特許第5930416号(P5930416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930416配線構造体、配線構造体を備えた半導体装置及びその半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930416
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】配線構造体、配線構造体を備えた半導体装置及びその半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/321 20060101AFI20160526BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20160526BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H01L21/88 K
   H01L21/316 X
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-551489(P2013-551489)
(86)(22)【出願日】2012年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2012052158
(87)【国際公開番号】WO2013099300
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-289791(P2011-289791)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 ▲1▼研究会名:第23回 マイクロエレクトロニクス研究会、主催者名:国立大学法人東北大学、東北大学未来科学技術共同研究センター、UCT研究会 発表日:平成23月11月12日 ▲2▼刊行物名:第23回 マイクロエレクトロニクス研究会プロシーディング、第21回 大見研・須川研OB総会資料 発行者:東北大学未来科学技術共同研究センター 発行日:平成23月11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】須川 成利
(72)【発明者】
【氏名】寺本 章伸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 理人
(72)【発明者】
【氏名】谷 ▲クン▼
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−258457(JP,A)
【文献】 特開2008−294040(JP,A)
【文献】 米国特許第06706629(US,B1)
【文献】 特開2006−128591(JP,A)
【文献】 特開2008−218507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205−21/3213、
21/768、
23/52−23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素とフッ素とを含む層間膜に金属配線を備えたダマシン配線構造を有し、前記金属配線と前記層間膜との間に、組成成分として素と素との他、酸素と窒素の少なくとも何れか一方を含むバリア膜直接設けられていることを特徴とする配線構造体。
【請求項2】
基体上に設けた炭素とフッ素とを含む層間膜と、前記層間膜の上に設けてある組成成分として、珪素と炭素との他、酸素と窒素との少なくとも何れか一方を含むバリア膜と、該バリア膜上に直接設けられている金属配線膜と、を有することを特徴とする配線構造体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線構造体を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
配線パターン状の溝構造を基体上の炭素とフッ素とを含む層間膜に設け、該溝構造の内面を被覆するよう組成成分として、珪素と炭素との他、酸素と窒素との少なくとも何れか一方とを含むバリア膜を設け、該バリア膜に直接金属配線を設けることを特徴とする配線構造体の製造方法。
【請求項5】
炭素とフッ素とを含む層間膜に形成された配線パターン状の溝構造の内面を被覆するよう組成成分として、珪素と炭素との他、酸素と窒素との少なくとも何れか一方とを含むバリア膜を形成し、前記バリア膜表面に直接金属配線を設けることを特徴とする配線構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の配線構造体の製造方法を工程の一部に有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造体、配線構造体を備えた半導体装置及びその半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置などに設けられる配線には、低抵抗化および高信頼化を目的として、Cu配線を用いるようになっている。Cu配線は、ドライエッチングによる形成が困難なため、配線を多層に形成したダマシン配線構造体とするのが普通である。ダマシン配線構造体は、配線パターンとしての溝構造を有する層間絶縁膜上にCuを堆積させ、その後、溝構造内部のCuを残して溝構造内部以外に堆積したCuをケミカルメカニカルポリッシング(以下、「CMP法」とも呼称する)によって除去する方法で作られる。
【0003】
その際、特に微細なCu配線構造体の場合には、Cuの拡散によって層間絶縁膜中の絶縁性が低下する懸念があるなどから、Cu配線と層間絶縁膜との間に、Cuの拡散防止のためのバリアメタルを介在させることが知られている。このバリアメタルとしては、例えばTa(タンタル)やその化合物であるTaN(窒化タンタル)等が用いられる。
【0004】
一方、層間絶縁膜としては、炭素(C)とフッ素(F)の化合物であるCF膜(本願では、パー-フルオロカーボン膜、一部フッ素置換炭化水素膜の何れか若しくは両方の総称として「CF膜」と記す場合がある)が用いられることが知られている。ところで、単層若しくは多層の配線構造基体や半導体装置におけるCu配線の形成では、例えば、250℃〜350℃程度に加熱してアニール処理等の熱処理工程が実施されるが、この熱処理工程においてCF膜に起因するフッ素(F)がバリアメタル膜中に拡散することが起こる場合がある。その際、例えば、バリアメタルがタンタル(Ta)、あるいは、窒化タンタル(TaN)などである場合には、TaF(フッ化タンタル)がバリアメタル中に生成される。
【0005】
TaFは蒸気圧が非常に高いので、上述した熱処理工程中に蒸発し勝ちであり、蒸発が起こるとバリアメタル膜中におけるTaの密度が低下しCuの拡散防止効果が低下する恐れがある。その結果、リーク電流が増加し配線構造基体や半導体装置に不良品が発生する場合がある。また、CF膜とバリアメタル膜との密着性も低下し膜剥がれを起こす恐れがある。
【0006】
特許文献1には、その解決策として、CF膜からのフッ素(F)の拡散を防止するために、例えば、Ti(チタン)膜である第1の膜と、Cu配線からのCuの拡散を防止するために、例えば、Ta(タンタル)膜である第2の膜とを設けた構成の半導体装置が開示されている。特許文献2には、窒化タンタル(TaN)や窒化チタン(TiN)等からなるバリア層と、タンタル(Ta)やチタン(Ti)等からなる接着層とを備えたダマシン型Cu配線構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−4841号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0113675号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を行った結果、配線構造体やその構造体を有する半導体装置の製造に際し、上記特許文献1、2において用いられているTi膜やTiN膜と、CF膜とを直に接触させた状態で熱処理工程を行うと、Ti膜やTiN膜にCF膜からフッ素が拡散し、Ti膜あるいはTiN膜内において、例えば、フッ化チタン(TiF)が生成され、その結果、耐熱性が低下し、製品不良が発生してしまう場合があることを知見した。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、リーク電流の発生を抑止し耐熱性・層間密着性に優れたダマシン構造のCu配線構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のもうひとつの目的は、リーク電流の発生を抑止し耐熱性・層間密着性に優れたダマシン構造のCu配線構造を有する半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配線構造体の一つは、金属配線を備えたダマシン配線構造を有し、前記銅配線は、組成成分として珪素(Si)と炭素(C)と、酸素(O)と窒素(N)の少なくとも何れか一方を含むバリア膜(本願では、「SiC(O,N)膜」ということがある)上に直接して設けられていることを特徴とする(第一の発明)。
【0012】
本発明の配線構造体の別の一つは、基体と、該基体の上に設けてあるSiC(O,N)膜と、該SiC(O,N)膜上に直接に設けられている金属配線膜と、を有することを特徴とする(第二の発明)。
【0013】
本発明の半導体装置は、前記第一の発明の配線構造体を備えていることを特徴とする(第三の発明)。
【0014】
本発明の配線構造体の製造方法の一つは、基体の上にSiC(O,N)膜を設け、該SiC(O,N)膜に直接し金属配線を設けることを特徴とする(第四の発明)。
【0015】
本発明の配線構造体の製造方法のもう一つは、配線パターン状の溝構造と、該溝構造の溝内部壁上にSiC(O,N)膜と、を形成し、前記溝内部壁上のSiC(O,N)膜表面に直設して金属配線を設けることを特徴とする(第五の発明)。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法のもう一つは、前記第五の発明を工程の一部に有することを特徴とする(第六の発明)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱処理工程が行われた場合の、層間絶縁膜であるCF(H)膜からのフッ素の拡散を防止することでリーク電流の増加が抑制され、且優れた耐熱性・層間密着性の配線構造体及び半導体装置を提供することが出来る。
【0018】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【0020】
図1】本発明の実施に関わる配線構造部の製造工程の一例を模式的に示す製造工程図を示す(シングルダマシン配線構造)。
図2図1に示す製造工程図に従って作られる本発明の実施に関わる配線構造部の主な工程でのインテグレーションを模式的に示す。
図3】本発明のもう一つの実施に関わる配線構造部の製造工程の一例を模式的に示す製造工程図を示す(デュアルダマシン配線構造)。
図4図3に示す工程に続いて実施される工程の一例を模式的に示す製造工程図を示す(デュアルダマシン配線構造)。
図5図3,4に示す製造工程図に従って作られる本発明の実施に関わる配線構造部の主な工程でのインテグレーションを模式的に示す。
図6図3,4に示す製造工程図に従って作られる本発明の実施に関わる配線構造部の主な工程でのインテグレーションを模式的に示す。
図7】後述する本発明に係る実験で得られた測定データを示し、抵抗・容量の熱安定性、リーク電流の熱安定性を示す。
図8】後述する本発明に係る実験で得られた測定データを示し、MISキャパシターの熱安定性を示す。
図9】後述する本発明に係る実験で得られた測定データを示し、MISキャパシターの薄膜化とリーク電流を示す。
図10】本発明の更にもう一つの実施に関わる配線構造部の製造工程の一例を模式的に示す製造工程図を示す(デュアルダマシン配線構造)。
図11図10に示す製造工程図に従って作られる本発明の実施に関わる配線構造部の主な工程でのインテグレーションを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
図1には、本発明の実施に関わるシングルダマシン配線構造部の製造工程の一例を模式的に示す製造工程図が示めされる。
【0023】
図2には、図1に示す製造工程図に従って作られる本発明の実施に関わる配線構造部の主な工程でのインテグレーションが模式的に示される。
【0024】
先ず、所望に沿った適当なSiウエハーを所定の通常行われる洗浄などの処理を施した後、所定の成膜装置の所定箇所に設置し、熱酸化、プラズマ酸化等の成膜方法でシリコン酸化膜(SiO膜)を例えば450nm程度の厚みでSiウエハー表面に形成する。このようにして用意された配線構造基体上に層間密着膜を形成する(工程1)。
【0025】
密着膜は、配線構造基体と、その上に設けられる別の膜とを機密に均一一様に強固に密着させるために設けられるもので、本発明に於いては、必ずしも設けられるものではない。密着膜としては、例えば、シリコン(Si)と炭素(C)と窒素(N)とを含む膜(以後、「SiCN膜」ということもある)が挙げられる。
【0026】
密着膜は、先述の様な密着機能の他、電気的絶縁性に優れた機能を有することが好ましい。更には、配線構造体の製造過程での熱負荷や長期使用過程での継時変化に耐性があるように、耐膜歪(耐ストレス)性に優れていることが好ましい。その様な膜としては、例えば、アモルファス構造のSiCN膜が好ましいものとして挙げられる。
【0027】
このような膜は、例えば、トリメチルシラン(40)、Ar(500)、N(50)を通常のプラズマ成膜装置の膜堆積室に導入し、圧力130mTorr、基体温度350℃、プラズマ励起パワー2500Wで、15nm厚に形成される。上記の()内の数値は、ガス流量で単位はsccmである。
【0028】
次に、図1に示すように、例えば、ラジアルラインスロットアンテナ法により生成されたプラズマを用いた成膜方法によって、Low−κ膜を密着膜の上に形成する(工程2)。Low−κ膜は、低誘電率の膜で、本発明に於いては、必要に応じて設けられるものである。Low−κ膜として好ましいのは、例えば、炭素(C)とフッ素(F)とを主体とする膜(以後「CFx膜」ということもある)が挙げられる。その中でも、フッ素添加カーボン膜)がより好ましい。又、Low−κ膜として、組成成分として水素(H)を必要に応じて含み、フッ素(F)を少なくとも含むカーボン膜(本願では、「CF(H)膜」ということがある)からなる層間絶縁膜としても良い。
【0029】
CFx膜は、例えば、SiCN膜と同様の成膜装置を用い同様の成膜プロセスで形成される。その際の成膜条件は、例えば、C(200sccm)、Ar(70sccm)、基体温度350℃、圧力25mTorr、プラズマ励起パワー1400Wで、400nm厚に形成される。
【0030】
次いで、Low−κ膜の上に、保護膜を形成する(工程3)。工程3において形成される保護膜は、例えば、電気絶縁性に優れアモルファス構造を有する膜が好ましい。このような保護膜として好ましいのは、シリコン(Si)と炭素(C)と酸素(O)とを含む膜(以後、「SiCO膜」ということもある)が挙げられる。
【0031】
SiCO膜は、例えば、SiCN膜と類似の成膜装置を用いて所定の成膜プロセスで形成される。その際の成膜条件は、例えば、トリメチルシラン(15sccm)、O(100sccm)、C(44sccm)、Ar(20sccm)、基体温度350℃、圧力60mTorr、プラズマ励起用のマイクロ波のパワーが2000W、RFバイアスパワーが30Wで、400nm厚に形成される。RFバイアスパワーは、プラズマ励起で生成されるイオンも加速用である。
【0032】
工程3で形成された保護膜上には、図2の2aに示される様にハードマスクとレジスト塗布がなされる(工程4)。
【0033】
次いで、パターンニングされて、ドライエッチング処理を施して配線パターン状の溝構造が設けられる(工程5,6)。その際の配線構造のインテグレーションが、図2の2bに示される。パターンニングは、例えば、KrF光源の露光装置を用い420J程度で露光を行うことで実施される。
【0034】
その後、Nプラズマ処理(工程7)、洗浄とアニーリング処理(工程8)を経て、図2の2dに示す配線構造のものを形成する。
【0035】
次いで、密着性に富む電気的絶縁膜を、溝構造内壁と表面に沿って図2の2eに示す様に設ける(工程9)。工程9で形成される絶縁膜は、本発明の特徴を構成するもので、驚くべきことに、後述するようにCu配線と直接的に強固に密着し従来の課題を一挙に解決する。
【0036】
その様な絶縁膜は、シリコン(Si)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)を主体的に含む材料で構成され、組成比を所望に従って適宜選択することで耐膜歪(耐ストレス)性と電気的絶縁性に優れた所望の機能を有する膜とすることができる。
【0037】
膜中の炭素(C)の量は、好ましくは、膜全量に対して5〜40質量%とするのが望ましい。この様な炭素(C)量とすることで、形成される膜は、配線構造体の製造過程での熱負荷や長期使用過程での継時変化に対して高耐性なものとすることが出来る。特に、膜の厚み方向に、酸素(O)又は/及び窒素(N)の濃度分布が、層の成長方向に増大するようにすると、先の特性はより優れたものとなる。濃度分布は、階段状に変化させても良いし、連続的に変化させても良い。又、アモルファス構造の膜とすることで、耐膜歪(耐ストレス)性により優れたものとすることが出来るので、好ましい。
【0038】
その様な膜とするには、例えば、東京エレクトロン社製装置(MEP1)を使用して、基板温度350℃、トリメチルシラン(3MS)(14sccm),C(44sccm),O(100sccm),N(25sccm),圧力60mTorr、プラズマ励起用マイクロ波パワー2000W,RFバイアスパワー30Wの条件で、膜形成するのが望ましい。
【0039】
この他、例えば、ラジアルラインスロットアンテナ法等マイクロ波励起により生成されるプラズマを用いた成膜方法によって形成されるシリコン系絶縁膜が使用し得る。
【0040】
工程9で形成される絶縁膜の成膜時のこの他の条件としては、例えば、温度350℃以下、μ(マイクロ)波パワー2.5kW、圧力50mTorrの条件下において、TMS(トリメチルシラン)、O(酸素)及びC(ブチン)を、ラジアルラインスロットアンテナを備えるプラズマ成膜装置に導入し、成膜を行うとするものである。
【0041】
工程9を経て形成された配線構造体(図2の2e)の溝部には、図2の2eに示す様に、銅(Cu)が埋め込まれる(工程10)。配線構造体の溝部に銅(Cu)を埋め込むには、例えば、先ず、スパッタリング(PVD)法に依って銅(Cu)のシード層を形成し、その後、エレクトロプレーティング法によって上記溝部に銅(Cu)が埋め込まれる。その際の製造条件としては、例えば、エレクトロプレーティングは電流12Aで行われ、PVD法の条件は、15kW、RF:400W、圧力:0.7Pa、である。
【0042】
その後、アニール処理(工程11)、CMP処理(工程12)、洗浄処理(工程13)が施される。
【0043】
図3に示す製造工程において使用され得る製造装置、薬液等の、一例が、表1に示される。
【0044】
このようにして、シングルダマシン配線構造体が形成される。
【0045】
配線材料としては、高速動作、極微細化には、Cuが好ましいが、本発明においては、Cu以外の金属、Cu合金、アルミニウム(Al)、その合金、金属シリサイドも使用され得る。
【0046】
【表1】
【0047】
半導体装置において、一般的に用いられているダマシン型Cu配線構造体は、所謂デュアルダマシン構造と呼ばれるCu配線が複数層重なりあった構成とされる。そこで、次に、本発明の一例として、2つのCu配線構造体がビア配線を介して接続し、2層重ねて設けられる場合(所謂ダブルダマシン配線構造体)について説明する。
【0048】
図3図6は、2層に配置されたダマシン型Cu配線構造体の製造工程を示す説明図である。図3、4はプロセスフローを、図5、6はそのプロセスフローの過程での配線構造体のインテグレーションを示すものである。
【0049】
図3、4に示すように、第1層目のCu配線構造(下地配線層)を形成した後に、下地配線層の表面にCFx膜である電気絶縁性の層間密着膜を、例えば、ラジアルラインスロットアンテナによって励起されたプラズマを用いた成膜方法によって形成する。
【0050】
続いて、例えば、フォトリソグラフィおよび反応性イオンエッチング(RIE)により、層間密着膜の表面にダマシン構造のトレンチ溝及びビアホールからなる配線溝構造が形成される。
【0051】
続いて、図5の5hに示すように、配線溝構造部の内面を被覆するように、密着性電気絶縁膜としてのSiCON膜が形成される。SiCON膜は、例えば、上記と同様に、ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)によって励起されたプラズマを用いた成膜方法によって形成される(図3の工程14)。
【0052】
次に、図3,4に示すように、工程14から工程19を実施することで、配線溝構造の底面に形成されたSiCON膜の除去が行われる。即ち、配線溝構造において、トレンチ溝の底面とビアホールの底面に形成されたSiCON膜が除去され、トレンチ溝及びビアホールの側面(側壁)にのみSiCON膜を残存させる(図6の6k)。
【0053】
次に、図6の6l,6mに示すように、Cu導電層が、配線溝構造の空隙を埋め込むように、配線溝構造体の表面全体に形成される。Cu導電層は、純Cuに限らずCu合金であってもよい。
【0054】
次に、図6の6mに示すように、配線溝構造の内部にあるCu導電層を残して、絶縁保護膜の上面からCu導電層がCMP法により除去される(図3,4の工程15,16)。
【0055】
なお、上記実施の形態においては、ダブルダマシン(2層)構造のCu配線構造体に本発明を適用する場合について説明したが、当然3層以上の複数層のCu配線を重ねて構成する場合についても本願発明は適用可能である。
【0056】
次に、図3図6のとは別の例のダブルダマシン構造のCu配線構造体の製造工程を説明する。
【0057】
図10、11は、2層ダマシン型Cu配線構造体の第2の例の製造工程を示す説明図である。図10はプロセスフローを、図11はそのプロセスフローの過程での配線構造体のインテグレーションを示すものである。図10、11の以下の説明において、図3図6の例と同等若しくは類似の構造及び工程の場合は、説明を省くか簡単な説明にしてある。
【0058】
図10、11の例が、図3図6の例と大きく違うところは、図10に示す工程の中、工程9までの工程で、図11の11bに示す様に、密着絶縁Liner膜(SiCNO膜)を設けること、及び図10の工程14から工程16に於いて、図11の11d,11e,11fに示す構造の構造体を作成することである。
【0059】
図11の11dに示す様に、その構造体に於いて、内面側壁から密着絶縁Liner膜(SiCNO)の一部が除去(穴部の下部)されたのを、図11の11eに示す様に図10の工程15において、その除去された部分に再び密着絶縁Liner膜(SiCNO)が設けられる。
【0060】
その他は、図3図6の例と略同等の製造条件と手順に従って工程が進められる。
【0061】
[実験1]
下記の条件に従って、MISキャパシター試料を5個(試料No.1〜5)作成し、リーク電流を測定して熱安定性、SiCON膜厚依存性について確認した。試料の測定は、アニール処理しないときと、その後、アニール処理1時間、アニール処理2時間したとき行った。
【0062】
プロセス条件、測定条件は、以下の通りとした。
(1)aCSiON-Liner(15nm) 成膜条件:
ステップ1:aCSi形成
200 ℃, 3MS/Ar:15/19.5 sccm, 60mTorr, 2000W/RF-30W, 5sec
ステップ2:aCSiON形成
200 ℃, 3MS/C2H6/O2/N2: 15/44/100/25 sccm, 60mTorr, 2000W/RF-30W, 40sec
【0063】
(2)測定条件
・抵抗とリーク電流測定装置名:
aglient 4156C precision semiconductor parameter analyzer
・抵抗測定: kelvin pattern, 電圧を0から100mVに印加して、測定した電流により、抵抗を計算する。
・リーク電流:comb pattern, 電圧を0〜25Vに印加して、配線間リーク電流を測定する。
・容量測定装置名: (HP4284A precision LCR meter)
容量:comb pattern, 1MHz, 26mV bias
【0064】
結果が図8、9に示される。
【0065】
[実施例1]
図1のフローに沿って、下記のプロセス条件により、シングルダマシン配線構造体を作成して、リーク電流、電気抵抗、容量の熱特性について調べた。結果を、図7に示す。
【0066】
各工程でのプロセス条件は、次の通りである。
工程1:密着膜の成膜(SiCN)
350 ℃, 3MS/Ar/N2: 40/500/50 sccm, 130mTorr, 2500W, 15nm
工程2:CFx成膜
350 ℃, C5F8/Ar :200/70 sccm, 25mTorr, 1400W, 400nm
工程3:保護膜の成膜(SiCO)
350 ℃, 3MS/O2/C2H6/Ar:15/100/44/20sccm, 60mTorr, 2000W, RF-30W
工程4:ハードマスクとレジスト塗布
工程5:パターン二ング
KrF, 420J
工程6:Dry etching
CF4/C5F8/N2/Ar: 60/5/10/100 sccm, 100mTorr, 2000W, RF-280W
工程7:Nプラズマ処理
N2/Ar: 80/20 sccm, 100mTorr, 2kW, RF-150W
工程8:Etching後洗浄とanneal処理
HF: 0.5%, spin speed: 500rpm, 1min
350 ℃, N2, 10min
工程9:密着絶縁Liner(SiCON)成膜
350 ℃, 3MS/C2H6/O2/N2: 14/44/100/25 sccm, 60mTorr, 2000W, RF-30W
工程10:Cu成膜
PVD: 15kW, RF: 400W, 0.7Pa, 150nm
Electroplating: 500nm
工程11:Anneal treatment
260 ℃, N2, 4min
工程12:CMP
10.34 kPa, Cu: wafer/platen: 148/25 rpm
工程13:CMP後洗浄
5.5 kPa, brush/wafer: 400/150 rpm
【0067】
次いで、次の配線層の形成がなされる。
測定条件は、先述の通りである。
【0068】
[実施例2]
図10、11に示す製造工程に従って、ダブルダマシン構造のCu配線構造体を作成した。主たる工程における製造条件を以下に示す。その他の工程の条件は、実施例1に示す対応する同等の工程の条件と同等の条件とした。
【0069】
得られた配線構造体は、配線間のリーク電流の熱依存性を測定したところ、従来のタイプのものに比べて熱安定性に優れた配線間のリーク電流特性を示し実用的に優れたものであった。
【0070】
工程1:層間密着膜成膜(CiCN)
350 ℃, 3MS/Ar/N2: 40/500/50 sccm, 130mTorr, 2500W, 15nm
工程2:CFx成膜
350 ℃, C5F8/Ar: 200/70 sccm, 25mTorr, 1400W, 400nm
工程3:絶縁保護膜成膜(SiCO)
350 ℃, 3MS/O2/C2H6/Ar: 15/100/44/20 sccm, 60mTorr, 2000W, RF-30W
工程7:ドライエッチング
CF4/C5F8/N2/Ar: 60/5/30/100 sccm, 100mTorr, 2000W, RF-250W
工程8:窒素プラズマ処理
N2/Ar: 80/20 sccm, 100mTorr, 2kW, RF-150W
工程9:密着絶縁Liner膜の成膜
350 ℃, 3MS/C2H6/O2/N2: 14/44/100/25 sccm, 60mTorr, 2000W, RF-30W
工程12:パターン二ング
KrF, 420J
工程13:ドライエッチング
CF4/C5F8/N2/Ar: 60/5/30/100 sccm, 100mTorr, 2000W, RF-250W
工程14:ハードマスク洗浄
HF: 0.5%, spin speed: 500rpm
工程15:密着絶縁Liner膜の成膜
350 ℃, 3MS/C2H6/O2/N2: 14/44/100/25 sccm, 60mTorr, 2000W, RF-30W
工程16:ドライエッチング
CF4/C5F8/N2/Ar: 60/5/30/100 sccm, 100mTorr, 2000W, RF-250W
工程17:Cu成膜
PVD: 15kW, RF: 400W, 0.7Pa, 150nm
Electroplating: 500nm, 12A
工程18:ア二―ル処理
260 ℃, N2, 4min
工程19:CMP
5.5kPa, brush/wafer: 400/150 rpm
【0071】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
以上説明した実験と実施例から、CFx膜とCu配線部の間に本発明の特徴であるSiCON膜を直設状態で設けても、CFx膜からのフッ素(F)拡散とCu配線部からの銅(Cu)拡散が確実に防止できるとともに、SiCON膜からの該膜の構成原子の拡散もないことが分かる。
【0073】
従って、単純な層構成にも拘わらず、従来の半導体装置において発生していた、CFx膜からのフッ素(F)の拡散が確実に抑えられ、半導体装置に、例えば、アニール処理等の熱処理工程が行われた際のリーク電流の増加が抑制され、装置不良等が回避されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、配線構造体及びその製造方法並びに該配線構造体を有する半導体装置及びその半導体装置の製造方法に適用でき、産業的にも経済性と省資源性に於いて大いに貢献される。
【0075】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0076】
本願は、2011年12月28日提出の日本国特許出願特願2011−289791を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11