特許第5930392号(P5930392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5930392-殺菌装置 図000002
  • 特許5930392-殺菌装置 図000003
  • 特許5930392-殺菌装置 図000004
  • 特許5930392-殺菌装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930392
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/04 20060101AFI20160526BHJP
   A23L 3/12 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A61L2/04
   A23L3/12
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-132580(P2012-132580)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-230340(P2013-230340A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-86820(P2012-86820)
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】金澤 健司
(72)【発明者】
【氏名】若狭 暁
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰三
(72)【発明者】
【氏名】松藤 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 康
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−123872(JP,A)
【文献】 実開昭59−193428(JP,U)
【文献】 実開昭51−86786(JP,U)
【文献】 特開昭52−68783(JP,A)
【文献】 特開昭52−128246(JP,A)
【文献】 特開昭51−104983(JP,A)
【文献】 特開平6−181967(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1745804(EP,A1)
【文献】 特開昭62−186775(JP,A)
【文献】 特表2005−519824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/04
A23L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に被処理物を収容すると共に水を貯留し、この貯留水を循環手段で循環させると共に、この循環水を加熱手段により加熱することで、前記被処理物を加熱して殺菌する殺菌装置であって、
前記循環手段は、循環ポンプの作動により、前記処理槽の循環水取出し口から水を取り出し、前記処理槽の循環水戻し口へ水を戻し、
前記循環水取出し口と前記循環水戻し口との内、一方または双方の位置を変えることで、前記処理槽内の水の流れを変更できる殺菌装置であり、
前記処理槽の下部が下部切替弁を介して前記循環ポンプの吸込口に接続される一方、前記処理槽の上部が上部切替弁を介して前記循環ポンプの吐出口に接続され、
前記処理槽下部から前記循環ポンプへの循環水送り路の内、前記下部切替弁より下流部と、前記循環ポンプから前記処理槽上部への循環水戻し路の内、前記上部切替弁より上流部とが、左バイパス路と右バイパス路とで接続されており、
左バイパス路は、前記処理槽の左端部への分岐路を備えると共に、この分岐路との分岐部の前後にバイパス切替弁が設けられており、
右バイパス路は、前記処理槽の右端部への分岐路を備えると共に、この分岐路との分岐部の前後にバイパス切替弁が設けられており、
前記各切替弁の開閉により、前記処理槽内の水の流れを変更する
ことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記加熱手段を作動させて前記被処理物を加熱殺菌する殺菌工程と、前記加熱手段を作動させないで前記被処理物を冷却する冷却工程とを順に実行する殺菌装置であって、
前記殺菌工程と前記冷却工程との内、一方または双方の工程の途中で、前記処理槽内の水の流れを変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品などの加熱殺菌やその後の冷却に用いられる殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、処理槽(10)内の上下左右に噴射口(21)を設けておき、下方の噴射口(21)から蒸気を噴射して被処理物(r)を加熱殺菌後、被処理物(r)を浸漬しない程度まで処理槽(10)内に水を貯留し、その水を上下左右の噴射口(21)から噴射して循環させ、被処理物(r)を冷却する殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−181967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明は、被処理物を蒸気で殺菌するタイプの殺菌装置であり、被処理物を熱水に浸けて殺菌する殺菌装置には利用できない。また、前記特許文献1に記載の発明は、上方および左右の噴射口は、被処理物の冷却時にのみ用いられ、冷却時における被処理物の品温の均一化を図るために(段落番号0011)、処理槽の上下左右から冷却水を噴射する構成である。さらに、前記特許文献1に記載の発明は、処理槽内の底部にしか水が溜まらないので、処理槽内の底部からしか循環水を取り出せず、循環水の流し方に制限がある。
【0005】
一方、従来、処理槽内に被処理物を収容すると共に、この被処理物を水没させるまで水を貯留して、処理槽の底部からの水を循環ポンプで処理槽の上部へ戻し、その循環水を蒸気により加熱する殺菌装置も知られている。ところが、このような構成では、処理槽内の上部に配置された被処理物には熱水が当たるが、それにより熱水が左右に逃げてしまい、下方の被処理物には熱水が当たりにくい。従って、処理槽内の貯留水は場所により温度差を生じ、一部の被処理物が殺菌不良となるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被処理物を均一に加熱して殺菌不良を防止でき、また、被処理物を均一に冷却できる殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽内に被処理物を収容すると共に水を貯留し、この貯留水を循環手段で循環させると共に、この循環水を加熱手段により加熱することで、前記被処理物を加熱して殺菌する殺菌装置であって、前記循環手段は、循環ポンプの作動により、前記処理槽の循環水取出し口から水を取り出し、前記処理槽の循環水戻し口へ水を戻し、前記循環水取出し口と前記循環水戻し口との内、一方または双方の位置を変えることで、前記処理槽内の水の流れを変更できる殺菌装置であり、前記処理槽の下部が下部切替弁を介して前記循環ポンプの吸込口に接続される一方、前記処理槽の上部が上部切替弁を介して前記循環ポンプの吐出口に接続され、前記処理槽下部から前記循環ポンプへの循環水送り路の内、前記下部切替弁より下流部と、前記循環ポンプから前記処理槽上部への循環水戻し路の内、前記上部切替弁より上流部とが、左バイパス路と右バイパス路とで接続されており、左バイパス路は、前記処理槽の左端部への分岐路を備えると共に、この分岐路との分岐部の前後にバイパス切替弁が設けられており、右バイパス路は、前記処理槽の右端部への分岐路を備えると共に、この分岐路との分岐部の前後にバイパス切替弁が設けられており、前記各切替弁の開閉により、前記処理槽内の水の流れを変更することを特徴とする殺菌装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、循環水取出し口の位置を変えたり、循環水戻し口の位置を変えたりすることで、処理槽内の水の流れを変更することができる。これにより、被処理物の均一な加熱を実現して、被処理物の殺菌不良を防止することができる。また、殺菌工程後の冷却工程において実施すれば、被処理物を均一に冷却することができる。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、簡易な構成で、処理槽内の水の流れを適宜切り替えて、被処理物を均一に加熱したり冷却したりすることができる。
【0015】
さらに、請求項2に記載の発明は、前記加熱手段を作動させて前記被処理物を加熱殺菌する殺菌工程と、前記加熱手段を作動させないで前記被処理物を冷却する冷却工程とを順に実行する殺菌装置であって、前記殺菌工程と前記冷却工程との内、一方または双方の工程の途中で、前記処理槽内の水の流れを変更することを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置である。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、殺菌工程と冷却工程との内、一方または双方の工程の途中で、処理槽内の水の流れを変更することで、被処理物を均一に加熱したり冷却したりすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理物を均一に加熱して殺菌不良を防止したり、あるいは、被処理物を均一に冷却したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の殺菌装置の実施例1の主要部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
図2図1の殺菌装置の流路切替例を示す概略図である。
図3】本発明の殺菌装置の実施例2の主要部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
図4図3の殺菌装置の流路切替例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の殺菌装置1の実施例1の主要部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例の殺菌装置1は、処理槽2内に収容した被処理物3を熱水に沈めて加熱殺菌後、冷却する装置である。被処理物3は、特に問わないが、典型的にはレトルト食品である。
【0021】
本実施例の殺菌装置1は、被処理物3が収容される処理槽2と、この処理槽2内の水を循環する循環手段4と、この循環水を加熱する加熱手段5とを備える。その他、殺菌装置1は、典型的には、処理槽2内への給水手段(図示省略)と、処理槽2外への排水手段(図示省略)と、処理槽2内の加圧手段(図示省略)と、加圧された処理槽2内からの排気手段(図示省略)の他、処理槽2内への熱水を予め製造しておく貯湯槽(図示省略)などを備える。
【0022】
処理槽2は、被処理物3を収容する中空容器である。処理槽2は、その形状を特に問わないが、本実施例では水平に配置された円筒材を備え、この円筒材は、一方の開口部が閉塞されており、他方の開口部が扉で開閉可能とされている。従って、扉を開けることで、処理槽2に対し被処理物3を出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽2の開口部を気密に閉じることができる。
【0023】
処理槽2内には、被処理物3が収容されると共に、この被処理物3を水没させるまで水が貯留される。貯留水を熱水とすれば、被処理物3を加熱して殺菌することができ、貯留水を冷却水とすれば、被処理物3を冷却することができる。
【0024】
循環手段4は、処理槽2内の水を循環する。循環手段4は、循環ポンプ6の作動により、処理槽2の循環水取出し口(図1では処理槽2の下部2bおよび/または右端部2d)から水を取り出し、処理槽2の循環水戻し口(図1では処理槽2の上部2aおよび/または左端部2c)へ水を戻すことで、処理槽2内の貯留水を循環する。
【0025】
循環水取出し口または循環水戻し口として利用できる循環水出入口(2a〜2d)は、典型的には処理槽2の上下および左右に設けられており、その内のいずれの箇所を用いて循環水を循環させるかにより、処理槽2内の水の流れを変更できる。本実施例では、処理槽2の下部2bと右端部2dの循環水出入口が、循環水取出し口として利用され、処理槽2の上部2aと左端部2cの循環水出入口が、循環水戻し口として利用される。
【0026】
循環水の循環中、循環水取出し口と循環水戻し口との内、一方または双方の位置を変えることで、処理槽2内の水の流れを変更できる。図1において、循環水取出し口としては、処理槽2の下部2bと右端部2dとを利用可能であるが、その内のいずれを用いるか双方を用いるかを変えたり、循環水戻し口としては、処理槽2の上部2aと左端部2cとを利用可能であるが、その内のいずれを用いるか双方を用いるかを変えたりすることで、処理槽2内の水の流れを変更できる。
【0027】
本実施例の循環手段4は、処理槽2の下部2bと、処理槽2の左右一端部(図示例では右端部2d)とが、それぞれ切替弁8,10を介して、循環ポンプ6の吸込口に接続されている。また、処理槽2の上部2aと、処理槽2の左右他端部(図示例では左端部2c)とが、それぞれ切替弁7,9を介して循環ポンプ6の吐出口に接続されている。ここで、図1では、左右一端部とは右端部、左右他端部とは左端部であるが、左右を入れ替えて、左右一端部を左端部とし、左右他端部を右端部としてもよい。
【0028】
さらに詳細に説明すると、処理槽2の下部2bから循環ポンプ6への循環水送り路11(11a)と、処理槽2の右端部2dから循環ポンプ6への循環水送り路11(11b)とは、循環ポンプ6の側で共通の管路とされて、循環ポンプ6の吸込口に接続されている。そして、処理槽2の下部2bから循環ポンプ6への循環水送り路11aには、下部切替弁8が設けられ、処理槽2の右端部2dから循環ポンプ6への循環水送り路11bには、右部切替弁10が設けられている。
【0029】
一方、循環ポンプ6から処理槽2の上部2aへの循環水戻し路12(12a)と、循環ポンプ6から処理槽2の左端部2cへの循環水戻し路12(12b)とは、循環ポンプ6の側で共通の管路とされて、循環ポンプ6の吐出口に接続されている。そして、循環ポンプ6から処理槽2の上部2aへの循環水戻し路12aには、上部切替弁7が設けられ、循環ポンプ6から処理槽2の左端部2cへの循環水戻し路12bには、左部切替弁9が設けられている。
【0030】
従って、上部切替弁7、下部切替弁8、左部切替弁9および右部切替弁10の開閉を制御することで、処理槽2内の貯留水の流路を切り替えることができる。
【0031】
図2は、本実施例の殺菌装置1の流路切替例を示す概略図である。この図において、各弁7〜10は、白色が開放状態を示しており、黒色が閉鎖状態を示している。
【0032】
同図(a)に示すように、左部切替弁9および右部切替弁10を閉じる一方、上部切替弁7および下部切替弁8を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の下部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の上部へ戻すことができ、処理槽2内では上から下へ向けた流れを作ることができる。
【0033】
同図(b)に示すように、上部切替弁7および下部切替弁8を閉じる一方、左部切替弁9および右部切替弁10を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の右端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の左端部へ戻すことができ、処理槽2内では左から右へ向けた流れを作ることができる。
【0034】
ところで、処理槽2内へ循環水を戻す際や、処理槽2外へ循環水を取り出す際には、処理槽2内の上部、下部、左端部または右端部においてある程度の領域で水を吐出または吸込できるように、適宜のノズル13などを設けておいてもよい(図1)。
【0035】
加熱手段5は、循環手段4による循環水を加熱する。加熱手段5は、その構成を特に問わないが、本実施例では、循環水への給蒸手段とされている。具体的には、本実施例では、循環ポンプ6の出口側において、循環水戻し路12には給蒸路14が接続されており、循環水戻し路12と給蒸路14との接続部には、蒸気導入手段(図示省略)が設けられている。また、給蒸路14には給蒸弁15が設けられている。従って、給蒸弁15を開けることで、循環水戻し路12内の循環水に蒸気導入手段によって蒸気を吹き込んで、循環水ひいては処理槽2内の貯留水を加熱することができる。処理槽2に設けた温度センサ(図示省略)の検出温度に基づき給蒸弁15を制御すれば、処理槽2内の貯留水の温度を所望に調整することができる。
【0036】
本実施例の殺菌装置1によれば、処理槽2内に被処理物3を収容すると共に、この被処理物3を沈める水位まで熱水を貯留して、被処理物3を加熱して殺菌することができる。この殺菌工程中、循環手段4を作動させると共に、処理槽2内の温度を殺菌温度に維持するように加熱手段5を制御する。また、殺菌工程中、図2に基づき説明したように、熱水の流れを途中で切り替える(たとえば設定時間ごとに切り替える)ことで、被処理物3をムラなく加熱して殺菌することができる。処理槽2内が殺菌温度以上で殺菌時間経過すると、殺菌工程を終了する。
【0037】
なお、殺菌工程では、処理槽2内の被処理物3が加熱されることで、被処理物3が膨張して包装(レトルトパウチなど)が破裂するおそれがあるので、処理槽2内を加圧して、大気圧を超える圧力(処理槽内温度相当の飽和蒸気圧力よりもやや高圧)とするのがよい。そのために、加圧手段と排気手段とを制御して、処理槽2内への加圧空気の送り込みと、処理槽2内からの排気とを調整して、処理槽2内を所望圧力に調整する。
【0038】
被処理物3を加熱殺菌後には、被処理物3の冷却が図られる。それには、処理槽2内の熱水を冷却水に入れ替えた状態で、循環手段4を作動させればよい。冷却工程では、加熱手段5は作動させない。冷却工程中、図2に基づき説明したように、冷却水の流れを途中で切り替える(たとえば設定時間ごとに切り替える)ことで、被処理物3をムラなく冷却することができる。所定の冷却時間を経過すると、冷却工程を終了する。
【0039】
なお、冷却工程では、加圧手段により処理槽2内の貯留水中へ加圧空気を供給して、バブリングにより処理槽2内の貯留水を撹拌してもよい。また、給水手段と排水手段とを制御して、処理槽2内の水を徐々に給排水して入れ替え、処理槽2内の貯留水の水温の低下を図ってもよい。あるいは、場合により、処理槽2内の貯留水の全部の排水と、処理槽2内への冷却水の給水とを繰り返して、被処理物3の冷却を図ってもよい。
【0040】
冷却工程後には、排水手段により処理槽2内から排水すると共に、排気手段により処理槽2内が大気圧に戻される。これにより、処理槽2内から被処理物3を取り出すことができる。
【実施例2】
【0041】
図3は、本発明の殺菌装置1の実施例2の主要部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例2の殺菌装置1も、基本的には前記実施1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0042】
本実施例2の殺菌装置1は、循環手段4の構成において、前記実施例1と異なる。前記実施例1では、処理槽2の下部2bと右端部2dとの内、一方または双方を循環水取出し口として利用でき、処理槽2の上部2aと左端部2cとの内、一方または双方を循環水戻し口として利用できたが(図2)、本実施例2では、処理槽2の下部2bと左右両端部2c,2dとの内、いずれか一以上を循環水取出し口として利用でき、処理槽2の上部2aと左右両端部2c,2dとの内、いずれか一以上を循環水戻し口として利用できる(図4)。
【0043】
本実施例の循環手段4は、処理槽2の下部が下部切替弁8を介して循環ポンプ6の吸込口に接続される一方、処理槽2の上部が上部切替弁7を介して循環ポンプ6の吐出口に接続されている。また、処理槽2下部から循環ポンプ6への循環水送り路11の内、下部切替弁8より下流部と、循環ポンプ6から処理槽2上部への循環水戻し路12の内、上部切替弁7より上流部とが、左バイパス路16と右バイパス路17とで接続されている。そして、左バイパス路16は、処理槽2の左端部への分岐路18を備えると共に、この分岐路18との分岐部の前後にバイパス切替弁(左上切替弁19、左下切替弁20)が設けられている。同様に、右バイパス路17は、処理槽2の右端部への分岐路21を備えると共に、この分岐路21との分岐部の前後にバイパス切替弁(右上切替弁22、右下切替弁23)が設けられている。
【0044】
従って、上部切替弁7、下部切替弁8、左上切替弁19、左下切替弁20、右上切替弁22および右下切替弁23の開閉を制御することで、処理槽2内の貯留水の流路を切り替えることができる。
【0045】
図4は、本実施例の殺菌装置1の流路切替例を示す概略図である。この図において、各弁7,8,19,20,22,23は、白色が開放状態を示しており、黒色が閉鎖状態を示している。また、ハッチングを入れた弁は、閉鎖状態であるが、所望により開放状態としてもよい旨を示している。
【0046】
同図(a)に示すように、左上切替弁19、左下切替弁20、右上切替弁22および右下切替弁23を閉じる一方、上部切替弁7および下部切替弁8を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の下部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の上部へ戻すことができ、処理槽2内では上から下へ向けた流れを作ることができる。
【0047】
同図(b)に示すように、上部切替弁7、左下切替弁20および右下切替弁23を閉じる一方、下部切替弁8、左上切替弁19および右上切替弁22を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の下部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の左右両端部へ戻すことができ、処理槽2内では左右両端部から下方へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、上部切替弁7を開けてもよい。
【0048】
同図(c)に示すように、下部切替弁8、左上切替弁19および右上切替弁22を閉じる一方、上部切替弁7、左下切替弁20および右下切替弁23を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の左右両端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の上部へ戻すことができ、処理槽2内では上部から左右両端部へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、下部切替弁8を開けてもよい。
【0049】
同図(d)に示すように、上部切替弁7、下部切替弁8、左下切替弁20および右上切替弁22を閉じる一方、左上切替弁19および右下切替弁23を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の右端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の左端部へ戻すことができ、処理槽2内では左から右へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、上部切替弁7と下部切替弁8との内、一方または双方を開けてもよい。
【0050】
同図(e)に示すように、上部切替弁7、下部切替弁8、左上切替弁19および右下切替弁23を閉じる一方、左下切替弁20および右上切替弁22を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の左端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の右端部へ戻すことができ、処理槽2内では右から左へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、上部切替弁7と下部切替弁8との内、一方または双方を開けてもよい。
【0051】
本実施例2でも、循環ポンプ6の出口側において、循環水戻し路12には給蒸路14が接続されており、この給蒸路14には給蒸弁15が設けられている。給蒸弁15を開けることで、循環水戻し路12内の循環水に蒸気を供給して、循環水ひいては処理槽2内の貯留水を加熱することができる。処理槽2に設けた温度センサ(図示省略)の検出温度に基づき給蒸弁15を制御すれば、処理槽2内の貯留水の温度を所望に調整することができる。
【0052】
本実施例2でも、処理槽2内に被処理物3を収容すると共に、この被処理物3を沈める水位まで熱水を貯留して、被処理物3を加熱して殺菌することができる。また、殺菌後には、熱水に代えて冷却水を処理槽2内に貯留して、被処理物3を冷却することができる。殺菌工程や冷却工程では、循環手段4を作動させることで、処理槽2内の貯留水の循環が図られる。そして、本実施例2でも、殺菌工程と冷却工程との内、一方または双方の工程の途中で、図4に基づき説明したように、水の流れを途中で切り替えることで、被処理物3をムラなく加熱または冷却することができる。その他の構成および制御は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0053】
本発明の殺菌装置1は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、処理槽2内の貯留水を循環させる殺菌装置1において、循環水取出し口と循環水戻し口との内、一方または双方の位置を変えることで、処理槽2内の水の流れを変更できるのであれば、その他の構成および制御は適宜に変更可能である。
【0054】
また、前記各実施例では、基本的には殺菌工程と冷却工程との双方で、処理槽2内の水の流れを変更する例を示したが、このような流路変更は、場合により、殺菌工程でのみ行うことができ、あるいは、冷却工程でのみ行うことができる。
【0055】
また、前記各実施例において、循環水戻し口からの水(熱水または冷却水)が被処理物3に当たらず迂回して循環水取出し口へ流れないように、処理槽2内や循環経路(循環手段4による循環水の配管)に適宜の対策を施してもよい。つまり、温度ムラ対策として、被処理物3に熱水または冷却水が均一に当たるように、処理槽2内や循環経路(特に処理槽2との接続部付近)に、たとえば、邪魔板、パンチングメタルまたは整流板などを配置してもよい。
【0056】
また、前記各実施例では、循環水を加熱するための給蒸路14は、循環水戻し路12に接続したが、場合により、処理槽2に接続して、処理槽2内の貯留水中に直接に蒸気を送り込んでもよい。また、循環水に直接に蒸気を送り込むことに代えて、循環水戻し路12に熱交換器を設置して、その熱交換器において、循環水とそれを加熱するための蒸気を間接熱交換したり、循環水とそれを冷却するための冷却水を間接熱交換したりしてもよい。
【0057】
さらに、前記各実施例では、循環水取出し口または循環水戻し口として利用できる循環水出入口2a〜2dは、処理槽2の上下左右にのみ設けたが、これに代えてまたはこれに加えて、処理槽2の斜め上部や斜め下部などに設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 殺菌装置
2 処理槽
2a 上部
2b 下部
2c 左端部
2d 右端部
3 被処理物
4 循環手段
5 加熱手段
6 循環ポンプ
7 上部切替弁
8 下部切替弁
9 左部切替弁
10 右部切替弁
11 循環水送り路
12 循環水戻し路
13 ノズル
14 給蒸路
15 給蒸弁
16 左バイパス路
17 右バイパス路
18 分岐路
19 左上切替弁(バイパス切替弁)
20 左下切替弁(バイパス切替弁)
21 分岐路
22 右上切替弁(バイパス切替弁)
23 右下切替弁(バイパス切替弁)
図1
図2
図3
図4