(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930370
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】給湯器およびファン用モータの制御装置
(51)【国際特許分類】
F04D 27/00 20060101AFI20160526BHJP
F23N 5/18 20060101ALI20160526BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
F04D27/00 H
F23N5/18 101G
F23N5/24 104
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-289155(P2011-289155)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137000(P2013-137000A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】平野 智啓
(72)【発明者】
【氏名】大塩 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敏明
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2858312(JP,B2)
【文献】
特開平11−051375(JP,A)
【文献】
特開平08−159082(JP,A)
【文献】
特開平09−072539(JP,A)
【文献】
特開2003−111478(JP,A)
【文献】
米国特許第05727928(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
F23N 5/18
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器に燃焼用空気を供給するためのファンと、
開閉可能な蓋用パネルを有し、かつ前記ファンおよび前記燃焼器を内部に収容している外装ケースと、
前記ファンを駆動させるファン用モータを制御可能であり、かつ前記ファンの実回転数を検出可能な制御手段と、
を備えている、給湯器であって、
前記制御手段は、前記ファン用モータの出力に対応して値が変化するモータ出力対応データを監視可能であり、
前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記ファン用モータの出力が所定未満に低下していないことにより、前記モータ出力対応データの値が所定範囲内にあるときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断処理を保留する一方、前記ファン用モータの出力が前記所定未満に低下していることにより、前記モータ出力対応データの値が前記所定範囲内にないときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断を行なうように構成されていることを特徴とする、給湯器。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯器であって、
前記制御手段は、前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記モータ出力対応データの値が前記所定範囲内にないときには、この状態が所定時間以上継続することを条件として、前記異常が生じた旨の判断を行なうように構成されている、給湯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給湯器であって、
前記モータ出力対応データは、前記ファン用モータの駆動電流または電源電圧に関するデータであり、
前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記駆動電流が所定値以上であるとき、または前記電源電圧が所定値未満に低下しているときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断処理は保留される一方、そうでないときには前記ファンに異常が生じた旨の判断が行なわれる構成とされている、給湯器。
【請求項4】
ファンの実回転数を検出可能な回転数検出手段と、
前記ファンを駆動させるファン用モータの出力の変化に対応して値が変化するモータ出力対応データを監視可能な制御手段と、を備えており、
前記制御手段は、前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記ファン用モータの出力が所定未満に低下していないことにより、前記モータ出力対応データの値が所定範囲内にあるときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断処理を保留する一方、前記ファン用モータの出力が前記所定未満に低下していることにより、前記モータ出力対応データの値が前記所定範囲内にないときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断を行なうように構成されていることを特徴とする、ファン用モータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス給湯器やオイル給湯器などの給湯器、および給湯器の構成要素として好適に用いることが可能なファン用モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ガス給湯器などの瞬間式給湯器は、燃焼器、ファン、および熱交換器などの機器が外装ケース内に収容された構成とされているのが通例である。ファンは、燃焼器に燃焼用空気を供給するためのものであるが、このファンについては、燃焼器の燃焼駆動時の空燃比を最適なものとすべく回転数制御が行なわれる。
このような給湯器においては、外装ケースの蓋用パネル(たとえばフロントカバー)が開けられると、ファンの給排気抵抗が小さくなり、蓋用パネルが閉められているときよりもファン用モータの出力は大きくなる。すなわち、蓋用パネルの開状態時の方が、閉状態時よりも送風量、仕事量が多くなる結果、ファンの回転数が同一であっても、蓋用パネルが開状態であるときには、閉状態のときよりもファン用モータの出力は大きくなり、モータの駆動電流は、たとえば10%程度増加する。このようなことから、従来では、ファン用モータの電源を設計する際には、蓋用パネルの開状態時におけるファン用モータの最大出力に対応させた電源容量を確保し、電力不足を生じないようにしていたのが実情であった。
【0003】
しかしながら、前記したように、ファン用モータの電源を、蓋用パネルの開状態時に対応させた比較的大きな容量に設計したのでは、モータ駆動用の電源やこれに関連する電気・電子機器類が高価となる。給湯器は、蓋用パネルが閉じられた状態で運転されるのが通常であって、蓋用パネルが開けられるのは、たとえばメンテナンス時などの特殊な時期に限られる。したがって、そのような時期に対応することを目的として、ファン用モータの電源の大容量化を図ることは余り合理的ではない。
そこで、本発明者らは、前記したような不利を解消する手段として、ファン用モータの電源を、蓋用パネルの閉状態時に対応させた容量に設計することを着想した。ところが、単に、このように設計しただけでは、蓋用パネルが開状態とされた際に、電力が不足気味となり、ファンの実回転数が目標回転数に到達しない現象を生じる虞がある。一方、従来においては、ファンの実回転数が目標回転数に達しない状態となった際には、ファンに何らかの異常が生じているものと判断するように構成されているのが通例であった。これでは、ファン用モータの電源を蓋用パネルの閉状態時に対応させた容量に設計した場合に、給湯器の運転時に蓋用パネルが開けられ、実回転数が目標回転数に達しない現象を生じる都度、ファンに異常が発生したものと判断され、給湯器の運転が停止する事態を生じる。従来においては、結局は、そのような不具合を回避することを目的としてファン用モータの電源を大容量にする必要が生じており、電源の小容量化を適切に図ることは難しいものとなっていた。
【0004】
なお、従来においては、本発明にやや近い技術(構成の一部のみが共通する技術)の具体例として、たとえば特許文献1,2に記載の手段がある。特許文献1では、ファン用モータの駆動電流とファンの実回転数とに基づいて、送風流路抵抗および送風量を判断し、この送風量に基づいて燃焼器の燃焼が異常であるか否かを判断し、異常の場合には燃焼器の燃焼を停止させるようにしている。特許文献2では、ファン本体である羽根車に異物が付着するなどしてファン用モータが異常負荷特性となった場合であっても、ファンの回転数を所定回転数となるように制御するが、その際にファン用モータの駆動電流が所定値以下に低下すると、その時点でファンに異常が発生したものと判断している。ところが、これら特許文献1,2に記載された手段のいずれを採用した場合であっても、先に述べた従
来の不具合を適切に解消することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3716827号公報
【特許文献2】特許第2858312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、外装ケースの蓋用パネルが開けられるようなことがなされてもファン用モータを適切に運転させることを可能としつつ、ファン用モータの電源の小容量化などを適切に図ることが可能な給湯器、およびこの給湯器の構成要素として好適に用いることが可能なファン用モータの制御装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される給湯器は、燃焼器に燃焼用空気を供給するためのファンと、開閉可能な蓋用パネルを有し、かつ前記ファンおよび前記燃焼器を内部に収容している外装ケースと、前記ファンを駆動させるファン用モータを制御可能であり、かつ前記ファンの実回転数を検出可能な制御手段と、を備えている、給湯器であって、前記制御手段は、前記ファン用モータの出力に対応して値が変化するモータ出力対応データを監視可能であり、前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記ファン用モータの出力が所定未満に低下していないことにより、前記モータ出力対応データの値が所定範囲内にあるときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断処理を保留する一方、前記ファン用モータの出力が
前記所定未満に低下していることにより、前記モータ出力対応データの値が
前記所定範囲内にないときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断を行なうように構成されていることを特徴としている。
ここで、「ファンに異常が生じた旨の判断処理を保留する」とは、ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合に、このことに基づいてファンに異常が生じたとの判断を直ちには行なわないことを意味する。「保留」の期間は無期限(モータ出力対応データの値が所定範囲内にある状態が、長時間にわたって継続した場合であっても、異常である旨の判断は行なわない)の場合と、有期限(モータ出力対応データの値が所定範囲内にある状態が、予め設定された時間以上継続した場合には、その時点で異常があると判断する)の場合とのいずれであってもよい。なお、給湯器にファンの異常検出手段が別途追加して設けられている場合において、この手段によって異常が検出された場合には、前記の保留の期間であっても、ファンが異常である旨の判断がなされるようにすることができる。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ファン用モータの電源を、外装ケースの蓋用パネルを閉じた状態に対応するように小容量化を図った場合、ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じる場合がある。この現象が、たとえば外装ケースの蓋用パネルが開けられるなどして、ファンの負荷が単に増大し、ファン用モータの電源容量が不足気味になったことに起因するものである場合には、ファン用モータの出力(仕事量)は大きく低下していない。本発明によれば、そのような場合には、モータ出力対応データの値が所定範囲内にあり、ファンが異常である旨の判断がなされないようにすることができる。したがって、給湯器の運転中に蓋用パネルを開ける都度、ファンに異常が生じたと判断される不具合を適切に回避しつつ、ファン用モータの電源の小容量化を図り、これに関連する電気・電子機器類の小型化や
低コスト化を図ることが可能となる。
なお、空気は、低温になるほど、密度が高くなり、かつ粘度が低下する特性を有し、たとえば−20℃程度以下になると、蓋用パネルを閉じたままであっても、ファンの回転数やトルクが、蓋用パネルを開状態にした場合と同様に変化する現象を生じる虞がある。本発明によれば、そのような際にもファンに異常があるものとは処理されないようにする効果が期待できる。
一方、ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記とは異なり、ファン用モータの出力が大きく低下している場合がある。このような現象は、蓋用パネルが開状態とされたようなこととは全く異なることに原因すると考えられ、ファンに実際に異常が生じている可能性が高い。本発明によれば、そのような場合にはファンが異常である旨の判断が的確になされる。したがって、ファンの異常判断の正確性が劣るといった不具合を生じないようにすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記モータ出力対応データの値が
前記所定範囲内にないときには、この状態が所定時間以上継続することを条件として、前記異常が生じた旨の判断を行なうように構成されている。
【0011】
このような構成によれば、ファンに異常があるか否かの判断をより正確に行なうことが可能となり、過誤判断を徹底して防止する上で好ましい。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記モータ出力対応データは、前記ファン用モータの駆動電流または電源電圧に関するデータであり、前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記駆動電流が所定値以上であるとき、または前記電源電圧が所定値未満に低下しているときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断処理は保留される一方、そうでないときには前記ファンに異常が生じた旨の判断が行なわれる構成とされている。
【0013】
このような構成によれば、本発明が意図する動作制御を、ファン用モータの駆動電流または電源電圧に基づき、容易かつ適切に行なうことができる。
【0014】
本発明の第2の側面により提供されるファン用モータの制御装置は、ファンの実回転数を検出可能な回転数検出手段と、前記ファンを駆動させるファン用モータの出力の変化に対応して値が変化するモータ出力対応データを監視可能な制御手段と、を備えており、前記制御手段は、前記ファンの実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合において、前記ファン用モータの出力が所定未満に低下していないことにより、前記モータ出力対応データの値が所定範囲内にあるときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断処理を保留する一方、前記ファン用モータの出力が
前記所定未満に低下していることにより、前記モータ出力対応データの値が
前記所定範囲内にないときには、前記ファンに異常が生じた旨の判断を行なうように構成されていることを特徴としている。
【0015】
このような構成のファン用モータの制御装置は、本発明の第1の側面により提供される給湯器の構成要素として、ファン用モータを制御するのに好適に利用することができ、前記給湯器について述べたのと同様な効果を得ることが可能である。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る給湯器の一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示す給湯器の制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1に示す給湯器Aは、缶体10内に収容された燃焼器11、この燃焼器11に燃焼用空気を供給すべく缶体10内に送風を行なうためのファン13、このファン13を駆動させるファン用モータM、燃焼器11によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なって湯水加熱を行なうための熱交換器12、制御部20を含んで構成されたファン用モータの制御装置2、および前記した各構成要素を内部に収容する外装ケース3を具備している。外装ケース3は、その前面開口部31をフロントカバーとしての蓋用パネル30によって開閉可能とされたものである。
【0020】
ファン用モータの制御装置2は、ファン13を駆動するためのファン用モータMを制御するためのモータ制御部21、ファン用モータMの駆動電流(本発明でいうモータ出力対応データの一例に相当)を検出するための駆動電流検出部22、およびファン用モータMの実回転数を検出するための回転数検出部23を備えている。本実施形態では、ファン13は、シロッコファンであり、ファン用モータMは、ブラシレスの直流モータである。モータ制御部21は、ファン用モータMをたとえばPAM制御(Pulse Amplitude Modulation:パルス電圧振幅波形制御)方式で制御するように構成されている。PAM制御方式およびその制御回路は従来既知であるために、その詳細は省略するが、モータ制御部21は、コンバータ部によって交流電流を全波整流した後に、直流リアクタとスイッチング素子を利用して直流の可変電圧を生成し、これをファン用モータMの巻き線に直接印加させる回路構成である。
【0021】
モータ制御部21は、モータ駆動用の直流電源としての電源部21aを備えた構成となっている。本実施形態では、電源部21aの容量は、外装ケース3の蓋用パネル30が閉じられた状態においてファン13を最大目標回転数で回転させることを可能とする容量に設計されている。この容量は、蓋用パネル30を開けた状態においてファン13を前記の最大目標回転数で回転させる場合の電源容量よりも小容量である。
【0022】
制御部20は、燃焼器11への燃料ガス供給量などを制御しているが、燃焼器11の燃焼駆動に際しては、その燃焼動作が最適となるファン13の目標回転数を判断している。モータ制御部21は、ファン13の回転数が目標回転数となるようにファン用モータMの回転数を制御する。駆動電流検出部22および回転数検出部23としては、特許文献1,2などに記載された従来既知のものと同様な構成とすることができ、その詳細は省略する。
【0023】
制御部20は、マイクロコンピュータを用いて構成されており、給湯器Aの各部の動作制御に加えて、ファン13の異常判断処理をも実行する。この異常判断処理は、ファン13の実回転数、目標回転数、およびファン用モータMの駆動電流に基づいて行なわれ、モータ制御部21の電源部21aの小容量化を図った場合の不具合を適切に解消し得る内容であるが、その詳細については、後述する。
【0024】
次に、前記した給湯器Aの作用を説明する。併せて、制御部20の動作処理手順の一例を、
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0025】
まず、給湯動作を開始すべく燃焼器11が燃焼駆動すると、制御部20はその燃焼が最適な空燃比となるようにファン13の目標回転数を決定し、ファン13の実回転数を目標
回転数に一致させる制御を実行する(S1:YES,S2)。このようなファン13の回転数制御が行なわれている際において、ファン13の実回転数が目標回転数に達しない現象を生じた場合には、制御部20は、ファン用モータMの駆動電流が所定値以上であるか否かを判断する(S3:YES,S4)。その結果、モータ駆動電流が所定値以上(本発明でいうモータ出力対応データの値が所定範囲内にある場合の一例に相当する)であれば、制御部20は、ファン13が異常であるとの判断は行なわず、正常であると判断する(S5)。前記した一連の判断処理は、燃焼器11の燃焼駆動が行なわれている限り継続して行なわれる(S6:NO,S2)。
【0026】
本実施形態においては、既述したように、モータ制御部21の電源部21aの小容量化が図られているために、たとえば給湯器Aの運転中に外装ケース3の蓋用パネル30が開けられた結果、ファン13の給排気抵抗が小さくなって、ファン13の負荷の増加(ファン13の1回転当たりの給排気量の増加)を生じると、電源部21aが容量不足気味となって、ファン13の実回転数が目標回転数に達しない現象を生じる場合がある。ただし、この場合には、ファン13の仕事量、すなわちファン用モータMの出力が大幅に低下している訳ではなく、ファン用モータMの駆動電流が減少することは殆どない。制御部20の前記した処理によれば、このような場合には、ファン13に異常が生じたものとは判断されない。したがって、モータ制御部21の電源部21aの小容量化を図りながらも、蓋用パネル30が開けられる都度ファン13に異常があると過誤判断される不具合を適切に回避することが可能である。
【0027】
なお、本実施形態の給湯器Aにおいては、蓋用パネル30が開けられた状態では、ファン用モータMが電源容量不足気味で運転されることとなる。蓋用パネル30が開けられるのは、メンテナンス時などの特殊な期間に限られ、比較的短時間で蓋用パネル30が元通りに閉じられる。したがって、通常では、ファン用モータMが電源容量不足気味になる状態が長時間は継続しないと考えられる。ただし、蓋用パネル30が開いたまま長時間にわたって給湯器Aが運転されることは余り好ましいものではない。そこで、本発明においては、ステップS4において、モータ駆動電流が所定値以上の状態にある場合であっても、この状態が所定時間以上の長時間にわたって継続している場合には、ファン13が異常であるとの判断をあえて行なうようにしてもよい。
【0028】
先にも述べたが、給湯器Aの設置場所周辺の温度がたとえば−20°程度以下になると、空気の密度が相当に高くなり、かつ空気の粘度も相当に低下することに起因し、蓋用パネルを閉じたままであっても、ファン13の負荷が増大する結果、実回転数が目標回転数に達しない現象を生じる虞がある。本実施形態の給湯器Aにおいては、そのような際にもファン13に異常があるとの過誤判断はなされないようにする効果が得られる。
【0029】
前記とは異なり、ステップS4において、モータ駆動電流が所定値未満の場合には(S4:NO)、その状態が所定時間継続すると、その時点で制御部20はファン13が異常であると判断する(S8:YES,S9)。ファン13の実回転数が目標回転数に達しない状態において、モータ駆動電流が所定値未満に減少する状況は、ファン13の負荷が単に増加したのではなく、それ以外の理由に基づいてファン用モータMの出力が低下しており、ファン13に実際に異常が発生していると考えられる。本実施形態の給湯器Aでは、このような場合にはファン13が異常である旨の判断が的確になされる。なお、ファン13が異常であると判断された場合には、燃焼器11の燃焼駆動を強制的に停止させるとともに、異常の旨の報知動作がなされる(S10)。また、ファン13も停止される(S7)。
【0030】
前記したように、本実施形態の給湯器Aによれば、外装ケース3の蓋用パネル30が開けられる都度、ファン13が異常であるとの過誤判断がなされないようにしつつ、モータ
制御部21の電源部21aの小容量化を適切に図ることが可能である。加えて、ファン13に実際に異常が生じた場合には、その旨を適切に察知することが可能であり、異常検出の信頼性も高いものとすることができる。
【0031】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る給湯器およびファン用モータの制御装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。本発明でいう給湯器には、温水暖房熱源機も含まれる。
【0032】
上述した実施形態では、本発明でいう「モータ出力対応データ」として、ファン用モータの駆動電流を用いているが、本発明はこれに限定されない。モータ出力対応データとしては、たとえば電源部21aの電圧(電源電圧)を用いることも可能である。この点をより具体的に説明すると、ファン13の負荷が増大することによって電源部21aが容量不足気味になると、電源部21aの電圧は低下する。したがって、ファン13の実回転数が目標回転数に達しない場合において、前記の電圧が所定値未満に低下している場合には、蓋用パネル30が開けられるなどしてファン13の負荷が増大したものと考えられ、ファン13に異常は発生していないものと判断することができる。これに対し、前記とは異なり、実回転数が目標回転数に達していない場合において、前記の電圧が低下しておらず、所定値以上であるときには、ファン13に異常が発生しているものと判断することができる。本発明でいう「モータ出力対応データ」は、ファン用モータの出力に対応して値が変化するデータであればよく、モータの出力(電力)そのものの値であってもよい。
【0033】
ファン用モータとしては、直流モータに限らず、たとえば交流のインダクションモータなどを用いることも可能であり、具体的な種類は問わない。ファン用モータの制御方式も限定されず、PAM制御方式に代えて、たとえばPWM制御(Pulse Width Modulation)方式、あるいはPAM制御方式とPWM制御方式との複合方式を採用するといったことも可能である。本発明は、蓋用パネルを有する外装ケース内に、燃焼器およびファンが収容された構成を有する給湯器全般に適用することが可能である。蓋用パネルは、フロントカバータイプのものに限らず、たとえば背面カバータイプや側面カバータイプのものなども含む。本発明に係るファン用モータの制御装置は、給湯器の構成要素として用いるのに好適であるが、これ以外の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0034】
A 給湯器
M ファン用モータ
2 ファン用モータの制御装置(制御手段)
3 外装ケース
11 燃焼器
13 ファン
20 制御部
21 モータ制御部(制御部)
21a 電源部(モータ駆動電源)
22 駆動電流検出部
23 回転数検出部
30 蓋用パネル