(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930401
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】製品基板をキャリア基板から剥離するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20160526BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-525912(P2012-525912)
(86)(22)【出願日】2010年8月20日
(65)【公表番号】特表2013-504178(P2013-504178A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2010005108
(87)【国際公開番号】WO2011026570
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年8月19日
(31)【優先権主張番号】09011198.0
(32)【優先日】2009年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510246138
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ・パウル・リンドナー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ブルクグラーフ
【審査官】
鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−182067(JP,A)
【文献】
特開2006−032506(JP,A)
【文献】
特開2006−059861(JP,A)
【文献】
特開2006−135272(JP,A)
【文献】
特開2006−156679(JP,A)
【文献】
特開2005−353859(JP,A)
【文献】
特開2008−109123(JP,A)
【文献】
特開平06−268051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムフレーム(1)に取り付けられたフレキシブルなフィルム(3)を用いて、製品基板(4)をキャリア基板(2)から剥離するための装置であって、
前記キャリア基板(2)は、相互接続層(6)により前記製品基板(4)に接続されており、
前記フィルム(3)は、該フィルム(3)の接合面部(3k)において前記製品基板(4)を保持するための接着層(3s)を備え、該フィルム(3)は前記接合面部(3k)を囲む該フィルム(3)の取付部(3b)において前記フィルムフレーム(1)に取り付けられ、該フィルム(3)は、前記接合面部(3k)と前記取付部(3b)との間に位置する剥離部(3a)を備え、
前記キャリア基板(2)を保持しかつ該キャリア基板(2)に力Fsを伝達するための保持手段(7,20)を備え、
前記相互接続層(6)を少なくとも部分的に取り外すための流体手段を含む接続解除手段が、前記力Fsが作用している前記キャリア基板(2)の位置において、前記製品基板(4)の外周(4u)の領域に限って作用するように作られている装置において、
前記装置は、前記キャリア基板(2)から前記製品基板(4)を前記外周(4u)から剥離するために、前記フィルムフレーム(1)を保持しかつ該フィルムフレーム(1)に力を分散して及ぼすフィルムフレームホルダと共に剥離手段を有していて、前記フィルムフレームホルダと前記剥離手段により、前記力Fsと該力Fsに対向してフィルムフレーム(1)に作用する力Ffとを用いて、フレキシブルな前記フィルム(3)の変形に基づき前記製品基板(4)が剥離可能であるように、構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記流体手段は、前記相互接続層と前記接着層から該相互接続層を選択して溶解する溶剤(22)を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記接続解除手段は、前記相互接続層(6)を少なくとも部分的に取り外すための、機械的分離手段として、該相互接続層を切断するためのブレードをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記接続解除手段は、前記相互接続層(6)を少なくとも部分的に取り外すための紫外線源をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記剥離部(3a)は、前記製品基板(4)の外面形状の外側に位置し、及び/又は、前記接合面部(3k)に隣接することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記相互接続層(6)を前記流体手段にさらすために、該流体手段を収容するための、前記キャリア基板又はキャリア基板ホルダ(7)に取付可能で、特に密封される溶剤貯蔵部(20)を備え、該貯蔵部の上端は少なくとも前記製品基板(4)によって定められる平面まで伸展していることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
前記フィルム(3)は、前記剥離部(3a)において、前記力Fsと力Ffとによって伸長することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記力Fsと力Ffとによって、前記フィルムフレーム(1)は前記キャリア基板(2)に対して変位することで、前記フィルムフレーム(1)の内側に、前記製品基板及び/又は溶剤(22)に音波を伝えるための音波発生手段を備える槽状部(9)が形成され、該音波発生手段は、前記槽状部(9)に保たれる流体(11)と、該流体(11)内に沈められる音響伝達装置(10)とから形成される、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記剥離手段は、前記製品基板(4)が、該製品基板(4)の前記外周(4u)から中心(4z)へ同心円状に剥離させるように作られていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記製品基板(4)は、剥離工程の間、前記フィルム(3)に接着するように作られていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
フィルムフレーム(1)に取り付けられたフレキシブルなフィルム(3)を用いて、製品基板(4)をキャリア基板(2)から剥離するための方法であって、
前記キャリア基板(2)は、相互接続層(6)により前記製品基板(4)に接続されており、
前記フィルム(3)は、該フィルム(3)の接合面部(3k)において前記製品基板(4)を保持するための接着層(3s)を備え、該フィルム(3)は前記接合面部(3k)を囲む該フィルム(3)の取付部(3b)において前記フィルムフレーム(1)に取り付けられ、該フィルム(3)は、前記接合面部(3k)と前記取付部(3b)との間に位置する剥離部(3a)を備え、前記キャリア基板(2)は、保持手段(7,20)によって保持されており、
前記相互接続層(6)を少なくとも部分的に取り外すための流体手段を含む接続解除手段が、前記保持手段(7,20)によって力Fsが作用している前記キャリア基板(2)の位置において、前記製品基板(4)の外周(4u)の領域に限って作用する方法において、
剥離手段により、前記キャリア基板(2)から前記製品基板(4)を前記外周(4u)から剥離し、その際に、前記力Fsと該力Fsと逆向きに前記フィルムフレーム(1)に作用する力Ffによって、前記製品基板(4)は、フレキシブルな前記フィルム(3)の変形に基づき剥離されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品基板をキャリア基板から剥離するための装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野において、多くの場合、製品基板の裏面薄化が必要とされ、その工程は機械的及び/又は化学的に行われ得る。裏面薄化を行うために、一般的に、製品基板はキャリアに一時的に固定されるが、その固定方法には様々な種類が存在する。キャリアの材料は、例えば、フィルム、ガラス基板、シリコンウェハなどがあげられる。
【0003】
使用されるキャリア材料及びキャリアと製品基板の間で使用される相互接続層に応じて、相互接続層を溶解又は破壊するための様々な方法が知られており、例えば、紫外線、レーザビーム、温度作用、又は溶剤の使用があげられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
数ミクロンの厚さである薄型基板は、剥がす/めくって剥がす際に容易に破断するか、又は剥離工程で必要とされる力により損傷を受けるために、剥離工程は近年ますます最も重要な工程段階の一つとなっている。
【0005】
さらに、薄型基板は形状安定性がほぼ無いか、あるいは全く無いため、通常、支持材料がないと屈曲してしまう。このため、裏面薄化したウェハを取り扱う際は、ウェハを固定し支持することが基本的に不可欠である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、可能な限り破損の起きない方法で、そのような製品基板をキャリアから取り外すための装置及び方法を発明することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項に記載の特徴によって達成される。本発明の有利な展開は従属請求項に記載されている。本発明の構成は、明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載の特徴のうちの少なくとも2つの全ての組合せもまた本発明の範囲内にある。規定された値域において、示された限定範囲内にある値は、境界値として開示され、どの組合せにおいてもその権利を請求するものである。
【0008】
本発明は、製品基板をその端から注意深く剥離するために用いられるフィルムフレームに設けられたフィルムの弾力性又は柔軟性により、すなわちフィルム、特にフィルムの剥離部を変形させることによって、一般的な装置と一般的な方法をさらに発展させるという意図に基づいている。このようにして、製品基板は切り離し直後からその他の工程段階に供することができ、またフィルムとフィルムフレームにより保護されるものである。また、多くの工程段階が、フィルムフレームに取り付けられた製品基板上で直接とり行うことができる。
【0009】
換言すれば、可塑性のフィルムは、フィルムフレームと、フィルムの接合面部に製品基板を接合する接着層とに面する力により、製品基板に引張力を伝える。これにより、製品基板はキャリア基板から剥がされる、特にめくって剥がされるものである。
【0010】
製品基板は、例えば半導体ウェハなどの製品基板として定義され、通常0.5μmから250μmの範囲の厚さまで薄化される。近年の傾向として、製品基板はますます薄化される方向にある。本発明は、フィルムフレームに取り付けられたフィルムと同様の可塑性を持つ製品基板に対し、特に効果的に作用するものである。本発明による装置と方法において、製品基板はキャリア基板からめくって剥がされ、特に製品基板の外周から同心円状に剥がされはじめる。
【0011】
キャリアは、例えば、50μmから5,000μmの厚さ、特に500μmから1,000μmの厚さを持つキャリア基板である。
【0012】
相互接続層は接着剤であってよく、例えば可溶性接着剤、特に熱可塑性であって、例えばキャリア基板と製品基板の組合せの端部領域、特に0.1mmから20mmの端部に選択的に塗布されるものである。もしくは、接着剤を表面全体に亘って塗布することもでき、その接着力は、その中心において、接着低減剤、例えば、フッ素重合体、好ましくはテフロン(登録商標)によって低下させることができる。
【0013】
チャック、特に負圧、例えば吸引路、孔、吸着カップ等によりキャリア基板を保持するためのスピナチャックは、保持手段として特に適している。もしくは、機械的保持、例えば、横方向クランプが考えられる。その他の代わりとなる機構においては、静電により保持が行われる。
【0014】
剥離手段はフィルムフレームに取り付けられたフィルムと、力を付与しフィルムフレームを保持するフィルムフレームホルダを
包含する。
【0015】
有利には、剥離手段に加えて、相互接続層によってなされるキャリア基板と製品基板との接続を少なくとも部分的に解除するための接続解除手段を設ける。
【0016】
装置が、特にキャリア基板ホルダに一体化されるキャリア基板と製品基板の組合せを加熱するための加熱手段を有する場合に限り、熱可塑性溶融接着剤が相互接続層として用いることができる。最高加熱温度は250℃であり、好ましくは最高温度175℃である。
【0017】
本発明の一つの有利な実施形態では、接続解除手段は基本的に加熱することなしに機能する。このため、いかなる加熱手段も省くことができる。
【0018】
本発明のもう一つの有利な実施形態では、相互接続層を取り外すための、接続解除手段は、流体手段、特に該相互接続層を選択的に溶解する溶剤を備える。該相互接続層を化学的に溶解することにより、製品基板は保護され、対応する材料を選択することで、非常に素早い溶解が可能となる。特に製品基板の端部領域のみに相互接続層が設けられる場合、溶剤は端部領域側から非常に素早く作用する。このようにして、キャリア基板及び/又は製品基板の穿孔を省くことができる。
【0019】
本発明の一つの選択肢としての実施形態では、接続解除手段は、相互接続層を取り外すための、機械的分離手段、特に該相互接続層を切断するためのブレードを備える。このようにして、特にキャリアからの製品基板の迅速な分離が可能となる。機械的分離手段と流体手段の組合せまた考えられる。
【0020】
本発明の他の選択肢としての実施形態では、接続解除手段は、相互接続層を取り外すための紫外線光源を備える。本実施形態は、機械的分離手段を備える実施形態及び/又は流体手段を備えた実施形態と組合せることもできる。
【0021】
接続解除手段が、特に製品基板の一側端だけに作用する場合に限り、上面及び/又は底面からの製品基板及び/又はキャリア、特に側端内にある製品基板の内側領域への作用を省くことができる。
【0022】
キャリア基板を回転させるための回転手段により、製品基板及び/又はフィルムの取り付けられたフィルムフレームに、製品基板の全外周にわたって接続解除手段を設ける手間を省くことができ、製品基板の外周への部分的な作用だけで十分となる。
【0023】
剥離部が、製品基板の外面形状の外側に位置し及び/又は接合面部に隣接する場合に限り、フィルムの変形によって、剥離力を製品基板に理想的に伝えることができる。
【0024】
有利には、相互接続層を流体手段にさらすために、流体手段を保持するための溶剤貯蔵部が備えられており、該貯蔵部は、キャリア基板又はキャリア基板ホルダに固定され、特に密閉されている。該貯蔵部の上端は少なくとも製品基板によって定められる平面まで伸展している。この溶剤貯蔵部は、少なくとも部分的に製品基板の側端又は外周を取り囲んでいるため、相互接続層へ特に効果的に作用するものである。さらに、このように取り囲むことにより、流体手段が溶剤貯蔵部から流れ出すのを防止し、又は紫外線の光強度が失われるのを防止する。機械的分離手段を使用する場合は、溶剤貯蔵部から汚染物質が流れ出すのを防止し、製品基板が汚染されるのを防止する。溶剤貯蔵部は、ひとつの有利な構成では、断面形状がL型又はU型に形成される。
【0025】
本発明のもう一つの有利な構成では、溶剤貯蔵部は、製品基板の側端又は外周の一部の周囲の扇状部のみ超えるよう伸展する。有利には、溶剤貯蔵部はキャリア基板又は製品基板の側端又は外周をわずかに超えるように、製品基板の中心方向に伸展し、これにより力Fsがキャリア基板に加わるようになる。力Fsはまた溶剤貯蔵部を経てキャリア基板にも伝えられる。
【0026】
本発明の一つの有利な実施形態では、キャリア基板に作用する力Fsと、フィルムフレームに作用し、力Fsに対向するFfにより剥離される。装置は、力Ffを局所的な力として、特にフィルムフレームの所々の、少なくとも一点に伝えるよう作られている。有利には、力Ffはフィルムフレームの外周の複数個所に分散して伝えられる。またこの装置によって、異なる力が伝えられ、またキャリア基板又はキャリア基板ホルダに対して、フィルムフレームを傾けることができる。
【0027】
フィルムの可塑性能、特に剥離部における力Fsと力Ffにより引き伸ばされることにより、所望の剥離形態に応じて、製品基板の外周に均一に力を分散させることができる。
【0028】
本発明のもう一つの有利な実施形態では、力Fsと力Ffは、キャリア基板に対してフィルムフレームを変位させることができる。これにより、フィルムフレームの内側には、製品基板及び/又は溶剤に音波を伝えるための音波発生手段を有する槽状部が形成される。該音波発生手段は、槽状部の内部に貯蔵される流体と、該流体内に沈められる音響伝達装置とから形成される。製品基板の剥離は、超音波又はメガサウンドによって発生するキャビテーションによって大幅に加速するため、剥離工程はより丁寧に行われ、また同時に迅速に行われる。
【0029】
有利には、製品基板は、製品基板の外周から中心へ同心円状に剥離される。
【0030】
剥離工程の間、製品基板がフィルムに接着されている場合は、全体的な保持や保護が確実となり、特に有利である。
【0031】
本発明の他の利点、特徴、及び詳細は好ましい諸実施形態の以下の記述と図面に基づいて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】フィルムフレーム上の、製品基板、キャリア基板、及び相互接続層からなる基板の組合せの略上面図である。
【
図1b】詳細図と共に示す、
図1aの略側面図である。
【
図2】詳細図と共に示す、キャリア基板から製品基板を剥離する際の本発明による装置の概略図である。
【
図3】詳細図と共に示す、キャリア基板から製品基板を剥離する際の本発明による装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図において、同じ構成要素及び同じ機能を有する構成要素には同じ参照番号を付して同一のものとして扱う。
【0034】
図1aは、円形状のフィルムフレーム1を示し、この実施形態では少なくとも、内周1iに面しており、フィルム3が取り付けられ、特にフィルム(3)の底面に接着されている。フィルムフレーム1内では、製品基板とキャリア基板の組合せが、フィルムフレーム1の内周1iに対して半径方向の距離をおいて、フィルムフレーム1に対して同心円状にフィルム3の接着層3sの上に接着されている(
図1bを参照)。
【0035】
製品基板とキャリア基板の組合せは、フィルム3に接着している製品基板4と、キャリア基板2と、製品基板4とキャリア基板2を接続する相互接続層6とから構成されている。製品基板4の直径とキャリア基板の直径は基本的には同じである。一方で、製品基板4の厚みはキャリア基板2の厚みよりも薄くなっている。
【0036】
フィルム3は、本発明では円環形状を有する取付部3bを備え、この取付部3bにおいてフィルム3がフィルムフレーム1に固定される。さらに、フィルム3は、製品基板4がフィルム3の接着層3sに固定することができる接合面3kを備えている。取付部3bと接合面3kの間には、剥離部3aが備えられ、取付部3bと接合面部3kに対して特に同心円上に配置されており、この剥離部3aは、本発明において決定的に重要な意味を持つ機能を有している。剥離部3aはこのように、製品基板4の外周4uからフィルムフレームの内周1iに向かって延び、この間を距離Aとした。フィルムフレーム1の厚さDと距離Aとの比率は有利には少なくとも1対2から1対50、特には1対5から1対25、好ましくは1対19または1対10である。
【0037】
図1bに示される初期位置では、製品基板4のフィルム3と接する側と、フィルムフレーム1のフィルム3と接する側は、一つの平面Eとなるべく同一平面に構成されている。
図1a及び
図1bに示されるこの部分は、既知のフィルムフレーム取付具上に組み立てられている。
【0038】
図2及び
図3は剥離工程の二つの例を概略的に示したものであり、キャリア基板2からの製品基板4の剥離が始まった直後の図である。
【0039】
相反する力Ff又はFf1及びFf2と、力Fsとを伝えることによって、製品基板とキャリア基板の組合せと、これに接着する部分であるフィルム3の接合面部3kは、フィルムフレーム1からキャリア基板ホルダ7の方向へ移動する。運動学的反転により、フィルムフレーム1は図示されていないフィルムフレームホルダ、例えばロボットアームにより、力Ffによって移動する。
【0040】
力は、キャリア基板ホルダ7の表面に機械加工された真空管8と、この真空管8に接続されている真空手段(図示せず)とを介して、キャリア基板ホルダ7からキャリア基板2へと伝えられる。キャリア基板ホルダ7はこの装置に確実に固定されている。
【0041】
これに代わる一つの方法として、キャリア基板2の保持は、例えばクランプなど、機械的あるいは、静電気を用いて行うこともできる。
【0042】
図2に示される、フィルムフレームに作用する力Ffは、フィルムフレーム1上に表面的な力として均一に分散して作用するため、
図2の詳細図に拡大して示されるように、剥離部3aが変形することにより、製品基板4はその端部から、キャリア基板2より剥離される。力Ff1は力Ff2と同一である。力はフィルムフレーム1の周囲の所々に分散して伝えられることもでき、又はフィルムフレームホルダによって分散されて伝えられることもできる。
【0043】
図3に示される実施形態において、フィルムフレーム1の周囲への力の分散は異なり、特に力Ff1は反対側の力Ff2よりも大きく、そのため製品基板4がより大きな力Ff1が伝えられた側からまず剥離が起こる。フィルムフレーム1に力を伝えるための保持手段は、このため、フィルムフレーム1が傾くことができるように作られる必要がある。
【0044】
製品基板4は、フィルム3と同様の弾性をもって作用することで、剥離を促進するものであり、そのため製品基板とキャリア基板の組合せはその端部から徐々に取り外されていく。
【0045】
図4によると、溶剤貯蔵部20は、製品基板とキャリア基板の組合せが力に対してさらされるような位置に該組合せが浸されるように、キャリア基板2の上に設けられている。溶剤貯蔵部20は、このとき、キャリア基板2の外周に、特に密封状態を形成するように、環状に取り付けられ、このため、前述の通り、力が溶剤貯蔵部20内においてキャリア基板2に伝えられる。また、例えば、溶剤貯蔵部20をキャリア基板に対して確動性を有さない方法で取り付けることによって、力を溶剤貯蔵部20へ伝えることもできる。溶剤貯蔵部20の外側周壁21は少なくとも、製品基板4によって形成された平面まで伸展しており、このため溶剤貯蔵部20内の溶剤22が少なくとも相互接続層6まで到達するようになっており、該層は溶剤22によって溶解され得る。有利には、外側周壁21は製品基板4によって形成された平面を超えて、ほぼフィルムフレーム1の高さまで伸展し、このためたとえ回転中においても、可能な限り溶剤貯蔵部20から溶剤22がこぼれだすことを防ぐものである。
【0046】
この方法により、製品基板4の外周4uから相互接続層6が溶解すること、及び、製品基板4
の外周4uにフィルム3を変形させる張力が加わり、製品基板4が丁寧に持ち上げられることによって、製品基板4をキャリア基板2から剥がす、特に、めくって剥がすことができる。
【0047】
フィルム3の変形によって槽状部9が生じる。流体11が槽状部9へ流入することにより、フィルム3を介して、音波発生装置によって、フィルム3と反対側に位置する溶剤22と、製品基板とキャリア基板の組合せへと音波(超音波、メガサウンド)が伝達される。音波発生装置は、ここでは音響伝達装置10である。溶剤22は、端部から音が伝わることによって相互接続層6に急速に作用し、このため、フィルムフレーム1の方向へのフィルム3の反動を減少させることができ、及び/又は、剥離、特に
図2に示すように放射状に非対称な剥離を促すものである。
【0048】
音の伝達により、溶剤22の分子が振動し、その結果、キャビテーションが起こり、相互接続層6の溶解の顕著な加速化が実現する。
【0049】
溶剤22は、有利には相互接続層6に選択的に適合するもので、接着層3sは溶剤22からの影響を受けることがない。
【符号の説明】
【0050】
A 距離
D 厚さ
E 平面
1 フィルムフレーム
1i 内周
2 キャリア基板
3 フィルム
3a 剥離部
3b 取付部
3k 接合面部
3s 接着層
4 製品基板
4u 外周
6 相互接続層
7 キャリア基板ホルダ
8 真空管
9 槽状部
10 音響伝達装置
11 流体
20 溶剤貯蔵部
21 外側周壁
22 溶剤