(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930341
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】透明なバリア層系を析出する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20160526BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20160526BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20160526BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20160526BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
C23C14/06 P
C23C16/40
C23C14/08 A
C23C16/50
B32B9/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-505546(P2014-505546)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公表番号】特表2014-517144(P2014-517144A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012052624
(87)【国際公開番号】WO2012143150
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】102011017403.6
(32)【優先日】2011年4月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン シュトラーハ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キューネル
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ブンク
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス シラー
【審査官】
伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−297730(JP,A)
【文献】
特開2008−152940(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0148139(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/127373(WO,A1)
【文献】
特表2007−522343(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0170050(US,A1)
【文献】
特開2006−272589(JP,A)
【文献】
米国特許第06130002(US,A)
【文献】
特開2004−093560(JP,A)
【文献】
SCHILLER S,PVD COATING OF PLASTIC WEBS AND SHEETS WITH HiGH RATES ON LARGE AREAS,SURFACE AND COATINGS TECHNOLOGY,NL,ELSEVIER,2000年 3月 1日,VOL. 125, NO. 1-3,PAGES 354-360
【文献】
FAHLTEICH J,PERMEATION BARRIER PROPERTIES OF OXIDE LAYERS ON POLYMER FILM DEPOSITED 以下備考,ANNUAL TECHNICAL CONFERENCE PROCEEDINGS,米国,SOCIETY OF VACUUM COATERS,2007年 1月 1日,VOL. 50TH CONFERENCE,PAGES 723-727,BY PULSED MAGNETRON SPUTTERING
【文献】
FAHLTEICH JOHN,PERMEATION BARRIER PROPERTIES OF THIN OXIDE FILMS ON FLEXIBLE POLYMER SUBSTRATES,THIN SOLID FILMS,スイス,ELSEVIER-SEQUOIA S. A.,2009年 3月31日,VOL.517, NO. 10,PAGES 3075-3080
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
B32B 9/00
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なバリア層系を製造する方法であって、
少なくとも1つの真空チャンバ内で、透明なプラスチックフィルム上に、少なくとも2つの透明なバリア層と、前記2つのバリア層の間に配置される1つの透明な中間層とを析出する方法において、
前記バリア層を析出するためにアルミニウムを気化させ、同時に、少なくとも1つの第1の反応性ガスを前記真空チャンバ内に供給し、
シリコン含有先駆物質であるHMDSOまたはTEOSをPECVDプロセスのための基礎材料として前記真空チャンバ内に供給して、中間層としてシリコン含有層を前記PECVDプロセスによって析出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バリア層と前記中間層を繰り返し交互に析出する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸素および/または窒素を第1の反応性ガスとして使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
プラズマの存在下で、前記バリア層の析出を前記真空チャンバ内で行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ホロー陰極プラズマまたはマイクロ波プラズマをプラズマとして使用する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
マグネトロンプラズマまたはホロー陰極プラズマを、前記PECVDプロセスに使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記PECVDプロセスの間、付加的に、第2の反応性ガスを前記真空チャンバ内に供給する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
酸素および/または窒素を第2の反応性ガスとして使用する、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気および酸素に対してバリア効果を有する、透明な層系を析出する方法に関する。
【0002】
従来技術
種々の電子構造群において使用される電気活性材料はしばしば、湿気および空気中の酸素に対して高い感度を有する。これらの材料を保護するために、このような構造群をカプセル封入することが公知である。これは一つには、保護層を、保護されるべき材料上に直接的に析出することによって、ないしは、構造群を付加的な構成部分によって覆うことによって行われる。従って、例えば太陽電池はしばしばガラスによって湿気および別の外部影響から保護される。軽量化のためおよび設計に関する付加的な自由度も実現するために、カプセル封入にプラスチックフィルムも使用される。このようなプラスチックフィルムは、充分な保護作用のためにコーティングされなければならない。従ってプラスチックフィルムの上に、少なくとも1つのいわゆる浸透阻止層(以降で、バリア層とも称される)が析出される。
【0003】
バリア層は種々の浸透物質に、部分的に、極めて異なる抵抗で対向する。バリア層を特徴付けるために、しばしば、所定の条件下の、バリア層が設けられている基板を通る酸素浸透率(OTR)と水蒸気浸透率(WVTR)が参照される(WVTRはDIN53122−2−Aに即したものであり、OTRはDIN53380−3に即したものである)。
【0004】
バリア層をコーティングすることによって、コーティングされた基板を通る浸透が、コーティングされていない基板と比べて、一桁または複数桁のファクタぶんだけ減る。しばしば、所定のバリア値の他に、バリア層の種々の別の目的パラメータも考慮される。例えば、これは、光学的、機械的並びに技術的に経済的な要求である。従って、バリア層はしばしば可視スペクトル領域において透明であるべきである、またはさらにほぼ完全に透明であるべきである。バリア層が層系内で使用される場合には、しばしば、層系の個々の部分を被着するための複数のコーティングステップが相互に組み合わせられるのは有利である。
【0005】
バリア層を製造するために、しばしば、いわゆるPECVD方法(プラズマCVD:
plasma enhanced chemical vapor deposition)が用いられる。これは、種々の基板のコーティング時に、種々の層材料に使用可能である。例えば、13μmのPET基板上に20〜30nmの厚さのSiO
2層およびSi
3N
4層を析出することが公知である(A.S. da Silva Sobrinho等著、「J.Vac.Sci.Technol. (A16(6), Nov/Dec 1998 第3190〜3198頁)」を参照)。このようにして、10Paの動作圧力のもとで、WVTR=0.3g/m
2dおよびOTR=0.5cm
3/m
2dの浸透率が実現される。
【0006】
PECVDによってPET基板上の透明なバリア層のためにSiO
xを析出する場合には、OTR=0.7cm
3/m
2dの酸素透過率が実現される(R.J. Nelsonおよび H.Chatham著「Society of Vacuum Coaters(34th Annual Technical Conference Proceedings(1991) 第113-117頁)」を参照)。別の出典では、PET基板上の透明なバリア層のためのこの技術に対して、WVTR=0.3g/m
2dおよびOTR=0.5cm
3/m
2dのオーダの透過率が示されている(M.Izu, B.Dotter, S.R.Ovshinsky著「Society of Vacuum Coaters(36th Annual Technical Conference Proceedings(1993)第333-340頁)」を参照)。
【0007】
公知のPECVD方法の欠点は、殊に、相対的に低いバリア効果しか得られない、ということである。従って、このようなバリア層は殊に、電子製品のカプセル封入に不適切である。さらなる欠点は、このような方法を実施するのに必要となる高い動作圧力である。このようなコーティングステップが真空設備内の複雑な製造フローに組み込まれるべき場合には、高いコストが圧力分離措置に必要となる場合がある。従って別のコーティングプロセスとの組み合わせはたいてい、経済的ではない。
【0008】
さらに、バリア層をスパッタリングによって被着させることが公知である。スパッタリングされた個別層はしばしば、PECVD層よりも良好なバリア特性を示す。PET上のスパッタリングされたAINOの場合には、透過率として、例えばWVTR=0.2g/m
2dおよびOTR=1cm
3/m
2dが示される(「Thin solid Films (388(2001)78-86)」を参照)。この他に、殊に反応性スパッタリングによって、透明なバリア層の製造に使用される多数の別の材料が知られている。しかし、このようにして製造された層は同様に、極めて僅かなバリア効果しか有していない。このような層のさらなる欠点は、機械的耐性が低い、ということである。さらなる処理の間または使用中に技術的に回避不可能な負荷によって生じる損傷によって、多くの場合には、バリア効果が格段に悪化する。これによってしばしば、スパッタリングされた個別層は、バリア用途に対して使用不可能になる。スパッタリングされた層のさらなる欠点は、スパッタリングプロセスの低い生産性が原因の高いコストにある。
【0009】
さらに、個別層をバリア層として蒸着することが公知である。このようなPVD方法によっても、種々の材料が直接的または反応性に、種々の基板上に析出される。バリア用途に対しては、例えば、Al
2O
3による、PET基板の反応性蒸着が知られている(「Surface and Coatings Technology (125 (2000) 354-360)」を参照)。ここではWVTR=1g/m
2dおよびOTR=5cm
3/m
2dの透過率が得られる。ここでも、このようにコーティングされた材料をバリア層として電子製品に使用するには、このバリア効果は低すぎる。これらはしばしば、スパッタリングされた個別層よりも、さらに機械的耐性が低い。しかし、蒸着プロセスによって得られるコーティング速度が極めて高いのは利点である。これは通常、スパッタリングプロセスによって得られるコーティング速度の100倍である。
【0010】
同様に、バリア層の析出時に、マグネトロンプラズマをプラズマ重合に使用することが公知である(EP0815283B1);(So Fujimaki, H.Kashiwase, Y.Kokaku著「Vacuum (59 (2000) 第657頁〜第664頁)」を参照)。これは、直接的にマグネトロン放電のプラズマによって保持されるPECVDプロセスである。例えば、このために、PECVDコーティングに対してマグネトロンプラズマが、炭素フレームを有する層を析出するために使用される。ここでは、先駆物質としてCH
4が用いられる。しかしこのような層も同様に、高い要求に対して不十分なバリア効果しか有していない。
【0011】
さらに、バリア層ないしはバリア層系を複数のコーティングステップで被着することが公知である。このような種類の方法は、いわゆるPML(Polymermultilayer)プロセスである(「1999 MaterialsResearch Society(第247頁〜254頁)」を参照);(J.D. Affinito, M.E.Gross, C.A.Coronado, G.L.Graff, E.N.GreenweilおよびP.M.Martin著「Society of Vacuum Coaters(39th Annual Technical Conference Proceedings (1996)第392-397)」を参照)。
【0012】
PMLプロセスでは、蒸着装置によって、液状のアクリレートフィルムが基板上に被着される。このフィルムは、電子放射技術またはUV照射によって硬化される。このフィルム自体は、特に高いバリア効果は有していない。次に、硬化されたアクリレートトフィルムが酸素中間層によってコーティングされる。この上に同様に、アクリレートフィルムが被着される。この手法は、必要であれば、繰り返される。このように形成された積層体、すなわち個々の酸素物バリア層と中間層としてのアクリレート層とを組み合わせたものの透過率は、従来の透過率測定装置の測定限界を下回る。ここでの欠点は殊に、コストのかかる構造技術を使用する必要がある、ということである。さらに、まずは、液体フィルムが基板上に形成される。この液体フィルムは硬化されなければならない。これによって、設備の汚れが酷くなり、メンテナンス周期が短くなる。このようなコーティングプロセスでは、バリア層として機能する中間層は多くの場合に、マグネトロンスパッタリングによって製造される。ここでの欠点は、スパッタリング技術を使用することによって、比較的緩慢なプロセスを用いなければならない、ということである。これによって、製造コストが極めて高くなってしまう。このような高い製造コストは、使用されている技術の生産性が低いことに由来する。
【0013】
蒸着の間に有機変性を行う場合に、無機蒸着層の機械的な耐性が改善されることが知られている。ここで、有機成分の構造は、層成長の間に形成される無機マトリクスで行われる。無機マトリクスにおいてこのようなさらなる成分を構造することによって、層全体の弾性が高まることは明らかである。これによって、層内の破損の恐れが格段に低減される。少なくともバリア用途に適しているものの代理として、このコンテキストにおいて、組み合わせプロセスが挙げられる。これは、SiOxの電子ビーム物理蒸着をHMDSOの供給と組み合わせる(DE19548160C1)。しかし、電子コンポーネントに必要な低い透過率は、このように製造された層によって得られない。
【0014】
課題
従って本発明の技術的な課題は、従来技術のこれらの欠点を克服する方法を実現することである。殊にこの方法を用いて、酸素および水蒸気に対する高い遮断効果と高いコーティング速度を有する透明なバリア層系を製造することが可能になるべきである。
【0015】
この技術的な課題は、請求項1の特徴部分に記載されている構成を有する構成要件によって解決される。本発明のさらなる有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0016】
透明なバリア層系を製造する本発明の方法では、真空チャンバ内で、透明なプラスチックフィルム上に少なくとも2つの透明なバリア層が析出され、これらのバリア層の間にさらに1つの透明な中間層も埋設される。バリア層を析出するために、真空チャンバ内にアルミニウムが反応性プロセスにおいて気化される。これは、アルミニウムの気化の間に同時に、さらに、少なくとも1つの反応性ガス、例えば酸素または窒素が、真空チャンバ内に供給されることによって行われる。中間層としてシリコン含有層が2つのバリア層の間に埋め込まれる。このシリコン含有層は、プラズマ支援されたCVDプロセスによって析出される。このようなプロセスは、PECVDプロセスとも称される。
【0017】
PECVDプロセスのための基礎材料としては殊にシリコン含有先駆物質、例えばHMDSO、HMDSNまたはTEOSが適している。このようにして、有機架橋された(organisch vernetzte)シリコン含有中間層が得られる。これは、生じているバリア結合体に、中間層内で有機架橋によって、このような中間層を有していない結合体と比べて、高い弾性を与える。
【0018】
PECVDプロセス用にプラズマを生成するために、ホロー陰極またはマグネトロンも使用可能である。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、マグネトロンはプラズマ形成装置として使用され、そのターゲットから粒子が叩き出される。これらの粒子は、中間層の層形成に用いられる。ここで、マグネトロンに属するターゲットの粒子の叩き出しは本発明にとって重要ではない、ことを明示しておく。本発明の方法のPECVDプロセスにおいてマグネトロンは、深い意味なくプラズマの形成に使用されている。プラズマは、真空チャンバ内に入れられた基礎材料を分解し、化学的な層析出を励起する。PECVDプロセスの間、付加的に、酸素および/または窒素等の反応性ガスも真空チャンバ内に供給することができる。
【0020】
本発明の方法によって析出された透明なバリア層系は、さらに、水蒸気と酸素に対して高い遮断効果を有していることを特徴とする。ここでこの層系を、さらに、蒸着並びにPECVDプロセスに対して既知の高いコーティング速度で析出することもできる。このような特性によって、本発明によって析出されたバリア層系は、例えば、太陽電池製造時の構成部材のカプセル封入に、または、OLEDおよび別の電子的な活性材料のカプセル封入に適する。
【0021】
本発明によって析出された層系の、水蒸気および酸素に対する高い遮断効果は、主に、次のことに起因する。すなわち、有機架橋されたシリコン含有層が、その下に、反応性アルミニウム蒸着によって析出されたバリア層の層欠陥の成長停止を生起させることに起因する。アルミニウムの反応性蒸着時に一度生じた層欠陥が、しばしば、残りの層厚を通過する層の成長とともに成長することが知られている。本発明の方法では、バリア層の間に析出された有機架橋シリコン含有中間層によって、その下に位置するバリア層の層欠陥を覆うことができる。これによってこのような促進が、中間層上に位置する第2のバリア層の成長時に行われることがなくなる。従って、本発明によって析出された層系によって、水蒸気および酸素に対する高いバリア効果ないしは遮断効果を得ることができる。バリア層と中間層が繰り返し交互に、連続して析出される場合には、水蒸気および酸素に対する遮断効果は、ある程度までさらに高められる。
【0022】
バリア層析出中のアルミニウムの蒸着に対しては、蒸着に公知のボート式蒸着装置(Schiffchenverdampfer)または電子ビーム物理蒸着も使用可能である。バリア層のこの析出が、付加的にさらに、プラズマによって支援されてもよい。これはアルミニウム蒸着装置とコーティングされるべきプラスチックフィルム基板との間の空間を貫通する。プラズマとしてここでは、殊にホロー陰極プラズマまたはマイクロ波プラズマも適している。バリア層と中間層の析出は、1つの真空チャンバ内で、または2つに分けられた真空チャンバ内で行われる。
【実施例】
【0023】
次に本発明を、実施例に基づいて詳細に説明する。650mmの幅および75μmの厚さの、材料PETから成るプラスチックフィルムの場合には、水蒸気に対する遮断効果が高められるべきである。このために、プラスチックフィルムに、第1のコーティングステップにおいて、第1の真空チャンバ内で、バリア層として形成されている酸化アルミニウム層がコーティングされる。これは、真空チャンバ内でアルミニウムが気化され、同時に、酸素も14.2slmで真空チャンバ内に供給されることによって行われる。
【0024】
アルミニウムの蒸着のために、8つの、既知のボート式蒸着装置が使用される。これらの蒸着装置は、コーティングされるべきプラスチックフィルムの下方に均等な間隔で、プラスチックフィルムの幅にわたって分配して配置されている。アルミニウムの蒸着は、各ボート式蒸着装置に対して2g/分の蒸着速度で行われる。ここでこのプラスチックフィルムは、30m/分の帯速度でこれらのボート式蒸着装置にわたって動かされる。バリア層として形成されている酸化アルミニウム層は、プラズマサポートされて析出される。同様に、均一の間隔でプラスチックフィルムの幅にわたって分配して配置されている4つのホロー陰極がプラズマを形成する。このプラズマは、一方で複数のボート式蒸着装置の間の空間を貫通し、他方でコーティングされるべきプラスチックフィルムを貫通する。ここでこれら4つのホロー陰極には、それぞれ270Aの電流が供給される。上述したパラメータの場合には、90nmの層厚を備えた酸化アルミニウム層がプラスチックフィルム上に析出される。
【0025】
第2のコーティングステップでは、バリア層上に、中間層が同じ帯速度で被着される。このために、バリア層が設けられているプラスチックフィルム基板が第2の真空チャンバを通る。ここでは、シリコン含有先駆物質HMDSOが175sccmで供給され、反応性ガスである酸素が130sccmで供給される。マグネトロンのプラズマは、7.5kWの出力で第2の真空チャンバ内でこの先駆物質を分裂させ、分裂された成分を活性化し、これを励起して、バリア層が設けられたプラスチックフィルム上に化学的な層析出を起こさせる。この層析出プロセスの結果、有機架橋されたシリコン含有層がバリア層上に成長する。上述したように、プラズマはこのPECVDプロセスにおいて、マグネトロンによって形成される。マグネトロンは通常、層の析出のために粒子を形成するためにも使用される。しかし本発明の方法によるこの中間層の析出時には、マグネトロンターゲットのスパッタリングアタック、ひいては層構造のための粒子供給への寄与は不必要である。マグネトロンは、このステップでは、単に、プラズマ形成に用いられる。
【0026】
このコーティングステップの後、PETフィルム上には1つのバリア層と1つの中間層が析出されている。1つのバリア層と1つの中間層のこのような各析出を、以降でダイアド(Dyade:2個一組)と称す。後続のコーティングステップでは、さらなるバリア層と中間層がそれぞれ交互に、プラスチックフィルム上に、上述したコーティングパラメータによって、全体で5個のダイアドが仕上がるまで析出される。各ダイアドの後に、プラスチックフィルム、バリア層および中間層から成る各結合体において、表1に示されている、水蒸気の透過に対する値が求められた。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から読み取れるように、水蒸気に対する遮断効果はダイアド毎に改善される。これは、本発明の方法から生じる中間層が、あるバリア層から、その上に析出されているバリア層へと向かう欠陥成長を効果的に遮っていることの印である。
【0029】
ここで、コーティングパラメータの物理量の上述した値は、単に例として記載されたものであり、本発明の方法を制限するものではない、ということを述べておく。