端部に取り付けられ、前記複数の絶縁チューブそれぞれが有する小径孔部より径の大きい複数の導電性エンドボールと、 前記楽器本体に設けられ、前記複数の導電性エンドボールそれぞれを介して前記各弦に対して電気信号を供給すると共に、前記複数の弦がそれぞれ導電性を有する複数のフレットのいずれかに押し付けられて導通したかを検知することにより、発音すべき楽音の音高を決定する音高決定部と、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、楽器本体に張り渡された弦を指で押えながら、同じ弦を弾いて演奏することができると共に、指で押えられた弦を導電性を有するフレットに押し付けることができるので、違和感なく弦の操作ができるほか、複数の弦の各一端部が取り付けられるブリッジ部の強度を高めるため、ブリッジ部を導電性を有する金属で形成しても、絶縁部によって複数の弦とブリッジ部とを絶縁することができるので、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明を電子ギターに適用した第1実施形態を示した正面図である。
図2図1に示された電子ギターのネックを示した一部破断した要部の拡大斜視図である。
図3図2に示された指板の一部を断面で示した要部の拡大斜視図である。
図4図1に示された電子ギターのブリッジ部を示した拡大断面図である。
図5図4に示されたブリッジ部を分解して示した拡大断面図である。
図6図4に示されたブリッジ部のブリッジ駒および弦を示し、その弦の絶縁チューブの一部を破断して示した拡大斜視図である。
図7図1に示された電子ギターの回路構成を示したブロック図である。
図8図7に示された押弦センサを示した回路図である。
図9図6に示された電子ギターの第1実施形態における接続部の変形例を示した一部破断した拡大斜視図である。
図10】この発明を電子ギターに適用した第2実施形態において、電子ギターのブリッジ部を示した拡大断面図である。
図11図10に示されたブリッジ部を分解して示した拡大断面図である。
図12図10に示されたブリッジ部のブリッジ駒および弦を示した拡大斜視図である。
図13図10に示されたブリッジ部において、ブリッジ駒の一部を取り外して導電板の一部を露呈させた状態を示した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、図1図8を参照して、この発明を電子ギターに適用した第1実施形態について説明する。
この電子ギターは、図1に示すように、ギター本体1を備えている。このギター本体1は、胴部2とネック3とで構成されている。また、このギター本体1は、複数(この実施形態では6本の)の弦4が、胴部2およびネック3に亘って張り渡されるように構成されている。
【0018】
この場合、胴部2のほぼ中央部には、図1に示すように、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5が設けられている。このブリッジ部5の近傍には、複数の弦4の各弦振動を電気信号として検出するピックアップ部6が設けられている。また、胴部2には、電子回路部7および表示部8が設けられている。電子回路部7は、電子ギターに必要な各種の電子部品を備えている。表示部8は、電子ギターによる演奏に必要な各種の情報を表示するように構成されている。
【0019】
一方、ネック3の先端部(図1では右端部)には、図1に示すように、弦支持部9を介してヘッド10が設けられている。弦支持部9は、複数の弦4を等間隔で支持するように構成されている。ヘッド10には、複数の弦4の各他端部4bがそれぞれ弦張調整可能に取り付けられる複数のペッグ11が設けられている。これにより、複数の弦4は、胴部2のブリッジ部5とヘッド10との間に張り渡されるように構成されている。これら複数の弦4は、それぞれ導電性を有する線材であり、電気抵抗をもって電流が流れるように構成されている。
【0020】
また、ネック3には、図1および図2に示すように、指板12が胴部2とヘッド10との間に設けられている。この指板12は、木製または合成樹脂製の帯状板であり、複数の弦4の張り渡し方向、つまりネック3の長手方向に沿って複数(この実施形態では22個)のフレット13が所定間隔で設けられている。これら複数のフレット13は、それぞれ銅や洋銀などの電気抵抗の小さい金属で形成され、図3に示すように、指板12に設けられた複数の取付孔12aにそれぞれ取り付けられている。
【0021】
すなわち、このフレット13は、図2および図3に示すように、半円柱状に形成されたフレット本体部13aと、このフレット本体部13aの平面である下面に設けられた足部13bとを有し、この足部13bが指板12の取付孔12aに打ち込まれて抜け止めされた状態で取り付けられるように構成されている。この場合、指板12の取付孔12aは、指板12の上下に貫通するスリット状の長孔であり、複数の弦4の張り渡し方向に対して直交する方向である弦4の配列方向、つまりネック3の長手方向と直交する方向に沿って設けられている。
【0022】
これにより、フレット13は、図2および図3に示すように、足部13bが指板12の上方から取付孔12aに打ち込まれて、フレット本体部13aが指板12の上面に突出した状態で、指板12に取り付けられることにより、フレット本体部13aの円弧面である上面に複数の弦4がそれぞれ押し付けられるように構成されている。
【0023】
また、この指板12とネック3との間には、図2および図3に示すように、一対の配線基板14が設けられている。この場合、指板12の下面には、一対の基板収納部12bがネック3の長手方向に沿って並列に設けられている。一対の配線基板14は、それぞれ帯状の細長い板であり、指板12の一対の基板収納部12b内に収納された状態で、ネック3上に配置されるように構成されている。
【0024】
また、一対の配線基板14の上面には、図2および図3に示すように、複数の電極パッド15が複数のフレット13にそれぞれ対応して設けられている。また、これら一対の配線基板14の上面には、複数の電極パッド15をそれぞれ配線基板14の一端部、つまり胴部2側に位置する端部に導くための複数の配線パターン16が設けられている。これら複数の配線パターン16は、配線基板14の端部に設けられたコネクタ17に接続され、このコネクタ17を介して胴部2内の電子回路部7と電気的に接続されている。
【0025】
また、複数のフレット13と複数の電極パッド15との間には、図3に示すように、その両者をそれぞれ電気的に接続する複数の弾性導電部材18が設けられている。この弾性導電部材18は、導電性を有するゴム、あるいは導電ゴムと絶縁ゴムとを交互に張り合わせたゼブラタイプのインターコネクタなどからなり、フレット13と電極パッド15とに弾力的に接触して、その両者を電気的に接続するように構成されている。
【0026】
このような複数の電極パッド15を有する配線基板14、複数の弾性導電部材18、複数のフレット13、および複数の弦4によって、音高検出部である押弦センサ19が構成されている。すなわち、この押弦センサ19は、図2および図3に示すように、弦4が押されてフレット13に押し付けられると、この押された弦4とフレット13とが電気的に導通すると共に、このフレット13が配線基板14の電極パッド15に弾性導電部材18を介して導通するように構成されている。
【0027】
これにより、押弦センサ19は、図2および図3に示すように、押された弦4と、この弦4が導通するフレット13に対応する電極パッド15とによって、押弦位置に対応する音高を電気信号として検出するように構成されている。この場合、ネック3の内部には、図2に示すように、ネック3の反りを調整するための反り調整部材20が設けられている。すなわち、ネック3には、その下部から内部に向けて切り込まれた切込溝21が、ネック3の長手方向に沿って設けられている。
【0028】
反り調整部材20は、ネック3の切込溝21内に配置された状態で、両端部がネック3の両端部に締め付け可能に取り付けられている。これにより、反り調整部材20は、図2に示すように、その両端部の締め付けを調整することにより、ネック3の反りを調整するように構成されている。また、この切込溝21は、その下部に蓋部材22が嵌め込まれることにより、反り調整部材20が外部から見えないように、蓋部材22によって塞がれるように構成されている。
【0029】
ところで、複数の弦4の各一端部4a(図1では左端部)が取り付けられるブリッジ部5は、図1および図4に示すように、胴部2の中央部に設けられたブリッジ孔23内に配置されるブリッジ本体24と、このブリッジ本体24上に複数の弦4それぞれに対応して配置された複数のブリッジ駒25とを備えている。
【0030】
ブリッジ本体24は、図4および図5に示すように、金属製のブリッジブロック26と金属製のブリッジベース27とを有している。ブリッジブロック26は、胴部2のブリッジ孔23内に配置されて、胴部2から上方に突出するように構成されている。また、ブリッジベース27は、胴部2から上方に突出したブリッジブロック26上にビス27bによって取り付けられている。
【0031】
また、ブリッジ本体24は、図4および図5に示すように、ブリッジブロック26の下部にばね部材28が取り付けられ、このばね部材28のばね力によってネック3側(図4では左端部)に向けて付勢された状態で、ブリッジベース27の先端部27aつまりネック3側に位置する先端部27aが胴部2上に設けられたピン部材29に押し当てられていることにより、胴部2のブリッジ孔23内にブリッジブロック26が浮いた状態で揺動可能に取り付けられている。
【0032】
この場合、ブリッジ本体24には、図1に示すように、トレモロアーム30が取り付けられている。このトレモロアーム30は、これを操作して、ブリッジ本体24を弦4の張り渡し方向およびこれと直交する方向に揺動させることにより、複数の弦4の張力を変化させて、効果音を付加させるように構成されている。なお、胴部2の下部には、ブリッジ孔23を塞ぐ裏蓋23aが取り付けられている。
【0033】
一方、複数のブリッジ駒25は、図4図6に示すように、それぞれ板状の駒本体31と、この駒本体31の前端部(図4では左端部)に設けられた山形状の弦支持部32と、駒本体31の後端部(図4では右端部)に設けられた板状の突起部33とを備え、ブリッジベース27上に配置されるように構成されている。これら複数のブリッジ駒25は、ユリア樹脂などの絶縁性を有する合成樹脂によって形成され、複数の弦4が相互に導通しないように構成されている。
【0034】
また、このブリッジ駒25の弦支持部32には、図4図6に示すように、弦高調整ねじ35が取り付けられている。この弦高調整ねじ35は、この実施形態においては樹脂で形成されており、弦支持部32にその上部から下部に突き抜けた状態で螺合している。これにより、弦高調整ねじ35は、これを回して弦高調整ねじ35の下端部をブリッジ駒25の下側に出没させることにより、ブリッジベース27上においてブリッジ駒25を上下に変位させて弦4の音を調整するように構成されている。
【0035】
また、ブリッジ駒25の突起部33には、図4図6に示すように、オクターブ調整ねじ36が取り付けられている。このオクターブ調整ねじ36は、ブリッジベース27の取付部37に設けられた挿入孔37aを通して、ブリッジ駒25の突起部33に設けられたねじ孔33aに螺合している。この場合、オクターブ調整ねじ36の外周には、コイルばね38がブリッジ駒25の突起部33とブリッジベース27の取付部37との間に位置して設けられている。
【0036】
このコイルばね38は、図4に示すように、ブリッジ駒25の突起部33を前側(図4では左側)に向けて押し出す方向に付勢することにより、オクターブ調整ねじ36の頭部36aをブリッジベース27の取付部37の外面(図4では右側)に押し付けるように構成されている。このため、ブリッジ駒25の突起部33とブリッジベース27の取付部37とは、コイルばね38のばね力によって互いに離れる方向に付勢されている。
【0037】
これにより、オクターブ調整ねじ36は、図4に示すように、これを回すと、頭部36aがブリッジベース27の取付部37に当接した状態で回転すると共に、先端のねじ部がブリッジ駒25の突起部33のねじ孔33a内を回転しながら螺旋移動することにより、ブリッジ駒25をブリッジベース27の前後方向(図4では左右方向)に移動させるように構成されている。
【0038】
すなわち、オクターブ調整ねじ36は、図4に示すように、これを回してブリッジ駒25の突起部33を前側(図4では左側)に向けて押し出す際に、コイルばね38のばね力によってブリッジ駒25が前側に移動して弦4のオクターブを下げる方向に調整するように構成されている。
【0039】
また、このオクターブ調整ねじ36は、図4に示すように、これを回してブリッジ駒25の突起部33をコイルばね38のばね力に抗して後側(図4では右側)に向けて引き寄せると、ブリッジ駒25が後側に移動して弦4のオクターブを上げる方向に調整するように構成されている。
【0040】
ところで、複数の弦4は、図4図6に示すように、その各一端部4aがブリッジ駒25の駒本体31の弦挿入孔31a、およびブリッジベース27の弦挿入孔27cを通して、ブリッジブロック26の弦取付孔39内にそれぞれ挿入された状態で、取り付けられるように構成されている。
【0041】
この場合、複数の弦4の各一端部4aには、図4図6に示すように、導電性を有するエンドボール40がそれぞれ取り付けられている。また、複数の弦4の各一端部4aは、絶縁チューブ41を介してブリッジブロック26の弦取付孔39内にそれぞれ挿入されていることにより、ブリッジブロック26およびブリッジベース27に接触して導通しないように構成されている。
【0042】
この場合、ブリッジブロック26の弦取付孔39は、図4および図5に示すように、上部が小径孔39aに形成され、下部が大径孔39bに形成され、中間部が中径孔39cに形成され、小径孔39aと中径孔39cとの境に小径テーパ部39dがくびれた状態で形成され、中径孔39cと大径孔39bとの境に大径テーパ部39eがくびれた状態で形成されている。
【0043】
絶縁チューブ41は、塩化ビニル樹脂(PVC)などの絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。この絶縁チューブ41は、図4図6に示すように、ブリッジブロック26の弦取付孔39と同様、弦4が挿入する小径孔部41aと、エンドボール40が挿入する大径孔部41bと、その中間に位置する中径孔部41cとを有し、小径孔部41aと中径孔部41cとの境に小径テーパ部41dがくびれた状態で形成され、中径孔部41cと大径孔部41bとの境に大径テーパ部41eがくびれた状態で形成されている。
【0044】
これにより、絶縁チューブ41は、図4および図5に示すように、大径孔部41bがブリッジブロック26の弦取付孔39の大径孔39b内に挿入されて、大径テーパ部41eがブリッジブロック26の弦取付孔39の大径テーパ部39eに当接し、中径孔部41cがブリッジブロック26の弦取付孔39の中径孔39c内に挿入されて、小径テーパ部41dがブリッジブロック26の弦取付孔39の小径テーパ部39dに当接した状態で、小径孔部41aがブリッジブロック26の弦取付孔39の小径孔39aおよびブリッジベース27の弦挿入孔27cに挿入されるように構成されている。
【0045】
また、この絶縁チューブ41の内部には、図4図6に示すように、導電チューブ42が設けられている。この導電チューブ42は、弦4の一端部4aが挿入する弦挿入部42aと、この弦挿入部42aの下端部に設けられた広口のテーパ部42bとを有し、弦挿入部42aが絶縁チューブ41の中径孔部41cに挿入し、広口のテーパ部42bが絶縁チューブ41の大径テーパ部41eに当接した状態で、絶縁チューブ41内に配置されるように構成されている。
【0046】
これにより、導電チューブ42は、図4図6に示すように、絶縁チューブ41内に配置された状態で、絶縁チューブ41の大径孔部41b内にエンドボール40が挿入されると、このエンドボール40が導電チューブ42のテーパ部42bに当接することにより、エンドボール40と導通するように構成されている。
【0047】
さらに、この導電チューブ42は、図5図6に示すように、その下端部に接続ケーブル43が半田またはカシメによって接合され、この接続ケーブル43によって電子回路部7と電気的に接続されていることにより、導電チューブ42に電流が供給されるように構成されている。これにより、複数の弦4は、それぞれ導電チューブ42に供給された電流がエンドボール40を介して流れるように構成されている。
【0048】
この場合、複数の弦4は、図4および図5に示すように、絶縁チューブ41によってブリッジ部5のブリッジ本体24に接触することがなく、ブリッジブロック26の弦取付孔39、ブリッジベース27の弦挿入孔27c、およびブリッジ駒25の駒本体31の弦挿入孔31aを通り、ブリッジ駒25の弦支持部32上に押し付けられた状態で、相互に導通することなく、張り渡されるように構成されている。
【0049】
次に、図7に示されたブロック図を参照して、この電子ギターの回路構成について説明する。
この電子ギターの回路構成は、回路全般を制御するCPU(中央演算処理装置)45と、予め定められたプログラムおよび入力されたデータを格納するメモリ部46と、音量、音色、モード切替などの各種スイッチを備えた操作スイッチ部47と、複数の弦4の押弦位置を検知する押弦センサ19と、複数の弦4の弾弦操作による弦振動を電気信号として検出するピックアップ部6とを備えている。
【0050】
CPU45は、この実施形態においては、押弦センサ19により検知された押弦位置により発音すべき楽音の発音開始時の音高を決定する。また、CPU45は、ピックアップ部6からの弦振動に基づいて楽音の発音タイミングおよび発音されている楽音の音高を制御する。
【0051】
また、この電子ギターの回路構成は、CPU45からの指令に基づいて各種の情報を表示する表示部8と、CPU45からの音高および発音タイミング指令に基づいて楽音データを生成する音源部48と、この音源部48で生成された楽音データに対してエフェクトを付加するエフェクト部49と、このエフェクト部49でエフェクトの付加された楽音データをアナログ信号に変換してオーディオ機器に出力するD/A変換部50と、CPU45からの指令に基づいて外部機器との間でデータの授受を行うインターフェイス(I/F)51とを備えている。
【0052】
この場合、押弦センサ19は、図8に示すように、複数(6本)の弦4と複数(22個)のフレット13とでXY座標のマトリクススイッチが構成され、このXY座標のスイッチスキャンを行うことにより、複数の弦4の押弦位置に応じたスイッチ信号を出力するように構成されている。すなわち、この押弦センサ19は、複数のフレット13に対応する複数の電極パッド15それぞれから時分割に順次出力された出力信号に基づいてX座標に対応するX座標信号を出力するX信号制御部52と、複数の弦4それぞれから時分割に順次出力される出力信号に基づいてY座標に対応するY座標信号を出力するY信号制御部53とを有している。
【0053】
これにより、押弦センサ19は、複数の弦4のいずれかが押されて複数のフレット13のいずれかに押し付けられると、押し付けられた弦4とフレット13とが導通し、これに対応する配線基板14の電極パッド15と弦4とに電流が流れて、弦4が導通したフレット13のX座標位置がX信号制御部52によって指定されると共に、フレット13に導通した弦4のY座標位置がY信号制御部53によって指定され、これにより押弦された弦4およびこれに対応するフレット13のXY座標位置が指定されるように構成されている。
【0054】
すなわち、この押弦センサ19は、押弦された弦4およびこれに対応するフレット13のXY座標位置が指定されると、X信号制御部52が指定されたフレット13のX座標に対応する位置信号を出力すると共に、Y信号制御部53が指定された弦4のY座標に対応する位置信号を出力し、これにより押弦位置に対応する音高をXY座標位置として検出して出力するように構成されている。
【0055】
次に、このような電子ギターの作用について説明する。
この電子ギターで演奏する際には、アコースティックギターと同様、ネック3の指板12に張設された複数の弦4を指で押えて複数のフレット13のいずれかに押し付けながら、このフレット13に対応する弦4を弾く。このときには、押弦センサ19によって押弦位置に対応する音高が検出され、ピックアップ部6によって押された弦4の弦振動が検出され、これらに基づいて楽音が発生される。
【0056】
すなわち、押弦センサ19は、複数の弦4のいずれかが押されて複数のフレット13のいずれかに押し付けられると、弦4とフレット13とが導通し、これに対応する配線基板14の電極パッド15と弦4とに電流が流れる。これにより、弦4が導通したフレット13のX座標位置がX信号制御部52によって指定されると共に、フレット13に導通した弦4のY座標位置がY信号制御部53によって指定され、これにより音高情報が決定される。
【0057】
また、ピックアップ部6は、フレット13に導通した弦4が弾かれると、その弾かれた弦4の振動を検出する。そして、押弦センサ19によって決定された音高情報と、ピックアップ部6によって検出された弦振動情報とによって、CPU45が音源部48に指令を与えて音源データを生成させ、この音源データに基づいてエフェクト部49で楽音データを生成させてオーディオ機器に出力し、楽音を発生させる。
【0058】
このように、この電子ギターによれば、胴部2およびネック3を有するギター本体1上に張設される導電性を有する複数の弦4と、ギター本体1の胴部2に設けられて複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5と、ギター本体1のネック3に設けられ、かつ複数の弦4がそれぞれ金属製の複数のフレット13に押し付けられて導通することにより、音高を検出する押弦センサ19と、複数の弦4とブリッジ部5とを絶縁する絶縁部である絶縁性のブリッジ駒25および絶縁チューブ41と、複数の弦4にそれぞれ導通して接続される接続部である導電チューブ42および接続ケーブル43と、を備えているので、弦4の操作に違和感なく、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。
【0059】
すなわち、この電子ギターでは、ギター本体1に張り渡された弦4を指で押えて有効弦長を変化させながら、同じ弦4を弾いて演奏することができると共に、指で押えられた弦4を金属製のフレット13に押し付けることができるので、違和感なく弦の操作ができるほか、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5の強度を高めるために、ブリッジ部5を金属で形成しても、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。
【0060】
すなわち、この電子ギターでは、絶縁部である絶縁性のブリッジ駒25および絶縁チューブ41によって複数の弦4をブリッジ部5に対して絶縁することができ、これにより複数の弦4が相互に導通するのを防ぐことができるので、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。また、この電子ギターでは、追加部品が少ないので、低コスト化を図ることができると共に、高速でフレット検出つまり音高検出ができる。
【0061】
この場合、ブリッジ部5は、複数の弦4の各一端部4aがそれぞれ挿入して取り付けられる複数の弦取付孔39が設けられたブリッジ本体24と、このブリッジ本体24上に複数の弦4それぞれに対応して配置され、かつ複数の弦4をそれぞれ支持するブリッジ駒25とを備えていることにより、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5のブリッジ本体24の強度を高めるために、ブリッジ本体24を金属で形成しても、絶縁部であるブリッジ駒25および絶縁チューブ41によって複数の弦4をブリッジ本体24に対して絶縁することができ、これにより複数の弦4が相互に導通するのを防ぐことができる。
【0062】
すなわち、絶縁部は絶縁性の複数のブリッジ駒25と複数の絶縁チューブ41とを有し、複数のブリッジ駒25はそれぞれ絶縁性を有するユリア樹脂などの合成樹脂で形成され、複数の絶縁チューブ41はその各内部に複数の弦4の各一端部4aが挿入した状態でブリッジ本体24の複数の弦取付孔39にそれぞれ挿入して配置されるので、ブリッジ本体24を金属で形成しても、複数のブリッジ駒25および複数の絶縁チューブ41によって複数の弦4をブリッジ本体24に対して絶縁することができ、これにより複数の弦4が相互に導通するのを確実に防ぐことができる。
【0063】
この場合、接続部は、複数の絶縁チューブ41の内部にそれぞれ設けられて複数の弦4にそれぞれ導通する複数の導電チューブ42と、これら複数の導電チューブ42にそれぞれ接続される複数の接続ケーブル43とを有しているので、これら複数の接続ケーブル43によって複数の導電チューブ42を介して複数の弦4それぞれに電流を個別に供給することができ、これにより複数の弦4をそれぞれ金属製の複数のフレット13に個別に押し付けて導通させることができるので、押弦センサ19によって音高情報を正確に検出することができる。
【0064】
なお、上述した第1実施形態では、絶縁チューブ41内に導電チューブ42を挿入し、この導電チューブ42に弦4のエンドボール40を接触させて導通させた場合について述べたが、これに限らず、例えば図9に示す変形例のように、絶縁チューブ41の内面に導電層55を設け、この導電層55にエンドボール40を当接させて導通させ、かつこの導電層55を挟んで接続クリップ56を絶縁チューブ41の下端部に取り付け、この接続クリップ56に接続ケーブル43を接続した構成であっても良い。
【0065】
このように構成しても、絶縁チューブ41の内面に設けられた導電層55に弦4のエンドボール40を接触させて導通させることができるので、この導電層55を介して接続ケーブル43によって絶縁チューブ41内の弦4に電流を供給することができ、これにより複数の弦4をそれぞれ金属製の複数のフレット13に個別に押し付けて導通させることができるので、押弦センサ19によって音高情報を正確に検出することができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、図10図13を参照して、この発明を電子ギターに適用した第2実施形態について説明する。なお、図1図8に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子ギターは、図10および図11に示すように、複数の弦4とブリッジ部5とを絶縁する絶縁部と、複数の弦4にそれぞれ導通して接続される接続部とが第1実施形態と異なる構成であり、これ以外は第1実施形態と同じ構成になっている。
【0067】
すなわち、絶縁部は、図10図13に示すように、ブリッジ本体24と複数のブリッジ駒60との間に配置された絶縁板61と、複数の弦4の各一端部4aが挿入した状態でブリッジ本体24の複数の弦取付孔39にそれぞれ挿入して配置される絶縁チューブ41とを有している。この場合、ブリッジ本体24の弦取付孔39は、上部が小径孔39aに形成され、下部が大径孔39bに形成され、この小径孔39aと大径孔39bとの境にテーパ部39dがくびれた状態で形成されている。
【0068】
絶縁チューブ41は、第1実施形態と同様、塩化ビニル樹脂(PVC)などの絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。この絶縁チューブ41は、ブリッジブロック26の弦取付孔39と同様、弦4が挿入する小径孔部41aと、エンドボール40が挿入する大径孔部41bとを有し、小径孔部41aと大径孔部41bとの境にテーパ部41dがくびれた状態で形成されている。
【0069】
また、複数のブリッジ駒60は、金属板をそれぞれ板金加工したものであり、これ以外は第1実施形態と同様に構成されている。このブリッジ駒60は、図10図12に示すように、平板状の駒本体31と、この駒本体31の前端部(図10では左端部)に山形状に湾曲して設けられた弦支持部32と、駒本体31の後端部(図10では右端部)に設けられた板状の突起部33とを備え、ブリッジベース27上に絶縁板61を介して配置されるように構成されている。
【0070】
この絶縁板61は、絶縁性を有する合成樹脂からなり、図13に示すように、ブリッジベース27の上面にそのほぼ全域に亘って配置されている。また、ブリッジ駒60の弦支持部32に設けられた弦高調整ねじ35は、第1実施形態においては樹脂で形成されていたが、第2実施形態においては、導電性を有する金属で形成されている。一方、オクターブ調整ねじ62およびコイルばね63は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂によって形成されており、これ以外は第1実施形態と同じ構成になっている。
【0071】
すなわち、オクターブ調整ねじ62は、ブリッジベース27の取付部37に設けられた挿入孔37aを通して、ブリッジ駒60の突起部33に設けられたねじ孔33aに螺合するように構成されている。また、コイルばね63は、図10および図11に示すように、ブリッジ駒60の突起部33を前側(図10では左側)に向けて押し出す方向に付勢することにより、オクターブ調整ねじ62の頭部62aをブリッジベース27の取付部37の外面(図10では右側)に押し付けるように構成されている。
【0072】
このため、ブリッジ駒60の突起部33とブリッジベース27の取付部37とは、コイルばね63のばね力によって互いに離れる方向に付勢されている。これにより、オクターブ調整ねじ62は、第1実施形態と同様、これを回すと、頭部62aがブリッジベース27の取付部37に当接した状態で回転すると共に、先端のねじ部がブリッジ駒60の突起部33のねじ孔33a内を回転しながら螺旋移動することにより、ブリッジ駒60をブリッジベース27の前後方向(図10では左右方向)に移動させるように構成されている。
【0073】
この場合にも、複数の弦4は、図10および図11に示すように、絶縁チューブ41によってブリッジ部5のブリッジ本体24に接触することがなく、ブリッジブロック26の弦取付孔39、ブリッジベース27の弦挿入孔27c、絶縁板61の弦挿入孔61a、およびブリッジ駒60の駒本体31の弦挿入孔31aを通り、ブリッジ駒60の弦支持部32上に押し付けられた状態で、相互に導通することなく、張り渡されるように構成されている。
【0074】
ところで、複数の弦4にそれぞれ導通して接続される接続部は、図10図13に示すように、絶縁板61と複数のブリッジ駒60との間にそれぞれ配置されて複数の弦4に対してそれぞれ個別に導通する複数の導電板64と、これら複数の導電板64を電子回路部7と電気的に接続する接続ケーブル65とを備えている。導電板64は、銅などの導電性の高い金属薄板からなり、その上面に配置されるブリッジ駒60と導通するように構成されている。
【0075】
すなわち、この導電板64は、図11および図13に示すように、ブリッジ駒60に取り付けられた弦高調整ねじ35の下端が接触してブリッジ駒60に導通すると共に、ブリッジ駒60にその下面が接触して導通する本体部64aと、絶縁板61の弦挿入孔61a内に突出してその弦挿入孔61a内に挿入された弦4に接触する弦接触部64bと、本体部64aから絶縁板61の所定個所、つまりブリッジ駒60が接触しない個所に延出された配線部64cとを有し、この配線部64cが絶縁板61の下面に設けられたコネクタ66に接続されるように構成されている。
【0076】
この場合、コネクタ66は、図11および図13に示すように、複数の導電板64の各配線部64cがそれぞれ接続され、この状態でブリッジベース27に設けられた挿入孔27dを通してブリッジベース27の下側に突出し、この突出した部分に接続ケーブル65が接続されるように構成されている。これにより、複数の導電板64は、接続ケーブル65によって電子回路部7と電気的に接続されることにより、電流が供給され、この供給された電流が直接または弦高調整ねじ35およびブリッジ駒60を介して複数の弦4にそれぞれ流れるように構成されている。
【0077】
次に、このような電子ギターの作用について説明する。
この電子ギターで演奏する際には、アコースティックギターと同様、ネック3の指板12に張り渡された複数の弦4を指で押えて複数のフレット13のいずれかに押し付けながら、このフレット13に対応する弦4を弾くことにより、第1実施形態と同様に演奏をすることができる。このときには、押弦センサ19によって押弦位置に対応する音高が決定され、ピックアップ部6によって押された弦4の弦振動が検出され、これらに基づいて楽音が発生される。
【0078】
すなわち、押弦センサ19は、複数の弦4のいずれかが押されて複数のフレット13のいずれかに押し付けられると、弦4とフレット13とが導通し、これに対応する配線基板14の電極パッド15と弦4とに電流が流れることにより、弦4が導通したフレット13のX座標位置がX信号制御部52によって指定されると共に、フレット13に導通した弦4のY座標位置がY信号制御部53によって指定され、これにより発音すべき楽音の音高情報が決定される。
【0079】
また、ピックアップ部6は、フレット13に導通した弦4が弾かれると、その弾かれた弦4の振動を検出する。そして、押弦センサ19によって検出された音高情報と、ピックアップ部6によって検出された弦振動情報とによって、CPU45が音源部48に指令を与えて音源データを生成させ、この音源データに基づいてエフェクト部49で楽音データを生成させてオーディオ機器に出力し、楽音を発生させる。
【0080】
このように、この電子ギターによれば、胴部2およびネック3を有するギター本体1上に張り渡される導電性を有する複数の弦4と、ギター本体1の胴部2に設けられて複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5と、ギター本体1のネック3に設けられ、かつ複数の弦4がそれぞれ金属製の複数のフレット13に押し付けられて導通することにより、音高を検出する押弦センサ19と、複数の弦4とブリッジ部5とを絶縁する絶縁部である絶縁板61および絶縁チューブ41と、複数の弦4にそれぞれ導通して接続される接続部である導電板64および接続ケーブル65と、を備えているので、弦4の操作に違和感なく、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。
【0081】
すなわち、この電子ギターにおいても、ギター本体1に張り渡された弦4を指で押えて有効弦長を変化させながら、同じ弦4を弾いて演奏することができると共に、指で押えられた弦4を金属製のフレット13に押し付けることができるので、違和感なく弦の操作ができるほか、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5の強度を高めるために、ブリッジ部5を金属で形成しても、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。
【0082】
すなわち、この電子ギターでは、絶縁部である絶縁板61および絶縁チューブ41によって複数の弦4をブリッジ部5に対して絶縁することができ、これにより複数の弦4が相互に導通するのを防ぐことができるので、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。また、この電子ギターにおいても、追加部品が少ないので、低コスト化を図ることができると共に、高速でフレット検出つまり音高検出ができる。
【0083】
この場合、ブリッジ部5は、複数の弦4の各一端部4aがそれぞれ挿入して取り付けられる複数の弦取付孔39が設けられたブリッジ本体24と、このブリッジ本体24上に複数の弦4それぞれに対応して配置され、かつ複数の弦4をそれぞれ支持する金属製のブリッジ駒60と、このブリッジ駒60とブリッジ本体24との間に配置された絶縁板61とを備えていることにより、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ本体24およびブリッジ駒60の強度を高めるために、これらを金属で形成しても、絶縁部である絶縁板61および絶縁チューブ41によって複数の弦4をブリッジ本体24に対して絶縁することができ、これにより複数の弦4が相互に導通するのを防ぐことができる。
【0084】
すなわち、絶縁部は、ブリッジ本体24と複数のブリッジ駒60との間に配置された絶縁板61と、複数の弦4の各一端部4aが挿入した状態でブリッジ本体24の複数の弦取付孔39にそれぞれ挿入して配置される絶縁チューブ41とを有しているので、ブリッジ本体24および複数のブリッジ駒60を金属で形成しても、絶縁板61および複数の絶縁チューブ41によって複数の弦4をブリッジ本体24に対して絶縁することができ、これにより複数の弦4が相互に導通するのを確実に防ぐことができる。
【0085】
この場合、接続部は、絶縁板61と複数のブリッジ駒60との間にそれぞれ配置されて複数の弦4に対してそれぞれ個別に導通する複数の導電板64と、これら複数の導電板64にそれぞれ接続される複数の接続ケーブル65とを有しているので、これら複数の接続ケーブル65によって複数の導電板64および複数のブリッジ駒60を介して複数の弦4それぞれに電流を個別に供給することができ、これにより複数の弦4をそれぞれ金属製の複数のフレット13に個別に押し付けて導通させることができるので、押弦センサ19によって音高情報を正確に検出することができる。
【0086】
なお、上述した第2実施形態では、導電板64が弦4に接触する弦接触部64bを有する構成である場合について述べたが、必ずしも弦接触部64bを有している必要はなく、導電板64はブリッジ駒60に取り付けられた弦高調整ねじ35の下端が接触してブリッジ駒60に導通すると共に、ブリッジ駒60にその下面が接触して導通する本体部64aと絶縁板61の所定個所に延出される配線部64cとを有するだけの構成であっても良い。
【0087】
また、上述した第1、第2の各実施形態およびその変形例では、電子ギターに適用した場合について述べたが、必ずしも電子ギターに適用する必要がなく、例えば電子マンドリン、電子ウクレレ、電子三味線などの各種の電子弦楽器に広く適用することができる。
【0088】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0089】
(付記)
請求項1に記載の発明は、楽器本体と、この楽器本体上に張設される導電性を有する複数の弦と、前記楽器本体に設けられ、前記複数の弦の各一端部が取り付けられるブリッジ部と、前記複数の弦と前記ブリッジ部とを絶縁する絶縁部と、前記複数の弦それぞれを独立に導通させて接続される接続部と、前記楽器本体に設けられ、前記接続部に接続された前記各弦に対して電気信号を供給すると共に、前記複数の弦がそれぞれ導電性を有する複数のフレットのいずれかに押し付けられて導通したかを検知することにより、発音すべき楽音の音高を決定する音高決定部と、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
【0090】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子弦楽器において、前記ブリッジ部は、前記複数の弦の前記各一端部がそれぞれ挿入して取り付けられる複数の弦取付孔が設けられたブリッジ本体と、このブリッジ本体上に前記複数の弦それぞれに対応して配置され、かつ前記複数の弦をそれぞれ支持するブリッジ駒とを備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
【0091】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記絶縁部は前記複数のブリッジ駒と複数の絶縁チューブとを有し、前記複数のブリッジ駒はそれぞれ絶縁性を有する合成樹脂で形成され、前記複数の絶縁チューブはその各内部に前記複数の弦の前記各一端部が挿入した状態で前記ブリッジ本体の前記複数の弦取付孔にそれぞれ挿入して配置され、
前記接続部は、前記複数の絶縁チューブの内部にそれぞれ設けられて前記複数の弦にそれぞれ導通する複数の導電部と、これら複数の導電部にそれぞれ接続される複数の接続ケーブルとを有していることを特徴とする電子弦楽器である。
【0092】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記絶縁部は、前記ブリッジ本体と前記複数のブリッジ駒との間に配置された絶縁部材と、前記複数の弦の前記各一端部が挿入した状態で前記ブリッジ本体の前記複数の弦取付孔にそれぞれ挿入して配置される絶縁チューブとを有し、
前記接続部は、前記絶縁部材と前記複数のブリッジ駒との間にそれぞれ配置されて前記複数の弦に対してそれぞれ個別に導通する複数の導電部材と、これら複数の導電部材にそれぞれ接続される複数の接続ケーブルとを有していることを特徴とする電子弦楽器である。
【符号の説明】
【0093】
1 ギター本体
2 胴部
3 ネック
4 弦
5 ブリッジ部
6 ピックアップ部
12 指板
13 フレット
14 配線基板
19 押弦センサ
24 ブリッジ本体
25 絶縁性のブリッジ駒
26 ブリッジブロック
27 ブリッジベース
41 絶縁チューブ
42 導電チューブ
43、65 接続ケーブル
55 導電層
60 金属製のブリッジ駒
61 絶縁板
64 導電板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13