【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の殺菌装置1の実施例1の主要部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例の殺菌装置1は、処理槽2内に収容した被処理物3を熱水に沈めて加熱殺菌後、冷却する装置である。被処理物3は、特に問わないが、典型的にはレトルト食品である。
【0021】
本実施例の殺菌装置1は、被処理物3が収容される処理槽2と、この処理槽2内の水を循環する循環手段4と、この循環水を加熱する加熱手段5とを備える。その他、殺菌装置1は、典型的には、処理槽2内への給水手段(図示省略)と、処理槽2外への排水手段(図示省略)と、処理槽2内の加圧手段(図示省略)と、加圧された処理槽2内からの排気手段(図示省略)の他、処理槽2内への熱水を予め製造しておく貯湯槽(図示省略)などを備える。
【0022】
処理槽2は、被処理物3を収容する中空容器である。処理槽2は、その形状を特に問わないが、本実施例では水平に配置された円筒材を備え、この円筒材は、一方の開口部が閉塞されており、他方の開口部が扉で開閉可能とされている。従って、扉を開けることで、処理槽2に対し被処理物3を出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽2の開口部を気密に閉じることができる。
【0023】
処理槽2内には、被処理物3が収容されると共に、この被処理物3を水没させるまで水が貯留される。貯留水を熱水とすれば、被処理物3を加熱して殺菌することができ、貯留水を冷却水とすれば、被処理物3を冷却することができる。
【0024】
循環手段4は、処理槽2内の水を循環する。循環手段4は、循環ポンプ6の作動により、処理槽2の循環水取出し口(
図1では処理槽2の下部2bおよび/または右端部2d)から水を取り出し、処理槽2の循環水戻し口(
図1では処理槽2の上部2aおよび/または左端部2c)へ水を戻すことで、処理槽2内の貯留水を循環する。
【0025】
循環水取出し口または循環水戻し口として利用できる循環水出入口(2a〜2d)は、典型的には処理槽2の上下および左右に設けられており、その内のいずれの箇所を用いて循環水を循環させるかにより、処理槽2内の水の流れを変更できる。本実施例では、処理槽2の下部2bと右端部2dの循環水出入口が、循環水取出し口として利用され、処理槽2の上部2aと左端部2cの循環水出入口が、循環水戻し口として利用される。
【0026】
循環水の循環中、循環水取出し口と循環水戻し口との内、一方または双方の位置を変えることで、処理槽2内の水の流れを変更できる。
図1において、循環水取出し口としては、処理槽2の下部2bと右端部2dとを利用可能であるが、その内のいずれを用いるか双方を用いるかを変えたり、循環水戻し口としては、処理槽2の上部2aと左端部2cとを利用可能であるが、その内のいずれを用いるか双方を用いるかを変えたりすることで、処理槽2内の水の流れを変更できる。
【0027】
本実施例の循環手段4は、処理槽2の下部2bと、処理槽2の左右一端部(図示例では右端部2d)とが、それぞれ切替弁8,10を介して、循環ポンプ6の吸込口に接続されている。また、処理槽2の上部2aと、処理槽2の左右他端部(図示例では左端部2c)とが、それぞれ切替弁7,9を介して循環ポンプ6の吐出口に接続されている。ここで、
図1では、左右一端部とは右端部、左右他端部とは左端部であるが、左右を入れ替えて、左右一端部を左端部とし、左右他端部を右端部としてもよい。
【0028】
さらに詳細に説明すると、処理槽2の下部2bから循環ポンプ6への循環水送り路11(11a)と、処理槽2の右端部2dから循環ポンプ6への循環水送り路11(11b)とは、循環ポンプ6の側で共通の管路とされて、循環ポンプ6の吸込口に接続されている。そして、処理槽2の下部2bから循環ポンプ6への循環水送り路11aには、下部切替弁8が設けられ、処理槽2の右端部2dから循環ポンプ6への循環水送り路11bには、右部切替弁10が設けられている。
【0029】
一方、循環ポンプ6から処理槽2の上部2aへの循環水戻し路12(12a)と、循環ポンプ6から処理槽2の左端部2cへの循環水戻し路12(12b)とは、循環ポンプ6の側で共通の管路とされて、循環ポンプ6の吐出口に接続されている。そして、循環ポンプ6から処理槽2の上部2aへの循環水戻し路12aには、上部切替弁7が設けられ、循環ポンプ6から処理槽2の左端部2cへの循環水戻し路12bには、左部切替弁9が設けられている。
【0030】
従って、上部切替弁7、下部切替弁8、左部切替弁9および右部切替弁10の開閉を制御することで、処理槽2内の貯留水の流路を切り替えることができる。
【0031】
図2は、本実施例の殺菌装置1の流路切替例を示す概略図である。この図において、各弁7〜10は、白色が開放状態を示しており、黒色が閉鎖状態を示している。
【0032】
同図(a)に示すように、左部切替弁9および右部切替弁10を閉じる一方、上部切替弁7および下部切替弁8を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の下部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の上部へ戻すことができ、処理槽2内では上から下へ向けた流れを作ることができる。
【0033】
同図(b)に示すように、上部切替弁7および下部切替弁8を閉じる一方、左部切替弁9および右部切替弁10を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の右端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の左端部へ戻すことができ、処理槽2内では左から右へ向けた流れを作ることができる。
【0034】
ところで、処理槽2内へ循環水を戻す際や、処理槽2外へ循環水を取り出す際には、処理槽2内の上部、下部、左端部または右端部においてある程度の領域で水を吐出または吸込できるように、適宜のノズル13などを設けておいてもよい(
図1)。
【0035】
加熱手段5は、循環手段4による循環水を加熱する。加熱手段5は、その構成を特に問わないが、本実施例では、循環水への給蒸手段とされている。具体的には、本実施例では、循環ポンプ6の出口側において、循環水戻し路12には給蒸路14が接続されており、循環水戻し路12と給蒸路14との接続部には、蒸気導入手段(図示省略)が設けられている。また、給蒸路14には給蒸弁15が設けられている。従って、給蒸弁15を開けることで、循環水戻し路12内の循環水に蒸気導入手段によって蒸気を吹き込んで、循環水ひいては処理槽2内の貯留水を加熱することができる。処理槽2に設けた温度センサ(図示省略)の検出温度に基づき給蒸弁15を制御すれば、処理槽2内の貯留水の温度を所望に調整することができる。
【0036】
本実施例の殺菌装置1によれば、処理槽2内に被処理物3を収容すると共に、この被処理物3を沈める水位まで熱水を貯留して、被処理物3を加熱して殺菌することができる。この殺菌工程中、循環手段4を作動させると共に、処理槽2内の温度を殺菌温度に維持するように加熱手段5を制御する。また、殺菌工程中、
図2に基づき説明したように、熱水の流れを途中で切り替える(たとえば設定時間ごとに切り替える)ことで、被処理物3をムラなく加熱して殺菌することができる。処理槽2内が殺菌温度以上で殺菌時間経過すると、殺菌工程を終了する。
【0037】
なお、殺菌工程では、処理槽2内の被処理物3が加熱されることで、被処理物3が膨張して包装(レトルトパウチなど)が破裂するおそれがあるので、処理槽2内を加圧して、大気圧を超える圧力(処理槽内温度相当の飽和蒸気圧力よりもやや高圧)とするのがよい。そのために、加圧手段と排気手段とを制御して、処理槽2内への加圧空気の送り込みと、処理槽2内からの排気とを調整して、処理槽2内を所望圧力に調整する。
【0038】
被処理物3を加熱殺菌後には、被処理物3の冷却が図られる。それには、処理槽2内の熱水を冷却水に入れ替えた状態で、循環手段4を作動させればよい。冷却工程では、加熱手段5は作動させない。冷却工程中、
図2に基づき説明したように、冷却水の流れを途中で切り替える(たとえば設定時間ごとに切り替える)ことで、被処理物3をムラなく冷却することができる。所定の冷却時間を経過すると、冷却工程を終了する。
【0039】
なお、冷却工程では、加圧手段により処理槽2内の貯留水中へ加圧空気を供給して、バブリングにより処理槽2内の貯留水を撹拌してもよい。また、給水手段と排水手段とを制御して、処理槽2内の水を徐々に給排水して入れ替え、処理槽2内の貯留水の水温の低下を図ってもよい。あるいは、場合により、処理槽2内の貯留水の全部の排水と、処理槽2内への冷却水の給水とを繰り返して、被処理物3の冷却を図ってもよい。
【0040】
冷却工程後には、排水手段により処理槽2内から排水すると共に、排気手段により処理槽2内が大気圧に戻される。これにより、処理槽2内から被処理物3を取り出すことができる。
【実施例2】
【0041】
図3は、本発明の殺菌装置1の実施例2の主要部を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例2の殺菌装置1も、基本的には前記実施1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0042】
本実施例2の殺菌装置1は、循環手段4の構成において、前記実施例1と異なる。前記実施例1では、処理槽2の下部2bと右端部2dとの内、一方または双方を循環水取出し口として利用でき、処理槽2の上部2aと左端部2cとの内、一方または双方を循環水戻し口として利用できたが(
図2)、本実施例2では、処理槽2の下部2bと左右両端部2c,2dとの内、いずれか一以上を循環水取出し口として利用でき、処理槽2の上部2aと左右両端部2c,2dとの内、いずれか一以上を循環水戻し口として利用できる(
図4)。
【0043】
本実施例の循環手段4は、処理槽2の下部が下部切替弁8を介して循環ポンプ6の吸込口に接続される一方、処理槽2の上部が上部切替弁7を介して循環ポンプ6の吐出口に接続されている。また、処理槽2下部から循環ポンプ6への循環水送り路11の内、下部切替弁8より下流部と、循環ポンプ6から処理槽2上部への循環水戻し路12の内、上部切替弁7より上流部とが、左バイパス路16と右バイパス路17とで接続されている。そして、左バイパス路16は、処理槽2の左端部への分岐路18を備えると共に、この分岐路18との分岐部の前後にバイパス切替弁(左上切替弁19、左下切替弁20)が設けられている。同様に、右バイパス路17は、処理槽2の右端部への分岐路21を備えると共に、この分岐路21との分岐部の前後にバイパス切替弁(右上切替弁22、右下切替弁23)が設けられている。
【0044】
従って、上部切替弁7、下部切替弁8、左上切替弁19、左下切替弁20、右上切替弁22および右下切替弁23の開閉を制御することで、処理槽2内の貯留水の流路を切り替えることができる。
【0045】
図4は、本実施例の殺菌装置1の流路切替例を示す概略図である。この図において、各弁7,8,19,20,22,23は、白色が開放状態を示しており、黒色が閉鎖状態を示している。また、ハッチングを入れた弁は、閉鎖状態であるが、所望により開放状態としてもよい旨を示している。
【0046】
同図(a)に示すように、左上切替弁19、左下切替弁20、右上切替弁22および右下切替弁23を閉じる一方、上部切替弁7および下部切替弁8を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の下部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の上部へ戻すことができ、処理槽2内では上から下へ向けた流れを作ることができる。
【0047】
同図(b)に示すように、上部切替弁7、左下切替弁20および右下切替弁23を閉じる一方、下部切替弁8、左上切替弁19および右上切替弁22を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の下部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の左右両端部へ戻すことができ、処理槽2内では左右両端部から下方へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、上部切替弁7を開けてもよい。
【0048】
同図(c)に示すように、下部切替弁8、左上切替弁19および右上切替弁22を閉じる一方、上部切替弁7、左下切替弁20および右下切替弁23を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の左右両端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の上部へ戻すことができ、処理槽2内では上部から左右両端部へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、下部切替弁8を開けてもよい。
【0049】
同図(d)に示すように、上部切替弁7、下部切替弁8、左下切替弁20および右上切替弁22を閉じる一方、左上切替弁19および右下切替弁23を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の右端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の左端部へ戻すことができ、処理槽2内では左から右へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、上部切替弁7と下部切替弁8との内、一方または双方を開けてもよい。
【0050】
同図(e)に示すように、上部切替弁7、下部切替弁8、左上切替弁19および右下切替弁23を閉じる一方、左下切替弁20および右上切替弁22を開けて循環ポンプ6を運転すれば、処理槽2の左端部からの水を、循環ポンプ6を介して処理槽2の右端部へ戻すことができ、処理槽2内では右から左へ向けた流れを作ることができる。なお、破線で示すように、上部切替弁7と下部切替弁8との内、一方または双方を開けてもよい。
【0051】
本実施例2でも、循環ポンプ6の出口側において、循環水戻し路12には給蒸路14が接続されており、この給蒸路14には給蒸弁15が設けられている。給蒸弁15を開けることで、循環水戻し路12内の循環水に蒸気を供給して、循環水ひいては処理槽2内の貯留水を加熱することができる。処理槽2に設けた温度センサ(図示省略)の検出温度に基づき給蒸弁15を制御すれば、処理槽2内の貯留水の温度を所望に調整することができる。
【0052】
本実施例2でも、処理槽2内に被処理物3を収容すると共に、この被処理物3を沈める水位まで熱水を貯留して、被処理物3を加熱して殺菌することができる。また、殺菌後には、熱水に代えて冷却水を処理槽2内に貯留して、被処理物3を冷却することができる。殺菌工程や冷却工程では、循環手段4を作動させることで、処理槽2内の貯留水の循環が図られる。そして、本実施例2でも、殺菌工程と冷却工程との内、一方または双方の工程の途中で、
図4に基づき説明したように、水の流れを途中で切り替えることで、被処理物3をムラなく加熱または冷却することができる。その他の構成および制御は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0053】
本発明の殺菌装置1は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、処理槽2内の貯留水を循環させる殺菌装置1において、循環水取出し口と循環水戻し口との内、一方または双方の位置を変えることで、処理槽2内の水の流れを変更できるのであれば、その他の構成および制御は適宜に変更可能である。
【0054】
また、前記各実施例では、基本的には殺菌工程と冷却工程との双方で、処理槽2内の水の流れを変更する例を示したが、このような流路変更は、場合により、殺菌工程でのみ行うことができ、あるいは、冷却工程でのみ行うことができる。
【0055】
また、前記各実施例において、循環水戻し口からの水(熱水または冷却水)が被処理物3に当たらず迂回して循環水取出し口へ流れないように、処理槽2内や循環経路(循環手段4による循環水の配管)に適宜の対策を施してもよい。つまり、温度ムラ対策として、被処理物3に熱水または冷却水が均一に当たるように、処理槽2内や循環経路(特に処理槽2との接続部付近)に、たとえば、邪魔板、パンチングメタルまたは整流板などを配置してもよい。
【0056】
また、前記各実施例では、循環水を加熱するための給蒸路14は、循環水戻し路12に接続したが、場合により、処理槽2に接続して、処理槽2内の貯留水中に直接に蒸気を送り込んでもよい。また、循環水に直接に蒸気を送り込むことに代えて、循環水戻し路12に熱交換器を設置して、その熱交換器において、循環水とそれを加熱するための蒸気を間接熱交換したり、循環水とそれを冷却するための冷却水を間接熱交換したりしてもよい。
【0057】
さらに、前記各実施例では、循環水取出し口または循環水戻し口として利用できる循環水出入口2a〜2dは、処理槽2の上下左右にのみ設けたが、これに代えてまたはこれに加えて、処理槽2の斜め上部や斜め下部などに設けてもよい。